説明

極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液

【課題】耐熱性に優れた、極薄デバイス用の耐熱性ポリイミド皮膜(フィルム)作製のためのポリイミド前駆体溶液を提供する。
【解決手段】 ポリイミド前駆体溶液が溶剤と芳香族テトラカルボン酸無水物類と、ジカルボン酸無水物類と、ベンザゾール骨格を有するジアミン類とから得られるポリアミドとを主成分とするポリアミド酸溶液であり、芳香族テトラカルボン酸無水物類が有するカルボン酸無水物基のモル数Anと、ジカルボン酸無水物類とが有するカルボン酸無水物基のモル数Bnと、ジアミン類が有するアミノ基のモル数Cnとが、以下の関係(1)式と(2)式とを同時に満足することを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
0.90≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1)
0≦Bn/An≦0.05 ・・・・・・・・・・・・(2)
によって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱膨張、高耐熱性、靭性に優れる、各種極薄デバイスにおいて、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしての極薄デバイス基板、薄膜太陽電池等の光電変換デバイスとしての極薄デバイス基板用であるポリイミド前駆体溶液(樹脂組成物)に関し、特にフラットパネルディスプレイ用基板として有用であるポリイミド前駆体溶液(樹脂組成物)に関する。また、本発明は前記ポリイミド前駆体溶液(樹脂組成物)を用いた極薄デバイスの製造方法及び前記製造方法により得られる極薄デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種ディスプレイにはガラス基板が用いられているが、ガラス基板は軽量化、薄型化すると強度が低下する問題を抱えている。そこでガラス基板の代替品として、軽量かつ成型加工が容易であるゆえに薄型化可能なプラスチック基板の採用が求められている。ガラス基板よりも高い靭性を持つプラスチック基板が採用できれば、曲げたり丸めたりすることが可能なフラットパネルディスプレイの実現が期待される。さらにフィルム基板を用いることが出来れば、ロール・トゥ・ロール・プロセスにより、非常に生産性の高い生産プロセスの確立が期待される。
【0003】
しかしながら、特にディスプレイデバイスの分野においては、既存の生産ラインが枚葉状のガラス基板などを使用する前提で構築されているため、ロール・トゥ・ロール・プロセスを導入するには生産インフラを根本から変更する必要がある。そのためには莫大な経済的資源と周辺技術開発が必要となり、早急なロール・トゥ・ロール・プロセス導入は非現実的である。
また一方、ディスプレイデバイスの、特にTFTアレイの形成工程においては、フォトリソ法、印刷法などにより、広い面積において精緻な位置あわせが必要な加工が要求される。フィルム基板の多くは、硬質基板に比較し、弾性係数が低く、線膨張係数が大きく、さらに加熱、加湿などによる非可逆的な寸法変化が生じるなどの点で、精緻な位置あわせが困難な場合が多い。特に大面積のディスプレイデバイスの加工を行う場合、周辺部での位置ズレが顕著となるため、加工可能なデバイスの大きさに制限が生じてしまう場合がある。
【0004】
これらの問題点を解決するために、フィルム基板を硬質基板に粘着剤などで仮固定して加工する工法が考案されている。フィルムを硬質基板に固定することで、既存の硬質基板用加工インフラを用いてディスプレイデバイスの加工が可能となる。また、寸法精度は、ほぼ硬質基板に支配されるため、大面積の加工においても高い位置あわせ精度が期待出来る。しかしながら特に無機半導体、より詳しくはアモルファスシリコン、微多結晶シリコン、化合物系半導体など、薄膜形成に高温が必要となる素材を扱う場合には、フィルム素材の耐熱性は勿論、仮固定に使われる粘着剤の耐熱性が問題となる。フィルム基材として耐熱性の高いポリイミドフィルムなどを用いた場合においても、真空薄膜プロセスにて基板を高温に晒した場合、多くの粘着剤は高温で著しく粘着力が低下し、加工途上での基板からの剥離や、粘着剤自体の熱劣化によりガス発生などが生じ、プロセスが著しく阻害され、目的とする半導体薄膜の形成は困難となる。
かかる問題点に対し、例えば、特許文献1、特許文献2に例示される、硬質キャリア基板上に、フィルムの前駆体となる溶液を塗布し、硬質キャリア基板上でフィルム化を行ってから、フィルム上にディスプレイデバイスを形成し、最後に前記硬質キャリア基板からディスプレイデバイスをフィルムごと剥離するというディスプレイの製造法が提案されている。この方法によれば、予め独立したフィルム状の基板を用いるよりも、薄く軽量な基板を形成できる点が利点とされている。また粘着剤などの耐熱性が低い材料が介在しないことから、フィルム素材としてパリレンやポリイミドなどの耐熱性素材を用いることにより、高い製膜温度が必要な薄膜デバイスでも形成が可能となるとされている。しかしながら、かかる方法を用いた場合、一般に得られるフィルムは、専用の延伸プロセスなどを持つフィルム製膜機で作製された同じ素材からなるフィルムに比較して、強度、破断伸度に劣った脆いフィルムになる場合が多い。また、硬質キャリア基板とフィルムとの接着性についても制御出来ず、結果として硬質キャリア基板からフィルムを剥がす際にフィルムが破断、あるいはフィルムが剥離力により伸びるためにフィルム上のデバイスが破壊される等のトラブルを回避することは難しい。
