説明

極端紫外光源装置

【課題】ほぼ均一な強度で所望のパルス幅を実現できるドライバレーザを用いて、効率的にEUV光を得ることができる極端紫外光源装置を提供する。
【解決手段】この極端紫外光源装置は、ターゲットにレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生するレーザ生成プラズマ型極端紫外光源装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、チャンバ内の所定の位置に液体又は固体の金属ターゲットを供給するターゲット供給手段と、互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成して強度が略均一の単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを生成し、ターゲット供給手段によって供給されるターゲットに該レーザビームを照射することによりプラズマを生成するレーザビーム生成部と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するコレクタミラーとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィにおける微細化が急速に進展しており、次世代においては、100nm〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、ターゲットにレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ励起プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源装置」ともいう)と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
ここで、LPP方式によるEUV光の生成原理について説明する。真空チャンバ内に供給されるターゲット物質に対してレーザビームを照射することにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化する。このプラズマから、EUV光を含む様々な波長成分が放射される。そこで、所望の波長成分(例えば、13.5nmの波長を有する成分)を選択的に反射するEUVコレクタミラーを用いてEUV光が反射集光され、露光器に出力される。EUVコレクタミラーの反射面には、例えば、モリブデン(Mo)の薄膜とシリコン(Si)の薄膜とを交互に積層した多層膜(Mo/Si多層膜)が形成されている。
【0005】
このようなLPP式EUV光源装置においては、特に固体のターゲットを用いる場合に、プラズマから放出される中性粒子やイオンによる影響が問題となっている。EUVコレクタミラーはプラズマ近傍に設置されるので、プラズマから放出される中性粒子は、EUVコレクタミラーの反射面に付着してミラーの反射率を低下させる。一方、プラズマから放出されるイオンは、EUVコレクタミラーの反射面に形成されている多層膜を削り取る。なお、中性粒子やイオンを含むプラズマからの飛散物やターゲット物質の残骸は、デブリ(debris)と呼ばれている。
【0006】
ところが、最近になって、COレーザと固体の錫との組み合わせにより、レーザビーム照射によって錫から発生するデブリの量が大幅に低減されることが確認された。また、非特許文献1に記載されているように、COレーザによって生成されるレーザビームを金属ターゲットに照射して得られるEUV光については、レーザビームのパルス幅(FWHM:半値全幅)が100nsのオーダーとなる条件で、高いレーザ光/EUV光変換効率(CE)が得られることが明らかになりつつある。
【0007】
しかしながら、現在研究が進められているCOレーザ、又は、既に市販されているCOレーザにおいては、レーザビームのパルス幅が1ns〜50ns程度である。一方、RFモジュレーションによってパルス発振を行うCOレーザにおいては、レーザビームのパルス幅が数μsである。このように、ほぼ均一な強度で100ns程度のパルス幅を実現できるレーザシステムは、今のところ提案されていない。
【0008】
関連する技術として、下記の特許文献1には、パルス光の発光時間を擬似的に伸長することによって、発光時間内の平均エネルギーを低減するパルス幅伸長光学系が開示されている。このパルス幅伸長光学系は、パルス光を複数の光路に沿って分割するための光分割手段と、複数の光路に沿った分割パルス光を同一の光路に沿って合成するための光合成手段とを備え、同一の光路に沿って合成された合成パルス光の強度が複数の光路に沿って分割される元のパルス光の強度よりも実質的に小さくなるように、複数の光路が互いに所定の光路長差を有している。