説明

構成体およびポリエステルフィルム

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来素材である軟質塩化ビニルやウレタン樹脂に代替する素材により、肌触り、形状追従性、耐摩耗性に優れたフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下によって前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、ポリエステルフィルム(A)の片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有し、ポリエステルフィルム(A)の層(B)を有さない他面に、支持体(E)を有することを特徴とする、構成体(F)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代替素材により、肌触り、形状追従性、耐摩耗性に優れたポリエステルフィルム(C)、及び(C)を用いて布又は発泡体などの支持体と貼り合わせた構成体(F)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子などの住宅家具や車両内装材などに使用される人工皮革に使用される樹脂として、軟質塩化ビニル樹脂やウレタン樹脂が多用されており、これらのフィルムと紙、布、不織布などとの積層体に、着色、コーティングを施したもの、及びシボ模様の凹凸加工が施されたものが従来から広く用いられている(特許文献1)。人工皮革に代表される内装材は、皮革に似た肌触り(柔軟性)と、それが包み込む物の形状に沿う十分な形状追従性が必要であるとともに、施行後も容易に破断しないだけの伸度と耐摩耗性が要求される。
【0003】
従来素材である軟質塩化ビニル樹脂やウレタン樹脂は、これら要求を解決するために数多くの研究開発がなされてきたが(特許文献2〜4)、近年、焼却時における有害ガス発生の問題により、環境や人体への影響が懸念されるようになった。特に、ハロゲン(塩素)含有樹脂である軟質塩化ビニル樹脂における有害ガス発生問題は、マスメディアで大きく取り上げられた。
【0004】
そこで、ポリオレフィンやポリエステルによる代替素材が提案され、上記要求を解決するための技術開示がなされている(特許文献5,6)。しかしながらこれらの技術においても、要求されている肌触り、形状追従性、耐摩耗性の全てを解決するには至っていない。
【特許文献1】特開平06−116875号公報
【特許文献2】特開平05−116261号公報
【特許文献3】特開平09−111671号公報
【特許文献4】特開平10−251978号公報
【特許文献5】特開平12−006334号公報
【特許文献6】特許第3128850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、前記課題に鑑み、代替素材により、肌触り、形状追従性、耐摩耗性に優れたフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下(1)、(2)によって前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
(1)弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、
ポリエステルフィルム(A)の片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有し、
ポリエステルフィルム(A)の層(B)を有さない他面に、支持体(E)を有することを特徴とする、構成体(F)。
(2)弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、
(A)の少なくとも片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有することを特徴とする、ポリエステルフィルム(C)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、肌触り、形状追従性、耐摩耗性に優れたポリエステルフィルム(C)を得ることができ、上記の優れた特性を活かしてポリエステルフィルム(C)は各種工業用途に有用であるが、布、発泡体などの支持体を有する構成体(F)とすることで、特に、椅子などの住宅家具や車両内装材などに使用される人工皮革や内装表皮材などに好適に用いられる。また、植物由来原料を使用することにより、さらなる環境低負荷素材として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリエステルフィルム(C)は、弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、(A)の少なくとも片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有することを特徴とする。
【0009】
ポリエステルフィルム(A)は、皮革様の肌触りと優れた形状追従性のため、引張弾性率が5MPa以上500MPa以下、かつ、ポリエステルフィルム(A)の破断伸度が300%以上2000%以下であることが必要である。良好な肌触りが求められる場合、ポリエステルフィルム(A)の引張弾性率が5MPa以上300MPa以下、かつポリエステルフィルム(A)の破断伸度が300%以上2000%以下であることが好ましい。複雑な形状に加工する場合など、より優れた形状追従性が求められる場合、ポリエステルフィルム(A)の引張弾性率が5MPa以上500MPa以下、かつ、ポリエステルフィルム(A)の破断伸度が500%以上2000%以下であることが好ましい。良好な肌触りと優れた形状追従性を両立する最も好ましい範囲は、ポリエステルフィルム(A)の引張弾性率が5MPa以上300MPa以下で、かつ、ポリエステルフィルム(A)の破断伸度が500%以上2000%以下である。ポリエステルフィルム(A)の破断伸度が2000%を超えると、肌触りと形状追従性の両立が困難になる。
【0010】
また、本発明におけるポリエステルフィルム(C)は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、フィルムの長手方向、幅方向のいずれかの方向に延伸した一軸延伸フィルム、また、フィルムの長手方向、幅方向の両方向に延伸した二軸延伸フィルムのどちらであってもよい。なお、ポリエステルフィルム(C)として延伸フィルムを用いる場合、ポリエステルフィルム(A)として延伸フィルムを使用しても構わないし、ポリエステルフィルム(A)としては無延伸フィルムを使用し、該ポリエステルフィルム(A)に層(B)を形成した後に延伸しても構わない。ただし、長期による寸法安定性を良好とする上では、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0011】
