説明

検査装置用照明システム

【課題】検査装置における照明装置の煩雑・且つ経験や勘に頼る非効率、不確実な調整作業を軽減し、論理的に最適化し、検査における生産性を向上させ、結果として不良率を下げ、稼働率を上げる。
【解決手段】センシングの為のカメラやセンサ200,201を備えた、検査装置に於いて、単色〜主に多色、異波長の光源を備えた照明100と100を複数軸方向に可動する機能102、103、104、場合により専用受光センサ107を備えた照明部分とそのコントローラ101とPC用ソフトウエア105を考案し、照明100の発光色、発光波長、発光光量、照射距離/範囲、照射角度、などを能動的に変化させ、記憶し、呼び出し、比較し、判断する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆる生産工場などで用いられる、照明装置から発した光を検査物に照射し、その 検査物からの反射光や透過光を用いて検査を行う汎用的な検査装置に用いられる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置から発した光を検査物に照射し、その検査物からの反射光や透過光を用いて検査を行う検査装置に於いては、検査判断の為に、検査物からの反射光や透過光のセンシングをCCDカメラやセンサ素子などで行う場合が殆どであるが、何れも検査物からの反射光や透過光を用いてセンシングする為、検査物に照射する光がセンシング結果に大きく影響を及ぼす事は明確である。その為、様々な光源、波長、照射距離、照射角度など、多種類の照明装置が存在する。検査装置設計者や検査担当者は検査物や検査内容に合わせて選択した照明装置を使い分け、或いは同一照明装置を用い検査物や検査内容に合わせて都度調整を行い、検査を実施している。
トンネル内監視など、大規模な監視カメラシステムで適正な光量に自動調節する機能に関して画像処理を利用して実現する方法も考案されているが、本特許のような汎用的な検査装置で容易に活用できる物は実現していない。
【特許文献1】特開2008-59846号公報
【0003】
照明装置の調整項目は、発光光量、発光色、照射範囲、照射距離、照射角度などがあり、これらが検査結果に影響する。照明装置を調整しつつ、センサの表示、画像処理装置のモニタ画面などを確認しながらの調整作業が必要となる。例えば、検査物の近似色での色合いの違いを判別したい場合や、微妙な光沢の違い、傷の有無などの検査の場合、判別を可能にする為の照明調整に熟練や経験を必要とし、多くの時間を要する場合がある。
【0004】
検査物の種類変更が頻度多く発生する、食品工場などの場合、検査物の変更毎に様々な段取り替えが必要となり、中でも検査装置の照明セッティング変更に多くの時間を消費する事がある。
【0005】
カメラやセンサを使った検査装置に於いては、照明装置の調整とカメラを使った画像センサや単体センサの調整が検査結果に関連して影響する。また更に、カメラやセンサ、照明装置それぞれに多くの設定項目があり、無数の組み合わせが発生する為、カメラやセンサの中には、過去の設定を呼び出せる物が存在するが、照明装置においては過去の設定、或いは検査物毎に適応した設定(照射距離、角度を含む)を正確に再現する具体的な方策が見当たらない。
【0006】
検査装置に用いられる 照明装置は、周囲温度、使用周囲湿度や、周囲明るさなどの外的要因の変化や発光体、発光素子の経時変化などにより、発光品質そのものに影響を受ける事は避けられない。同じ検査物でも検査時期により、照明の調整を取り直す場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、検査装置における照明装置の煩雑・且つ経験や勘に頼る非効率、不確実な調整作業の改善である。本発明は、上記 照明装置調整作業を軽減し、論理的に最適化し、検査における生産性を向上させ、結果として不良率を下げ、稼働率を上げる効果を狙った発明である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検査物の中の良品と不良品を安定して判別する為に、判別したい検査物毎に、照明装置が能動的に様々な照明光や照明の位置、角度の組み合わせを高速で変更、再現し、そのそれぞれの状態に於ける、カメラ、センサからの情報を収集し、それらを記憶、比較し演算する事により、当該検出物に最も適した照明の設定を導き出す機能。