しかしながら、パルス光を分割するにつれて強度が次第に低下してくるので、均一な強度を有するパルス光を生成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−288251号公報(第1頁、図1)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】村上、他、「レーザ生成プラズマにおける極端紫外放射の変換効率(Conversion efficiency of extreme ultraviolet radiation in laser-produced plasmas)」、米国物理学会、プラズマの物理、第13巻第033107号(2006年)、第7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、ほぼ均一な強度で所望のパルス幅を実現できるドライバレーザを用いて、効率的にEUV光を得ることができる極端紫外光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、ターゲットにレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生するレーザ生成プラズマ型極端紫外光源装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、チャンバ内の所定の位置に液体又は固体の金属ターゲットを供給するターゲット供給手段と、互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成して強度が略均一の単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを生成し、ターゲット供給手段によって供給されるターゲットに該レーザビームを照射することによりプラズマを生成するレーザビーム生成部と、プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するコレクタミラーとを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成して強度が略均一の単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを生成するようにしたので、効率的にEUV光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態における複数のパルスのタイミング及び波形を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態における複数のパルスのタイミング及び波形を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。
【図8】第3の実施形態における複数のパルスのタイミング及び波形を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。
【図10】第4の実施形態における複数のパルスのタイミング及び波形を示す図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。
【図12】第5の実施形態におけるパルスの波形を示す図である。
【図13】本発明の第1〜第5の実施形態の変形例におけるパルス列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置の構成を示す概略図である。本実施形態に係るEUV光源装置は、レーザビームをターゲット物質に照射して励起させることによりEUV光を生成するレーザ励起プラズマ(LPP)方式を採用している。
【0016】
図1に示すように、このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ10と、ターゲット1を供給するターゲット供給装置11と、ターゲット1に照射される励起用レーザビーム2を生成するレーザビーム生成部(ドライバレーザ)12と、レーザビーム生成部12によって生成される励起用レーザビーム2を集光するレーザ集光光学系14と、ターゲット1に励起用レーザビーム2が照射されることによって発生するプラズマ3から放出されるEUV光4を集光して出射するEUVコレクタミラー15と、ターゲット1を回収するターゲット回収装置16とを備えている。
【0017】
真空チャンバ10には、励起用レーザビーム2を導入する導入窓18と、プラズマから放射されるEUV光の内で不要な光(EUV光よりも波長が短い電磁波やEUV光よりも波長が長い紫外線等)を除去し、所望の波長成分(例えば、13.5nmの波長を有する成分)を通過させて露光器に導出するSPF(spectral purity filter)19とが設けられている。なお、露光器の内部も、真空チャンバ10の内部と同様に、真空又は減圧状態に保たれる。
【0018】
レーザビーム生成部12は、複数系列の発振増幅型レーザ装置と、それらの発振増幅型レーザ装置からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成器123とを含んでいる。図1においては、発振段レーザ装置(OSC:オシレータ)121a〜121dと、増幅段装置122a〜122dとを有する第1系列〜第4系列の発振増幅型レーザ装置が示されている。例えば、第1系列の発振増幅型レーザ装置は、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置121aと、発振段レーザ装置121aから出力されるパルスレーザビームを増幅するN段の増幅器AMP(1)〜AMP(N)を含む増幅段装置122aとによって構成される。ここで、Nは自然数であり、各系列の増幅段装置は、少なくとも1段の増幅器を含んでいる。
