説明

検知タグ、記憶媒体、及び検知システム

【課題】磁性体が大バルクハウゼン効果を生じたときに発するパルス信号の出力値を、特別な装置を用いずに必要に応じて調整可能な検知タグを提供すること。
【解決手段】大バルクハウゼン効果が生じたときに発するパルス信号の出力値が、応力が付与されることにより低下する磁性ワイヤ20と、磁性ワイヤ20へ応力を付与する応力付与機構30と、を検知タグ10が有することで、磁性ワイヤ20が大バルクハウゼン効果を生じたときに発するパルス信号の出力値を、特別な装置を用いずに必要に応じて調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知タグ、記憶媒体、及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交番磁界が印加された時に急峻な磁化反転を生じる磁性ワイヤを予め物品に埋め込んでおくことで商品の不正持ち出しを検知するシステムがある。このシステムの一例として、特許文献1に記載の物品管理システムがある。この物品管理システムでは、磁性ワイヤの近傍にキャンセル用磁性体を設けて磁化反転機能をキャンセルしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−182847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁性体が大バルクハウゼン効果を生じたときに発するパルス信号の出力値を、特別な装置を用いずに必要に応じて調整可能な検知タグ、この検知タグを有する記憶媒体、及びこの検知タグを有する検知システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の検知タグは、大バルクハウゼン効果が生じたときに発するパルス信号の出力値が、応力が付与されることにより低下する磁性体と、前記磁性体へ調整可能に応力を付与する応力付与手段と、を有する。
【0006】
本発明の請求項2に記載の検知タグは、前記応力付与手段により前記磁性体へ付与される最大応力は、前記磁性体の弾性限界よりも小さい。
【0007】
本発明の請求項3に記載の検知タグは、前記磁性体は、樹脂材に埋設された磁性線材であり、前記応力付与手段は、前記樹脂材に軸方向圧縮応力を付与する。
【0008】
本発明の請求項4に記載の検知タグは、前記磁性体は、樹脂材に埋設された磁性線材であり、前記応力付与手段は、前記樹脂材に引張応力を付与する。
【0009】
本発明の請求項5に記載の記憶媒体は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の検知タグが設けられた筐体と、前記筐体内に設けられ情報を記憶する記憶部と、前記応力付与手段と連動し、前記記憶部への情報の書き込みの許可および禁止を切り替え可能な切り替え部と、を有し、前記切り替え部が書き込みの禁止の状態に切り替えられると前記応力付与手段による前記磁性体への応力が開放されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に記載の検知システムは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の検知タグと、前記検知タグの磁性体が大バルクハウゼン効果を生じる強度の交番磁界を発生可能な磁界発生部、前記交番磁界が印加された前記磁性体が発するパルス信号を検知する信号検知部、及び、前記パルス信号の出力値が予め設定された設定値以上の場合に前記検知タグを検知したことを報知させる報知手段、を備える検知装置と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、磁性体が大バルクハウゼン効果を生じたときに発生するパルス信号の出力値を、特別な装置を用いずに必要に応じて調整することができる。
【0012】
請求項2の発明は、磁性体へ付与する応力を開放することで磁性体が復元し、パルス信号の出力値を回復することができる。
【0013】
請求項3の発明は、樹脂材に埋設しない場合と比較して、磁性線材が座屈し難く、磁性線材へ付与する圧縮応力を調整しやすい。
【0014】
請求項4の発明は、樹脂材に埋設しない場合と比較して、磁性線材が折れ曲がり難く、引張応力を調整しやすい。
【0015】
請求項5の発明は、記憶媒体への情報の書き込みを禁止した状態で、磁性体に大バルクハウゼン効果を生じさせることができる。
【0016】
請求項6の発明は、磁性体が大バルクハウゼン効果を生じたときに発するパルス信号の出力値を調整することで、検知装置によって検知された検知タグの報知及び非報知を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の検知タグに係り、スライダが第1位置にある検知タグを上方から見た部分断面図である。
【図2】図1の検知タグを側方から見た部分断面図である。
【図3】スライダが第2位置にある検知タグを上方から見た部分断面図である。
【図4】(A)は大バルクハウゼン効果を生じる磁性体のヒステリシスループを示す線図である。 (B)は磁性体に印加される交番磁界を示す線図である。 (C)は交番磁界が印加された磁性体が発するパルス信号を示す線図である。