【0005】
最近では、厚さが50μmを切るような薄いガラス板の製造が可能になってきている。ガラスでもこの厚さになると、かなりフレキシブルに曲げることができる。しかし、ガラスの持つ本質的な問題である脆さ、割れやすさが解決されているわけでは無い。特に割れた際に細かく砕けたガラス片が飛び散ると、大変に危険である。ガラス板を用いたディスプレイデバイスにおいては、補強および破損した際の破片の飛散防止に高分子フィルムを貼り付けることが定法として定着している。しかしながら、これら飛散防止フィルムをガラスに貼り付けるのはデバイス完成後であることが一般的である。多くの高分子フィルムは半導体デバイスの製造に必要な高温や、酸、アルカリ、有機溶剤などへの暴露に対して弱いからである。したがって、ガラス板を基板に用いた極薄デバイスにおいては製造プロセス中は保護フィルム、飛散防止フィルムなどが無い状態でハンドリングすることが必要であり、そのため、プロセス途上での基板割れや欠けのため、製品歩留まりが下がることが大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−512568号公報
【特許文献2】特開2010−202729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池の受光デバイスである極薄デバイスにおいて、ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずに剥離ができる、液状の極薄デバイス基板形成用ポリイミド前駆体溶液(樹脂組成物)、これを用いた極薄デバイス及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、極薄デバイスを製造する上において、芳香族テトラカルボン酸類とベンゾオキサゾール構造(骨格)を有する芳香族ジアミン類との反応によって得られる特定のポリアミド酸溶液が、無機のキャリア基板上で塗布・乾燥・イミド化して塗膜と成し、塗膜上にデバイスを形成するに十分な接着力を有し、かつ、デバイスを形成した後にキャリア基板から引き剥がす場合に、デバイスを破壊することなく剥離が可能で、さらに直交する2方向で測っていずれも−5pm/K〜8ppm/Kの線膨張係数を示し、極薄デバイスとしての取り扱いが可能なポリイミドフィルムを与える事を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
1. ガラス、セラミックなどから選択される無機基板上にポリイミド前駆体溶液を塗布・乾燥 ・熱処理することにより無機基板/ポリイミド皮膜からなる積層体を得、積層体のポリイミド 皮膜面、ないし無機基板面に薄膜デバイスを形成して得られる極薄デバイスの製造プロセスに 用いられるポリイミド前駆体溶液において、概ポリイミド前駆体溶液が溶剤と芳香族テトラカ ルボン酸無水物類と、ジカルボン酸無水物類と、ベンザゾール骨格を有するジアミン類とから 得られるポリアミドとを主成分とするポリアミド酸溶液であり、芳香族テトラカルボン酸無水 物類が有するカルボン酸無水物基のモル数Anと、ジカルボン酸無水物類とが有するカルボン 酸無水物基のモル数Bnと、ジアミン類が有するアミノ基のモル数Cnとが、以下の関係(1 )式と(2)式とを同時に満足することを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
0.90≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1)
0≦Bn/An≦0.05 ・・・・・・・・・・・・(2)
2. ポリイミド皮膜の線膨張係数が、−5ppm/℃〜+8ppm/℃である1.の極薄デバ イス製造用ポリイミド前駆体溶液。
3. 無機基板からのポリイミド皮膜の剥離力が、1.6N/cm〜20N/cmである1.又 は2.の極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液。
本願においてはテトラカルボン酸二無水物には、1分子にカルボン酸無水物基が2個、ジカル ボン酸無水物類にはカルボン酸無水物基が1個と数える。
【発明の効果】
【0009】
