説明

検査用デバイス及びそれを用いた均一混合稀釈方法

【課題】 濃度むらのない均一混合稀釈を実行することができる検査用デバイス及びそれを用いた均一混合稀釈方法を提供すること。
【解決手段】
検査用デバイス40は、稀釈液導入チャンバー41、稀釈液分配チャンバー42、被稀釈液用チャンバー43及び混合用チャンバー44を備え、稀釈液導入チャンバー41と稀釈液分配チャンバー42は、キャピラリーバルブ122aを有する流路で結合され、稀釈液分配チャンバー42と被稀釈液用チャンバー43は、オーバーフロー流路112aと流路111aとで結合され、被稀釈液用チャンバー43と混合用チャンバー44は、流路111bで結合され、流路111bには、被稀釈液用チャンバー43の出口付近に、キャピラリーバルブ122bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として臨床検査分野において使用される検査用デバイスであって、特に高倍率稀釈を必要とする被検物質を測定するための検査用デバイス及びそれを用いた均一混合稀釈方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析・解析・検査技術の進歩により、様々な物質を測定することが可能となってきている。特に、臨床検査分野においては、生化学反応、酵素反応、もしくは、免疫反応等の特異反応に基づく測定原理の開発により、病態に反映する体液中の物質を測定できるようになった。
【0003】
その中で、ポイント・オブ・ケア・テスティング(以下「POCT」という。)と呼ばれる臨床検査分野が注目されている。POCTは、簡易迅速測定を第一とし、検体を採取してから検査結果が出るまでの時間の短縮を目的とした取り組みが行われている。したがって、POCTに要求されるのは、簡易な測定原理であり、小型で携帯性があり、操作性が良い測定装置である。
【0004】
近年の技術開発の進歩により、例えば、血糖センサに代表されるように簡単に測定できる小型の測定機器が開発されてきている。POCTの波及効果は、迅速な測定結果の取得による迅速正確な診断を可能とすることに加え、検査にかかるコストの低減、血液等の検体の少量化に伴う被検者の負担の軽減及び感染性廃棄物の少量化等が考えられる。現在、臨床検査ではPOCTへの移行が急速に起こっており、そのニーズに応えるべくPOCT対応測定機器の開発が行われている。
【0005】
POCT分野において、注目を受けている測定項目として、ヘモグロビンA1c(ヘモグロビンエーワンシー;糖化蛋白の一種)がある。ヘモグロビンA1cは、糖尿病患者の1〜3ヶ月間の長期血糖コントロールの目安として有用な検査項目である。
【0006】
このヘモグロビンA1cは、血液中の全ヘモグロビン濃度に対する比として算出される。他の測定対象物と異なり、ヘモグロビンA1cを含むヘモグロビン類は、赤血球の中に存在しているので、測定を行うためには溶血操作が必要である。「溶血」とは、赤血球膜が破れ、ヘモグロビン類が赤血球の外に排出される現象をいう。より詳細には、赤血球の大きさは、外液の浸透圧によって影響される。赤血球は、生理的食塩水(0.9%NaCl)より濃い塩溶液中では、水が外に出て収縮し、一方、生理的食塩水(0.9%NaCl)より薄い溶液中では、水が中に入って膨張する。このような収縮及び膨張過程において、赤血球膜が破れると、ヘモグロビン類が赤血球の外に排出される。血液が完全に溶血された場合、全ヘモグロビン濃度は、約150g/Lである。
【0007】
したがって、ヘモグロビンA1cを測定する場合、血液を予め溶血した後に、さらに、分析できる範囲の濃度域まで、緩衝液を用いて稀釈する必要がある。すなわち、従来のものは、分析とは別に前処理用として溶血試薬等の試薬が必要となり、その試薬の使用のために操作ステップが多くなり、簡易に分析できるものではなかった。
【0008】
このような問題点を解決するため、POCT用の装置としてのバイエル製のDCL2000システムでは、簡易に稀釈液が導入できるような工夫がなされている(特許文献1参照。)。すなわち、このシステムでは、実質的に水平な回転軸回りに回転操作される反応カセットを採用しており、この反応カセットは、液体試料を内部に導入するための注入口と、この注入口と連通する反応路とを具備している。また、その反応路は、分析試薬を組み込んだ試薬域と、液体試料の重力による流れを乱すよう液体試料に接触しカセットの回転により液体試料を攪拌する手段とを有しており、カセット内に導入した液体試料をカセット回転により反応路に沿って流動させることで分析試薬と液体試料とを接触させ、反応路内で分析試薬と液体試料との混合物を攪拌手段により攪拌することで、所定の反応を促し、液体試料中の分析対象物を分析測定するようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開平3−46566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来の構成にあっては、ヘモグロビン類のように高濃度で存在しうる測定対象物に対しては、高い倍率で稀釈液を混合させ、かつ、十分に攪拌させ、測定対象物を測定しようとする方法の許容測定レンジに合わせ込む必要がある場合、デバイスの外部から振動等の外力をかける必要があるが、デバイスが小型化されるほど必要となる外力は大きくする必要があり、デバイスを作動させる装置の機械的な負担が大きくなる、もしくは、装置の騒音の問題が生じる。逆に、外力によらず、小型化されたデバイス内部で流体の乱流を発生させて、稀釈を実施しようとしても、測定対象物に対して稀釈液が大部分を占めるような高倍率の稀釈においては、均一に攪拌して十分に混合させることは困難である。すなわち、POCT分野の測定装置として、重要な要素である小型化・簡易化への対応に限界がある。