【図5】第1実施形態の磁性ワイヤに付与した軸方向圧縮応力と、その応力を付与された状態で大バルクハウゼン効果を生じて発するパルス信号の出力電圧との関係を示す線図である。
【図6】第1実施形態の検知システムを説明するための概略構成図である。
【図7】第2実施形態の検知タグに係り、押圧部材が第1位置にある検知タグを上方から見た部分断面図である。
【図8】図7の検知タグを側方から見た部分断面図である。
【図9】押圧部材が第2位置にある検知タグを側方から見た部分断面図である。
【図10】第3実施形態の検知タグに係り、フレキシブルディスクに設けられた検知タグを上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下に、図面を参照しながら本発明の第1実施形態を説明する。図1には、本実施形態に係る検知タグ10を上方から見た部分断面図を示し、図2には、上記検知タグ10を側方から見た部分断面図を示している。図1及び図2に示すように、検知タグ10は、外形が直方体状の筐体12と、この筐体12の内部に配置される磁性ワイヤ20(磁性体の一例)と、筐体12の内部に配置され磁性ワイヤ20へ調整可能に応力を付与する応力付与機構30(応力付与手段の一例)と、を備えている。
【0019】
筐体12は、長手方向の一端側(図1では右側)の上面12Aに開口12Bが形成され、底面に接着層12Cが設けられている。本実施形態の検知タグ10は、この接着層12Cを用いて種々の物品に貼り付けられるようになっている。なお、検知タグは、物品に対して取り付けられれば、接着層12Cで貼り付ける以外に、ねじで固定したり、クリップで挟んで固定したり、物品側に収納スペースを設けそこに収納したりしてもよい。
【0020】
磁性ワイヤ20は、大バルクハウゼン効果を生じる磁気特性を有している。
ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明する。図4は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図4(A)に示すようなB−H特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hp)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を保持力(Hp)以上の振幅を持つ交番磁界内においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、後述する励磁コイル64(磁界発生部の一例)に交流電流を流して上記保持力(Hp)以上の振幅を持つ交番磁界を発生させ、その交番磁界内に磁性ワイヤ20を置いた場合、急峻な磁化反転時に、磁性ワイヤ20の近傍に配置した後述する検知コイル66(信号検知部の一例)が電気的なパルス信号を検知する。
【0021】
ここで、例えば、励磁コイル64により図4(B)に示すような交番磁界を発生させた場合、発生された交番磁界内に検知タグ10が配置されると、検知コイル66には、パルス状に電流が流れて、図4(C)に示すようなパルス状の出力電圧(パルス信号の出力値)が得られる。
【0022】
一方、磁性ワイヤ20の材料としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)-鉄(Fe)-ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)-コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)-ニッケル(Ni)-コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等があるが、上記大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料としては、基本組成がFe-Co-SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0023】
また、磁性ワイヤ20の形状としては、大バルクハウゼン効果を生じさせるのに適した形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を生じさせるには、断面積に対して所定の長さが必要となってくることから、ワイヤ状(線状)や帯状であることが好ましい。また、本実施形態の磁性ワイヤ20は、アモルファス磁性材料(Fe−Co−B−Si)で構成され、直径30μm、長さ2.5cmのものを用いている。
【0024】
