説明

楽譜表示装置、楽譜表示プログラム及び楽譜

【課題】弦楽器の演奏をイメージする場合に、押さえる弦とフレット、発音のタイミングと長さを感覚的に捉えることができる楽譜表示を得る。
【解決手段】弦楽器を指定音に応じて演奏するための楽譜表示装置であって、前記指定音の音高情報、発音タイミング情報、発音長さ情報を含む音楽情報を指定音毎に記憶する記憶手段と、前記音楽情報を表示する表示手段とを備え、前記表示手段は、前記弦楽器が有する弦に対応する数を有し前記指定音の音高を示す複数の横軸部1と、横軸部1に沿って表示されることで前記指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部3とを有し、発音領域部3に前記弦楽器のフレット番号5を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターやベース等の弦楽器を演奏するための楽譜表記に関し、指定音に応じて演奏する場合に、弦楽器の演奏に適するように表示可能とした楽譜表示装置、楽譜表示プログラム及び楽譜に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器であるギターやベースを演奏するための楽譜としては、タブ譜が存在する。タブ譜は、図18に示すように、縦軸を弦、横軸を五線譜と同じように小節とし、音符の符頭に弦のどの位置を押さえるかを示すフレット番号が表記されている。
【0003】
また、電子楽器の演奏データを機器間でデジタル転送を行う規格であるMIDI(電子楽器デジタルインタフェース)のシーケンスソフトにおいては、音符入力や楽譜表示のためにピアノロールという表記方法が使用されている。ピアノロールは、図19に示すように、縦軸を鍵盤(音の高さ)、横軸を時間(小節や拍)にして、演奏する音の部分を長方形で表記するものである。
【0004】
更に、ピアノロールを基礎に各指定音の属性を表示する技術としては、特許文献1や特許文献2に開示された楽譜表示の仕方が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−95396号公報
【特許文献2】特開2011−100055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ギターやベースを演奏する者にとっては、ピアノロールはピアノの鍵盤を模した表記なので、どの鍵がギターのどの弦のどのフレットに該当するかが解りづらいという課題があった。
【0007】
また、タブ譜では、演奏するに際して、ギターのどの弦のどのフレットを押さえるかは解るが、音符の知識がないと、どのタイミングでどのくらいの長さで弾くかが解らないという課題があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、弦楽器の演奏をイメージする場合に、押さえる弦とフレット、発音のタイミングと長さを感覚的に捉えることができる楽譜を得るとともに、そのような表示が可能な楽譜表示装置及び楽譜表示プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明(請求項1)は、弦楽器を指定音に応じて演奏するための楽譜表示装置であって、前記指定音の音高情報、発音タイミング情報、発音長さ情報を含む音楽情報を指定音毎に記憶する記憶手段と、前記音楽情報を表示する表示手段とを備えている。
そして、前記表示手段は、前記弦楽器が有する弦に対応する数を有し前記指定音の音高を示す複数の横軸部と、前記横軸部に沿って表示されることで前記指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部とを有し、前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示することを特徴としている。
【0010】
請求項2は、請求項1の楽譜表示装置において、音源の周波数で指定音の音高及び発音長さを判別するメロディ検出手段を備える一方、前記発音領域部の発音タイミングを予め設定されたタイミングに変換処理するタイミング補正手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項3は、請求項1の楽譜表示装置において、前記横軸部に沿って前記発音領域部を表示するに際し、複数位置の同一音高が選択可能な場合に、直前の発音領域部のフレット番号の位置から最も距離が近いフレット番号の位置を当該発音領域部のフレット番号として決定することを特徴としている。
【0012】