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、濃度むらのない均一混合稀釈を実行することができる検査用デバイス及びそれを用いた均一混合稀釈方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の検査用デバイスは、デバイス本体に、検体注入孔と空気孔とが連通された複数のチャンバーと、前記複数のチャンバーに設けられた複数の流路と、前記複数の流路を1つに統合させた流路統合領域とを形成した検査用デバイスであって、所定の回転中心を基準として前記デバイス本体を回転させる回転手段を備え、前記複数のチャンバーのうちいずれか1つのチャンバーに前記検体注入孔から混合させる液が導入されるとともに、前記複数のチャンバーのうち別のチャンバーに被混合物質が収容され、前記混合させる液及び前記被混合物質が収容されたデバイス本体を前記回転手段が回転させることにより、前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記被混合物質を段階的に混合させることによって、均一混合が実行されるようにした構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、混合させる液及び被混合物質が収容されたデバイス本体を回転させることにより、混合させる液を2つ以上に分配し、被混合物質を段階的に混合させることによって、均一混合することが可能となるので、濃度むらのない均一混合稀釈を実行することができる。
【0014】
また、本発明の検査用デバイスは、前記デバイス本体の回転中心側を示す内周側から前記デバイス本体の回転中心から離隔する側を示す外周側に向かって形成された複数の前記流路統合領域を有し、複数の前記流路統合領域は、内周側から外周側に向かって段階的に大きく形成される構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、回転を止めることなく、流体を、各段階の均一混合される流路統合領域に順次移送することができ、段階的な均一混合を連続的に実行することができる。
【0016】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記チャンバーは、第1及び第2の流路と、前記第1の流路が接続された第1の流路形成部を含む第1の側面部と、前記第2の流路が接続された第2の流路形成部を含む第2の側面部と、内周側に設けられた第1の端面部と、外周側に設けられた第2の端面部とを備え、前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記混合させる液を前記被混合物質に段階的に導入して混合させる場合において、前記第1及び前記第2の流路が1つに統合される構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、第1及び第2の流路形成部の位置を設定することによって、所定の比率で液体を分配することができる。
【0018】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記第1の流路形成部は、内外周方向に対して、前記第2の流路形成部の位置よりも外周側に形成される構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、チャンバー内の大部分の液を第1の流路から取り出すことができる。
【0020】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記第1の流路は、内外周方向に対して、前記第1の流路形成部の位置よりも内周側に設けられた折り返し頂部を備えた構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、チャンバーに液が満たされていく際に、折り返し頂部を超えた流体を次のチャンバーに移送することができる。
【0022】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記折り返し頂部は、内外周方向に対して、前記第2の流路形成部の位置と同レベル又は内周側のいずれかの位置で、かつ、前記チャンバーの前記第1の端面部と前記第2の端面部との間に設けられた構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、よりスムーズに液体を分配することができる。
【0024】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記第2の流路は、オーバーフロー流路であることが好ましい。
【0025】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、オーバーフロー流路を介し、チャンバーからあふれた液をよりスムーズに分配することができる。
【0026】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記混合させる液を前記被混合物質に段階的に導入し混合させる場合において、分配された前記混合させる液を、前記被混合物質に段階的に導入できるよう一時的に保持する一時保持チャンバーを備えた構成を有している。
【0027】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、分配された混合させる液を、被混合物質に段階的に導入することができる。
【0028】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記一時保持チャンバーは、流路と、前記流路が接続された流路形成部と、内周側に設けられた第1の端面部と、外周側に設けられた第2の端面部とを備え、前記流路は、前記流路形成部の内外周方向の位置よりも内周側に設けられた折り返し頂部を有し、前記折り返し頂部は、内外周方向に対して、前記一時保持チャンバーの前記第1の端面部よりも外周側に配置される構成を有している。