【0019】
本実施形態においては、発振段レーザ装置121a〜121dとして、高い繰り返し周波数(例えば、パルス幅が数n秒〜数十n秒程度、周波数が1kHz〜100kHz程度)でパルス発振可能なCOレーザが用いられる。また、ビーム合成器123としては、プリズム、ポーラライザ、又は、立体形状を有するミラー等を用いることができる。
【0020】
各レーザ系列において、発振段レーザ装置121a〜121dにおいて発振により生成されたレーザ光は、N段の増幅器を含む増幅段装置122a〜122dによって順次増幅され、所望のレーザエネルギーが達成される。本実施形態においては、各レーザ系列において得られるエネルギーは約20mJであり、これらを統合して合成することにより、約80mJのレーザエネルギーが得られる。第1系列〜第4系列の発振増幅型レーザ装置からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームは、ビーム合成器123によって合成されて、レーザ集光光学系14に供給される。
【0021】
図2に示すように、第1系列〜第4系列の発振増幅型レーザ装置は、順次遅延されたタイミングで駆動される。各系列の発振増幅型レーザ装置から出力されるレーザビームのパルス幅は、約30nsである。そのようなパルス幅を達成するレーザ装置は、市販されていて入手が容易である。例えば、発振段レーザ装置として、TEAレーザ又はスラブレーザを用いても良い。あるいは、軸流型の連続発振レーザを用いて、キャビティダンプ等により上記のパルス幅を得ても良い。それらのレーザは、典型的には、数μJのエネルギーしか出力できないので、EUV光を発生するために数十mJのエネルギーを得ようとすると、図1に示すような増幅段装置が必要となる。
【0022】
このように、時間差を持たせて複数系列の発振増幅型レーザ装置を駆動し、それらの発振増幅型レーザ装置から出力される増幅後のパルスレーザビームを合成することによって、レーザ集光光学系14の入力において100nsオーダーのパルス幅と80mJのエネルギーを有する単一パルスレーザビームを得ることができる。
【0023】
レーザ集光光学系14は、少なくとも1つのレンズ及び/又は少なくとも1つのミラーで構成される。レーザビーム生成部12によって得られたレーザビームは、レーザ集光光学系14によって集光され、真空チャンバ10内の所定の位置においてターゲット1に照射される。このときの集光径は100μm程度であり、パワー密度は1010W/cm程度となる。これにより、ターゲット1の一部が励起してプラズマ化し、発光点から様々な波長成分が放射される。ここで、発光点とは、プラズマ3が発生する位置を意味する。
【0024】
EUVコレクタミラー15は、プラズマ3から放射される様々な波長成分の内から、所定の波長成分(例えば、13.5nm付近のEUV光)を選択的に反射することにより集光する集光光学系である。EUVコレクタミラー15は凹状の反射面を有しており、この反射面には、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するために、モリブデン(Mo)及びシリコン(Si)の多層膜が形成されている。
【0025】
EUVコレクタミラー15によってEUV光が集められ、SPF19によって波長純度が向上された後、露光器に出力される。なお、EUV光の集光光学系は、図1に示すEUVコレクタミラー15に限定されず、複数の光学部品を用いて構成しても良いが、EUV光の吸収を抑えるために反射光学系とすることが必要である。
【0026】
従来、EUV光源装置のプラズマ生成においては、ターゲットへのレーザビーム照射から10ns〜30ns程度の時間しか最適なエネルギー吸収密度を維持できないとされていた。このときのEUV変換効率(CE)は、錫ターゲットを用いた場合に2%〜4%であった。そのため、レーザビームのパルス幅も、それに合わせたものとなっていた。しかしながら、先に述べたように、最適なエネルギー吸収密度を維持できる時間が100nsのオーダーで持続することが明らかになりつつある。その場合には、より多くのレーザエネルギーをEUV光の発生に使えるので、CEが数%向上する。この点に鑑み、本実施形態においては、ほぼ均一な強度を保ちながら100nsオーダーのパルス幅を有するレーザビームを生成することを可能とした。
【0027】
本実施形態においては、ターゲット1として、錫(Sn)の細線が用いられるが、これに限らず、例えば、ターゲットの材料として、錫の他にインジウムやリチウムを用いても良く、ターゲットの形態として、溶融金属のジェットやドロップレットの他に、固体板や固体球等のバルクターゲットを用いても良い。
【0028】
