説明

検針装置

【課題】異物の検出を行なう場合に、中空部内に存在する金属片の位置によって、検出感度に差異が生じることを防止するとともに、中空部外の外乱ノイズの影響を受けないように耐ノイズ性の向上を図った検針装置を提供すること。
【解決手段】被検査物を検査部1の中央に有する中空部2を通過させるように構成された検針装置100である。検査部1に配設してなる第1のコイル体10と、中空部2を挟んで第1のコイル体10と反対側に配設される直流磁界発生部20と、直流磁界発生部20に配設してなる第2のコイル体30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製品等の検査に用いられる検針装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検針装置は、服飾品、布団等の縫製品(被検査物)を所定方向に移動させることにより、被検査物中の混入金属片による磁界の乱れを利用して、折損縫針、忘れ針、ホチキスその他の金属からなる異物の検出を行うものである。
【0003】
検針装置は、検査部の検査能力として、折損縫針、忘れ針、ホチキスその他の金属からなる異物の検出を完全に行うとともに、外乱に左右されず異物以外のものは通過することが、検針をする上で最も望ましい。
【0004】
図12には、従来の検針装置を上方からみた概念図を示してある。従来の検針装置900は、検査部901に設けられた中空部内を、例えばベルトコンベア950が通過するように構成されている。
【0005】
このベルトコンベア上に被検査物を積載して、中空部内をx方向に移動させることによって、被検査物内に金属片が存在したとき、検出信号を発生するようになっている。検査部901には、巻き線方向単一の長楕円状のコイルが設けられている。
【0006】
この従来の検針装置においては、金属物が縫製品のどの部分に埋没しているかは正確に知ることができないという問題点があった。このため、かかる問題点に鑑み、特許文献1の検針装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
この検針装置のx方向の検査部内の構成概要を図13に示してある。図13の検針装置は、検査部801に、金属片を検出するためのコイル体810と、固定磁界を発生するためのマグネット820とを備えている。
【0008】
コイル体810は、中央に配置するコイル815と、その両側に配置された巻き方向がコイル815と逆の二つの直列接続のコイル814,816と、を並列に接続して、三つのコイル814,815,816が被検査物の移動方向xに配置された構成を有している。
【0009】
金属片の移動に応じて、コイル体810は、この磁束密度の変化に基づく鎖交磁束数の変化率を検出して、出力電圧を発生する。
【特許文献1】実開平5−40895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の検針装置においては、例えば、コイル又はコイル体の近くではφ0.5の金属片を検出する検出感度があるのに対して、コイル又はコイル体より遠くではφ1.0の金属片を検出できるに止まる。このため、中空部内に存在する金属片の位置によって、検出感度が異なるという課題が残されていた。
【0011】
一方、検査部の検出感度を上げると、全体的にその検出感度が上がるため中空部外の磁界の乱れにも反応し外乱ノイズの影響を受け、異物が混入していなくても誤検出してしまうという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の検出を行う場合に、中空部内に存在する金属片の位置によって、検出感度に差異が生じることを防止するとともに、中空部外の外乱ノイズの影響を受けないように耐ノイズ性の向上を図った検針装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る検針装置は、被検査物を検査部の中央に有する中空部を通過させるように構成された検針装置において、前記検査部に配設されている第1のコイル体と、前記中空部を挟んで前記第1のコイル体と反対側に配設される直流磁界発生部と、該直流磁界発生部に配設されている第2のコイル体と、を備えているところに特徴を有するものである。
【0014】
請求項2に係る検針装置は、請求項1記載の検針装置において、第1のコイル体及び第2のコイル体は、それぞれ被検査物の移動方向に少なくとも二つのコイルを備えているところに特徴を有するものである。
【0015】
請求項3に係る検針装置は、請求項2記載の検針装置において、直流磁界発生部は、各コイルに対応する別体の永久磁石からなるところに特徴を有するものである。
【0016】
請求項4に係る検針装置は、請求項1〜3の何れかに記載の検針装置において、直流磁界発生部は、相互に所定間隙を有し被検査物の移動方向と直行方向に列設されている永久磁石からなるところに特徴を有するものである。
