説明

検出器モジュールおよび放射線撮影装置

【課題】複数の検出素子を含む検出器モジュールが複数配設された放射線検出器を備えた放射線撮影装置において、検出器モジュールを交換しても、検出データの温度補正に必要な、検出素子の感度の温度特性情報を求め直すための撮影を不要とし、撮影準備の手間を省く。
【解決手段】検出器モジュール6に温度センサ65を設けるとともに、検出素子6aの感度の温度特性情報を、当該温度特性情報が放射線撮影装置5の外部において検出器モジュール単位で予め記憶された記憶手段66から取得する取得手段7と、検出器モジュール6の温度センサ65による温度情報と、取得手段7により取得された当該検出器モジュール6における検出素子6aの感度の温度特性情報とに基づいて、当該検出器モジュール6における検出素子65による検出データを補正する補正手段8とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器モジュール(module)およびその検出器モジュールを備えた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のX線検出素子を含む検出器モジュールを複数配設してなるX線検出器を備えたX線撮影装置が知られている。
【0003】
一般的に、X線検出素子の感度は、X線検出素子によってばらつくが、X線撮影装置では、物質のX線吸収係数と撮影画像における画素値との関係が規定通りになるよう、被検体を撮影して得られた被検体データを、水や空気などの基準物質を撮影して得られたデータ(data)を用いて補正している。
【0004】
一方、X線検出素子の感度は、その素子温度に依存して変動する温度特性を有している。そのため、基準物質を撮影した時の素子温度と、被検体を撮影した時の素子温度とに差があると、被検体データを正確に補正することができず、撮影画像においてアーチファクト(artifact)が生じる。
【0005】
このため、X線検出素子の感度の温度特性と、基準物質を撮影した時の素子温度と、被検体を撮影した時の素子温度とを用いて、素子温度の変動によるX線検出素子の出力の変動を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献1,図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−231628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際には、X線検出素子の感度の温度特性についても、X線検出素子によってばらつきがあり、特に検出器モジュールが異なると、製造条件の違いから、その温度特性も大きく異なる場合がある。
【0008】
そこで、例えば、基準物質を複数の異なる素子温度で撮影し、このとき得られたデータからX線検出素子毎に感度の温度特性を求めて記憶しておき、各X線検出素子で得られたデータを、そのX線検出素子の感度の温度特性を基に補正する。
【0009】
しかしながら、故障等により検出器モジュールを交換する場合には、その都度、基準物質を複数の異なる素子温度で撮影して、新たに設置された検出器モジュールにおけるX線検出素子の感度の温度特性を求める必要があり、撮影準備に手間が掛かる。
【0010】
このような事情により、検出器モジュールを交換しても、検出データの温度補正に必要な、X線検出素子の感度の温度特性情報を求め直すための撮影を不要とし、撮影準備に手間が掛からないようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の観点の発明は、複数の放射線検出素子を含む検出器モジュールが複数配設された放射線検出器を備えた放射線撮影装置であって、前記検出器モジュールの各々が、温度センサを有しており、前記放射線撮影装置が、前記放射線検出素子の感度の温度特性情報を、該温度特性情報が前記放射線撮影装置の外部において検出器モジュール単位で予め記憶された記憶手段から取得する取得手段と、前記温度センサ(sensor)による温度情報と、前記取得手段により取得された前記温度特性情報とに基づいて、前記放射線検出素子による検出データを補正する補正手段とを備えている放射線撮影装置を提供する。
【0012】
第2の観点の発明は、前記記憶手段が、前記検出器モジュールに設けられている上記第1の観点の放射線撮影装置を提供する。
【0013】
第3の観点の発明は、前記放射線撮影装置が、読取部を有しており、前記記憶手段が、前記読取部により読取可能な記憶媒体である上記第1の観点の放射線撮影装置を提供する。
【0014】
第4の観点の発明は、前記記憶手段が、前記放射線撮影装置とネットワーク(network)を介して接続されている上記第1の観点の放射線撮影装置を提供する。
【0015】
第5の観点の発明は、前記温度特性情報が、前記検出器モジュールの代表的な温度特性情報を含んでおり、前記補正手段が、該検出器モジュールを構成する個々の放射線検出素子による検出データの補正を、該検出器モジュールの代表的な温度特性情報に基づいて行う上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0016】
