説明

検出センサシステム、検出センサ、判別装置及び検出センサの異常検出方法

【課題】検出対象を正しく検出できない場合に、その検出できない原因を解明することができる検出センサシステム、検出センサ、判別装置及び検出センサの異常検出方法を提供する。
【解決手段】被対象物の検出状態に応じて変化する検出信号を取得する受光部25と、受光部25により取得された検出信号の信号レベルとメモリ23に記憶された検出閾値との比較結果に基づいて複数の判断信号のうち何れの判断信号を出力するかを判断するCPU20と、CPU20により出力すると判断された判断信号を各々において出力する受光素子26及び投光素子27、出力回路28と、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とにより各々出力された各判断信号の比較結果に基づいて異常の有無を判別するCPU51とを備え、CPU51は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、受光素子26及び投光素子27と出力回路28のうち一方に異常があると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出センサシステム、検出センサ、判別装置及び検出センサの異常検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば光電センサなどの検出センサは、投光素子から投光された光を受光素子(取得手段)にて受光して検出対象の検出を行なっている。すなわち、受光素子が受光する受光量(検出信号)は、検出対象の状態によって変化するため、検出センサは設定された閾値レベル(検出閾値)と受光量とを比較することにより、検出対象を検出している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような光電センサにおいては、投光素子及び受光素子の劣化や周辺温度の変化、汚れ等の原因により受光量が変化するため、受光量が閾値レベルを下回って検出対象を正しく検出することができないことがある。そこで、特許文献1の検出センサでは、受光量の変化に応じて、閾値レベルを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検出対象を正しく検出できない場合には、検出結果を出力する出力回路に異常がある場合も考えられる。しかし、上記従来の検出センサでは、検出対象を正しく検出することができない場合に、出力回路が故障しているのか、閾値レベルが正しく設定されていないのかを判別することができなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出対象を正しく検出できない場合に、その検出できない原因を解明することができる検出センサシステム、検出センサ、判別装置及び検出センサの異常検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、検出センサシステムに係る請求項1に記載の発明は、検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号を取得する取得手段と、該取得手段により取得された前記検出信号の信号レベルと閾値記憶部に記憶された検出閾値との比較結果に基づいて第1の判断信号及び該第1の判断信号とは異なる第2の判断信号のうち何れの判断信号を出力するかを判断する判断手段と、該判断手段により出力すると判断された前記判断信号を出力する出力回路と、前記判断手段により出力すると判断された前記判断信号を光通信により出力する光通信手段と、前記出力回路と前記光通信手段とにより各々出力された前記各判断信号の比較結果に基づいて異常の有無を判別する判別手段とを備え、前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記出力回路と前記光通信手段のうち一方に異常があると判別することを要旨とする。
【0008】
通常、判断手段が出力すると判断した判断信号を出力回路と光通信手段により各々出力するとした場合において、出力回路と光通信手段とが共に異常がなければ、比較対象となる判断信号同士は一致するはずであるから、この点、比較対象となる判断信号同士が異なる場合には、出力回路もしくは光通信手段に異常があると判別することができる。