高温環境におかれても使用耐久性に優れ、回路形成時の高温暴露においても耐久性があり、伸び縮みが少ない為、電気回路、半導体素子に応力が加わる事が少なく、また、無機基板との線膨張係数に差が少ないことから、無機基板との積層体上で回路を高温で形成する際にも、反りも生じにくいことからが安定な電気配線および電気素子をつくることができ、また、無機層に比べ、平坦で表面粗さの小さい表面を容易に作れることから、微細配線を作成しやすい、絶縁性で可撓性、耐熱性を兼ね備えた電子デバイス作成などに極めて有意義であり、しかも適正な接着性を兼備した、有用な極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液は、その後に形成されるポリイミド皮膜(層)が、自己支持性のポリイミドフィルムであり、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類との反応によって得られるポリイミドのフィルムの線膨張係数(フィルムの長さ方向と幅方向でいずれも)が−5ppm/℃〜+8ppm/℃となるポリイミドであり、しかも無機基板からのポリイミド皮膜の剥離力(以下、90度剥離強度ともいう)が、1.6N/cm〜20N/cm、好ましくは2.5〜14N/cm、さらに好ましくは3.5〜11N/cm、なおさらにお好ましくは4.2〜8.9N・cmであり、デバイス成形時には剥離せず、またデバイス完成後は補強用被膜となり得るもので、芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)して皮膜(フィルム)となす方法で得られるポリイミドであることが好ましく、これらのポリイミドの前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)である。
【0011】
本発明の極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液において、芳香族テトラカルボン酸
無水物類が有するカルボン酸無水物基のモル数Anと、ジカルボン酸無水物類とが有するカルボン酸無水物基のモル数Bnと、ジアミン類が有するアミノ基のモル数Cnとが、関係(1)式と(2)式とを同時に満足することが必須であり、
0.90≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1)
0≦Bn/An≦0.05 ・・・・・・・・・・・・(2)
本願における Cn/(An+Bn)は
0.95≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1’)
が好ましく、
0.97≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1’’)
が、なお好ましく、
0.98≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1’’’)
が、更に好ましく、
0.98≦Cn/(An+Bn)<0.999 ・・・・・・・・・・・・・(1’’’’)
が、なおさらに好ましい。
本願における Bn/Anは、
0≦Bn/An≦0.08 ・・・・・・・・・・・・(2’)
が好ましく
0<Bn/An≦0.08 ・・・・・・・・・・・・(2’’)
がなお、好ましく
0<Bn/An≦0.03 ・・・・・・・・・・・・(2’’’)
がさらに好ましく
0.001<Bn/An≦0.02 ・・・・・・・・・・・・(2’’’’)
がなおさらに好ましい。
この範囲を逸脱する場合は、形成されたポリイミド皮膜の引張破断強度及び引張破断伸度が充分なものとはなりえない場合が多く、かつ無機基板からのポリイミド皮膜の剥離力が、1.6N/cm〜7.0N/cmとはならず、また皮膜(ポリイミドフィルム)の線膨張係数(フィルムの長さ方向と幅方向でいずれも)が−5ppm/℃〜+8ppm/℃の範囲から外れる場合が多くなり、有用な極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液にならない。
これらの溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0012】
本発明に用いるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4'−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4'−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0028】
<芳香族テトラカルボン酸無水物類>
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0036】
芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量が挙げられる。