【0017】
請求項5に係る検針装置は、請求項1〜4の何れかに記載の検針装置において、第1のコイル体及び第2のコイル体を挟んで直流磁界発生部と反対側に、該直流磁界発生部に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生する第2の直流磁界発生部を配設したところに特徴を有するものである。
【0018】
本発明に係る検針装置は、中空部におけるコイル体から遠い位置に存在する場合の鎖交磁束数を大きくし、中空部に金属片が存在する場合と存在しない場合の磁束の変化を大きくすることで、検出感度を向上しつつ耐ノイズ性の向上を図るものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に係る検針装置によれば、被検査物を検査部の中央に有する中空部を通過させるように構成された検針装置において、前記検査部に配設されている第1のコイル体と、前記中空部を挟んで前記第1のコイル体と反対側に配設される直流磁界発生部と、該直流磁界発生部に配設されている第2のコイル体と、を備えているので、中空部におけるコイル体から遠い位置に存在する場合の鎖交磁束数を大きくし、中空部に金属片が存在する場合と存在しない場合の磁束の変化を大きくすることができ、検出感度を向上することができるという効果を奏する。
【0020】
また、請求項2の発明に係る検針装置によれば、請求項1記載の検針装置の奏する効果に加えて、第1のコイル体及び第2のコイル体は、それぞれ被検査物の移動方向に少なくとも二つのコイルを備えているので、外乱ノイズによる磁束の変化を相殺することができ、さらに耐ノイズ性に優れるという効果を奏する。
【0021】
請求項3記載の発明に係る検針装置によれば、請求項2に記載の検針装置の奏する効果に加えて、直流磁界発生部は、各コイルに対応する別体の永久磁石からなるので、直流磁界発生部の折れ、割れを防止することができるという効果を奏する。
【0022】
請求項4の発明に係る検針装置によれば、請求項1〜3の何れかに記載の検針装置の奏する効果に加えて、直流磁界発生部は、相互に所定間隙を有し被検査物の移動方向と直行方向に列設されている永久磁石からなるので、該直行方向に均一な検出磁束を得ることができ、検出誤差を防止することができるという効果を奏する。
【0023】
請求項5の発明に係る検針装置によれば、請求項1〜4の何れかに記載の検針装置の奏する効果に加えて、第1のコイル体及び第2のコイル体を挟んで直流磁界発生部と反対側に、該直流磁界発生部に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生する第2の直流磁界発生部を配設したので、漏れ磁束を減少でき、さらに検出感度を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図1は、本発明に係る検針装置の外観形状の一例を示す斜視図である。図1において、x軸は被検査物の移動方向、y軸は被検査物の移動方向と直交方向である中空部2の幅方向、z軸は中空部2の高さ方向をそれぞれ示している。
【0026】
検針装置100は、図1に示すように、検査部1に設けられた中空部2内を、例えばベルトコンベア50が通過するように構成されており、このベルトコンベア50上に被検査物を積載して、中空部2内を移動させることによって、被検査物内に金属片が存在したとき、検出信号を発生するようにしてある。
【0027】
図2は、本実施の形態の検針装置100の検査部1内部のコイルの配置を示す概念図である。
【0028】
検査部1は、図2に示すように、中空部2の上側を構成するフレームAと、中空部2の下側を構成するフレームBとからなり、中央に中空部2を有する枠状に形成してある。フレームAには、内部に直流磁界発生部40が取り付けられ、直流磁界発生部40の中空部側に第1のコイル体10が当接して設けてある。
【0029】
一方、フレームBには、内部に直流磁界発生部20が取り付けられ、直流磁界発生部20の中空部側に第2のコイル体30が当接して設けてある。
【0030】
第1のコイル体10は、それぞれが鉄芯11,12,13を有し円筒状に巻回形成された三つのコイル14,15,16から構成してあり、被検査物の移動方向xと平行に配置してある。コイル体10,30を小型のコイルから構成したので、製造が容易で、製造コストを低く抑えることができる。
【0031】
コイル15は、第2の直流磁界発生部40のx方向中央部に配置してあり、その両側に配置したコイル14,16より大径に形成してある。また、中央に配置したコイル15と、両側に配置したコイル14,16とは、巻回方向が互いに逆向きとなるように巻回形成してある。
【0032】