ポリエステルフィルム(A)の厚みについては、特に限定しないが、製膜の容易性から10μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0012】
ポリエステルフィルム(A)の製膜方法について、インフレーション製膜法や、Tダイによる溶融キャスト製膜法などが挙げられ、どちらの方法であってもよい。
【0013】
また本発明のポリエステルフィルム(C)は、耐摩耗性を付与するために、ポリエステルフィルム(A)の少なくとも片面にウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂の層(B)を有することが必要である。
【0014】
本発明の層(B)に好ましく用いられるウレタン系樹脂は、ウレタン結合のみからなる樹脂と、ウレタン結合と尿素結合からなる樹脂が好ましく用いられる。好ましく用いられるアルコールとしては、公知の多価アルコール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどが挙げられる。イソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、タフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0015】
アクリル系樹脂でも、耐摩耗性を向上させることができる。また、両面の摩擦抵抗を減らすため、シリコンを含有したものや、分子鎖にフッ素を含有したアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
本発明の層(B)に好ましく用いられるウレタン系樹脂やアクリル系樹脂は、ポリエステルフィルム(A)に追従させるため、破断伸度が100%以上1000%以下であることが好ましい。100%未満であると形状に追従していかない場合があり、1000%超えると十分な耐摩耗性性能が得られない場合がある。より好ましくは、200%以上500%以下である。
【0017】
本発明におけるポリエステルフィルム(A)に用いられるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称である。
【0018】
エステル結合に用いられるジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、およびこれらのエステル形成誘導体などを使用することができる。また、環境低負荷な素材を提供しようとする場合、植物由来原料のジカルボン酸成分を用いることができる。植物由来原料としては、植物油から精製される脂肪酸や、でんぷんから合成されるヒドロキシカルボン酸などが挙げられ、具体的には、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、セバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、乳酸などである。これら植物由来原料を共重合などにより構成成分とすることにより、ポリエステルフィルム(A)の植物由来原料含有率を向上させ、環境低負荷なフィルムとして取り扱うことができる。
【0019】
エステル結合に用いられるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロブタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルム(A)に用いられるポリエステルは、単一のジカルボン酸成分と単一のグリコール成分により形成されたエステル結合を持つポリエステル、2つ以上のジカルボン酸成分と単一のグリコール成分により形成されたエステル結合を持つポリエステル、単一のジカルボン酸成分と2つ以上のグリコール成分により形成されたエステル結合を持つポリエステル、2つ以上のジカルボン酸成分と2つ以上のグリコール成分により形成されたエステル結合を持つポリエステルのいずれであってもよい。
【0021】
中でも、芳香族ジカルボン酸と長鎖脂肪族ジカルボン酸、および、炭素数が1以上10未満のグリコール成分を少なくとも1種以上共重合した長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルが好適に用いられる。
【0022】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸を構成成分とするハードセグメントと、長鎖脂肪族ジカルボン酸を構成成分とするソフトセグメント、および、炭素数が1以上10未満のグリコール成分を少なくとも1種以上含有しているものであることが好ましい。
【0023】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルのハードセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸成分には、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体を用いることが好ましい。具体的には、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびこれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びそのエステル形成誘導体が好ましい。また、これらの芳香族ジカルボン酸成分は、1種あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルのソフトセグメントを構成する長鎖脂肪族ジカルボン酸成分には、下記式で示される長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体の場合、炭素数10以上の不飽和脂肪酸から誘導されるものが好ましく、中でも炭素数10〜30の長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体であることが特に好ましい。これらは、主として不飽和脂肪酸の二量化により得られる二量化脂肪酸(以下二量体と略称する)あるいは二量体のエステル形成誘導体から得られる。