【0037】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割するなど、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、前記ポリイミド層を得るためのもので好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0038】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、モノアミン化合物ないし、ジカルボン酸無水物を用いることが出来、好ましくはジカルボン酸無水物である。 本発明に使用されるジカルボン酸無水物類としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などの酸無水物を例示することができ、好ましくはマレイン酸のように二重結合を有する酸無水物である。さらに、アセチレン系化合物であって、ジカルボン酸やモノアミンの形態を有しポリイミドの末端停止機能を有する化合物も使用することができる。例えば、4−エチニルフタル酸無水物や、4−フェニルエチニルフタル酸無水物が挙げられる。末端停止剤の内、ジカルボン酸無水物は、本発明の酸無水物基に数え、その規定される範囲内で使用することが出来る。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミド皮膜を形成するためには、ポリアミド酸溶液を無機基板上に塗布して乾燥し、さらに高温で熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。無機基板へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出しや、スリットコート、スクリーン印刷、リバースコート等を含むが、これらに限られず従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0039】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液においては、その溶液中に粒子を添加・含有せしめて、皮膜(フィルム)表面に微細な凹凸を付与し層(フィルム)の接着性などを改善することも採用できる。粒子としては、無機や有機の0.03μm〜0.8μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などの微粒子が挙げられる。
これらの微粒子はポリイミドに対して好ましくは、0.20〜2.0質量%の範囲で含有させることが好ましい。微粒子の含有量が0.20質量%未満であるときは、接着性の向上がそれほどなく好ましくない。一方2.0質量%を超えると表面凹凸が大きくなり過ぎ接着性の向上が見られても平滑性の低下を招くなどによる課題を残し好ましくない。
電気回路の配線幅が微細になってきた場合、粒子の粒子径は配線幅に比べ十分小さい事が望ましい。このため、電気回路を形成する側のポリイミド層厚さ方向少なくとも3μmの部分には20nm以上長径を持つ粒子は入っていないものも望まれる。このことにより、電気回路層と接している側の高分子層は平滑となり、平滑な電気回路層との原子レベルで見た接触確率が上がり、接着に好適となる。また好ましくは、電気回路層と接している側の高分子層の5μm以上の部分が20nm以上長径を持つ粒子は入っていない事が好ましい。
【0040】
本発明における無機基板とは、ガラスとセラミックス等の、硬く脆い材質からなる板を意味する。
本発明に使用される積層体における無機基板としてのガラス層とは石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラスが含まれる。中でも線膨張係数が5ppm/℃以下のものが望ましく、液晶用ガラスのコーニング1753、イーグルXG、日本電気硝子 OA-10G、旭硝子AN100などが望ましい。
【0041】
本発明の積層体におけるセラミック層とはAL23、Mullite、AlN、SiC、Si34、結晶化ガラス、Cordierite、Spodumene、Pb-BSG+CaZrO3+Al2O3、 Crystallized glass+Al2O3、 Crystallized Ca-BSG, BSG+Quartz、 BSG+ Quartz, BSG+ Al2O3、 Pb-BSG+Al2O3、 Glass−ceramic、ゼロデュア材などの 基盤用セラミックス、TiO2、、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム。アルミナ、MgO、ステアタイト、BaTi4O9、BaTi03、BaTi03+CaZrO3、BaSrCaZrTio3、Ba(TiZr)O3、PMN-PT PFN-PFWなどのキャパシター材料、PbNb2O6、Pb0.5Be0.5Nb2O6, PbTiO3, BaTiO3, PZT, 0.855PZT-.95PT-0.5BT, 0.873PZT-0.97PT-0.3BT, PLZTなどの圧電材料が含まれる。
【0042】
本発明における無機基板としては、さらにシリコンウエハ、SiCウエハ、ダイヤモンドウエハ、GaAsウエハ、などを含めることも出来る。
【0043】
本発明における無機基板とポリイミド皮膜からなる積層体において、ポリイミド皮膜(層)の厚さは、充分な絶縁性を持ち、電気特性その他の特性を維持する以上に厚いと、乾燥に時間がかかり作成は困難であり、膜形成にコストと時間がかかり望ましくない、このため、実現範囲としては、0.5μm〜50μmであり、より好ましくは1μmから25μmの範囲である。該厚み範囲の薄膜上に後述のデバイスを形成したものを、本願においては極薄デバイスと称する。
