説明

検査装置

【課題】射出成形機の成形金型の型開時に成形品の成形不良を確実に検出することができ、不良検査の信頼性の向上を図ることが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置1は、型開した成形金型内を撮像するための撮像手段31と、撮像手段31をヘッド部21に取り付けて型開した成形金型内に進入させるように構成したロボットアーム2と、成形金型が型開されると、ロボットアーム2を駆動させてヘッド部21を成形金型内に進入させ、ヘッド部21に取り付けた撮像手段31により成形金型に保持された成形品5を正面から撮像し、得られた撮像画像に基づいて成形品5の不良判定を行うように制御する制御手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
射出成形機の成形金型で成形された成形品を検査する検査装置に関し、特に成形金型内に保持された状態の成形品を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、成形完了後、型開して金型に保持された成形品をエジェクトピンで突き出し、金型下方へ落下させて回収するか、取出機により金型から成形品を取り出して回収する。この成形後の成形品は、射出成形機外に設置する検査装置により欠損等のショート不良の有無が検査される。この場合、検査装置で成形不良が発見された段階では、すでに射出成形機で多くの成形不良品が製造されてしまう問題があった。
一方、金型の型開時に、金型外に設置したカメラにより金型内を撮像して監視する射出成形機監視装置がある(特許文献1)。この監視装置によれば、主に金型内の成形品の残留を監視するものであるが、射出成形機での成形時に成形品の不良を発見することもできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−67115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記監視装置では、金型に保持された成形品を金型外の斜め方向から撮像した監視画像により成形不良を検査することとなる。そのため、金型に保持された成形品のカメラから遠い箇所は、当該カメラの監視画像では死角となって捉え難く、当該箇所でのショート不良を見逃してしまうおそれがあった。従って、ショート不良の発生に気付かずに射出成形機が運転継続されて連続的に成形不良品が発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、射出成形機の成形金型の型開時に成形品の成形不良を確実に検出することができ、不良検査の信頼性の向上を図ることが可能な検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査装置は、
射出成形機の成形金型で成形された成形品を検査する検査装置において、
型開した成形金型内を撮像するための撮像手段と、
撮像手段をヘッド部に取り付けて型開した成形金型内に進入させるように構成したロボットアームと、
成形金型が型開されると、ロボットアームを駆動させてヘッド部を成形金型内に進入させ、ヘッド部に取り付けた撮像手段により成形金型に保持された成形品を正面から撮像し、得られた撮像画像に基づいて成形品の不良判定を行うように制御する制御手段とを備える。
【0007】
上記構成より、型開時に成形金型内に進入させた撮像手段によって成形金型内面に保持された成形品を正面から撮像するので、死角が生じることなく成形金型に保持された成形品の全体像を写し撮った検査用の撮像画像が得られる。従って、この検査用の撮像画像に基づいて成形品の不良判定を行うことにより、成形品にショート等の成形不良が生じていた場合は、その成形不良を見逃すことなく確実に発見することができる。
【0008】
上記ヘッド部には、成形品保持側の成形金型内面に向けて光照射する照明手段が設けられていることが望ましい。
これにより、撮像手段は、成形金型に保持された成形品の濃淡を鮮明に写し撮ることができ、得られた撮像画像により成形不良をより確実に発見することができる。
【0009】
上記ロボットアームは、固定プラテンの上部に設置されてヘッド部を金型開閉方向に沿う軸線を回動中心として旋回する構成とし、
上記ヘッド部には、成形金型内から成形品のランナーを取り出すランナーチャック機構が設けられ、
上記制御手段は、撮像手段により成形金型内面に保持された成形品の正面からの撮像画像を取得した後、ランナーチャック機構により成形品のランナーを把持し、この後、ロボットアームを駆動してヘッド部を成形金型外へ退出させてランナーチャック機構からランナーを排出させるように制御することが望ましい。
これにより、成形金型内から成形品のランナーを取り出す機構を別に設ける必要が無く、射出成形機周辺を簡素に構成することができる。また、上記ロボットアームは、固定プラテンの上部に設置されてヘッド部を金型開閉方向に沿う軸線を回動中心として旋回させる構成とするので、ヘッド部に設けたランナーチャック機構によりランナーの回収を低所で行うことができ、射出成形機周辺のスペースを広く確保することができる。
【0010】
上記制御手段は、型開時に撮像手段により成形金型に保持された成形品を正面から撮像した1次撮像画像を取得し、この1次撮像画像に基づいて成形品の不良判定を行い、エジェクトピンで成形品が成形金型から離型された後の型締め前に、上記撮像手段により成形品が保持されていた成形金型内面を正面から撮像して2次撮像画像を取得し、この2次撮像画像に基づいて成形金型での成形品の残留検出を行うように制御することが望ましい。