請求項4は、楽譜表示プログラムであって、弦楽器を指定音に応じて演奏するための音楽情報を表示手段に表示するに際して、前記音楽情報は、前記指定音の音高情報、発音タイミング情報、発音長さ情報を含み、前記各指定音の音高情報により前記表示手段において前記弦楽器が有する弦に対応する数を有する複数の横軸部のいずれかを選択する機能と、前記各指定音の発音タイミング情報、発音長さ情報により前記横軸部に沿って表示される発音領域部の先頭位置及び後尾位置が決定される機能と、前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示する機能とをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0013】
請求項5は、弦楽器を指定音に応じて演奏するための楽譜であって、前記弦楽器が有する弦に対応する数を有し前記指定音の音高を示す複数の横軸部と、前記横軸部に沿って表示されることで前記指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部とを備え、前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示したことを特徴としている。
【0014】
請求項6は、請求項5において、前記横軸部を線で構成し、前記発音領域部を前記線上に表示することを特徴としている。
【0015】
請求項7は、請求項5において、前記発音領域部を長方形で構成したことを特徴としている。
【0016】
請求項8は、請求項5において、前記フレット番号を前記発音領域部の先頭側に表示し、前記指定音に付随する情報を前記発音領域部の後尾側に表示したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、指定音の音高を示すため弦楽器が有する弦に対応する数の横軸部を設け、この横軸部に沿って指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部を表示し、この発音領域部に弦楽器のフレット番号を表示することにより、弦楽器の演奏をイメージする場合に、押さえる弦とフレット位置、発音のタイミングと長さを感覚的に捉えることが可能となる。
【0018】
メロディ検出手段を備えた楽譜表示装置とすることで、音源から弦楽器演奏のための楽譜表示を自動的に行うことができる。
タイミング補正手段を備えた楽譜表示装置とすることで、楽譜を見易くするよう弦楽器の演奏タイミングが補正された楽譜表示を自動的に行うことができる。
【0019】
横軸部に沿って前記発音領域部を表示するに際し、複数位置の同一音高が選択可能な場合に、直前の発音領域部から最も距離が近い位置を当該発音領域部の位置として決定することで、指の移動距離を最小にして演奏し易い楽譜表示を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の楽譜表示装置の表示部で表記されるギター演奏用の楽譜の一部分の説明図である。
【図2】ギター演奏用の楽譜の他例を示す説明図である。
【図3】(a)〜(f)は楽譜における発音領域部の他の表示例を示す説明図である。
【図4】図2の発音領域部を使用したベース演奏用の楽譜の一部分の説明図である。
【図5】楽譜表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】楽譜表示装置における機能を説明するためのブロック図である。
【図7】楽譜表示装置によるメロディ検出処理の手順を示すフローチャート図である。
【図8】(a)は音源データの波形図、(b)は波形図に対応するピアノロールの図である。
【図9】楽譜表示装置による楽譜作成処理の手順を示すフローチャート図である。
【図10】(a)は音源データに対応するピアノロール、(b)はピアノロールに対応する弦楽器演奏用の楽譜である。
【図11】楽譜表示装置によるクオンタイズ処理の手順を示すフローチャート図である。
【図12】(a)はクオンタイズ処理前の楽譜表示、(b)はクオンタイズ処理後の楽譜表示をそれぞれ示している。
【図13】楽譜表示装置によるフレット位置変更処理の手順を示すフローチャート図である。
【図14】楽譜表示装置によるフレット位置変更処理の手順を示すフローチャート図である。
【図15】フレット位置変更処理を行う場合の距離を説明するための弦楽器のネック部分のモデル図である。
【図16】楽譜表示装置による楽譜の変更処理の手順を示すフローチャート図である。
【図17】楽譜表示装置の表示部に表示される変更設定画面の説明図である。
【図18】タブ譜の説明図である。
【図19】ピアノロールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の楽譜表示装置の実施形態の一例について説明する。
