説明

極性基含有アリルモノマー3元共重合体及びその製造方法

【課題】従来合成が困難であった、新規な構造を有する、高分子量、高剛性の極性基含有アリル共重合体、及びその製造方法の提供。
【解決手段】周期律表第10族金属錯体を触媒成分として用い、極性基として−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-2)2(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を有するアリルモノマーを、オレフィン化合物及び特定の構造をした炭素−炭素二重結合を2つ有する炭化水素化合物と共に重合することにより、架橋構造を有する高分子量の極性基含有アリルモノマー共重合体、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な極性基含有アリルモノマー共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリル基を有するモノマーの重合はビニルモノマーと比べて難しく、その重合体はほとんど知られていない。その主な理由は、アリル基を有するモノマーをラジカル重合させた場合、モノマーへの退化的連鎖移動によりポリマーの生長反応が抑制され、重合度の低いオリゴマーしか得られなかったためである(Chem. Rev., 58, 807 (1958)(非特許文献1))。
【0003】
特開昭58−49792号公報(特許文献1)には、炭化水素油組成物として、エチレン・酢酸アリル共重合体、エチレン・酢酸アリル・酢酸ビニル三元共重合体が開示されている。合成方法はラジカル重合法であり、極限粘度で0.12dl/g程度の低分子量体である。
【0004】
J. Am. Chem. Soc., 133, 1232 (2011)(非特許文献2)には、エチレンとアリルアルコール、酢酸アリル、アリルアミン、塩化アリル等のアリル化合物との共重合体が記載されているが、これらの分子量(Mn)は7,000未満であり、高分子化合物として使用するには分子量が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−49792号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem. Rev., 58, 807 (1958)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 133, 1232 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ラジカル重合等他の重合様式では合成困難と考えられてきた、新規な構造を有する、高分子量、高剛性の極性基含有アリル共重合体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、周期律表第10族金属錯体を触媒成分として用い、極性基含有アリルモノマーを、オレフィン化合物及び特定の構造をした炭素−炭素二重結合を2つ有する炭化水素化合物と共に重合することにより、架橋構造を有する高分子量の極性基含有アリルモノマー共重合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]に関する。
[1]一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R2は−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表し、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、pは0または1〜4の整数を表し、n、m、及びkはそれぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する極性基含有アリルモノマー共重合体。
[2]一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)のモノマーユニットのモル比n、m、及びkが次式
【数1】

を満足する前項[1]に記載の共重合体。
[3]ポリスチレン換算の数平均分子量Mnが7,000〜1,000,000である前項[1]または[2]に記載の共重合体。
[4]一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみを有する前項[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体。
[5]一般式(3)において、p=0である前項[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合体。
[6]一般式(3)で示されるモノマーユニットが、式中すべてのR3が水素原子を表し、pが0である2,5−ノルボルナジエンに由来する前項[1]〜[5]のいずれかに記載の共重合体。
[7]一般式(1)で示されるモノマーユニットが、式中のR1が水素原子を表すエチレンに由来し、一般式(2)で示されるモノマーユニットが、式中のR2が−O−C(=O)CH3を表す酢酸アリルに由来し、一般式(3)で示されるモノマーユニットが、式中のすべてのR3が水素原子を表し、pが0である2,5−ノルボルナジエンに由来する前項[1]〜[6]のいずれかに記載の共重合体。
[8]一般式(C1)
【化2】

(式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R6とR7は結合して環構造を形成してもよく、QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表し、YとZは結合して環構造を形成してもよく、R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。また、Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)
で示される金属錯体を触媒として使用し、一般式(4)
【化3】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
で示されるオレフィン、一般式(5)
【化4】

(式中、R2は−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。)
で示されるアリル化合物、及び一般式(6)
【化5】

(式中、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、pは0または1〜4の整数を表す。)
で示される2つの炭素‐炭素二重結合を有する炭化水素化合物を共重合することを特徴とする極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法。
[9]一般式(C1)で示される触媒が、一般式(C3)
【化6】