変更できるパラメータと範囲例

【0009】
上項で導き出した検査物毎の適切な設定値は検査物独自の名称などの括りで記憶させ、呼び出し、照明装置で再現できる機能。検査物が頻繁に変更、繰り返される検査などに対応する。
【0010】
上項にて記憶し、再現した設定値に於いて、当該検査物の良品(基準品)を検査位置にセットし、記憶しているR,G,Bの設定値との差分を自動で照明側を補正する機能。主に、光源の経時劣化などの補正に対応する。
【0011】
連続して長時間稼動する検査ラインなどに於いて、ラインを止めずに設定値の補正を行う機能。例えば特定可能なマークやバーコードを付した当該検査物良品(基準品、初期設定に用いた基準検査物)を稼動中のラインに定期的に流し、初期のR,G,Bの入光量と比較し照明側で補正する。
【0012】
照明装置の設定項目とパラメータを任意で選択し、手動調整できる機能。
例えば、G(緑)の光源に関し、自動的にゆっくり明暗を繰り返す事を可能とし、設定者は、連続した明暗状態でセンサの数値や画像処理画面の状態変化を見ながら、最も最適な設定でストップ、確定できる。複数の担当者がいない場合などに対応する。また、光量パラメータの数値は実際の光量(カウント値)と手動設定時にも感覚的に一致する直線性を確保する。
【0013】
照明装置の自動設定変更などで対応不可能な状況を外部に知らせる機能。
検査物無し状態の入光量などを比較的長時間モニタし、入光量が連続的に下がる傾向になった場合や、自動補正で光量を増加させていき、光源の定格値を超えそうになった場合、また、温度センサなどからの照明装置の温度異常などを検出し電気接点としてアラームを出力する機能。原因がホコリなどの場合は上記電気接点をエアパージなどに活用し温度異常の場合は送風装置などの制御に使用できる機能。
【0014】
自動照明調整時の設定時間短縮機能。
本機能に於いては、設定項目とパラメータの莫大な組み合わせの中から、検査が安定して実施可能な設定をサーチする事がポイントとなるので、最適、或いは必要十分な解に如何に速く到達できるかが重要となる。その為、何も事前情報を与えない完全自動モードと、例えば何色と何色の判別である。などの情報を予め入力する事により、最短なサーチを実現するモード、また、照明の原点や可動範囲を定める事や、パラメータ変更の優先順位を設定できるなど、検査現場での実用的なカスタマイズ機能を提供する。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明の照明装置は、検査装置の中で唯一論理的に制御されていない事の多い照明装置の調整や補正を能動的光源部と可動部とそれを統括的に制御するコントローラ、ユーザが検査に応じた設定の行えるPC上ソフトウエアにより、論理的な調整や補正が実現する。現実的には、経験的に実施されることが殆どである検査用照明装置調整の大幅な工数削減効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
検査装置用照明装置の種別のうち、光源の選択という観点では、現在、多種の光源を一つの筐体に纏めたタイプが存在する。これは例えば、光源の色が赤、青、緑、白といった発光源が同一筐体内に設置されているものであるが、本発明の照明装置にこの様な複数光源タイプを用いた場合、照明装置そのものを変更することなく、照明装置の設定を変えることで様々な検査物で本発明の効果を享受できる。
【実施例1】
【0017】
食品の異品種(色違いパッケージ)混入検査の例(以下 図1参照)
1. 良品(基準品)500を検査位置にセットする。
2. 照明光源100はコントローラ101からの指令でR,G,Bそれぞれの光源の設定値を順次個別に0~2047に上げていき、カメラ/センサ200、201、本照明システム専用受光センサ107などから得られる入光量202がR,G,B,それぞれで飽和する(最大値になる)設定の最小値を記憶する。
3. 不良品501を検査位置にセットする。
4. コントローラ101、或いはPC106にインストールされた専用ソフトウエア105は 手順2.における良品500についてのR,G,B入光量を予め記憶している。これと不良品501でのR,G,B入光量とを比較し、R,G,Bそれぞれの値において予め設定しておいた、判別可能な入光量の絶対値差があるか否かを確認し、確認できれば手順2.で記憶した設定値に確定する。