先ず、楽譜表示装置が表示する弦楽器の演奏や楽譜入力に適した楽譜表示の仕方について、図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、弦楽器であるギターの演奏等に適した楽譜を示すもので、ギターの各弦(第1弦〜第6弦)に対応する6本の線から構成され時間軸となる横軸部1と、この横軸部1の線上に横軸部1に沿って配置される発音領域部3から構成されている。
楽譜における左位置には、ギターの各弦(第1弦〜第6弦)のチューニング状態を示すE3,B2,G2,D2,A1,E1がそれぞれ表示されている。
【0023】
発音領域部3は、指定音の発音タイミング及び発音長さを示す長方形で表示されている。したがって、長方形の左端が発音タイミングとなり、長方形の左端から右端までの長さが発音長さに対応するようになっている。また、発音領域部3内には、弦楽器のフレット番号5が表示されている。フレット番号5は、弦楽器の各弦の押さえるべきフレット位置を数字で表したものであり、フレット番号5が「0」である時は、弦の開放を意味している。フレット番号5は、発音領域部3の中央に表示されるが、発音領域部3が時間軸(横軸部1)方向に一定値以上の発音長さを有する場合は、発音領域部3内の左端位置にフレット番号が表示される。弦を弾くタイミングに近い位置にフレット番号によるフレット位置を表示するためである。
本発明の楽譜表記によれば、図19のピアノロールと同じ楽譜がギター演奏用の楽譜として図1のように表示される。
【0024】
図1の楽譜表記は、横軸部1が時間軸となっており、発音領域部3の左端のタイミングで発音領域部3内に表示されるフレット番号5の数字のフレット位置を押さえて弦を弾くことを表わしている。すなわち、先ず、5弦の3フレット目を押さえて5弦、4弦を開放状態、4弦の2フレット目を押さえて4弦、4弦の3フレット目を押さえて4弦、3弦を開放状態、3弦の2フレット目を押さえて3弦、3弦を開放状態、を各発音領域部3の左端のタイミングで「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」「ソ」と弾くことを表わしている。
【0025】
なお、図1の楽譜では、横軸部1について、弦楽器の弦をイメージし易いように線で形成したが、図2に示すように、横軸部1についてピアノロールのように幅を持った領域(2本の線で挟まれた領域)で表示し、その領域内に発音領域部3を表記するようにしてもよい。
【0026】
この楽譜表記によれば、指定音の音高を示すため弦楽器が有する弦に対応する数の横軸部1を設け、時間軸となる横軸部1に沿って指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部3を表示し、この発音領域部3に弦楽器のフレット番号5を表示することにより、弦楽器の演奏をイメージする場合に、押さえる弦の場所とフレット位置、発音のタイミングと長さを感覚的に捉えることが可能となる。
【0027】
上述の例では、発音領域部3を長方形で表示するようにしたが、図3に示すように、円形部3aと円形部3aから横軸部1の線上に延長する線状部3bで発音領域部3を表記するようにしてもよい。この場合、円形部3aの左端が発音タイミングとなり、円形部3aの直径及び線状部3bの合計の長さが発音長さに該当する。
ギター等の弦楽器には、弦を弾いた後に指で弦を押し上げてピッチを上げる「チョーキング」等の独特の演奏形態が存在するが、図3(b)〜(e)に示すように、線状部3bにその情報(指定音に付随する情報)を表記させてもよい。図3(b)の「チョーキング」を表記した例では、線状部3bにおいて途中より上段に移動させる表記とすることで、弦を押し上げることをイメージ的に認識させることができる。
【0028】
また、弦を弾いた後に指で低い方へスライドさせる「スライド(ベンド)ダウン」は、図3(c)に示すように表記する。弦を弾いた後に指で高い方へスライドさせる「スライド(ベンド)アップ」は、図3(d)に示すように表記する。弦を弾いた後に弦を揺らすビブラートは、図3(e)に示すように表記する。
更に、ピックを使用して弾く場合は、図3(f)に示すように、発音領域部において円形部3aに代えてピック形状部3cとすることで、ピック弾きを容易にイメージすることができる。
【0029】
図4は、ベース弦の横軸部1上に上述した情報付きの発音領域部3を表記した表示例を示すもので、フレット番号を発音領域部3の先頭側である円形部3aに表示し、指定音に付随する情報を発音領域部3の後尾側の線状部3bで表示している。
【0030】
本発明の楽譜表示装置は、一般的なパーソナルコンピュータ上に構築される。
パーソナルコンピュータは、図5に示されるように、中央処理装置(CPU)11、ROM12、RAM13、ネットワークインタフェース14、入力装置15、LCDなどの表示部を有する出力装置16及び外部記憶装置17を備え、各構成要素はバス18で接続されている。出力装置16は、楽譜をディスプレイするための表示部、表示部に表示された楽譜を印刷するプリンタ部、楽譜における指定音を再生するための音源及びスピーカ部を備えている。