また、本実施形態の磁性ワイヤ20は、応力が付与されることで大バルクハウゼン効果が生じたときに発するパルス信号の出力値(以下、出力電圧)が低下する特性を有している。図5には、磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力(Mpa)を付与したときの出力電圧(mV)の変化を示しており、同図から、磁性ワイヤ20は、軸方向圧縮応力を大きくすると出力電圧が低下することが分かる。また、出力電圧は、ある程度低下した後は飽和状態(図5では、50mV付近で飽和)となる。ここで、磁性ワイヤ20に付与する軸方向圧縮応力が磁性ワイヤ20の弾性限界を越えていない場合には、軸方向圧縮応力を開放することで磁性ワイヤ20が復元し、図5からも分かるように、出力電圧が軸方向圧縮応力を付与する前の初期状態に戻る。すなわち、磁性ワイヤ20に付与する軸方向応力(応力)は、磁性ワイヤ20の弾性限界よりも小さいことが好ましい。
【0025】
図1に示すように、磁性ワイヤ20は、合成樹脂材22(例えば、熱可塑性樹脂材、熱硬化性樹脂材など)に埋設されており、この合成樹脂材22の一端部が筐体12の長手方向の他端側の内壁面に固定されている。
【0026】
応力付与機構30は、筐体12の長手方向に移動可能であり、筐体12の開口12Bから突起状の操作部32が露出する略直方体状のスライダ34と、このスライダ34と合成樹脂材22の他端部との間に設けられ、スライダ34が図1に示す第1位置から、図3に示す第2位置へ移動するにつれて圧縮されると共に、合成樹脂材22を介して磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力を付与するスプリング40と、を有している。なお、スライダ34が第1位置にある場合には、スプリング40によって磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力が付与されない、つまり図5で示す軸方向圧縮応力が0の状態となっている。また、スライダ34が第2位置にある場合には、スプリング40によって磁性ワイヤ20に図5で示す6.6〜30Mpaの範囲のうちの例えば、10Mpaの軸方向圧縮応力が付与されるようになっている。
【0027】
また、スライダ34には、弾性変形可能な一対のフック36が設けられている。この一対のフック36は、スライダ34を第2位置に移動させたときに筐体12の内壁面にそれぞれ設けられた突起38を弾性変形して乗り越えてから復元し、突起38に引っ掛かるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、合成樹脂材22を介して磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力を付与するのにスプリング40を用いる構成としているが、スプリング40の代わりにゴムなどの弾性体を用いて、スライダ34によって圧縮された弾性体の復元力で合成樹脂材22を介して磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力を付与する構成としてもよい。
【0029】
次に、本実施形態の検知タグ10を検知するための検知システム50について説明する。図6には、本実施の形態に係る検知システム50の概略構成を示している。この検知システム50は、上述の検知タグ10と、ゲートアンテナ52、警告灯54及び、これらの作動を制御するコントローラ56を備える検知装置60とを含んで構成されている。
【0030】
図6に示すように、検知システム50はオフィスや店舗などの室内Sに設けられる。この室内Sには、出入口にセキュリティゲート62が設けられており、人員は、このセキュリティゲート62を通過して室外に出られるようになっている。
【0031】
また、セキュリティゲート62には、ゲートアンテナ52及び警告灯54が設けられており、ゲートアンテナ52で検知タグ10が検知されると、警告灯54が点灯ないし点滅するようになっている。なお、報知方法は、これに限らず、アラームや音声などで行うようにしてもよく、また、予め設定している場所に設けているディスプレイなどに表示するようにしてもよく、また、これらを併せた報知手段を構成したものであってもよい。
【0032】
ゲートアンテナ52は、コントローラ56から供給される電力(交流電力)によって交番磁界を発する励磁コイル64と、励磁コイル64によって発せられる交番磁界に対して、磁性ワイヤ20が発するパルス信号を検知する検知コイル66を含んでいる。すなわち、検知コイル66には、励磁コイル64が発する交番磁界に応じた電流が誘起されると共に、磁性ワイヤ20が発するパルス信号に応じた電流が誘起される。
【0033】
コントローラ56は、検知コイル66に誘起された電流から、交番磁界の周期に応じた低周波成分を除去することにより、磁性ワイヤ20の発するパルス信号を検出している。また、コントローラ56では、検出した磁性ワイヤ20の出力電圧が予め設定した設定値以上の場合に検知タグ10を検知したことを警告灯54で報知するようになっている。この予め設定する設定値は、検知タグ10のスライダ34が第1位置のときに磁性ワイヤ20が発する出力電圧と、スライダ34が第2位置のときに磁性ワイヤ20が発する出力電圧との間の値であり、本実施形態では、例えば500mVに設定している。
【0034】
なお、コントローラ56は、常に作動状態(交番磁界を発生させた状態)であってもよく、また、セキュリティゲート62に光センサなどを設けてこの光センサを用いて人員の通過タイミングを検知して作動状態に移行するものであってもよい。