(式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L、及びqは前項[8]の記載と同じ意味を表す。)
で示される前項[8]に記載の共重合体の製造方法。
[10]一般式(C3)中のR6及びR7が共にイソプロピル基を表し、R8がすべて水素原子を表し、Lが2,6−ジメチルピリジンを表し、qが1であり、MがPdを表す前項[9]に記載の共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
周期律表第10族の金属錯体を触媒成分として使用し、極性基含有アリルモノマーとオレフィンに、特定の構造をした炭素−炭素二重結合を2つ有する炭化水素化合物を加えて共重合させる本発明の方法により、高分子量の極性基含有アリルモノマー共重合体を得ることができる。
【0011】
本発明の共重合体は、エステル構造や水酸基等の極性官能構造を有しており、ポリオレフィン等に添加して接着性、印刷性等表面特性の改質剤、無極性のポリオレフィンと極性の高い他の樹脂との相溶化剤、顔料等の分散剤をはじめ、塗料、インキ、接着剤、バインダー、可塑剤、滑剤、潤滑油、界面活性剤等として使用することができる。また、本発明の共重合体は、架橋構造により高分子量化しやすいため、フィルムやシートへの成形が容易であり、食品包装剤やガソリンタンク等への適用が可能である。また、第3のモノマーユニットの存在により、高剛性、高強度、及び寸法安定性が期待できる。
【0012】
さらに、架橋構造による長鎖分岐の存在が、重合体に優れた成形加工性を付与し、加工特性、機械的物性、及び極性官能基による諸特性を併せ持つ、従来にない材料への展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例2で得られた重合体2の13C−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2で得られた重合体2の13C−NMRスペクトル拡大図(20〜50ppm)である。
【図3】エチレン/酢酸アリル/ノルボルナジエン共重合体の炭素同定のための対応図である。
【図4】実施例1で得られた重合体1の赤外線吸収スペクトルである。
【図5】実施例2で得られた重合体2の赤外線吸収スペクトルである。
【図6】実施例1で得られた重合体1の示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)チャートである。
【図7】実施例2で得られた重合体2の示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
架橋構造を有する極性基含有アリルモノマー共重合体:
本発明の架橋構造を有する極性基含有アリルモノマー共重合体は、一般式(4)
【化7】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す。)
で示されるオレフィン、一般式(5)
【化8】

(式中、R2は−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。)
で示されるアリル化合物、一般式(6)
【化9】

(式中、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基、pは0または1〜4の整数を表す。)
で示される炭素−炭素二重結合を2つ有する炭化水素化合物、及び必要に応じて他のモノマーを共重合することにより得られる。
【0015】
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)
【化10】

(式中、R1、R2、R3、及びpは上記と同様の意味を表す。n、m、及びkはそれぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する共重合体であり、必要に応じて、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニット以外のモノマーユニットを有していてもよい。
【0016】
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は、以下の(A)及び(B)の構造を有することが好ましい。
(A)一般式(3)で示されるモノマーユニット以外のモノマーユニットで構成される部分における、主鎖の炭素原子数2以上の分岐が主鎖を構成する炭素原子1,000個あたり1個以下であり、一般式(3)で示されるモノマーユニットで2本の主鎖を架橋している。また、1本の主鎖が2箇所以上架橋される場合もある。
(B)一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのモル比n、m、及びkが次式
【数2】

を満足する。
【0017】
さらに、下記(C)、(D)、及び(E)の要件を満たすことが好ましい。
(C)ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが7,000以上1、000,000以下である。
(D)主鎖の少なくとも片末端に炭素−炭素二重結合を有する。
(E)一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのモル比n、m、及びkが次式
【数3】

を満足する。
【0018】
本発明の重合体は、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニット、さらに必要に応じて一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニット以外のモノマーユニットで構成される非常に分岐の少ない直鎖状の共重合体を、一般式(3)で示されるモノマーユニットで架橋した構造を有する。
【0019】
まず、本発明の架橋構造を有する共重合体中の一般式(3)で示されるモノマーユニットを除いた部分、すなわち、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニットで構成される共重合体について説明する。
【0020】
ポリマー鎖構造では、一般に直鎖状構造と分岐構造とが知られている。ラジカル重合法によって得られるエチレン系ポリマーは、バックバイティング機構により分岐状の構造体が得られることが知られている。分岐構造としてはバックバイティングによる炭素数5以下の短鎖分岐、主鎖に発生したラジカルを開始点とする長鎖分岐が存在する。一方、本発明の方法で得られる共重合体の構造のうち、一般式(3)で示されるモノマーユニットを除いたポリマー鎖、すなわち一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニットから構成される共重合体は、分岐が非常に少ない直鎖状であり、主鎖を構成する炭素原子1,000個あたり、分岐は1個以下である。ここで炭素原子1,000個あたりの分岐の数は、炭素数2以上の分岐が結合している主鎖の3級炭素の数を13C−NMRで測定することにより計算することができる。
なお、本発明では、分岐とは、炭素原子数2以上のものを表し、モノマーに由来する側鎖(一般式(1)中ではR1に相当し、一般式(2)中では−CH2−R2に相当する)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットは分岐にはカウントしない。例えば、オレフィン化合物として1−ブテンが共重合されている場合、エチル基が側鎖となるが、これは分岐とはしない。また、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニット以外のモノマーユニットを含む場合も同様である。
【化11】

【0021】
本発明の共重合体の末端構造の一方は、主鎖の構造とは異なり、炭素−炭素二重結合となり得る。末端構造は、重合の開始時にできる開始端と重合の停止時にできる停止端とに分けて考えることができる。開始端は、触媒金属−水素原子間の結合あるいは触媒金属−アルキル基間の結合にオレフィンが挿入してできるため飽和結合となるが、停止端はその反応機構により飽和結合の場合と不飽和結合の場合に分類される。反応系中に有機アルミニウムのようなアルキル基をもつ連鎖移動剤を使用する場合、分子鎖がアルミニウム原子に連鎖移動し、反応を停止させることで、飽和末端となることが報告されている。三塩化チタン系のチーグラー・ナッタ触媒や周期律表第4族元素の金属錯体を触媒に用いる場合、有機アルミニウムを使用して極性基を有するアリル化合物を共重合させるため、末端構造が飽和結合になる。一方、本発明においては有機アルミニウムを使用しないため、ポリマー鎖生長はβ−水素脱離機構により停止し、少なくとも一方の末端構造が不飽和二重結合となり得る。
【化12】