【0029】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、一時保持チャンバーに液を満たしつつ、次のチャンバーに液を連続的に移送することができる。
【0030】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記被混合物質が血液成分であり、前記混合させる液が溶血させる液であるのが好ましい。
【0031】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、試薬液と溶血液とを濃度むらなく均一混合稀釈することができる。
【0032】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記溶血が部分溶血であるのが好ましい。
【0033】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、試薬液と部分溶血液とを濃度むらなく均一混合稀釈することができる。
【0034】
さらに、本発明の検査用デバイスは、前記混合させる液が、溶血されたヘモグロビン類を変性する試薬液であるのが好ましい。
【0035】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、血液成分と溶血されたヘモグロビン類を変性する試薬液とを濃度むらなく均一混合稀釈することができる。
【0036】
さらに、本発明の検査用デバイスは、均一混合された混合液中の成分を測定する手段を有する構成を有している。
【0037】
この構成により、本発明の検査用デバイスは、均一混合された混合液中の成分を測定することができる。
【0038】
本発明の均一混合稀釈方法は、回転操作中に混合させる液と被混合物質とを混合させる方法であって、前記混合させる液を2つ以上に分配した後、前記被混合物質に段階的に導入し混合させることによって均一混合を行う構成を有している。
【0039】
この構成により、本発明の均一混合稀釈方法は、濃度むらのない均一混合稀釈を実行することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、回転により生じる遠心力によって、測定対象物と稀釈液とを簡易に均一混合稀釈することができる。特に、ヘモグロビン類のように高濃度で存在しうる測定対象物に対しては、高い倍率で稀釈液を混合させ、かつ、十分に攪拌させ、測定対象物を測定しようとする方法の許容測定レンジに合わせ込む必要がある場合、特に、デバイスの外部からの振動等の外力を必要とせず、装置への機械的な負担を軽減し、さらには、激しい機構により発生する騒音の問題を回避でき、本発明の目的である均一混合稀釈を、簡易に、効率よく実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0042】
なお、以下に説明する各検査用デバイスは、デバイス本体に毛細管等の機能流路が形成され、専ら回転操作して使用されるものであるが、その回転中心がデバイス本体内にあるもの(自ら回転する回転形態)、あるいは、デバイス本体外にあるもの(所定半径の円周軌道上を移動する回転形態)のいずれであってもよい。
【0043】
本実施の形態に係る検査用デバイスは、カセット状のデバイス本体に、検体注入孔と空気孔とが連通された複数のチャンバーと、複数のチャンバーに設けられた複数の流路と、複数の流路を1つに統合させた流路統合領域とを形成した検査用デバイスであって、デバイス本体を所定の回転中心を基準として回転させる回転手段を備え、複数のチャンバーのうちいずれか1つのチャンバーに検体注入孔から混合させる液が導入されるとともに、複数のチャンバーのうち別のチャンバーに被混合物質が収容され、混合させる液及び被混合物質が収容されたデバイス本体を回転手段が回転させることにより、混合させる液を2つ以上に分配し、被混合物質を段階的に混合させることによって、均一混合が実行されるようになっている。
【0044】
一般的に、ある物質を溶解して溶液を調製する場合、まず、溶解させる液のうち少量を使用して溶解させ、その後、残りの溶解させる液で段階的に攪拌しながら混合する。このように、段階的な混合を行うことで、効率よく均一に混合することができる。このような例は、日常の試薬調製の中では、当然の操作であり、例えば、1M水酸化ナトリウムを調製する場合等を考えれば、この操作による均一混合の効率性は想像することができる。
【0045】
また、高倍率に稀釈する場合も、同様で、例えば、100倍以上の混合稀釈を実行しようとすれば、均一混合するために、十分に攪拌しなければならない。よって、よく推奨されているのは、100倍以上に稀釈する場合、10倍稀釈を2回以上する稀釈操作を行う。これも、いわゆる段階的な混合方法であり、この方が効率よく均一に混合できることを説明できる例の一つとなり得る。
【0046】
本発明は、これらの思想を回転制御によって行う検査用デバイスの中に組み込むことによって、簡易に均一混合が実行できるようにすることを特徴としている。
【0047】
本実施形態の検査用デバイスにおける均一混合される領域の形態としては、回転開始から導入される流路統合領域から、検査用デバイスの回転中心から離隔する側(以下、「外周側」という。)に向かって配置される別の流路統合領域を、段階的に大きく形成させている。これは、回転を止めることなく、流体を、各段階の均一混合される流路統合領域に順次移送するためである。混合される液量に対して小さい量の流路統合領域への導入は、混合される液量が多いために流路統合領域をあふれて、別の流路統合領域へ移送することができる。したがって、連続的に段階的な混合が実現できるような構成になっている。ここで、流路統合領域とは、2つの流路の接点であり、その接点はチャンバーであってもよい。また、最終の統合領域は、デバイス内に含まれる全ての液量よりも大きく設定される。これは、液がデバイス外にあふれないようにするためにある。