【0035】
次に第1実施形態の作用について説明する。
検知タグ10のスライダ34が第1位置にある状態でセキュリティゲート62を通過すると、ゲートアンテナ52の励磁コイル64から生じる交番磁界によって磁性ワイヤ20が大バルクハウゼン効果を生じてパルス信号を発し、このパルス信号が検知コイル66によって検知される。検知されたパルス信号は、コントローラ56で出力電圧が算出される。ここで、スライダ34が第1位置にあるため、予め設定した設定値(500mV)よりも出力電圧が高く、コントローラ56は警告灯54を点灯ないし点滅させる。
【0036】
そして、検知タグ10のスライダ34を第2位置に移動させた状態で再びセキュリティゲート62を通過すると、スライダ34が第2位置にあるため、予め設定した設定値(500mV)よりも出力電圧が低くなり、コントローラ56は警告灯54を点灯ないし点滅させない。これにより、警告灯54によって報知されずに検知タグ10又は検知タグ10を付与した物品を室外に持ち出すことが可能となる。
【0037】
なお、本実施形態では、第1位置と第2位置でスライダ34を解除可能に保持する構成としたが、スライダ34の移動を多段階に調整できるように一対の突起38を複数設ける構成としてスライダ34の移動を複数の位置で保持可能なようにしてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の検知タグの第2実施形態を図7〜図9に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同一部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
図7に示すように、第2実施形態に係る検知タグ80は、外形が直方体状の筐体82と、この筐体82の内部に配置される合成樹脂材22に埋設された磁性ワイヤ20と、筐体82の内部に配置され磁性ワイヤ20に応力を付与する応力付与機構90(応力付与手段の一例)と、を備えている。
【0040】
図8に示すように、筐体82は、上面82Aの中央部から突出する円筒部82Bを備え、底面には接着層82Cが設けられている。本実施形態の検知タグ80は、この接着層82Cを用いて種々の物品に貼り付けられるようになっている。
【0041】
また、筐体82の長手方向の両内壁面には、合成樹脂材22の両端部がそれぞれ固定されており、合成樹脂材22の下面と筐体82の内壁下面との間に隙間が形成されている。
【0042】
応力付与機構90は、円筒部82Bの内周面に形成された雌ねじ92と、この雌ねじ92に捩じ込まれる雄ねじ94を外周面に有し且つ軸方向の先端部(磁性ワイヤ20側の端部)が半球状に形成された押圧部材96とを有している。
【0043】
雌ねじ92は、押圧部材96が円筒部82Bから抜け出すのを阻止すると共に、押圧部材96の先端部で押される磁性ワイヤ20が弾性限界となる前に押圧部材96の移動を阻止するためのストッパ機構(図示省略)を有している。
【0044】
図7に示すように、押圧部材96の後端面には、押圧部材96を回転させるための十字状の工具穴98が形成されている。この工具穴98は、プラスドライバの先端が嵌まり込むような形状に形成されている。なお、この工具穴98は、マイナスドライバや、六角レンチなどの工具の先端が嵌まり込むような形状に形成してもよく、専用形状の工具の先端のみが嵌まり込むような形状に形成してもよい。
【0045】
次に第2実施形態の作用について説明する。
図9に示すように、円筒部82Bの雌ねじ92に押圧部材96の雄ねじ94を捩じ込むと、押圧部材96の先端部で合成樹脂材22の中央部が押され、合成樹脂材22と共に磁性ワイヤ20が曲がり、合成樹脂材22を介して両端部が支持された磁性ワイヤ20に軸方向引張応力が付与される。これにより、磁性ワイヤ20が大バルクハウゼン効果を生じたときの出力電圧が低下する。なお、押圧部材96の捩じ込む量を調整することで、大バルクハウゼン効果を生じたときに磁性ワイヤ20が発する出力電圧が調整される。
【0046】
[第3実施形態]
次に、本発明の検知タグの第3実施形態を図10に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同一部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図10に示すように、本実施形態の検知タグ110は、記憶媒体としての一般的なフレキシブルディスク120(以下、FD120として記載する)の筐体122に設けられている。この検知タグ110のスライダ34(本実施形態では、切り替え部の一例)は、FD120に一般的に設けられる情報書き込み防止用のスライダを兼用している。具体的には、スライダ34の第1位置がFD120の記憶部124への書き込み防止位置に対応しており、第2位置がFD120の記憶部124への書き込み許可位置に対応している。なお、FD120の情報を読み取る読取装置(図示省略)は、スライダ34の位置を光学的に検出してFD120に対して情報の書込みが許可されているか、否かを判別するようになっている。
