説明

検査用枚葉紙搬送装置

【課題】検査用カメラによる検査精度の高い検査用枚葉紙搬送装置を提供する。
【解決手段】枚葉紙検査装置に用いる検査用枚葉紙搬送装置であって、上部に検査用カメラを備え、一対の水平平行軸で回転する駆動ローラ6と従動ローラ7、該一対のローラに裏面側を接して周回自在に張設される無端メッシュベルト8、従動ローラと駆動ローラの上面に移動する無端メッシュベルトの裏面が摺動するプレート面であって、多数の空気吸引孔を有する固定プレート4を上表面として有し、下方の開口部に排出ファンを有する吸引タンク、前記カメラ目線が該吸引タンクの横幅を垂直に横切る位置に設けられていて、かつ吸引タンクの固定プレート面と段差がない平坦面を形成する複数の空気吸引孔5付き表面を有するピンポイント吸引ダクト及び該ピンポイント吸引ダクトを吸引するリングブロアー若しくは真空ポンプを有することを特徴とする検査用枚葉紙搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフイルム等のシート状の枚葉紙を平坦に保持した状態で検査及び搬送する検査用枚葉紙搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、枚葉紙の印刷品質に対する上質思考の要求に伴い、その品質検査をイメージカメラを介して、コンピュータ処理にて傷、汚れ、位置ずれ、色むら等々の欠点を判別する生産方式がとられつつある。
この品質検査は印刷品質のみならず、印刷前の白紙の欠点検査も行い、製造過程で起きたであろう紙のすきむら、穴あき、しわ、破れ、虫の飛び込み等、その他コート紙に至ってはストリーク等を検出している。
従来技術では、給紙部より連続的に給紙された枚葉紙は、検査用枚葉紙搬送装置の上流の見当装置により前後左右に位置規制された後、検査用枚葉紙搬送装置上の検査用カメラ目線の下を150m/分前後の高速で通過し、該通過時に瞬時に枚葉紙の良否を判別し、検査用枚葉紙搬送装置の下流において、検査用カメラ側よりの信号出力で、良の枚葉紙と不良の枚葉紙を仕分けて、良枚葉紙蓄積部と不良枚葉紙蓄積部に分けて集積される。
検査用枚葉紙搬送装置においては、搬送中の枚葉紙の幅方向及び検査用カメラの目線下を枚葉紙の先端が通過して、後端が通過し終わるまで、枚葉紙の上下のバタツキ、凸凹、前後左右、斜めの位置ずれが少しでも生じると検査用カメラによる検査精度が低下する。
先行技術として、図4、図5に示すように、多数の吸引孔を設けた固定プレートと、この固定プレート上を移動し、枚葉紙を添接させる網状搬送ベルト、前記固定プレートの内部に設けた吸引ファン16によって、搬送枚葉紙を、網状搬送ベルト上に吸引固定して検査するシート状物搬送装置が特開2005−231756号公報に開示されている。
この検査用枚葉紙搬送装置を用いて検査するとき、吸引ファン16によって、搬送枚葉紙を、網状搬送ベルト上に吸引固定している。吸引ファン16の吸引力は、網状搬送ベルトの中央部と隅部で均一でなく、搬送枚葉紙が不均一な吸引力で吸引されることが避けられない。
その結果、枚葉紙の上下のバタツキを押さえるために、吸引ファン16の回転を強くすると、枚葉紙の一部は、網状搬送ベルトに吸い込まれることによる凹凸が生じる欠点が生じ、また、無端ベルトの継ぎ目による凹凸も避けられない。しかし、ベルトの吸引力を弱く設定すると、枚葉紙のバタツキの欠点が発生する。さらに、枚葉紙の網状搬送ベルト上への吸引が弱いと、枚葉紙の表面の正確な上下の位置がぶれて、検査精度が低下する。
また、ベルトの周回には必ず存在する蛇行による枚葉紙の横ぶれによる検査精度の低下を防止しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−231756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、検査用枚葉紙搬送装置の無端メッシュベルトへの枚葉紙吸引によって生じる枚葉紙の凹凸によるカメラ検査時の精度低下の欠点を解消することを課題として、検査用カメラによる検査精度の高い検査用枚葉紙搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の検査用枚葉紙搬送装置においては、搬送中の枚葉紙は特に検査用カメラ15の検出部において、上下のバタツキ、凸凹、前後左右、斜めの位置ずれがなく、かつ検査用カメラ15の検出部を紙の先端から終端が通過するまで精密な平坦性を保つことが要求される。