上記1次撮像画像は、型開時の成形金型内面に保持された成形品を正面から撮像した画像であり、また、上記2次撮像画像は、成形品が離型された後の成形金型内面を正面から撮像した画像であり、いずれも正面からの画像である。従って、1次撮像画像及び2次撮像画像には死角が生じることが抑制される。よって、1次撮像画像により成形品の成形不良検出を正確に且つ確実に行うことができ、また、2次撮像画像により成形金型での成形品の残留検出を正確に且つ確実に行うことができる。
【0011】
上記制御手段は、成形品の不良判定に際して、上記撮像画像において成形品の輪郭を捉えて予め定められた判定パラメータにより成形品の良品又は不良品の検出を行うように制御してもよい。
このように成形品の輪郭を捉えることで成形品のショート不良を的確に且つ瞬時に検出することができる。
【0012】
上記射出成形機は、加飾フィルムを成形金型内に挟み込ませて射出成形して成形品表面を加飾するインモールド成形を行うものである場合において、
上記制御手段は、上記撮像手段により成形金型に保持されて表面が加飾フィルムにより加飾された成形品を正面から撮像し、得られた撮像画像に基づいて成形品表面の加飾不良判定を行うように制御することができる。
このインモールド成形の場合も、ロボットアームのヘッド部に取り付けた撮像手段によって表面が加飾された成形品を正面から撮像するので、得られた撮像画像に基づいて加飾フィルムにより成形品に転写される絵柄等の加飾位置の位置ズレや絵柄等の転写異常(転写漏れや転写不十分等)等の加飾不良を見逃すことなく確実に発見することができる。従って、加飾不良が発見されると直ちに射出成形機を運転停止することで、加飾フィルム及び樹脂材料の浪費防止、成形品の歩留まりの向上に寄与でき、また、加飾不良に対する復旧のための適切な措置を迅速に講じることができる。
【0013】
上記制御手段は、上記撮像画像に基づいて成形金型の破損検出を行うように制御してもよい。
これにより、金型異常を的確に素早く発見して成形品不良の大量発生を防止でき、また、金型交換や金型メンテ等の金型異常の復旧のための適切な措置を迅速に講じることができる。
【0014】
上記ヘッド部には、金型表面温度を測定する温度測定装置が設けられ、
上記制御手段は、成形金型が型開されると、ロボットアームを駆動させてヘッド部を成形金型内に進入させ、ヘッド部に設けた上記温度測定装置により成形金型の金型表面温度を測定して金型表面の温度分布データを取得し、得られた温度分布データに基づいて金型温度の異常検出を行うように制御することができる。
これにより、成形直後の金型表面温度を直接的に測定した金型表面の温度分布データが得られる。従って、成形直後の金型表面温度を直接的に常時監視することができ、金型温度異常が発生すると、これを的確に且つ素早く発見することができる。その結果、成形金型内に流通させる冷却媒体の供給量や射出装置の射出シリンダの温度設定を最適化させて金型温度を適切な温度範囲内に保って、高品質の成形品を安定的に生産することができる。
【0015】
上記撮像手段に接続される配線ケーブルは、旋回駆動するロボットアームの回動中心において巻き出し可能なゼンマイ構造となって設置されていることが望ましい。
これにより、撮像手段の配線ケーブルは、ロボットアームが旋回駆動する際にゼンマイ構造部分より巻き出し・巻き込みがなされるので、ロボットアームの旋回駆動に伴って撮像手段の配線ケーブルに無理に張力が加わることが阻止され、配線ケーブルの断線等の損傷を防止することができる。従って、ロボットアームで撮像手段を移動させても成形金型内の撮像画像を安定して取得することができる。
【0016】
上記ロボットアームは、旋回位置を検知する回転角センサの検知信号に基づいてシャフトモータにより旋回駆動される構成とすることが望ましい。
これにより、ロボットアームによるヘッド部の成形金型内外への移動を正確に制御することができる。また、シャフトモータを採用することでロボットアームにおける金型開閉方向の長さを短く構成することができる。
【0017】
上記ロボットアームは、成形金型から退避されるように固定プラテンの取り付け位置を回動中心として金型開閉方向側へ転回可能に設置されていることが望ましい。
これにより、成形金型の交換時にはロボットアームを転回させて成形金型から退避させることにより、ロボットアームが固定プラテンに設置された状態でも成形金型の交換作業を円滑に行うことができる。
【0018】
なお、上記ロボットアーム自体は、CFRP製により形成されるのが望ましく、これにより、ロボットアームは、成形金型内へ進入して停止したときに速やかに振動が抑制される。従って、撮像手段により振れのない撮像画像を得ることができ、成形不良をより確実に発見することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る検査装置によれば、射出成形機の成形金型の型開時に撮像手段によって成形金型内面に保持された成形品を正面から撮像することにより、検査精度を向上することができ、成形品の成形不良を確実に検出することができる。従って、連続的な成形不良品の発生を確実に阻止することができ、不良検査の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態による検査装置が射出成形機の固定プラテンに取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】検査装置のカメラが型開した成形金型内に進入した状態を示す図であり、同図(a)は上面図であり、同図(b)は固定プラテン側を正面から眺めた状態の側面図である。
【図3】ロボットアームのヘッド部に取り付けられたカメラ、ライト及びランナーチャック機構を示す平面図である。
【図4】ロボットアームのヘッド部に取り付けられたカメラが、成形金型内に進入して撮像位置に停止し、可動金型に保持された成形品と対向した状態を示す斜視図である。
【図5】ロボットアームのヘッド部に取り付けられたカメラが、成形金型内に再進入して撮像位置に停止し、成形品が離型された可動金型の型面と対向した状態を示す斜視図である。
