説明

検査用コネクター

【課題】フレキシブル配線板などの接続端子部をむらなく均等に接続でき、使用者がクランプ解除しない限りは接続を維持できる信頼性に優れた検査用コネクターを提供する。
【解決手段】ベース1と、ベース1に固定される接続基板2およびブラケット3と、上下スライド自在なクランプ体4と、クランプ体4を押し上げるばね5と、クランプ体4を押し下げるクランプハンドル6を備えている。接続基板2の固定端子12とクランプ体4を上下平行に対向配置する。クランプハンドル6は、偏心カム37と、偏心カム37を回動操作するハンドル腕38とを備えていて、待機位置とクランプ位置との間を回動できる。クランプ位置におけるクランプハンドル6を復帰回動不能に位置保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立が完了した回路基板あるいは電気機器の検査や動作確認を行う際に使用される検査用コネクターに関する。検査用コネクターは検査回路と接続されており、検査対象となる回路基板あるいは電気機器などから導出されるフレキシブル配線板やフラットケーブルを検査回路と接続するために使用する。
【背景技術】
【0002】
この種の検査用コネクターは、特許文献1に公知である。そこではベースと、ベースで揺動可能に支持されるアームと、アームを挟持姿勢に付勢するばねなどで、検査用コネクターをクリップ状に構成している。アームの挟持面には弾性体が設けてあり、この弾性体で検査対象のフレキシブル配線板をベースに設けた接続端子に押圧することにより、検査対象がコネクター側の固定端子に電気的に接続される。
【0003】
本発明の検査用コネクターにおいては、偏心カムを利用してフレキシブル配線板をコネクター側の固定端子に押し付けるが、偏心カムを使用して押し付け機構を構成するコネクターは特許文献2に公知である。そこでは、断面コ字形のホルダーと、ホルダーの対向壁の一方に設けられる押さえ板と、他方の対向壁に設けられる偏心カムなどで押し付け機構を構成している。このコネクターは、例えば液晶ディスプレイパネルの電極に信号ケーブルを仮接続するために使用されており、押さえ板と偏心カムとの間にベース基板とフレキシブル基板を差し込んだ状態で偏心カムを回動操作することにより、ベース基板およびフレキシブル基板に設けた電極どうしを密着し接続できる。
【0004】
【特許文献1】特許第3749943号公報(段落番号0015、図1)
【特許文献2】特開2000−223188号公報(段落番号0031、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の検査用コネクターは、全体がクリップ状に構成してあって、ばねの付勢力のみでアームを挟持姿勢に保持する。そのため、検査の途中に誤ってアームを押さえてしまうような場合に、フレキシブル配線板の接続端子がコネクターから外れ、あるいは位置ずれして接続不良に陥るおそれがある。また、不使用状態と、フレキシブル配線板の接続端子を挟持した状態とでアームの姿勢が殆ど変わらない。そのため、フレキシブル配線板が接続されていない状態であるにもかかわらず、フレキシブル配線板が接続されている状態であると勘違いするおそれがある。また、不使用状態であってもアームがばねで挟持姿勢に保持される。そのためアーム先端の弾性体は常に弾性変形することとなり、長期使用時に弾性体がくせ付けされ、あるは弾性力が徐々に損なわれて挟持力が低下するおそれがある。
【0006】
特許文献2のコネクターは、偏心カムを回動操作することにより、押さえ板と偏心カムとでベース基板とフレキシブル基板を挟み固定できる。しかし、クランプ操作した偏心カムが、外部振動を受けて開放位置側へ回動変位するおそれがあり、クランプ状態を確実に維持できない点で信頼性に欠ける。また、ホルダーの長手方向の2個所に設けた偏心カムでベース基板を押さえ板へ向かって押し付けるので、偏心カムから離れた部分においてベース基板とフレキシブル基板との接触圧力が低下して接触不良に陥るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するために提案されたものであって、その目的とするところは、フレキシブル配線板などの接続端子部を均等に接続でき、しかも使用者がクランプ状態を解除しない限りは接続状態を維持できる、信頼性に優れた検査用コネクターを提供することにある。本発明の目的は、使用時における誤操作や勘違いを一掃でき、しかも、外力や外部振動によって接続端子部がずれ動き、あるいは接続不良に陥るのを確実に防止できる検査用コネクターを提供することにある。