本発明に使用される積層体における無機基板の厚さは1〜1200μmの範囲であり、好ましくは2〜450μmの範囲であり、さらに好ましくは2.8〜160μmの範囲であり、なおさらに好ましくは3.6μm〜70μm、よりさらに好ましくは4.8〜27μmの範囲である。
【0044】
本発明における線膨張係数とは、30から400℃の間で測った平均値をCTEとして算出している。金属やセラミックスではこの温度範囲で変化がない事が多いが、ポリイミド層ではこの温度範囲で、CTEが変化する事があるが、測定下限を0℃、30℃、50℃といったものに置き換えてもよく、測定上限を200℃、300℃、450℃に置き換えることも可能である。
【0045】
本発明に使用される積層体における無機基板としての無機基板(層)の線膨張係数は、−5ppm/℃〜+8ppm/℃であり、より好ましくは+2ppm/℃〜+7ppm/℃であり、無機基板として多用されるガラスやシリコンウエハのそれが1.2ppm/℃〜3.5ppm/℃であることに由来するものである。これより大きいものでは、熱履歴または回路形成時に部分的に応力が加わる事があり、反りの発生やポリイミド層の剥離が発生し易くなる。
【0046】
本発明における90度剥離強度とは、1.6N/cm〜20N/cmが好ましく、より好ましくは2.5〜9.5N/cm、さらに好ましくは3.8〜7.2N/cmである。1.6N/cm未満では実用的デバイスとしての利用が困難であり、20N/cmを超える場合は無機基板からのポリイミド被膜をはぎ取る際に支障が出ることが多くなる。
【0047】
本発明における極薄デバイスとは高分子フィルムからなる基材上に、能動デバイス、受動デバイス、センシングデバイス、発光デバイス、受光デバイス、微細機構部品などからなる電子回路ないしMEMS素子などが形成されたものを云う。
これらの極薄デバイスには素子間を連絡するための金属配線が設けられる場合が多い。ここに金属とは、銅、Al、Ni、Au、Ag、Cr、Mo、Ti、Wなどを主成分とする。金属配線のことを言う。望ましくは銅配線にポリイミドフィルムとの間にバリア層として、NiCr合金やTi合金が入っている物が挙げられる。
本発明における能動素子として半導体素子を例示出来る。本発明における半導体素子とは、電力用半導体素子、薄膜トランジスター、センサー、太陽電池或は論理回路、MEMS素子、発光素子、受光素子、アクチュエーター素子、および、市販の半導体素子チップを貼り付けるものも含む。
本発明における電力用半導体素子とは、電力の変換や制御用に最適化された半導体で、通常の半導体素子に比べて高耐圧化、大電流化、高速・高周波化されているものをいう。整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ (IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ (GTO)、トライアックなどを含む。
本発明における薄膜トランジスターとは、トランジスターを構成する半導体層および素子を構成する絶縁膜、電極、保護絶縁膜などが、薄膜を堆積させて作製されているものをいう。通常シリコンウエハのシリコンを半導体層として使用するものとは、区別する。通常薄膜を真空蒸着などのPVD(物理的蒸着)、プラズマCVDなどのCVD(化学的蒸着)といった、真空を利用する手法によって作製する。このため、シリコンウエハのように単結晶ではないものを含む。Siを使っても、微結晶シリコンTFT、高温ポリシリコンTFT、低温ポリシリコンTFT、そして酸化物半導体TFT、有機半導体TFTなどを含む。
本発明におけるセンサーとは、ストレインゲージ(ひずみゲージ) , ロードセル, 半導体圧力センサー , 光センサー , 光電素子 , フォトダイオード , 磁気センサー , 接触式温度センサー , サーミスタ温度センサー , 抵抗測温体温度センサー , 熱電対温度センサー , 非接触式温度センサー , 放射温度計 , マイクロフォン , イオン濃度センサー , ガス濃度センサー , 変位 センサー, ポテンショメータ , 差動トランス変位 センサー , 回転角センサー , リニアエンコーダ , タコジェネレータ , ロータリエンコーダ , 光位置センサー (PSD) , 超音波距離計 , 静電容量変位計 , レーザードップラー振動速度計 , レーザードップラー流速計 , ジャイロセンサー , 加速度センサー, 地震センサー, 一次元画像, リニアイメージセンサー, 二次元画像, CCDイメージセンサー, CMOSイメージセンサー, 液, 漏液センサー(リークセンサー), 液検知センサー(レベルセンサー), 硬度センサー, 電場センサー, 電流センサー, 電圧センサー, 電力センサー, 赤外線センサー, 放射線センサー, 湿度センサー, においセンサー, 流量センサー, 傾斜センサー, 振動センサー, 時間センサーおよび、これらのセンサーを複合した複合センサーや、これらのセンサーで検出した値から何らかの計算式に基づき別の物理量や感性値などを出力するセンサーなどがを含む