【0025】
CH(CH(CH=CH−CH(CHCOOR
(式中のRは、水素原子またはアルキル基、mは1〜25の整数、kは1〜5の整数、nは0〜25の整数、m、kおよびnは、8≦m+3k+n≦28の関係式を満足する。)。
【0026】
この不飽和脂肪酸の二量化反応においては、二量体とともに不飽和脂肪酸の三量化により得られる三量化脂肪酸(以下三量体と略称する)も生成する。よって不飽和脂肪酸の二量化反応により得られる長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体中には二量体、三量体及び単量体が含まれている。この長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体を複数回の蒸留等の精製を行い、長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体中に二量体量が95重量%以上、さらには二量体量が98重量%以上の高純度な長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体を用いると、色調の面で良好な長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルが得られる。しかし、蒸留工程によって長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体のコストが著しく大きくなるため、共重合ポリエステルの色調とコスト性とを両立させるためには、長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体中の、二量体、三量体の比率がそれぞれ70〜90重量%、10〜30重量%であることが好ましい。つまり、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルにおいて、長鎖脂肪族ジカルボン酸成分中の二量体含有量が70〜90重量%、及び三量体含有量が10〜30重量%であることが特に好ましい。
【0027】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルの製造時において使用される長鎖脂肪族ジカルボン酸誘導体には、不飽和脂肪酸の二量化反応により生成する不飽和結合が存在するが、これをそのまま重合原料として使用しても、水素添加反応により還元させた後に使用しても構わない。しかし、特に耐熱性、耐候性ならびに透明性が要求される場合には、水素添加により不飽和結合をなくした二量体を用いることが好ましい。
【0028】
不飽和脂肪酸の二量化体としては、炭素数36の二量化体であるダイマー酸およびダイマー酸をエステル化したダイマー酸誘導体が好ましい。ダイマー酸は、リノール酸やリノレイン酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られるものであり、例えば、ユニケマ・インターナショナル社から“プリポール”(“PRIPOL”)、あるいはこれらの各種エステル形成誘導体が市販されている。上記化合物の1種あるいは2種以上を併用してもよい。
【0029】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルに好適に用いられる芳香族ジカルボン酸成分と長鎖脂肪族ジカルボン酸成分の割合は、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルの全ジカルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分/長鎖脂肪族ジカルボン酸成分が60〜99モル%/40〜1モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸成分が60モル%未満では、結晶性に乏しく、耐熱性や耐薬品性などの特性が発現されない場合がある。また、芳香族ジカルボン酸成分が99モル%を超えると、柔軟性に乏しくなる場合がある。より好ましくは芳香族ジカルボン酸成分/長鎖脂肪族ジカルボン酸成分が65〜97モル%/35〜3モル%であり、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸成分/長鎖脂肪族ジカルボン酸成分が70〜95モル%/30〜5モル%である。
【0030】
長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルのグリコール成分として、炭素数が10未満のグリコール成分を少なくとも1種以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルの全グリコール成分中、100モル%が炭素数が10未満のグリコール成分の場合である。炭素数が10未満のグリコール成分とは、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロブタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールから選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましく、1,4−ブタンジオールを必須成分とし、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールのうち1種以上を選択することがさらに好ましい。複数成分のグリコールを選択するのが好ましい理由は、グリコール成分が1種のみの場合は、ポリマー鎖の乱れが少なくなり、結晶性が高くなりすぎる場合があるためであり、複数のグリコール成分を共重合することで結晶性を制御することができるようになるからである。
【0031】
本発明におけるポリエステルフィルム(A)は、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルを単一成分としたフィルムであってもよいし、上述したジカルボン酸成分とジオール成分からなるポリエステルとの混合物を成分としたフィルムであってもよい。製造工程の簡略化や製造コストの削減を勘案すると、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルを単一成分としたフィルムであることが好ましい。
【0032】