本発明の目的は、フレキシブル配線板などの接続端子部を挟持するとき、操作抵抗の違いで接続端子部が接続されたか否かを明確に知ることができる検査用コネクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検査用コネクターは、ベース1と、ベース1の上面に固定される接続基板2およびブラケット3と、ベース1の上面に設けたガイドピン18で上下スライド自在に支持されるクランプ体4と、クランプ体4を押し上げ付勢するばね5と、クランプ体4をばね5の付勢力に抗して押し下げ操作するクランプハンドル6とを備えている。接続基板2に設けた固定端子12とクランプ体4とは、上下に対向する状態で平行に配置する。クランプハンドル6は、ブラケット3で回動可能に支持されて、待機位置とクランプ位置との間を回動変位できる偏心カム37と、偏心カム37を回動操作するハンドル腕38とを備えている。以て、クランプ位置において、クランプハンドル6が復帰回動不能に位置保持してあることを特徴とする。
【0009】
偏心カム37の周面に、クランプ体4を押し下げ操作する操作カム面43と、操作カム面43に連続する保持カム面44とを設ける。クランプハンドル6をクランプ位置まで回動操作した状態において、保持カム面44がクランプ体4に外接して、クランプハンドル6をクランプ位置に位置保持できるようにする。
【0010】
クランプ体4の下部に、検査対象55の接続端子部58を押圧する弾性体24を設ける。偏心カム37の左右幅寸法を、弾性体24の左右幅寸法より広幅に形成する。
【0011】
偏心カム37を断面円形の丸棒で形成して、操作カム面43と保持カム面44とを連続する円弧面で形成する。
【0012】
ブラケット3は、ベース1に固定される台部32と、台部32の上面前方へ突設される左右一対の軸受腕33とを一体に備えている。クランプハンドル6は一対の軸受腕33で支軸36を介して軸支する。クランプハンドル6と軸受腕33との間に、クランプハンドル6の待機位置側の回動限界を規定する第1ストッパー48を設ける。台部32とハンドル腕38との間に、クランプハンドル6のクランプ位置側の回動限界を規定する第2ストッパー49を設ける。
【0013】
接続基板2をベース1の上面に締結したガイド枠7で固定する。ガイド枠7の前部に接続端子部58を導入案内するポケット17を形成し、ポケット17の底に固定端子12を臨ませる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査用コネクターにおいては、偏心カム37と、偏心カム37を回動操作するハンドル腕38などでクランプハンドル6を構成し、回動操作される偏心カム37でクランプ体4をばね5に抗して押し下げることにより、接続端子部58をクランプ体4で固定端子12に向かって押し付けて接続できるようにした。このように、上下スライド自在なクランプ体4を偏心カム37で押し下げて、検査対象55の接続端子部58を固定端子12に接続するコネクターによれば、一群の接続端子部58をクランプ体4で固定端子12と平行に押圧できる。したがって、全体がクリップ状に構成された従来のコネクターに比べて、一群の接続端子部58をむらなく均等に押し付けて固定端子12に接続できる。また、クランプハンドル6を回動操作して接続端子部58を挟持するので、クランプハンドル6を回動操作するときの操作抵抗の違いから、接続端子部58が所定の接続位置に正しくセットされているか否か、あるいは適正に接続されたか否かを明確に知ることができ、したがって、勘違いによる検査ミスを防止できる。
【0015】
また、クランプ位置においてクランプハンドル6を復帰回動不能に位置保持するので、使用者の明確な意図の許にクランプ状態を解除しない限りは接続状態を維持でき、外力や外部振動によって接続端子部58が位置ずれし、あるいは接続不良に陥るのを確実に防止できる。さらに、クランプハンドル6に誤って接触した程度で接続端子部58が位置ずれするのを防止でき、全体として検査用コネクターの信頼性を向上できる。また、待機位置とクランプ位置におけるクランプハンドル6の姿勢が大きく変わるので、使用時における誤操作や勘違もよく防止できる。
【0016】
偏心カム37の周面に操作カム面43と保持カム面44とを設け、クランプ位置において保持カム面44がクランプ体4に外接して、クランプハンドル6をクランプ位置に位置保持するコネクターによれば、クランプハンドル6を位置保持するための専用部品や構造を別途設ける必要がなく、その分だけコネクターの構造を簡素化して製造に要するコストを節約できる。また、クランプハンドル6をクランプ位置へ回動操作して位置保持し、あるいはクランプハンドル6を待機位置へ復帰回動操作するときの動作を簡素化できるので、その分だけ検査対象55の着脱の手間を省くことができる。