【図6】ロボットアームにおける、カメラ、ライト及びランナーチャック機構等の配線ケーブルの配置状態を示す模式図である。
【図7】成形金型の交換のために、ロボットアームが成形金型から退避された状態を示す図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は上面図である。
【図8】検査工程に際して成形金型とロボットアームとの動作位置の関係を示す模式図である。
【図9】インモールド成形における検査工程に際して成形金型とロボットアームとの動作位置の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態の検査装置1は、射出成形機に取り付けられて成形品5の不良検査と成形金型での成形品5の残留検出を行うようにしたものである。この検査装置1は、型開した成形金型内を撮像するためのカメラ(撮像手段)31と、型開した成形金型の型面に向けて光照射するためのライト(照明手段)32と、これらカメラ31及びライト32を型開した成形金型内に進入させるように構成したロボットアーム2と、この検査装置1の動作を制御するための制御部(制御手段)4を格納する制御ボックス40とを備える。
【0022】
射出成形機は、固定プラテン60に固定された固定金型6と、可動プラテン70に固定された可動金型7とを備える。なお、固定金型6と可動金型7とで成形金型を構成する。可動プラテン70は、タイバー61に案内されて進退移動自在に設けられており、この可動プラテン70の進退移動により可動金型7と固定金型6との型締め、型開が行われる。また、射出成形機には、図示しない射出装置と型締装置とを備え、型締装置により可動プラテン70を固定プラテン60側へ前進移動させて成形金型を型締めして、固定プラテン60に取り付けた射出装置により金型キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形し、この樹脂が冷却固化すると型締装置により可動プラテン70を後退移動させて成形金型を型開させる。型開されると、図示しないエジェクト機構のエジェクトピン71(図8(d)参照)により可動金型7に保持されている成形品5を突き出して離型させ、成形品5を下方へバラ落しして回収させる。
【0023】
図2に示すように、ロボットアーム2は、射出成形機の固定プラテン60上部の基台に設置されて先端のヘッド部21を金型開閉方向に沿った軸線を回動中心として旋回するように構成されている。ロボットアーム2は、旋回位置を検知する回転角センサの検知信号に基づいてシャフトモータ(図示せず)により旋回駆動され、ヘッド部21を成形金型外の待機位置(図2(b)中、一点鎖線で示す位置)、成形金型内の撮像位置(図2(b)中、実線で示す位置)、及び成形金型外のランナー排出位置(図2(b)中、点線で示す位置)に移動させる。このように、回転角センサの検知信号に基づいてロボットアーム2を旋回駆動することにより、ロボットアーム2のヘッド部21を成形金型内外の所定位置に正確に移動制御することができ、また、シャフトモータを採用することでロボットアーム2における金型開閉方向の長さを短く構成することができる。また、ロボットアーム2は、ヘッド部21が撮像位置から可動金型6に接近するように金型開閉方向に進退移動する構成となっている。
【0024】
図3、図4、図5に示すように、カメラ31は、ロボットアーム2の先端に設ける板状のヘッド部21において成形品5を保持する金型(本実施形態では、可動金型7)の対向面側に取り付けられている。そして、このカメラ31は、型開時に成形品5が保持される可動金型7の型面側を撮影する。具体的に、カメラ31により、型開時に可動金型7に成形品5が保持された状態(図4参照)を撮像した1次撮像画像と、可動金型7から成形品5が離型された後の状態(図5参照)を撮像した2次撮像画像とを取得する。ここで、1次撮像画像は、成形品5のショート等の不良検出に用いられ、2次撮像画像は、可動金型7での成形品5の残留検出に用いられる。カメラ31は、例えば、CCD又はMOS等の撮像素子を有するもので構成することができ、成形金型内に進入した撮像位置では、可動金型7における成形品5の保持位置に対向する撮像姿勢となるようにヘッド部21に取り付けられる。これにより、カメラ31は、可動金型7に保持された成形品5を正面から撮像することができる。また、カメラ31は、成形金型で成形品5が複数個取りされる場合、各成形品5毎に対向して複数設けられる(図4参照)。これにより、複数個取りされる各成形品5毎に撮像画像が得られるので、複数個取りされる場合に、どの位置の成形品5に成形不良が発生したか、どの位置で成形品5の残留が生じたかを、容易に且つ素早く発見することができる。なお、カメラ31は、成形金型で成形品5が複数個取りされる場合でも、1台のカメラ31で可動金型7の型面側を正面から撮像するようにしてもよい。また、カメラ31は、可動金型7における成形品5及び成形品5の保持部分をピンポイントで撮像するのみならず、可動金型7の型面も含んで撮像することができる。
【0025】
ライト32は、カメラ31に並設するようにロボットアーム2の板状のヘッド部21において成形品5を保持する金型(本実施形態では、可動金型7)の対向面側に取り付けられ、カメラ31で撮像する際に可動金型7の型面に向けて光照射する。このライト32は、例えば、ハロゲンライト、LEDライト等の各種の照明手段を使用することができる。これにより、カメラ31で撮像する撮像画像は、可動金型7に保持された成形品5の濃淡を鮮明に写し撮ることができ、しかも成形品5の欠損等のショートを他の部分と区別可能に写し撮ることができるので、成形不良をより確実に発見することができる。また、ライト32は、1台のカメラ31に対して2つ設けられ、カメラ31の両サイドに1つずつ配置されている(図3参照)。これにより、成形品5には照明による影が形成されず、カメラ31によって鮮明な成形品5の撮像画像を得ることができる。なお、ライト32は、カメラ31毎に1つずつ設けるだけでもよいし、カメラ31毎に複数設けることなく1つだけ設けるようにしてもよい。