【0048】
本実施形態の検査用デバイスは、混合させる液を2つ以上に分配し、段階的に混合させる液を被混合物質に導入し混合させるため、チャンバーの両側面からそれぞれ2つの流路が出ており、2つの流路が1つに統合されているチャンバーを含む。そして、チャンバーからの2つの流路の出口(流路形成部)位置を設定することで、所定の比率で液体を分配することができる。
【0049】
具体的には、チャンバーの両側面から出ている2つの流路の出口位置のうち、一方の出口位置はチャンバーの下面部(外周側に設けられた第2の端面部)に形成され、もう一方は、チャンバーの下面部から出ている出口位置より上側(回転中心側)に形成される。さらに、チャンバーの下面部から出ている流路は逆U字形の流路(以下、「逆U字流路」という。)にする。このような流路形状をとることによって、チャンバーに液が導入され、逆U字流路により、チャンバーに満たされていき、その後、上側に配置されるもう一方の流路より液の一部があふれ出て行く。その過程で、逆U字流路の頂点部を流体が越えると、チャンバーに満たされている液が次のチャンバーに移送される。
【0050】
すなわち、液の大部分が逆U字流路から、液の一部が逆U字流路の出口位置より上側に配置されるもう一方の側面の流路から、それぞれ取り出され、結果的に、液を一部の液と大部分の液とに分配することができる。ここで、分配された一部の液で被混合物質を混合させ、その後、この混合された液を、分配された大部分の液により混合させるのである。
【0051】
ここで、逆U字流路の頂点部は、チャンバーのもう一方の側面から出ている流路の出口位置と同レベルの位置か、出口位置よりも検査用デバイスの回転中心に近い側(以下、「内周側」という。)の位置、かつ、チャンバーの上面部(内周側に設けられた第1の端面部)より外周側の位置に配置されるように形成されると、よりよく液体を分配することができ、さらには、チャンバーの、もう一方の側面から出ている流路をオーバーフロー流路にするのが、より好ましい。
【0052】
本実施形態の検査用デバイスに係る一時保持チャンバーは、混合させる液を2つ以上に分配し、段階的に混合させる液を被混合物質に導入し混合させるための検査デバイスの形態は混合させる液を2つ以上に分配し、段階的に混合させる液を被混合物質に導入し混合させる場合において、分配された混合させる液を、被混合物質に段階的に導入できるように一時的に保持できるものである。そして、一時的に保持するために、チャンバーからの流路は、逆U字流路であり、逆U字流路の頂点部が、チャンバーの上面部より下面部側に配置されていればよい。こうすることで、チャンバーを液で満たしつつ、連続的に次のチャンバーに液を移送することができる。
【0053】
なお、本実施形態に係る逆U字流路は、逆U字型のみに限定されるものではなく、例えば、逆V字型でもよい。すなわち、チャンバーから出る流路が半径軸の内周方向に出て、その後、半径軸の外周方向へ向かうような流路であればよい。
【0054】
本実施形態においては、被混合物質が血液成分であり、混合させる液が溶血させる液である。さらに、溶血が部分溶血である場合もある。また、溶血されて血漿中に出てきたヘモグロビン類を免疫学的に測定する場合には、変性する必要があり、変性試薬を混合させる液に含ませる場合もあり得る。
【0055】
ここで、部分溶血とは、溶血剤の量により溶血を部分的に実施し、血漿液に含まれるヘモグロビン濃度を少なくする(これを部分溶血と定義し、部分溶血により得られた血漿を部分溶血血漿液とする。)手法である。さらに、溶血させるための試薬とは、例えば、塩類、界面活性剤がそれぞれ考えられる。これらは、いずれも、赤血球を浸透圧の変化によって破壊することを目的として使用されるものである。
【0056】
本実施形態の検査用デバイスに係る均一混合過程において、特に、ヘモグロビンA1cを免疫反応測定原理により行う場合、ヘモグロビンA1cのβ鎖末端アミノ酸領域を露出させる目的で、変性剤により変性させる必要がある。ここで、変性剤とは、例えば、カオトロピックイオンを含む塩類、あるいは、酸化剤や界面活性剤等である。
【0057】
また、変性剤の代わりに酵素を含ませてもよい。すなわち、溶血血漿液中の蛋白質を分解させて、ヘモグロビンA1cのβ鎖末端アミノ酸断片を生成させることで、免疫反応測定を行うこともあり得る。
【0058】
本実施形態の検査用デバイスにおいて、均一混合された混合液中の成分を測定する手段を有することにより、均一混合工程に引き続き、混合液中に含まれる物質を測定することができる。例えば、ヘモグロビンA1cの場合は、ヘモグロビン及びヘモグロビンA1cを免疫学的に測定し、ヘモグロビンA1c値を算出する。詳細には、ヘモグロビンは、例えば、ラテックス標識抗ヘモグロビンポリクローナル抗体を用いてラテックス免疫凝集測定を行う。ヘモグロビンA1cは、例えば、ラテックス標識抗ヘモグロビンA1c抗体と凝集剤を用いてラテックス免疫凝集阻止測定を行う。
【0059】
以上、本実施形態において、特に、基本的な機能は、回転操作中に混合させる液と被混合物質とを混合させる方法であって、混合させる液を2つ以上に分配し、段階的に被混合物質に導入し混合させることによって均一混合を行い、均一混合稀釈方法を実施することにある。
【実施例】
【0060】
以下に、本実施形態に係る検査用デバイス及び均一混合稀釈方法の実施例を詳細に説明する。なお、ここでの実施例に係る具体的な限定は、本発明の要旨を限定するものではない。
【0061】
(実施例1)
図1乃至図3は、本発明の第1実施例の検査用デバイスを示す図である。
【0062】