第6の観点の発明は、前記温度特性情報が、前記検出器モジュールを構成する複数の放射線検出素子を複数のグループ(group)に分けたときのグループ毎の代表的な温度特性情報を含んでおり、前記補正手段が、同一グループ内の放射線検出素子による検出データの補正を、該グループの代表的な温度特性情報に基づいて行う上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0017】
第7の観点の発明は、前記温度特性情報が、前記検出器モジュールを構成する放射線検出素子毎の温度特性情報を含んでおり、前記補正手段が、該放射線検出素子による検出データの補正を、該放射線検出素子の温度特性情報に基づいて行う上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0018】
第8の観点の発明は、前記取得手段が、前記検出器モジュールが新たな検出器モジュールに交換されたときに、該新たな検出器モジュールに対応する温度特性情報を取得する上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0019】
第9の観点の発明は、前記補正手段が、水または空気を撮影した時の前記温度センサによる温度情報と、撮影対象を撮影した時の該温度センサによる温度情報とに基づいて、前記補正を行う上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0020】
第10の観点の発明は、前記放射線検出素子が、シンチレータ(scintillator)およびフォトダイオード(photodiode)を含んでおり、前記温度特性情報が、前記フォトダイオードの出力の温度特性に係る情報を含んでいる上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0021】
第11の観点の発明は、前記温度特性情報が、前記シンチレータの出力の温度特性に係る情報を含んでいる上記第10の観点の放射線撮影装置を提供する。
【0022】
第12の観点の発明は、前記放射線検出素子が、シンチレータ、フォトダイオード、およびフォトダイオードの出力を入力とする回路を含んでおり、前記温度特性情報が、前記回路の出力の温度特性に係る情報を含んでいる上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0023】
第13の観点の発明は、前記温度特性情報が、温度に対するゲイン(gain)および/またはオフセット(offset)の変動を表す情報を含んでいる上記第1の観点から第12の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0024】
第14の観点の発明は、前記温度特性情報が、前記検出データの補正に用いる補正演算式および/または補正係数を含んでいる上記第1の観点から第12の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0025】
第15の観点の発明は、前記温度センサが、前記検出器モジュールの放射線入射側とは反対側に配されている上記第1の観点から第14の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0026】
第16の観点の発明は、前記温度センサが、白金温度センサである上記第1の観点から第15の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0027】
第17の観点の発明は、X線CT撮影を行う、上記第1の観点から第16の観点のいずれか一つの観点の放射線撮影装置を提供する。
【0028】
第18の観点の発明は、複数の放射線検出素子を含んでいる検出器モジュールであって、温度センサと、前記放射線検出素子の感度の温度特性情報を記憶する記憶手段とを備えている検出器モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0029】
上記観点の発明によれば、放射線検出素子による検出データの温度補正に必要となる放射線検出素子の感度の温度特性情報を、当該情報が予め書き込まれた記憶手段から、検出器モジュール単位で取得することができるので、当該情報を得るための撮影を省くことができ、検出器モジュールを交換しても撮影準備に手間が掛からない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】X線CT(Computed Tomography)装置の概略構成図である。
【図2】検出器モジュールの概略構成図である。
【図3】X線CT装置の準備工程および撮影工程を含む処理フロー(flow)を示す図である。
【図4】第二実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図である。
【図5】第三実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0032】
(第一実施形態)