したがって、検出対象を正しく検出できない場合に、その検出できない原因を解明することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検出センサシステムにおいて、前記出力回路と前記光通信手段は、前記判断手段が前記検出信号の信号レベルと前記検出閾値との比較結果に基づいて前記第1の判断信号を出力すると判断した場合には前記第1の判断信号を出力すると共に、前記第1の判断信号を出力しないと判断した場合には前記第2の判断信号を出力し、前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記出力回路及び前記光通信手段のうち前記第2の判断信号を出力した方に異常があると判別することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の検出センサシステムにおいて、前記判断手段は、前記検出信号の信号レベルが前記検出閾値以上である場合に第1の判断信号を出力すると判断すると共に、前記検出信号の信号レベルが前記検出信号未満である場合に第2の判断信号を出力すると判断し、前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号が全て前記第2の判断信号である場合に、前記検出閾値の設定異常であると判別することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の検出センサシステムにおいて、前記検出信号の信号レベルの最大値と最小値との差に基づいて設定された基準値を記憶する基準値記憶部をさらに備え、前記出力回路と前記光通信手段のうち少なくとも一方は、前記判断信号に加えて前記検出信号の信号レベルを出力し、前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号が全て前記第2の判断信号である場合であって、且つ前記信号レベルの最大値と最小値の差が前記基準値よりも大きい場合には、前記検出閾値の設定異常であると判断することを要旨とする。
【0012】
また同じく、上記課題を解決するために、検出センサに係る請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の検出センサシステムにおける前記取得手段と、前記判断手段と、前記出力回路と、前記光通信手段とを備え、前記判断手段が出力すると判断した前記判断信号を前記出力回路及び前記光通信手段により各々出力することを要旨とする。
【0013】
また同じく、上記課題を解決するために、判別装置に係る請求項6に記載の発明は、検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号に基づいて第1の判断信号及び該第1の判断信号とは異なる第2の判断信号のうち何れかの判断信号を出力回路と光通信手段とにより各々出力する検出センサに接続される判別装置であって、前記出力回路により出力された前記判断信号及び前記光通信手段により出力された前記判断信号をそれぞれ受信する受信手段と、該受信手段が受信した前記各判断信号の比較結果に基づいて異常の有無を判別する判別手段とを備え、前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記検出センサに異常があると判別することを要旨とする。
【0014】
また同じく、上記課題を解決するために、検出センサの異常検出方法に係る請求項7に記載の発明は、検出対象の検出状態に応じた情報を出力する検出センサの異常検出方法であって、検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号を取得する取得段階と、該取得段階において取得した前記検出信号の信号レベルと閾値記憶部に記憶された検出閾値との比較結果に基づいて複数種類の判断信号のうち何れの判断信号を出力するかを判断する判断段階と、該判断段階において出力すると判断された前記判断信号を複数の出力手段により各々出力する出力段階と、該出力段階において各々出力された前記各判断信号同士が異なる場合に前記出力手段に異常があると判別する判別段階とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出対象を正しく検出できない場合に、その検出できない原因を解明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における検出センサシステムの正面図。
【図2】検出センサシステムの電気的構成を説明するブロック図。
【図3】(a)Hi信号出力時の検出信号の信号レベルを表すグラフ、(b)Lo信号出力時の検出信号の信号レベルを表すグラフ。
【図4】検出センサの異常検出処理ルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の検出センサシステム100は、少なくとも1つ(本実施形態では4つ)の検出センサ10と、検出センサ10を両側から挟むように配置されるメインユニット30とエンドユニット40とを備えている。さらに、検出センサシステム100は、メインユニット30に接続された判別装置としてのコントローラ50を備えている。
【0018】
なお、図2に示すように、本実施形態における検出センサ10は、4つの検出センサ10(すなわち、第1〜第4の検出センサ10a〜10d)からなり、各検出センサ10(10a〜10d)は各々の基端側がコネクタ11に接続されている。また、各検出センサ10(10a〜10d)は、メインユニット30とエンドユニット40との間において、第1の検出センサ10aがメインユニット30に隣接すると共に第4の検出センサ10dがエンドユニット40に隣接するようにして図示しないレール上に固定されている。