【0026】
さらには、カメラ31及びライト32を取り付けたロボットアーム2のヘッド部21に
は、型開した可動金型7から成形品5のランナー51を取り出すランナーチャック機構33が設けられている。ランナーチャック機構33は、ランナー51を把持するための一対の爪部34を備える(図3参照)。このランナーチャック機構33は、カメラ31及びライト32を取り付けたヘッド部21に設けるので、型開時にカメラ31と一緒に成形金型内に進入する。そして、ランナーチャック機構33は、カメラ31で可動金型7に保持されている成形品5の撮像画像を取得した後、一対の爪部34で可動金型7に保持されているランナー51を掴む。この後、ヘッド部21が成形金型外へ退出されると、ランナーチャック機構33の爪部34からランナー51を開放し排出させる。このように、カメラ31及びライト32を取り付けたヘッド部21にランナーチャック機構33を設けることにより、射出成形機にはランナー51を取り出す機構を別に設ける必要が無く、射出成形機周辺を簡素に構成することができる。また、ロボットアーム2は、固定プラテン60の上部に設置されてヘッド部21を金型開閉方向に沿う軸線を回動中心として旋回させる構成とするので、このヘッド部21に設けたランナーチャック機構33によりランナー51の取り出しを低所で行うことができ、射出成形機周辺のスペースを広く確保することができる。
【0027】
図6に示すように、カメラ31、ライト32、ランナーチャック機構33のそれぞれの配線ケーブルkは、制御部4の各回路から引き出されて1本に束ねられる等して、ロボットアーム2の長さ方向に沿って形成する弧状の通路22内に這わせてロボットアーム2の基端部からヘッド部21に向けて配置されている。そして、この配線ケーブルkは、ロボットアーム2の基端部の回動中心に同心に設置するリール23に巻き取られ、このリール23には配線ケーブルkの巻き取り方向に付勢するゼンマイバネ24が設けられており、旋回駆動するロボットアーム2の回動中心より巻き出し可能なゼンマイ構造となって設置されている。これにより、配線ケーブルkは、ロボットアーム2が旋回駆動する際にゼンマイ構造部分のリール23より巻き出し・巻き込みがなされるので、ロボットアーム2の旋回駆動に伴ってカメラ31等の配線ケーブルkに無理に張力が加わることが阻止され、配線ケーブルkの断線等の損傷を防止することができる。従って、ロボットアーム2でカメラ31を移動させる構成としても成形金型内の撮像画像を安定して取得することができる。
【0028】
また、ロボットアーム2自体は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の素材から形成されている。これにより、ロボットアーム2は、成形金型内へ進入させ停止させたときに速やかに振動が抑制される。従って、カメラ31により振れのない撮像画像を得ることができ、成形不良をより確実に発見することができる。
【0029】
また、図7に示すように、ロボットアーム2を取り付けて固定プラテン60の基台に設置する取付板25は、固定プラテン60の基台に固定する下側の固定板26と、ロボットアーム2を固定する上側のスライド板27とを有し、通常運転時は、スライド板27は固定ボルトb等で固定板26に固定されているが、成形金型の交換時には、固定ボルトbを取り外すと、ロボットアーム2を固定するスライド板27は、ロボットアーム2の後方位置を回動中心として回動されるように軸支されている。すなわち、ロボットアーム2は、固定プラテン60に取り付けた状態で成形金型から退避されるように金型開閉方向側へ転回可能に設置され、例えば、金型開閉方向の軸線より約45°回動して転回されるようになっている。これにより、成形金型交換時にはロボットアーム2を転回させて成形金型から退避させることにより、ロボットアーム2が固定プラテン60に設置された状態でも成形金型の交換作業を円滑に行うことができる。
【0030】
そして、制御ボックス40に格納した本検査装置1の制御部4は、射出成形機の動作制御部との間で制御信号のやり取りを行って射出成形機の動作に応じて、ロボットアーム2、カメラ31、ライト32、ランナーチャック機構33の各々を動作制御し、また、カメ
ラ31で撮像した撮像画像を画像処理して成形品5の不良検出や成形金型での成形品5の残留検出を行う。また、本検査装置1の制御部4は、成形品5の不良や成形品5の残留が検出されると、その旨を報知すると共に射出成形機の動作を強制停止させる。さらに、この制御部4は、カメラ31で取得した撮像画像や検査のため基準画像等を記憶するメモリを備える。なお、検査装置1の制御部4は、カメラ31で撮像した撮像画像を表示する表示手段と電気的に接続して、作業者が表示手段でカメラ31の撮像画像を確認できるようにしてもよい。
【0031】
次に、図8を参照しつつ本検査装置1の動作を説明する。なお、本検査装置1の動作は、上記制御部4によって制御される。
まず、射出成形機が樹脂成形を開始し、可動金型7が移動して型開されると(図8(a))、ロボットアーム2を旋回駆動させてヘッド部21を成形金型外の待機位置から成形金型内に進入させ、カメラ31を成形金型のほぼ中央位置の撮像位置に移動させる(図8(b))。すると、ライト32で照明され、可動金型7の型面に保持されている成形品5を、カメラ31によって正面から撮像して1次撮像画像を取得する。なお、ライト32は、カメラ31での撮像の間は点灯されるが、ロボットアーム2の旋回駆動の開始と同時に点灯開始させてもよいし、カメラ31による撮像直前に点灯開始させてもよい。
【0032】
