検体処理装置
【課題】再検査等の追加処理を実行可能で、且つ、消費電力を抑制することが可能な検体処理装置を提供する。
【解決手段】検体容器に収容された検体は、3つの測定ユニット41により測定され、塗沫標本作製装置6により塗沫標本が作製される。右側と中央の測定ユニット41の測定結果に基づいて、左側の測定ユニット41での再検の要否が判定される。また、3つの測定ユニット41の測定結果に基づいて、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。左側の測定ユニット41または塗沫標本作製装置6が休止状態となっている場合に、再検または塗沫標本作製の必要があると判定されると、左側の測定ユニット41または塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。これにより、左側の測定ユニット41と塗沫標本作製装置6の消費電力が抑制され、処理が滞りなく実行され得る。
【解決手段】検体容器に収容された検体は、3つの測定ユニット41により測定され、塗沫標本作製装置6により塗沫標本が作製される。右側と中央の測定ユニット41の測定結果に基づいて、左側の測定ユニット41での再検の要否が判定される。また、3つの測定ユニット41の測定結果に基づいて、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。左側の測定ユニット41または塗沫標本作製装置6が休止状態となっている場合に、再検または塗沫標本作製の必要があると判定されると、左側の測定ユニット41または塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。これにより、左側の測定ユニット41と塗沫標本作製装置6の消費電力が抑制され、処理が滞りなく実行され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体に対し、検査・分析等の所定の処理を行う検体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の臨床検体を処理するための検体処理装置が、病院等の医療機関において用いられている。かかる検体処理装置には、検体の処理能力を向上させるため、複数の分析モジュールと、それら複数の分析モジュールに検体を搬送する搬送装置から構成されたものもある。また、かかる検体処理装置には、一の分析モジュールでの分析(初検)の結果、同じ検体について再検査が必要と判断された場合には、同装置内の他の分析モジュールで自動的に再検査を実行可能とするよう構成されたものもある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、この種の検体処理装置には、消費電力を抑制するために、装置を非活動状態に移行させる機能を有するものもある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39554号公報
【特許文献2】特開2003−121449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような、再検査を実行可能に構成された検体処理装置では、再検査に用いられる分析モジュールの使用頻度が、初検を実行する他の分析モジュールと比較して、少なくなる場合が多い。特に、検体数が少ない時間帯には、再検査に用いられる分析モジュールが使用されない時間も長くなる。しかしながら、従来の検体処理装置では、このような状況においても、再検査に用いられる分析モジュールを即座に再検査が開始できる状態にしていた。そのため、消費電力が大きくなるという問題が生じていた。
【0006】
一方、特許文献2には、検体分析システム全体の消費電力を抑制する技術が開示されているものの、再検査に用いられる分析モジュールによる消費電力を抑制することについては開示がない。
【0007】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、再検査等の追加処理を実行可能で、且つ、消費電力を抑制することが可能な検体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る検体処理装置は、検体容器に収容された検体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に沿って配置され、搬送された検体を測定する測定モジュールと、前記測定モジュールによる測定結果に基づく、検体に対する追加処理の要否に関する判定結果を取得する判定結果取得手段と、前記搬送装置に沿って配置され、追加処理が必要と判定された検体を処理する処理モジュールと、前記処理モジュールを休止状態に移行させる休止移行手段と、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュールを休止状態から解除する休止解除手段とを備える。
【0009】
本態様に係る検体処理装置によれば、処理モジュールにおいて追加処理が必要と判定された場合に、処理モジュールが休止状態から解除されるため、処理モジュールの消費電力が抑制され、且つ、処理モジュールによる処理が滞りなく実行され得る。
【0010】
本態様に係る検体処理装置において、前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより前記判定結果を取得するよう構成され得る。
【0011】
または、本態様に係る検体処理装置において、前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより判定結果を取得するコンピュータに測定結果を送信し、該コンピュータから判定結果を取得するよう構成され得る。
【0012】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、一時的に休止解除を待機したのち、前記処理モジュールを休止状態から解除するよう構成され得る。こうすると、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得された後、直ちに処理モジュールが休止状態から解除される場合に比べ、処理モジュールの消費電力が抑制され得る。
【0013】
さらに、本態様に係る検体処理装置において、追加処理が必要と判定された検体の処理の進捗状況に基づいて、待機すべき時間に関する情報を生成する生成手段をさらに備えるよう構成され得る。こうすると、休止状態の解除タイミングが適正化され得る。
【0014】
また、本態様に係る検体処理装置は、前記処理モジュールの動作状況を監視する動作状況監視手段をさらに備える。ここで、前記休止移行手段は、前記動作状況監視手段により、前記処理モジュールが所定期間動作していないことが検知されると、前記処理モジュールを休止状態に移行させるよう構成され得る。こうすると、処理モジュールが所定期間動作していない場合に、処理モジュールが休止状態に移行されるため、処理モジュールの無駄な電力消費が抑制され得る。
【0015】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記処理モジュールは、検体を吸引して処理するように構成されているとともに、本態様に係る検体処理装置は、吸引した検体を移送するための圧力を生成する圧力生成部を備える。ここで、前記休止移行手段は、前記圧力生成部への電力の供給を停止する設定処理を含むよう構成され得る。こうすると、消費電力が効果的に抑制され得る。
【0016】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記休止移行手段は、前記処理モジュールの電源をオフにするよう構成され得る。こうすると、さらに消費電力が抑制され得る。
【0017】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記搬送装置は、前記処理モジュールに検体容器を供給する処理モジュール用搬送装置を備え、前記休止移行手段は、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態に移行させ、前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態から解除するよう構成され得る。この構成によれば、処理モジュール用搬送装置も休止状態に移行されるため、消費電力がより効果的に抑制され得る。
【0018】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記処理モジュールは、検体に対して所定の測定処理を行うものとされ得る。この場合、前記測定モジュールおよび前記処理モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールとされ得る。また、前記判定結果取得手段により取得される判定結果は、前記処理モジュールでの測定が必要な測定項目を含むものとされ得る。
【0019】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記測定モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールとされ、前記処理モジュールは、検体としての血液の塗沫標本を作製する塗沫標本作製モジュールとされ得る。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、再検査等の追加処理を実行可能で、且つ、消費電力を抑制することが可能な検体処理装置を提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【図2】検体容器とサンプルラックの外観を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る検体搬送装置の構成を示す平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る測定ユニット、情報処理装置、塗沫標本作製装置および搬送コントローラの構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る休止状態への移行処理と、搬送コントローラの処理を示すフローチャートである。
【図6】図5(b)のS102における処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る休止状態の解除処理を示すフローチャートおよび図5(b)のS107における処理の内容を示すフローチャーである。
【図9】第2の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る搬送コントローラの処理を示すフローチャートおよび休止状態の解除処理を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【図12】第3の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図13】実施形態の変更例に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための検体処理システムに本発明を適用したものである。本実施の形態に係る検体処理システムは、3つの測定ユニットと、1つの塗沫標本作製装置を備えている。3つの測定ユニットのうち、2つによって血液分析が並行して行われ、その分析結果に基づき再検が必要な場合に、残り一つの測定ユニットによって測定が行われる。また、これら3つの測定ユニットによる分析結果に基づき塗沫標本の作製が必要である場合に、塗沫標本作製装置により塗沫標本が作製される。
【0024】
1.第1の実施形態
以下、第1の実施形態に係る検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、検体処理システム1を上側から見た場合の構成を示す平面図である。本実施の形態に係る検体処理システム1は、検体投入装置2と、3つの検体搬送装置3と、血球分析装置4と、検体搬送装置5と、塗沫標本作製装置6と、検体収容装置7と、搬送コントローラ8から構成されている。
【0026】
検体投入装置2は、2つの検体送出ユニット21a、21bと、これら2つの検体送出ユニット21a、21bの間に配置されたバーコード読取ユニット22を備えている。検体送出ユニット21a、21bは、複数のサンプルラックが載置可能となるよう構成されている。
【0027】
図2(a)、(b)は、それぞれ、検体容器の外観を示す斜視図と、サンプルラックの外観を示す斜視図である。
【0028】
同図(a)を参照して、検体容器Tは、透光性を有するガラスまたは合成樹脂により構成された管状容器であり、上端が開口している。内部には患者から採取された血液検体が収容され、上端の開口は蓋部Cにより密封されている。検体容器Tの側面には、バーコードラベルBL1が貼付されている。バーコードラベルBL1には、検体IDを示すバーコードが印刷されている。
【0029】
同図(b)を参照して、サンプルラックLには、10本の検体容器Tを垂直状態(立位状態)で並べて保持することが可能となるよう10個の保持部が形成されている。サンプルラックLの側面には、バーコードラベルBL2が貼付されている。バーコードラベルBL2には、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0030】
図1に戻って、検体送出ユニット21aは、載置されたサンプルラックLを、順にバーコード読取ユニット22に送出する。バーコード読取ユニット22は、検体送出ユニット21a側から送出されたサンプルラックLに貼付されたバーコードラベルBL2のバーコードから、ラックIDを読み取る。また、バーコード読取ユニット22は、サンプルラックLに収容された検体容器Tに貼付されたバーコードラベルBL1のバーコードから、検体IDを読み取る。さらに、バーコード読取ユニット22は、読み取りが終了したサンプルラックLを検体送出ユニット21bへ送出する。検体送出ユニット21bは、バーコード読取ユニット22側から送出されたサンプルラックLを、順に検体搬送装置3に送出する。
【0031】
3つの検体搬送装置3は、図示の如く、それぞれ、3つの測定ユニット41の前方に配置されている。隣り合う2つの検体搬送装置3は互いに接続されており、右側の検体搬送装置3の右端は、検体投入装置2の検体送出ユニット21aに接続されており、左側の検体搬送装置3の左端は、検体搬送装置5に接続されている。各検体搬送装置3の前方両端には、図示の如く、サンプルラックLの受渡しが可能となるよう切欠が形成されている。
【0032】
これら3つの検体搬送装置3は、それぞれに対応する測定ユニット41において検体の測定が行われる場合と行われない場合とに分けて、サンプルラックLを2通りの搬送経路で搬送することができる。すなわち、図示の如く、測定ユニット41で検体の測定が行われる場合は、後方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLが搬送され、測定ユニット41で検体の測定が行われない場合は、前方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLが搬送される。
【0033】
なお、前方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLを搬送する場合の検体搬送装置3の制御は、搬送コントローラ8が行う。また、後方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLを搬送する場合の検体搬送装置3の制御は、情報処理装置42が行う。
【0034】
血球分析装置4は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、3つの測定ユニット41と、情報処理装置42を備えている。以下、3つの測定ユニット41を、便宜上、右から順に、M1、M2、M3と称することとする。
【0035】
M1、M2、M3は、検体容器Tに収容されている血液検体を測定する。すなわち、M1、M2、M3は、それぞれ前方に配置された検体搬送装置3の搬送経路上の所定の位置において、サンプルラックLから検体容器Tを抜き出す。かかる検体容器Tに収容されている血液検体は、M1、M2、M3内で測定される。M1、M2、M3内での測定が完了すると、かかる検体容器Tは再び元のサンプルラックLの保持部に戻される。
【0036】
M1とM2には、検体投入装置2の検体送出ユニット21bから順に送出されるサンプルラックLが交互に搬送される。これにより、M1とM2によって、2つのサンプルラックLに対する測定処理を並行して行うことができ、全体の測定処理が向上される。
【0037】
M3は、再検に用いられる測定ユニットである。M3での再検の要否は、M1またはM2による測定結果により判定される。M1またはM2により再検が必要と判定されると、再検対象の検体を収容するサンプルラックLは、M3において再検が行われるよう搬送される。本実施の形態では、かかる要否判定は搬送コントローラ8によって行われる。
【0038】
情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)と、搬送コントローラ8と通信可能に接続されている。情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)の動作を制御する。また、情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)で行われた測定結果に基づく分析結果を、表示部480に表示する。情報処理装置42として、たとえば、別付のパーソナルコンピュータあるいはシステムに組み込まれたコンピュータが用いられ得る。