また本発明の層(B)の厚みは、成形加工時におけるポリエステルフィルム(A)への形状追従性を損なわないために、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では、耐摩耗性が十分に発現されない場合があり、5μmを超えると、成形加工による変形でクラックや厚みの不均一化が起こる場合がある。より好ましくは、0.1μm以上3μm以下である。
【0033】
ポリエステルフィルム(A)の少なくとも片面に層(B)を積層させる方法としては、2台の溶融押出機を用いてポリエステルフィルム(A)上に積層させる方法と、ウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂を溶剤などに溶解させ、製膜されたポリエステルフィルム(A)上にコーティングする方法が挙げられる。コーティング方法としては、製膜工程上で行う方式と、フィルム製膜後に別工程として行う方式があるが、どちらの方式でコーティングしてもよい。
【0034】
接着力を高める目的で、ポリエステルフィルム(A)と層(B)の間に接着層(D)を有することも好ましい。特に限定しないが、接着層(D)としてはポリウレタンが広く用いられる。
【0035】
上述の方法により、ポリエステルフィルム(A)の少なくとも片面に層(B)を有したポリエステルフィルム(C)を得ることができる。
【0036】
本発明は、ポリエステルフィルム(A)の片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有し、ポリエステルフィルム(A)の層(B)を有さない他面に、支持体(E)を有する構成体(F)とすることで、構成体(F)は住宅用内装材、車両用内装材、人工皮革などに好適に使用することができる。構成体(F)としては、ポリエステルフィルム(C)の片面に支持体(E)を貼り合わせてなる構成体(F)とすることも、ポリエステルフィルム(A)の片面に支持体(E)を形成した後、ポリエステルフィルム(A)の支持体(E)を有さない他面に、層(B)を形成することもできる。支持体(E)が布や不織布などであれば、人工皮革様シートとして好ましく用いられ、支持体(E)が発泡シートなどの発泡体であれば、住宅用壁紙や車両の内装材として好ましく用いられる。
【0037】
また、環境低負荷な素材を提供したい場合、支持体(E)の構成成分に植物由来原料を用いることが好ましい。植物由来原料としては、植物油から精製される脂肪酸や、でんぷんから合成されるヒドロキシカルボン酸などが挙げられ、具体的には、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、セバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、乳酸などが挙げられる。中でも、繊維や発泡体の研究が盛んで、耐熱性やコスト面で優れるポリ乳酸を用いることが好ましい。
【0038】
支持体(E)に用いられる布とは、繊維を撚って糸を作ったのち縦糸と横糸を織り編みしてなる織布、または、繊維同士を重ねたのち熱や接着剤などにより絡ませてなる不織布が挙げられる。発泡シートとは、押出発泡やビーズ発泡、ケミカル発泡などにより作成される発泡体が挙げられる。特に限定はしないが、生産性の面から押出発泡シートが好ましく用いられる。
【0039】
上記ポリエステルフィルム(A)と支持体(E)を貼り合わせるには、支持体(E)が布の場合、ポリエステルフィルム(A)を溶融製膜しながら、布を貼り合わせる方法が用いられる。具体的には、Tダイ法の場合、押出機ダイスから溶融したポリエステルが冷却ロールにキャストされる際に、布を同時に挟み込ませ、ポリマーと熱接着させる方法である。支持体(E)が発泡シートの場合、ポリエステルフィルム(A)製膜後、接着層(D)を塗布し、押出発泡シートと作成時にロールに挟み込ませ圧着させる方法が挙げられる。そしてポリエステルフィルム(A)と支持体(E)の積層体のポリエステルフィルム(A)面に、ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂を形成することで、本発明の構成体(F)とすることができる。
【0040】
また、ポリエステルフィルム(C)と支持体(E)を張り合わせるには、ポリエステルフィルム(C)の層(B)を有さない片面(両面に層(B)を有する場合はいずれか一方の面)に、接着剤を塗布し、支持体(E)と貼り合わせる方法や、支持体(E)を電気ヒーターなどで加熱し、ポリエステルフィルム(C)の層(B)を有さない片面に熱接着させる方法が挙げられる。
【0041】
本発明のポリエステルフィルム(C)は、層(B)の効果により優れた耐摩耗性を有し、かつ柔軟で、成形加工性に優れた非塩素系フィルムを提供することができる。本発明の構成体(F)は、風合いやに優れた素材を提供することができる。これらは、住宅用内装材、自動車用内装材、人工皮革様シートとして好適に用いることができる。
【0042】
また、本発明を損なわない範囲で、ポリエステルフィルム(A)や層(B)、支持体(E)には、末端封鎖剤や、架橋剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの各種添加剤を用いることができる。末端封鎖剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物が挙げられ、中でも芳香族カルボジイミド化合物の末端封鎖効果が高く、優れた経時安定性を得ることができる。酸化防止剤としては、リン酸塩などのリン系化合物が用いられる。着色剤には、カーボンブラックやベンガラ、酸化チタンなどを用いられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄などの無機粒子などが用いられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(弾性率と破断伸度)
ポリエステルフィルム(A)を幅10mm、長さ150mmのフィルム片に切り出し、あらかじめ温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1日以上調湿した。このフィルム片を用い、チャック間距離を50mm、引張速度を200mm/minとして、テンシロン万能試験機UTC−100型(株式会社オリエンテック)を用いて、23℃の雰囲気下にて引張試験を行い、引張弾性率と破断伸度を測定した。測定は1水準ごとに長手方向を5回、幅方向を5回、計10回行い、10回の試験平均値を求めてこれを弾性率、破断伸度とした。
(耐摩耗性)
着色原料などにより、着色されていないフィルムを用いて、JIS−K7204に準拠し、荷重500g、100回転のテーバー摩耗試験を行った。なお、試験は層(B)を形成した面に対して行った。
