説明

極細撚線の製造方法及び製造装置

【課題】 設備費を抑えつつ小さなスペースにて効率良く高品質の極細撚線を製造することが可能な極細撚線の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 本発明の極細撚線の製造方法は、複数本の極細導体Sa,Sbを撚り合わせて極細撚線Yとする極細撚線の製造方法であって、極細導体Sa,Sbが巻かれた複数個のサプライリール21をクレードル12の上に配置し、クレードル12を回転させながらキャプスタン31で各サプライリール21から極細導体Saを引き出し、各サプライリール21から繰り出される極細導体Sa,Sbを、目板24に形成された導体ガイド孔26及び中心線ガイド孔25を通してダイス27で集線させて撚り合わせ、極細撚線Yとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細導体を撚り合わせてなる極細撚線を製造する極細撚線の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯通信端末の配線ケーブルやCCDカメラケーブルなどには、撚線機によって極細導体を撚り合わせた超極細の撚線にPFA樹脂などを被覆したケーブルが用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
そして、この種のケーブルを製造するための極細導体を撚り合わせる撚線機としては、図5に示すように、複数のサプライリール51を筒型ロータ52内に直列に配置し、各サプライリール51から繰り出された極細導体53をサプライリール51の直列方向の一端側のダイス54に導いて撚り合わせるチューブラ撚線機が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−219115号公報
【特許文献2】特開2002−352642号公報
【特許文献3】特開2001−3281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のチューブラ撚線機は、サプライリール51を直列に配置しているため、サプライリール51から繰り出される極細導体53のパスラインが長くなるとともに、そのパスラインの長さがサプライリール51の配置毎に異なり、また、撚り合わせ点となるダイス54から遠いほど張力の変動(振れ幅)が大きくなるため、各極細導体53の張力が不安定かつ不均一となってしまい、製造する極細撚線の品質低下を招いてしまう。
【0005】
また、サプライリール51を直列に配置していることより、装置の全長が長くなり、大きな設置スペースを占有してしまうとともに、長尺で大型の筒型ローラ52を回転させるために、大容量の駆動モータを要し、また軸受にエアーベアリングを採用している際は、軸受に使用するエアーの消費量が嵩んでしまう。
しかも、筒型ロータ52は、高度な加工精度が要求される高価なものであるので、設備費が嵩んでしまう。
【0006】
また、チューブラ型とは別の撚線機として、アーチ状の弓に配置されたガイドに複数の極細導体を通し、この弓を回転させることにより、1回転で2度撚りを行うダブルツイスト撚線機もあるが、この撚線機では、依然として大型化が免れず、しかも、回転されるアーチ状の弓内で、その回転の外周側に配置された極細導体が伸ばされ、品質の低下を招いてしまう。
【0007】
本発明は、設備費を抑えつつ小さなスペースで効率良く高品質の極細撚線を製造することが可能であり、さらに極細撚線の撚りが長手方向に安定した高品質の極細撚線の製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の極細撚線の製造方法は、複数本の極細導体を撚り合わせて極細撚線とする極細撚線の製造方法であって、極細導体が巻かれた複数個のサプライリールを回転板の上に配置し、前記回転板を回転させながら引取装置で各サプライリールから極細導体を引き出し、各サプライリールから繰り出される極細導体を、目板に形成されたガイド孔を通してダイスで集線させて撚り合わせることを特徴とする。
【0009】
また、前記各サプライリールから繰り出される極細導体に、バックテンションを付与することが好ましい。
【0010】
また、上記課題を解決することのできる本発明の極細撚線の製造装置は、極細導体が巻かれた複数のサプライリールが支持された回転板と、前記回転板の各サプライリールから繰り出される極細導体を案内するガイド孔を有する目板と、前記ガイド孔に通された前記極細導体を集合させて撚り合わせるダイスと、前記ダイスにより撚り合わされた極細撚線を引き取る引取装置と、を備えていることを特徴とする。