【0039】
検体搬送装置5は、塗沫標本作製装置6の前方に配置されており、コンベア51と、ラックスライダ52を備えている。検体搬送装置5は、制御部51cを備えており、搬送コントローラ8からの指令に従って、コンベア51とラックスライダ52の動作機構を制御する。
【0040】
コンベア51には、左右方向に延びた2つのラック搬送路51a、51bが設けられている。塗沫標本作製装置6に近接するラック搬送路51aは、塗沫標本作製装置6で塗沫標本の作製が行われる検体を収容するサンプルラックLが搬送されるための測定ラインである。他方、塗沫標本作製装置6から離れたラック搬送路51bは、塗沫標本作製装置6で塗沫標本の作製が行われる検体を収容していないサンプルラックLが搬送されるためのスキップラインである。
【0041】
ラックスライダ52は、コンベア51の右端に配置されており、前後方向に移動可能となるよう構成されている。ラックスライダ52が前後方向に移動することにより、M3の前方に配置されている検体搬送装置3から送出されるサンプルラックLは、ラックスライダ52により、ラック搬送路51aまたは51bに送出される。
【0042】
M3前方の検体搬送装置3を通過したサンプルラックLは、ラックスライダ52に収容される。このサンプルラックLをラック搬送路51aに振り分ける場合、ラックスライダ52は、サンプルラックLを収容した状態で後方に移動し、ラック搬送路51aの右側に位置づけられる。その後、ラックスライダ52は、サンプルラックLをラック搬送路51aに押し出す。こうして、サンプルラックLは、ラック搬送路51aに送出される。他方、サンプルラックLがラック搬送路51bに振り分けられる場合、ラックスライダ52は、後方に移動することなく、サンプルラックLをラック搬送路51bに押し出す。
【0043】
塗沫標本作製装置6では、血液検体の塗沫標本が作製される。すなわち、まず、塗沫標本作製装置6は、ラック搬送路51a上の所定の位置において、検体容器Tに収容されている血液検体を吸引する。続いて、吸引された血液検体が、スライドガラス上に滴下され、スライドガラス上で薄く引き延ばされ、乾燥させられる。しかる後、かかるスライドガラスに染色液が供給されることにより、スライドガラス上の血液が染色され、塗沫標本が作製される。
【0044】
なお、塗沫標本の作製の要否は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)による測定結果により判定される。3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)により塗沫標本の作製が必要と判定されると、対象となる検体を収容するサンプルラックLは、ラック搬送路51aに搬送され、塗沫標本作製装置6において塗沫標本の作製が行われる。本実施の形態では、かかる要否判定は搬送コントローラ8によって行われる。
【0045】
検体収容装置7は、複数のサンプルラックLが載置可能となるよう構成されている。検体収容装置7は、分析または塗沫標本作製が終了したサンプルラックLを、コンベア51のラック搬送路51aまたは51bから受け取り、収容する。なお、検体収容装置7は、ラック搬送路51aを通ったサンプルラックLと、ラック搬送路51bを通ったサンプルラックLとを区別して収容するよう構成されても良い。こうすると、ユーザは、塗沫標本が作製されたサンプルラックLと塗沫標本が作製されなかったサンプルラックLとを容易に分別することができる。
【0046】
搬送コントローラ8は、3つの検体搬送装置3と、検体搬送装置5の駆動を制御し、さらに、塗沫標本作製装置6を監視および制御する。また、搬送コントローラ8は、サンプルラックLが適切に搬送されるよう、検体投入装置2と、情報処理装置42と、検体収容装置7に対して通信可能に接続されている。搬送コントローラ8として、たとえば、別付のパーソナルコンピュータあるいはシステムに組み込まれたコンピュータが用いられ得る。
【0047】
図3は、検体搬送装置3を上側から見た場合の構成を示す平面図である。検体搬送装置3は、分析前ラック保持部310と、ラック搬送部320と、分析後ラック保持部330と、ラック搬送部340とを備えている。
【0048】
サンプルラックLに対する測定が行われる場合、サンプルラックLは、同図右下の破線で示す位置に送られる。しかる後、ラック押出し機構342が後方に移動して、サンプルラックLを、分析前ラック保持部310の前端に押し出す。この状態が、発光部と受光部とからなる光学式センサ312a、312bにより検出されると、ラック送込機構313a、313bがサンプルラックLの前端に係合した状態で後方に移動し、サンプルラックLが後方に送られる。こうして、サンプルラックLがラック搬送部320の右端位置まで送られると、スイッチ321がONとされる。これに応じて、ベルト322a、322bが駆動され、サンプルラックLが左方向に送られる。また、ラック送込機構312a、312bが、次のサンプルラックLの搬送位置まで戻される。
【0049】
その後、サンプルラックLは、検体容器センサ323の位置へと到達する。検体容器センサ323は接触式のセンサである。検体容器センサ323の真下位置をサンプルラックLに保持された検出対象の検体容器Tが通過すると、検体容器センサ323の接触片がかかる検出容器Tにより屈曲されて、検体容器Tの存在が検出される。
【0050】
検体容器センサ323による検体容器Tの検出位置から検体容器1つ分だけ左側の位置(以下、「検体供給位置」という)において、測定ユニット41のハンド部が、検体容器Tを把持してサンプルラックLから検体容器Tを取り出す。取り出された検体容器Tは、測定ユニット41において測定に用いられた後、再びサンプルラックLに戻される。検体容器TがサンプルラックLへ戻されるまでの間、サンプルラックLの搬送は待機される。
【0051】
こうして、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tの検体に対する測定が終了すると、サンプルラックLは、ベルト322a、322bによって、同図に破線で示すラック搬送部320の左端位置まで送られる。この状態が、発光部と受光部からなる光学式のセンサ324a、324bによって検出され、ベルト322a、322bの駆動が停止される。しかる後、サンプルラックLは、ラック押出し機構325により、分析後ラック保持部330の後端に送られる。
【0052】
その後、ラック送込機構332a、332bがサンプルラックLの後端に係合した状態で前方に移動し、サンプルラックLが前方に送られる。こうして、サンプルラックLはラック搬送部340の左端位置まで送られる。
【0053】
サンプルラックLに対する測定が行われない場合、サンプルラックLは、ベルト341により、ラック搬送部340の右端から左端へと直線的に送られる。
【0054】
以上のようにサンプルラックLの搬送を制御することで、検体搬送装置3には、検体供給位置を経由するサンプルラックLの搬送ラインである測定ラインL1と、検体供給位置を経由せずに、右側から搬入されたサンプルラックLをそのまま左側の装置へ搬出する搬送ラインであるスキップラインL2とが形成されることとなる。
【0055】
なお、センサ314a、314bは、発光部と受光部とからなる光学式のセンサであり、ラック搬送部320およびラック搬送路340の右端位置と、分析前ラック保持部310の搬送路311上に、サンプルラックLが存在するか否かを検出する。また、センサ333a、333bは、発光部と受光部とからなる光学式のセンサであり、ラック搬送部320およびラック搬送路340の左端位置と、分析後ラック保持部330の搬送路331上に、サンプルラックLが存在するか否かを検出する。
【0056】
図4は、測定ユニット41(M1、M2、M3)と、情報処理装置42と、塗沫標本作製装置6と、搬送コントローラ8の構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、測定ユニット41が一つのみ示されているが、他の測定ユニット41も同様に構成される。
【0057】
測定ユニット41は、通信部411と、バーコード読取部412と、試料調製部413と、圧力生成部414と、測定部415と、制御部416とを備える。
【0058】
通信部411は、情報処理装置42の通信部422と通信を行う。バーコード読取部412は、測定ユニット41内に取り出された検体容器TのバーコードラベルBL1を読み取る。
【0059】
試料調製部413は、検体容器Tから検体(血液)を吸引および吐出して測定試料を生成する。圧力生成部414は、空圧源を備え、試料調製部413と測定部415に、流体移送用の圧力を供給する。測定部415は、フローサイトメータ等、血球分析に用いる検出器を備え、検出された信号を処理して粒子データを生成する。制御部416は、CPU416aと記憶部416bを備える。記憶部416bは、ROM、RAM等の記憶手段を備える。記憶部416bは、測定部415により取得された粒子データや、バーコード読取部412にて読み取られたバーコードデータ等を記憶する。また、記憶部416bは、CPU416aの作業領域としても用いられる。CPU416aは、記憶部416bのROMに格納された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0060】
情報処理装置42は、制御部421と、通信部422とを備える。この他、情報処理装置42は、映像出力を行うためのインターフェースや、キーボード等からの入力を行うためのインターフェース、CDドライブまたはDVDドライブ等の読出し装置を備えるが、ここでは、その説明を省略する。
【0061】
制御部421は、CPU421aと、記憶部421bを備える。CPU421aは、記憶部421bに記憶されているコンピュータプログラムを実行する。記憶部421bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。通信部422は、3つの測定ユニット41と搬送コントローラ8との間で、データ通信を行う。
【0062】
CPU421aは、測定ユニット41から受信した測定結果(粒子データ)に基づいて血液分析を行い、分析結果を、表示部480(図1参照)に表示する。また、CPU421aは、分析結果を搬送コントローラ8に送信する。また、CPU421aは、検体搬送装置3に配された各種センサおよびスイッチの検出信号に基づいて、上記の如く、サンプルラックLの搬送を制御する。この他、CPU421aは、搬送コントローラ8から受信した制御指令に基づいて、M1、M2、M3の動作を制御する。かかる制御は、追って、図7を参照して説明する。
【0063】
塗沫標本作製装置6は、通信部61と、バーコード読取部62と、圧力生成部63と、標本作製部64と、制御部65とを備える。
【0064】
通信部61は、搬送コントローラ8の通信部82と通信を行う。バーコード読取部62は、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に搬送された検体容器TのバーコードラベルBL1を読み取る。
【0065】
圧力生成部63は、空圧源を備え、標本作製部64に、流体移送用の圧力を供給する。標本作製部64は、検体吸引位置に搬送された検体容器Tから検体(血液)を吸引および吐出して塗沫標本を作製する。制御部65は、CPU65aと記憶部65bを備える。記憶部65bは、ROM、RAM等の記憶手段を備える。記憶部65bは、バーコード読取部62にて読み取られたバーコードデータ等を記憶する。また、記憶部65bは、CPU65aの作業領域としても用いられる。CPU65aは、記憶部65bのROMに格納された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0066】
搬送コントローラ8は、制御部81と、通信部82とを備える。この他、搬送コントローラ8は、映像出力を行うためのインターフェースや、キーボード等からの入力を行うためのインターフェース、CDドライブまたはDVDドライブ等の読出し装置を備える。
【0067】
制御部81は、CPU81aと、記憶部81bを備える。CPU81aは、記憶部81bに記憶されているコンピュータプログラムを実行する。記憶部81bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。通信部82は、塗沫標本作製装置6と情報処理装置42との間で、データ通信を行う。
【0068】
CPU81aは、コンピュータプログラムに従って、3つの検体搬送装置3と検体搬送装置5を駆動制御する。また、CPU81aは、塗沫標本作製装置6の動作を制御する。この他、CPU81aは、情報処理装置42から受信した検体の分析結果に基づいて、M3による再検の要否、および、塗沫標本の作製の要否を判定し、判定結果に基づいて、M3および塗沫標本作製装置6の動作を制御する。かかる制御は、追って、図5(b)および図6を参照して説明する。
【0069】
図5(a)は、本実施の形態に係る測定ユニット41(M1、M2、M3)の休止状態への移行の処理フローを示す図である。なお、以下の処理は、情報処理装置42により監視制御されている。
【0070】
S1では、図4で示した制御部416により、測定ユニット41と、かかる測定ユニット41の前方に位置づけられている検体搬送装置3の動作状況が監視される。
【0071】
S2では、動作状況の監視において、所定の条件に合致してから、所定時間(15分)が経過したかが判断される。所定時間(15分)が経過したと判断されると(S2:YES)、S3に進む。所定時間(15分)が経過していないと判断されると(S2:NO)、S1に戻って動作状況の監視が継続される。
【0072】
ここで、所定の条件とは、センサ312a、312bと、センサ314a、314bと、検体容器センサ323によって、サンプルラックL(検体容器T)が検知されない状態とされる。なお、かかる所定の条件は、ユーザが利用形態に合わせて設定を変更することができる。例えば、所定の条件を、センサ312a、312bと、センサ314a、314bと、検体容器センサ323の一以上のセンサによって、サンプルラックL(検体容器T)が検知されない状態としても良い。また、所定時間についても、ここでは15分としたが、ユーザは利用形態に合わせて変更することができる。この変更は、情報処理装置42の入力部から行われる。
【0073】
S3では、測定ユニット41が休止状態となるよう移行処理が行われる。ここで、休止状態とは、図4に示した圧力生成部414内の空圧源に対する電力供給が停止される状態をいう。具体的には、休止状態への移行処理が開始されると、試料等が混ざり合わないように流路上の電磁弁の閉止等が行なわれ、その後、空圧源に対する電力供給が停止される。
【0074】
なお、塗沫標本作製装置6においても、上記測定ユニット41と同様、塗沫標本の作を所定時間行っていない等、所定の条件に合致すると、休止状態となるよう移行処理が行われる。塗沫標本作製装置6が休止状態に移行されると、上記測定ユニット41と同様、空圧源(図4:圧力生成部63)への電力供給が停止される。
【0075】
次に、図5(b)、および図6、7、8に示すフローチャートを参照して、搬送コントローラ8および情報処理装置42による処理について説明する。
【0076】
本実施の形態では、検体に対する再検が必要となった場合にM3が休止状態から解除され、また、塗沫標本の作製が必要となった場合に塗沫標本作製装置6が休止状態から解除される。再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定は、搬送コントローラ8によって行われる。
【0077】
図5(b)は、搬送コントローラ8による処理フローを示す図である。この処理フローに並行して、検体に対する測定処理(図6および図7)が行われ、測定結果が、随時、搬送コントローラ8に供給される。
【0078】
S101において、搬送コントローラ8は、検体投入装置2の検体送出ユニット21bから送出されたサンプルラックLを、M1またはM2前の検体搬送装置3に搬送する。これにより、サンプルラックLは、M1またはM2前の検体搬送装置3の分析前ラック保持部310の前方位置まで移動される。続いて、搬送コントローラ8は、ラック押出し機構342を駆動して、サンプルラックLを分析前ラック保持部310に押し出す。
【0079】
分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLは、上述したように、測定ラインL1に沿って搬送され、検体供給位置に位置づけられる。しかる後、M1またはM2における測定が行われる。
【0080】
S102において、搬送コントローラ8は、M1またはM2における測定結果に基づいて、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定する。かかる判定は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tに対して、順次行われる。
【0081】
図6は、S102の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【0082】
S201では、フラグAとフラグBに、それぞれ0がセットされる。
【0083】
S202では、M1またはM2で行われた測定結果が、情報処理装置42から供給されたかが判定される。ここで、測定結果は、測定対象の検体容器Tから読み取られたバーコードデータとともに、搬送コントローラ8に送信される。
【0084】