【0019】
図1に示すように、検出センサ10は、略直方体に形成されるとともに、その上面には例えば8桁表示可能なデジタル表示部12が配設されている。デジタル表示部12は、8つの7セグメントLED(発光ダイオード)が一列に接続される態様で構成されている。
【0020】
デジタル表示部12の右側(先端側)には複数の設定モード表示灯13aが設けられている。これら設定モード表示灯13aにより、その時の設定モードが表示される。設定モードには、「RUN(検出動作のみを実行する通常検出モード)」、「TEACH(検出閾値値の設定)」、「L/D(入光時ON/非入光時ONの設定)」がある。また、デジタル表示部12の左側(基端側)には複数の設定モード表示灯13bが設けられている。これら設定モード表示灯13bにより、表示される設定モードには、「TIMER(タイマ動作の設定)」、「CUST(カスタム設定の内容表示)」、「PRO(詳細設定)」がある。
【0021】
また、設定モード表示灯13bの左側には、ジョグスイッチ(商標登録)15が設けられ、そのジョグスイッチ15のさらに左側には設定モードを切り換えるための設定モード切り換えスイッチ16が設けられている。なお、ジョグスイッチ15は、押圧操作及び回動操作が可能となっている。また、検出センサ10の先端側の側面には、投光用ファイバ17及び受光用ファイバ18を接続するための接続孔(図示略)が設けられている。
【0022】
図2に示すように、検出センサ10のCPU20には、操作部21、表示部22、閾値記憶部としてのメモリ23、投光部24、取得手段としての受光部25、受光素子26、投光素子27、出力回路28が接続されている。そして、出力回路28には、コネクタ11に設けられた信号線29がそれぞれ接続されるようになっている。
【0023】
なお、操作部21は、上述したジョグスイッチ15及び設定モード切り換えスイッチ16を含むと共に、表示部22は、上述したデジタル表示部12及び設定モード表示灯13a,13bを含んでいる。
【0024】
投光部24は、例えば発光ダイオード(LED)を備え、投光用ファイバ17に発光ダイオードの光を導くように構成されている。一方、受光部25は、投光用ファイバ17から出射されて受光用ファイバ18にて導かれた光を受光して電気信号に変換するフォトダイオード(PD)を備えている。すなわち、投光用ファイバ17及び受光用ファイバ18は、それぞれの基端が発光ダイオード及びフォトダイオードと対向するように装着される。
【0025】
そして、CPU20は、メモリ23に記憶された検出条件を読み出し、この検出条件に従って投光部24を駆動して光を照射させるとともに、受光部25を駆動して投光部24から照射され受光した光を電気信号に変換させる。
【0026】
さらに、CPU20は、受光部25にて変換された電気信号を検出信号として取得し、検出信号の信号レベルとメモリ23に記憶された検出閾値とを比較することにより、複数種類の判断信号のうち何れの信号を出力するのかを判断する。すなわち、検出信号は被検出物の検出信号に応じて変化する信号であって、検出センサ10のCPU20は、判断手段として機能している。
【0027】
なお本実施形態では、図3(a)に示すように、CPU20は、検出信号の信号レベルが検出閾値以上である場合に、第1の判断信号としてのHi信号を出力すると判断するようになっている。また、CPU20は、検出信号の信号レベルが検出閾値未満である場合には、第2の判断信号としてのLo信号を出力すると判断する。すなわち、CPU20は、Hi信号を出力しないと判断した場合にLo信号を出力するようになっている。具体的には、出力回路28からは連続してLo信号が出力されていると共に、検出信号の信号レベルが検出閾値以上になった場合にHi信号が出力される。
【0028】
図1に示すように、メインユニット30の本体部31は、略直方体に形成されている。メインユニット30の側面31aには、電源線32が接続されるとともに、エンドユニット40と接続される通信ケーブル33が接続されている。そして、本体部31の上面31bには、コントローラ50に接続される接続部34が設けられている。
【0029】
図2に示すように、メインユニット30の検出センサ10(具体的には、第1の検出センサ10a)側の側面には、CPU35により駆動されて光信号によるデータを送信する投光素子36が設けられている。また、メインユニット30のCPU35には、コントローラ50と通信可能な通信部37と、光通信受信部38と、線通信受信部39とが接続されている。なお、光通信受信部38には、通信ケーブル33が接続されていると共に、線通信受信部39には、信号線29がそれぞれ接続されている。
【0030】
すなわち、光通信受信部38は、エンドユニット40から通信ケーブル33を介してデータを受信する。一方、線通信受信部39は、各検出センサ10の出力回路28から出力された判断信号を検出センサ10毎に配線された各信号線29を介して個別に受信する。