本発明におけるMEMSとは、MEMS技術を利用して作成した物をさし、インクジェットプリンターヘッド、走査型プローブ顕微鏡用プローブ、 LSIフプローバー用コンタクタ、マスクレス露光用光空間変調器、光集積化素子、赤外線センサー、流量センサー、加速度センサー、MEMSジャイロセンサー、RF MEMSスイッチ、体内・体外血圧センサーそして、グレーティングライトバルブ、デジタルマイクロミラーデバイスなどを使ったビデオプロジェクター、などを含む。
本発明における太陽電池とは、上述した積層体のポリイミド層上に半導体からなる光電変換層を含む積層体が形成されてなる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0049】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミド層などの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3.ポリイミド層の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
上記力学特性測定用サンプルは、8インチのシリコンウエハ上に、ポリアミド前駆体溶液(ワニス)を塗布した。塗布はスピンコーターにて、焼成後膜厚が20μmとなるように調整した。100℃にて乾燥を10分行なった後に、N2を流しているマッフル炉に入れて、3℃/min.の昇温速度で室温から350℃に昇温して、350℃で、1時間温度を維持してワニスを焼成した。この後にポリイミド皮膜(フィルム)を剥がしたものを、100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片として測定した。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
4.90度剥離強度
JIS C6471 の90度剥離法に従って、試料の剥離強度は下記条件で90度剥離試験を行うことで求めた。剥離強度測定用サンプルは、パターンをつける前の無機層にポリイミド皮膜を上記3.と同様にしてつけたもので測定した。N=5の測定の平均値を測定値とした。
装置名 ; 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
測定温度 ; 室温
剥離速度 ; 50mm/min.
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
【0050】
5.線膨張係数(CTE)
上記3.と同様にして得た、測定対象のポリイミド層を、直交する2方向において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。試料は前記3.ポリイミド皮膜の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度の測定用試料を用いた。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
荷重 ; 35g/mm2
6.5%重量減温度の測定
ガラス/ポリイミド積層体からポリイミド被膜を剥がし、そのポリイミド皮膜をサンプルに用いて、5%重量減温度を測定した。測定は、島津製作所製TGA装置を用いて、アルゴン雰囲気下にて、室温から150℃まで昇温速度10℃/分で上昇させ、150℃にて30分間保持して吸着水分を十分に揮発させてから、昇温速度10℃/分にて700℃まで温度を上げ、得られた重量減曲線において、150℃にて30分間保持した時点での重量から5%低下した温度を読み取った。
7.耐熱性評価、耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性の評価方法
ガラス/ポリイミド積層体を400℃に保持したドライオーブンに60分入れ、取り出して室温まで冷却し、フィルムの剥離有無、ブリスター等の発生有無などの外観観察を行い、耐熱性評価とした。
5%水酸化ナトリウム溶液、10%硫酸、トルエン、にそれぞれ24時間、室温にて浸漬し、その後の外観観察を行い それぞれ、耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性の評価とした。
8.Ra値測定
表面形態(粗度)の計測は表面物性評価機能付走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPA300/SPI3800N)を使用した。計測はDFMモードで行い、カンチレバーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DF3又はDF20を使用した。スキャナーはFS−20Aを使用し、走査範囲は2μm四方、測定分解能は512×512ピクセルとした。計測像については二次傾き補正を行った後、装置付属のソフトウエアでRa値を算出した。
【0051】
《製造例1》
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、マレイン酸無水物(MA)を表1の記載となるように導入し、僅かに25℃の反応温度で48時間攪拌すると、黄色で粘調なポリアミド酸溶液(ワニス)を得た。ワニスの溶液特性を表1.に示す。
