説明

構内交換装置、ゲートウェイ装置及びIP電話システム並びにその音声品質制御方法

【課題】エコーキャンセラで期待する予測信号を変化させること無く、ゲートウェイ装置でエコー抑制量を向上させ、かつ期待の音声レベルを得る。
【解決手段】エコーキャンセラ25を有するゲートウェイ装置2と接続しIP電話システムを構成するボタン電話装置のゲイン制御部13は、主装置1に収容する各回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を公衆回線インタフェース部14から検索する。検索したゲイン情報はISDNインタフェース部16を介しゲートウェイ装置2に出力される。ゲイン制御部23はこのゲイン情報を受信する。エコーキャンセラ25は、LAN回線から入力された信号に、受信したゲイン情報を加味して擬似エコーを算出し、エコー経路の出力信号と擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構内交換装置、Gateway(ゲートウェイ)装置を有するIP電話システムに関し、特に、IP(Internet Protocol)電話システムにおける音声品質制御機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば構内交換装置の一種であるボタン電話装置とエコーキャンセラを有するゲートウェイ装置で構成されるIP電話システムにおいて、ボタン電話装置の主装置とゲートウェイ装置は、各々の装置でゲインを付加している。このため、エコーキャンセラで予測する音声信号を、主装置で変更してしまっている。また、関連する技術として、以下の技術が開示されている。2つのノードのうち片方のノードの音声ゲートウェイ装置は、電話端末が発呼すると、呼を確立するチャネルで使用可能な複数の音声レベル情報を、インターネットを介して相手先ノードへ送信する。相手先ノードの音声ゲートウェイ装置は、受信した音声レベル情報のうち自ノードで使用可能な音声レベルを選択する。そして、選択した音声レベルで通話が行われるように制御すると共に、選択した音声レベル情報を発呼側のノードへ返信する。発呼側のノードの音声ゲートウェイ装置は、相手先ノードから受信した音声レベルで通話が行われるように制御する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−374371号公報(段落番号0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のIP電話システムにおいては、次のような課題がある。第1の課題は、主装置及びゲートウェイ装置各々でゲインを付加するため、エコーキャンセラで予測する音声信号を主装置で変更してしまい、ゲートウェイ装置でのエコーキャンセラ機能を最大限に活用しておらず、エコーを消去できないということである。また第2の課題は、エコーが消去できない場合は、ゲートウェイ装置と接続される通話パスのゲインを下げることで対応するが、これにより、期待するゲインを付加することができないということである。一方、特許文献1では、音声レベルの変動を抑制することについては開示されているが、ゲートウェイ装置でのエコー抑制に関しては、記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、エコーキャンセラで期待する予測信号を変化させること無く、ゲートウェイ装置でエコー抑制量を向上させ、かつ期待の音声レベルを得ることが可能な構内交換装置、ゲートウェイ装置及びIP電話システム並びにその音声品質制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構内交換装置は、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段を備える。
【0007】
また、本発明のゲートウェイ装置は、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するエコーキャンセラを有するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し、前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段を備える。
【0008】
また、本発明のIP電話システムは、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段を備える構内交換装置と、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するエコーキャンセラを有するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し、前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段を備えるゲートウェイ装置とを有する。
【0009】
また、本発明のIP電話システムは、前記ゲートウェイ装置を前記構内交換装置の内部に備える構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の構内交換装置は、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段を備えるボタン電話装置である。