【0017】
クランプ体4の下部に弾性体24を設けて、接続端子部58を弾性変形した弾性体24で面接触状に押し付けるようにすると、接続端子部58を固定端子12にむらなく均等に密着でき、しかも弾性体24と接続端子部58との接触面積が大きくなる分だけ摩擦抵抗を増強して、検査時に接続端子部58がずれ動くのを確実に防止できる。また、偏心カム37の左右幅寸法を弾性体24の左右幅寸法より広幅に形成することにより、クランプ体4が偏心カム37で押し下げられるときの平行度を向上して、接続端子部58を弾性体24でさらに均等に押し付けることができる。弾性体24は、不使用状態においては自由状態を維持しており、クランプハンドル6がクランプ位置へ回動された状態においてのみ弾性変形する。そのため、長期使用時に弾性体がくせ付けされ、あるは弾性力が徐々に損なわれて挟持力が低下するのを一掃できる。
【0018】
偏心カム37を断面円形の丸棒で形成して、操作カム面43と保持カム面44とを連続する円弧面で形成すると、丸棒の周面になんら加工を加える必要もなく両カム面43・44を得ることができ、その分だけ偏心カム37の加工の手間を省いてコストを削減できる。また、連続する円弧面で両カム面43・44を形成するので、偏心カム37とクランプ体4との接触面における、相対的な滑り運動を円滑に行なうことができる。クランプ体4と接当するカム面が、操作カム面43から保持カム面44へ変化するときに、偏心カム37が節動することもない。
【0019】
クランプハンドル6の待機位置側の回動限界とクランプ位置側の回動限界を、第1ストッパー48および第2ストッパー49で規定するコネクターによれば、クランプハンドル6が不必要に回動操作されるのを両ストッパー48・49で規制して、無駄な回動動作を排除できるので、検査対象55の着脱に要する手間をさらに省いて迅速化できる。接続端子部58が過剰に押圧されて変形することもない。
【0020】
接続基板2をベース1の上面に締結したガイド枠7で固定して、ガイド枠7に設けたポケット17の底に固定端子12を臨ませ、さらにポケット17で接続端子部58を導入案内するコネクターによれば、接続端子部58を固定端子12とクランプ体4との間に差し込み操作するとき、ポケット17の左右の対向壁で接続端子部58を左右方向に位置決めして固定端子12と正対させることができる。したがって、固定端子12および接続端子部58が一群の微細な端子体で構成してあるような場合でも、両者12・58を位置ずれのない状態で適正に密着し接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施例) 図1ないし図8は本発明に係る検査用コネクターの実施例を示す。図2において検査用コネクターは、ベース1と、ベース1の上面に固定される接続基板2およびブラケット3と、ベース1の上面に設けたガイドピン18で上下スライド自在に支持されるクランプ体4と、クランプ体4を押し上げ付勢するばね5と、クランプ体4をばね5の付勢力に抗して押し下げ操作するクランプハンドル6と、ガイド枠7などで構成する。この実施例における前後および左右は、図2に示す十字線および前後左右の表示に従うこととする。
【0022】
図3においてベース1は、横長四角形状の電気絶縁性に優れたプラスチック板材からなる。ベース1の上面の前部中央には、左右横長のガイド板10が接着固定され、ガイド板10の後縁近傍に左右一対の位置決めピン11が固定してある。ガイド板10は、電気絶縁性に優れた接続基板2と同じ厚みのプラスチック板材からなり、その左右幅は、接続基板2と同じ左右幅に設定してある。
【0023】
接続基板2はプリント基板からなり、基板上面の前端に金メッキされた一群の固定端子12が直線列状に配置され、基板上面の後端に後述する検査回路56を接続するためのコネクターソケット13が配置してある。固定端子12とコネクターソケット13とは、基板の下面側に設けた配線リードを介して電気的に導通されている。接続基板2の前部左右には、先の位置決めピン11と係合する位置決め穴14が上下貫通状に形成してある。
【0024】
位置決め穴14を位置決めピン11に嵌め込んで接続基板2を位置決めし、さらに接続基板2の上面に重ねたガイド枠7をベース1にビス16で締結することにより、接続基板2がベース1に固定されている。この状態の接続基板2は、図5に示すようにガイド板10と面一になっている。
【0025】