ここで得られた検査用の1次撮像画像は、可動金型7の型面に良品の成形品5が保持された状態の正面画像として予め取得した不良検査基準画像と比較されて成形品5の不良判定が行われる。この不良判定は、取得された1次撮像画像と不良検査基準画像との画像の一致度を判断し、一定割合以上の一致度があれば、その1次撮像画像での成形品5は良品であると判定し、一致度が一定割合未満であれば、その1次撮像画像での成形品5はショート等を有した不良品であると判定する。なお、画像の一致度の判断は、1次撮像画像と不良検査基準画像とをともに2値化データにして比較する等、種々の画像処理により行うことができる。そして、成形品5に不良品が含まれていると判定された場合は、射出成形機の成形動作を強制停止させ、射出成形機で成形不良が発生した旨を報知する。このとき、複数個取りされる各成形品5毎にカメラ31を有し、各成形品5毎に1次撮像画像が取得されるので、複数個取りされた成形品5のうちのどの位置の成形品5に成形不良が発生したかを容易に且つ素早く発見することができる。従って、不良復旧のために適切な措置を迅速に講じることができる。
【0033】
一方、成形品5のすべてが良品と判定された場合は、射出成形機では正常に成形処理が行われているとして次の動作を継続する。すると、ロボットアーム2を可動金型7側へ接近移動させてヘッド部21をランナー取出位置に移動させ、ランナーチャック機構33によりランナー51を掴む(図8(c))。続いて、ロボットアーム2を元の撮像位置に後退移動させた後、ロボットアーム2を旋回移動させてヘッド部21を成形金型外のランナー排出位置まで移動させ、ランナーチャック機構33よりランナー51を開放し排出する(図8(d))。この間に射出成形機では、可動金型7においてエジェクト機構のエジェクトピン71により可動金型7に保持されている成形品5を突き出して離型させ、成形品5を下方にバラ落しする。
【0034】
そして、成形品5が離型された後の型締め前に、ロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型内に再進入させ、再びカメラ31を成形金型のほぼ中央位置の撮像位置に移動させる(図8(e))。すると、再びライト32で照明され、成形品5が離型された状態の可動金型7の型面を、カメラ31によって正面から撮像して2次撮像画像を取得する。
【0035】
ここで得られた検査用の2次撮像画像は、可動金型7の型面に成形品5が保持されていない状態の正面画像として予め取得した残留検査基準画像と比較されて成形品5の残留判
定が行われる。この残留判定も、取得された2次撮像画像と残留検査基準画像との画像の一致度を判断し、一定割合以上の一致度があれば、その2次撮像画像における可動金型7の位置には成形品5の残留は無いと判定し、一致度が一定割合未満であれば、その2次撮像画像における可動金型7の位置に成形品5の残留があると判定する。なお、画像の一致度の判断は、2次撮像画像と残留検査基準画像とをともに2値化データにして比較する等、種々の画像処理により行うことができる。そして、可動金型7に成形品5が残留していると判定された場合は、射出成形機の成形動作を強制停止させ、可動金型7に成形品5の残留が生じた旨を報知する。このときも、複数個取りされる各成形品5毎に2次撮像画像が取得されるので、成形品5を複数個取りする可動金型7のどの位置に成形品5の残留が発生したかを容易に且つ素早く発見することができる。従って、不良復旧のために適切な措置を迅速に講じることができる。
【0036】
一方、可動金型7には成形品5の残留がないと判定された場合は、射出成形機では正常にすべての成形品が離型されたとして、ロボットアーム2を旋回移動させてヘッド部21を成形金型外の待機位置まで移動させて待機させる(図8(f))。射出成形機では、ロボットアーム2のヘッド部21が成形金型外へ移動されると、可動金型7が移動されて型締めされ、次の成形サイクル動作が行われる。
【0037】
以上のように、実施形態による検査装置1によれば、カメラ31を型開時に成形金型内に進入させて可動金型7に保持された成形品5を正面から撮像するので、得られた1次撮像画像には死角が生じることなく可動金型7に保持された成形品5の全体像を写し撮ることができる。従って、この1次撮像画像に基づいて不良検査基準画像と対比して成形品5の不良判定を行うことにより、成形品5におけるショート等の成形不良を見逃すことなく確実に発見することができ、不良品検出精度の向上を図ることができる。その結果、射出成形機において連続的にショート等の不良品が発生するのを確実に阻止することができ、不良検査の信頼性を向上することができる。
【0038】
また、可動金型7から成形品5を離型した後の型締め前にヘッド部21を成形金型内へ再進入させて成形品5が離型された後の可動金型7の型面を正面から撮像した2次撮像画像を取得するので、この2次撮像画像に基づいて残留検査基準画像と対比して成形品5の残留検出を正確に且つ確実に行うことができる。
【0039】
しかも、カメラ31を取り付けたヘッド部21にはランナーチャック機構33を設けるので、成形金型内から成形品5のランナー51を取り出す機構を別に設ける必要が無く、射出成形機周辺を簡素に構成することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
(1)上記実施形態では、制御部4は、型開時に1次撮像画像を取得するとロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型外へ退出させ(図8(d))、そして、エジェクトピン71で成形品5が成形金型から離型された後の型締め前に、ロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型内に再進入させて(図8(e))カメラ31により2次撮像画像を取得するようにしていた(この動作を「金型外一時退出モード」とする。)。この金型外一時退出モードの場合、ロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型外へ移動させ、また、ロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型内に再進入させる間は、成形金型の型締め動作の開始を待機させる必要があった。