【0031】
CPU11は、データの処理又は演算を行うと共に、バス18を介して接続された各種構成要素を制御する。ROM12には、予めCPU11の制御手順(コンピュータプログラム)を記憶させておき、CPU11がプログラムを実行することにより起動する。外部記憶装置17には本発明の楽譜表示を行う楽譜表示プログラム等の所望プログラムが記憶され、RAM13にコピーされて実行される。RAM13は、データの入出力、送受信のためのワークメモリ、各構成要素の制御のための一時記憶として用いられる。外部記憶装置17は、例えばハードディスク記憶装置やCD−ROM等で構成される。CPU11は、RAM12内の楽譜表示プログラムを実行することにより、出力装置16の表示部に楽譜表示を行う。
【0032】
ネットワークインタフェース14は、インターネット等のネットワークに接続するためのインタフェースであり、インターネットを介して楽曲データの取込が可能なように構成されている。
入力装置15は、例えばキーボード及びマウス等であり、表示された楽譜上で指定音を直接入力することで楽曲データを作成することができる。
出力装置16は、ディスプレイを構成する表示部及びプリンタ等を備え、表示部は、表示モードを選択することで、図1に示したような弦楽器演奏用の楽譜と、図19のピアノロールとが切換表示される。
【0033】
図6は、楽譜表示プログラムの機能を説明するためのブロック図であり、楽譜表示プログラムの機能を実現することにより、楽譜表示装置が構成される。
楽譜表示装置は、音源データを入力する音源入力部21と、音源データから音源を解析して音楽情報を得る音源解析部(メロディ検出手段)22と、音楽情報を指定音毎に記憶する記憶部(記憶手段)23と、指定音の発音タイミングを補正(クオンタイズ処理)するタイミング補正部(タイミング補正手段)24と、解析した音源の音楽情報を楽譜として表記する楽譜表示部(表示手段)25とを備えて構成されている。
【0034】
音源入力部21は、入力装置15からの直接入力や、ネットワークインタフェース14を介して音源データの取込が行われる。また、マイク等を設置することで、直接音源を取り込むようにしてもよい。
音源解析部(メロディ検出手段)22は、音源データから音源を解析し、音源を構成する複数指定音の音高情報,発音タイミング情報,発音長さ情報を含む音楽情報を得ることが行われる。音源データからの音源の解析は、周波数により音域を解析し、指定音の音高と発音タイミング及び発音長さを決定(ノートの取得)することが行われる。
記憶部23は、各指定音の音源情報を記録する。
タイミング補正部24は、指定音の発音タイミング情報について、予め設定された各タイミングに同期するように補正(クオンタイズ処理)を行うものであり、必要に応じて行われる。
【0035】
楽譜表示部25は、音楽情報に応じて図1の楽譜の表示を行うものであり、指定音の音高に応じて横軸線が選択され、指定音の発音タイミング及び発音長さに応じて、横軸線1上に沿って表示される発音領域部3の位置が決定される。また、発音領域部3には、指定音の音高に応じて弦楽器のフレット番号5が表示されている。
【0036】
次に、楽譜表示装置による弦楽器の楽譜表示の手順について、図7乃至図10を参照しながら説明する。
音楽データから弦楽器としてベースの音を認識して楽譜表示を行う例について、図7のフローチャートを参照して説明する。
先ず、ベース(メロディ)を検出する波形ファイル名を選択する(ステップ101)。波形ファイルは、例えば音楽データが36(C1)から「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」「シ」の音である場合、図8(a)に示すように、横軸(時間軸)に対して複数周波数が混在した波形で表示される。
次に、波形を細かい時間単位で高速フーリエ変換し、特定の周波数域に対応するノートNo別の音の強さを検出し、音毎に強さが表示されたパワーマップ(図示せず)を作成する(ステップ102)。
【0037】
検出する音の音域と閾値を設定し、MIDI情報としてのノートを作成する(ステップ103)。例えば、ベース音を検出する場合は、No.28(E3)〜No.60(C3)の音域を指定する。ギターによるメロディ検出の場合には、No.60(C3)〜No.84(C5)の音域を指定する。閾値を設定することで、音の強さが閾値以上であれば、その音高を検出するようにする。
【0038】
以上の処理を行うことで、図8(a)の波形ファイルから、楽譜表示を行う場合の音高と発音タイミング及び発音長さに関する音楽情報(ピアノロールで表示した場合は図8(b)に示される情報)を取得することができる。すなわち、音源解析部(メロディ検出手段)22を備えた楽譜表示装置とすることで、音源データから弦楽器演奏のための楽譜表示を自動的に行うことができる。