【0052】
〔ワニス製造例2〜6〕
以下、製造例1と同様の手順に従って、表1に示す配合比でポリアミド酸溶液を調整し、溶液特性を評価した。結果を表1.に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
《実施例1》
製造例1で得られたワニスを、アプリケーターを用いて、無アルカリガラス基板上に塗布し、防爆型のオーブンで90℃、60分乾燥し、次いで20℃/分で200℃まで温度を上げ、200℃にて30分間保持、次いで300℃まで20℃/分で温度を上げ15分間保持、さらに20℃/分で490まで温度を上げ、1分保持後に、外気を導入し、室温まで冷却し、ガラス/ポリイミド積層体を得た。なお、ワニス塗布量は、乾燥・熱処理後のフィルム厚が20μmとなるようにワニス塗布量を加減して行った。
得られたガラス/ポリイミド積層体を、耐熱性評価 400℃1時間、外観、耐アルカリ性、耐酸性、耐溶剤性を評価した。結果を表2.に示す。実施例1にて得られたガラス/ポリイミド積層体は、いずれもガラスからポリイミド被膜が剥離することなく、ブリスターなども生じずに良好な結果であった。
【0055】
《実施例2〜4、比較例1〜2》
同様にして、製造例2〜4にて得られたワニスを用いて、実施例2〜4のガラス/ポリイミド積層体を得た。同様にして評価を行った。結果を表2.に示す。実施例2〜4にて得られたガラス/ポリイミド積層体は、いずれもガラスからポリイミド被膜が剥離することなく、ブリスターなども生じずに良好な結果であった。
同様にして製造例5、製造例6にて得られたワニスを用いて、比較例1、比較例2のガラス/ポリイミド積層体を得た。同様にして評価を行った。結果を表2.に示す。比較例1では、得られたガラス/ポリイミド積層体は、ガラスからポリイミド被膜が剥離する際にフィルムが脆く、剥離力の測定は困難であった。また比較例2にて得られたガラス/ポリイミド積層体は、ガラスからポリイミド被膜の接着力が極端に弱く、プロセス中でのウエット洗浄工程に耐えられないと判断された。
【0056】
【表2】

【0057】
《回路形成後剥離による極薄デバイスの応用例》
実施例1で得られたガラス/ポリイミド積層体を用いて極薄デバイスを作製した。まず積層体のポリイミド膜上に、ポリイミド膜からの不純物の拡散を防止するためにCVD法によるSiN膜を形成し、さらにその上にSiO2膜を堆積した。次に前記SiO2膜の上にCVD法によるa−Si膜を堆積し、その後チャンネル部のa−Si膜をドライエッチング法を用いて薄くし脱水素処理をした基板にエキシマレーザーを照射してエキシマレーザーアニール処理を施し、前記a−Si膜をポリシリコン膜に変化させた。次いで前記ポリシリコン膜の上にゲート絶縁膜を堆積させ、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極材料を堆積しパターニング形成してゲート電極の形成を行い、その後ソース・ドレイン部を形成するための不純物をイオンドープ法を用い不純物導入してTFTを形成した。TFT形成工程中、ポリイミド膜にはプロセスを阻害する様な特段の変化は生じなかった。得られた極薄デバイスのTFTの動作確認を行い、良好なスイッチング特性を示す事を確認した。
実施例2で得られたガラス/ポリイミド積層体を用いて極薄デバイスを作製した。まず積層体のガラス面側上に、下地層としてCVD法によるSi0膜を形成した。次いで脱水素処理をした基板にエキシマレーザーを照射してエキシマレーザーアニール処理を施し、前記a−Si膜をポリシリコン膜に変化させた。次いで前記ポリシリコン膜の上にゲート絶縁膜を堆積させ、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極材料を堆積しパターニング形成してゲート電極の形成を行い、その後ソース・ドレイン部を形成するための不純物をイオンドープ法を用い不純物導入してTFTを形成した。TFT形成工程中、ポリイミド膜にはプロセスを阻害する様な特段の変化は生じなかった。
以下同様に実施例、比較例にて得られたガラス/ポリイミド積層体を用いて、同様にTFTを形成し、ガラス基板からTFTをポリイミド膜ごと剥離してフィルムデバイスを得、同様に動作確認を行った。実施例にて得られたガラス/ポリイミド積層体からは良好なTFT特性を示すフィルムデバイスを得ることが出来たが、比較例1においてはプロセス途中でポリイミド膜が剥がれ、さらに剥がれた部分が破損したため、完全なフィルムデバイスを得ることが出来なかった。また比較例2では、加工プロセスでのスプレー洗浄中に、端が剥がれたため、以後の工程を中止した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上述べてきたように、本発明のフィルムデバイス製造用ポリイミド前駆体溶液は、ガラスなどの支持基板表面に良好なる皮膜形成を行い、かつ、フィルムデバイス加工中の加熱や薬液使用などのストレスに耐え、なおかつ、プロセス終了後には速やかに剥離することが可能な、優れた皮膜を与える物である。