本発明者は、鋭意研究の結果、前記本発明の先行技術(特許文献1)の多数の吸引孔が設けられた固定プレート4とその上を摺動する無端メッシュベルト8による枚葉紙の検査工程に、固定プレート4の下方からの空気吸引を適用する技術構成の空気吸引の手法を改良することによって、カメラの検出部を紙の先端から終端が通過するまで精密な平坦性を保つことができることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明の空気吸引の手法の改良は、先行技術の空気吸引の手法が単なるファンによる固定プレート4の下面の全面に対する吸引であるのに対して、本発明は、固定プレート4の下面の全面に対する空気の吸引を、ファン方式から吸引タンク付きファン方式にすることで、正確に制御された均一で、安定した吸引力で無端メッシュベルト8の下面から吸引できることを見出し、無端メッシュベルト8の上の全体的な枚葉紙のバタツキを完全に押さえることができた。そして、カメラ目線の位置の空気の吸引を、ピンポイント吸引ダクトを介してリングブロアー若しくは真空ポンプにより、特に、強く吸引することによって、検査部分の正確な平坦性を保持する2段階の吸引手段を適用することによって、検査部分の正確な平坦性を確保して、ファンの空気吸引によって生じる凹凸の防止と紙の上下のバタツキを押さえた点に特徴がある。
すなわち、本発明は、
(1)枚葉紙検査装置に用いる検査用枚葉紙搬送装置であって、上部に検査用カメラを備え、一対の水平平行軸で回転する駆動ローラと従動ローラ、該一対のローラに裏面側を接して周回自在に張設され、従動ローラの上面から、駆動ローラの上面に達し、駆動ローラのロール面を回って、駆動ローラの下面から、従動ローラの下面に繋がっている無端メッシュベルト、従動ローラの上面から、駆動ローラの上面に移動する無端メッシュベルトの裏面が摺動するプレート面であって、多数の空気吸引孔を有する固定プレートを上表面として有し、下方の開口部に排出ファンを有する吸引タンク、該吸引タンクの上面の前記カメラ目線が該吸引タンクの横幅を垂直に横切る位置に設けられていて、かつ吸収タンクの固定プレート面と段差がない平坦面を形成する複数の空気吸引孔付き表面を有するピンポイント吸引ダクト及び該ピンポイント吸引ダクトを吸引するリングブロアー若しくは真空ポンプを有することを特徴とする検査用枚葉紙搬送装置、
(2)ピンポイント吸引ダクトを、多数の空気吸引孔を有する固定プレートを上表面として有する吸引タンクの内部に一体的に、固定して設ける(1)項記載の検査用枚葉紙搬送装置、及び、
(3)搬送に用いる該無端メッシュベルトを駆動ローラと従動ローラとの間に張架し、該無端メッシュベルトの左右両側部に無端メッシュベルトの走行方向に延在する一対の凸条体を設けるとともに、該駆動ローラと従動ローラの周面に該無端メッシュベルトの凸条体が係合する係合溝を設けたことを特徴とする(1)又は(2)項記載の検査用枚葉紙搬送装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の減圧吸引タンクによる固定プレート4の全般的な緩和な吸引及びピンポイント吸引方式によるカメラの検出部分の強い吸引の2段吸引手段によって、紙面の凹凸の形成を防止するとともに、枚葉紙のあばれ、バタツキを抑制し、検査用カメラ15の検出部を枚葉紙の先端から終端が通過するまで精密な平坦性を保つことができ、枚葉紙が安定し正確な検査をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の検査用枚葉紙搬送装置の実施例の平面図である。
【図2】本発明の検査用枚葉紙搬送装置の実施例の断面図である。
【図3】本発明の検査用枚葉紙搬送装置に使用する無端メッシュベルトの断面図である。
【図4】従来の検査用枚葉紙搬送装置の一例の平面図である。