【0039】
また、クオンタイズ処理の必要性を判断し(ステップ104)、例えばユーザの要望に応じてクオンタイズ処理が行われる(ステップ105)。クオンタイズ処理とは、発音領域部の発音タイミングについて、予め設定されたタイミングに変換処理するものである。クオンタイズ処理の詳細な手順については後述する。
【0040】
続いて、音高と発音長さに関する音楽情報(ピアノロールで表示した場合は図8(b)に示される情報)を弦楽器の演奏に適した楽譜表示に変更する処理が行われる。この処理は、図9に示すフローチャートの手順によって行われる。
なお、弦楽器の演奏に適した楽譜を表示させる場合には、音源データの入力時において、「弦の数」及び「各弦のチューニング」を設定することが行われる。
例えばベース音を検出する場合であれば、
弦の数=4、
第1弦のチューニング=43(G1)、
第2弦のチューニング=38(D1)、
第3弦のチューニング=33(A0)、
第4弦のチューニング=28(E0)、
に設定されている。
【0041】
先ず、変換するノートNoを選択する(ステップ201)。
現在処理中の第X弦を第1弦とする(ステップ202)。
現在処理中の第X弦が「弦の数」(ベースの場合は4)より多いかどうかを判断する(ステップ203)。
Xが弦の数より少ない場合、変換するノートNoが「X弦のチューニング」より大きいかどうかを判断する(ステップ204)。
変換するノートNoが「X弦のチューニング」より大きい場合は、フレットを決める処理を行い(ステップ205)、X弦のフレット数を確定する(ステップ206)。
ベースの第1弦のチューニングは、上述したようにノートNo43(G1)に設定されているので、変換するノートNoが「43」以上であれば第1弦の音になる。
【0042】
フレットを決める式は、次式で算出する。
フレット数=(変換するノートNo)−(X弦のチューニング)
例えば、変換するノートNoが「45」であれば、第1弦のチューニングがノートNo43(G1)なので、
フレット数=45(変換するノートNo)−43(X弦のチューニング)=2
となり、ノートNo45の音は第1弦のフレット2と決定される。
【0043】
ステップ204において、変換するノートNoが「X弦のチューニング」より小さい場合は、次の弦(X=X+1)を選択し(ステップ207)、ステップ203〜ステップ205の処理が行われる。例えば、変換するノートNoが「40」であれば、第1弦には該当しないため第2の弦の音となる。
上述のように高い音(第1弦)側を優先してフレット数を決定することにより、図10(a)に示したピアノロールの音は、図10(b)に示されるように、各ベース弦を表わす横軸部1上に発音領域部3が表記された弦楽器演奏用の楽譜で表示させることができる。
【0044】
続いて、クオンタイズ処理について、図11及び図12を参照して説明する。
クオンタイズ処理は、メロディ等の音を検出した後、発音タイミングを補正することにより、楽譜を見易くするための処理であり、小節中に一定のタイミングで予め決められて記憶されているグリッド位置に対して発音タイミングがずれて検出された場合、予め決められたタイミング(グリッド位置)に発音タイミングを合わせるものである。
すなわち、各ノートの発音タイミングについて、予め設定されたグリッド位置との比較を行い、ずれている場合には近くのグリッドへ発音領域部の先頭位置を移動するようにする(ステップ301)。発音の長さはクオンタイズ処理を行った場合においても、処理前の長さを維持する。全てのノートについてこの処理が繰り返し行われた場合に、クオンタイズ処理を終了する(ステップ302)。
図12(a)(b)には、クオンタイズ処理の前後における楽譜を示すが、クオンタイズ処理前の(a)における発音領域部3xと発音領域部3yについて、処理後の(b)に示すように発音タイミングが補正されてグリッド上に移動する。
【0045】
上述の例では、ノート検出の最後にクオンタイズ処理を行ったが、検出の後に種々の編集を行った後に、別コマンドでクオンタイズ処理を行ってもよい。
クオンタイズ処理を行うことで、楽譜を見易くするよう弦楽器の演奏タイミングが補正された楽譜表示を自動的に行うことができる。
【0046】
弦楽器の場合、弦の種類とフレット位置を変化させることにより、同一音高について複数位置が選択可能な場合が存在する。図9のフローチャートによれば、音が高い第1弦側を優先してフレット位置を決定したが、ユーザの希望により入力済のノートを別の弦Xに変更する処理が行えるようにしてもよい。
すなわち、図13に示すように、ユーザが入力済のノートNoと変更後の弦Xを指定し(ステップ401)、ノートNoが「X弦のチューニング」以上であるかどうかを判断する(ステップ402)。