さらに、これら三つのコイル14,15,16の頂面は、同一平面状となるように形成してある。第1のコイル体10と第2の直流磁界発生部40は、従来の検針装置におけるフレームAに収まる大きさ、配置としてある。
【0033】
第2のコイル体30は、第1のコイル体10の構成と同様のコイル34,35,36を備えている。第2のコイル体30と直流磁界発生部20は、従来の検針装置におけるフレームBに収まる大きさ、配置としてある。
【0034】
また、第1のコイル体10と第2のコイル体30とは、コイル14,15,16とコイル34,35,36とが中空部2を挟んで対峙する配置としてある。さらに、第1のコイル体10の鉄芯11と、第2のコイル体30の鉄芯31とを同心状に配置してある。また、鉄芯12と、鉄芯32とを同心状に配置してある。
【0035】
さらに、鉄芯13と、鉄芯33とを同心状に配置してある。これにより、第1のコイル体10及び第2のコイル体30を通る磁束が直線状となるようにしてある。
【0036】
図3は、検針装置100の検査部1の上側破砕断面図である。直流磁界発生部40は、図3に示すように、被検査物の移動方向と直行方向yに一体に形成された板状の永久磁石からなる。
【0037】
図4は、検針装置100の検査部1内部のコイル体10の列状配置を示す平面図である。直流磁界発生部40の中空部側には、図4に示すように、被検査物の移動方向xと平行に配置されたコイル14,15,16が所定間隔をもって被検査物の移動方向と直行方向yに複数列状配置してある。
【0038】
一方、直流磁界発生部20は、永久磁石からなり、同じく永久磁石からなる直流磁界発生部40の板厚と同じ板厚に形成してある。
【0039】
また、直流磁界発生部20及び40は、共に同極性となるように配置してある。即ち、第1のコイル体10を通る直流磁界発生部20に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生する第2の直流磁界発生部40を配置してある。
【0040】
さらに、直流磁界発生部20の中空部側には、直流磁界発生部40と同様に、第2のコイル体30の構成要素であるコイル34,35,36が被検査物の移動方向と直行方向yに複数列状配置してある。
【0041】
さらに、第1のコイル体10と第2のコイル体30は、直行方向yにおいても、中空部2を挟んでそれぞれのコイルが対峙し、かつ、対峙するコイルのそれぞれの鉄芯を同心状に配置してある。
【0042】
次に、図5は、検針装置100の検査部1の回路構成の概略を示す図である。図5には、第1のコイル体10の出力電圧を合成するための回路構成を示してある。なお、第2のコイル体30の回路構成は、第1のコイル体10の回路構成と同様である。
【0043】
第1のコイル体10は、図5に示すように、コイル15の両側に配置したコイル14及びコイル16が直列に接続され、これにx方向における第2の直流磁界発生部40の中央部に配置したコイル15が並列に接続されている。
【0044】
コイル14及びコイル16の直列接続の出力電圧にコイル15の出力電圧が合成された後、図示しない前段増幅器を介して増幅し、検出出力を発生する。またy方向に複数のコイル体を有するので、これら複数の信号が同時に増幅され、検出出力を発生する。
【0045】
これにより、複数の第1のコイル体10によるy方向の複数の検出出力が得られるようにしてある。なお、複数の第2のコイル体30も同様に構成してあり、複数の検出出力が得られるようにしてある。
【0046】
前段増幅器で一旦増幅された各検出出力は、その後段に存するそれぞれの後段増幅器(図示せず)を介して中央処理装置(図示せず)に入力され、ソフトウエア処理される。このソフトウエア処理は、外乱による検出出力と真正の検出出力を判別した後、適当なしきい値を設定し、該しきい値を超えた出力から検出信号を得るようにして、ノイズの影響を除去する。
【0047】
その判別は、複数の検出信号が全体的に変化する場合には、外乱による検出出力であると判断する。これに対して、特定の検出信号が変化する場合には、真正の検出出力であると判断する。
【0048】
図6は、第1のコイル体10の検出出力の波形を示す波形図である。なお、検出出力は、コイル15による出力電圧と、コイル14及びコイル16による出力電圧とが、合成された後に出力されるのであるが、説明の便宜上、合成する前の出力電圧の波形を示してある。
【0049】
このようにそれぞれの出力電圧は、三つのピークが生じている。また、大径のコイル15の出力電圧は、コイル14及びコイル16の直列接続の出力電圧より高い。このことから、上記のようにコイル14及びコイル16の直列接続の出力電圧とコイル15の出力電圧とを合成した後の出力電圧に、検出しきい値を設定することによって、金属片の検出ができる。
【0050】