LPP方式のEUV光源装置においては、ドライバレーザのコスト構成比率が非常に大きく、場合によっては装置全体の価格の80%を越えてしまう。従って、ドライバレーザの価格低減は、装置全体の価格の大幅な低減を意味する。本実施形態によれば、小規模で比較的安価なCOレーザを用いて、高効率でEUVを発生することができる。レーザビームの照射条件にもよるが、例えば、従来よりもCEが2%程度向上して、5%〜6%のCEが得られるので、従来と同一エネルギーのEUV光を発生するために必要となるレーザビームのエネルギーが、従来の1/2〜2/3で済む。これは、数億円と予想される量産型EUV光源装置において、劇的なコストダウンに繋がる。また、EUV光以外の光エネルギーや無駄な熱の発生も少ないので、コレクタミラーやSPFの寿命向上によるランニングコストの低減効果も期待できる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、レーザビーム生成部の構成が第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。レーザビーム生成部12は、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置121と、発振段レーザ装置121から出力されるパルスレーザビームを複数の光路に分岐させるビーム分岐手段としてのビームスプリッタ124a〜124c及びミラー125と、分岐された複数のパルスレーザビームをそれぞれ増幅する複数の増幅段装置122a〜122dと、それらの増幅段装置122a〜122dからそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成器123a〜123cとを含んでいる。ビーム合成器123a〜123cとしては、プリズム又はポーラライザ等を使用することができる。
【0031】
図4の(a)に示すように、発振段レーザ装置121から出力されるレーザビームのパルス幅は約30nsであり、分岐された複数のパルスレーザビームが複数の増幅段装置122a〜122dによって増幅され、観測点1A〜1Dにおいて、順次遅延されたタイミングでパルスが観測される。
【0032】
複数の増幅段装置122a〜122dからそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームをビーム合成器123a〜123cによって順次合成することにより、図4の(b)に示すように、観測点2〜4においてパルス幅が順次増加し、観測点4において、ほぼ均一な強度で100nsオーダーのパルス幅を有する単一パルスレーザビームを得ることができる。本実施形態においては、発振段レーザ装置のタイミング制御が不要である。従って、EUV光源装置全体の制御負荷を軽減して、信頼性の高い制御系を実現することができる。
【0033】
次に、第1及び第2の実施形態の変形例について説明する。図1に示す第1の実施形態においては、複数のレーザビームを合成するためにビーム合成器123を用いたが、図5に示すように、EUVコレクタミラー15に複数のレーザビームをそれぞれ通すための複数の開口部を形成しておき、複数の増幅段装置122a〜122dからそれぞれ出力される複数のレーザビームが、プラズマ3の発生位置(ターゲット1におけるレーザビーム照射点)において合成されるようにしても良い。
【0034】
また、図3に示す第2の実施形態においては、複数のレーザビームを合成するためにビーム合成器123a〜123cを用いたが、図6に示すように、EUVコレクタミラー15に複数のレーザビームをそれぞれ通すための複数の開口部を形成しておき、複数の増幅段装置122a〜122dからそれぞれ出力される複数のレーザビームが、プラズマ3の発生位置(ターゲット1におけるレーザビーム照射点)において合成されるようにしても良い。
【0035】
第1及び第2の実施形態においては、複数系列の発振増幅型レーザ装置からそれぞれ出力される複数のパルスを合成してから照射点に導くようにしていたが、複数のパルスを照射点で合成するようにすれば、照射点までの各パルスのエネルギーを小さくすることができるので、レーザパルスの通過経路における光学素子のダメージを軽減することが可能となる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、レーザビーム生成部の構成が第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0037】
図7は、本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。図1に示す第1の実施形態におけるレーザビーム生成部は、複数の発振段レーザ装置に複数の増幅段装置をそれぞれ直列に配して、4系列の発振段レーザ装置及び増幅段装置を用いていた。これに対し、図7に示す第3の実施形態においては、発振段レーザ装置のみを複数用意して、増幅段装置を共通で使用するようにしている。
【0038】
レーザビーム生成部12は、複数のパルスレーザビームをそれぞれ出力する複数の発振段レーザ装置(OSC:オシレータ)121a〜121dと、それらの発振段レーザ装置121a〜121dからそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成器123と、ビーム合成器123から出力される単一パルスレーザビームを増幅するN段の増幅器AMP(1)〜AMP(N)を含む増幅段装置122とを含んでいる。ここで、Nは自然数である。