【0044】
その後、層(B)の摩耗面と非摩耗面の光沢度を測定し、その光沢度差(下式)によって以下のように評価した。光沢度測定は、スガ試験機(株)製デジタル変角光沢計UGD−5Dを用い、入射角度および検出角度をフィルム面の法線方向から60°で摩耗面、非摩耗面それぞれ4ヶ所を測定し、光沢度の平均値を求めた。
【0045】
そして得られた光沢度の平均値を下記の評価に従って、点数化した。評価の3以下は、摩耗面全体の摩耗痕が確認できるため、評価4以上が良好な耐摩耗性と判断した。
【0046】
光沢度差=非磨耗面光沢度−摩耗面光沢度・・・(式)
評価
5:0%以上20%未満
4:20%以上40%未満
3:40%以上60%未満
2:60%以上80%未満
1;80%以上
(形状追従性)
ポリエステルフィルム(C)を幅10mm、長さ150mmのフィルム片に切り出し、あらかじめ温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1日以上調湿した。このフィルム片を用い、チャック間距離を50mm、引張速度を200mm/minとして、テンシロン万能試験機UTC−100型(株式会社オリエンテック)を用いて、23℃の雰囲気下にて引張試験を行った。
【0047】
伸度が、100%となる位置で引張試験を一時停止し、フィルム片層にクラックが無いか目視で確認した。それを伸度100%から100%刻みで伸度1000%まで目視確認した。一般的な成形金型で、成形体エッジ部分における伸度は最低でもフィルム伸度100%程度であるため、以下の表のように評価した。
評価
◎:伸度100%から1000%までの範囲でクラックが見られなかった。
○:伸度100%から300%までの範囲でクラックが見られなかったが、その後1000%までの範囲でクラックが発生した。
×:伸度100%時にクラックが見られた。
(ハロゲン含有)
構成体(F)のICP発光分光分析を行い、ハロゲンの含有の有無を確認した。
(黄変)
構成体(F)を恒温恒湿槽にて、40℃、80%RH、240時間処理した構成体(F)と、未処理の構成体(F)のフィルム面について外観比較を行った。以下の評価表を元に、パネラー20名の平均点を算出した。
<評価表>
3:ほとんど変化が見られない。
2:やや変色している。
1:黄変している。
評価
◎: 3以下2.5以上
○:2.5未満1.5以上
×: 1.5未満
(共重合ポリエステル)
テレフタル酸ジメチル57.8重量部、エチレングリコール10.3重量部、1、4−ブタンジオール30.9重量%、テトラブチルチタネート0.04重量部、IRGANOX1010FP0.016重量部を仕込み、150℃から210℃まで昇温しながらエステル交換反応せしめた後、トリメチルリン酸0.042重量部を添加し、その10分後にテトラブチルチタネートを0.055重量部、IRGANOX1010FP0.022重量部、あらかじめ50℃に加熱したダイマー酸(PRIPOL1098:ユニケマ社製)29.6重量部/1,4−ブタンジオール16.1重量部/エチレングリコール5.4重量部混合スラリーを添加した。缶内温度が210℃に復帰後、30分間攪拌してから重合反応槽へ移行し、重縮合反応を行った。最終的に245℃、1.33×10Pa以下で重縮合反応を行い、ダイマー酸15モル%の共重合ポリエステルを得た。260℃における溶融粘度は、1800poise(ずり速度140sec−1)であった。
(脂肪族ポリエステル)
ポリブチレン・サクシネート・アジペート重合体として、ビオノーレ(昭和高分子社製)を使用した。
(ポリエチレンテレフタレート)
テレフタル酸ジメチル95.3重量部、エチレングリコール54.7重量部の混合物に、酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化二アンチモン0.03重量部を添加して、加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、該エステル交換反応生成物に、リン酸トリメチル0.026重量部を添加した後、重縮合反応槽に移送した。次いで、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1.33×10Pa以下の減圧下、290℃で常法により重合し、ポリエチレンテレフタレートを得た。
(ポリ乳酸織布)
結晶性高粘度のポリ乳酸樹脂を、溶融押出機に投じ、直径1mmの穴が50箇所に空いた多孔ダイから押出した。ダイから線状に押出されたポリ乳酸樹脂を乾燥窒素で冷却し、巻き取り機に速度差をつけ、長手方向に3倍延伸した。次に、流れ方向と垂直方向に円運動する巻取り機用いて、さらに長手方向に3倍延伸しつつ、撚りをかけながら巻取り、ポリ乳酸繊維とした。繊維の太さは、70DTXであった。該ポリ乳酸繊維を、ニット編みで、幅1m、長さ10mの布に加工し、ポリ乳酸織布を得た。
(PET織布)
高粘度のポリエチレンテレフタレート樹脂を、溶融押出機に投じ、直径1mmの穴が50箇所に空いた多孔ダイから押出した。ダイから線状に押出されたポリ乳酸樹脂を乾燥窒素で冷却し、巻き取り機に速度差をつけ、長手方向に3倍延伸した。次に、流れ方向と垂直方向に円運動する巻取り機用いて、さらに長手方向に3倍延伸しつつ、撚りをかけながら巻取り、PET繊維とした。繊維の太さは、70DTXであった。該ポリ乳酸繊維を、ニット編みで、幅1m、長さ10mの布に加工し、PET織布を得た。
(ポリ乳酸発泡体)
結晶性高粘度のポリ乳酸樹脂99.5重量%とカルボジイミド変性イソシアネート(日清紡製「LA−1」)を0.5重量%を、超臨界炭酸ガス注入装置を備えたタンデム押出機に投じ、押出機内で溶融したシリンダ部分に、超臨界の液化二酸化炭素を注入した。次に短管で連結されたもう片方の押出機にて冷却しながら、スリット幅1mmの円形ダイから円柱状に押出発泡した。得られた円柱状の発泡シートに流れ方向にスリットし、展開することで、幅40cm、長さ5m、発泡倍率30倍のポリ乳酸発泡体を得た。
(ウレタン発泡体)
市販のウレタンフォームを用いた。
(接着層)
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを混合し、トルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、樹脂量が10g/mとなるように塗布した。
〔実施例1〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された共重合ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0048】