【0031】
また、エンドユニット40の検出センサ10(具体的には、第4の検出センサ10d)側の側面付近には、検出センサ10の投光素子27と対向するように、受光素子41が設けられている。エンドユニット40のCPU42は、受光素子41にてデータを受信すると、そのデータを送信部43から送信する。エンドユニット40から送信されたデータは、通信ケーブル33を介してメインユニット30の光通信受信部38にて受信される。
【0032】
なお、本実施形態では、メインユニット30のCPU35が投光素子36を制御して光通信開始指令を出力することにより、各検出センサ10の受光素子26、投光素子27、及びエンドユニット40の受光素子41を用いた光通信が開始される。
【0033】
具体的には、各検出センサ10のCPU20は、受光素子26にて光信号として受けた伝送信号を電気信号に変換し、自身の検出結果等を反映させた伝送信号を作成して、通信下流側の検出センサ10に送出する。すなわち、各検出センサ10のCPU20は、出力すると判断したHi信号もしくはLo信号を各検出センサ10の識別子に対応付けて伝送信号を作成する。そして、各検出センサ10は、リレー方式により、上流側、即ちメインユニット30側から出力された信号を、下流側に送信する。そして、エンドユニット40のCPU42は、受光素子41にて受信した光信号をデジタル信号に変換し、通信ケーブル33を介してメインユニット30に送信する。
【0034】
そのため、メインユニット30は、1回の光通信開始指令により、各検出センサ10から出力されたHi信号もしくはLo信号をまとめて受信する。したがって、受光素子26及び投光素子27は、光通信手段として機能している。
【0035】
コントローラ50は、CPU、RAM、ROM等を有するパーソナルコンピュータよりなる。なお、コントローラ50としてPLC(Programmable Logic Controller )を用いても良い。
【0036】
コントローラ50の判別手段としてのCPU51には、受信手段としての通信部52、表示画面53、メモリ54、タイマ55が接続されている。通信部52は、メインユニット30の接続部34(図1参照)を介して通信部37に接続され、メインユニット30との間でデータを送受信できるようになっている。また、コントローラ50のメモリ54には、各検出センサ10、メインユニット30、エンドユニット40を制御するための制御プログラムと基準値とが記憶されている。すなわち、メモリ54は、基準値記憶部として機能している。
【0037】
なお、基準値とは、検出センサ10が検出センサシステム100に装着された初期状態において、検出センサ10のCPU20が取得した検出信号の信号レベルの最大値と最小値との差に基づいて設定される値である。
【0038】
具体的には、図3に示すように、検出センサ10が検出センサシステム100に装着されると、コントローラ50のCPU51は、メインユニット30に信号レベル取得指令を出力させる。すなわち、メインユニット30のCPU35が、投光素子36を制御して信号レベル取得指令を出力すると、各検出センサ10によって検出された検出信号の信号レベルが各検出センサ10の識別子に対応付けられた状態で伝達される。そのため、コントローラ50は、メインユニット30及びエンドユニット40を介して各検出センサ10の検出信号の信号レベルを受信し、新たに装着された検出センサ10に対応する信号レベルをCPU51内に設けられたRAM(図示略)に一時記憶する。
【0039】
そして、信号レベル取得指令を繰り返し出力させた状態で検出センサ10に検出対象としての被検出物を検出させると、RAMには、被検出物の検出の有無によって変化した信号レベルが記憶されることになる。したがって、RAMに記憶された信号レベルのうち、最大値maxと最小値minの差D1を算出することにより、被検出物の検出の有無による信号レベルの変化を取得することができる。そして、基準値は、差D1に基づいて被検出物の検出の有無を判別するために最低限必要な変化量(例えば差D1の半分)に設定される。
【0040】
また、さらにコントローラ50は、メインユニット30に検出閾値設定指令を出力させ、新たに装着された検出センサ10のメモリ23に検出閾値を記憶させる。なお、検出閾値は、書き換え可能な値であって、検出信号の信号レベルの最大値maxと最小値minとの間(例えば、最大値maxと最小値minの平均値)に設定される。
【0041】
次に、検出センサ10の異常検出方法について、図4に示す異常検出処理ルーチンのフローチャートに基づいて説明する。なお、このフローチャートは、コントローラ50のCPU51によって実行される。
【0042】
ただし、その前提として、各検出センサ10は、CPU20が投光部24を制御して光を連続して照射させると共に、受光部25が受光した受光量に基づく電気信号を検出信号として随時取得しているものとする(取得段階)。そして、CPU20は、随時取得する検出信号の信号レベルとメモリ23に記憶された検出閾値との比較結果に基づいてHi信号とLo信号のうちどちらの信号を出力するかを判断しているものとする(判断段階)。