本実施例の検査用デバイスは、図1に示すような基本的な流路パーツを組み合わせてデバイス本体に造り込んだものであり、同図(a)にそのチャンバー及び流路を構成する第1の流路パーツを、同図(b)にその流路中に厚みの大きい部分であるキャピラリーバルブを配した第2の流路パーツを示している。
【0063】
まず、この図1によりその基本的な流路パーツの構成を説明し、次いで、その作製方法について図2及び図3を用いて説明する。
【0064】
図1(a)に示す第1の流路パーツ11には、稀釈、混合、反応、検出等の分析工程を達成するための場となるチャンバー112と、このチャンバー112に連通するように形成された流路111及び空気孔113とが、それぞれ形成されている。なお、チャンバー112は流路111が接続された部位から離隔する側に他の流路接続する際に使用するオーバーフロー流路112aを有し、空気孔113はこれらの両者から離隔するよう配置されている。
【0065】
この流路パーツ11では、逆U字流路の頂点部114をチャンバー112の上面部115より内周側に設定することで、回転中に生じる遠心力によってチャンバー内に流体を保持することができる。なお、連続的に流体を流し続けるには、逆に、逆U字流路の頂点部114をチャンバー112の上面部115より外周側に設定すればいい。
【0066】
本実施例の場合は、一旦、チャンバー112内に流体を保持する必要があるので、逆U字流路の頂点部114をチャンバー112の上面部115より内周側に設定している。
【0067】
図1(b)に示す第2の流路パーツ12は、全体として略逆U字形をなしその両端が全体形状の短手方向一方側に傾けられた流路121と、この流路121上に配置されて流路121より厚み(断面積)の大きい空間を形成しているキャピラリーバルブ122とを有している。流路パーツ12のキャピラリーバルブ122は、毛細管現象を利用した流体の移送に対し流体を静止させる静止手段であり、その流路の厚み(断面積)を前後の流路より十分に大きくすることにより、デバイス本体の回転を停止した後に毛細管現象により流路121を流れる流体の流れを停止させ、所要の区間における流体を静止させることができる。本実施例においては、流体を静止したい箇所、タイミング、区間を考慮して適宜キャピラリーバルブを設けている。
【0068】
図2及び図3は、図1で示す基本的な流路パーツを有するデバイスの作製手順を説明する図であり、これらの図に示すように、本実施例の検査用デバイスは、3層構造となっている。なお、図2(a)は流路パーツ11の作製手順を示す図で、同図(b)はその完成状態を示す図1のA−A矢視断面図となっている。また、図3(a)は流路パーツ12の作製手順を示す図で、同図(b)はその完成状態を示す図1のB−B矢視断面図となっている。
【0069】
まず、図2を用いて流路パーツ11の作製手順について詳細に説明する。
【0070】
チャンバー112及び頂点部114を形成するに際して、図2(a)中の切り取り工程Cに示すように、両面粘着性シート21(芯23の厚さが50μm、接着剤層22の厚さが両面それぞれ25μmのフレックスコン社(FLEXCON Corporation)製両面粘着性シート)から、カッテイングプロッター(グラフテック社(GRAPHTECH Corporation)製、CE3000−40)を用いて、チャンバー112及び流路111に対応する部分29を切り取った。この切り取りは、下面部の接着剤層の剥離紙24以外の層に切り込みをいれ、チャンバーとなる部分を剥ぎ取るようにして行った。
【0071】
一方、ベース基盤27はポリスチレン(polystyrene;以下「PS」と略す。)をコーティングした。すなわち、ポリカーボネート製の円盤状基盤に対して、ポリスチレン(シグマアルドリッチ社(Sygma-Aldrich Corporation)製)の2−アセトキシ−1−メトキシプロパンの1重量(w/v)%溶液をスピンコートした。スピンコートしたベース基盤(PSコートしたベース基盤)は、一晩、真空状態で十分に乾燥させた。
【0072】
また、トップカバー26には、予め空気孔113を開けておき、チャンバー112に対応する凹部112Cを成形しておく。
【0073】
こうして調整した3つの層を、両面粘着性シート25を介して貼り合わせて基本流路パーツ11を作製した。
【0074】
流路パーツ12を作成する際には、図3に示すように、図2に示す作製手順と同様の手順で、両面粘着性シート21からカッテイングプロッターを用いて流路121及びキャピラリーバルブ122の一部に対応する部分30を切り取り、一方、キャピラリーバルブが必要となる箇所のトップカバー31にはキャピラリーバルブ122の一部に対応する凹部122Cを成形して、これらをベース基盤27上で3層に貼り合わせることで、流路パーツ12とする。
【0075】
そして、以上説明した基本的な流路パーツ11、12を必要だけ適宜組み合わせて(接続して)使用することにより、本発明の目的とする機能を有する検査用デバイスを所要の流路パターンで作製することができる。
【0076】
(実施例2)
図4及び図5は、本発明の第2の実施例の検査用デバイス及びその回転操作用の回転装置を示す図であり、本実施例の検査用デバイスは図4に示すような流路デザインを有している。
【0077】
本実施例に係る検査用デバイス40は、高倍率の均一混合稀釈を実現するための基本となる流路パーツを備えており、これらの流路パーツは、稀釈液のうち少量の稀釈液と大量の稀釈液とに分配し、少量の稀釈液によって混合された溶液に対して、大量の稀釈液により混合させるためのものである。これは、2段階の稀釈でもって、濃度むらなく稀釈させるための基本的な流路パーツである。以下、構成を具体的に説明する。
【0078】
図4に示す検査用デバイス40は、図1に示した流路パーツ11、12を組み合わせて、デバイス本体(図示していない)内に、稀釈液導入チャンバー41、稀釈液分配チャンバー42、被稀釈液用チャンバー43及び混合用チャンバー44を設けたものである。
【0079】