式中、Rは、一般式(1)または一般式(2)における、R1またはCH22を表し、Polymerはポリマー鎖を表す。
【0022】
不飽和二重結合は、共重合体のNMR解析により確認することが可能である。この末端不飽和結合は、反応性に富み、官能基修飾、ブロック共重合体化、星状ポリマー化などが可能となるため、本発明の共重合体は極めて有用である。
【0023】
本発明の架橋構造を有する極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法によれば、ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが7,000以上、1,000,000以下の極性基含有アリルモノマー共重合体を得ることができる。このような共重合体は各種成形法に供することが可能である。数平均分子量Mnは成形性と強度とのバランスから7000〜500,000がより好ましく、10,000〜300,000がさらに好ましい。
【0024】
一般式(3)で示されるモノマーユニットの含有量(モル%={k/(m+n+k)}×100)は0.1モル%以上、10モル%以下であることが好ましい。一般式(3)で示されるモノマーユニットにより、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーユニット、さらに必要に応じて一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニット以外のモノマーユニットからなる非常に分岐の少ない直鎖状の共重合体を架橋して分子量をさらに増大させる。一般式(3)で示されるモノマーユニットが少なすぎると、分子量を増大させる効果が小さい。多すぎると、架橋が複雑(網目状構造)になり、添加した量に対する分子量増大効果が小さくなる。この点から、0.2〜5.0モル%がより好ましい。一般式(3)で示されるモノマーユニットが複数種存在する場合、それら各モノマーユニットの合計値をkとする。
【0025】
一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量(モル%={m/(m+n+k)}×100)は0.1%モル以上、50モル%以下であることが好ましい。一般式(2)で示されるモノマーユニットの含有量はポリエチレンと同程度の溶融粘度、成形条件とする観点から、0.5〜15.0モル%がより好ましく、1.0〜10.0モル%がさらに好ましい。一般式(2)で示されるモノマーユニットが複数種存在する場合、それら各モノマーユニットの合計値をmとする。
【0026】
また、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示される化合物モノマーユニット以外に第4のモノマーユニットが含まれていてもよい。第4のモノマーユニットの具体例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルエーテル等に由来するモノマーユニットが挙げられる。さらに、一般式(6)で示される炭化水素化合物の2つの炭素−炭素二重結合のうち片方のみが挿入して生成するモノマーユニット、すなわち一般式(7)
【化13】

(式中、rはモノマーユニットのモル比を表す数値であり、R3及びpは上記と同様の意味を表す。)
で示されるモノマーユニットが存在していてもよい。この場合、「k+r」を前記のkと読み替えるものとする。
【0027】
本発明の共重合体において、一般式(2)で示されるモノマーユニットのR2が−OCOR2-1の場合、R2の一部または全部が加水分解されてもよい。一般式(2)で示されるモノマーユニットが酢酸アリル由来の場合、けん化反応後の共重合体は下記式(2−2)で示される酢酸アリルに由来するモノマーユニットがけん化されて、式(2−1)で示されるアリルアルコール由来のモノマーユニットに変化し、m1+m2=mの構造となる。
【化14】

(式中、m1及びm2は、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
【0028】
一般式(2)で示されるモノマーユニットの全部がけん化されるとm2=0となる。m1とm2の比率はけん化度で調整することができる。本発明の共重合体のけん化反応は、ポリ酢酸ビニルやエチレン・酢酸ビニル共重合体のけん化反応の方法と同様に、当該共重合体を溶媒に溶解または分散させ、水やアルコールの存在下、酸やアルカリで処理して行うことができる。
【0029】
共重合体は、通常の熱可塑性樹脂と同様の条件で、ペレット状、フィルム状、シート状などに成形することができる。
得られた共重合体は、射出成形、押出し成形、フィルム成形法などの成形法により、それ自体を製品にすることができる。あるいは、ポリオレフィンなどに添加して接着性、印刷性など表面特性の改質剤、無極性なポリオレフィンと極性の高い他の樹脂との相溶化剤、顔料などの分散剤として使用することができる。あるいは、塗料やインキ、接着剤、バインダー、可塑剤、滑剤、潤滑油、界面活性剤等として使用することができる。
【0030】
モノマー:
本発明の共重合体の一般式(1)で示されるモノマーユニットの元となるモノマーであるオレフィンは、一般式(4)
【化15】

で示される。
【0031】
一般式(4)において、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す。一般式(4)で示されるオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等が挙げられ、反応性や原料入手性の面でエチレンやプロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。またこれらは、1種を単独で、あるいは2種を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明の共重合体の一般式(2)で示されるモノマーユニットの元となるモノマーである極性基を有するアリル化合物は、一般式(5)
【化16】