所定の検体容器Tについて、情報処理装置42から測定結果を受信すると(S202:YES)、搬送コントローラ8は、かかる測定結果に基づいて、当該検体容器Tの検体に対し、M3で再検を行う必要があるかを判定し(S203)、さらに、塗沫標本作製装置6において塗沫標本の作製を行う必要があるかを判定する(S204)。なお、再検の要否と塗沫標本作製の要否は、検体の測定結果が、検体提供者(患者)の年齢、性別等に基づく所定の閾値と比較されることにより判定される。検体提供者(患者)の年齢、性別等は、当該検体容器Tのバーコードデータに基づいて、ホストコンピュータから取得される。
【0085】
S203、S204の判定結果が、再検も塗沫標本の作製も必要ないというものであると(S205:NO、S211:NO)、搬送コントローラ8は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tの検体について、再検と塗沫標本作製の要否を判定したかを判定する(S215)。この判定において、要否判定を行っていない検体容器Tが残っていると(S215:NO)、搬送コントローラ8は、S202に戻って、次の検体容器Tについての測定結果の送信を待つ。
【0086】
なお、S215の判定において、搬送コントローラ8は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tについて測定が終了したかを、情報処理装置42に問い合わせる。この問い合わせに対し、情報処理装置42から、測定終了の応答があると、搬送コントローラ8は、S215における判定をYESとする。
【0087】
S203における判定結果が“再検要”であると(S205:YES)、搬送コントローラ8は、情報処理装置42に対し、M3での再検が必要であることを示す測定指示と再検の測定項目、および、再検対象の検体容器Tを特定するためのバーコード情報を送信する。続いて、搬送コントローラ8は、フラグAの値が1にセットされているかを判別する(S207)。フラグAの値が1であると(S207:YES)、S211に処理が進められ、フラグAの値が1でないと(S207:NO)、S208に処理が進められる。フラグAの値が1である場合には、既に、S209における到着予定時刻の送信処理が終了しているため、S208、S209の処理はスキップされる。
【0088】
S208では、再検対象となった検体を収容している検体容器Tが、サンプルラックLのどの保持位置に保持されているかにより、測定中の検体容器Tを保持するサンプルラックLがM3に到着する予定時刻が算出される。
【0089】
かかる到着予定時刻の算出は、たとえば、以下のように行われる。
【0090】
サンプルラックLの保持部は、図2に示したように10個形成されている。したがって、サンプルラックLに保持された検体容器Tが端から順に測定されると、これら検体容器Tのうち最初に再検が必要となった検体を収容する検体容器T(以下、この検体容器を、特に「検体容器Tf」という)が、どの保持部に保持されているかにより、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間が変化する。
【0091】
例えば、M3に最も近い保持部(保持位置1)に検体容器Tfが保持されている場合、残りの保持部に収容されている検体容器Tの検体が全て測定されるまで、サンプルラックLはM3に向けて搬送されない。この場合、検体容器Tfについて再検が必要と判断されてから、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は長くなる。一方、M3から最も遠い保持部(保持位置10)に検体容器Tfが保持されている場合には、当該サンプルラックLに測定されるべき検体容器Tが残っていないため、サンプルラックLは直ちにM3に向けて搬送される。このため、検体容器Tfについて再検が必要と判断されてから、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は短くなる。
【0092】
また、サンプルラックLが、M3に到着するまでに要する時間は、M3までの搬送経路上に存在する他のサンプルラックLの個数によっても変化する。すなわち、かかる搬送経路上に他のサンプルラックLが多く存在すると、これらサンプルラックLが搬送経路を塞ぐため、上記検体容器Tfを保持したサンプルラックLの搬送が滞る。この場合、当該サンプルラックLがM3に向けて搬送されてからM3に到着するまでの時間は長くなる。
【0093】
この他、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は、当該サンプルラックLが、M1、M2のうち何れから搬送されるかによっても変動する。すなわち、M1の方がM2よりもM3から遠いため、サンプルラックLがM1から搬送される場合の方が、M2から搬送される場合に比べ、M3に到着するまでの時間が長くなる。
【0094】
S208では、これらの変動要因が考慮されて、搬送コントローラ8により、検体容器Tfを保持するサンプルラックLがM3に到着するまでに要する所要時間が求められ、そのときの時刻とこの所要時間から、到着予定時刻が算出される。かかる到着予定時刻は、情報処理装置42に送信される(S209)。続いて、フラグAに1がセットされる(S210)。これにより、M3への到着予定時刻が既に送信されたことが記憶される。
【0095】
情報処理装置42から受信した測定結果に基づいて、S204において、塗沫標本の作製が必要であると判定されると(S211:YES)、S212に処理が進められる。塗沫標本の作製が必要と判定されないと(S211:NO)、S215に処理が進められる。
【0096】
S212において、搬送コントローラ8は、フラグBの値が1であるかを判定する。ここで、フラグBの値が1であると(S212:YES)、S215に処理が進められ、フラグBの値が1でないと(S212:NO)、S213に処理が進められる。フラグBの値が1である場合には、既に、S213における到着予定時刻の算出が終了しているため、S213の処理はスキップされる。
【0097】
S213では、上記S208と同様、塗沫標本の作製対象となった検体を収容している検体容器Tが、サンプルラックLのどの保持位置に保持されているかにより、測定中の検体容器Tを保持するサンプルラックLが塗沫標本作製装置6に到着する予定時刻が算出される。かかる到着予定時刻は、搬送コントローラ8により保持され、フラグBに1がセットされる(S214)。これにより、塗沫標本作製装置6への到着予定時刻が既に算出・保持されたことが記憶される。
【0098】
以上の処理に従って、測定が行われているサンプルラックLの検体全てについて、M3での再検と塗沫標本の作製の要否が判定されると(S215:YES)、図5(b)の要否判定処理(S102)が終了する。
【0099】
なお、上記の如く、S208およびS213における到着予定時刻の算出は、サンプルラックLに収容された複数の検体容器Tのうち、最初に再検が必要と判定され、あるいは、塗沫標本作製が必要と判定された検体を収容する検体容器Tが生じたときに行われる。
【0100】
図5(b)に戻り、以上の処理に従って、S102にて、M3での再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定処理が終了すると、搬送コントローラ8は、フラグAの状態を参照する(S103)。ここで、フラグAの値が1であると(S103:YES)、搬送対象のサンプルラックLに再検が必要な検体容器Tが保持されているため、搬送コントローラ8は、M1またはM2での測定が終了したサンプルラックLを、M3前の検体搬送装置3に搬送する(S104)。これに応じて、サンプルラックLが測定ラインL1に沿って搬送され、再検が必要な検体に対する測定がM3により行われ、その測定結果が、情報処理装置42から搬送コントローラに送信される(図7:S313)。フラグAの値が1でないと(S103:NO)、処理がS106に進められる。
【0101】
S105では、情報処理装置42から受信した測定結果に基づいて、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。なお、S105では、図6において、S201、S203、S205〜S210の処理ステップが省略された処理が行われる。
【0102】
次に、搬送コントローラ8は、フラグBの値を参照する(S106)。フラグBの値が1であると(S106:YES)、搬送コントローラ8は、M1〜M3による測定が終了したサンプルラックLを、塗沫標本作製装置6に搬送して塗沫標本の作製を行う(S107)。フラグBの値が1でないと(S106:NO)、処理がS108に進められる。すなわち、フラグBの値が1であるとき、搬送対象のサンプルラックLに保持された何れかの検体容器Tの中に、塗沫標本の作製が必要と判定された検体容器Tが含まれている。この場合、かかるサンプルラックLは、塗沫標本作製装置6に搬送され、対象の検体に対する塗沫標本の作製が行われる。なお、塗沫標本の作製処理については、追って、図8(b)を参照して説明する。
【0103】
S108において、搬送コントローラ8は、検体収容装置7にサンプルラックLを搬送する。このようにして、サンプルラックLについての処理が終了する。
【0104】
図7は、情報処理装置42による処理フローを示す図である。
【0105】
搬送コントローラ8による制御により、サンプルラックLは、M1またはM2の分析前ラック保持部310に押し出される。情報処理装置42は、M1またはM2に、分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLを検体供給位置に搬送させ(S301)、検体容器Tに収容されている検体を測定させる(S302)。M1またはM2は、検体容器Tから検出したデータを、情報処理装置42に送信する。
【0106】
情報処理装置42は、M1またはM2から検出データを受信すると(S303:YES)、検出データを解析し、測定結果を取得する(S304)。続いて、情報処理装置42は、得られた測定結果を、搬送コントローラ8に送信し、M3での再検の要否を、搬送コントローラ8に問い合わせる(S305)。M3での再検が必要である場合、図6のS206において、搬送コントローラ8から再検指示と再検の測定項目が送信される。
【0107】
しかる後、情報処理装置42は、M1またはM2において、サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了したかを判定する(S306)。サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了していると(S306:YES)、処理がS307に進められる。サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了していないと(S306:NO)、処理がS301に戻され、サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了するまでS301〜S305が繰り返される。
【0108】
情報処理装置42は、S305における問い合わせに対する応答に基づいて、当該サンプルラックL中に、M3での再検が必要と判定された検体が含まれているかを判定する(S307)。再検が必要な場合には、図5(b)のS104において、サンプルラックLが、M3の分析前ラック保持部310に搬送される。情報処理装置42は、こうして分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLを検体供給位置に向けて搬送させるよう、検体搬送装置3に指令を出す(S308)。M3での再検が必要でないと場合(S307:NO)、当該サンプルラックLに対する情報処理装置42の処理は終了する。
【0109】
S308に応じて再検が必要と判定された検体を収容している検体容器Tが、M3の検体供給位置に位置づけられると、情報処理装置42は、M3が休止状態であるかを判定する(S309)。なお、図5(b)のS102にて再検が必要と判定されたときにM3が休止状態にあれば、M3に対する休止状態の解除処理が行われる。休止状態の解除処理は、追って、図8(a)を参照して説明する。情報処理装置42は、休止状態になければ(S309:NO)、S310の処理を進め、休止状態にあれば(S309:YES)、M3の休止状態の解除が完了するのを待つ。なお、本実施形態では適切なタイミングで休止状態の解除が開始されるので、検体容器がM3の検体供給位置に搬送されたときには、M3は活動状態にある。従って、M3の休止状態の解除が完了するのを待つステップS309は省略可能であるが、このステップを実行することにより、万が一、休止状態の解除に想定以上の時間がかかってしまった場合に休止状態のM3に検体を取り込んでしまうことが防止される。
【0110】
S310おいて、情報処理装置42は、再検が必要と判定された検体の測定を進めるよう、M3に指示を出す。これに応じて、M3から検出データを受信すると(S311:YES)、情報処理装置42は、指定された測定項目について検出データを解析し、測定結果を取得する(S312)。その後、情報処理装置42は、得られた測定結果を、搬送コントローラ8に送信する(S313)。送信された測定結果は、図5(b)のS105において、塗沫標本の作製の要否判定に用いられる。
【0111】
その後、情報処理装置42は、サンプルラックLに保持されている再検が必要とされた全ての検体容器Tについて測定が終了したかを判定する(S314)。これら全ての検体容器Tについて測定が終了していると(S314:YES)、当該サンプルラックLに対する情報処理装置42の処理は終了する。再検が必要とされた全ての検体容器Tの測定が終了していないと(S314:NO)、処理がS308に戻される。この場合、再検が必要とされた全ての検体容器Tの測定が終了するまでS308〜S313が繰り返される。
【0112】
図8(a)は、M3の休止状態を解除するための処理フローチャートである。
【0113】
搬送コントローラ8により、M3での再検が必要と判定されると、図6のS208において、測定中のサンプルラックLがM3に到着する予定時刻が算出され、情報処理装置42に送信される。情報処理装置42は、到着予定時刻を受信すると(S401:YES)、M3が休止状態にあるかを判定する(S402)。M3が休止状態でないとき(S402:NO)、情報処理装置42は、M3に対して休止状態への移行を禁止する指示を送信し(S403)、処理フローが終了する。M3が休止状態であるとき(S402:YES)、現在時刻が、到着予定時刻から所定時間前になったかを判定する(S404)。M3に対して休止状態への移行を禁止するステップS403は省略可能であるが、このステップを実行することにより、M3を休止状態に移行させて間もなく休止状態の解除を開始させる必要が生じることを防止できる。従って、休止状態への移行及び解除を頻繁に繰り返すことによる電力の消費を抑えることができる。
【0114】
情報処理装置42は、現在時刻が到着予定時刻の所定時間前になったと判定すると(S404:YES)、M3に対して休止状態の解除を開始するよう指示し(S405)、処理を終了する。なお、S404での所定時間は、M3が休止状態の解除を開始してから完了するまでの時間に基づいて設定される。
【0115】
図8(b)は、図5(b)のS107における塗沫標本作製処理の内容を示すフローチャートである。かかる処理は、搬送コントローラ8により行われる。
【0116】
図5(b)のS102、S105に基づき、サンプルラックLに塗沫標本の作製が必要と判定された検体が含まれていると、搬送コントローラ8は、塗沫標本の作製が必要と判定された検体を収容している検体容器Tを、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に搬送する(S221)。
【0117】
塗沫標本の作製が必要と判定された検体を収容している検体容器Tが、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に位置づけられると、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6が休止状態であるかを判定する(S222)。
【0118】
なお、図5(b)のS102またはS105にて塗沫標本の作製が必要と判定されたときに塗沫標本作製装置6が休止状態にあれば、塗沫標本作製装置6に対する休止状態の解除処理が行われる。かかる休止状態の解除処理は、図8(a)と同様の処理により行われる。すなわち、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6が休止状態にあるかを判定し、休止状態になければ、塗沫標本作製装置6が休止状態へ移行するのを禁止し、塗沫標本作製装置6が休止状態であれば、現在時刻が、図5(b)のS102またはS105で算出した到着予定時刻から所定時間前になったかを判定する。そして、現在時刻が到着予定時刻の所定時間前になると、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6の休止状態を解除する。
【0119】
塗沫標本作製装置6が休止状態でないと(S222:NO)、処理がS223に進められ、休止状態であると(S222:YES)、休止状態の解除が完了するまで処理が待機される。なお、ステップS222は、上記のステップS309と同様に省略可能であるが、このステップを実行することにより、万が一、休止状態の解除に想定以上の時間がかかってしまった場合に休止状態の塗沫標本作製装置6に検体を取り込んでしまうことが防止される。
【0120】