【0041】
そこで、制御部4は、型開時に1次撮像画像を取得するとロボットアーム2を旋回駆動させずヘッド部21を成形金型内に待機させ、そして、エジェクトピン71で成形品5が成形金型から離型されると、ヘッド部21に設けたカメラ31により2次撮像画像を取得するようにしてもよい(この動作を「金型内待機モード」とする。)。これにより、上記金型外一時退出モードの場合のように、ヘッド部21の成形金型外への退出移動及び成形金型内への再進入移動に要する時間分だけ成形金型の型締め待機時間を短縮することができ、全体として成形サイクルを短縮することができる。
【0042】
なお、上記金型内待機モードにおけるヘッド部21の成形金型内での型内待機位置は、エジェクトピン71で突き出された成形品5がヘッド部21に衝突しない離れた位置であればよく、例えば、1次撮像画像や2次撮像画像の撮像位置(図8(b)、図8(e))であってもよい。また、ヘッド部21は、ランナーチャック機構33によりランナー51を掴んだ状態で、上記型内待機位置で待機するようにしてもよい。
また、制御部4においては上記金型外一時退出モードと上記金型内待機モードとを外部入力手段によって切り替え設定できるようにしてもよい。
【0043】
(2)金型異常の検出を行うようにする。
例えば、上記1次撮像画像又は上記2次撮像画像における成形金型の型面の画像(以下、金型撮像画像)を、金型破損のない正常な可動金型7の型面の正面画像として予め取得した金型検査基準画像と比較して、金型異常判定を行って金型の破損の有無を検出する。この金型異常判定は、例えば、取得された上記金型撮像画像と上記金型検査基準画像との画像の一致度を判断し、一定割合以上の一致度があれば、その金型撮像画像における可動金型7には金型破損は無いと判定し、一致度が一定割合未満であれば、その金型撮像画像における可動金型7には金型破損が発生したと判定する。なお、上記の画像の一致度の判断は、金型撮像画像と金型検査基準画像とをともに2値化データにして比較する等、種々の画像処理により行うことができる。
【0044】
そして、金型破損が無く正常と判定された場合は成形動作を続行させるが、可動金型7に破損が発見されて金型異常が検出されると、射出成形機の成形動作を強制停止させ、可動金型7に金型異常が生じた旨を報知する。このとき、上記画像処理により金型破損が存在する位置を監視画面に表示させる等の出力を行うようにしてもよい。これにより、金型異常を的確に素早く発見して成形品不良の大量発生を防止でき、また、金型交換や金型メンテ等の金型異常の復旧のための適切な措置を迅速に講じることができる。
【0045】
なお、固定金型6に対しても上記金型異常検出を行うようにするため、ロボットアーム2のヘッド部21における固定金型6の対向面側にも撮像手段(例えば、カメラ)を設け、上記可動金型7の場合と同様に、この固定金型6側の撮像手段で取得した固定金型6の型面の正面画像(固定金型側の金型撮像画像)を、破損のない正常な固定金型6の型面の正面画像として予め取得した金型検査基準画像と比較して、金型の破損の有無を検出するようにしてもよい。
【0046】
(3)インモールド成形の場合は成形品5Aの加飾不良の検出を行うようにする。
インモールド成形は、絵柄等の加飾部9aを形成した加飾フィルム9を成形金型内に挟み込ませて射出成形と同時に成形金型内で成形品表面に加飾フィルム9の絵柄等の加飾部9aを転写することで表面が加飾された成形品5Aを得る成形法である。ここでは、インモールド成形として、固定金型6と可動金型7との間に中間可動金型8を備えたものを例示するが(図9)、これに限定されるものではない。図9に示すインモールド成形の動作は、加飾フィルム9が可動金型7の型面付近に送り込まれ(図9(a))、次いで、型締めによって加飾フィルム9が可動金型7と中間可動金型8との間に挟み込まれ、可動金型7と中間可動金型8との空間内に溶融樹脂が射出されて加飾フィルム9の加飾部9aが表面に転写された成形品5Aが成形され(図9(b))、そして、型開されると、表面が加飾された成形品5Aが中間可動金型8に保持され(図9(c))、その後、この加飾表面(9a)を有する成形品5Aが取り出される。この場合、本検査装置1のロボットアーム2は、型開されると、ヘッド部21が可動金型7と中間可動金型8との間に進入するように構成される。カメラ31やライト32(図示せず)は、中間可動金型8に保持された成形品5Aの表面側を向くようにヘッド部21において中間可動金型8の対向面側(成形品5Aが保持される金型側)に取り付けられる。
【0047】
このインモールド成形の場合、図9(c)を参照して、射出成形後に成形金型が型開されると、ロボットアーム2を旋回駆動してヘッド部21を成形金型内に進入させ、カメラ31を成形金型のほぼ中央位置の撮像位置に移動させ、中間可動金型8に保持されて表面が加飾された成形品5Aをカメラ31によって正面から撮像する。ここで得られた撮像画像(上記1次撮像画像に対応する。以下、この撮像画像を「加飾成形品撮像画像」という。)は、予め取得した加飾不良検査基準画像(加飾不良のない良品の成形品5Aが中間可動金型8の型面に保持された状態の正面画像)と比較して、絵柄等の加飾位置の位置ズレや絵柄等の転写異常(転写漏れや転写不十分等)等の加飾不良の有無の判定を行う。この加飾不良判定は、例えば、上記加飾成形品撮像画像と上記加飾不良検査基準画像との画像の一致度を判断し、一定割合以上の一致度があれば、その加飾成形品撮像画像での成形品5Aは、良好な加飾品質を有する良品であると判定し、一致度が一定割合未満であれば、その加飾成形品撮像画像での成形品5Aは、加飾不良がある不良品と判定する。なお、上記の画像の一致度の判断は、上記加飾成形品撮像画像と上記加飾不良検査基準画像とをともに2値化データにして比較する等、種々の画像処理により行うことができる。