で示される。
【0033】
一般式(5)において、R2は、−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。R2-1としては炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R2-2としては水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、またはフェニル基が好ましい。−COOR2-3のR2-3としては炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等が好ましい。R2のハロゲン原子としては塩素、臭素が好ましい。
【0034】
一般式(5)で示される極性基を有するアリル化合物の具体例としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、N−アリルアニリン、N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン、N−ベンジルオキシカルボニル−N−アリルアミン、N−アリル−N−ベンジルアミン、塩化アリル、臭化アリル等が挙げられる。これらの中でも、特に酢酸アリル、アリルアルコールが好ましく、酢酸アリルがより好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明の共重合体の一般式(3)で示されるモノマーユニットの元となる特定の構造をした炭素−炭素二重結合を2つ有する炭化水素化合物は、一般式(6)
【化17】

で示される。
【0036】
一般式(6)において、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、pは0または1〜4の整数を表す。
3が表わす炭素原子数1〜5のアルキル基は分岐を有していてもよい。R3としては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。pの値は、入手容易性及びコストの面で0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0037】
一般式(6)で示される化合物の具体例としては、2,5−ノルボルナジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−エチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、1−エチル−2,5−ノルボルナジエン、4−メチル−2,5−ノルボルナジエン、4−エチル−2,5−ノルボルナジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3,8−ドデカジエン等が挙げられる。これらの中でも、特に2,5−ノルボルナジエンが好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
一般式(6)で示される化合物を共重合させると、その一部において、2つ有する炭素−炭素二重結合のうちの片方のみが挿入し、一般式(7)
【化18】

(式中、R3、p、及びrは上記と同様の意味を表す。)
で示されるモノマーユニットが生成する可能性がある。
【0039】
また、一般式(4)、一般式(5)、及び一般式(6)で示される化合物に、1種類あるいはそれ以上の他のモノマーを加え共重合させて重合体に他のモノマーに由来する機能を付加させることができる。他のモノマーとしては、炭素数9以上のオレフィン化合物、スチレン、またはアリルモノマー以外の極性基含有モノマーを挙げることができる。炭素数9以上のオレフィン化合物としては、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。アリルモノマー以外の極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルエーテル等を挙げることができる。
【0040】
触媒:
本発明で使用する周期表第10族金属錯体からなる触媒は、一般式(C1)
【化19】

で示される。
【0041】
式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表す。Xはリン(P)原子または砒素原子(As)を表す。R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R6とR7は結合して環構造を形成してもよい。QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]M、またはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表す(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)。Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表す。YとZは結合して環構造を形成してもよい。R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。また、本明細書では「炭化水素」は飽和、不飽和の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素を含む。
【0042】
以下、一般式(C1)の構造について説明する。
Mは周期律表第10族の元素を表す。周期律表第10族の元素としては、Ni、Pd、Ptが挙げられるが、触媒活性や得られる分子量の観点からNi及びPdが好ましく、Pdがより好ましい。
Xはリン原子(P)または砒素原子(As)であり、Mに2電子配位している。Xとしては、入手容易性及び触媒コストの面からリン原子が好ましい。
Y、R6、及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。アルコキシ基としては炭素原子数1〜20のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては炭素原子数6〜24のものが好ましく、フェノキシ基等が挙げられる。シリル基としてはトリメチルシリル基、アミノ基としてはアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。また、R6とR7は同じでも、異なっていてもよい。また、R6とR7は結合して環構造を形成してもよい。R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。Y、R6、及びR7のハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フリル基等が挙げられる。ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における、アルコキシ基、アリールオキシ基の具体例としては前記と同様のものが挙げられる。ハロゲン原子はフッ素が好ましい。特に触媒活性の観点から、アルキル基及びアリール基が好ましい。
【0043】
以下、XがP(リン原子)の場合の、Y−X−R6、R7部位、すなわち
【化20】

の具体例を挙げる。なお、PとMとの結合は省略している。
【0044】
【化21】

【0045】
【化22】

【0046】
【化23】

【0047】
【化24】

【0048】
XがAs(砒素原子)の場合の、Y−X−R6、R7部位、すなわち
【化25】

の具体例としては、
【化26】

が挙げられる。
【0049】
5は、水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における炭素原子数1〜30の炭化水素基としては炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。ハロゲン原子は塩素、臭素が好ましい。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。アリールオキシ基としてはフェノキシ基が好ましい。アシロキシ基としてはアセトキシ基、ピバロキシ基が好ましい。R5の特に好ましい例として、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、1−アセトキシフェニル基、1−ピバロキシプロピル基等が挙げられる。
【0050】
Qは−S(=O)2−O−、−C(=O)−O−、−P(=O)(−OH)−O−、または−S−で示される2価の基を表し、Mに1電子配位する部位である。前記各式の左側がZに結合し、右側がMに結合している。これらの中でも触媒活性の面から−S(=O)2−O−が特に好ましい。
【0051】
Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表す。YとZは結合して環構造を形成してもよい。「ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基」におけるハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基の具体例はY、R6及びR7について述べたものが挙げられる。炭素原子数1〜40の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、フェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0052】
Z−Q部位は電気陰性度の大きい酸素原子または硫黄原子で金属原子Mに1電子配位している。Z−Q−M間の結合電子は、MからZ−Qに移動しているため、形式上、Z−Qをアニオン状態、Mをカチオン状態で表記することも可能である。
【0053】
一般式(C1)において、Y部位とZ部位は結合することができる。この場合、一般式(C1)は一般式(C2)で示される。一般式(C2)では、Y−Z部位を一体としてY1で示している。ここで、Y1はQとXとの間の架橋構造を表すことになる。
【化27】