また、外乱ノイズの場合には、中空部2を通る磁束速度がコンベア速度に比して速いために、両側に配置されたコイル14及び15による波形の周期は短くなる。よって、外乱ノイズの場合には、コイル14及びコイル16の直列接続の出力電圧とコイル15の出力電圧の合成電圧は低くなり、検出しきい値以下となる。
【0051】
これに対し、被検査物に異物が混入している場合には、コンベア速度に比例して時系列的に三つの信号がずれて出力されるため、三つのコイルの出力電圧の合成出力は低くなることはなく、検出しきい値以上となる。この点からも、外乱ノイズによる誤動作を防止できる。なお、第2のコイル体30の検出出力の波形は、第1のコイル体10の検出出力の波形と同様である。
【0052】
この検針装置100によれば、第1のコイル体10と第2のコイル体30を、中空部2を挟んで対峙し、かつ、対峙するそれぞれの鉄芯を同心状に配置し、第1のコイル体10及び第2のコイル体30を通る磁束が直線状となるようにしてあるので、直流磁界発生部20側の検出感度が第1のコイル体10側の検出感度と同等となり、均一の検出能力を有し、中空部の高さ方向zにおける金属片の存在する位置によって、検出感度に差異が生じることを防止することができる。
【0053】
また、第1のコイル体10及び第2のコイル体30を挟んで直流磁界発生部20と反対側に、第1のコイル体10を通る直流磁界発生部20に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生する第2の直流磁界発生部40を配置したので、漏れ磁束が著しく減少し、第1コイル体10及び第2のコイル体30を通る磁束密度が大きくなり、さらに検出感度が向上する。
【0054】
さらに、第1のコイル体10及び第2のコイル体30は、各コイルが所定間隔をもって被検査物の移動方向と直行方向yに列状配置され、被検査物の移動方向と直行方向yにおいても中空部2を挟んで対象となる配置としてあるので、被検査物の移動方向と直行方向yにおける中空部2内の磁束を均一にして、検出誤差を防止することができる。
【0055】
第1のコイル体10及び第2のコイル体30は、対峙する互いの頂面が同一平面状となるように形成してあるので、第1のコイル体10又は第2のコイル体30を通る磁束がより多く通るようになり、即ち第1のコイル体10又は第2のコイル体30を通る磁束密度が大きくなるから、金属片がコイル体10,30から充分離れた面を通過したときに対応することができる。
【0056】
また、第1のコイル体10と第2の直流磁界発生部40、及び第2のコイル体30と直流磁界発生部20は、それぞれ従来の検針装置におけるフレームA及びBに収まるように配置してあるので、従来の検針装置にも使用することができ、コイル体、直流磁界発生部の選択的設置ができ、メンテナンス、バージョンアップ等の点からも効果的である。
【0057】
さらに、特定の検出出力が変化する場合に、検出出力がどのコイル体からの出力であるか特定できるため、中空部内の金属片の位置を特定できる。
【0058】
なお、上記実施例においては、第1のコイル体10又は第2のコイル体30の構成要素である個々のコイル14,15,16又は34,35,36が、直流磁界発生部40又は20に当接して設けてあるが、何らこれに限定されるものではない。
【0059】
例えば、直流磁界発生部40又は20を移動方向xに短く形成し、中央のコイル15又は35のみを直流磁界発生部40又は20上に当接して設けても良い。また、直流磁界発生部20,40は、一体に形成された永久磁石でなくても良く、小型の永久磁石を組合せたものであっても良い。
【0060】
(実施例2)
次に、他の実施例について図7〜11を参照して説明する。第2実施例の検針装置200は、コイル体210と、直流磁界発生部220と、第2のコイル体230と、第2の直流磁界発生部240とを備えている。なお、図1と対応する部分に同一参照番号を付けて示す。
【0061】
図7は、検針装置200のコイルの配置を上方からみた概念図である。検針装置200は、図7に示すように、コイル体210及び直流磁界発生部240を被検査物の移動方向xに対して斜めに配置して、直流磁界発生部240の磁束と、被検査物の移動方向xとの間に、「角度」を設けることにより検出信号をより大きくするのが目的である。
【0062】
図8は、検針装置200の検査部内部のコイルの配置を示す概念図である。フレームAには、図8に示すように、その内部に直流磁界発生部240を取り付け、直流磁界発生部240の中空部側にコイル体210を当接して設けてある。
【0063】
フレームBには、内部に直流磁界発生部220を取り付け、直流磁界発生部220の中空部側にコイル体230を当接して設けてある。コイル体210,230は、中空部2を挟んで対称となる配置としてある。
【0064】