S223において、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6に、塗沫標本の作製が必要と判定された検体について塗沫標本を作製させる。そして、塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tに対する処理が終了したかを判定し(S224)、これらすべての検体容器Tに対する処理が終了していると(S224:YES)、塗沫標本の作製を終了する。塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tについて処理が終了していないと(S224:NO)、処理がS221に戻される。この場合、サンプルラックLに保持されている塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tに対し塗沫標本の作製が終了するまでS221〜S224が繰り返される。
【0121】
以上、本実施形態によれば、M3および塗沫標本作製装置6が、所定時間使用されないと、M3および塗沫標本作製装置6が休止状態に移行される。このため、M3および塗沫標本作製装置6における消費電力が抑制され得る。また、M1またはM2の測定結果により、M3での再検が必要になると、M3の休止状態が解除され、M1ないしM3の測定結果により、塗沫標本の作製が必要になると、塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。このため、M3および塗沫標本作製装置6が休止状態となっている場合でも、M3での再検および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製が、滞りなく行われ得る。
【0122】
さらに、本実施形態によれば、再検または塗沫標本の作製が必要と判定すると、サンプルラックLがM3または塗沫標本作製装置6に到着する予定時刻が算出され、この予定時刻に基づいて、M3および塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。このため、M3および塗沫標本作製装置6の消費電力をより効果的に抑制することができ、且つ、再検または塗沫標本の作製を円滑に行うことができる。
【0123】
2.第2の実施形態
上記第1の実施形態では、搬送コントローラ8により再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定が行われたが、本実施の形態では、情報処理装置42においてこれら要否の判定が行われる。
【0124】
図9は、情報処理装置42による処理を示すフローチャートである。なお、上記第1の実施形態で示したS305とS313(図7参照)は、本実施の形態では、それぞれ、S331とS333に置き換えられている。また、S332とS334が追加されている。その他の処理フローは、上記第1の実施形態と同様である。
【0125】
S331において、情報処理装置42は、M1またはM2の測定結果に基づき、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定し、S332において、再検および塗沫標本の作製の要否の判定結果と、対応する検体容器Tのバーコードデータを搬送コントローラ8に送信する。また、S333において、情報処理装置42は、M3の測定結果に基づき、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定し、S334において、その判定結果と、対応する検体容器Tのバーコードデータを搬送コントローラ8に送信する。
【0126】
なお、上記第1の実施形態では、S307の判定が、搬送コントローラ8から受信した指令に基づいて行われたが、本実施形態では、S331にて情報処理装置42が自ら判定を行った結果に基づいて、S307の判定が行われる。
【0127】
図10(a)は、本実施形態に係る搬送コントローラ8の処理を示すフローチャートである。本実施形態では、上記第1の実施形態(図5(b)参照)で示したS102、S105が省略され、S103、S106が、それぞれ、S111、S112に変更されている。その他の処理フローは上記第1の実施形態と同様である。
【0128】
S111において、搬送コントローラ8は、図9のS332にて情報処理装置42から送信された判定結果に基づき、M3での再検が必要かを判定する。また、S112において、搬送コントローラ8は、図9のS332またはS334にて情報処理装置42から送信された判定結果に基づき、M3での再検が必要かを判定する。
【0129】
図10(b)は、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除するための処理フローチャートである。M3に対する解除処理は情報処理装置により行われ、塗沫標本作製装置6に対する解除処理は搬送コントローラ8により行われる。
【0130】
上記第1の実施形態で示した休止状態の解除処理(図8(a)参照)では、現在時刻がサンプルラックLの到着予定時刻から所定時間前となったときに、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除されたが、本実施の形態では、サンプルラックLに保持された検体容器Tのうち、最初に、再検または塗沫標本の作製が必要とされた検体容器Tfが生じたことに応じて、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除される。すなわち、検体容器Tfが生じると(S411)、M3または塗沫標本作製装置6が休止状態であるかが判定され(S412)、休止状態でなければ(S412:NO)、休止状態への移行が禁止され(S414)、休止状態であれば(S412:YES)、休止状態が解除される(S413)。
【0131】
こうすると、上記第1の実施形態と同様、M3または塗沫標本作製装置6が休止状態であるとき、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態が解除され得る。
【0132】
なお、ここでは、S413にて直ちに休止状態を解除するようにしたが、これに替えて、再検または塗沫標本の作製が必要と判定されてから一定時間が経過した後に、休止状態が解除されても良い。この場合、一定時間は、サンプルラックLがM3または塗沫標本作製装置6に到着する時間を想定して、固定の時間が設定される。また、この一定時間を、サンプルラックLが、M1、M2の何れからM3に搬送されるか、あるいは、M1、M2、M3の何れから塗沫標本作製装置6に搬送されるかに応じて変更しても良い。
【0133】
以上、本実施形態によれば、情報処理装置42により、M3での再検の要否、および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。これにより、M3および塗沫標本作製装置6の消費電力が抑制されながら、M3での再検および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製が、滞りなく行われ得る。
【0134】
3.第3の実施形態
第3の実施形態に係る検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0135】
図11は、検体処理システム1を示す図である。本実施形態では、ホストコンピュータ9により、M3での再検の要否、および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。
【0136】
ホストコンピュータ9は、図4に示した情報処理装置42と同様の構成を有する。ホストコンピュータ9は、通信ネットワークに接続されており、情報処理装置42、検体投入装置2、検体搬送装置3、検体収容装置7、搬送コントローラ8と通信することが可能となっている。
【0137】
また、ホストコンピュータ9のハードディスクには、測定オーダが格納されている。ホストコンピュータ9は、他の装置から検体IDを含む測定オーダの要求データを受信したときには、この検体IDに対応する測定データをハードディスクから読み出し、要求元の装置へ送信する。
【0138】
図12は、情報処理装置42による処理フローを示す図である。なお、上記第2の実施形態で示したS331とS333(図9参照)は、本実施の形態では、それぞれ、S341とS342に置き換えられている。その他の処理フローは上記第1の実施形態と同様である。
【0139】
S341おいて、情報処理装置42は、M1またはM2の測定結果をホストコンピュータ9に送信し、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を問い合わせる。これに応じてホストコンピュータ9から判定結果を受信すると、情報処理装置42は、このうち、塗沫標本の作製の要否の判定結果を搬送コントローラ8に送信する(S332)。また、S342において、情報処理装置42は、M3の測定結果をホストコンピュータ9に送信し、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を問い合わせる。これに応じてホストコンピュータ9から判定結果を受信すると、情報処理装置42は、この判定結果を搬送コントローラ8に送信する(S334)。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0141】
たとえば、上記3つの実施の形態では、測定対象として血液を例示したが、尿についても測定対象とされ得る。すなわち、尿を検査する検体処理装置にも本発明を適用することができ、さらに、他の臨床検体を検査する臨床検体検査装置に本発明を適用することもできる。
【0142】
なお、上記3つの実施形態では、たとえば、サンプルラックLに保持された10本の検体容器Tのうち、たとえば、3番目の検体容器Tの検体について最初に“塗沫標本の作製のみ”が必要と判定され、その後、5番目の検体容器Tの検体について最初に“再検”が必要と判定される場合が起こり得る。この場合、3番目の検体容器Tについて、サンプルラックLが、M3の測定ラインL1を通らずに、スキップラインL2を通って塗沫標本作製装置6へと搬送されると想定して到着予定時刻が算出されると、実際には、サンプルラックLがM3の測定ラインL1を通るため、算定された到着予定時刻が、M3での再検が行われる場合の到着予定時刻よりも早くなる。したがって、この場合には、5番目の検体容器Tの検体について再検が必要と判定されたタイミングで、サンプルラックLがM3の測定ラインL1を通るとして、塗沫標本作製装置6に対する到着予定時刻を修正するようにしても良い。
【0143】
また、上記第2の実施形態および第3の実施形態では、サンプルラックLが到着する予定時刻が算出されなかったが、上記第2の実施形態および第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、M1ないしM3の測定結果を情報処理装置42から搬送コントローラ8に送信し、搬送コントローラ8において、サンプルラックLの到着予定時刻を算出するようにしても良い。また、かかる到着予定時刻の算出は、情報処理装置42において行われるようにしても良い。
【0144】
さらに、図13に示すように、M3の前の検体搬送装置3に切欠3aを設け、M3にて再検を行った検体についてさらに塗沫標本の作製を行う場合には、ラックスライダ52を同図の位置に位置づけて、この切欠3aを介して、サンプルラックLをラック搬送路51aへと送るようにしても良い。
【0145】
また、上記3つの実施の形態において、休止状態は、空圧源に対する電力供給が停止される状態とされたが、他の構成部に対する電力供給を停止又は低減されるようにしても良い。他の構成部としては、検体および試薬等を加温する加温機構、検体および試薬等を冷却する冷却機構などが挙げられる。例えば、加温機構を用いる場合、休止状態ではヒータが加温時の温度よりも低い所定の温度となるように電力供給を行い、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、ヒータが加温時の温度となるように電力の供給量を増加させてもよい。これにより、電力消費を抑制しつつ、ヒータの加温待ちによる検体処理の中断を回避することができる。なお、ヒータとしては、ラバーヒータを用いることができる。ラバーヒータは電力消費が大きいため、本発明による効果が特に大きい。
【0146】
さらに、上記3つの実施の形態において、休止状態は、空圧源に対する電力供給が停止される状態とされたが、測定ユニット又は塗抹標本作製装置全体に対する電力供給が停止される状態、すなわち、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフである状態とされても良い。測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源オフ状態への移行処理は、上記3つの実施の形態と同様に、動作状況を監視し、所定の条件に合致してから所定時間が経過したときに自動的に実行しても良いし、検体処理システムの使用者による電源スイッチの操作に応じて実行しても良い。なお、使用者による休止状態への移行は、電源スイッチに代えて、情報処理装置に入力された電源オフの指示に応じて実行することも可能である。
【0147】
休止状態が、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフ状態である場合、休止状態の解除は、測定ユニット又は塗抹標本作製装置を起動し、測定又は塗抹標本の作製が可能な状態(スタンバイ状態)に移行することによって実行される。
【0148】
休止状態が、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフ状態である場合には、空圧源に対する電力供給のみが停止される場合のように、部分的に電力供給が停止される場合と比較して、消費電力の抑制効果が高い。
【0149】
また、上記3つの実施の形態では、測定ユニット又は塗抹標本作製装置が休止状態に移行しているが、測定ユニットM3の前の検体搬送装置又は塗抹標本作製装置の前の検体搬送装置を休止状態に移行させてもよい。検体搬送装置の休止状態への移行および休止状態の解除は、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の場合と同様に、所定の条件に合致してから所定時間が経過すると休止状態へ移行させ、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると休止状態を解除させれば良い。
【0150】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 … 検体処理システム
3 … 検体搬送装置
5 … 検体搬送装置
6 … 塗沫標本作製装置
8 … 搬送コントローラ
41 … 測定ユニット
42 … 情報処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体に対し、検査・分析等の所定の処理を行う検体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の臨床検体を処理するための検体処理装置が、病院等の医療機関において用いられている。かかる検体処理装置には、検体の処理能力を向上させるため、複数の分析モジュールと、それら複数の分析モジュールに検体を搬送する搬送装置から構成されたものもある。また、かかる検体処理装置には、一の分析モジュールでの分析(初検)の結果、同じ検体について再検査が必要と判断された場合には、同装置内の他の分析モジュールで自動的に再検査を実行可能とするよう構成されたものもある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、この種の検体処理装置には、消費電力を抑制するために、装置を非活動状態に移行させる機能を有するものもある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39554号公報
【特許文献2】特開2003−121449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような、再検査を実行可能に構成された検体処理装置では、再検査に用いられる分析モジュールの使用頻度が、初検を実行する他の分析モジュールと比較して、少なくなる場合が多い。特に、検体数が少ない時間帯には、再検査に用いられる分析モジュールが使用されない時間も長くなる。しかしながら、従来の検体処理装置では、このような状況においても、再検査に用いられる分析モジュールを即座に再検査が開始できる状態にしていた。そのため、消費電力が大きくなるという問題が生じていた。
【0006】
一方、特許文献2には、検体分析システム全体の消費電力を抑制する技術が開示されているものの、再検査に用いられる分析モジュールによる消費電力を抑制することについては開示がない。
【0007】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、再検査等の追加処理を実行可能で、且つ、消費電力を抑制することが可能な検体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る検体処理装置は、検体容器に収容された検体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に沿って配置され、搬送された検体を測定する測定モジュールと、前記測定モジュールによる測定結果に基づく、検体に対する追加処理の要否に関する判定結果を取得する判定結果取得手段と、前記搬送装置に沿って配置され、追加処理が必要と判定された検体を処理する処理モジュールと、前記処理モジュールを休止状態に移行させる休止移行手段と、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュールを休止状態から解除する休止解除手段とを備える。