図1は、X線CT装置の概略構成図である。図1に示すように、X線CT装置は、X線管1と、X線検出器5と、データ収集部7と、データ処理部8と、画像再構成部9と、記憶装置10とを備えている。
【0033】
X線管1およびX線検出器5は、撮影空間3を挟んで互いに対向して配置されており、撮影空間3の周りを回転可能に支持されている。X線管1は、X線検出器5に向かってX線ビーム(beam)2を投射する。X線検出器5は、複数の検出器モジュール6を複数配設して形成されている。検出器モジュール6は、複数のX線検出素子6aを含んでおり、X線検出素子6aのX線入射面はマトリクス(matrix)状に配列されている。X線検出器5は、その多数のX線検出素子6aで、撮影空間3に載置された撮影対象である被検体4の透過X線を検出して、その検出データである投影データを出力する。スキャン(scan)時には、X線管1およびX線検出器5が回転し、X線ビーム2の投射と、被検体4の透過X線の検出とが行われる。
【0034】
データ収集部7は、スキャン中、X線検出器5からの投影データを順次受信することにより、複数ビューの投影データを収集する。
【0035】
データ処理部98、収集された複数ビュー(view)の投影データに対して、オフセット補正、リファレンス(reference)補正、温度補正などの各種補正を含む前処理を行う。
【0036】
画像再構成部9は、前処理後の複数ビューの投影データを基に、逆投影処理等により画像を再構成する。
【0037】
記憶装置10は、各種の処理を実行するためのプログラム(program)の他、取得された温度補正用の補正係数などを格納したり、収集された投影データや再構成画像などを記憶したりする。
【0038】
次に、検出器モジュール6の構成について詳細に説明する。
【0039】
図2は、検出器モジュール6の概略構成図であり、(a)は側面図、(b)はX線入射面側から見た平面図、(c)はX線入射面とは反対側から見た底面図である。
【0040】
検出器モジュール6は、基台61をベース(base)に、シンチレータアレイ(scintillator array)62、フォトダイオードアレイ(photodiode array)63、AD変換回路64、温度センサ65、メモリ(memory)66、およびデータ通信回路67が所定の場所に配置されて形成されている。シンチレータアレイ62とフォトダイオードアレイ63とは、X線ビーム2の入射方向に積層され、基台61のX線入射面側に配置されている。
【0041】
シンチレータアレイ62は、複数のシンチレータ62aがマトリクス状に高密度に配列されたものであり、例えば、約1.25mm角のシンチレータが、チャネル(channel)方向およびスライス(slice)方向に、32×128個、配列されている。個々のシンチレータ62aは、入射されたX線に応じた光量で発光する。
【0042】
フォトダイオードアレイ63は、複数のフォトダイオード63aが上記複数のシンチレータ62aと略同じ配置でマトリクス状に配列されたものである。個々のフォトダイオード63aは、上下方向で対応する位置にあるシンチレータ62aからの発光を受光し、その光量に応じたアナログ(analog)電気信号を出力する。
【0043】
AD変換回路64は、例えばASIC(Application Specific Integrated
Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)である。AD変換回路64は、個々のフォトダイオード63aからのアナログ電気信号をデジタル(digital)電気信号に変換して出力する。なお、互いに対応するシンチレータ62a、フォトダイオード63aおよびAD変換回路64は、1つのX線検出素子6aを構成する。
【0044】
温度センサ65は、周囲温度に応じた電気信号を出力する。温度センサ65は、X線による劣化を抑えるため、例えば、耐放射線性の高い白金温度センサとし、基台61のX線入射面とは反対側の面に配置されるのが好ましい。
【0045】
メモリ66は、例えば、OTPROM(One-Time Programmable
Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)やEEPROM(Electrically Erasable
Programmable ROM)などの不揮発性メモリである。メモリ66は、このメモリ66が搭載されている検出器モジュール6におけるX線検出素子6aの感度の温度特性に係るデータ(以下、温度特性データという)を記憶している。この温度特性データは、所定の方法で予め求められ、X線CT装置の外部においてメモリ66に書き込まれたものである。温度特性データは、例えば、検出器モジュール6における所定のX線検出素子6aの入力と出力との関係を、第1温度(例えば36℃)下と、第2温度(例えば38℃)下とで調べ、これらの関係を基に、温度の変化に対するゲインおよびオフセットの変動を求めることにより得られる。
【0046】