【0039】
図8に示すように、第1系列〜第4系列の発振段レーザ装置121a〜121dは、順次遅延されたタイミングで駆動される。各々の発振段レーザ装置から出力されるレーザビームのパルス幅は約30nsである。また、発振段レーザ装置121a〜121dからそれぞれ出力される複数のパルスは、時間的に早いものを低エネルギーとし、遅延時間が長いほど高エネルギーとする。そのような複数のパルスをビーム合成器123によって合成すると、第1段の増幅器AMP(1)の入力において、時間と共に強度が増加するパルス波形となる。
【0040】
そのようなパルス波形とする理由は、増幅器AMP(1)〜AMP(N)によって増幅動作を行う際に、パルス波形において時間的に早い部分ほど増幅器の増幅率が高くなるからである。上記のようなパルス波形を増幅器AMP(1)〜AMP(N)によって順次増幅すると、最終段の増幅器AMP(N)の出力において、ほぼ一定の強度で100nsオーダーのパルス幅を有する矩形状パルスが得られる。本実施形態においては、増幅器1台当りの容量(励起エネルギー)を増加させることが必要となるが、増幅器の数を低減できるので、結果として低コストになる場合がある。
【0041】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、レーザビーム生成部の構成が第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0042】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。図7に示す第3の実施形態におけるレーザビーム生成部は、複数の発振段レーザ装置を用いていた。これに対し、図9に示す第4の実施形態においては、1つの発振段レーザ装置から出力されるレーザビームを複数の光路に分岐させて、光路差により互いに異なる遅延を持たせた複数のレーザビームを合成するようにしている。
【0043】
レーザビーム生成部12は、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置(OSC:オシレータ)121と、発振段レーザ装置121から出力されるパルスレーザビームを複数の光路に分岐させるビーム分岐手段としてのビームスプリッタ124a〜124c及びミラー125と、光路に応じて互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成器123a〜123cと、ビーム合成器123cから出力される単一パルスレーザビームを増幅するN段の増幅器AMP(1)〜AMP(N)を含む増幅段装置122とを含んでいる。ここで、Nは自然数である。
【0044】
図10の(a)に示すように、発振段レーザ装置121から出力されるレーザビームのパルス幅は約30nsであり、観測点1A〜1Dにおいて、順次遅延されたタイミングでパルスが観測される。ビームスプリッタ124a〜124c及びミラー125からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームをビーム合成器123a〜123cによって順次合成することにより、図10の(b)に示すように、観測点2〜4において観測されるようなパルスを得ることができる。さらに、ビーム合成器123cから出力される単一パルスレーザビームを増幅段装置122によって増幅することにより、観測点5において、ほぼ一定の強度で100nsオーダーのパルス幅を有する矩形状パルスが得られる。
【0045】
本実施形態においても、増幅器AMP(1)〜AMP(N)の増幅特性を考慮して、増幅器AMP(1)の入力において、図10の(b)に示す観測点4におけるようなパルス波形にすることが望ましい。これは、第3の実施形態と同様に、観測点1A〜1Dにおけるパルス強度に、図10の(a)に示すような強度差を持たせることにより実現できる。そのような強度差を設定するためには、ビームスプリッタ124a〜124cの反射率を徐々に低くなるようにすれば良い。
【0046】
例えば、ビームスプリッタ124aの反射率を95%、ビームスプリッタ124bの反射率を85%、ビームスプリッタ124cの反射率を55%とすると、観測点1Aにおけるエネルギーは、発振段レーザ装置121から出力されるエネルギーの5%となり、観測点1Bにおけるエネルギーは、発振段レーザ装置121から出力されるエネルギーの10%となり、観測点1Cにおけるエネルギーは、発振段レーザ装置121から出力されるエネルギーの30%となり、観測点1Dにおけるエネルギーは、発振段レーザ装置121から出力されるエネルギーの55%となるので、図10の(a)に示すような強度比をほぼ達成することができる。
【0047】
本実施形態によれば、発振段レーザ装置が1台で済むので低コストとなる。また、第3の実施形態におけるよりも比較的小さなエネルギーのパルスを増幅して所望のエネルギーを得ようとするので、増幅器の容量(励起エネルギー)をさらに増加させることが必要となるが、構成が非常に簡単になる上に、制御負荷も軽くすることが可能である。