【0011】
また、本発明の構内交換装置は、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し収容する各公衆回線とのインタフェースを行う第1の回線インタフェース部と、前記ゲートウェイ装置と接続する第2の回線インタフェース部と、前記第1及び第2の回線インタフェース部に接続し通話路を形成する時分割スイッチと、前記第1の回線インタフェース部を捕捉したときに当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記第2の回線インタフェース部を介し前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段と、前記各部を制御する制御回路とを備える。
【0012】
また、本発明のゲートウェイ装置は、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置とのインタフェースを行う第3の回線インタフェース部と、前記第3の回線インタフェース部に接続しエコーを消去するためのエコーキャンセラと、前記エコーキャンセラに接続し前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段と、前記第2のゲイン制御手段によってゲイン制御された出力を音声圧縮する音声圧縮部と、前記音声圧縮部の出力をLAN回線へ出力するネットワークインタフェース部、LAN回線から前記ネットワークインタフェース部を介し入力された音声信号を音声伸張する音声伸張部とを備える。
【0013】
また、本発明のゲートウェイ装置は、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置とのインタフェースを行う第3の回線インタフェース部と、前記第3の回線インタフェース部に接続しエコーを消去するためのエコーキャンセラと、前記エコーキャンセラに接続し前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段と、前記第2のゲイン制御手段によってゲイン制御された出力を音声圧縮する音声圧縮部と、前記音声圧縮部の出力をLAN回線へ出力するネットワークインタフェース部、LAN回線から前記ネットワークインタフェース部を介し入力された音声信号を音声伸張する音声伸張部とを備え、前記エコーキャンセラが、前記構内交換装置から受信したゲイン情報を格納するゲイン情報テーブルを有し、前記LAN回線から入力された信号に当該回線の前記ゲイン情報を加味して擬似エコーを算出し、エコー経路の出力信号と前記擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御する。
【0014】
また、本発明のIP電話システムは、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し収容する各公衆回線とのインタフェースを行う第1の回線インタフェース部と、前記ゲートウェイ装置と接続する第2の回線インタフェース部と、前記第1及び第2の回線インタフェース部に接続し通話路を形成する時分割スイッチと、前記第1の回線インタフェース部を捕捉したときに当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記第2の回線インタフェース部を介し前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段と、前記各部を制御する制御回路とを備える構内交換装置と、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置とのインタフェースを行う第3の回線インタフェース部と、前記第3の回線インタフェース部に接続しエコーを消去するためのエコーキャンセラと、前記エコーキャンセラに接続し前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段と、前記第2のゲイン制御手段によってゲイン制御された出力を音声圧縮する音声圧縮部と、前記音声圧縮部の出力をLAN回線へ出力するネットワークインタフェース部、LAN回線から前記ネットワークインタフェース部を介し入力された音声信号を音声伸張する音声伸張部とを備えるゲートウェイ装置とを有する。
【0015】
また、本発明のIP電話システムは、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し収容する各公衆回線とのインタフェースを行う第1の回線インタフェース部と、前記ゲートウェイ装置と接続する第2の回線インタフェース部と、前記第1及び第2の回線インタフェース部に接続し通話路を形成する時分割スイッチと、前記第1の回線インタフェース部を捕捉したときに当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記第2の回線インタフェース部を介し前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段と、前記各部を制御する制御回路とを備える構内交換装置と、構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