図3および図4においてガイド枠7は、左右横長の硬質プラスチック製の板状体からなり、その左右中央の前部にポケット17が切り欠き形成され、ポケット17を間に挟む枠上面の左右にガイドピン18が上向きに突接してある。ポケット17の後周壁の下部には、薄肉の位置規制壁19が前向きに突接してあり、ポケット17の下面側には、接続基板2を受け入れる基板凹部20が形成してある。ガイド枠7には、ビス16用の挿通穴および位置決めピン11用の係合穴が、それぞれ上下貫通状に形成してある。ガイド枠7をベース1に締結した状態においては、接続基板2の固定端子12の一群とガイド板10の後部とがポケット17の底に臨む。
【0026】
クランプ体4は、断面が四角形の左右横長の硬質プラスチック製の棒状体からなり、その下面の左右中央に押圧部22を一体に備えている。図5に示すように押圧部22の下面には断面が三角形状の装着溝23が形成されて、その内部に丸軸状の弾性体24が接着固定してある。弾性体24は、耐候性と電気絶縁性に優れたシリコーンゴムを素材にして形成してあり、その左右長さは一群の固定端子12が占める領域の左右幅より僅かに大きく、ポケット17の左右幅より僅かに小さく設定してある。図6に示すようにクランプ体4の左右両端寄りには、スライド穴25が上下貫通状に形成してあり、その上端に受座が凹み形成してある。スライド穴25の上端には、先のガイドピン18でスライド案内されるブッシュ27が固定してある。
【0027】
ガイドピン18に圧縮コイル形のばね5を外嵌装着し、クランプ体4のブッシュ27をガイドピン18に嵌め込み、ガイドピン18の上端にE形の止め輪28を装着することにより、クランプ体4がガイドピン18で上下スライド自在に案内支持され、止め輪28によって抜止される。この組み付け状態において接続基板2に設けた固定端子12とクランプ体4とは上下に対向している。図5に示すように、クランプ体4がばね5で押し上げられた状態においては、弾性体24は固定端子12から浮き離れていて、両者の間に検査対象55の接続端子部58を差し込むための隙間が確保してある。
【0028】
ブラケット3はプラスチック材を素材にして形成してあり、4個のビス31でベース1に締結固定される台部32と、台部32の上面前方へ突設される左右一対の軸受腕33とを一体に備えている。台部32の下面には、検査回路56のコネクタープラグ60を差し込み案内するガイド溝34が形成してある(図1参照)。
【0029】
クランプハンドル6は、ブラケット3の一対の軸受腕33で支軸36を介して回動可能に軸支される偏心カム37と、偏心カム37を回動操作するハンドル腕38などで構成する。金属製の支軸36の両端は左右の軸受腕33で回転自在に軸支してある。偏心カム37の左右幅は弾性体24の左右幅より充分に大きく、クランプ体4の左右幅より小さい。偏心カム37の両端と左右の軸受腕33との間には、偏心カム37の横方向の遊動を規制するディスタンスカラー39が配置してある。
【0030】
偏心カム37は耐摩耗性に優れたプラスチック製の丸棒からなり、丸棒中心から偏心した位置に支軸36用の挿通穴40を形成することにより、断面円形の丸棒の周面をカム面として利用している。詳しくは図1に示すように、先のクランプ体4を押し下げ操作する操作カム面43と、操作カム面43に連続する保持カム面44とを設けている。両カム面43・44の境界は中立点45となる。支軸36を偏心カム37と同行回動させるために、偏心カム37にねじ込んだ止めねじ42の先端を支軸36に強圧している。
【0031】
図1において中立点45は、支軸36の回動中心(偏心カム37の回動中心)Pと偏心カム37の丸軸中心Qとを結ぶ仮想中心線Lを想定するとき、仮想中心線Lとカム面との交差部分に位置しており、回動中心Pからの距離が最大となる部分である。中立点45を始点にして、これより時計回転方向下手側が操作カム面43となり、中立点45より時計回転方向上手側が保持カム面44となる。このように、偏心カム37を断面円形の丸棒で形成すると、操作カム面43および保持カム面44を連続する円弧面で形成してカム面の加工を省略できる。なお、この実施例においては、回動中心Pを通る垂直面内に、弾性体24の中心と、ガイドピン18の中心とを位置させるようにした。
【0032】
ハンドル腕38は金属製の丸棒からなり、その一端が偏心カム37に固定してある。クランプハンドル6を、図2および図5に示す待機位置と、図1に示すクランプ位置との間でのみ往復回動させるために、クランプハンドル6と軸受腕33との間に第1ストッパー48を設け、台部32とハンドル腕38との間に第2ストッパー49を設けている。第1ストッパー48は、図4に向かって左側の軸受腕33の外側面に固定される規制突起51と、支軸36と同行回転するストッパーピン52とで構成する。第2ストッパー49は、ハンドル腕38の長手方向中途部に外嵌固定した丸筒状のストッパー片53と、台部32の上面壁とで構成する。