【0048】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、レーザビーム生成部の構成が第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては、第1の実施形態と同様である。
【0049】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザビーム生成部の構成を示す図である。本実施形態におけるレーザビーム生成部は、レーザ増幅における飽和現象を利用して、ほぼ一定の強度を有するパルスを生成している。即ち、所定の値以上の強度を有する光を増幅段装置に入力すると、増幅率が一定値に漸近する現象が起こるので、これをパルス整形に利用している。
【0050】
レーザビーム生成部12は、時間と共に強度が増加するパルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置(OSC:オシレータ)126と、発振段レーザ装置126から出力されるパルスレーザビームを、時間と共に減少する増幅率で増幅するN段の増幅器AMP(1)〜AMP(N)を含む増幅段装置とを含んでいる。ここで、Nは自然数である。
【0051】
例えは、発振段レーザ装置126は、図12に示す観測点1における波形のように、パルス幅(FWHM)が30ns程度で、裾野が100ns程度で、時間と共に強度が増加するパルスを発振する。これは、TEAレーザにおいては容易ではないが、キャビティダンプ等の光スイッチによるパルス切り出しを行うレーザにおいては比較的容易である。例えば、Cd/Te等の結晶に印加する電圧波形を調整することによって、このようなパルス波形を簡単に形成することができる。
【0052】
そのような波形を有するパルスを、容量(励起エネルギー)を調整した増幅器に通すと、パルス前半部は、エネルギーが低いので高い増幅率で増幅され、パルス後半部は、増幅器が飽和してしまうので低い増幅率で増幅される。この現象を利用すると、パルスの裾野部分を選択的に増幅させる事ができる。増幅器AMP(1)〜AMP(N)において、これを繰り返せば、観測点2〜4におけるようにパルス幅が順次増加して、最終的には、ほぼ一定の強度で100nsオーダーのパルス幅を有するパルスを得ることができる。本実施形態によれば、増幅器の容量を小さくすることが可能であり、制御要素も少なく、比較的簡単な構成で低コストのレーザシステムが可能となる。
【0053】
次に、第1〜第5の実施形態の変形例について説明する。第1〜第5の実施形態においては、ターゲットに照射するレーザビームとして、複数のパルスを合成してパルス幅が100nsオーダーの単一パルスを形成したが、単一パルスの替わりに、高繰り返しのパルス列を形成するようにしても良い。その場合においても、ほぼ同等の効果を得ることができる。
【0054】
例えば、第5の実施形態におけるのと同様の装置構成で、発振段レーザ装置を高繰り返しで発振させても良いし、第3の実施形態におけるのと同様の装置構成で、複数の発振段レーザ装置からそれぞれ出力される複数のパルスを合成しても良い。但し、その場合においても、レーザ増幅の特性を考慮して、図13に示すように、パルス列における時間的に早いタイミングでエネルギーの低いパルスとし、時間と共に徐々にエネルギーの高いパルスとなるようにする。
【0055】
この変形例において、パルス列に含まれている個々のパルスは、第1〜第5の実施形態と比較して短い、例えば、数nsのパルス幅を有するパルスとなるが、これはEOキャビティダンプ等により容易に実現可能である。この変形例によれば、第5の実施形態におけるように発振段レーザ装置のパルス波形を特殊な形状に整形する必要がなく、市販のCOレーザの出力を調整しながらバースト発振させれば良いので、構成が簡単になる。
さらに、上記の実施形態及び変形例の内の2つ以上を組み合わせることによって、ほぼ一定の強度を有する単一パルス又はパルス列を実現するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、露光装置の光源として用いられるEUV光源装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ターゲット、2…レーザビーム、3…プラズマ、4…EUV光、10…真空チャンバ、11…ターゲット供給装置、12…レーザビーム生成部、121、121a〜121d、126…発振段レーザ装置、122、122a〜122d、127…増幅段装置、123、123a〜123c…ビーム合成器、124a〜124c…ビームスプリッタ、125…ミラー、14…レーザ集光光学系、15…EUVコレクタミラー、16…ターゲット回収装置、18…導入窓、19…SPF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットにレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生するレーザ生成プラズマ型極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の位置に液体又は固体の金属ターゲットを供給するターゲット供給手段と、