式中、Y1はハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表す。Q、M、X、R5、R6、R7、L、及びqは一般式(C1)と同じ意味を表す。
【0054】
1におけるハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基の具体例はYで説明したものと同様である。炭素原子数1〜70の炭化水素基としてはアルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。特に好ましくはアリーレン基である。
【0055】
XがP(リン原子)の場合、[(R6)(R7)P]部位としては、具体的に以下の構造が挙げられる。なお、下記の構造式ではPとM及びY1との結合は省略している。また、構造式中、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、tBuはt‐ブチル基を表す。
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
【化30】

【0058】
架橋構造Y1はXとQ部位を結合する架橋部位である。XをP原子で示した架橋構造Y1の具体例を以下に示す。ここで、複数のR9は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子1〜20の炭化水素基、またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。
【化31】

【0059】
置換基R6及びR7は、Y1部位と結合して環構造を形成してもよい。具体的には以下の構造が挙げられる。
【0060】
【化32】

【0061】
一般式(C2)で示される触媒の中でも、特に以下の一般式(C3)で示されるものが好ましい。
【化33】

式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L、及びqは一般式(C1)と同じ意味を表す。
【0062】
式(C3)においては、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。R6及びR7は、共にシクロヘキシル基、シクロペンチル基、またはイソプロピル基であることが好ましい。MはPdが好ましい。
【0063】
一般式(C1)及び一般式(C2)で示される触媒の金属錯体は、公知の文献(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8948)に従って合成することができる。すなわち、0価あるいは2価のMソースと一般式(C1)または一般式(C2)中の配位子とを反応させて金属錯体を合成する。
一般式(C3)で示される化合物は、一般式(C2)中のY1及びQを、一般式(C3)に対応する特定の基にすることにより合成することができる。
【0064】
0価のMソースは、パラジウムソースとして、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられ、ニッケルソースとして、テトラカルボニルニッケル(0):Ni(CO)4、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が挙げられる。
【0065】
2価のMソースは、パラジウムソースとして、(1,5−シクロオクタジエン)(メチル)塩化パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II):PdCl2(CH3CN)2、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II):PdCl2(PhCN)2、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジクロロパラジウム(II):PdCl2(TMEDA)、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジメチルパラジウム(II):PdMe2(TMEDA)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II):Pd(acac)2、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム(II):Pd(OCOCF32が、ニッケルソースとして、(アリル)塩化ニッケル(II)、(アリル)臭化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II):Ni(acac)2、(1,2−ジメトキシエタン)ジクロロニッケル(II):NiCl2(DME)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II):Ni(OSO2CF32が挙げられる。
【0066】
一般式(C1)または一般式(C2)で示される金属錯体は、単離して使用することができるが、錯体を単離することなくMを含む金属ソースと配位子前駆体を反応系中で接触させて、これをそのまま(in situ)重合に供することもできる。特に一般式(C1)及び一般式(C2)中のR5が水素原子の場合、0価のMを含む金属ソースと配位子前駆体とを反応させた後、錯体を単離することなくそのまま重合に供することが好ましい。
【0067】
この場合の配位子前駆体は、一般式(C1)の場合、一般式(C1−1)
【化34】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)、及び一般式(C1−2)
【化35】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される。
【0068】
一般式(C2)の場合、次式(C2−1)
【化36】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される。
【0069】
一般式(C1)におけるMソース(M)と配位子前駆体(C1−1)(X)あるいは配位子前駆体(C1−2)(Z)との比率(X/MあるいはZ/M)またはMソース(M)と配位子前駆体(C2−1)(C2配位子)との比率((C2配位子)/M)は、0.5〜2.0の範囲で、さらには、1.0〜1.5の範囲で選択することが好ましい。
【0070】
一般式(C1)あるいは一般式(C2)の金属錯体を単離する場合、予め電子供与性配位子(L)を配位させて安定化させたものを使用することもできる。この場合、qは1/2、1または2となる。qが1/2とは1つの2価の電子供与性配位子が2つの金属錯体に配位していることを意味する。qは金属錯体触媒を安定化する意味で、1/2または1が好ましい。なお、qが0の場合は配位子がないことを意味する。
【0071】
Lは中性の電子供与性配位子を表す。中性の電子供与性配位子(L)とは、電子供与性基を有し、金属原子Mに2電子配位して金属錯体を安定化させることができる化合物であり、これにより金属錯体を単離することができる。
【0072】
中性の電子供与性配位子(L)としては、硫黄原子を有するものとしてジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。窒素原子を有するものとして、炭素原子数1〜10のトリアルキルアミン、ジアルキルアミン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、キノリン、2−メチルキノリン、アニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。リン原子を有するものとして、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリフリルホスフィン等が挙げられる。酸素原子を有するものとして、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。合成手法の観点から、窒素原子を有するもの及びリン原子を有するものが好ましく、特に窒素原子を有するものが好ましい。