コイル体210は、鉄芯211,212を有する二つのコイル214,215を備えている。二つのコイル214,215は、ともに同径に形成してあり、互いに巻回方向が逆向きとなるように巻回形成してある。二つのコイル214,215は、互いの頂面が同一平面状となるように形成してある。
【0065】
コイル体230は、鉄芯231,232を有する二つのコイル234,235を備えている。二つのコイル234,235は、コイル体210と同様に構成してあり、各コイルが中空部2を挟んで同心状となるように配置してある。
【0066】
直流磁界発生部220は、コイル234,235のそれぞれに対応する別体の小型同型の永久磁石221,222を組合せて構成してある。永久磁石221は、コイル234を配置することが十分できる大きさ、形状にしてある。永久磁石222は、同様に、コイル235を配置できる大きさ、形状にしてある。
【0067】
直流磁界発生部240は、永久磁石221,222と同形状、同大、別体の永久磁石241,242を、頂面が同一平面状となるように組合せ、直流磁界発生部220に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生するようにフレームAに取り付けてある。永久磁石241及び242は、直流磁界発生部220と同様、各コイル214、215を配置することが十分できる大きさ、形状にしてある。
【0068】
図9(a)は検針装置200のフレームAの直流磁界発生部240及びコイル体210の配置を示す平面図であり、図9(b)はフレームBの直流磁界発生部220及びコイル体230の配置を示す平面図である。
【0069】
ここで、コイル体230と直流磁界発生部220を組合せたもの、及びコイル体210と直流磁界発生部240とを組合せたものは、共に被検査物の移動方向xに所定の「角度」を有するように、移動方向xに対して斜めに配置してある。
【0070】
直流磁界発生部240は、図9(a)に示すように、各永久磁石241,242を被検査物の移動方向xに所定間隙を有し、かつ斜めに配置してある。各永久磁石241,242と共にコイル214,215も、被検査物の移動方向xに同一の斜め方向としてあり、コイル214,215がコイル234,235と中空部2を挟んで同心状となるように配置してある。
【0071】
また、直流磁界発生部240は、x方向に配置した永久磁石241,242が、被検査物の移動方向と直行方向yに相互に所定間隙を有し列設してある。y方向の所定間隙は、x方向の永久磁石241,242の所定間隙よりも狭い。永久磁石241,242にも、コイル214,215を設けてある。
【0072】
直流磁界発生部220は、図9(b)に示すように、各永久磁石221,222が被検査物の移動方向xに所定間隙を有し、かつ斜めに配置してある。この斜め方向は、中空部を挟んで配設される直流磁界発生部240と同方向となるようにしてある。各永久磁石221,222と共にコイル234,235も被検査物の移動方向xに所定間隙を有し、かつ斜めとなるように配置してある。
【0073】
また、直流磁界発生部220は、x方向に配置した永久磁石221,222を、被検査物の移動方向と直行方向yに相互に所定間隙を有して列設して構成してある。列設された永久磁石221,222にも、コイル234,235が設けてある。なお、永久磁石221,222及びコイル234,235の配置は、x方向においてもy方向においても、コイル234,235が対応するコイル214,215と同心状にとなるように配置してある。
【0074】
以上説明したように、検針装置200によれば、検査部1に配設されているコイル体210と、中空部2を挟んでコイル体210と反対側に配設される直流磁界発生部220と、直流磁界発生部220に配設されているコイル体230とを備えているので、中空部2におけるコイル体210から遠い位置に金属片が存在する場合の鎖交磁束数を大きくして検出力を高め、全体を均一にすることができる。
【0075】
さらに、中空部2に金属片が存在する場合と存在しない場合の磁束の変化を大きくすることができたので、金属片の検出電圧(反応電圧)が大きくなったことによる異物の検出感度が向上した。その結果、外乱ノイズとの差が大きくなり、相対的に耐ノイズ性が向上した。
【0076】
かかる点について、図10を参照して、詳細に説明する。図10は、コンベア50が中空部2の下方を通過する場合に、検針装置200と、図13に示す従来装置の中空部内のz方向の位置による鉄球の検出比較のための実験結果を示したものであり、両者の検出感度を示すグラフである。
【0077】
図10に示すグラフのx軸は、ベルトコンベア50のベルト面からの通過高さを示す。原点はフレームB付近のベルト面上を金属片が通過する場合を示し、x軸右端はフレームA付近を金属片が通過する場合を示す。グラフのy軸は、それらの検出電圧の大きさを示す。
【0078】