するゲートウェイ装置であって、前記構内交換装置とのインタフェースを行う第3の回線インタフェース部と、前記第3の回線インタフェース部に接続しエコーを消去するためのエコーキャンセラと、前記エコーキャンセラに接続し前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段と、前記第2のゲイン制御手段によってゲイン制御された出力を音声圧縮する音声圧縮部と、前記音声圧縮部の出力をLAN回線へ出力するネットワークインタフェース部、LAN回線から前記ネットワークインタフェース部を介し入力された音声信号を音声伸張する音声伸張部とを備え、前記エコーキャンセラが、前記構内交換装置から受信したゲイン情報を格納するゲイン情報テーブルを有し、前記LAN回線から入力された信号に当該回線の前記ゲイン情報を加味して擬似エコーを算出し、エコー経路の出力信号と前記擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御するゲートウェイ装置とを有する。
【0016】
また、本発明のIP電話システムにおける音声品質制御方法は、構内交換装置とエコーキャンセラを有しIP電話装置を収容するゲートウェイ装置とを備えるIP電話システムで音声品質を制御するIP電話システムにおける音声品質制御方法であって、前記構内交換装置で、収容する各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し音声パスの確立後、当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力するステップと、前記ゲートウェイ装置では前記ゲイン情報を受信するステップと、前記IP電話装置から入力された信号に前記受信した当該回線のゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラにおいて擬似エコーを算出しエコー経路の出力信号と前記擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御するステップとを有する。前記ゲイン情報を制御チャネルにより送信する。
【0017】
本発明によれば、ゲイン付加機能を有するボタン電話装置等の構内交換システムと、このシステムに接続し公衆回線からのエコーを消去するエコーキャンセラを搭載するゲートウェイ装置において、構内交換システムで付加されるゲインを、ゲートウェイ装置に送信しこのゲートウェイ装置でこのゲインを加味しエコー消去を行わせる。これにより、IP通話におけるエコーキャンセラのエコー抑制効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明は、主装置のゲインをゲートウェイ装置に送信し、このゲインを加味してエコー消去させる。これにより、エコーキャンセラで期待する予測信号を変化させること無く、ゲートウェイ装置でエコー抑制量を向上させ、かつ期待の音声レベルを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1(a)を参照すると、本発明の実施の形態としてボタン電話システムの主装置1と、エコーキャンセラ(図示せず)を有するゲートウェイ装置2と、IP電話装置3とを備えるIP電話システムが示されている。IP電話装置3は通話のためのマイクロフォン31およびスピーカ32を有する。主装置1とゲートウェイ装置2との間はISDN回線で接続されが、接続方式はISDN回線に限るものではなく、例えばE&Mあるいは独自のインタフェースを用いてもよい。
【0021】
図1(a)において、主装置1はゲートウェイ装置2と接続する。ゲートウェイ装置2は、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)を介しIP電話装置3を収容し、主装置1からの音声信号をIPパケットに変換、またその逆の機能を有する。主装置1、ゲートウェイ装置2は各々ゲイン制御部(図示せず)を有する。
【0022】
図1(b)は主装置1の主要部の構成を示す図である。図1(b)を参照すると、主装置1は、タイムスイッチ11と、ゲイン制御部12と、VoIPゲートウェイ信号送出部13と、公衆回線インタフェース部14、ボタン電話内線インタフェース部15と、ISDNインタフェース部16、上述の各部を制御する制御回路10とを備える。タイムスイッチ11は公衆回線インタフェース部14及びISDNインタフェース部16に接続し通話路を形成する。公衆回線インタフェース部14は、各公衆回線のゲイン情報を保有すると共に収容する各公衆回線とのインタフェースを行う。ISDNインタフェース部16はゲートウェイ装置と接続する。ゲイン制御部12は、主装置1が制御回路10からの指示により通話パス確立時に、公衆回線インタフェース部14の公衆回線のゲイン情報を検索する。VoIPゲートウェイゲイン信号送出部13は、ゲイン制御部12から受信した当該公衆回線のゲイン情報をゲートウェイ装置2でのエコー消去に用いるためゲートウェイ装置2へ送出する。
【0023】