【0073】
一般式(C1)または一般式(C2)で示される金属錯体は、担体に担持して重合に使用することもできる。この場合の担体は、特に限定されないが、シリカゲル、アルミナ等の無機担体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機担体等を挙げることができる。金属錯体の担持法としては、金属錯体の溶液を担体に含浸させて乾燥する物理的な吸着方法や、金属錯体と担体とを化学的に結合させて担持する方法等が挙げられる。
【0074】
重合方法:
金属錯体を触媒として使用する一般式(4)、一般式(5)、及び一般式(6)で示されるモノマーの重合方法は特に制限されるものではなく、一般に使用される方法で重合可能である。すなわち、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法などのプロセスが可能であるが、特に溶液重合法、懸濁重合法が好ましい。また重合様式は、バッチ様式でも連続様式でも可能である。また、一段重合でも、多段重合でも行うこともできる。
【0075】
一般式(C1)、一般式(C2)、または一般式(C3)で示される金属錯体触媒は2種類以上を混合して重合反応に使用してもよい。混合して使用することで重合体の分子量、分子量分布、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマーユニットの含有量を制御することが可能であり、所望の用途に適した重合体を得ることができる。一般式(C1)、一般式(C2)、または一般式(C3)で示される金属錯体触媒とモノマーの総量のモル比は、モノマー/金属錯体の比で、1〜10,000,000の範囲、好ましくは10〜1,000,000の範囲、より好ましくは100〜100,000の範囲が用いられる。
【0076】
重合温度は、特に限定されない。通常−30〜200℃、好ましくは0〜180℃、より好ましくは20〜150℃の範囲でである。
一般式(4)で示されるオレフィンの圧が内部圧力の大半を占める重合圧力については、常圧から20MPaの範囲内、好ましくは常圧から10MPaの範囲内で行われる。
重合時間は、プロセス様式や触媒の重合活性などにより適宜調整することができ、数分の短い時間も、数千時間の長い反応時間も可能である。
【0077】
重合系中の雰囲気は触媒の活性低下を防ぐため、モノマー以外の空気、酸素、水分などが混入しないように窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たすことが好ましい。また溶液重合の場合、モノマー以外に不活性溶媒を使用することが可能である。不活性溶媒は、特に限定されないが、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族エステル、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0078】
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は、一般式(4)、一般式(5)、及び一般式(6)で示される化合物に、1種類あるいはそれ以上の他のモノマーを加え共重合させて重合体に他のモノマーに由来する機能を付加させることができる。使用できるモノマーは前述のとおりである。
【0079】
本発明の重合体は、その官能基の反応性を利用して、種々の重合体に変換が可能である。例えば、R2が水酸基であれば、その第1級水酸基をハロゲンに置換して、リビングラジカル重合の開始点とし、種々の極性基含有モノマーをラジカル重合によって重合することにより、2種類以上のポリマーが結合するグラフトポリマーの生成も可能である。この場合のラジカル重合可能なモノマーとして、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等を例示できる。
【0080】
一般式(4)、一般式(5)、及び一般式(6)で示されるモノマーの仕込み比は目的とする共重合体の組成比にあわせて適宜調節する。第四のモノマーを使用する場合も同様である。
【0081】
一般式(4)で示されるモノマーが重合反応温度にて気体である場合、圧力を制御することにより調節する。また、一般式(5)及び一般式(6)で示されるモノマーは、そのまま使用することができるが、不活性溶媒により希釈して、モノマー仕込み比を調節することもできる。
重合反応終了後、生成物である共重合体は、公知の操作、後処理法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿等)により単離することができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0083】
[重合体の構造の解析方法]
実施例で得た共重合体の構造は、日本電子(株)製JNM−ECS400を用いた各種NMR解析により決定した。共重合体中の一般式(1)で示されるオレフィン化合物に由来するモノマーユニット、一般式(2)で示されるアリル化合物に由来するモノマーユニット、及び一般式(3)で示される2つの炭素−炭素二重結合を有する炭化水素化合物に由来するモノマーユニットの含有率と末端構造は、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン(0.55mL)及び緩和試薬としてCr(acac)3(10mg)を用い、120℃において、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMR(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000〜10,000回)によって決定した。
【0084】
末端構造は、13C−NMRで解析することができる。特に末端二重結合を有する場合、13C−NMRスペクトルで114ppm及び139ppm付近にスペクトルが現れるため、13C−NMRスペクトルで10〜40ppmに現れる飽和末端構造を区別することができる(参考文献:Chem. Commun. 2002, 744-745)。
【0085】
数平均分子量及び重量平均分子量は、昭和電工(株)製,AT−806MSカラム(2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC−8121GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:145℃)により算出した。
【0086】
赤外線吸収スペクトルは、サーモ・フィッシャー(Thermo Fisher)社製,FT−IR装置NICOLET6700を使用して測定を行った。一般式(2)で示されるモノマーユニットが酢酸アリルに由来する場合、1,740〜1,750cm-1にカルボニル基のC−O伸縮振動による強い吸収帯が観測される(図4及び図5を参照)。
【0087】
示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)は、島津製作所(株)製DTA−60A装置を使用して測定を行った。標準物質としてα‐アルミナを使用し、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定した。
融点及び結晶化温度は、島津製作所(株)製,DSC−60装置を使用して、窒素気流下、測定を行った。
【0088】
[金属錯体触媒1の合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体触媒1を合成した。
【化37】