ところで、検出器モジュール6におけるX線検出素子6aの感度の温度特性は、検出器モジュール6の固体によって大きく異なる場合がある。これは、検出器モジュール6によって製造メーカ(maker)や製造工場、材料などが異なり、製造条件が同一でないことが主な原因である。一方、同一の検出器モジュール6内のX線検出素子6aでは、製造条件が略同一であるため、感度の温度特性のばらつきは少ない。
【0047】
そこで、本実施形態では、検出器モジュール6のこのような特徴を利用して、1つの検出器モジュール6に対して、その検出器モジュール6を代表する1種類の温度特性データを対応付けし、そのメモリ66に記憶させておく。そして、同一の検出器モジュール6内のX線検出素子6aによる投影データの温度補正には、いずれもその検出器モジュール6に対応付けされた同じ温度特性データを用いることにする。これにより、投影データの温度補正に用いる温度特性データの事前測定や読込み・切換えの回数、記憶スペース(space)を極端に減らすことができ、データ処理部8や記憶装置への負担を軽減したり、温度特性データの測定や管理を簡単にしたりすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、温度特性データを、投影データの温度補正に用いる補正係数とする。これにより、感度の温度特性から補正係数を導出する手間が省けるので、補正演算の効率化を図ることができる。
【0049】
データ通信回路67は、コネクタ68および不図示のケーブルを介してデータ収集部7と接続されている。データ通信回路67は、AD変換回路64の出力すなわち投影データと、温度センサ65の出力と、メモリ66に記憶されている温度特性データとを入力され、データ収集部7に適宜出力する。
【0050】
データ収集部7は、データ通信回路67から出力されたデータを入力され、データ処理部8に適宜出力する。
【0051】
なお、メモリ66は、発明における記憶手段の一例であり、データ処理部8は、発明における取得手段および補正手段の一例である。
【0052】
次に、X線CT装置における投影データの温度補正を含む撮影処理について、図3を参照して説明する。
【0053】
図3に、X線CT装置の準備工程および撮影工程を含む処理フローを示す。ステップ(step)S1からS4までが準備工程、ステップS5〜S10が撮影工程である。
【0054】
ステップS1では、各検出器モジュールのメモリに記憶されている温度特性データ、すなわち、投影データの温度補正に用いる補正係数を読み出して取得する。
【0055】
次のステップS2およびS3は、並列処理である。
【0056】
ステップS2では、空気をスキャンし、このときの投影データである空気データを収集する。
【0057】
ステップS3では、空気データ収集時における各検出器モジュール6の温度センサ65の出力を取得し、各検出器モジュール6の温度Tcal(m),m=1,2,…,meを求める。ここで、mはモジュール番号であり、meはX線検出器5を構成する検出器モジュール6の個数である。なお、温度センサ65の出力は、空気データ収集の直前または直後に取得してもよい。
【0058】
ステップS4では、空気データに対して、いわゆるオフセット補正、対数変換、リファレンス補正、ビームハードニング(beam hardnenig)補正などの前処理を行い、前処理済みの空気データdcalを得る。
【0059】
次のステップS5およびS6は、並列処理である。
【0060】
ステップS5では、撮影対象である被検体をスキャンし、このときの投影データである被検体データを収集する。
【0061】
ステップS6では、被検体データ収集時における各検出器モジュール6の温度センサ65の出力を取得し、各検出器モジュール6の温度Tobj(m),m=1,2,…,meを求める。なお、温度センサ65の出力は、被検体データ収集の直前または直後に取得してもよい。
【0062】
ステップS7では、被検体データに対して、前処理1として、いわゆるオフセット補正を行う。
【0063】
ステップS8では、オフセット補正後の被検体データに対して温度補正を行う。すなわち、X線検出素子6aの感度の温度特性を考慮して、被検体データを、空気データが収集されたときと同じ温度で収集した場合に得られると予想されるデータへと変換する。温度補正には、例えば次の補正演算式を用いる。
【0064】
d′obj(m)={dobj(m)−doffset(m)}
×{1+Σi[αi(m)・(Tobj(m)−Tcal(m))i]}
…(数式1)
【0065】
ここで、dobj(m)は、モジュール番号mの検出器モジュール6におけるX線検出素子6aにより得られた、オフセット補正済みの被検体データであり、doffset(m)は、モジュール番号mの検出器モジュール6におけるX線検出素子6aの出力のオフセットである。d′obj(m)は、オフセット補正済みの被検体データに、さらに温度補正が行われた後の温度補正済みの被検体データである。また、αi(m)はi次の補正係数である。補正係数は、モジュール番号mの検出器モジュール6に設けられたメモリ66に温度特性データとして記憶されていたものであり、当該検出器モジュール6に固有の感度の温度特性に基づく補正係数である。
【0066】
なお、補正演算式としては、二次の項{dobj(m)}2に乗算される二次補正係数、三次の項{dobj(m)}3に乗算される三次補正係数など、多次の項に乗算される多次補正係数を含む補正演算式も考えられる。