なお、本発明でいう極細撚線とは、AWG36かそれよりも細い撚線を指す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転板を回転させながら回転板のサプライリールから極細導体を繰り出して目板のガイド孔を通してダイスへ案内し、このダイスで集線させるので、小さなスペースで効率良く高品質の極細撚線を製造することができる。また、高価で大型の構成部品を不要とすることができ、設備費を抑えつつ小さなスペースにおける製造が可能である。また、各サプライリールからダイスまでのパスラインがほぼ同じ長さであり、各極細導体の張力が均一となり、撚りが長さ方向に安定した高品質の極細撚線の製造が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る極細撚線の製造方法及び製造装置の実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1は本実施形態の極細撚線の製造装置の構成を示す概略構成図であり、図2は図1に示す装置のI−I断面図であり、図3は図1に示す装置のII−II断面図であり、図4は製造された極細撚線の一例を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の極細撚線の製造装置11は、回転可能に支持された円板状の回転板としてのクレードル12を有している。このクレードル12は、駆動機構13によって回転されるようになっている。この駆動機構13は、駆動モータ14を備えており、この駆動モータ14は、回転軸に設けられた駆動プーリー15を回転させることにより、この駆動プーリー15に噛み合わされた伝達ベルト16を介して、クレードル12の軸中心部に設けられた従動プーリー17を回転させ、これにより、クレードル12を回転させる。
【0014】
図2に示すように、クレードル12には、その下流側(図1中右側)に、複数(本実施形態では6つ)のサプライリール21が取り付けられている。これらサプライリール21は、クレードル12の周縁に沿って周方向へ等間隔に配置されて支持されており、それぞれのサプライリール21には、極細導体Saが巻回されている。また、クレードル12の上流側(図1中左側)には、中心線となる極細導体Sbが巻回されたサプライリール22が設けられており、このサプライリール22に巻回された極細導体Sbは、ガイドシーブ23に掛けられた後、クレードル12の回転軸上に形成された挿通孔12aへ通され、クレードル12の下流側へ引き出される。
【0015】
クレードル12の下流側には、クレードル12と同期して回転する目板24が設けられている。図3に示すように、目板24には、その中心に中心線ガイド孔25が形成され、この中心線ガイド孔25の周囲に、クレードル12に設けられたサプライリール21に対応する数の導体ガイド孔26が周方向へ等間隔に形成されている。
そして、この目板24には、その中心線ガイド孔25に、サプライリール22から引き出された中心線となる極細導体Sbが通され、各導体ガイド孔26に、各サプライリール21から引き出された各極細導体Saが通される。
【0016】
目板24の下流側には、各極細導体Sa,Sbの撚り合わせ点となるダイス27が設けられており、目板24の中心線ガイド孔25及び導体ガイド孔26を通された極細導体Sa,Sbがダイス27へ導かれて、ダイス27で集合されて撚り合わされ、極細撚線Yとされる。
なお、各サプライリール21の鍔部には、例えばナイロン糸などにより形成されたウィスカー28が設けられ、このウィスカー28によって、サプライリール21から繰り出される極細導体Saに適度のバックテンションが付与されて弛みが抑えられる。
【0017】
このダイス27のさらに下流側には、引取装置としてのキャプスタン31、ダンサローラ32及び巻き取りボビン33がパスラインに沿って順に設けられている。
キャプスタン31は、ダイス27を通過した極細撚線Yを、所定の張力を付与しつつ引き込むものである。このキャプスタン31によって引き込まれた極細撚線Yは、ダンサローラ32によって送り出し量が調整されて巻き取りボビン33へ送り出され、その後、巻き取りボビン33に所定の巻き取り張力で巻き取られる。
【0018】
そして、上記の極細撚線の製造装置11によって極細撚線Yを製造するには、サプライリール21,22から巻き取りボビン33までのパスラインに各極細導体Sa,Sbを通して配置した後、クレードル12及び目板24を回転させながらキャプスタン31によって極細導体Sa,Sbを下流側に引き取っていく。その際、サプライリール22から引き出された極細導体Sbは、ガイドシーブ23により方向転換されてクレードル12の回転軸上に沿ってダイス27へ送られる。一方、クレードル12上に配置された各サプライリール21から引き出された各極細導体Saは、目板24の導体ガイド孔26を通ってパスラインを規制されながらダイス27へ送られる。