図1(c)はゲートウェイ装置2の構成を示す図である。図1(c)を参照すると、ゲートウェイ装置2は、ネットワークインタフェース部21と、音声圧縮部22と、音声伸張部23と、ゲイン制御部24と、エコーキャンセラ25と、主装置インタフェース部26とを備える。主装置インタフェース部26は、主装置1の制御回路10に接続される音声チャネルと制御チャネルを有し、これらのチャネルにより主装置1のISDNインタフェース部16を介しタイムスイッチ11とのインタフェースを行う。エコーキャンセラ25は、主装置インタフェース部26と接続し、主装置1のタイムスイッチ11からの音声信号のエコーを消去するために用いられる。
【0024】
ゲイン制御部24は、エコーキャンセラ25に接続し、主装置インタフェース部16から主装置1に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信する。そしてゲイン制御部24は、LAN回線から入力された信号に当該回線のゲイン情報を加味してエコーキャンセラ25にエコー消去を行わせる。音声圧縮部22はゲイン制御部24によってゲイン制御された出力を音声圧縮する。ネットワークインタフェース部25は、音声圧縮部22の出力をパケットデータに変換しIPプロトコルに従ってLAN回線に出力する。音声伸張部23はIPプロトコルに従ってLAN回線からネットワークインタフェース部21を介し入力された音声信号を音声伸張する。
【0025】
図4はゲイン情報フォーマットの一例を示す図である。図4において、Total Lengthはメッセージの長さ、Resource No.は該当チャネル番号、lengthはOctet4からのメッセージ長、Tx−Gainはゲートウェイ装置→主装置方向のゲイン(例えば−14〜+14dB)、Rx−Gainは主装置→ゲートウェイ装置方向のゲイン(例えば−14〜+14dB)をそれぞれ示す。Tx−Gain/Rx−Gainは、主装置1での利得(ゲイン)の値を示し、主装置1の公衆回線インタフェース部14(図1)に付加するものである。
【0026】
図2(a)はエコーキャンセラの構成を説明するための図である。図2(a)において、エコーキャンセラは、マイクロフォン31(図1)から入力された入力信号x(n)からエコー経路を推定し、擬似エコーe’(n)を推定する。そして、エコーキャンセラは、実際のエコー経路の出力信号e(n)と擬似エコーe’(n)との差分信号y(n)が最小になるように、エコー予測器251の予測関数を適応的に制御する。
【0027】
図2(b)はゲイン情報テーブルを示す図であり、各チャネルのゲイン情報の一例が示されている。主装置1からのゲイン情報は、ゲートウェイ装置2の主装置インタフェース部26を経由し、エコーキャンセラ25のゲイン情報テーブル252に格納される。エコーキャンセラ25は、ゲイン情報テーブル252の値を加味したエコーキャンセルアルゴリズムでエコー消去を行う。主装置1からゲイン情報がゲートウェイ装置2に送られてきた場合、ゲイン情報テーブル252に図2(b)で示す各チャンネルのゲイン情報が設定される。
【0028】
例えば、エコー予測器251ではTx/Rx=4/4dBであれば、計算で算出した擬似エコーe’(n)に、ゲイン情報テーブル252を参照し、Tx/Rxの値をe’(n)= 4+4+e’(n)として加算し差分信号y(n)を最小とするようにしている。即ち、Tx−Gainはゲートウェイ装置→主装置方向のゲインであるが、公衆回線への対応として、主装置1により公衆側への送話側のレベルに付加するものであり、Rx−Gainは主装置→ゲートウェイ装置方向のゲインであるが、主装置1により公衆側からの受話側ゲインとして付加するもので、e‘(n)の疑似エコーにこのTx/Rxを付加してy(n)のエコーを消去する。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、ゲートウェイ装置2と主装置1を分離して構成したが、ゲートウェイ装置2を主装置1の内部に含めて構成してもよい。
【0030】
次に、本発明を実施するための最良の形態の動作について図1〜図3を参照して説明する。
【0031】
マイクロフォン31から公衆回線に向かって音声入力を行うと、IP電話装置3は入力された音声信号をサンプリング処理など必要な処理を行う。そして、処理の結果、パケットデータがIP電話装置3からゲートウェイ装置2に送信される。各パケットデータは、ゲートウェイ装置2のネットワークインタフェース部21においてパケットデータが順に組み立てられ、音声伸張部23が音声伸張を行う。伸張された音声データは、ゲイン制御部24でゲートウェイ装置2としてのゲインが選択付加され、主装置インタフェース部26を経て主装置1のISDNインタフェース部16へPCMデータとして送信される。変換されたPCMデータは、タイムスイッチ11で現在接続されている回線のゲイン情報をPCMデータに付与し、制御回路10の指示に基づき公衆回線インタフェース部14を経由し音声が公衆回線へ出力される。つまり、ゲートウェイ装置2のゲイン制御部24では、上述したゲートウェイ装置2のゲイン情報(図示せず)に基づいてゲインを選択するものである。主装置1側においては「Tx−Gain/Rx−Gain」として公衆回線インターフェース部14(図1)に保有しており、これらのゲインを付加して音声が公衆回線へ出力されるもので、このゲイン情報をPCMデータに付与し公衆回線へ出力する。
【0032】