【0009】
本態様に係る検体処理装置によれば、処理モジュールにおいて追加処理が必要と判定された場合に、処理モジュールが休止状態から解除されるため、処理モジュールの消費電力が抑制され、且つ、処理モジュールによる処理が滞りなく実行され得る。
【0010】
本態様に係る検体処理装置において、前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより前記判定結果を取得するよう構成され得る。
【0011】
または、本態様に係る検体処理装置において、前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより判定結果を取得するコンピュータに測定結果を送信し、該コンピュータから判定結果を取得するよう構成され得る。
【0012】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、一時的に休止解除を待機したのち、前記処理モジュールを休止状態から解除するよう構成され得る。こうすると、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得された後、直ちに処理モジュールが休止状態から解除される場合に比べ、処理モジュールの消費電力が抑制され得る。
【0013】
さらに、本態様に係る検体処理装置において、追加処理が必要と判定された検体の処理の進捗状況に基づいて、待機すべき時間に関する情報を生成する生成手段をさらに備えるよう構成され得る。こうすると、休止状態の解除タイミングが適正化され得る。
【0014】
また、本態様に係る検体処理装置は、前記処理モジュールの動作状況を監視する動作状況監視手段をさらに備える。ここで、前記休止移行手段は、前記動作状況監視手段により、前記処理モジュールが所定期間動作していないことが検知されると、前記処理モジュールを休止状態に移行させるよう構成され得る。こうすると、処理モジュールが所定期間動作していない場合に、処理モジュールが休止状態に移行されるため、処理モジュールの無駄な電力消費が抑制され得る。
【0015】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記処理モジュールは、検体を吸引して処理するように構成されているとともに、本態様に係る検体処理装置は、吸引した検体を移送するための圧力を生成する圧力生成部を備える。ここで、前記休止移行手段は、前記圧力生成部への電力の供給を停止する設定処理を含むよう構成され得る。こうすると、消費電力が効果的に抑制され得る。
【0016】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記休止移行手段は、前記処理モジュールの電源をオフにするよう構成され得る。こうすると、さらに消費電力が抑制され得る。
【0017】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記搬送装置は、前記処理モジュールに検体容器を供給する処理モジュール用搬送装置を備え、前記休止移行手段は、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態に移行させ、前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態から解除するよう構成され得る。この構成によれば、処理モジュール用搬送装置も休止状態に移行されるため、消費電力がより効果的に抑制され得る。
【0018】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記処理モジュールは、検体に対して所定の測定処理を行うものとされ得る。この場合、前記測定モジュールおよび前記処理モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールとされ得る。また、前記判定結果取得手段により取得される判定結果は、前記処理モジュールでの測定が必要な測定項目を含むものとされ得る。
【0019】
また、本態様に係る検体処理装置において、前記測定モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールとされ、前記処理モジュールは、検体としての血液の塗沫標本を作製する塗沫標本作製モジュールとされ得る。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、再検査等の追加処理を実行可能で、且つ、消費電力を抑制することが可能な検体処理装置を提供することができる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【図2】検体容器とサンプルラックの外観を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る検体搬送装置の構成を示す平面図である。
【図4】第1の実施形態に係る測定ユニット、情報処理装置、塗沫標本作製装置および搬送コントローラの構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る休止状態への移行処理と、搬送コントローラの処理を示すフローチャートである。
【図6】図5(b)のS102における処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る休止状態の解除処理を示すフローチャートおよび図5(b)のS107における処理の内容を示すフローチャーである。
【図9】第2の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る搬送コントローラの処理を示すフローチャートおよび休止状態の解除処理を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【図12】第3の実施形態に係る情報処理装置の処理を示すフローチャートである。
【図13】実施形態の変更例に係る検体処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための検体処理システムに本発明を適用したものである。本実施の形態に係る検体処理システムは、3つの測定ユニットと、1つの塗沫標本作製装置を備えている。3つの測定ユニットのうち、2つによって血液分析が並行して行われ、その分析結果に基づき再検が必要な場合に、残り一つの測定ユニットによって測定が行われる。また、これら3つの測定ユニットによる分析結果に基づき塗沫標本の作製が必要である場合に、塗沫標本作製装置により塗沫標本が作製される。
【0024】
1.第1の実施形態
以下、第1の実施形態に係る検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、検体処理システム1を上側から見た場合の構成を示す平面図である。本実施の形態に係る検体処理システム1は、検体投入装置2と、3つの検体搬送装置3と、血球分析装置4と、検体搬送装置5と、塗沫標本作製装置6と、検体収容装置7と、搬送コントローラ8から構成されている。
【0026】
検体投入装置2は、2つの検体送出ユニット21a、21bと、これら2つの検体送出ユニット21a、21bの間に配置されたバーコード読取ユニット22を備えている。検体送出ユニット21a、21bは、複数のサンプルラックが載置可能となるよう構成されている。
【0027】
図2(a)、(b)は、それぞれ、検体容器の外観を示す斜視図と、サンプルラックの外観を示す斜視図である。
【0028】
同図(a)を参照して、検体容器Tは、透光性を有するガラスまたは合成樹脂により構成された管状容器であり、上端が開口している。内部には患者から採取された血液検体が収容され、上端の開口は蓋部Cにより密封されている。検体容器Tの側面には、バーコードラベルBL1が貼付されている。バーコードラベルBL1には、検体IDを示すバーコードが印刷されている。
【0029】
同図(b)を参照して、サンプルラックLには、10本の検体容器Tを垂直状態(立位状態)で並べて保持することが可能となるよう10個の保持部が形成されている。サンプルラックLの側面には、バーコードラベルBL2が貼付されている。バーコードラベルBL2には、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
【0030】
図1に戻って、検体送出ユニット21aは、載置されたサンプルラックLを、順にバーコード読取ユニット22に送出する。バーコード読取ユニット22は、検体送出ユニット21a側から送出されたサンプルラックLに貼付されたバーコードラベルBL2のバーコードから、ラックIDを読み取る。また、バーコード読取ユニット22は、サンプルラックLに収容された検体容器Tに貼付されたバーコードラベルBL1のバーコードから、検体IDを読み取る。さらに、バーコード読取ユニット22は、読み取りが終了したサンプルラックLを検体送出ユニット21bへ送出する。検体送出ユニット21bは、バーコード読取ユニット22側から送出されたサンプルラックLを、順に検体搬送装置3に送出する。
【0031】
3つの検体搬送装置3は、図示の如く、それぞれ、3つの測定ユニット41の前方に配置されている。隣り合う2つの検体搬送装置3は互いに接続されており、右側の検体搬送装置3の右端は、検体投入装置2の検体送出ユニット21aに接続されており、左側の検体搬送装置3の左端は、検体搬送装置5に接続されている。各検体搬送装置3の前方両端には、図示の如く、サンプルラックLの受渡しが可能となるよう切欠が形成されている。
【0032】
これら3つの検体搬送装置3は、それぞれに対応する測定ユニット41において検体の測定が行われる場合と行われない場合とに分けて、サンプルラックLを2通りの搬送経路で搬送することができる。すなわち、図示の如く、測定ユニット41で検体の測定が行われる場合は、後方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLが搬送され、測定ユニット41で検体の測定が行われない場合は、前方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLが搬送される。
【0033】
なお、前方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLを搬送する場合の検体搬送装置3の制御は、搬送コントローラ8が行う。また、後方の一点鎖線の矢印に沿ってサンプルラックLを搬送する場合の検体搬送装置3の制御は、情報処理装置42が行う。
【0034】
血球分析装置4は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、3つの測定ユニット41と、情報処理装置42を備えている。以下、3つの測定ユニット41を、便宜上、右から順に、M1、M2、M3と称することとする。
【0035】
M1、M2、M3は、検体容器Tに収容されている血液検体を測定する。すなわち、M1、M2、M3は、それぞれ前方に配置された検体搬送装置3の搬送経路上の所定の位置において、サンプルラックLから検体容器Tを抜き出す。かかる検体容器Tに収容されている血液検体は、M1、M2、M3内で測定される。M1、M2、M3内での測定が完了すると、かかる検体容器Tは再び元のサンプルラックLの保持部に戻される。
【0036】
M1とM2には、検体投入装置2の検体送出ユニット21bから順に送出されるサンプルラックLが交互に搬送される。これにより、M1とM2によって、2つのサンプルラックLに対する測定処理を並行して行うことができ、全体の測定処理が向上される。
【0037】
M3は、再検に用いられる測定ユニットである。M3での再検の要否は、M1またはM2による測定結果により判定される。M1またはM2により再検が必要と判定されると、再検対象の検体を収容するサンプルラックLは、M3において再検が行われるよう搬送される。本実施の形態では、かかる要否判定は搬送コントローラ8によって行われる。
【0038】
情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)と、搬送コントローラ8と通信可能に接続されている。情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)の動作を制御する。また、情報処理装置42は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)で行われた測定結果に基づく分析結果を、表示部480に表示する。情報処理装置42として、たとえば、別付のパーソナルコンピュータあるいはシステムに組み込まれたコンピュータが用いられ得る。
【0039】
検体搬送装置5は、塗沫標本作製装置6の前方に配置されており、コンベア51と、ラックスライダ52を備えている。検体搬送装置5は、制御部51cを備えており、搬送コントローラ8からの指令に従って、コンベア51とラックスライダ52の動作機構を制御する。
【0040】
コンベア51には、左右方向に延びた2つのラック搬送路51a、51bが設けられている。塗沫標本作製装置6に近接するラック搬送路51aは、塗沫標本作製装置6で塗沫標本の作製が行われる検体を収容するサンプルラックLが搬送されるための測定ラインである。他方、塗沫標本作製装置6から離れたラック搬送路51bは、塗沫標本作製装置6で塗沫標本の作製が行われる検体を収容していないサンプルラックLが搬送されるためのスキップラインである。
【0041】
ラックスライダ52は、コンベア51の右端に配置されており、前後方向に移動可能となるよう構成されている。ラックスライダ52が前後方向に移動することにより、M3の前方に配置されている検体搬送装置3から送出されるサンプルラックLは、ラックスライダ52により、ラック搬送路51aまたは51bに送出される。
【0042】
M3前方の検体搬送装置3を通過したサンプルラックLは、ラックスライダ52に収容される。このサンプルラックLをラック搬送路51aに振り分ける場合、ラックスライダ52は、サンプルラックLを収容した状態で後方に移動し、ラック搬送路51aの右側に位置づけられる。その後、ラックスライダ52は、サンプルラックLをラック搬送路51aに押し出す。こうして、サンプルラックLは、ラック搬送路51aに送出される。他方、サンプルラックLがラック搬送路51bに振り分けられる場合、ラックスライダ52は、後方に移動することなく、サンプルラックLをラック搬送路51bに押し出す。
【0043】
塗沫標本作製装置6では、血液検体の塗沫標本が作製される。すなわち、まず、塗沫標本作製装置6は、ラック搬送路51a上の所定の位置において、検体容器Tに収容されている血液検体を吸引する。続いて、吸引された血液検体が、スライドガラス上に滴下され、スライドガラス上で薄く引き延ばされ、乾燥させられる。しかる後、かかるスライドガラスに染色液が供給されることにより、スライドガラス上の血液が染色され、塗沫標本が作製される。
【0044】
なお、塗沫標本の作製の要否は、3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)による測定結果により判定される。3つの測定ユニット41(M1、M2、M3)により塗沫標本の作製が必要と判定されると、対象となる検体を収容するサンプルラックLは、ラック搬送路51aに搬送され、塗沫標本作製装置6において塗沫標本の作製が行われる。本実施の形態では、かかる要否判定は搬送コントローラ8によって行われる。
【0045】
検体収容装置7は、複数のサンプルラックLが載置可能となるよう構成されている。検体収容装置7は、分析または塗沫標本作製が終了したサンプルラックLを、コンベア51のラック搬送路51aまたは51bから受け取り、収容する。なお、検体収容装置7は、ラック搬送路51aを通ったサンプルラックLと、ラック搬送路51bを通ったサンプルラックLとを区別して収容するよう構成されても良い。こうすると、ユーザは、塗沫標本が作製されたサンプルラックLと塗沫標本が作製されなかったサンプルラックLとを容易に分別することができる。
【0046】
搬送コントローラ8は、3つの検体搬送装置3と、検体搬送装置5の駆動を制御し、さらに、塗沫標本作製装置6を監視および制御する。また、搬送コントローラ8は、サンプルラックLが適切に搬送されるよう、検体投入装置2と、情報処理装置42と、検体収容装置7に対して通信可能に接続されている。搬送コントローラ8として、たとえば、別付のパーソナルコンピュータあるいはシステムに組み込まれたコンピュータが用いられ得る。
【0047】
図3は、検体搬送装置3を上側から見た場合の構成を示す平面図である。検体搬送装置3は、分析前ラック保持部310と、ラック搬送部320と、分析後ラック保持部330と、ラック搬送部340とを備えている。
【0048】
サンプルラックLに対する測定が行われる場合、サンプルラックLは、同図右下の破線で示す位置に送られる。しかる後、ラック押出し機構342が後方に移動して、サンプルラックLを、分析前ラック保持部310の前端に押し出す。この状態が、発光部と受光部とからなる光学式センサ312a、312bにより検出されると、ラック送込機構313a、313bがサンプルラックLの前端に係合した状態で後方に移動し、サンプルラックLが後方に送られる。こうして、サンプルラックLがラック搬送部320の右端位置まで送られると、スイッチ321がONとされる。これに応じて、ベルト322a、322bが駆動され、サンプルラックLが左方向に送られる。また、ラック送込機構312a、312bが、次のサンプルラックLの搬送位置まで戻される。
【0049】