図10の例では、鉄球を用いての事例である。実際の検査対象(異物)はミシン等の折れ針である。永久磁石により発生する磁界は、その形状からある程度直線的に発生するので、折れ針の移動するときの姿勢によって鎖交磁束に差がある。
【0079】
例えば、折れ針の移動するときの姿勢がz方向である場合には、鎖交磁束が最も大きく、ついでその姿勢がx方向である場合に鎖交磁束が大きく、その姿勢がy方向である場合が鎖交磁束が最も小さい。この差が大きいので、鉄球での性能表現を用いている。
【0080】
図10によれば、中空部2におけるフレームAから遠い位置であるフレームB付近をφ1.0の金属片が通過した場合、即ち、ベルト面上をその金属片が通過した場合には、従来装置によれば検出電圧E0の反応であるのに対し、検針装置200によれば検出電圧E1の反応をしている。
【0081】
両者を比較すると、E1>E0であり、E1/E0=9〜9.36である。従って、検針装置200によれば、従来装置では検出できなかったフレームAから遠い位置の鎖交磁束数が大きくなっており、検出能力が向上していることがわかる。
【0082】
また、フレームA近傍では、検針装置200の検出電圧E3は、従来装置の検出電圧E4より大きく、E3>E4である。かかる検出電圧E3は、フレームB近傍での検出電圧E1とほぼ同等若しくは若干大きな値であり、最大値Emaxをとる。換言すれば、検針装置200の検出電圧の最大値Emax=E3が従来装置の最大値Emax=E4より十分大きくなっている。
【0083】
また同様に最小値についても、検針装置200の検出電圧の最小値Emin(図示せず)が従来装置の検出電圧の最小値Emin=E0より十分大きな値を示している。
【0084】
よって、全体的に検出能力が向上している。中空部2に金属片が存在する場合と存在しない場合の磁束の変化を大きくすることができた。かかる磁束の変化が大きくすることができたので、検出感度が向上した。
【0085】
その結果、外乱ノイズとの差が大きくなり、相対的に耐ノイズ性が向上した。これにより、検針装置200は、金属片の検出を容易にかつ確実に行うことができる。
【0086】
ここで、ベルト面からの通過高さ方向zにおける検出電圧の最大値Emaxと最小値Eminとの差ΔEは検出倍率をあらわし、この差ΔEが小さな値の方が金属片の検出をしやすい。
【0087】
検針装置200と従来装置とでΔEを比較すると、従来装置の検出倍率ΔE0=E4/E0=6.00であるのに対し、検針装置200の検出倍率ΔE1=E3/Emin=1.95〜2.25である。ΔE1<ΔE0であることから、検針装置200の検出倍率値ΔE1が従来装置の検出倍率値ΔE0より小さい値を示している。
【0088】
よって、検針装置200によれば、さらに、金属片の検出を容易にかつ確実に行うことができる。
【0089】
次にさらに小さな鉄球であるφ0.8の金属片がベルト面上を通過した場合について説明する。かかる場合の検針装置200の検出電圧E2はE1より低い値となるものの、従来装置のφ1.0の検出電圧E0より高い値となっている。その比をあらわすE2/E0=5.16〜5.4である。
【0090】
この場合のEminも従来装置による最小値E0より十分大きな値を示しており、検出倍率ΔE2は、2.11〜2.21である。ΔE2<ΔE0であり、φ0.8の金属片の検出においても従来装置よりも良い。
【0091】
従って、検針装置200によれば、より小さなφ0.8の金属片であっても、従来装置のφ1.0の金属片が通過した場合の検出電圧E0よりも大きな検出電圧E2を出力することができ、φ0.8の金属片を確実に検出することができる。検針装置200によれば、上記φ1.0の金属片と同様、φ0.8の金属片の検出を容易にかつ確実に行うことができる。
【0092】
また、検針装置200によれば、コイル体210及びコイル体230は、それぞれ被検査物の移動方向xに二つのコイル214,215及び234,235を備えているので、外乱ノイズによる磁束の変化を相殺することができ、さらに耐ノイズ性に優れる。この点について、詳細に説明する。
【0093】
実施例1で既述の検針装置100のコイル体10,30は、移動方向xに三つのコイルを備え、両側のコイルが中央のコイルに対しそれぞれ間隙を有し離れていることにより、中空部内を通過する速度が速い外乱ノイズを相殺し、その速度が比較的遅い正常な検出信号を検出できるようにして、外乱ノイズによる誤検出を防止するようにしたものである。
【0094】
しかし、時間的にみると、移動方向xに配置されるコイル間の距離が短い方が、外乱ノイズを相殺できることが明らかとなってきた。また、そのコイル間の距離が短い方が中空部外に存在する外乱ノイズ源から侵入してくる侵入角度が小さくなることから、外乱ノイズを相殺できる範囲が広い。
【0095】
一方、コイル体の検出感度は、コイル体10,30を構成する複数コイル間の距離が長くなればなるほど検出感度が良くなり、コイル間の距離が短くなればなるほど検出感度が悪くなる傾向にある。即ち、耐ノイズ性の特性と相反する結果となる。