【図5】従来の検査用枚葉紙搬送装置の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の検査用枚葉紙搬送装置の実施例の平面図であり、図2は、図1の装置の断面図である。図1ではカメラと光源用の蛍光灯は省略してある。図3は、図1に使用されている無端メッシュベルト8を垂直に切断した断面図である。
検査用枚葉紙搬送装置は互いに対向するように立設された左右一対のフレーム1が備えられている。これらのフレーム1にはそれぞれ対向する二対の軸遊挿孔2が設けられている。これら軸遊挿孔2に対応して、左右のフレーム1の外面には、それぞれ軸受3がネジによって取り付けられている。
固定プレート4は金属製の平板によって長方形に形成されている。この全面にわたって均一に多数の空気吸引孔5が穿孔されている。この固定プレート4は、駆動ローラ6と従動ローラ7との間に位置付けられるようにして、左右のフレーム1にブラケットを介して取り付けられている。
無端メッシュベルト8は無端状に形成されて、左右方向の幅が固定プレート4の幅よりもやや小さく形成されており、固定プレート4上に添接するように、駆動ローラ6と従動ローラ7との間に張設されている。この無端メッシュベルト8は、厚みが薄く剛性が小さいポリエステルによって15〜50メッシュ/インチ程度の網目状に形成されており、図3に示すように左右両側部の裏面には、この無端メッシュベルト8の走行方向に対して平行に凸条リブ9が一体に突設されている。無端メッシュベルト8は、凸条リブ9を、駆動ローラ6と従動ローラ7の係合溝10に嵌合させながら周回するので、無端メッシュベルト8の蛇行回転による印刷面の横ズレは解消し、正確な検査を遂行できる。
従動ローラ7から駆動ローラ6に枚葉紙を乗せて走行する無端メッシュベルト8の下面に、多数の空気吸引孔5を有する固定プレート4を上表面として有する吸引タンク11が設置されている。吸引タンク11は、真空ポンプによって適度に減圧されている。吸引タンク11を介した軸流ファン17による吸引は、ファンによる吸引と異なり、無端メッシュベルト8の下面を均一に吸引することができる。そのため、枚葉紙の凹凸が発生しない比較的弱い減圧度であっても、枚葉紙は高速移動する無端メッシュベルト8上に安定して保持される。
固定プレート4上を高速で走行する無端メッシュベルト8は、吸引タンク11の多数の空気吸引孔5を有する固定プレート4の表面を摺動して走行し、枚葉紙全面が均一に吸引固定され、枚葉紙のバタツキが完全に抑制できる。しかし、吸引タンク11の減圧度を大きく設定すると、枚葉紙は、空気吸引孔5に吸い込みにより紙面に微細凹部が生じ、検査精度を低下させる。吸引タンク11は、順逆に走行する上下の無端メッシュベルト8の内部空間に設定することが望ましいが、図2に示すように、吸引タンク11の内部を駆動ローラ6から従動ローラ7へ走行する無端メッシュベルト8が通過するようにすることもできる。この場合、減圧度は、低下するが、低い減圧度における均一性は依然と保持される。
【0009】
図2のように検査用枚葉紙搬送装置の上部には光源である蛍光灯14と検査用カメラ15が設置されている。検査用枚葉紙搬送装置の吸引タンク11の上面のカメラ目線12が該吸引タンク11の横幅を垂直に横切る位置にピンポイント吸引ダクト13が設けられている。
このピンポイント吸引ダクト13の上面は、吸収タンクの固定プレート4面と段差がない平坦面を形成する空気吸収孔付き表面となっている。これにより、カメラ目線12の位置の狭い面積において吸引力が増し安定かつ確実に吸引がされ、枚葉紙紙面の正確な平坦性が得られる。
吸引タンク11の下方の開口部には、強力な風力を起こす排出用軸流ファン17が設けられていて、吸引タンク内の空気を排出する。吸引タンク11が介在するために、強力な排出を行う軸流ファン17の吸引力は弱められ、吸引タンク11の上面に係る吸引力を全面に亘り均一にすることができる。
ピンポイント吸引ダクト13には、リングブロアー若しくは真空ポンプ(図示していない)が連結されて、ピンポイント吸引ダクト13内を吸引タンク11より強い減圧下に維持できる。ピンポイント吸引ダクト13の減圧度は、圧力計と連動して自動的に制御することができる。