ノートNoが「X弦のチューニング」以上である場合は、フレットを決める処理を行い(ステップ403)、変更後のX弦のフレット数を確定する(ステップ404)。
フレットを決める式は、次式で算出する。
変更後のフレット数=(ノートNo)−(X弦のチューニング)
ノートNoが「X弦のチューニング」より小さい場合は、X弦のチューニング(開放)より小さくすることはできないため、フレット位置の変更ができない(変更なし)と判断する(ステップ405)。
【0047】
図13の例では、入力されたフレット位置について、ユーザの希望によりフレット位置を変更する処理を行うようにしたが、音源データから楽譜を表示する課程において、フレットを指で押さえて演奏するに際して、指の移動距離が少なくなるように、前の音のフレット位置を考慮してフレット位置の設定を行うようにしてもよい。
この場合のフレット位置の決定手順について、図14及び図15を参照しながら説明する。
先ず、1番目のノートについての弦とフレット位置を決めておく(ステップ501)。弦とフレット位置の決め方は、手動でもよいし、図9のフローチャートを使って、第1弦側を優先してフレット位置を決めてもよい。これが、前回の弦、前回のフレット位置となる。例えば、前回のノートNoが「36」で、弦を「3」とすれば、フレット位置は「3」となる。
次に、現在のノートNoと同じ音高となる全ての弦におけるフレット位置を検出する(ステップ502)。例えば、現在のノートNoが「38」である場合、
1弦の場合のフレット=38(現在のノートNo)−43(1弦のチューニング)=−5
2弦の場合のフレット=38(現在のノートNo)−38(2弦のチューニング)=0
3弦の場合のフレット=38(現在のノートNo)−33(3弦のチューニング)=5
4弦の場合のフレット=38(現在のノートNo)−28(4弦のチューニング)=10
となる。
【0048】
そして、フレット「0」があるかどうか判断する(ステップ503)。フレット位置が「0」であれば、弦の開放なので、弦を押さえる必要がなく、前回のフレット位置に対して移動する必要がないので、フレット「0」を優先する。
フレット「0」がある場合、それを現在のノートNoの弦及びフレットとする(ステップ504)。上述の例では、2弦がフレット「0」であるので、現在のノートNoの弦が「2」で、フレット位置が「0」と決まる。
【0049】
フレット「0」がない場合、前回の弦フレットと各弦のフレット間の距離をそれぞれ算出する(ステップ505)。例えば、次のノートNoが「40」である場合、
1弦の場合のフレット=40(現在のノートNo)−43(1弦のチューニング)=−3
2弦の場合のフレット=40(現在のノートNo)−38(2弦のチューニング)=2
3弦の場合のフレット=40(現在のノートNo)−33(3弦のチューニング)=7
4弦の場合のフレット=40(現在のノートNo)−28(4弦のチューニング)=12
となる。
前回の弦フレット(3,3)と、各弦のフレット間距離の算出は、図15に示すように、フレット方向(横軸)の距離と、弦の方向(縦軸)との距離から求める。弦フレットについて、1弦の左側を基準とし、フレット方向にフレット単位に「1」ずつ増加し、弦方向に弦単位に「1」ずつ増加するように考えた時、
1弦の場合=フレットがマイナスの数字なので、該当するフレットが存在しない。
2〜4弦の弦フレットは(2,2)、(3,7)、(4,12)であるので、前回の弦フレット(3,3)に対して、
2弦の場合の求める距離l=√{(3−2)2+(3−2)2}=1.4…
3弦の場合の求める距離m=√{(3−3)2+(3−7)2}=4
4弦の場合の求める距離n=√{(3−4)2+(3−12)2}=9…
となる。
【0050】
このうち、一番短い距離を、現在のノートNoの弦、現在のノートNoのフレット位置とする(ステップ506)。すなわち、弦楽器演奏用の楽譜において、直前の発音領域部から最も距離が近い位置を当該発音領域部の位置として決定することができる。
上述の例では、2弦の「1.4」が一番短いので、現在のノートNoの弦が「2」、現在のノートNoのフレット位置が「2」となる。
そして、次のノートNoについての距離の測定を行うため、前回の弦、前回のフレット位置を更新する(ステップ507)。
【0051】
現在のノートNoが最後のノートNoである場合(ステップ508)には、フレット位置決定の処理を終了する。
最後のノートNoでない場合には、次のノートNoを指定し(ステップ509)、ステップ502〜ステップ508の処理が繰り返される。
図14の処理を行うことで、横軸部1に沿って発音領域部3を表示するに際し、複数位置の同一音高が選択可能な場合に、直前の発音領域部のフレット番号の位置から最も距離が近いフレット番号の位置を当該発音領域部のフレット番号として決定することができ、指の移動距離を最小にして演奏し易い楽譜表示を自動的に行うことができる。