その後、サンプルラックLは、検体容器センサ323の位置へと到達する。検体容器センサ323は接触式のセンサである。検体容器センサ323の真下位置をサンプルラックLに保持された検出対象の検体容器Tが通過すると、検体容器センサ323の接触片がかかる検出容器Tにより屈曲されて、検体容器Tの存在が検出される。
【0050】
検体容器センサ323による検体容器Tの検出位置から検体容器1つ分だけ左側の位置(以下、「検体供給位置」という)において、測定ユニット41のハンド部が、検体容器Tを把持してサンプルラックLから検体容器Tを取り出す。取り出された検体容器Tは、測定ユニット41において測定に用いられた後、再びサンプルラックLに戻される。検体容器TがサンプルラックLへ戻されるまでの間、サンプルラックLの搬送は待機される。
【0051】
こうして、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tの検体に対する測定が終了すると、サンプルラックLは、ベルト322a、322bによって、同図に破線で示すラック搬送部320の左端位置まで送られる。この状態が、発光部と受光部からなる光学式のセンサ324a、324bによって検出され、ベルト322a、322bの駆動が停止される。しかる後、サンプルラックLは、ラック押出し機構325により、分析後ラック保持部330の後端に送られる。
【0052】
その後、ラック送込機構332a、332bがサンプルラックLの後端に係合した状態で前方に移動し、サンプルラックLが前方に送られる。こうして、サンプルラックLはラック搬送部340の左端位置まで送られる。
【0053】
サンプルラックLに対する測定が行われない場合、サンプルラックLは、ベルト341により、ラック搬送部340の右端から左端へと直線的に送られる。
【0054】
以上のようにサンプルラックLの搬送を制御することで、検体搬送装置3には、検体供給位置を経由するサンプルラックLの搬送ラインである測定ラインL1と、検体供給位置を経由せずに、右側から搬入されたサンプルラックLをそのまま左側の装置へ搬出する搬送ラインであるスキップラインL2とが形成されることとなる。
【0055】
なお、センサ314a、314bは、発光部と受光部とからなる光学式のセンサであり、ラック搬送部320およびラック搬送路340の右端位置と、分析前ラック保持部310の搬送路311上に、サンプルラックLが存在するか否かを検出する。また、センサ333a、333bは、発光部と受光部とからなる光学式のセンサであり、ラック搬送部320およびラック搬送路340の左端位置と、分析後ラック保持部330の搬送路331上に、サンプルラックLが存在するか否かを検出する。
【0056】
図4は、測定ユニット41(M1、M2、M3)と、情報処理装置42と、塗沫標本作製装置6と、搬送コントローラ8の構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、測定ユニット41が一つのみ示されているが、他の測定ユニット41も同様に構成される。
【0057】
測定ユニット41は、通信部411と、バーコード読取部412と、試料調製部413と、圧力生成部414と、測定部415と、制御部416とを備える。
【0058】
通信部411は、情報処理装置42の通信部422と通信を行う。バーコード読取部412は、測定ユニット41内に取り出された検体容器TのバーコードラベルBL1を読み取る。
【0059】
試料調製部413は、検体容器Tから検体(血液)を吸引および吐出して測定試料を生成する。圧力生成部414は、空圧源を備え、試料調製部413と測定部415に、流体移送用の圧力を供給する。測定部415は、フローサイトメータ等、血球分析に用いる検出器を備え、検出された信号を処理して粒子データを生成する。制御部416は、CPU416aと記憶部416bを備える。記憶部416bは、ROM、RAM等の記憶手段を備える。記憶部416bは、測定部415により取得された粒子データや、バーコード読取部412にて読み取られたバーコードデータ等を記憶する。また、記憶部416bは、CPU416aの作業領域としても用いられる。CPU416aは、記憶部416bのROMに格納された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0060】
情報処理装置42は、制御部421と、通信部422とを備える。この他、情報処理装置42は、映像出力を行うためのインターフェースや、キーボード等からの入力を行うためのインターフェース、CDドライブまたはDVDドライブ等の読出し装置を備えるが、ここでは、その説明を省略する。
【0061】
制御部421は、CPU421aと、記憶部421bを備える。CPU421aは、記憶部421bに記憶されているコンピュータプログラムを実行する。記憶部421bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。通信部422は、3つの測定ユニット41と搬送コントローラ8との間で、データ通信を行う。
【0062】
CPU421aは、測定ユニット41から受信した測定結果(粒子データ)に基づいて血液分析を行い、分析結果を、表示部480(図1参照)に表示する。また、CPU421aは、分析結果を搬送コントローラ8に送信する。また、CPU421aは、検体搬送装置3に配された各種センサおよびスイッチの検出信号に基づいて、上記の如く、サンプルラックLの搬送を制御する。この他、CPU421aは、搬送コントローラ8から受信した制御指令に基づいて、M1、M2、M3の動作を制御する。かかる制御は、追って、図7を参照して説明する。
【0063】
塗沫標本作製装置6は、通信部61と、バーコード読取部62と、圧力生成部63と、標本作製部64と、制御部65とを備える。
【0064】
通信部61は、搬送コントローラ8の通信部82と通信を行う。バーコード読取部62は、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に搬送された検体容器TのバーコードラベルBL1を読み取る。
【0065】
圧力生成部63は、空圧源を備え、標本作製部64に、流体移送用の圧力を供給する。標本作製部64は、検体吸引位置に搬送された検体容器Tから検体(血液)を吸引および吐出して塗沫標本を作製する。制御部65は、CPU65aと記憶部65bを備える。記憶部65bは、ROM、RAM等の記憶手段を備える。記憶部65bは、バーコード読取部62にて読み取られたバーコードデータ等を記憶する。また、記憶部65bは、CPU65aの作業領域としても用いられる。CPU65aは、記憶部65bのROMに格納された制御プログラムに従って各部を制御する。
【0066】
搬送コントローラ8は、制御部81と、通信部82とを備える。この他、搬送コントローラ8は、映像出力を行うためのインターフェースや、キーボード等からの入力を行うためのインターフェース、CDドライブまたはDVDドライブ等の読出し装置を備える。
【0067】
制御部81は、CPU81aと、記憶部81bを備える。CPU81aは、記憶部81bに記憶されているコンピュータプログラムを実行する。記憶部81bは、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶手段を備える。通信部82は、塗沫標本作製装置6と情報処理装置42との間で、データ通信を行う。
【0068】
CPU81aは、コンピュータプログラムに従って、3つの検体搬送装置3と検体搬送装置5を駆動制御する。また、CPU81aは、塗沫標本作製装置6の動作を制御する。この他、CPU81aは、情報処理装置42から受信した検体の分析結果に基づいて、M3による再検の要否、および、塗沫標本の作製の要否を判定し、判定結果に基づいて、M3および塗沫標本作製装置6の動作を制御する。かかる制御は、追って、図5(b)および図6を参照して説明する。
【0069】
図5(a)は、本実施の形態に係る測定ユニット41(M1、M2、M3)の休止状態への移行の処理フローを示す図である。なお、以下の処理は、情報処理装置42により監視制御されている。
【0070】
S1では、図4で示した制御部416により、測定ユニット41と、かかる測定ユニット41の前方に位置づけられている検体搬送装置3の動作状況が監視される。
【0071】
S2では、動作状況の監視において、所定の条件に合致してから、所定時間(15分)が経過したかが判断される。所定時間(15分)が経過したと判断されると(S2:YES)、S3に進む。所定時間(15分)が経過していないと判断されると(S2:NO)、S1に戻って動作状況の監視が継続される。
【0072】
ここで、所定の条件とは、センサ312a、312bと、センサ314a、314bと、検体容器センサ323によって、サンプルラックL(検体容器T)が検知されない状態とされる。なお、かかる所定の条件は、ユーザが利用形態に合わせて設定を変更することができる。例えば、所定の条件を、センサ312a、312bと、センサ314a、314bと、検体容器センサ323の一以上のセンサによって、サンプルラックL(検体容器T)が検知されない状態としても良い。また、所定時間についても、ここでは15分としたが、ユーザは利用形態に合わせて変更することができる。この変更は、情報処理装置42の入力部から行われる。
【0073】
S3では、測定ユニット41が休止状態となるよう移行処理が行われる。ここで、休止状態とは、図4に示した圧力生成部414内の空圧源に対する電力供給が停止される状態をいう。具体的には、休止状態への移行処理が開始されると、試料等が混ざり合わないように流路上の電磁弁の閉止等が行なわれ、その後、空圧源に対する電力供給が停止される。
【0074】
なお、塗沫標本作製装置6においても、上記測定ユニット41と同様、塗沫標本の作を所定時間行っていない等、所定の条件に合致すると、休止状態となるよう移行処理が行われる。塗沫標本作製装置6が休止状態に移行されると、上記測定ユニット41と同様、空圧源(図4:圧力生成部63)への電力供給が停止される。
【0075】
次に、図5(b)、および図6、7、8に示すフローチャートを参照して、搬送コントローラ8および情報処理装置42による処理について説明する。
【0076】
本実施の形態では、検体に対する再検が必要となった場合にM3が休止状態から解除され、また、塗沫標本の作製が必要となった場合に塗沫標本作製装置6が休止状態から解除される。再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定は、搬送コントローラ8によって行われる。
【0077】
図5(b)は、搬送コントローラ8による処理フローを示す図である。この処理フローに並行して、検体に対する測定処理(図6および図7)が行われ、測定結果が、随時、搬送コントローラ8に供給される。
【0078】
S101において、搬送コントローラ8は、検体投入装置2の検体送出ユニット21bから送出されたサンプルラックLを、M1またはM2前の検体搬送装置3に搬送する。これにより、サンプルラックLは、M1またはM2前の検体搬送装置3の分析前ラック保持部310の前方位置まで移動される。続いて、搬送コントローラ8は、ラック押出し機構342を駆動して、サンプルラックLを分析前ラック保持部310に押し出す。
【0079】
分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLは、上述したように、測定ラインL1に沿って搬送され、検体供給位置に位置づけられる。しかる後、M1またはM2における測定が行われる。
【0080】
S102において、搬送コントローラ8は、M1またはM2における測定結果に基づいて、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定する。かかる判定は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tに対して、順次行われる。
【0081】
図6は、S102の詳細な処理内容を示すフローチャートである。
【0082】
S201では、フラグAとフラグBに、それぞれ0がセットされる。
【0083】
S202では、M1またはM2で行われた測定結果が、情報処理装置42から供給されたかが判定される。ここで、測定結果は、測定対象の検体容器Tから読み取られたバーコードデータとともに、搬送コントローラ8に送信される。
【0084】
所定の検体容器Tについて、情報処理装置42から測定結果を受信すると(S202:YES)、搬送コントローラ8は、かかる測定結果に基づいて、当該検体容器Tの検体に対し、M3で再検を行う必要があるかを判定し(S203)、さらに、塗沫標本作製装置6において塗沫標本の作製を行う必要があるかを判定する(S204)。なお、再検の要否と塗沫標本作製の要否は、検体の測定結果が、検体提供者(患者)の年齢、性別等に基づく所定の閾値と比較されることにより判定される。検体提供者(患者)の年齢、性別等は、当該検体容器Tのバーコードデータに基づいて、ホストコンピュータから取得される。
【0085】
S203、S204の判定結果が、再検も塗沫標本の作製も必要ないというものであると(S205:NO、S211:NO)、搬送コントローラ8は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tの検体について、再検と塗沫標本作製の要否を判定したかを判定する(S215)。この判定において、要否判定を行っていない検体容器Tが残っていると(S215:NO)、搬送コントローラ8は、S202に戻って、次の検体容器Tについての測定結果の送信を待つ。
【0086】
なお、S215の判定において、搬送コントローラ8は、サンプルラックLに保持された全ての検体容器Tについて測定が終了したかを、情報処理装置42に問い合わせる。この問い合わせに対し、情報処理装置42から、測定終了の応答があると、搬送コントローラ8は、S215における判定をYESとする。
【0087】
S203における判定結果が“再検要”であると(S205:YES)、搬送コントローラ8は、情報処理装置42に対し、M3での再検が必要であることを示す測定指示と再検の測定項目、および、再検対象の検体容器Tを特定するためのバーコード情報を送信する。続いて、搬送コントローラ8は、フラグAの値が1にセットされているかを判別する(S207)。フラグAの値が1であると(S207:YES)、S211に処理が進められ、フラグAの値が1でないと(S207:NO)、S208に処理が進められる。フラグAの値が1である場合には、既に、S209における到着予定時刻の送信処理が終了しているため、S208、S209の処理はスキップされる。
【0088】
S208では、再検対象となった検体を収容している検体容器Tが、サンプルラックLのどの保持位置に保持されているかにより、測定中の検体容器Tを保持するサンプルラックLがM3に到着する予定時刻が算出される。
【0089】
かかる到着予定時刻の算出は、たとえば、以下のように行われる。
【0090】
サンプルラックLの保持部は、図2に示したように10個形成されている。したがって、サンプルラックLに保持された検体容器Tが端から順に測定されると、これら検体容器Tのうち最初に再検が必要となった検体を収容する検体容器T(以下、この検体容器を、特に「検体容器Tf」という)が、どの保持部に保持されているかにより、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間が変化する。
【0091】
例えば、M3に最も近い保持部(保持位置1)に検体容器Tfが保持されている場合、残りの保持部に収容されている検体容器Tの検体が全て測定されるまで、サンプルラックLはM3に向けて搬送されない。この場合、検体容器Tfについて再検が必要と判断されてから、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は長くなる。一方、M3から最も遠い保持部(保持位置10)に検体容器Tfが保持されている場合には、当該サンプルラックLに測定されるべき検体容器Tが残っていないため、サンプルラックLは直ちにM3に向けて搬送される。このため、検体容器Tfについて再検が必要と判断されてから、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は短くなる。
【0092】
また、サンプルラックLが、M3に到着するまでに要する時間は、M3までの搬送経路上に存在する他のサンプルラックLの個数によっても変化する。すなわち、かかる搬送経路上に他のサンプルラックLが多く存在すると、これらサンプルラックLが搬送経路を塞ぐため、上記検体容器Tfを保持したサンプルラックLの搬送が滞る。この場合、当該サンプルラックLがM3に向けて搬送されてからM3に到着するまでの時間は長くなる。
【0093】
この他、サンプルラックLがM3に到着するまでに要する時間は、当該サンプルラックLが、M1、M2のうち何れから搬送されるかによっても変動する。すなわち、M1の方がM2よりもM3から遠いため、サンプルラックLがM1から搬送される場合の方が、M2から搬送される場合に比べ、M3に到着するまでの時間が長くなる。
【0094】
S208では、これらの変動要因が考慮されて、搬送コントローラ8により、検体容器Tfを保持するサンプルラックLがM3に到着するまでに要する所要時間が求められ、そのときの時刻とこの所要時間から、到着予定時刻が算出される。かかる到着予定時刻は、情報処理装置42に送信される(S209)。続いて、フラグAに1がセットされる(S210)。これにより、M3への到着予定時刻が既に送信されたことが記憶される。
【0095】
情報処理装置42から受信した測定結果に基づいて、S204において、塗沫標本の作製が必要であると判定されると(S211:YES)、S212に処理が進められる。塗沫標本の作製が必要と判定されないと(S211:NO)、S215に処理が進められる。