【0067】
ステップS9では、温度補正済みの被検体データd′objに、さらに、対数変換、リファレンス補正、ビームハードニング補正などの前処理2を行い、前処理済みの被検体データd″objを得る。
【0068】
ステップS10では、前処理済みの空気データを用いて、前処理済みの被検体データd″objに対するキャリブレーション(calibration)補正(空気補正ともいう)を行う。すなわち、物質のX線吸収係数と再構成画像における画素値(CT値)との関係が規定通りになるよう、温度補正済みの被検体データを補正する。
【0069】
ステップS11では、キャリブレーション補正済みの被検体データを用いて画像再構成処理を行う。
【0070】
なお、X線CT装置は、X線検出器5を構成する一部の検出器モジュール6が新たな検出器モジュール6′に交換されたときには、この新たな検出器モジュール6′に対応する温度特性情報を自動で取得する機能を有していることが望ましい。
【0071】
以上、本実施形態によれば、検出器モジュール6に設けられたメモリ66が当該検出器モジュール6におけるX線検出素子6aの感度の温度特性に係るデータを記憶しているので、X線CT装置側で、投影データの温度補正に必要な温度特性データを求めるためのスキャンを前もって実施する必要がなく、撮影準備をより簡単にすることができる。
【0072】
特に、従来は、X線検出器5における検出器モジュール6を交換する度に、新たに設置された検出器モジュール6′に対応する温度特性をわざわざ求め直す作業が必要であったが、本実施形態ではこのよう作業は不要になる。
【0073】
しかも、検出器モジュール6自身が温度特性データを持っているので、温度特性データを記憶した記憶媒体を検出器モジュール6とセット(set)にして運搬したり、温度特性データを手入力したりする必要がないため、扱い易い。
(第二実施形態)
図4は、第二実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図である。
【0074】
第二実施形態では、X線CT装置は、記憶媒体の読取部11を有している。読取部11が読取可能な記憶媒体12には、検出器モジュール6の温度特性デーが記憶されている。この温度特性データは、所定の方法で予め求められ、X線CT装置の外部において記憶媒体12に記憶させたものである。この記憶媒体12を、検出器モジュール6に添付するなどしてセットで管理する。X線CT装置のデータ処理部8は、この記憶媒体12に記憶されている温度特性データを読取部11で読み取って取得する。記憶媒体12としては、CD−ROM、DVD−ROMなどの光ディスク(disk)、FD(Flexible Disk)などの磁気ディスク、USBメモリなどの半導体メモリのほか、ICチップが搭載されたICカード(card)、バーコード(bar
code),QRコードなどの印刷物など、種々のものが考えられる。なお、記憶媒体12は、発明における記憶手段の一例であり、データ処理部8は、発明における取得手段および補正手段の一例である。
【0075】
例えば、X線CT装置は、読取部11としてCD−ROMドライブ(drive)を有している。検出器モジュール6は、その検出器モジュール6の製造メーカおよび製造ロット番号が書き込まれたメモリ66を有している。検出器モジュール6には記憶媒体12としてCD−ROMが添付されている。そのCD−ROMには、検出器モジュール6の製造メーカおよび製造ロット番号毎に温度特性データが対応付けて書き込まれている。X線CT装置のデータ処理部8は、検出器モジュール6のメモリ66から製造メーカおよび製造ロット番号を読み込み、これに対応する温度特性データをそのCD−ROMから読み出して取得する。
【0076】
このような第二実施形態によれば、温度特性データを後から修正したり、アップデート(update)したりすることができ、温度特性データの管理が容易になる。
(第三実施形態)
図6は、第三実施形態に係るX線CT装置の概略構成を示す図である。
【0077】
第三実施形態では、X線CT装置は、ネットワークを介してデータベース(database)14と接続されている。データベース13は、検出器モジュール6の温度特性データを記憶している。この温度特性データは、所定の方法で予め求められ、X線CT装置の外部においてデータベース13に保存されたものである。X線CT装置のデータ処理部8は、X線検出器5を構成する各検出器モジュール6を識別し、識別された検出器モジュール6にそれぞれ対応する温度特性データをデータベース13から読み出して取得する。データベース13の設置場所は特に限定されない。また、ネットワークは、有線、無線の別を問わない。なお、データベース12は、発明における記憶手段の一例であり、データ処理部8は、発明における取得手段および補正手段の一例である。
【0078】