【0019】
目板24によって案内された各極細導体Sa,Sbは、ダイス27によって、中心線となる極細導体Sbの周囲にこの極細導体Sbの外周側を公転しながら送られてきた6本の極細導体Saを巻き付けて撚り合わせ、図4に示すような構成の極細撚線Yとして引き出す。ダイス27から引き出された極細撚線Yは、キャプスタン31によって引き取られてダンサローラ32を通過して巻き取りボビン33に巻き取られる。
【0020】
このように、上記実施形態によれば、クレードル12を回転させながらクレードル12のサプライリール21及びクレードル12の上流側のサプライリール22から極細導体Sa,Sbを繰り出し、目板24の導体ガイド孔26及び中心線ガイド孔25を通してダイス27へ案内し、このダイス27で集線させて撚り合わせるため、極細導体Sa,Sbのパスラインを短くすることができる。また、極細導体Sbの周囲に撚る極細導体Saのパスライン長を均一にすることができるため、張力の均等化及び安定化を図ることができ、高品質の極細撚線を製造することができる。
【0021】
また、サプライリール21が支持された回転可能なクレードル12を備えた簡略的な構造であるので、高価で大型の筒型ロータなどの構成部品を不要とすることができ、設備費を抑えつつ小さなスペースで効率良く製造することができる。また、駆動モータ14に要求される駆動力がチューブラ撚線機等に比べて小さく済むため、運転の省力化を図ることができる。
【0022】
なお、サプライリール21から極細導体Saが引き出される際には、その引き出し開始部がサプライリール21の鍔部上を円周方向に沿って移動する。そのため、サプライリール21から導体ガイド孔26までのパスラインはサプライリール21の回転軸の周囲で回転移動することになる(パスラインの軌跡が円錐状になる)。このパスラインの移動は導体ガイド孔26を通ることで規制されるため、目板24からダイス27までのパスラインはクレードル12及び目板24の回転に対して相対的に移動しない。しかしながら、サプライリール21から導体ガイド孔26の間で、極細導体Saのパスラインをサプライリール21の回転軸上に沿うように方向転換させるようにすれば、そこから導体ガイド孔26までのパスラインが変動しない。これにより、ダイス27へ集合される極細導体Saの状態をさらに安定させることができ、結果として製造される極細撚線Yの構造を均等化及び安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る撚線の製造装置の構成を説明する概略側面図である。
【図2】図1に示す装置のI−I断面図である。
【図3】図1に示す装置のII−II断面図である。
【図4】本実施形態により製造された撚線の断面図である。
【図5】チューブラ撚線機の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
11 製造装置
12 クレードル(回転板)
21、22 サプライリール
24 目板(目板)
25 中心線ガイド孔(ガイド孔)
26 導体撚線ガイド孔(ガイド孔)
27 ダイス
31 キャプスタン(引取装置)
33 巻き取りボビン
Sa,Sb 極細導体
Y 極細撚線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の極細導体を撚り合わせて極細撚線とする極細撚線の製造方法であって、
極細導体が巻かれた複数個のサプライリールを回転板の上に配置し、前記回転板を回転させながら引取装置で各サプライリールから極細導体を引き出し、各サプライリールから繰り出される極細導体を、目板に形成されたガイド孔を通してダイスで集線させて撚り合わせることを特徴とする極細撚線の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の極細撚線の製造方法であって、
前記各サプライリールから繰り出される極細導体に、バックテンションを付与することを特徴とする極細撚線の製造方法。
【請求項3】
極細導体が巻かれた複数のサプライリールが支持された回転板と、前記回転板の各サプライリールから繰り出される極細導体を案内するガイド孔を有する目板と、前記ガイド孔に通された前記極細導体を集合させて撚り合わせるダイスと、前記ダイスにより撚り合わされた極細撚線を引き取る引取装置と、を備えていることを特徴とする極細撚線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−328603(P2006−328603A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156266(P2005−156266)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】