【0043】
さて、図4に示すように、ステップS101において、コントローラ50のCPU51は、メインユニット30のCPU35を制御して各検出センサ10から出力された判断信号を取得する。すなわち、CPU35は、投光素子36を制御して光通信開始指令を出力することにより判断信号を取得すると共に、取得した判断信号をコントローラ50に出力する(光通信段階)。さらに、CPU35は、各出力回路28から出力されて個別に取得した判断信号をコントローラ50に出力する(出力段階)。
【0044】
そして、CPU51は、取得した判断信号のうち、出力回路28から出力されて線通信受信部39が受信した判別信号を線通信信号としてRAMに一時記憶すると共に、光通信受信部38が受信した判別信号を光通信信号としてRAMに一時記憶する。
【0045】
次にステップS102において、CPU51は、nを1で初期化する。なお、このフローチャートにおいて、nは検出センサ10を識別するための整数の値とする。
すなわち、n=1の場合には、次のステップS103において、CPU51は、第1の検出センサ10aの線通信信号がLo信号であるか否かを判断する。この線通信信号がLo信号である場合には(ステップS103:YES)、CPU51は、ステップS104において、第1の検出センサ10aの光通信信号がLo信号であるか否かを判断する。光通信信号もLo信号である場合には(ステップS104:YES)、CPU51は、その処理をステップS105へ移行する。
【0046】
さて、ステップS105において、コントローラ50のCPU51は、メインユニット30のCPU35を制御して第1の検出センサ10aが検出した検出信号の信号レベルを取得する。すなわち、CPU35は、投光素子36を制御して信号レベル取得指令を出力すると共に、取得した信号レベルをコントローラ50に出力する。そして、CPU51は、取得した信号レベルのうち第1の検出センサ10aの信号レベルをRAMに一時記憶する。
【0047】
ステップS106において、CPU51は、タイマ55の計測時間に基づいて取得時間(例えば10秒)が経過したか否かを判断する。そして、CPU51は、取得時間が経過していないと判断した場合には(ステップS106:NO)、ステップS105に戻って第1の検出センサ10aの信号レベルを取得し、RAMに一時記憶する。なお、取得時間は、先の被検出物が第1の検出センサ10aの検出エリアを通過してから、該検出エリアを次の被検出物が通過するまでの時間間隔以上となるように設定されるのが好ましい。
【0048】
また、CPU51は、取得時間が経過したと判断した場合には(ステップS106:YES)、ステップS107において、RAMに一時記憶した信号レベルの最大値と最小値の差が、メモリ54に記憶された基準値以上であるか否かを判断する。
【0049】
そして、信号レベルの最大値と最小値の差が、メモリ54に記憶された基準値以上である場合には(ステップS107:YES)、CPU51は、ステップS108において、閾値設定異常であると判別し、表示画面53を制御して異常を報知して処理を終了する。
【0050】
すなわち、このときRAMには、例えば図3(b)に示すような取得時間における信号レベルの変化が記憶されている。そのため、信号レベルの最大値maxと最小値minの差D2が基準値以上である場合には、信号レベルは十分に変化しているにもかかわらず、検出閾値が最大値maxよりも大きく設定されて被検出物を正しく検出できない。したがって、改めて検出閾値を最大値maxと最小値minの間に設定することにより被検出物の検出が可能になるため、CPU51は、閾値設定異常だと判別する。
【0051】
また、ステップS107において、信号レベルの最大値と最小値の差が、メモリ54に記憶された基準値未満である場合には(ステップS107:NO)、CPU51は、第1の検出センサ10aの検出エリアに単に被検出物が存在しておらず、異常は検出できないと判別する。
【0052】
そして、CPU51は、ステップS109において、nをn+1で更新すると共に、ステップS110において、nの値が検出センサシステム100に装着された検出センサ10の数(本実施形態では4)よりも大きいか否かを判断する。そのため、n=2である場合には、検出センサ10の数よりも小さいため(ステップS110:NO)、CPU51は、ステップS103に移行して第1の検出センサ10aと同様に第2の検出センサ10bの異常を検出する。
【0053】
このように、各検出センサ10の異常検出を行ってn=5になった場合には、検出センサ10の数よりも大きくなるため(ステップS110:YES)、CPU51は、全ての検出センサ10について異常検出を終了したと判断する。そしてCPU51は、ステップS101へ移行して再度判断信号を取得し、検出センサ10の異常検出処理を繰り返し実行する。