ここで、エコーと呼ばれる現象が起きることが一般的に知られている。公衆回線インタフェース部14から出力されるPCM信号が、公衆回線のインピーダンスの不整合(2線−4線変換)により、主装置1からゲートウェイ装置2への方向の音声として入力される。この場合の音声は、主装置1およびゲートウェイ装置2を介してIP電話装置3のスピーカ32から音声として出力されることになり、ループを形成する。このエコーを生じる経路(エコーパス)には伝送遅延が生じる。つまり、IP電話装置3の通話者は、マイクロフォン31から入力した音声を少し遅れてスピーカ32で聞くことになる。そこで、ゲートウェイ装置2においてエコーキャンセラ25が用いられる。
【0033】
従来のシステムでは、エコーキャンセラ25で予測した擬似エコーe’(n)は、入力信号x(n)より計算されている。仮に主装置1によってゲインを付加すると、エコー経路の出力信号e(n)が擬似エコーe’(n)と大幅に狂うことになり、差分信号y(n)を最小にすることが困難となる。つまり、差分信号y(n)が大きいと、IP電話装置3のマイクロフォン31からの音声信号が、スピーカ32から聞こえることになる。
【0034】
これを解決するために主装置1のゲイン情報をゲートウェイ装置2に送り、ゲートウェイ装置2でエコー消去を行う際に、この受信したゲイン情報を加味する。IP電話装置3と公衆回線の音声パス接続時に主装置1は、VoIPゲートウェイ信号送出部13を介して当該公衆回線のゲイン情報を送信する。ゲートウェイ装置2は、送られてきた当該公衆回線のゲイン情報と、マイクロフォンからの入力信号x(n)とから擬似エコーを計算、予測する。
【0035】
エコーキャンセラ25は、受話信号から、エコーとして戻ってくる信号を信号処理に基づいて予測し、その予測信号を送話信号に加えることによってエコーを消去している。そのためエコーキャンセラを実装していない装置(ここでは主装置1)でゲインを付加すると、エコーキャンセラ25で予測していた信号と異なる信号がエコーキャンセラに入力され、正しくエコーを消去できない。一方、ゲートウェイ装置2でゲインを付加する場合には、エコーキャンセラ25がゲートウェイ装置2で付加したゲインを知ることができる。したがって、予測信号もゲインを付加した状態で行うことが可能である。
【0036】
ゲインを下げれば、戻ってくるエコーも下がるのは当然であり、逆にゲインを上げれば戻ってくるエコーも大きい。ゲインを下げれば本来の音声信号のゲインも下がってしまう。本発明では、エコーキャンセラを実装していないシステム(この場合、主装置1)でのゲイン情報を、エコーキャンセラを実装しているゲートウェイ装置2に送り、そのゲイン情報を加味し、すなわち擬似エコーに付加してエコーを消去するとともに、ゲートウェイ装置2でゲインを付加して所要の音声信号ゲインを保つ。
【0037】
図3は本発明の実施の形態の動作を説明するための図である。主装置の公衆回線インタフェース部には収容する回線ごとに利得付加するためのゲイン情報を有する。音声パスの確立後、主装置は、当該公衆回線のゲイン情報を検索してこのゲイン情報をゲートウェイ装置へ送信する。ゲートウェイ装置は、このゲイン情報を受信し、この情報と入力信号x(n)からエコーキャンセラのエコー予測器において擬似エコーe’(n)を算出する。すなわち、ボタン電話システムで付加されるゲイン情報を、ゲートウェイ装置に送信しこのゲートウェイ装置でこのゲイン情報を加味して、エコー消去動作を行わせる。上述したゲイン情報の伝達は、主装置とゲートウェイ装置が接続されているインタフェースの制御チャネルを用いる。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、ゲートウェイ装置のエコーキャンセラで予測する音声が主装置で変更されること無く、期待する予測信号を得ることができる。したがって、ゲートウェイ装置で最大限のエコー抑制量を得ることが可能となる。なお、本実施の形態では、ボタン電話システムを用いた例を説明したが、PBXシステムに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明のIP電話システムの実施の形態を説明するための図である。(b)は(a)におけるボタン電話システム主装置の主要部の構成を示す図である。(c)は(a)におけるゲートウェイ装置の構成を示す図である。
【図2】(a)はエコーキャンセラの構成を説明するための図である。(b)はゲイン情報テーブルを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の動作を説明するための図である。
【図4】図4はゲイン情報フォーマットの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 主装置
2 ゲートウェイ装置
3 IP電話装置
10 制御回路
11 タイムスイッチ
12,24 ゲイン制御部
13 VoIPゲートウェイゲイン信号送出部
14 公衆回線インタフェース部
15 ボタン電話内線インタフェース部
16 ISDNインタフェース部
21 ネットワークインタフェース部
22 音声圧縮部
23 音声伸張部
25 エコーキャンセラ
26 主装置インタフェース部
31 マイクロフォン
32 スピーカ
251 エコー予測器