例えば、検出器モジュール6は、その検出器モジュール6の製造メーカおよび製造ロット番号が書き込まれたメモリ66を有している。データベース13は、X線CT装置が設置された施設の外部にあり、X線CT装置のメーカによって管理されている。データベース13には、検出器モジュール6の製造メーカおよび製造ロット番号毎に温度特性データが対応付けて保存されている。X線CT装置は、検出器モジュール6のメモリ66から製造メーカおよび製造ロット番号を読み込み、この識別コードに対応する温度特性データをデータベース13から読み出して取得する。
【0079】
このような第三実施形態によれば、温度特性データを後から修正したり、アップデートしたりすることができ、温度特性データの管理が容易になる。また、記憶媒体を用いないので、記憶媒体の部品コスト、管理コストが不要である。
【0080】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加・変更が可能である。
【0081】
上記の実施形態では、データ処理部8や記憶装置10への負担軽減、温度特性データの測定や管理の簡単化を目的として、1つの検出器モジュール6に対して、1種類の代表的な温度特性データを対応付けしている。しかし、データ処理部8の処理能力や記憶装置10の記憶スペースに余裕がある場合、温度特性データの測定や管理が整っている場合には、1つの検出器モジュール6に対して、複数種類の温度特性データを対応付けしてもよい。例えば、1つの検出器モジュール6を構成する複数のX線検出素子6aを複数のグループに分け、グループ毎に1つずつ、そのグループの代表的な温度特性データを対応付けし、同じグループ内のX線検出素子6aによる検出データの温度補正には、そのグループに対応付けされた温度特性データを用いるようにしてもよい。あるいは、1つの検出器モジュール6を構成するX線検出素子6a毎に1つずつ、そのX線検出素子6aの温度特性データを対応付けし、個々のX線検出素子6aによる検出データの温度補正には、そのX線検出素子6aに対応付けされた温度特性データを用いるようにしてもよい。このようにすれば、より精度の高い温度補正が可能になる。
【0082】
また、上記の実施形態では、温度特性データを、投影データの温度補正に用いる補正係数としているが、補正係数だけでなく、補正演算式を含めてもよい。また、温度特性データを、温度とゲインやオフセットとの関係とし、データ処理部8側がこれらの関係を基に補正係数や補正演算式を導出して、温度補正を行うようにしてもよい。
【0083】
また、上記の実施形態では、キャリブレーション補正に空気データを用いているが、空気の代わりに水をスキャンして得られる水データを用いるようにしてもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、X線検出素子6aを、シンチレータ62a、フォトダイオード63a、およびAD変換回路64により構成されるものとしているが、シンチレータ62aおよびフォトダイオード63aにより構成されるものとしてもよい。また、AD変換回路64は、検出器モジュール6の外部に設けられていてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、温度特性データは、X線検出素子6a全体における感度の温度特性に係るデータであるが、X線検出素子6aを構成するシンチレータ62a、ダイオード63a、AD変換回路64のうち、いずれか一つまたは複数の温度特性に係るデータであってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、空気データ収集時の検出器モジュール6の温度を求め、これを用いて被検体データの温度補正を行っている。しかし、各検出器モジュール6の温度センサ65の出力をモニタ(monitor)して、検出器モジュール6の平均的な温度が所定の基準温度に達したときに、空気データを収集することとし、この基準温度を、空気データ収集時の検出器モジュール6の温度として用いて、温度補正を行うようにしてもよい。これにより、補正演算の効率化を図ることができる。
【0087】
また、上記の実施形態は、発明をX線CT装置に適用した例であるが、複数の検出器モジュール6により構成される放射線検出器を有する放射線撮影装置であれば、いずれにも適用可能である。例えば、発明を、胸部用や乳房用の一般X線撮影装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0088】
1 X線管
2 X線ビーム
3 撮影空間
4 被検体
5 X線検出器
6 検出器モジュール
6a X線検出素子
61 基台
62 シンチレータアレイ
62a シンチレータ
63 フォトダイオードアレイ
63a フォトダイオード
64 AD変換回路
65 温度センサ
66 メモリ(記憶手段)
67 データ通信回路
68 コネクタ
7 データ収集部(取得手段、補正手段)
8 データ処理部
9 画像再構成部
10 記憶装置
11 読取部
12 記憶媒体(記憶手段)
13 データベース(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射線検出素子を含む検出器モジュールが複数配設された放射線検出器を備えた放射線撮影装置であって、
前記検出器モジュールは、温度センサを有しており、
前記放射線撮影装置は、