【0054】
また、線通信信号がLo信号であると共に(ステップS103:YES)、光通信信号がHi信号である場合には(ステップS104:NO)、CPU51は、ステップS111に移行する。すなわち、ステップS111において、CPU51は、出力回路28に異常がある出力回路異常であると判別し、表示画面53を制御して異常を報知して処理を終了する(判別段階)。
【0055】
さらに、線通信信号がHi信号であると共に(ステップS103:NO)、光通信信号がLo信号である場合には(ステップS112:YES)、CPU51は、ステップS113に移行する。すなわち、ステップS113において、CPU51は、受光素子26もしくは投光素子27に異常がある光通信異常であると判断し、表示画面53を制御して異常を報知して処理を終了する(判別段階)。
【0056】
一方、線通信信号と光通信信号が共にHi信号である場合には(ステップS103:NO、ステップS112:NO)、CPU51は、正常に被検出物を検出できていると判別し、ステップS109に移行して次の検出センサ10の異常検出を行う。
【0057】
上記実施形態の検出センサシステムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)検出センサ10のCPU20は、出力すると判断した判別信号を、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とを用いて出力する。すなわち、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とが共に正常に機能している場合には、コントローラ50のCPU51には、同じ判断信号が出力されることになる。そのため、CPU51が取得した判断信号同士が異なる場合には、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とのうち、一方に異常があると判別することができる。したがって、検出センサ10の検出結果に異常が見受けられる場合(検出センサ10が検出対象である被検出物を正しく検出できない場合)に、その異常の原因(その検出できない原因)を解明することができる。
【0058】
(2)出力回路28は、Hi信号を出力すると共に、Hi信号を出力しない場合にはLo信号を出力する。すなわち、出力回路28は、CPU20との通信に異常を来した場合でも、CPU20の判断に関係なくLo信号を出力する。したがって、このようにCPU20の判断とは関係なくLo信号を受信するようにした場合であって、且つ判断信号同士が異なる場合には、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とのうち、Lo信号を出力した方に異常があると判別することができる。したがって、受光素子26及び投光素子27と出力回路28とを設ける場合に、どちらに異常があるのかを簡単に判別することができる。
【0059】
(3)検出センサ10のCPU20は、検出信号の信号レベルが検出閾値以上になった場合にHi信号を出力すると判断すると共に、検出信号の信号レベルが検出閾値未満である場合にはLo信号を出力すると判断する。そのため、被検出物が検出センサ10の検出エリアに位置しているにもかかわらず、出力回路28と受光素子26及び投光素子27とによって出力された判断信号が共にLo信号である場合には、検出閾値が正しく設定されていないと考えられる。したがって、判断信号の組み合わせにより、受光素子26及び投光素子27もしくは出力回路28の異常であるのか、検出閾値設定の異常であるのかを判別することができるため、検出センサ10の検出結果に異常が見受けられる場合に、より異常の原因を解明することができる。
【0060】
(4)検出信号の信号レベルの最大値maxと最小値minとの差D2と基準値とを比較することにより、検出センサ10の検出エリア内の被検出物の有無に関係なく閾値設定の異常であるか否かを判別することができる。すなわち、信号レベルの最大値maxと最小値minとの差D2が基準値よりも大きい場合には、信号レベルが十分に変化しているにもかかわらず、該信号レベルが検出閾値未満となっているため、検出閾値の設定異常であると判別することができる。一方、信号レベルの最大値maxと最小値minとの差D2が基準値よりも小さい場合には、単に検出センサ10の検出エリアに被検出物が存在していないだけで、検出センサ10に異常はないと判別することができる。
【0061】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、検出信号の信号レベルを、光通信開始指令に基づいて出力される判断信号と一緒に出力するようにしてもよい。また、出力回路28から検出信号の信号レベルを出力するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態において、光通信開始指令が出力された場合にのみ通信ケーブル33による通信を行うようにしてもよい。すなわち、光通信開始指令を出力したにもかかわらずにフィードバックが返ってこない場合には、受光素子26及び投光素子27に異常があると判別するようにしてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、出力回路28は、電波を送信する送信機としてもよい。すなわち、無線通信によって判断信号を出力するようにしてもよい。