(a)化合物1aの合成
窒素雰囲気下、ベンゼンスルホン酸(Sigma−Aldrich社製、21.7g,137mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(400mL)に、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.57Mヘキサン溶液,174mL,274mmol)を0℃で加え、室温で3時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後にクロロジイソプロピルホスフィン(Sigma-Aldrich社製,19.0g,125mmol)を−78℃で加え、室温で2.5時間撹拌した。反応をトリフルオロ酢酸(東京化成工業製、15.6g,137mmol)で停止した後に、生じた沈殿をろ過によって回収し、減圧下乾燥して2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid;化合物1a)を得た。収量は26.8g(78%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 1.25 (d, J = 18.0 Hz, 6H), 1.53 (dd, J = 21.0, 6.6 Hz, 6H), 3.45 (br, 2H), 5.72 (br d, 1JPH = 380 Hz, 1H), 7.62-7.65 (m, 2H), 7.85 (br s, 1H), 8.29 (br s, 1H)。
【0089】
(b)錯体1bの合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid;化合物1a)(16.3g,59.3mmol)とジイソプロピルエチルアミン(和光純薬工業製、38.3g,296mmol)の塩化メチレン溶液(200mL)に、(cod)PdMeCl(「Rulke, R.E. et.al., Inor. Chem., 1993, 32, 5769-5778」に従って合成。cod=1,5−シクロオクタジエン、16.3g,61.5mmol)の塩化メチレン溶液(75mL)を加え、室温で2.5時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、ろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥し、錯体1bを得た。収量は33.7g(>99%)であった。錯体1bの構造は1H−NMRスペクトルにより決定した。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.69 (s, 3H, PdCH3), 1.19-1.45 (m, 27H), 2.53(sept, J = 7.1 Hz, 2H), 3.18 (br., 2H, HNCH2CH3), 3.82 (br., 2H, HNCH(CH3)2), 7.42-7.59 (m, 3H), 8.22 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 9.37 (br s, 1H, NH)。
【0090】
(c)金属錯体触媒1の合成
窒素雰囲気下、炭酸カリウム(80.8g,585mmol)と2,6−ルチジン(東京化成工業製、62.7g,585mmol)の塩化メチレン懸濁液(500mL)に、錯体1b(33.7g,58.5mmol)の塩化メチレン溶液(200mL)を加え、室温で2.5時間撹拌した。溶媒を減圧下留去して残った固体を塩化メチレンで抽出した。抽出液をセライト(乾燥珪藻土)でろ過し、ゆっくりとヘキサン(200mL)中に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥し、金属錯体触媒1を得た。収量は27.6g(94%)であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.35 (s, 3H, PdCH3), 1.28 (dd, J = 14.8, 6.8 Hz, 6H), 1.36 (dd, J = 17.4, 6.6 Hz, 6H), 2.54-2.63 (m, 2H), 3.18 (s, 6H, CH3 of lutidine), 7.13 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.45-7.61 (m, 4H), 8.31 (m, 1H)。
【0091】
実施例1:エチレン/酢酸アリル/2,5−ノルボルナジエンの共重合(重合体1の調製)
窒素雰囲気下、金属錯体触媒1(0.050mmol)を750ppmの2,5−ノルボルナジエンを含有する酢酸アリル(75mL,70g,酢酸アリル700mmolと2,5−ノルボルナジエン0.5mmolを含有)に溶解し、その溶液を120mLオートクレーブに投入した。エチレンガスを4.0MPaの圧力となるまで充填した後、オートクレーブを80℃で5時間撹拌した。反応終了後、エチレンを脱圧し、重合反応液を室温まで冷却すると、重合体が反応液から析出した。重合体のスラリー溶液である反応液を、吸引ろ過することで、重合体1を回収し、減圧下乾燥した。重合体1の収量は5.1gであり、触媒あたり、単位時間あたりの重合活性は、20g/(mmol−cat・h)であった。逆ゲート付きデカップリング法を使用した13C−NMRスペクトルにより、重合体の酢酸アリル含有率が4.1mol%と算出された。また、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量(Mn)11,000、重量平均分子量(Mw)37,000、多分散度(Mw/Mn)3.5であった。DSC測定により、融点102℃、結晶化温度90℃であった。重合体1の赤外線吸収スペクトルを図4に示し、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)チャートを図6に示す。
なお、触媒活性は次の式により計算した。
【数4】