前記放射線検出素子の感度の温度特性情報を、該温度特性情報が前記放射線撮影装置の外部において検出器モジュール単位で予め記憶された記憶手段から取得する取得手段と、
前記温度センサによる温度情報と、前記取得手段により取得された前記温度特性情報とに基づいて、前記放射線検出素子による検出データを補正する補正手段とを備えている放射線撮影装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記検出器モジュールに設けられている請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記放射線撮影装置は、読取部を有しており、
前記記憶手段は、前記読取部により読取可能な記憶媒体である請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記放射線撮影装置とネットワークを介して接続されている請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記温度特性情報は、前記検出器モジュールの代表的な温度特性情報を含んでおり、
前記補正手段は、該検出器モジュールを構成する個々の放射線検出素子による検出データの補正を、該検出器モジュールの代表的な温度特性情報に基づいて行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記温度特性情報は、前記検出器モジュールを構成する複数の放射線検出素子を複数のグループに分けたときのグループ毎の代表的な温度特性情報を含んでおり、
前記補正手段は、同一グループ内の放射線検出素子による検出データの補正を、該グループの代表的な温度特性情報に基づいて行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記温度特性情報は、前記検出器モジュールを構成する放射線検出素子毎の温度特性情報を含んでおり、
前記補正手段は、該放射線検出素子による検出データの補正を、該放射線検出素子の温度特性情報に基づいて行う請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記取得手段は、前記検出器モジュールが新たな検出器モジュールに交換されたときに、該新たな検出器モジュールに対応する温度特性情報を取得する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記補正手段は、水または空気を撮影した時の前記温度センサによる温度情報と、撮影対象を撮影した時の該温度センサによる温度情報とに基づいて、前記補正を行う請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出素子は、シンチレータおよびフォトダイオードを含んでおり、
前記温度特性情報は、前記フォトダイオードの出力の温度特性に係る情報を含んでいる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記温度特性情報は、前記シンチレータの出力の温度特性に係る情報を含んでいる請求項10に記載の放射線撮影装置。
【請求項12】
前記放射線検出素子は、シンチレータ、フォトダイオード、およびフォトダイオードの出力を入力とする回路を含んでおり、
前記温度特性情報は、前記回路の出力の温度特性に係る情報を含んでいる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項13】
前記温度特性情報は、温度に対するゲインおよび/またはオフセットの変動を表す情報を含んでいる請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
前記温度特性情報は、前記検出データの補正に用いる補正演算式および/または補正係数を含んでいる請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項15】
前記温度センサは、前記検出器モジュールの放射線入射側とは反対側に配されている請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項16】
前記温度センサは、白金温度センサである請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項17】
X線CT撮影を行う、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項18】
複数の放射線検出素子を含んでいる検出器モジュールであって、
温度センサと、前記放射線検出素子の感度の温度特性情報を記憶する記憶手段とを備えている検出器モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210291(P2012−210291A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76935(P2011−76935)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】