・上記実施形態において、検出センサシステム100に設ける検出センサ10は、1つでもよい。また、受光素子26を設けない構成とし、例えばCPU20が判断した判断信号を、出力回路28が判断信号を出力するタイミングと同じタイミングで投光素子27が出力するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、メインユニット30とエンドユニット40を設けずに、検出センサ10とコントローラ50とを受光素子26及び投光素子27(光通信手段)と出力回路28(出力手段)を介して通信可能に接続してもよい。
【0065】
・上記実施形態において、メインユニット30のCPU35によって検出センサ10の異常を判別するようにしてもよい。なお、このときメインユニット30(判別装置)は、基準値を記憶したメモリ(基準値記憶部)をさらに備えるのが好ましく、CPU35は判別手段として機能すると共に、光通信受信部38及び線通信受信部39は受信手段として機能する。
【0066】
・上記実施形態において、CPU20は、検出信号の信号レベルが検出閾値を越える場合にはHi信号を出力すると判断すると共に、検出閾値以下の場合にLo信号を出力すると判断するようにしてもよい。
【0067】
・上記実施形態において、検出閾値以上(もしくは越える)場合にLo信号(第1の判断信号)を出力すると共に、検出信号の信号レベルが検出閾値未満(もしくは以下)である場合にHi信号(第2の判断信号)を出力するようにしてもよい。すなわち、被検出物によって跳ね返った光を受光する反射型の場合には、受光量(検出信号の信号レベル)が大きくなった場合に被検出物を検出する。一方、受光部25から照射されて投光部24に受光される光を被検出物が遮る透過型の場合には、受光量(検出信号の信号レベル)が小さくなった場合に被検出物を検出する。したがって、CPU20が出力すると判断する判断信号は、任意に設定することができる。
【0068】
・上記実施形態において、検出閾値は、ユーザが検出センサ10の操作部21やコントローラ50を操作して設定するようにしてもよい。また、コントローラ50のCPU51により検出閾値の設定異常であると判別された場合には、CPU51に検出閾値の設定変更をさせるようにしてもよい。すなわち、例えば取得した検出信号の信号レベルの最大値maxと最小値minの平均値となるように検出閾値を補正するようにしてもよい。これにより、ユーザの手を煩わせることなく正しい検出閾値を補正することができる。
【0069】
・上記実施形態において、コントローラ50のメモリ54には、検出センサシステム100に検出センサ10を装着した初期状態における検出信号の信号レベルの最大値maxと最小値minとを記憶しておいてもよい。すなわち、検出閾値の設定異常か否かを判別する際に、メモリ54に記憶した最大値maxと最小値minに基づいて判別するようにしてもよい。また、基準値は記憶しておかなくてもよい。
【0070】
・上記実施形態において、検出センサ10は、タイマを備えると共に、該タイマを用いて取得時間経過するまでの検出信号の信号レベルを一時記憶するようにしてもよい。そして、一時記憶した信号レベルのうち、最大値maxと最小値minの差D2をコントローラ50へ出力するようにしてもよい。
【0071】
・上記実施形態において、検出対象としては、物体の有無に限らずに温度、湿度、流量、流速、気圧などとしてもよい。すなわち、例えば、検出対象を温度とする場合には、投光部24及び受光部25の代わりに温度計を設け、該温度計から出力された結果をCPU20において検出閾値と比較するようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、検出センサシステム100に装着される検出センサ10に具体化したが、本発明はそれ以外の装置で使用されて検出結果として判断信号を出力する検出センサにも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…検出センサシステム、10…検出センサ、20…CPU(判断手段)、23…メモリ(閾値記憶部)、25…受光部(取得手段)、26…受光素子(光通信手段)、27…投光素子(光通信手段)、28…出力回路、50…コントローラ(判別装置)、51…CPU(判別手段)、52…通信部(受信手段)、54…メモリ(基準値記憶部)、D1,D2…差、max…最大値、min…最小値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号を取得する取得手段と、