【0096】
さらに、検出感度は、コイル径に比例し、コイル径が大きくなればなるほど検出反応の大きさは大きくなる。しかし、コイル径を大きくすることは、フレーム内に収納できなくなるため物理的制約がある。
【0097】
検針装置200においては、それらの要因を総合的に検討し、コイル径を大きくすることなく、耐ノイズ性と検出感度との調和を図るため、コイル体210及び230を、それぞれ移動方向xの全体の距離が実施例1より短くなる範囲内で、二つのコイル間に所定間隙を存する配置としてある。
【0098】
よって、検針装置200によれば、検出能力が低下することなく、外乱ノイズによる磁束の変化を相殺することができ、さらに耐ノイズ性に優れる。
【0099】
また、検針装置200は、検査部1を移動方向xに1体配置した検針ヘッド1体型の検針装置において、被検査物の移動方向xに対してそのヘッド全体を斜めに交差するように配置するのではなく、検査部1の内部に配置するコイル体210,230(x方向の2つのコイルの配列)を被検査物の移動方向xに斜めに配置したところに特徴を有するものである。
【0100】
かかる点について、図11を参照して、詳細に説明する。図11は、図11(a)に被検査物の移動方向xに平行に配置したコイル214,215を示してあり、図11(b)に移動方向xに対して斜めに配置したコイル体214,215を示してある。
【0101】
検針装置200によれば、図11(b)に示すように、コイル214,215が、移動方向xに対して所定角度θを有するように配置されているので、この角度θにより、例えば折れ針の移動するときの姿勢がx方向あるいはy方向と平行であってもその角度θ分の傾きを有することにより、鎖交磁束が増える傾向にあり、これにより、検出反応も大きく出るので、検出感度が向上する。
【0102】
また、検針装置200によれば、コイル体210,230は、検査部1内にx方向に組合せて配置した小型のコイルをy方向にも複数配置したものなので、検出ヘッド幅に制約があっても、移動方向xに対する角度θを大きくすることが可能である(図7、9参照)。
【0103】
即ち、図12に示す従来の検針装置900においては、検出ヘッド内部のコイル910が長楕円なので、仮に図12に示す仮想線で示すように斜めに配置するとしても、その斜めにする角度は検出ヘッド901の幅に制約されるのに対し、検針装置200はそのようなことはないのである。
【0104】
また、検針装置200によれば、直流磁界発生部220及び240は、各コイル234,235及び214,215に対応する別体の永久磁石からなるので、特に永久磁石221,222又は241,242に、対応するコイル234,235又は214,215を取り付ける際のコイル直流磁界発生部220及び240の折れ、割れを防止することができる。
【0105】
また、直流磁界発生部220,240は、各コイルに対応する永久磁石221,222又は241,242を、x方向にもy方向にも相互に所定間隔を有して配列して構成してあるので、隣の磁束の変化を受けにくくすることができる。
【0106】
y方向に各コイルが所定間隔を有して配列してあるので、隣の磁束の変化を受けにくく、よりy方向の異物の混入箇所の特定することがすることができる。
【0107】
さらに、x方向の所定間隙は、y方向の所定間隙より広く設定してあるので、異物が混入した被検査物がx方向に移動するとき、コンベアの移動速度と外乱ノイズの通過速度との差から、正負の2波の検出電圧が時間的にずれて出力され、中央処理装置において負の第2波が反転処理され、より異物の検出をすることができる。なお、小型の永久磁石を所定間隔を有して配置してあるので、直流磁界発生部220,240の製造が容易で、製造コストを低く抑えることができる。
【0108】
なお、上述した実施例においては、コイル体を中空部を挟んで上下に配設しているが、中空部を挟んで左右に配設しても良い。また、実施例においては、コイル体と直流磁界発生部の双方を、中空部を挟んで双方に設けているが、一方はコイル体と直流磁界発生部とし、他方はコイル体のみとしても良い。
【0109】
また、二つの直流磁界発生部のN・Sの極性は、中空部を挟んで同一極性に統一してあれば良く、図2,8に示す直流磁界発生部20,40又は220,240の極性に限定されるものではない。図2,8とは逆のz方向に下方がN極、上方がS極の順であっても良い。
【0110】
また、上記実施例においては、コイル体の構成要素である二つのコイルがx方向に所定間隙を存して配置してあるが、何らこれに限定されるものではなく、互いに当接する連続配置としても良い。この場合には、よりノイズキャンセル効果が大きい。
【0111】