得られたポリエステルフィルム(A)に、接着層を塗布後、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたポリ乳酸織布を巻きだし、フィルム状に押出された共重合ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0049】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、接着層を塗布後、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔実施例2〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された共重合ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0050】
得られたポリエステルフィルム(A)に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.4μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記ポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
ポリ乳酸織布の片面と、得られたポリエステルフィルム(C)の層(B)ではない片面を、電熱ヒータで110℃、2分間加熱し、加熱した面同士を重ねて金属ロールでニップし、熱接着させ、厚み350μmの構成体(F)を作製した。
〔実施例3〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された共重合ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0051】
得られたポリエステルフィルム(A)に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.6μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
〔実施例4〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された脂肪族ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、5℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み200μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0052】
得られたポリエステルフィルム(A)に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたポリ乳酸織布を巻きだし、フィルム状に押出された脂肪族ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0053】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔実施例5〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された共重合ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0054】
得られたポリエステルフィルム(A)に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたポリ乳酸織布を巻きだし、フィルム状に押出された共重合ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0055】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔実施例6〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された共重合ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0056】
得られたポリエステルフィルム(A)に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.8μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度230℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、共重合ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたPET織布を巻きだし、フィルム状に押出された共重合ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0057】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.8μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔実施例7〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された脂肪族ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、5℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み200μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0058】
得られたポリエステルフィルム(A)に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.5μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたポリ乳酸発泡体を巻きだし、フィルム状に押出された脂肪族ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0059】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.5μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔実施例8〕