このように構成されていることにより、駆動ローラ6を駆動して無端メッシュベルト8を走行させるとともに、吸引を作動させた状態で枚葉紙を無端メッシュベルト8上に給紙する。無端メッシュベルト8の上方に滞留しているエアーが、無端メッシュベルト8の間及び固定プレート4の吸引孔を通って、固定プレート4の下方に吸引されているので、無端メッシュベルト8の表面に添接した枚葉紙は無端メッシュベルト8の表面に吸着する。従って、枚葉紙は無端メッシュベルト8の走行に追従し、固定プレート4の表面に添接するようにして搬送される。搬送されながらカメラによって枚葉紙の印刷面の品質と紙自体の品質とが検査される。
搬送用ベルトを無端メッシュベルト8にしたことにより、無端メッシュベルト8を通過する吸引エアーの量が多くなるため、枚葉紙が無端メッシュベルト8に密着性良く吸着される。
固定プレート4の下面の全面に対する空気の吸引を、ファンから吸引タンクを介した軸流ファン方式の吸引とし、カメラ目線12の位置の空気の吸引を、リングブロアーによるピンポイント吸引ダクト13によって、特に、強く吸引する2段階の吸引手段を適用することによって、空気吸引によって生じる枚葉紙の凹凸を防止することができる。
本発明の装置において、枚葉紙に凹凸が発生することなく平坦状を保持した状態で搬送することができ、カメラによる検査を安定かつ正確に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の検査用枚葉紙搬送装置は印刷機械等に配置され印刷品質検査、印刷前の白紙の欠点検査、製造過程で生じた欠陥の検査等、紙工機分野において有用である。
【符号の説明】
【0011】
1 フレーム
2 軸遊挿孔
3 軸受
4 固定プレート
5 空気吸引孔
6 駆動ローラ
7 従動ローラ
8 無端メッシュベルト
9 凸条リブ
10 係合溝
11 吸引タンク
12 カメラ目線
13 ピンポイント吸引ダクト
14 蛍光灯
15 検査用カメラ
16 吸引ファン
17 軸流ファン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙検査装置に用いる検査用枚葉紙搬送装置であって、上部に検査用カメラを備え、一対の水平平行軸で回転する駆動ローラと従動ローラ、該一対のローラに裏面側を接して周回自在に張設され、従動ローラの上面から、駆動ローラの上面に達し、駆動ローラのロール面を回って、駆動ローラの下面から、従動ローラの下面に繋がっている無端メッシュベルト、従動ローラの上面から、駆動ローラの上面に移動する無端メッシュベルトの裏面が摺動するプレート面であって、多数の空気吸引孔を有する固定プレートを上表面として有し、下方の開口部に排出ファンを有する吸引タンク、該吸引タンクの上面の前記カメラ目線が該吸引タンクの横幅を垂直に横切る位置に設けられていて、かつ吸引タンクの固定プレート面と段差がない平坦面を形成する複数の空気吸引孔付き表面を有するピンポイント吸引ダクト及び該ピンポイント吸引ダクトを吸引するリングブロアー若しくは真空ポンプを有することを特徴とする検査用枚葉紙搬送装置。
【請求項2】
ピンポイント吸引ダクトを、多数の空気吸引孔を有する固定プレートを上表面として有する吸引タンクの内部に一体的に、固定して設ける請求項1記載の検査用枚葉紙搬送装置。
【請求項3】
搬送に用いる該無端メッシュベルトを駆動ローラと従動ローラとの間に張架し、該無端メッシュベルトの左右両側部に無端メッシュベルトの走行方向に延在する一対の凸条体を設けるとともに、該駆動ローラと従動ローラの周面に該無端メッシュベルトの凸条体が係合する係合溝を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の検査用枚葉紙搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−213464(P2011−213464A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84928(P2010−84928)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000220284)東京給紙機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】