【0033】
上記のように、クランプハンドル6の回動限界を、第1・第2の両ストッパー48・49で規定することにより、ハンドル腕38は待機位置において僅かに後傾する姿勢で起立している(図5参照)。また、クランプ位置におけるハンドル腕38は、先端側へ向かって僅かに下り傾斜する状態で横臥して、腕先端が台部32の後縁より後方へ突出している。この状態では、中立点45がクランプ体4の上面と直交し回動中心Pを通る垂直線Rを通り越して、保持カム面44がクランプ体4の上面と接当している(図1の拡大図参照)。
【0034】
上記の状態では、中立点45が先の垂直線Rを復帰方向へ通り越すのに必要な外力がハンドル腕38に加わらない限りは、クランプハンドル6をクランプ位置に位置保持できる。中立点45を復帰方向へ動かすのに必要な先の外力は、保持カム面44でクランプ体4を受け止めた状態のばね5の弾性力より大きい必要があり、しかもクランプ体4の上面と保持カム面44との滑り摩擦抵抗に打ち勝つ大きさでなければならない。因みに、保持カム面44で受け止められたクランプ体4は、回動中心Pを通り、しかもクランプ体4の上面と直交する垂直線よりも中立点45の側へ偏った位置で保持カム面44に外接する。そのため、クランプハンドル6にはばね5の弾性力によって時計回転方向の回転モーメントが作用し、その結果、クランプハンドル6をクランプ位置に位置保持できるということもできる。
【0035】
図8に検査用コネクターの使用例を示す。そこでは検査対象55を検査用コネクターを介して検査回路56に接続し、検査対象55の電子回路が適正に作動するか否かを検査回路56で検査する。検査対象55は、フレキシブル配線板からなる入出力用の信号線57を備えており、その導出端の片面に先の固定端子12に接続される接続端子部58が設けてある。検査回路56の入出力用の信号線59の導出端には、コネクターソケット13に連結されるコネクタープラグ60が設けてある。コネクタープラグ60をコネクターソケット13に一旦接続した後は、検査内容の変更などがない限り分離することはない。
【0036】
検査対象55側の接続端子部58を検査用コネクターに接続するときは、図5に示すように、クランプハンドル6を待機位置に起立させて、クランプ体4に設けた弾性体24を接続基板2の上方に位置させておく。このときの押圧部22の左右側面の下部は、ポケット17の内部に入り込んでいて、左右方向の移動がポケット17の内面壁で規制されている。この状態で、検査対象55の接続端子部58を、ガイド板10に沿ってポケット17の内部に差し込んで、接続基板2と弾性体24との間に位置させる。このとき、接続端子部58の先端を位置規制壁19の前端面19aに接当して差し込み方向に位置決めし、さらにポケット17の左右の対向壁で接続端子部58を左右方向に位置決めする。
【0037】
位置決めされた接続端子部58を片手で保持した状態のまま、他方の手でハンドル腕38をクランプ位置まで回動操作することにより、クランプ体4を偏心カム37で押し下げ操作して、接続端子部58を弾性体24で固定端子12に押し付けることができる。このように、接続端子部58を弾性体24と固定端子12とで挟持した状態においては、左右横長の偏心カム37によってクランプ体4が均等に押し下げられる。また、図7に示すように、弾性体24が三角形状に弾性変形して接続端子部58を面接触状に押圧している。そのため、接続端子部58の全体をむらなく均等に押し付けて、固定端子12に強く押し付けることができる。検査が終了したら、ハンドル腕38を起立操作することにより、弾性体24を接続端子部58から分離して信号線57を取り外すことができる。
【0038】
上記の実施例以外に、偏心カム37は丸棒で形成する必要はなく、断面が多角形状の棒状体で形成することができる。操作カム面43は部分円弧面以外の湾曲面や、連続して屈曲する平坦面などで形成することができる。保持カム面44は平坦面で形成することができる。その場合には第2ストッパー49を省略して、保持カム面44でクランプ位置側の回動限界を規定することができる。ハンドル腕38は1個の金属棒で形成する必要はなく、コ字枠状や平板状などに形成することができる。必要があれば、偏心カム37とハンドル腕38を一体に形成することができる。検査対象55が異なるごとに接続基板2およびガイド枠7を交換して、個々の検査対象55に対応したコネクターとすることができる。
【0039】