【0092】
実施例2:重合体1のソックスレー抽出による分子量分画
実施例1で得られた重合体1のソックスレー抽出法による分子量分画を行った。すなわち、重合体1(2.5g)に対して、酢酸アリル(200mL)加熱還流下、ソックスレー抽出を行った。加熱還流を11時間行った後、抽出されずに残った重合体(重合体2)を回収し、減圧下乾燥した。その重量は1.2gであった。重合体2の赤外線吸収スペクトルを図5に示し、示差熱熱重量同時測定(TG−DTA)チャートを図7に示す。
サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量(Mn)43,000、重量平均分子量(Mw)90,000、多分散度(Mw/Mn)2.1であった。13C−NMRスペクトル(図1及び図2)において、48.0ppm及び48.3ppmにノルボルナン骨格由来のピークが観測されたことから、ノルボルナジエンが取り込まれた共重合体であることが判明した。加えて、赤外線吸収スペクトル(図5)において、1744cm-1にカルボニル基由来の吸収が観測され、重合体2に重合体1と同程度の酢酸アリル由来のユニットが存在することがわかった。また、逆ゲート付きデカップリング法を使用した13C−NMRスペクトルにより、重合体2中に、酢酸アリル由来のユニットがモル比で3.1%、ノルボルナジエン由来のユニットが0.26%存在すると算出された。DSC測定により、融点93℃、結晶化温度87℃であった。
以上のことから、実施例1及び実施例2で得られた重合体1及び重合体2が、エチレン/酢酸アリル/2,5−ノルボルナジエン三元共重合体であることを確認した。
【0093】
比較例1:エチレン/酢酸アリルの共重合
実施例1の方法と同様の方法を使用して、2,5−ノルボルナジエンを添加せずに、エチレンと酢酸アリルの共重合を行った。窒素雰囲気下、金属錯体触媒1(0.050mmol)の酢酸アリル(75mL,70g,700mmol)溶液を120mLオートクレーブに投入した。エチレンを4.0MPaまで充填した後、オートクレーブを80℃で5時間撹拌した。反応終了後、エチレンを脱圧し、重合反応液を室温まで冷却すると、重合体が反応液から析出した。重合体のスラリー溶液である反応液を、吸引ろ過することで、重合体を回収し、減圧下乾燥した。重合体の収量は4.2gであり、触媒あたり、単位時間あたりの重合活性は、17g/(mmol−cat・h)であった。逆ゲート付きデカップリング法を使用した13C−NMRスペクトルにより、重合体の酢酸アリル含有率が4.5mol%と算出された。また、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量(Mn)10,000、重量平均分子量(Mw)22,000、多分散度(Mw/Mn)2.2であった。
【0094】
以上の結果より、エチレン及び酢酸アリルの共重合において、第3のモノマーとして2,5−ノルボルナジエンを添加することにより(実施例1)、重合活性が向上し、さらには得られる共重合体の分子量が増大することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R2は−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表し、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、pは0または1〜4の整数を表し、n、m、及びkはそれぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項2】
一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)のモノマーユニットのモル比n、m、及びkが次式
【数1】

を満足する請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
ポリスチレン換算の数平均分子量Mnが7,000〜1,000,000である請求項1または2に記載の共重合体。
【請求項4】
一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるモノマーユニットのみを有する請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
一般式(3)において、p=0である請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【請求項6】
一般式(3)で示されるモノマーユニットが、式中すべてのR3が水素原子を表し、pが0である2,5−ノルボルナジエンに由来する請求項1〜5のいずれかに記載の共重合体。
【請求項7】
一般式(1)で示されるモノマーユニットが、式中のR1が水素原子を表すエチレンに由来し、一般式(2)で示されるモノマーユニットが、式中のR2が−O−C(=O)CH3を表す酢酸アリルに由来し、一般式(3)で示されるモノマーユニットが、式中のすべてのR3が水素原子を表し、pが0である2,5−ノルボルナジエンに由来する請求項1〜6のいずれかに記載の共重合体。
【請求項8】
一般式(C1)
【化2】

(式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R6とR7は結合して環構造を形成してもよく、QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表し、YとZは結合して環構造を形成してもよく、R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。また、Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)
で示される金属錯体を触媒として使用し、一般式(4)
【化3】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
で示されるオレフィン、一般式(5)
【化4】

(式中、R2は−OH、−OCOR2-1(R2-1は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R2-22(R2-2は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR2-3(R2-3は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR2-2は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。)
で示されるアリル化合物、及び一般式(6)
【化5】

(式中、複数のR3はそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を表し、pは0または1〜4の整数を表す。)
で示される2つの炭素‐炭素二重結合を有する炭化水素化合物を共重合することを特徴とする極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法。
【請求項9】
一般式(C1)で示される触媒が、一般式(C3)
【化6】

(式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L、及びqは請求項8の記載と同じ意味を表す。)
で示される請求項8に記載の共重合体の製造方法。
【請求項10】
一般式(C3)中のR6及びR7が共にイソプロピル基を表し、R8がすべて水素原子を表し、Lが2,6−ジメチルピリジンを表し、qが1であり、MがPdを表す請求項9に記載の共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79347(P2013−79347A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220755(P2011−220755)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】