互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成して強度が略均一の単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを生成し、前記ターゲット供給手段によって供給されるターゲットに該レーザビームを照射することによりプラズマを生成するレーザビーム生成部と、
前記プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するコレクタミラーと、
を具備する極端紫外線光源装置。
【請求項2】
前記レーザビーム生成部が、互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームをそれぞれ生成する複数系列の発振増幅型レーザ装置を含み、前記複数系列の発振増幅型レーザ装置の各々が、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置と、前記発振段レーザ装置から出力されるパルスレーザビームを増幅する少なくとも1段の増幅器を含む増幅段装置とを有する、請求項1記載の極端紫外線光源装置。
【請求項3】
前記レーザビーム生成部が、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置と、前記発振段レーザ装置から出力されるパルスレーザビームを複数の光路に分岐させるビーム分岐手段と、分岐された複数のパルスレーザビームをそれぞれ増幅する複数の増幅段装置とを含む、請求項1記載の極端紫外線光源装置。
【請求項4】
前記レーザビーム生成部が、前記複数系列の発振増幅型レーザ装置又は前記複数の増幅段装置からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成手段をさらに含む、請求項2又は3記載の極端紫外線光源装置。
【請求項5】
前記複数系列の発振増幅型レーザ装置又は前記複数の増幅段装置からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームが、プラズマ発生位置において合成される、請求項2又は3記載の極端紫外線光源装置。
【請求項6】
前記レーザビーム生成部が、互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームをそれぞれ出力する複数の発振段レーザ装置と、前記複数の発振段レーザ装置からそれぞれ出力される複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成手段と、前記ビーム合成手段から出力される単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを増幅する少なくとも1段の増幅器を含む増幅段装置とを含む、請求項1記載の極端紫外線光源装置。
【請求項7】
前記レーザビーム生成部が、パルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置と、前記発振段レーザ装置から出力されるパルスレーザビームを複数の光路に分岐させるビーム分岐手段と、それぞれの光路に応じて互いに異なる遅延を伴う複数のパルスレーザビームを合成するビーム合成手段と、前記ビーム合成手段から出力される単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを増幅する少なくとも1段の増幅器を含む増幅段装置とを含む、請求項1記載の極端紫外線光源装置。
【請求項8】
ターゲットにレーザビームを照射することにより極端紫外光を発生するレーザ生成プラズマ型極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
前記チャンバ内の所定の位置に液体又は固体のターゲットを供給するターゲット供給手段と、
時間と共に強度が増加するパルスレーザビームを時間と共に減少する増幅率で増幅して強度が略均一の単一パルスレーザビーム又はパルス列レーザビームを生成し、前記ターゲット供給手段によって供給されるターゲットに該レーザビームを照射することによりプラズマを生成するレーザビーム生成部と、
前記プラズマから放射される極端紫外光を集光して出射するコレクタミラーと、
を具備する極端紫外線光源装置。
【請求項9】
前記レーザビーム生成部が、時間と共に強度が増加するパルスレーザビームを出力する発振段レーザ装置と、前記発振段レーザ装置から出力されるパルスレーザビームを時間と共に減少する増幅率で増幅する少なくとも1段の増幅器を含む増幅段装置とを含む、請求項8記載の極端紫外線光源装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−146683(P2012−146683A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94543(P2012−94543)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2007−39811(P2007−39811)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】