クランプハンドル6をクランプ位置に位置保持するために、ハンドル腕38を復帰回動不能に固定するロック構造を台部32に設けることができる。例えば、台部32の上面に弾性係合体を設けておき、ハンドル腕38の一部を弾性係合体に圧嵌係合して復帰回動不能にロック保持することができる。弾性体24はシリコーンゴム以外のゴム、あるいはゴム状のプラスチック弾性体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】接続端子部を挟持固定した状態の検査用コネクターの縦断側面図である。
【図2】検査用コネクターの斜視図である。
【図3】ベース、接続基板、ガイド枠の分解斜視図である。
【図4】検査用コネクターの分解斜視図である。
【図5】待機状態の検査用コネクターの縦断側面図である。
【図6】接続端子部を挟持固定した状態の検査用コネクターの縦断正面図である。
【図7】図1におけるA部の拡大図である。
【図8】検査用コネクターの使用例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ベース
2 接続基板
3 ブラケット
4 クランプ体
5 ばね
6 クランプハンドル
12 固定端子
17 ポケット
24 弾性体
36 支軸
37 偏心カム
38 ハンドル腕
43 操作カム面
44 保持カム面
55 検査対象
58 接続端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース(1)と、ベース(1)の上面に固定される接続基板(2)およびブラケット(3)と、ベース(1)の上面に設けたガイドピン(18)で上下スライド自在に支持されるクランプ体(4)と、クランプ体(4)を押し上げ付勢するばね(5)と、クランプ体(4)をばね(5)の付勢力に抗して押し下げ操作するクランプハンドル(6)とを備えており、
接続基板(2)に設けた固定端子(12)とクランプ体(4)とは、上下に対向する状態で平行に配置されており、
クランプハンドル(6)は、ブラケット(3)で回動可能に支持されて待機位置とクランプ位置との間を回動変位できる偏心カム(37)と、偏心カム(37)を回動操作するハンドル腕(38)とを備えており、
クランプ位置において、クランプハンドル(6)が復帰回動不能に位置保持してあることを特徴とする検査用コネクター。
【請求項2】
偏心カム(37)の周面に、クランプ体(4)を押し下げ操作する操作カム面(43)と、操作カム面(43)に連続する保持カム面(44)とが設けられており、
クランプハンドル(6)をクランプ位置まで回動操作した状態において、保持カム面(44)がクランプ体(4)に外接して、クランプハンドル(6)をクランプ位置に位置保持できる請求項1に記載の検査用コネクター。
【請求項3】
クランプ体(4)の下部に、検査対象(55)の接続端子部(58)を押圧する弾性体(24)が設けられており、
偏心カム(37)の左右幅寸法が、弾性体(24)の左右幅寸法より広幅に形成してある請求項2に記載の検査用コネクター。
【請求項4】
偏心カム(37)が断面円形の丸棒で形成されて、操作カム面(43)と保持カム面(44)とが連続する円弧面で形成してある請求項2または3に記載の検査用コネクター。
【請求項5】
ブラケット(3)が、ベース(1)に固定される台部(32)と、台部(32)の上面前方へ突設される左右一対の軸受腕(33)とを一体に備えており、
クランプハンドル(6)が一対の軸受腕(33)で支軸(36)を介して軸支されており、
クランプハンドル(6)と軸受腕(33)との間に、クランプハンドル(6)の待機位置側の回動限界を規定する第1ストッパー(48)が設けられており、
台部(32)とハンドル腕(38)との間に、クランプハンドル(6)のクランプ位置側の回動限界を規定する第2ストッパー(49)が設けてある請求項2、3または4に記載の検査用コネクター。
【請求項6】
接続基板(2)がベース(1)の上面に締結したガイド枠(7)で固定されており、
ガイド枠(7)の前部に接続端子部(58)を導入案内するポケット(17)が形成されており、
ポケット(17)の底に固定端子(12)が臨ませてある請求項2、3、4または5に記載の検査用コネクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−15894(P2010−15894A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176040(P2008−176040)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(390041162)株式会社飛鳥電機製作所 (6)
【Fターム(参考)】