本発明におけるフィルムデバイス製造用ポリイミド前駆体溶液は、温度が変化する環境におかれても使用耐久性に優れ、デバイス形成時の高温暴露においても耐久性があり、伸び縮みが少ない為、電気回路、半導体素子に応力が加わる事が少なく、また、無機基板との線膨張係数に差が少ないことから、無機基板との積層体上で回路を高温で形成する際にも、反りも生じにくいことからが安定な能動デバイス、受動デバイス、相互配線をつくることができ、また、無機層に比べ、平坦で表面粗さの小さい表面を容易に作れることから、微細配線を作成しやすい、絶縁性で可撓性、耐熱性を兼ね備えた薄いポリイミド層上に回路などを形成した電子デバイス作成などに極めて有意義であり、しかも適正な接着性と剥離容易性を兼備した、有用なフィルムデバイス製造用ポリイミド前駆体溶液である。
本発明におけるフィルムデバイス製造用ポリイミド前駆体溶液は、下記のようなフィルムデバイスに適用可能である。すなわち、電力用半導体素子、薄膜トランジスター、センサー、太陽電池、或は論理回路素子、さらに具体的には、MEMS素子、発光素子、アクチュエーター素子、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ (IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ (GTO)、トライアック、微結晶シリコンTFT、高温ポリシリコンTFT、低温ポリシリコンTFT、そして酸化物半導体TFT、有機半導体TFT、ストレインゲージ(ひずみゲージ) 、ロードセル、半導体圧力センサー 、光センサー 、光電素子 、フォトダイオード 、表示素子、液晶ディスプレイ素子、電界発光素子、電気泳動素子、電気回転球素子、電気回転円筒素子、磁気センサー 、接触式温度センサー 、サーミスタ温度センサー 、抵抗測温体温度センサー 、熱電対温度センサー 、非接触式温度センサー 、放射温度計 、マイクロフォン 、イオン濃度センサー 、ガス濃度センサー 、 変位 センサー、 ポテンショメータ 、 差動トランス変位 センサー 、 回転角センサー 、 リニアエンコーダ 、 タコジェネレータ 、 ロータリエンコーダ 、 光位置センサー (PSD) 、 超音波距離計 、静電容量変位計 、レーザードップラー振動速度計 、レーザードップラー流速計 、ジャイロセンサー 、加速度センサー、地震センサー、一次元画像、リニアイメージセンサー、二次元画像、 CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、電場センサー、 電流センサー、電圧センサー、電力センサー、赤外線センサー、放射線センサー、湿度センサー、 においセンサー、流量センサー、傾斜センサー、振動センサー、時間センサー、複合センサー、インクジェットプリンターヘッド、走査型プローブ顕微鏡用プローブ、LSIプローバー用コンタクタ、マスクレス露光用光空間変調器、光集積化素子、赤外線センサー、流量センサー、加速度センサー、MEMSジャイロセンサー、RF MEMSスイッチ、体内・体外血圧センサーそして、グレーティングライトバルブ、デジタルマイクロミラーデバイスなどを使ったビデオプロジェクター、太陽電池およびNAND、ORを基本とした論理回路などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機基板上にポリイミド前駆体溶液を塗布・乾燥・熱処理することによりポリイミド皮膜を得、ポリイミド皮膜上に薄膜デバイスを形成した後に、無機基板から剥離して極薄デバイスを得るプロセスに用いられるポリイミド前駆体溶液において、概ポリイミド前駆体溶液が溶剤と芳香族テトラカルボン酸無水物類と、ジカルボン酸無水物類と、ベンザゾール骨格を有するジアミン類とから得られるポリアミドとを主成分とするポリアミド酸溶液であり、芳香族テトラカルボン酸無水物類が有するカルボン酸無水物基のモル数Anと、ジカルボン酸無水物類とが有するカルボン酸無水物基のモル数Bnと、ジアミン類が有するアミノ基のモル数Cnとが、以下の関係(1)式と(2)式とを同時に満足することを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
0.90≦Cn/(An+Bn)<1.0 ・・・・・・・・・・・・・(1)
0≦Bn/An≦0.05 ・・・・・・・・・・・・(2)
【請求項2】
ポリイミド皮膜の線膨張係数が、−5ppm/℃〜+8ppm/℃である請求項1記載の極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液。
【請求項3】
無機基板からのポリイミド皮膜の剥離力が、1.6N/cm〜7.0N/cmである請求項1又は2記載の極薄デバイス製造用ポリイミド前駆体溶液。

【公開番号】特開2012−140561(P2012−140561A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1040(P2011−1040)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】