【0048】
そして、加飾された成形品5Aのすべてが良品と判定された場合は成形動作を続行させるが、加飾不良が検出されると、射出成形機の成形動作を強制停止させ、射出成形機で加飾不良が生じた旨を報知する。これにより、インモールド成形の場合も、ロボットアーム2のヘッド部21に取り付けたカメラ31によって表面が加飾された成形品5Aを正面から撮像でき、得られた加飾成形品撮像画像に基づいて成形品5Aの表面の加飾不良を見逃すことなく確実に発見することができる。従って、加飾フィルム9及び樹脂材料の浪費防止、成形品5Aの歩留まりの向上に寄与でき、また、加飾不良に対する復旧のための適切な措置を迅速に講じることができる。なお、上記加飾成形品撮像画像は、上記実施形態における1次撮像画像に対応するので、この加飾成形品撮像画像を基にして成形品5Aのショート等の成形不良判定も行われる。そして、成形品5Aの取出後で型締め前に、上記実施形態と同様に、2次撮像画像を取得して成形品5Aの残留検出を行う。
【0049】
また、図9(a)を参照して、加飾フィルム9は、ロール等の搬送機構90によって型開された成形金型内に間欠搬送される。そこで、ロボットアーム2のヘッド部21において可動金型7の対向面側に加飾フィルム撮像用のカメラ(図示せず)を取り付け、型開された成形金型間に加飾フィルム9が間欠搬送されると(図9(a)の状態のとき)、この間欠搬送された加飾フィルム9を可動金型7をバックにして上記加飾フィルム撮像用カメラで正面から撮像する。そして、この可動金型7を背景にした加飾フィルム9の撮像画像(以下、「加飾フィルム撮像画像」という。)に基づいて、加飾フィルム9の搬送異常の有無を判定するようにしてもよい。この加飾フィルム搬送異常の判定は、例えば、上記加飾フィルム撮像画像と、正しい位置に搬送された状態の加飾フィルム9の搬送位置検査基準画像と比較して、これら画像の一致度が一定割合以上であれば、その加飾フィルム撮像画像での加飾フィルム搬送は正常に送り込まれたと判定し、一致度が一定割合未満であれば、その加飾フィルム撮像画像での加飾フィルム搬送は、正しい位置に搬送されてない搬送異常と判定する。なお、他の判定方法として、上記加飾フィルム撮像画像において、加飾フィルム9と背景の可動金型7の型面とのそれぞれに予め記された各アライメントマークの一致・不一致により加飾フィルム9の搬送異常の有無を判定するようにしてもよい。
【0050】
そして、正しい位置に加飾フィルム9が搬送されたと判定された場合は成形動作を続行させるが、加飾フィルム9の搬送異常が検出されると、射出成形機の成形動作を強制停止させ、射出成形機で加飾フィルム9の搬送異常が生じた旨を報知する。これにより、成形金型内に搬送された加飾フィルム9を正面から撮像するので、上記加飾フィルム撮像画像に基づいて加飾フィルム9の搬送異常を見逃すことなく確実に発見することができる。そして、加飾フィルム9の搬送異常が検出されると射出成形機を直ちに運転停止することで、加飾フィルム9及び樹脂材料の浪費を防止し、成形品5Aの歩留まりの向上に寄与でき、また、加飾フィルム9の搬送異常に対する復旧のための適切な措置を迅速に講じることができる。
【0051】
(4)成形品の輪郭を捉えて成形不良の検出を行うようにする。
成形品のショート等の不良判定に際して、上記した検査用の1次撮像画像と不良検査基準画像とを比較して判定するが、この場合、両画像において所定の画像処理にて成形品の輪郭を捉えて予め定められた判定パラメータ(例えば、輪郭の一致度など)によって、成形品の良品、不良品の検出を行うようにしてもよい。このように成形品の輪郭を捉えることで成形品のショート不良を的確に且つ瞬時に検出することができる。
【0052】
(5)金型表面温度の検出を行うようにする。
ヘッド部21において金型表面温度を測定するサーモグラフィや放熱温度センサ等の温度測定装置を設けることによって金型表面温度分布を取得する。すなわち、成形直後の型開き時にロボットアームを旋回駆動させてヘッド部を成形金型内に進入させたとき(図8(b))、上記温度測定装置によって金型表面温度を測定して金型表面の温度分布データを取得する。これにより、成形直後の金型表面温度を直接的に測定した金型表面の温度分布データが得られる。そして、ここで取得した金型表面の温度分布データが、成形品を高品質に維持できる適切な金型温度範囲にあるか否かを判定(金型温度判定)する。
【0053】
この金型温度判定において、金型表面の温度分布が上記の適切な金型温度範囲内にある正常温度と判定された場合は成形動作を続行させる。一方、金型表面の温度分布が上記の適切な金型温度範囲から逸脱した異常温度と判定された場合は射出成形機の成形動作を強制停止させ、金型温度異常である旨を報知する。このとき、金型温度異常が高温異常なのか低温異常なのかも出力することができる。これにより、成形直後の金型表面温度を直接的に常時監視することができ、金型温度異常が発生すると、これを的確に且つ素早く発見することができる。その結果、金型内に流通させる冷却媒体の供給量や射出装置の射出シリンダの温度設定を最適化させて金型温度を適切な温度範囲内に保って、高品質の成形品を安定的に生産することができる。なお、上記温度測定装置は、ヘッド部21において固定金型6の対向側と可動金型7の対向側とのそれぞれの位置に設置して、固定金型6と可動金型7の両方の金型表面温度を測定するようにしてもよい。
【0054】