稀釈液導入チャンバー41と稀釈液分配チャンバー42は、キャピラリーバルブ122aを有する流路で結合させており、稀釈液分配チャンバー42と被稀釈液用チャンバー43は、オーバーフロー流路112aと流路111aとで結合させたものである。また、被稀釈液用チャンバー43と混合用チャンバー44は、流路111bで結合させたものである。流路111bには、被稀釈液用チャンバー43の出口付近に、キャピラリーバルブ122bが設けられている。
【0080】
ここで、稀釈液分配チャンバー42は、80μl(マイクロリットル)相当の稀釈液を導入することができる大きさ(容積)を有し、稀釈液導入チャンバー41及び被稀釈液用チャンバー43は、それぞれ稀釈液分配チャンバー42より大きく100μl相当、150μl相当を導入することができる大きさを有する。また、被稀釈液用チャンバー43は5μl相当のチャンバーとしている。これらのチャンバー41、42、43、44には空気孔113a、113b、113c、113dを、稀釈液導入チャンバー41及び被稀釈液用チャンバー43には注入孔45a、45bが設けられている。
【0081】
また、稀釈液分配チャンバー42は、上面部42aと、下面部42bと、左側面部42cと、右側面部42dとを備え、左側面部42cは、流路111aが接続された第1の流路形成部42eを有し、右側面部42dは、オーバーフロー流路112aが接続された第2の流路形成部42fを有している。なお、特許請求の範囲の請求項3に記載の第1の端面部及び第2の端面部とは、それぞれ、上面部42a及び下面部42bのことをいう。また、第1の側面部及び第2の側面部とは、それぞれ、左側面部42c及び右側面部42dのことをいう。また、第1の流路及び第2の流路とは、それぞれ、流路111a及びオーバーフロー流路112aのことをいう。
【0082】
また、稀釈液分配チャンバー42において、流路111aの頂点部114aは、稀釈液分配チャンバー42の上面部42aとオーバーフロー流路112aの下面部47との間に配置されるようになっている。
【0083】
被稀釈液用チャンバー43は、上面部43aと、下面部43bと、流路111bが接続された流路形成部43cとを備えている。被稀釈液用チャンバー43に接続された流路111bの頂点部114bは、内外周方向に対して、上面部43aよりも外周側に配置されている。なお、特許請求の範囲の請求項9に記載の第1の端面部及び第2の端面部とは、それぞれ、上面部43a及び下面部43bのことをいう。
【0084】
次に、検査用デバイス40を実際に回転させて、流路パーツによる高倍率稀釈を実現する動作について説明する。その際、検査用デバイスの回転操作は、図5に示された基本構成をもつ回転装置700にデバイスを載置し、所定のタイミング及び時間だけ回転と停止を実行することでなされる。
【0085】
図5に示された回転装置700は、検査用デバイス40(デバイス本体の概略側面形状を示している。)を固定するクランパー711と、検査用デバイス40を支持するターンテーブル713と、ターンテーブル713を回転させるスピンドルモーター714と、スピンドルモーター714の回転を制御する制御デバイス715とで構成されている。
【0086】
次に、本実施例に係る検査用デバイス40の動作について説明する。
【0087】
使用するサンプルは全血検体(全血検査に用いられる検体)とし、溶血液についてはエッペンドルフチューブ(エッペンドルフ(eppendorf)社製の検査用試験管)中に入れた血液1mlに対して塩化カリウム1gを添加した後に、よく混和して調製した。
【0088】
まず、稀釈液導入チャンバー41の注入孔45aから稀釈液であるPBS(りん酸緩衝生理食塩水)を100μl入れ、さらに、被稀釈液用チャンバー43の注入孔45bから先に調製した溶血液を1μl入れた。この際、キャピラリーバルブ122a及び122bを設けているので、次に続くチャンバーには流れ出さずに静止した。また、空気孔113a、113cがあるために、稀釈液も、溶血液も簡単に入れることができた。
【0089】
その後、デバイス本体を回転数(速度)1000rpmで回転させることにより、溶血液のPBSによる稀釈を実施した。
【0090】
回転をかけると遠心力により、稀釈液であるPBS及び溶血液は、外周側に配置される混合用チャンバー44へ流れていく。その過程を以下説明する。
【0091】
まず、稀釈液導入チャンバー41のPBSは稀釈液分配チャンバー42へ流れていくが、稀釈液導入チャンバー41の容量より稀釈液分配チャンバー42の容量を小さく設定しているので、あふれるPBSが、オーバーフロー流路112aを通って、被稀釈液用チャンバー43に導入され、第1段稀釈が行われる。一方、稀釈液分配チャンバー42の大部分のPBSは、流路111aの頂点部114aを超えると、オーバーフロー流路112aより優先的に流路111aを流れていき、時間差をもって被稀釈液用チャンバー43へ流れていく。この際、流れてくるPBSの量より被稀釈液用チャンバー43の容量が小さいため、連続的に混合用チャンバー44へ、被稀釈液用チャンバー43内の第1段稀釈された溶血稀釈PBS溶液を洗い流すように導入され、第2段の稀釈が実施される。こうして結果的に約100倍の稀釈が実現された。
【0092】
以上、説明したように本実施例の検査用デバイス40は、回転操作中に、2段階の稀釈を実施させることにより高倍率の稀釈を濃度むら少なく実施させることができた。
【0093】
(実施例3)
本発明の第3の実施例の検査用デバイスは、図6に示すような流路デザインを有しており、以下このデバイスの構成について説明する。
【0094】
図6に示す検査用デバイス60は、図1に示した流路パーツ11、12を組み合わせて、デバイス本体(図示を省略している。)内に、稀釈液導入チャンバー61、稀釈液分配チャンバー62、被稀釈液用チャンバー63、混合用チャンバー64及びブランクチャンバー65を設けたものであり、ブランクチャンバー65を導入して2段以上の稀釈を実施することによって、濃度むらなく高倍率の稀釈が実現できるものである。
