説明

業務用肉の真空包装装置

【課題】荷重のある業務用肉部位の真空包装。
【解決手段】作業者の駐在スペース11の前面に、複数本の棒材からなるホルダー13を配置し、第一定盤21と第二定盤22とは交互に前記ホルダー13上から部位32を取り出し、第一蓋材16及び第二蓋材17内に交互に搬入して真空包装を行なう。この場合、第一定盤21および第二定盤22は共に、ホルダー13を形成す複数本の棒材の隙間において上下するリフト43を備え、作業者による足踏みスイッチによる信号でもって定盤21,22に備わる前記のリフト43は、ホルダーに搭載した部位を、該部位に被せた包袋35とともに第一蓋材および第二蓋材に順次搬入するので、作業者の動力軽減が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用肉の部位を、2台の耐圧チヤンバーを使用して能率よく真空包装する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、2台の耐圧チヤンバーを使用して小袋に収容した被包装物を能率よく真空包装する装置を開示している。しかし、食肉処理工場において処理される部位は、少なくともキログラム単位の大きさがあり、大きいものでは10キロを越す大きさを備える。こうした大きさの部位を大袋に充填し耐圧チャンバーに運び込む作業は重労働であり、前記の特許文献1に示された真空包装装置を用いて業務用肉を真空包装するのは適さない。処理された部位はベルトコンベヤでもって次々と運ばれてくる。大袋を広げ部位を収容した後、この包装体を真空包装用の耐圧チヤンバーに人力で持って搬入するのは非常に重労働であり、結局能率は上がらない。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−117703号公報
【0004】
そこで本発明は、作業員の動力を省いて包装能率を上げる装置を開示するものであり、作業者の駐在スペース前面に、複数本の棒材からなるホルダーを水平横方向に配置し、前記ホルダーの下部に該ホルダーの開放端の方向に向けて配置した2本の平行な第一軌条と、前記第一軌条の端に第二軌条を交差させ、第二軌条両端上域に配置した第一、第二両蓋材と、第一蓋材及び第二蓋材に付属する第一定盤及び第二定盤と、前記第一軌条と第二軌条とに沿って前記ホルダーと第一蓋材及び第二蓋材との間において前記の第一定盤及び第二定盤を移動させる運搬制御手段と、
食肉の部位を作業者の駐在スペースに搬入するベルトコンベヤと、駐在スペース近傍に包装用の包袋を配置する保管スペースとを備え、
第一定盤及び第二定盤は、それらがホルダーの下に運び込まれた時、ホルダーを形成す複数本の棒材の隙間において上下するリフトを備え、作業者による足踏みスイッチによる信号でもって定盤に備わる前記のリフトは、その上昇作用でホルダーに搭載した部位をホルダー上に持ち上げて、該部位に被せた包袋とともに第一、第二両蓋材下域に順次搬入して、包袋内に部位を真空包装するごとく構成する。
【0005】
作業者の駐在スペースに向けてベルトコンベヤは食肉部位を運び入れる。作業者はこの部位を、複数本の棒材からなるホルダー上に搭載し、前記ホルダーの開放端から部位の周りに包袋を被せる。この場合、部位はホルダーに支えられているから、作業者は両手で包袋の口をひろげて部位に素早く被せることが出来る。作業者の足元には足踏みスイツチが存在し、該スイッチでもって運搬制御装置を操作すると、第一蓋材と組をなす第一定盤は、第一軌条及び第二軌条に沿って前記ホルダーの下域に到達し、第一定盤に設けたリフトが、ホルダーを形成する複数本の各棒材の隙間に突入して部位を浮上させ、リフトに搭載した部位を第一蓋材の下に運びいれ、第一蓋材と第一定盤とにより形成される耐圧チヤンバー内において前記部位は、包袋内に真空包装される。真空包装用の耐圧チヤンバーの構成は極一般的で、定盤はシール台を備え、蓋材はシールバーを備える。約10秒程度の時間を経て耐圧チヤンバー内が真空値に達すると、シーネバーはシール台に向けて下降し、包袋の開口部を密封する。
【0006】
第一蓋材と第一定盤とによる真空包装作業の間、作業者は部位を、複数本の棒材からなるホルダー上に搭載し、前記ホルダーの開放端から部位の周りに包袋を被せ、足踏みスイツチでもって運搬制御装置を操作し、第二定盤でもって包袋に包まれた部位を、第二蓋材に送り込む作業を続け、重量のある部位を2台の真空包装装置でもって交互に処理することができる。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明の真空包装装置の第1の定盤と第2の定盤の動きを説明するための平面図、図2は本真空包装装置の作業状態を示す部分概略平面図、図3は定盤の軌条上を走行を説明する平面図、図4は定盤を往復動させる機構の部分平面図、図5は作業者の包装作業状態を示す平面図、図6は定盤の押し上げ材を昇降させる昇降機構を示す正面図、図7は図6の昇降機構の側面図である。