また、本検査装置は、例えば、成形金型から成形品を取り出す取出ロボットにおいて成形品を把持するアームヘッドにカメラ31等を搭載して適用することも可能である。この場合、取出ロボットのアームヘッドが型開された成形金型内に進入したときにカメラ31によって上記1次撮像画像を取得し、次いでアームヘッドに備える成形品把持機構で成形金型に保持された成形品を引き抜いた後にカメラ31によって上記2次撮像画像を取得するようにすればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 検査装置
2 ロボットアーム
4 制御部(制御手段)
5 成形品
6 固定金型
7 可動金型
21 ヘッド部
22 通路
23 リール
24 ゼンマイバネ
25 取付板
26 固定板
27 スライド板
31 カメラ(撮像手段)
32 ライト(照明手段)
33 ランナーチャック機構
34 爪部
40 制御ボックス
51 ランナー
60 固定プラテン
61 タイバー
70 可動プラテン
71 エジェクトピン
b 固定ボルト
k 配線ケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の成形金型で成形された成形品を検査する検査装置において、
型開した成形金型内を撮像するための撮像手段と、
撮像手段をヘッド部に取り付けて型開した成形金型内に進入させるように構成したロボットアームと、
成形金型が型開されると、ロボットアームを駆動させてヘッド部を成形金型内に進入させ、ヘッド部に取り付けた撮像手段により成形金型に保持された成形品を正面から撮像し、得られた撮像画像に基づいて成形品の不良判定を行うように制御する制御手段とを備える検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
上記ヘッド部には、成形品保持側の成形金型内面に向けて光照射する照明手段が設けられている検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査装置において、
上記ロボットアームは、固定プラテンの上部に設置されてヘッド部を金型開閉方向に沿う軸線を回動中心として旋回する構成とし、
上記ヘッド部には、成形金型内から成形品のランナーを取り出すランナーチャック機構が設けられ、
上記制御手段は、撮像手段により成形金型内面に保持された成形品の正面からの撮像画像を取得した後、ランナーチャック機構により成形品のランナーを把持し、この後、ロボットアームを駆動してヘッド部を成形金型外へ退出させてランナーチャック機構からランナーを排出させるように制御する検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記制御手段は、型開時に撮像手段により成形金型に保持された成形品を正面から撮像した1次撮像画像を取得し、この1次撮像画像に基づいて成形品の不良判定を行い、エジェクトピンで成形品が成形金型から離型された後の型締め前に、上記撮像手段により成形品が保持されていた成形金型内面を正面から撮像して2次撮像画像を取得し、この2次撮像画像に基づいて成形金型での成形品の残留検出を行うように制御する検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記制御手段は、成形品の不良判定に際して、上記撮像画像において成形品の輪郭を捉えて予め定められた判定パラメータにより成形品の良品又は不良品の検出を行うように制御する検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記射出成形機が加飾フィルムを成形金型内に挟み込ませて射出成形して成形品表面を加飾するインモールド成形を行うものであり、
上記制御手段は、上記撮像手段により成形金型に保持されて表面が加飾フィルムにより加飾された成形品を正面から撮像し、得られた撮像画像に基づいて成形品表面の加飾不良判定を行うように制御する検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記制御手段は、上記撮像画像に基づいて成形金型の破損検出を行うように制御する検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記ヘッド部には、金型表面温度を測定する温度測定装置が設けられ、
上記制御手段は、成形金型が型開されると、ロボットアームを駆動させてヘッド部を成形金型内に進入させ、ヘッド部に設けた上記温度測定装置により成形金型の金型表面温度を測定して金型表面の温度分布データを取得し、得られた温度分布データに基づいて金型温度の異常検出を行うように制御する検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記撮像手段に接続される配線ケーブルは、旋回駆動するロボットアームの回動中心において巻き出し可能なゼンマイ構造となって設置されている検査装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記ロボットアームは、旋回位置を検知する回転角センサの検知信号に基づいてシャフトモータにより旋回駆動される構成とする検査装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の検査装置において、
上記ロボットアームは、成形金型から退避されるように固定プラテンの取り付け位置を回動中心として金型開閉方向側へ転回可能に設置されている検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214008(P2012−214008A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176999(P2011−176999)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(508329221)ジエイ・クオリティ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】