【0095】
各チャンバーには、流体が導入されやすいように図1に示された空気孔113を設けている(図6では省略する。)。各チャンバーを結合させる流路は、図1に示された流路111であり、その頂点部114は、各チャンバーの上面部より下側に設けてある。
【0096】
各チャンバーの容量は、稀釈液導入チャンバー61は100μl相当、稀釈液分配チャンバー62は30μl相当、被稀釈液用チャンバー63は5μl相当、混合用チャンバー64は、内周側から外周側に向かって順(64a、64b、64c)に、30μl相当、60μl相当、120μl相当とした。また、稀釈液導入チャンバーと稀釈液分配チャンバー62を結合させる流路には、図1に示すようなキャピラリーバルブ122を設けた(図6では省略する。)。さらに、稀釈導入チャンバーと被稀釈液用チャンバーには、注入孔66及び67を設けた。
【0097】
次に、検査用デバイス60を実際に回転させて、高倍率稀釈を実現する動作について説明する。
【0098】
使用するサンプルは全血検体(全血検査に用いられる検体)とし、溶血液についてはエッペンドルフチューブ(エッペンドルフ(eppendorf)社製の検査用試験管)中に入れた血液1mlに対して塩化カリウム1gを添加した後に、よく混和して調製した。
【0099】
検査用デバイス60に対して、稀釈液導入チャンバー61に稀釈液であるPBS100μlを注入孔66から、被稀釈液用チャンバー63に先ほど調製した溶血液1μlを注入孔67からそれぞれ導入した。その後、検査用デバイス60を回転数(速度)1000rpmで回転させることにより、溶血液のPBSによる稀釈を実施した。回転をかけると遠心力により、稀釈液であるPBS及び溶血液は、外周側に配置される混合用チャンバー64cへ流れていく。その過程について図6及び図7を用いて説明する。図7は、混合の基本的なフローを示す図である。
【0100】
まず、稀釈液導入チャンバー61のPBS稀釈溶液は、稀釈液分配チャンバー62a、62b、62cに導入され、分配される。その後、稀釈液分配チャンバー62aに分配されたPBS稀釈溶液は、溶血液1μlを含む被稀釈液用チャンバー63に、溶血液を洗い流すように導入され、続いて、混合用チャンバー64aに導入される(1段稀釈)。一方で、ブランクチャンバー65aにより稀釈液分配チャンバー62bのPBSは時間差をもって混合用チャンバー64aに導入される。この際、容量が62bから流される量の方が、混合用チャンバー64aより多いので、64aで1段稀釈されている溶血液のPBS稀釈溶液は、連続的に混合用チャンバー64bへ導入される(2段稀釈)。さらに、同様に、稀釈液分配チャンバー62cのPBS稀釈溶液は、ブランクチャンバー65b及び65cを経ることで時間差をもって混合用チャンバー64bに導入され、混合用チャンバー64bにある2段稀釈された溶血液のPBS稀釈溶液は、混合用チャンバー64cに導入される(3段稀釈)。このように、3段稀釈をすることにより、濃度むらなく、約100倍の稀釈を実施することができた。
【0101】
以上、説明したように本実施例の検査用デバイス60は、回転操作中に、2段階の稀釈を実施させることができ、高倍率の稀釈を濃度むら少なく実施させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る検査用デバイスはその回転操作の過程において、稀釈液を分配し、2段階以上の稀釈を実施させることにより濃度むら少なく稀釈工程を実施することができる。これによって高倍率の稀釈を簡易に実施することができ、特に、濃度が高い被検物質(例えばヘモグロビン類)を検査する際に必要となる高倍率の稀釈工程を検査に先立ち、簡易に実施することができ、主として臨床検査分野で使用されるPOCT分野の検査デバイスに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本実施形態に係る検査用デバイスを構成する基本的な2つの流路パーツを示す図
【図2】本発明の実施例1の検査用デバイスを構成する第1の流路パーツの作製方法の説明図で、同図(b)は図1(a)のA−A矢視断面図
【図3】本発明の実施例1の検査用デバイスを構成する第2の流路パーツの作製方法の説明図で、同図(b)は、同図(b)は図1(b)のB−B矢視断面図
【図4】本発明の実施例2の検査用デバイスの概略流路構成を示す回路構成図
【図5】本発明のデバイスを回転させるための回転装置を示す概略図
【図6】本発明の実施例3の検査用デバイスの概略流路構成を示す回路構成図
【図7】本発明の混合の基本的なフローを示す図
【符号の説明】
【0104】
11 基本流路パーツ(第1の流路パーツ)
12 キャピラリーバルブを含む流路パーツ(第2の流路パーツ)
21、25 両面粘着性シート
22 接着剤層
23 芯
24 剥離紙
26、31 トップカバー
27 ベース基盤
29、30 切り取り部
40、60 高倍率稀釈流路デザインを含む検査用デバイス
41、61 稀釈液導入チャンバー
42、62(62a、62b、62c) 稀釈液分配チャンバー(一時保持チャンバー)
42a 稀釈液分配チャンバーの上面部(第1の端面部)
42b 稀釈液分配チャンバーの下面部(第2の端面部)
42c 稀釈液分配チャンバーの左側面部(第1の側面部)
42d 稀釈液分配チャンバーの右側面部(第2の側面部)
42e 稀釈液分配チャンバーの第1の流路形成部
42f 稀釈液分配チャンバーの第2の流路形成部
43、63 被稀釈液用チャンバー(一時保持チャンバー)
43a 被稀釈液分配チャンバーの上面部(第1の端面部)
43b 被稀釈液分配チャンバーの下面部(第2の端面部)
43c 被稀釈液分配チャンバーの流路形成部
44、64c 混合用チャンバー
45a、45b、66、67 注入孔
47 オーバーフロー流路の下面部