該取得手段により取得された前記検出信号の信号レベルと閾値記憶部に記憶された検出閾値との比較結果に基づいて第1の判断信号及び該第1の判断信号とは異なる第2の判断信号のうち何れの判断信号を出力するかを判断する判断手段と、
該判断手段により出力すると判断された前記判断信号を出力する出力回路と、
前記判断手段により出力すると判断された前記判断信号を光通信により出力する光通信手段と、
前記出力回路と前記光通信手段とにより各々出力された前記各判断信号の比較結果に基づいて異常の有無を判別する判別手段と
を備え、
前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記出力回路と前記光通信手段のうち一方に異常があると判別することを特徴とする検出センサシステム。
【請求項2】
前記出力回路と前記光通信手段は、前記判断手段が前記検出信号の信号レベルと前記検出閾値との比較結果に基づいて前記第1の判断信号を出力すると判断した場合には前記第1の判断信号を出力すると共に、前記第1の判断信号を出力しないと判断した場合には前記第2の判断信号を出力し、
前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記出力回路及び前記光通信手段のうち前記第2の判断信号を出力した方に異常があると判別することを特徴とする請求項1に記載の検出センサシステム。
【請求項3】
前記判断手段は、前記検出信号の信号レベルが前記検出閾値以上である場合に第1の判断信号を出力すると判断すると共に、前記検出信号の信号レベルが前記検出信号未満である場合に第2の判断信号を出力すると判断し、
前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号が全て前記第2の判断信号である場合に、前記検出閾値の設定異常であると判別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検出センサシステム。
【請求項4】
前記検出信号の信号レベルの最大値と最小値との差に基づいて設定された基準値を記憶する基準値記憶部をさらに備え、
前記出力回路と前記光通信手段のうち少なくとも一方は、前記判断信号に加えて前記検出信号の信号レベルを出力し、
前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号が全て前記第2の判断信号である場合であって、且つ前記信号レベルの最大値と最小値の差が前記基準値よりも大きい場合には、前記検出閾値の設定異常であると判断することを特徴とする請求項3に記載の検出センサシステム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の検出センサシステムにおける前記取得手段と、前記判断手段と、前記出力回路と、前記光通信手段とを備え、
前記判断手段が出力すると判断した前記判断信号を前記出力回路及び前記光通信手段により各々出力することを特徴とする検出センサ。
【請求項6】
検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号に基づいて第1の判断信号及び該第1の判断信号とは異なる第2の判断信号のうち何れかの判断信号を出力回路と光通信手段とにより各々出力する検出センサに接続される判別装置であって、
前記出力回路により出力された前記判断信号及び前記光通信手段により出力された前記判断信号をそれぞれ受信する受信手段と、
該受信手段が受信した前記各判断信号の比較結果に基づいて異常の有無を判別する判別手段と
を備え、
前記判別手段は、比較対象となる前記各判断信号同士が異なる場合に、前記検出センサに異常があると判別することを特徴とする判別装置。
【請求項7】
検出対象の検出状態に応じた情報を出力する検出センサの異常検出方法であって、
検出対象の検出状態に応じて変化する検出信号を取得する取得段階と、
該取得段階において取得した前記検出信号の信号レベルと閾値記憶部に記憶された検出閾値との比較結果に基づいて第1の判断信号と該第1の判断信号とは異なる第2の判断信号のうち何れの判断信号を出力するかを判断する判断段階と、
該判断段階において出力すると判断された前記判断信号を出力回路により出力する出力段階と、
前記判断段階において出力すると判断された前記判断信号を光通信手段により出力する光通信段階と、
前記出力段階において出力された前記判断信号と前記光通信段階において出力された前記判断信号とが異なる場合に前記出力回路と前記光通信手段のうち一方に異常があると判別する判別段階と
を備えることを特徴とする検出センサの異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78189(P2012−78189A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223300(P2010−223300)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】