252 ゲイン情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、前記構内交換装置は、収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段を備えることを特徴とする構内交換装置。
【請求項2】
構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するエコーキャンセラを有するゲートウェイ装置であって、前記ゲートウェイ装置は、前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し、前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項3】
請求項1記載の構内交換装置及び請求項2記載のゲートウェイ装置を備えることを特徴とするIP電話システム。
【請求項4】
請求項2記載のゲートウェイ装置を請求項1記載の構内交換装置の内部に備えることを特徴とするIP電話システム。
【請求項5】
前記構内交換装置がボタン電話装置であることを特徴とする請求項1記載の構内交換装置。
【請求項6】
エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続しIP電話システムを構成する構内交換装置であって、前記構内交換装置は、各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し収容する各公衆回線とのインタフェースを行う第1の回線インタフェース部と、前記ゲートウェイ装置と接続する第2の回線インタフェース部と、前記第1及び第2の回線インタフェース部に接続し通話路を形成する時分割スイッチと、前記第1の回線インタフェース部を捕捉したときに当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記第2の回線インタフェース部を介し前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力する第1のゲイン制御手段と、前記各部を制御する制御回路とを備えることを特徴とする構内交換装置。
【請求項7】
構内交換装置と接続しIP電話システムを構成するゲートウェイ装置であって、前記ゲートウェイ装置は、前記構内交換装置とのインタフェースを行う第3の回線インタフェース部と、前記第3の回線インタフェース部に接続しエコーを消去するためのエコーキャンセラと、前記エコーキャンセラに接続し前記構内交換装置から出力されるこの構内交換装置に収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報を受信し前記ゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラでのエコー消去を行わせる第2のゲイン制御手段と、前記第2のゲイン制御手段によってゲイン制御された出力を音声圧縮する音声圧縮部と、前記音声圧縮部の出力をLAN回線へ出力するネットワークインタフェース部、LAN回線から前記ネットワークインタフェース部を介し入力された音声信号を音声伸張する音声伸張部とを備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項8】
前記エコーキャンセラは、前記構内交換装置から受信したゲイン情報を格納するゲイン情報テーブルを有し、前記LAN回線から入力された信号に当該回線の前記ゲイン情報を加味して擬似エコーを算出し、エコー経路の出力信号と前記擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御することを特徴とする請求項7記載のゲートウェイ装置。
【請求項9】
請求項6記載の構内交換装置と、請求項7及び8いずれか1項に記載のゲートウェイ装置とを備えることを特徴とするIP電話システム。
【請求項10】
構内交換装置とエコーキャンセラを有しIP電話装置を収容するゲートウェイ装置とを備えるIP電話システムで音声品質を制御するIP電話システムにおける音声品質制御方法であって、前記構内交換装置で、収容する各公衆回線に利得付加するためのゲイン情報を有し音声パスの確立後、当該公衆回線のゲイン情報を検索して前記エコーキャンセラでのエコー消去に用いるため前記ゲートウェイ装置へ出力するステップと、前記ゲートウェイ装置では前記ゲイン情報を受信するステップと、前記IP電話装置から入力された信号に前記受信した当該回線のゲイン情報を加味し前記エコーキャンセラにおいて擬似エコーを算出しエコー経路の出力信号と前記擬似エコーとの差分信号が最小になるように予測関数を適応的に制御するステップとを有することを特徴とするIP電話システムにおける音声品質制御方法。
【請求項11】
前記ゲイン情報は制御チャネルにより送信することを特徴とする請求項10記載のIP電話システムにおける音声品質制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−33261(P2006−33261A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207355(P2004−207355)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】