5. 手順4.で十分な値差が得られない場合は、照明光源100と検査位置にある検査物500との距離600や照明光源100と検査位置にある検査物500との相対角度などを優先順位をつけて能動的に変更し、1,2,3,の手順を繰り返す。
【産業上の利用可能性】
【0018】
カメラ、画像センサを用いての検査工程を必要とするあらゆる製造現場にて、検査の段り替え工数の短縮と、検査の確実性向上に寄与できる可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を用いた一般的な検査システム例である。
【符号の説明】
【0020】
100:照明光源(主に複数の、或いは単一の光源を有する)
101:照明コントローラ(電源、制御)
102:照明光源可動軸(図例では対検査物距離方向)
103:照明光源可動モータ1(図例では対検査物距離方向)
104:照明光源可動用モータ2(図では照射角度方向)
105:本照明システム専用PCソフトウエア
106:パソコン
107:本照明システム専用受光センサ
200:検査用カメラ/センサ用コントローラ
201:検査用カメラ/センサ
202:検査用カメラ/センサ判定用データ、本照明システム専用受光センサデータ
203:検査物到来タイミング信号
204:FA用タッチパネル
300:検査物搬送用コンベア
500:検査物(良品基準)
501:検査物(不良品)
502:検査物
600:照明用光源と検査定位置にある検査物との距離
601:照明用光源と検査定位置にある検査物との距離設定可能範囲
602:照明用光源下面と検査定位置にある検査物との角度(照射角度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査物からの反射光や透過光、或いは検査物の画像を用いて検査を行う、カメラや、センサを備えた検査装置において検査物に光源を供する照明システムであって、発光源の発光量調整機能や、発光源の選択機能は旧より、場合により、発光源と同一筐体に組み込んだ、或いは自由に取り付け位置の選択できる本発明専用受光センサを備え、発光源と検査物との距離や角度を可動調整できる手段を備えるものであって、且つ、自動調整機能を有し、その判断の為に、自ら、光源の発光量や色、波長、光源と検査物の距離・角度等を予め入力されたアルゴリズムや任意の設定情報などを参照しながら、能動的かつ連続的に変化させ、それらおのおのの変数と 、同時にカメラやセンサ、本発明専用センサから得た、変化途中のおのおのの状態においての変数を対にし、複数組みを取り込み、それらを記憶し、比較し、演算し、最適な照明の設定を探し、それらを整理記憶し任意に呼び出す機能を備える照明システム。
【請求項2】
請求項1記載の照明システムが検査物に対し能動的に自らの光源の発光量や色、波長、光源と検査物の距離・角度等を変化させながら、最適な設定を記憶し、判断し、確定する際の基本的なアルゴリズムが搭載され、且つ、検査実施ユーザがアルゴリズムをカスタマイズ可能な機能を有する、照明システムに含有される専用ソフトウエア。
【請求項3】
請求項1,2記載の照明システムにおいて照明装置の設定項目とパラメータを任意で選択し、自動で能動的に、或いは手動で、且つ連続的若しくは間欠的に、任意の速度で変化させ、その時々の状態を確認しながら手動調整・手動設定が可能な機能を有する、照明システムに含有される専用ソフトウエア。
【請求項4】
請求項1,2,3記載の照明システムにおいて、自動で能動的に、かつ、手動では不可能な速度で、自らの光源の発光量や色、波長、光源と検査物の距離・角度等を変化させながら、その照明装置の各設定項目の組み合わせと、その各状態における、センサ、カメラ、画像処理装置からの検査判断に用いる値とを対にして複数記憶し、それらを比較し、判断し、保存し、呼び出させるという自動調整設定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−83282(P2012−83282A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231187(P2010−231187)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(595145658)エイ・アイ・エル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】