【0008】
図2に示すように、作業者10の駐在スペース11の前面に、作業者の腰程度の高さで水平横方向に配置された複数本の棒材12からなるホルダー13が配置されている。前記の棒材12の一端側は基台20に固定されており、他端側は開放されている。駐在スペース11の背後に設置したベルトコンベヤ31は、搭載した部位32を順次駐在スペースに搬入する仕組みになっている。
【0009】
作業者はベルトコンベヤ31上の部位32を、図1に示すようにホルダー13上に搭載し、駐在スペース近傍に設けた包袋の保管箇所から取り出す包袋35を、ホルダー13の開放端から部位32の全面に被せる作業を行なう。
【0010】
一方、図2のごとく前記のホルダー13と平行方向に、二本の第一軌条14を配置している。図3の如く前記第一軌条14の端には、第二軌条15が交差状に繋がり、軌条全体は平面視T字形である。
【0011】
前記第二軌条15の両端部上域に、真空用耐圧チャンバーを形成する第一蓋体16と,第二蓋材17とを配置しており、これら各蓋材には第一定盤21と第二定盤22とが備わる。詳しくは後述するが、第一定盤21は軌条14,15に沿って直角矢印23の如く蓋体16とホルダー13の位置との間を往復動し、第二定盤22は軌条に沿って蓋体17とホルダー13との間を往復動する。
【0012】
図4は第一の定盤と第二の定盤とを往復動させるための運搬制御手段50を示している。即ち、メインのネジ棒25が、第一軌条14の間に配置され、このネジ棒25の端部に正逆モータ24が接合している。該ネジ棒25にはピン28を備えた雌ネジ28Aが螺合し、前記正逆モータ24の回動により雌ネジ28Aはネジ棒25に沿って往復動する。
【0013】
また第二軌条15の中央下部には二本のサブのネジ棒26,27がメインのネジ棒25を挟んで配置されている。これらのネジ棒26,27の外端部にも図示していないが、正逆モータが接合し、同じくピン29、30を備えた雌ネジ29A、30Aが螺合している。
【0014】
図7に示すごとく各定盤21のその下面に備えるボール18が、軌条14(15)上面の溝に係合し、定盤21を移動させる。つまり図4に於いて前記メインの正逆モータ24がネジ棒25を回動することにより、各定盤21、22は第一軌条14に沿って往復動する。この場合ピン28が選択的に定盤21、22と係合して雌ネジ28Aを介して定盤21,22を往復動させる。また雌ネジ29A、30Aも各ピン29,30を選択的に定盤21、22に係合し、ネジ棒26,27は定盤21,22を第二軌条15に沿って移動させる。
【0015】
図1において作業者の駐在スペース11には足踏みスイッチ36が配置されている。格別足踏み式である必要はないが、常に両手を使用する作業者の足をも有効に作業に利用する意味のためであり、この形式は任意に変更可能である。部位32の周りに包袋35を被せ、足踏みスイッチ36を操作すると、図4における運搬制御手段50に信号が入り、図3における第一蓋材16と組をなす第一定盤21は、直角矢印23に沿ってホルダー13の方向に移動し、図5に示すごとくホルダー13の真下に潜り込む。
【0016】
図7に示すごとくホルダー13を形成する複数の棒材12の各隙間に位置して、各定盤21、22はリフト43を備える。各定盤21に支持したシリンダ51内に設けたスプリング52は、通常リフト43を引き下げるが、リフト43がホルダーの各棒材12間に差し入れられると、カムレール47の押し上げによってリフト43は部位32を持ち上げて、ホルダー13と部位32との摩擦を軽減し、リフト43に部位32を搭載してホルダー13外に搬出する。
【0017】
図6において第一、第二両定盤16,17を第一軌条15に沿って運搬するねじ棒25は、その先端にエンコーダ48を備え、該エンコーダ48からフイードバック回路49を介して正逆転モータへの送信でもって定盤16の移動量を設定している。またホルダー13の下域に設置したフレーム45は、カムレール47を上下に操作するリフトモータ46を備える。前記のフイードバック回路49は前記のリフトモータ46にも繋がる。通常、リフトモータ46はカムレール47を引き下げているから、リフト43は定盤16と共にホルダー13の下域に潜りこみ停止し、この停止と同時にエンコータ48からの発信号によりリフトモータ46はカムレール47を押し上げ、リフト43は部位32をホルダー13から浮上させる。続いて定盤16の逆方向への移動でもって部位32を包袋35と共にホルダー13から引き離す。
【0018】
カムレール47の長さは、リフト43がホルダー13から引き離される長さに相当する。しかし方式を変えると、カムレール47を用いることなく、リフトモータ46を定盤16の下面に設置し、リフトモータ46で直接リフト43を上下動させる構成を採用できるが、それは定盤16下域のモータ設置用のスペースに関係する。
【0019】