同様に、実施例2において、直流磁界発生部は、別体の永久磁石をx方向に所定間隙を有するように配置してあるが、これに何ら限定されるものではなく、例えば、別体の永久磁石を互いに当接させx方向に連続して設けても良い。
【0112】
また、上記実施例において、z方向の配置について、中空部の略中央に対して上下対称となる配置としてあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、フレーム位置はそのままで、一方のフレーム内に配設されるコイル体及び直流磁界発生部の位置が、他方のフレーム内のそれよりも、より中空部側に近づくように、フレームにいわゆる「ゲタ」を履かせた配置としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、金属が混入しているか否かを検査したい物を所定方向に移動させることにより、その物中の混入金属片による磁界の乱れを利用して、混入金属片の検出を行うとともに、外乱に左右されず金属以外のものは通過することが要請されるあらゆる産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る検針装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施例の検針装置の検査部内部のコイルの配置を示す概念図である。
【図3】上記実施例の検針装置の検査部の上側の破砕断面図である。
【図4】上記実施例の検針装置の検査部内部のコイル体の列状配置を示す平面図であ る。
【図5】上記実施例の検針装置の検査部の回路構成の概略を示す図である。
【図6】上記実施例の検針装置における検出出力の波形を示す波形図である。
【図7】第2実施例の検針装置のコイルの配置を上方からみた概念図である。
【図8】第2実施例の検針装置の検査部内部のコイルの配置を示す概念図である。
【図9】第2実施例の検針装置の検査部内部の直流磁界発生部及びコイル体の配置を示す平面図である。
【図10】第2実施例の検針装置のコイル体間の高さによる検出感度を示すグラフである。
【図11】第2実施例の検針装置のコイル体と被検査物の移動方向との関係を示す平面図であり、図11(a)は被検査物の移動方向xに平行に配置したコイル体を示す図であり、図11(b)は移動方向xに対して斜めに配置したコイル体を示す図である。
【図12】従来の検針装置を上方からみた概念図である。
【図13】従来の検針装置の検査部内部のコイルの配置構成の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0115】
1 検査部
2 中空部
10,210 第1のコイル体
11,12,13、211,212 鉄芯
14,15,16,214,215 コイル
20,220 直流磁界発生部
30,230 第2のコイル体
31,32,33,231,232 鉄芯
34,35,36,234,235 コイル
40,240 第2の直流磁界発生部
50 ベルトコンベア
100,200 検針装置
A,B フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を検査部の中央に有する中空部を通過させるように構成された検針装置において、
前記検査部に配設されている第1のコイル体と、
前記中空部を挟んで前記第1のコイル体と反対側に配設される直流磁界発生部と、
該直流磁界発生部に配設されている第2のコイル体と、を備えていることを特徴とする検針装置。
【請求項2】
第1のコイル体及び第2のコイル体は、それぞれ被検査物の移動方向に少なくとも二つのコイルを備えていることを特徴とする請求項1記載の検針装置。
【請求項3】
直流磁界発生部は、各コイルに対応する別体の永久磁石からなることを特徴とする請求項2記載の検針装置。
【請求項4】
直流磁界発生部は、相互に所定間隙を有し被検査物の移動方向と直行方向に列設されている永久磁石からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の検針装置。
【請求項5】
第1のコイル体及び第2のコイル体を挟んで直流磁界発生部と反対側に、該直流磁界発生部に基づく静磁界と同じ方向の静磁界を発生する第2の直流磁界発生部を配設したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の検針装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−113043(P2006−113043A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75055(P2005−75055)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000140096)株式会社ハシマ (10)
【Fターム(参考)】