【0096】
S212において、搬送コントローラ8は、フラグBの値が1であるかを判定する。ここで、フラグBの値が1であると(S212:YES)、S215に処理が進められ、フラグBの値が1でないと(S212:NO)、S213に処理が進められる。フラグBの値が1である場合には、既に、S213における到着予定時刻の算出が終了しているため、S213の処理はスキップされる。
【0097】
S213では、上記S208と同様、塗沫標本の作製対象となった検体を収容している検体容器Tが、サンプルラックLのどの保持位置に保持されているかにより、測定中の検体容器Tを保持するサンプルラックLが塗沫標本作製装置6に到着する予定時刻が算出される。かかる到着予定時刻は、搬送コントローラ8により保持され、フラグBに1がセットされる(S214)。これにより、塗沫標本作製装置6への到着予定時刻が既に算出・保持されたことが記憶される。
【0098】
以上の処理に従って、測定が行われているサンプルラックLの検体全てについて、M3での再検と塗沫標本の作製の要否が判定されると(S215:YES)、図5(b)の要否判定処理(S102)が終了する。
【0099】
なお、上記の如く、S208およびS213における到着予定時刻の算出は、サンプルラックLに収容された複数の検体容器Tのうち、最初に再検が必要と判定され、あるいは、塗沫標本作製が必要と判定された検体を収容する検体容器Tが生じたときに行われる。
【0100】
図5(b)に戻り、以上の処理に従って、S102にて、M3での再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定処理が終了すると、搬送コントローラ8は、フラグAの状態を参照する(S103)。ここで、フラグAの値が1であると(S103:YES)、搬送対象のサンプルラックLに再検が必要な検体容器Tが保持されているため、搬送コントローラ8は、M1またはM2での測定が終了したサンプルラックLを、M3前の検体搬送装置3に搬送する(S104)。これに応じて、サンプルラックLが測定ラインL1に沿って搬送され、再検が必要な検体に対する測定がM3により行われ、その測定結果が、情報処理装置42から搬送コントローラに送信される(図7:S313)。フラグAの値が1でないと(S103:NO)、処理がS106に進められる。
【0101】
S105では、情報処理装置42から受信した測定結果に基づいて、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。なお、S105では、図6において、S201、S203、S205〜S210の処理ステップが省略された処理が行われる。
【0102】
次に、搬送コントローラ8は、フラグBの値を参照する(S106)。フラグBの値が1であると(S106:YES)、搬送コントローラ8は、M1〜M3による測定が終了したサンプルラックLを、塗沫標本作製装置6に搬送して塗沫標本の作製を行う(S107)。フラグBの値が1でないと(S106:NO)、処理がS108に進められる。すなわち、フラグBの値が1であるとき、搬送対象のサンプルラックLに保持された何れかの検体容器Tの中に、塗沫標本の作製が必要と判定された検体容器Tが含まれている。この場合、かかるサンプルラックLは、塗沫標本作製装置6に搬送され、対象の検体に対する塗沫標本の作製が行われる。なお、塗沫標本の作製処理については、追って、図8(b)を参照して説明する。
【0103】
S108において、搬送コントローラ8は、検体収容装置7にサンプルラックLを搬送する。このようにして、サンプルラックLについての処理が終了する。
【0104】
図7は、情報処理装置42による処理フローを示す図である。
【0105】
搬送コントローラ8による制御により、サンプルラックLは、M1またはM2の分析前ラック保持部310に押し出される。情報処理装置42は、M1またはM2に、分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLを検体供給位置に搬送させ(S301)、検体容器Tに収容されている検体を測定させる(S302)。M1またはM2は、検体容器Tから検出したデータを、情報処理装置42に送信する。
【0106】
情報処理装置42は、M1またはM2から検出データを受信すると(S303:YES)、検出データを解析し、測定結果を取得する(S304)。続いて、情報処理装置42は、得られた測定結果を、搬送コントローラ8に送信し、M3での再検の要否を、搬送コントローラ8に問い合わせる(S305)。M3での再検が必要である場合、図6のS206において、搬送コントローラ8から再検指示と再検の測定項目が送信される。
【0107】
しかる後、情報処理装置42は、M1またはM2において、サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了したかを判定する(S306)。サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了していると(S306:YES)、処理がS307に進められる。サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了していないと(S306:NO)、処理がS301に戻され、サンプルラックLに保持されている全ての検体容器Tの測定が終了するまでS301〜S305が繰り返される。
【0108】
情報処理装置42は、S305における問い合わせに対する応答に基づいて、当該サンプルラックL中に、M3での再検が必要と判定された検体が含まれているかを判定する(S307)。再検が必要な場合には、図5(b)のS104において、サンプルラックLが、M3の分析前ラック保持部310に搬送される。情報処理装置42は、こうして分析前ラック保持部310に押し出されたサンプルラックLを検体供給位置に向けて搬送させるよう、検体搬送装置3に指令を出す(S308)。M3での再検が必要でないと場合(S307:NO)、当該サンプルラックLに対する情報処理装置42の処理は終了する。
【0109】
S308に応じて再検が必要と判定された検体を収容している検体容器Tが、M3の検体供給位置に位置づけられると、情報処理装置42は、M3が休止状態であるかを判定する(S309)。なお、図5(b)のS102にて再検が必要と判定されたときにM3が休止状態にあれば、M3に対する休止状態の解除処理が行われる。休止状態の解除処理は、追って、図8(a)を参照して説明する。情報処理装置42は、休止状態になければ(S309:NO)、S310の処理を進め、休止状態にあれば(S309:YES)、M3の休止状態の解除が完了するのを待つ。なお、本実施形態では適切なタイミングで休止状態の解除が開始されるので、検体容器がM3の検体供給位置に搬送されたときには、M3は活動状態にある。従って、M3の休止状態の解除が完了するのを待つステップS309は省略可能であるが、このステップを実行することにより、万が一、休止状態の解除に想定以上の時間がかかってしまった場合に休止状態のM3に検体を取り込んでしまうことが防止される。
【0110】
S310おいて、情報処理装置42は、再検が必要と判定された検体の測定を進めるよう、M3に指示を出す。これに応じて、M3から検出データを受信すると(S311:YES)、情報処理装置42は、指定された測定項目について検出データを解析し、測定結果を取得する(S312)。その後、情報処理装置42は、得られた測定結果を、搬送コントローラ8に送信する(S313)。送信された測定結果は、図5(b)のS105において、塗沫標本の作製の要否判定に用いられる。
【0111】
その後、情報処理装置42は、サンプルラックLに保持されている再検が必要とされた全ての検体容器Tについて測定が終了したかを判定する(S314)。これら全ての検体容器Tについて測定が終了していると(S314:YES)、当該サンプルラックLに対する情報処理装置42の処理は終了する。再検が必要とされた全ての検体容器Tの測定が終了していないと(S314:NO)、処理がS308に戻される。この場合、再検が必要とされた全ての検体容器Tの測定が終了するまでS308〜S313が繰り返される。
【0112】
図8(a)は、M3の休止状態を解除するための処理フローチャートである。
【0113】
搬送コントローラ8により、M3での再検が必要と判定されると、図6のS208において、測定中のサンプルラックLがM3に到着する予定時刻が算出され、情報処理装置42に送信される。情報処理装置42は、到着予定時刻を受信すると(S401:YES)、M3が休止状態にあるかを判定する(S402)。M3が休止状態でないとき(S402:NO)、情報処理装置42は、M3に対して休止状態への移行を禁止する指示を送信し(S403)、処理フローが終了する。M3が休止状態であるとき(S402:YES)、現在時刻が、到着予定時刻から所定時間前になったかを判定する(S404)。M3に対して休止状態への移行を禁止するステップS403は省略可能であるが、このステップを実行することにより、M3を休止状態に移行させて間もなく休止状態の解除を開始させる必要が生じることを防止できる。従って、休止状態への移行及び解除を頻繁に繰り返すことによる電力の消費を抑えることができる。
【0114】
情報処理装置42は、現在時刻が到着予定時刻の所定時間前になったと判定すると(S404:YES)、M3に対して休止状態の解除を開始するよう指示し(S405)、処理を終了する。なお、S404での所定時間は、M3が休止状態の解除を開始してから完了するまでの時間に基づいて設定される。
【0115】
図8(b)は、図5(b)のS107における塗沫標本作製処理の内容を示すフローチャートである。かかる処理は、搬送コントローラ8により行われる。
【0116】
図5(b)のS102、S105に基づき、サンプルラックLに塗沫標本の作製が必要と判定された検体が含まれていると、搬送コントローラ8は、塗沫標本の作製が必要と判定された検体を収容している検体容器Tを、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に搬送する(S221)。
【0117】
塗沫標本の作製が必要と判定された検体を収容している検体容器Tが、塗沫標本作製装置6の検体吸引位置に位置づけられると、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6が休止状態であるかを判定する(S222)。
【0118】
なお、図5(b)のS102またはS105にて塗沫標本の作製が必要と判定されたときに塗沫標本作製装置6が休止状態にあれば、塗沫標本作製装置6に対する休止状態の解除処理が行われる。かかる休止状態の解除処理は、図8(a)と同様の処理により行われる。すなわち、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6が休止状態にあるかを判定し、休止状態になければ、塗沫標本作製装置6が休止状態へ移行するのを禁止し、塗沫標本作製装置6が休止状態であれば、現在時刻が、図5(b)のS102またはS105で算出した到着予定時刻から所定時間前になったかを判定する。そして、現在時刻が到着予定時刻の所定時間前になると、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6の休止状態を解除する。
【0119】
塗沫標本作製装置6が休止状態でないと(S222:NO)、処理がS223に進められ、休止状態であると(S222:YES)、休止状態の解除が完了するまで処理が待機される。なお、ステップS222は、上記のステップS309と同様に省略可能であるが、このステップを実行することにより、万が一、休止状態の解除に想定以上の時間がかかってしまった場合に休止状態の塗沫標本作製装置6に検体を取り込んでしまうことが防止される。
【0120】
S223において、搬送コントローラ8は、塗沫標本作製装置6に、塗沫標本の作製が必要と判定された検体について塗沫標本を作製させる。そして、塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tに対する処理が終了したかを判定し(S224)、これらすべての検体容器Tに対する処理が終了していると(S224:YES)、塗沫標本の作製を終了する。塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tについて処理が終了していないと(S224:NO)、処理がS221に戻される。この場合、サンプルラックLに保持されている塗沫標本の作製が必要とされた全ての検体容器Tに対し塗沫標本の作製が終了するまでS221〜S224が繰り返される。
【0121】
以上、本実施形態によれば、M3および塗沫標本作製装置6が、所定時間使用されないと、M3および塗沫標本作製装置6が休止状態に移行される。このため、M3および塗沫標本作製装置6における消費電力が抑制され得る。また、M1またはM2の測定結果により、M3での再検が必要になると、M3の休止状態が解除され、M1ないしM3の測定結果により、塗沫標本の作製が必要になると、塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。このため、M3および塗沫標本作製装置6が休止状態となっている場合でも、M3での再検および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製が、滞りなく行われ得る。
【0122】
さらに、本実施形態によれば、再検または塗沫標本の作製が必要と判定すると、サンプルラックLがM3または塗沫標本作製装置6に到着する予定時刻が算出され、この予定時刻に基づいて、M3および塗沫標本作製装置6の休止状態が解除される。このため、M3および塗沫標本作製装置6の消費電力をより効果的に抑制することができ、且つ、再検または塗沫標本の作製を円滑に行うことができる。
【0123】
2.第2の実施形態
上記第1の実施形態では、搬送コントローラ8により再検の要否と塗沫標本の作製の要否の判定が行われたが、本実施の形態では、情報処理装置42においてこれら要否の判定が行われる。
【0124】
図9は、情報処理装置42による処理を示すフローチャートである。なお、上記第1の実施形態で示したS305とS313(図7参照)は、本実施の形態では、それぞれ、S331とS333に置き換えられている。また、S332とS334が追加されている。その他の処理フローは、上記第1の実施形態と同様である。
【0125】
S331において、情報処理装置42は、M1またはM2の測定結果に基づき、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定し、S332において、再検および塗沫標本の作製の要否の判定結果と、対応する検体容器Tのバーコードデータを搬送コントローラ8に送信する。また、S333において、情報処理装置42は、M3の測定結果に基づき、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を判定し、S334において、その判定結果と、対応する検体容器Tのバーコードデータを搬送コントローラ8に送信する。
【0126】
なお、上記第1の実施形態では、S307の判定が、搬送コントローラ8から受信した指令に基づいて行われたが、本実施形態では、S331にて情報処理装置42が自ら判定を行った結果に基づいて、S307の判定が行われる。
【0127】
図10(a)は、本実施形態に係る搬送コントローラ8の処理を示すフローチャートである。本実施形態では、上記第1の実施形態(図5(b)参照)で示したS102、S105が省略され、S103、S106が、それぞれ、S111、S112に変更されている。その他の処理フローは上記第1の実施形態と同様である。
【0128】
S111において、搬送コントローラ8は、図9のS332にて情報処理装置42から送信された判定結果に基づき、M3での再検が必要かを判定する。また、S112において、搬送コントローラ8は、図9のS332またはS334にて情報処理装置42から送信された判定結果に基づき、M3での再検が必要かを判定する。
【0129】
図10(b)は、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除するための処理フローチャートである。M3に対する解除処理は情報処理装置により行われ、塗沫標本作製装置6に対する解除処理は搬送コントローラ8により行われる。
【0130】
上記第1の実施形態で示した休止状態の解除処理(図8(a)参照)では、現在時刻がサンプルラックLの到着予定時刻から所定時間前となったときに、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除されたが、本実施の形態では、サンプルラックLに保持された検体容器Tのうち、最初に、再検または塗沫標本の作製が必要とされた検体容器Tfが生じたことに応じて、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態を解除される。すなわち、検体容器Tfが生じると(S411)、M3または塗沫標本作製装置6が休止状態であるかが判定され(S412)、休止状態でなければ(S412:NO)、休止状態への移行が禁止され(S414)、休止状態であれば(S412:YES)、休止状態が解除される(S413)。
【0131】
こうすると、上記第1の実施形態と同様、M3または塗沫標本作製装置6が休止状態であるとき、M3または塗沫標本作製装置6の休止状態が解除され得る。
【0132】