【0052】
次に、一度作成した弦楽器用の楽譜表示を異なる弦楽器用の楽譜表示に変更する例について、図16及び図17を参照して説明する。
弦楽器用同士の楽譜表示の変更は、例えば、違うチューニングのベース間の楽譜表示や、ギターの楽譜表示とウクレレの楽譜表示に変更するような場合が想定される。
楽譜画面に表示された変更ボタン(図示せず)をクリックすることで、図17のような変更設定画面30を表示させる(ステップ601)。
【0053】
変更設定画面30で各楽器に対応する楽器種類31、弦数32をそれぞれ選択する(ステップ602)。楽器種類31は、ギター用、ベース用、ウクレレ用等の弦楽器が選択可能に構成されている。弦数32では、「2」〜「12」から所望の弦数が選択可能になっている。弦数32を選択した場合、弦数32に応じたチューニング窓33が表示され、各弦についてのチューニング(例えば、第1弦について64(E3)、第2弦について59(B2)、第3弦について55(G2)、…に設定する等)を行う。
これらの設定を行った後にOKボタン34をクリックすることで、入力された楽譜の各音について、新しく選択した楽器種類への楽譜の変換処理が行われる(ステップ603)。
【符号の説明】
【0054】
1…横軸部、 3…発音領域部、 3a…円形部、 3b…線状部、 5…フレット番号、 21…音源入力部、 22…音源解析部(メロディ検出手段)、 23…記憶部(記憶手段)、 24…タイミング補正部(タイミング補正手段)、 25…楽譜表示部(表示手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器を指定音に応じて演奏するための楽譜表示装置であって、
前記指定音の音高情報、発音タイミング情報、発音長さ情報を含む音楽情報を指定音毎に記憶する記憶手段と、前記音楽情報を表示する表示手段とを備え、
前記表示手段は、
前記弦楽器が有する弦に対応する数を有し前記指定音の音高を示す複数の横軸部と、
前記横軸部に沿って表示されることで前記指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部とを有し、
前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示する
ことを特徴とする楽譜表示装置。
【請求項2】
音源の周波数で指定音の音高及び発音長さを判別するメロディ検出手段を備える一方、
前記発音領域部の発音タイミングを予め設定されたタイミングに変換処理するタイミング補正手段を備えた請求項1に記載の楽譜表示装置。
【請求項3】
前記横軸部に沿って前記発音領域部を表示するに際し、複数位置の同一音高が選択可能な場合に、直前の発音領域部のフレット番号の位置から最も距離が近いフレット番号の位置を当該発音領域部のフレット番号として決定する請求項1に記載の楽譜表示装置。
【請求項4】
弦楽器を指定音に応じて演奏するための音楽情報を表示手段に表示するに際して、
前記音楽情報は、前記指定音の音高情報、発音タイミング情報、発音長さ情報を含み、
前記各指定音の音高情報により前記表示手段において前記弦楽器が有する弦に対応する数を有する複数の横軸部のいずれかを選択する機能と、
前記各指定音の発音タイミング情報、発音長さ情報により前記横軸部に沿って表示される発音領域部の先頭位置及び後尾位置が決定される機能と、
前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示する機能と
をコンピュータに実行させることを特徴とする楽譜表示プログラム。
【請求項5】
弦楽器を指定音に応じて演奏するための楽譜であって、
前記弦楽器が有する弦に対応する数を有し前記指定音の音高を示す複数の横軸部と、
前記横軸部に沿って表示されることで前記指定音の発音タイミング及び発音長さを示す発音領域部とを備え、
前記発音領域部に前記弦楽器のフレット番号を表示した
ことを特徴とする楽譜。
【請求項6】
前記横軸部を線で構成し、前記発音領域部を前記線上に表示する請求項5に記載の楽譜。
【請求項7】
前記発音領域部を長方形で構成した請求項5に記載の楽譜。
【請求項8】
前記フレット番号を前記発音領域部の先頭側に表示し、前記指定音に付随する情報を前記発音領域部の後尾側に表示した請求項5に記載の楽譜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−3205(P2013−3205A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131334(P2011−131334)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】