図1において部位32に包袋35が被せられ、作業者が足踏みスイツチ36を操作することから作業が開始される。第一定盤21は直角形の軌条23に沿ってホルダー13の下に潜り込み、部位32を搭載して前記軌条23を逆もどりし、図9において第一定盤起動スイッチ41に接触する。前記起動スイツチ41への干渉によりチヤンバーモータ48は起動し、ラック49を介して第一蓋材16を下降させて第一定盤21との間に部位32を密封する。
【0020】
第一定盤21に設けたシール台60は袋口を下から支える。ホース54は同蓋材16内の空気吸引用であり、アクチュエータ53は、前記のシール台60にシールバー55を押し付け、包袋の袋口を密封する機材である。
【0021】
この種の部位を真空包装するには10秒以上の作業時間を必要とし、作業が完了すると外部動力は定盤上の真空包装製品を定盤外に排除する。その間、図5に示すごとく作業者10はホルダー13に後続の部位32を搭載し包袋35を被せる作業を継続し、かかる作業の完了に続いて足踏みスイッチ36を操作する。図1に置いて第二定盤22は軌条37に沿って部位を第二蓋材17の内部に運び込み、起動スイッチ42を操作する。なおこの起動スイッチ42への干渉により行なわれる真空包装作業は段落0023において既に説明したとおりである。
【実施例2】
【0022】
図8は、基台20からホルダー13の上部にベルトコンベヤ70を突き出し、ホルダーの上面に突き出したベルトコンベヤ70を矢印71の方向に後退させて、部位32をホルダー上に載置するようにしたもので、作業者の労働力を軽減させる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明はライン上の被包装物を複数の真空チャンバーにより同時並行的に真空包装する真空包装装置において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の定盤と第2の定盤の動きを説明する平面図
【図2】本真空包装装置の作業状態を示す部分概略平面図
【図3】定盤の軌条走行を説明する平面図
【図4】定盤を往復動させる機構の部分平面図
【図5】作業者の包装作業状態を示す平面図
【図6】定盤の押し上げ材を昇降させる昇降機構を示す正面図
【図7】図6の昇降機構の側面図
【図8】異なる実施例図
【図9】真空包装装置の断面図
【符号の説明】
【0025】
10‥‥作業者
11‥‥駐在スペース
12‥‥棒材
13…ホルダー
14(23,24)‥‥第一軌条
15(23,24)…第二軌条
16‥‥第一蓋材
17…第二蓋材
20‥‥基台
21‥‥第一定盤
22…第二定盤
23…軌条
24‥‥正逆モータ
25…メインねじ棒
26…サブねじ棒
31、70‥‥ベルトコンベヤ
32…部位
35…包袋
36…足踏みスイッチ
37…軌条
41、42…起動スイッチ
43‥‥リフト
47‥‥カムレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の駐在スペース前面に、複数本の棒材からなるホルダーを水平横方向に配置し、前記ホルダーの下部に該ホルダーの開放端の方向に向けて配置した2本の平行な第一軌条と、前記第一軌条の端に第二軌条を交差させ、第二軌条両端上域に配置した第一、第二両蓋材と、第一蓋材及び第二蓋材に付属する第一定盤及び第二定盤と、前記第一軌条と第二軌条とに沿って前記ホルダーと第一蓋材及び第二蓋材との間において前記の第一定盤及び第二定盤を移動させる運搬制御手段と、
食肉の部位を作業者の駐在スペースに搬入するベルトコンベヤと、駐在スペース近傍に包装用の包袋を配置する保管スペースとを備え、
第一定盤及び第二定盤は、それらがホルダーの下に運び込まれた時、ホルダーを形成す複数本の棒材の隙間において上下するリフトを備え、作業者による足踏みスイッチによる信号でもって定盤に備わる前記のリフトは、その上昇作用でホルダーに搭載した部位をホルダー上に持ち上げて、該部位に被せた包袋とともに第一、第二両蓋材下域に順次搬入して、包袋内に部位を真空包装する装置。
【請求項2】
食肉の部位を作業者の駐在スペースに搬入するベルトコンベヤは、ホルダーの上面に突き出したあと、後退時に、搭載した部位をホルダー上に載置するようにした請求項1に記載の真空包装する装置。
【請求項3】
定盤に備わるリフトは、通常、バネ材の弾力によりホルダーの配置位置よりも下域に位置してホルダー下に潜りこんだあと、前記リフトは前記のバネ材の弾力に抗し、リフトモータの動力でもつてホルダー上の部位をホルダー上に浮上させるようにした請求項1に記載の真空包装する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−1095(P2011−1095A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146073(P2009−146073)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000142850)株式会社古川製作所 (76)
【Fターム(参考)】