【0048】
次に第3実施形態の作用について説明する
ユーザーがFD120へ機密情報を記憶させる場合、スライダ34を第2位置へと移動させて情報の書き込みを許可させる。そして、ユーザーがFD120へ機密情報を記憶させた後は、スライダ34を第1位置へと移動させる。これにより、FD120への情報の書込みが防止されると共に、検知タグ110が大バルクハウゼン効果を生じたときに発する出力電圧が初期状態になる。このようにすることで、室内Sから外部へ機密情報を記憶したFD120が持ち出されそうになると警告灯54が点灯又は点滅し、誤って機密情報を外部に持ち出そうとしていることが報知される。これにより、機密情報が外部に漏洩されるのが抑制される。
【0049】
なお、第3実施形態では、検知タグ110をFD120の筐体122内に設ける構成としたが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、その他の記憶媒体に設けてもよい。その他の記憶媒体としては、例えば、磁気テープなどが挙げられる。
【0050】
また、第1実施形態では、磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力を付与するのにスプリング40とスライダ34を用いる構成としているが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、第2実施形態の押圧部材96と雌ねじ92の構成を用いて磁性ワイヤ20に軸方向圧縮応力を付与する構成としてもよい。さらに、第2実施形態では、磁性ワイヤ20に軸方向引張応力を付与するのにスプリング40とスライダ34を用いる構成としているが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、第1実施形態のスプリング40とスライダ34の構成を用いて磁性ワイヤ20に軸方向引張応力を付与する構成としてもよい。
【0051】
なお、磁性ワイヤ20には、軸方向圧縮応力や引張応力以外に、合成樹脂材22を全体的に押圧するなどの方法で応力を付与してもよい。
【0052】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施してもよい。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10 検知タグ
20 磁性ワイヤ(磁性線材(磁性体))
22 合成樹脂材(樹脂材)
30 応力付与機構(応力付与手段)
50 検知システム
60 検知装置
64 励磁コイル(磁界発生部)
66 検知コイル(信号検知部)
80 検知タグ
90 応力付与機構(応力付与手段)
110 検知タグ
120 フレキシブルディスク(記憶媒体)
122 筐体
124 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大バルクハウゼン効果が生じたときに発するパルス信号の出力値が、応力が付与されることにより低下する磁性体と、
前記磁性体へ調整可能に応力を付与する応力付与手段と、
を有する検知タグ。
【請求項2】
前記応力付与手段により前記磁性体へ付与される最大応力は、前記磁性体の弾性限界よりも小さい請求項1に記載の検知タグ。
【請求項3】
前記磁性体は、樹脂材に埋設された磁性線材であり、
前記応力付与手段は、前記樹脂材に軸方向圧縮応力を付与する請求項1又は請求項2に記載の検知タグ。
【請求項4】
前記磁性体は、樹脂材に埋設された磁性線材であり、
前記応力付与手段は、前記樹脂材に引張応力を付与する請求項1又は請求項2に記載の検知タグ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の検知タグが設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられ情報を記憶する記憶部と、
前記応力付与手段と連動し、前記記憶部への情報の書き込みの許可および禁止を切り替え可能な切り替え部と、
を有し、
前記切り替え部が書き込みの禁止の状態に切り替えられると前記応力付与手段による前記磁性体への応力が開放されることを特徴とする記憶媒体。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の検知タグと、
前記検知タグの磁性体が大バルクハウゼン効果を生じる強度の交番磁界を発生可能な磁界発生部、前記交番磁界が印加された前記磁性体が発するパルス信号を検知する信号検知部、及び、前記パルス信号の出力値が予め設定された設定値以上の場合に前記検知タグを検知したことを報知させる報知手段、を備える検知装置と、
を有する検知システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−223699(P2010−223699A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70019(P2009−70019)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】