64a、64b 混合用チャンバー(一時保持チャンバー)
65(65a、65b、65c) ブランクチャンバー(一時保持チャンバー)
111(111b)、121 流路
111a 流路(第1の流路)
112 チャンバー
112C、122C 凹部
112a オーバーフロー流路(第2の流路)
113(113a〜113d) 空気孔
114(114a、114b) 頂点部
115 チャンバーの上面部
122(122a、122b) キャピラリーバルブ
700 回転装置(回転手段)
711 クランパー
713 ターンテーブル
714 スピンドルモーター
715 制御デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス本体に、検体注入孔と空気孔とが連通された複数のチャンバーと、前記複数のチャンバーに設けられた複数の流路と、前記複数の流路を1つに統合させた流路統合領域とを形成した検査用デバイスであって、
所定の回転中心を基準として前記デバイス本体を回転させる回転手段を備え、
前記複数のチャンバーのうちいずれか1つのチャンバーに前記検体注入孔から混合させる液が導入されるとともに、前記複数のチャンバーのうち別のチャンバーに被混合物質が収容され、
前記混合させる液及び前記被混合物質が収容されたデバイス本体を前記回転手段が回転させることにより、前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記被混合物質を段階的に混合させることによって、均一混合が実行されるようにしたことを特徴とする検査用デバイス。
【請求項2】
前記デバイス本体の回転中心側を示す内周側から前記デバイス本体の回転中心から離隔する側を示す外周側に向かって形成された複数の前記流路統合領域を有し、複数の前記流路統合領域は、内周側から外周側に向かって段階的に大きく形成されることを特徴とする請求項1記載の検査用デバイス。
【請求項3】
前記チャンバーは、第1及び第2の流路と、前記第1の流路が接続された第1の流路形成部を含む第1の側面部と、前記第2の流路が接続された第2の流路形成部を含む第2の側面部と、内周側に設けられた第1の端面部と、外周側に設けられた第2の端面部とを備え、前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記混合させる液を前記被混合物質に段階的に導入して混合させる場合において、前記第1及び前記第2の流路が1つに統合されることを特徴とする請求項1又は2記載の検査用デバイス。
【請求項4】
前記第1の流路形成部は、内外周方向に対して、前記第2の流路形成部の位置よりも外周側に形成されることを特徴とする請求項3記載の検査用デバイス。
【請求項5】
前記第1の流路は、内外周方向に対して、前記第1の流路形成部の位置よりも内周側に設けられた折り返し頂部を備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の検査用デバイス。
【請求項6】
前記折り返し頂部は、内外周方向に対して、前記第2の流路形成部の位置と同レベル又は内周側のいずれかの位置で、かつ、前記チャンバーの前記第1の端面部と前記第2の端面部との間に設けられたことを特徴とする請求項5記載の検査用デバイス。
【請求項7】
前記第2の流路は、オーバーフロー流路であることを特徴とする請求項3から6までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項8】
前記混合させる液を2つ以上に分配し、前記混合させる液を前記被混合物質に段階的に導入し混合させる場合において、分配された前記混合させる液を、前記被混合物質に段階的に導入できるよう一時的に保持する一時保持チャンバーを備えたことを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項9】
前記一時保持チャンバーは、流路と、前記流路が接続された流路形成部と、内周側に設けられた第1の端面部と、外周側に設けられた第2の端面部とを備え、前記流路は、前記流路形成部の内外周方向の位置よりも内周側に設けられた折り返し頂部を有し、前記折り返し頂部は、内外周方向に対して、前記一時保持チャンバーの前記第1の端面部よりも外周側に配置されることを特徴とする請求項8記載の検査用デバイス。
【請求項10】
前記被混合物質が血液成分であり、前記混合させる液が溶血させる液であることを特徴とする請求項1から9までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項11】
前記溶血が部分溶血であることを特徴とする請求項1から10までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項12】
前記混合させる液が、溶血されたヘモグロビン類を変性する試薬液であることを特徴とする請求項1から9までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項13】
均一混合された混合液中の成分を測定する手段を有することを特徴とする請求項1から12までのいずれかに記載の検査用デバイス。
【請求項14】
回転操作中に混合させる液と被混合物質とを混合させる方法であって、前記混合させる液を2つ以上に分配した後、前記被混合物質に段階的に導入し混合させることによって均一混合を行うことを特徴とする均一混合稀釈方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−317250(P2006−317250A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139499(P2005−139499)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】