なお、ここでは、S413にて直ちに休止状態を解除するようにしたが、これに替えて、再検または塗沫標本の作製が必要と判定されてから一定時間が経過した後に、休止状態が解除されても良い。この場合、一定時間は、サンプルラックLがM3または塗沫標本作製装置6に到着する時間を想定して、固定の時間が設定される。また、この一定時間を、サンプルラックLが、M1、M2の何れからM3に搬送されるか、あるいは、M1、M2、M3の何れから塗沫標本作製装置6に搬送されるかに応じて変更しても良い。
【0133】
以上、本実施形態によれば、情報処理装置42により、M3での再検の要否、および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。これにより、M3および塗沫標本作製装置6の消費電力が抑制されながら、M3での再検および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製が、滞りなく行われ得る。
【0134】
3.第3の実施形態
第3の実施形態に係る検体処理装置について、図面を参照して説明する。
【0135】
図11は、検体処理システム1を示す図である。本実施形態では、ホストコンピュータ9により、M3での再検の要否、および塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否が判定される。
【0136】
ホストコンピュータ9は、図4に示した情報処理装置42と同様の構成を有する。ホストコンピュータ9は、通信ネットワークに接続されており、情報処理装置42、検体投入装置2、検体搬送装置3、検体収容装置7、搬送コントローラ8と通信することが可能となっている。
【0137】
また、ホストコンピュータ9のハードディスクには、測定オーダが格納されている。ホストコンピュータ9は、他の装置から検体IDを含む測定オーダの要求データを受信したときには、この検体IDに対応する測定データをハードディスクから読み出し、要求元の装置へ送信する。
【0138】
図12は、情報処理装置42による処理フローを示す図である。なお、上記第2の実施形態で示したS331とS333(図9参照)は、本実施の形態では、それぞれ、S341とS342に置き換えられている。その他の処理フローは上記第1の実施形態と同様である。
【0139】
S341おいて、情報処理装置42は、M1またはM2の測定結果をホストコンピュータ9に送信し、M3での再検の要否と、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を問い合わせる。これに応じてホストコンピュータ9から判定結果を受信すると、情報処理装置42は、このうち、塗沫標本の作製の要否の判定結果を搬送コントローラ8に送信する(S332)。また、S342において、情報処理装置42は、M3の測定結果をホストコンピュータ9に送信し、塗沫標本作製装置6での塗沫標本の作製の要否を問い合わせる。これに応じてホストコンピュータ9から判定結果を受信すると、情報処理装置42は、この判定結果を搬送コントローラ8に送信する(S334)。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0141】
たとえば、上記3つの実施の形態では、測定対象として血液を例示したが、尿についても測定対象とされ得る。すなわち、尿を検査する検体処理装置にも本発明を適用することができ、さらに、他の臨床検体を検査する臨床検体検査装置に本発明を適用することもできる。
【0142】
なお、上記3つの実施形態では、たとえば、サンプルラックLに保持された10本の検体容器Tのうち、たとえば、3番目の検体容器Tの検体について最初に“塗沫標本の作製のみ”が必要と判定され、その後、5番目の検体容器Tの検体について最初に“再検”が必要と判定される場合が起こり得る。この場合、3番目の検体容器Tについて、サンプルラックLが、M3の測定ラインL1を通らずに、スキップラインL2を通って塗沫標本作製装置6へと搬送されると想定して到着予定時刻が算出されると、実際には、サンプルラックLがM3の測定ラインL1を通るため、算定された到着予定時刻が、M3での再検が行われる場合の到着予定時刻よりも早くなる。したがって、この場合には、5番目の検体容器Tの検体について再検が必要と判定されたタイミングで、サンプルラックLがM3の測定ラインL1を通るとして、塗沫標本作製装置6に対する到着予定時刻を修正するようにしても良い。
【0143】
また、上記第2の実施形態および第3の実施形態では、サンプルラックLが到着する予定時刻が算出されなかったが、上記第2の実施形態および第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、M1ないしM3の測定結果を情報処理装置42から搬送コントローラ8に送信し、搬送コントローラ8において、サンプルラックLの到着予定時刻を算出するようにしても良い。また、かかる到着予定時刻の算出は、情報処理装置42において行われるようにしても良い。
【0144】
さらに、図13に示すように、M3の前の検体搬送装置3に切欠3aを設け、M3にて再検を行った検体についてさらに塗沫標本の作製を行う場合には、ラックスライダ52を同図の位置に位置づけて、この切欠3aを介して、サンプルラックLをラック搬送路51aへと送るようにしても良い。
【0145】
また、上記3つの実施の形態において、休止状態は、空圧源に対する電力供給が停止される状態とされたが、他の構成部に対する電力供給を停止又は低減されるようにしても良い。他の構成部としては、検体および試薬等を加温する加温機構、検体および試薬等を冷却する冷却機構などが挙げられる。例えば、加温機構を用いる場合、休止状態ではヒータが加温時の温度よりも低い所定の温度となるように電力供給を行い、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、ヒータが加温時の温度となるように電力の供給量を増加させてもよい。これにより、電力消費を抑制しつつ、ヒータの加温待ちによる検体処理の中断を回避することができる。なお、ヒータとしては、ラバーヒータを用いることができる。ラバーヒータは電力消費が大きいため、本発明による効果が特に大きい。
【0146】
さらに、上記3つの実施の形態において、休止状態は、空圧源に対する電力供給が停止される状態とされたが、測定ユニット又は塗抹標本作製装置全体に対する電力供給が停止される状態、すなわち、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフである状態とされても良い。測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源オフ状態への移行処理は、上記3つの実施の形態と同様に、動作状況を監視し、所定の条件に合致してから所定時間が経過したときに自動的に実行しても良いし、検体処理システムの使用者による電源スイッチの操作に応じて実行しても良い。なお、使用者による休止状態への移行は、電源スイッチに代えて、情報処理装置に入力された電源オフの指示に応じて実行することも可能である。
【0147】
休止状態が、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフ状態である場合、休止状態の解除は、測定ユニット又は塗抹標本作製装置を起動し、測定又は塗抹標本の作製が可能な状態(スタンバイ状態)に移行することによって実行される。
【0148】
休止状態が、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の電源がオフ状態である場合には、空圧源に対する電力供給のみが停止される場合のように、部分的に電力供給が停止される場合と比較して、消費電力の抑制効果が高い。
【0149】
また、上記3つの実施の形態では、測定ユニット又は塗抹標本作製装置が休止状態に移行しているが、測定ユニットM3の前の検体搬送装置又は塗抹標本作製装置の前の検体搬送装置を休止状態に移行させてもよい。検体搬送装置の休止状態への移行および休止状態の解除は、測定ユニット又は塗抹標本作製装置の場合と同様に、所定の条件に合致してから所定時間が経過すると休止状態へ移行させ、追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると休止状態を解除させれば良い。
【0150】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 … 検体処理システム
3 … 検体搬送装置
5 … 検体搬送装置
6 … 塗沫標本作製装置
8 … 搬送コントローラ
41 … 測定ユニット
42 … 情報処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に収容された検体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に沿って配置され、搬送された検体を測定する測定モジュールと、
前記測定モジュールによる測定結果に基づく、検体に対する追加処理の要否に関する判定結果を取得する判定結果取得手段と、
前記搬送装置に沿って配置され、追加処理が必要と判定された検体を処理する処理モジュールと、
前記処理モジュールを休止状態に移行させる休止移行手段と、
前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュールを休止状態から解除する休止解除手段と、
を備える検体処理装置。
【請求項2】
前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより前記判定結果を取得する、
請求項1記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより判定結果を取得するコンピュータに測定結果を送信し、該コンピュータから判定結果を取得する、
請求項1記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、一時的に休止解除を待機したのち、前記処理モジュールを休止状態から解除する、
請求項1ないし3の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項5】
追加処理が必要と判定された検体の処理の進捗状況に基づいて、待機すべき時間に関する情報を生成する生成手段をさらに備える、
請求項4記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記処理モジュールの動作状況を監視する動作状況監視手段をさらに備え、
前記休止移行手段は、前記動作状況監視手段により、前記処理モジュールが所定期間動作していないことが検知されると、前記処理モジュールを休止状態に移行させる、
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記処理モジュールは、検体を吸引して処理するように構成されているとともに、吸引した検体を移送するための圧力を生成する圧力生成部を備え、
前記休止移行手段は、前記圧力生成部への電力の供給を停止する、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記休止移行手段は、前記処理モジュールの電源をオフにする、請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記処理モジュールに検体容器を供給する処理モジュール用搬送装置を備え、
前記休止移行手段は、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態に移行させ、
前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態から解除する、請求項1ないし8の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記処理モジュールは、検体に対して所定の測定処理を行う、
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記測定モジュールおよび前記処理モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールである、
請求項10記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記判定結果取得手段により取得される判定結果は、前記処理モジュールでの測定が必要な測定項目を含む、
請求項10又は11記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記測定モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールであり、
前記処理モジュールは、検体としての血液の塗沫標本を作製する塗沫標本作製モジュールである、
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項1】
検体容器に収容された検体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に沿って配置され、搬送された検体を測定する測定モジュールと、
前記測定モジュールによる測定結果に基づく、検体に対する追加処理の要否に関する判定結果を取得する判定結果取得手段と、
前記搬送装置に沿って配置され、追加処理が必要と判定された検体を処理する処理モジュールと、
前記処理モジュールを休止状態に移行させる休止移行手段と、
前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュールを休止状態から解除する休止解除手段と、
を備える検体処理装置。
【請求項2】
前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより前記判定結果を取得する、
請求項1記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記判定結果取得手段は、前記測定モジュールによる測定結果が所定の条件に合致するか否かを判断することにより判定結果を取得するコンピュータに測定結果を送信し、該コンピュータから判定結果を取得する、
請求項1記載の検体処理装置。
【請求項4】
前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、一時的に休止解除を待機したのち、前記処理モジュールを休止状態から解除する、
請求項1ないし3の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項5】
追加処理が必要と判定された検体の処理の進捗状況に基づいて、待機すべき時間に関する情報を生成する生成手段をさらに備える、
請求項4記載の検体処理装置。
【請求項6】
前記処理モジュールの動作状況を監視する動作状況監視手段をさらに備え、
前記休止移行手段は、前記動作状況監視手段により、前記処理モジュールが所定期間動作していないことが検知されると、前記処理モジュールを休止状態に移行させる、
請求項1ないし5の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項7】
前記処理モジュールは、検体を吸引して処理するように構成されているとともに、吸引した検体を移送するための圧力を生成する圧力生成部を備え、
前記休止移行手段は、前記圧力生成部への電力の供給を停止する、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項8】
前記休止移行手段は、前記処理モジュールの電源をオフにする、請求項1ないし6の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記処理モジュールに検体容器を供給する処理モジュール用搬送装置を備え、
前記休止移行手段は、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態に移行させ、
前記休止解除手段は、前記判定結果取得手段により追加処理が必要であることを示す判定結果が取得されると、前記処理モジュール及び前記処理モジュール用搬送装置を休止状態から解除する、請求項1ないし8の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項10】
前記処理モジュールは、検体に対して所定の測定処理を行う、
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置。
【請求項11】
前記測定モジュールおよび前記処理モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールである、
請求項10記載の検体処理装置。
【請求項12】
前記判定結果取得手段により取得される判定結果は、前記処理モジュールでの測定が必要な測定項目を含む、
請求項10又は11記載の検体処理装置。
【請求項13】
前記測定モジュールは、検体としての血液に含まれる血球を測定する血球測定モジュールであり、
前記処理モジュールは、検体としての血液の塗沫標本を作製する塗沫標本作製モジュールである、
請求項1ないし9の何れか一項に記載の検体処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−52982(P2011−52982A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199613(P2009−199613)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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