・ポリエステルフィルム(C)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出された脂肪族ポリエステルを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0060】
得られたポリエステルフィルム(A)に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.2μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルム(C)を得た。
・上記同等のポリエステルフィルム(A)、層(B)を用いた構成体(F)の製造
押出温度200℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、脂肪族ポリエステルを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたPET織布を巻きだし、フィルム状に押出された脂肪族ポリエステルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0061】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、アクリル系樹脂であるDEFFENSAをトルエン溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.2μmとなるよう塗布し、280nmの紫外線を10秒間照射し、樹脂を硬化させ、構成体(F)を得た。
〔比較例1〕
・ポリエステルフィルムの製造
押出温度280℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、ポリエチレンテレフタレートを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出されたポリエチレンテレフタレートを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0062】
得られたポリエステルフィルム(A)に、接着層を塗布後、KF−96(信越化学社製)をトルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルムを得た。
・上記同等のポリエステルフィルムを用いた構成体の製造
押出温度280℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、ポリエチレンテレフタレートを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。そこで、ロール状に巻いたポリ乳酸織布を巻きだし、フィルム状に押出されたポリエチレンテレフタレートに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリエステルフィルム積層体を作製した。
【0063】
得られたポリエステルフィルム積層体のフィルム面に、接着層を塗布後、KF−96(信越化学社製)をトルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、樹脂を硬化させ、構成体を得た。
〔比較例2〕
・ポリウレタンフィルムの製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工により厚み300μmのポリウレタンフィルムを得た。
【0064】
得られたポリウレタンフィルムに、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリウレタンフィルムを得た。
・上記同等のポリウレタンを用いたポリウレタン構成体の製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工の際に、ウレタン発泡体をライン上で熱融着させ、厚み350μmのポリウレタン構成体を得た。得られたポリウレタン構成体のポリウレタンフィルム面に、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリウレタン構成体を得た。
〔比較例3〕
・ポリウレタンフィルムの製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工により厚み300μmのポリウレタンフィルムを得た。
【0065】
得られたポリウレタンフィルムに、KF−96(信越化学社製)をトルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み2.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリウレタンフィルムを得た。
・上記同等のポリウレタンフィルムを用いたポリウレタン構成体の製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工の際に、ウレタン発泡体をライン上で熱融着させ、厚み350μmのポリウレタン構成体を得た。得られたポリウレタン構成体のポリウレタンフィルム面に、KF−96(信越化学社製)をトルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み2.0μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて90℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリウレタン構成体を得た。
〔比較例4〕
・ポリエステルフィルムの製造
押出温度280℃に設定したベント式異方向二軸押出機(ベント口2ヶ所、L/D=70)に、ポリエチレンテレフタレートを投入し、スリット間隙1mmのTダイ口金からフィルム状に押出した。押出されたポリエチレンテレフタレートを、吸引チャンバーを用い、スリットエアー吹き付け方式により、55℃に設定された鏡面ドラムで冷却固化し、厚み300μmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0066】
得られたポリエステルフィルム(A)に、KF−96(信越化学社製)をトルエンに溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み0.5μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて90℃、1分間で樹脂を硬化させ、ポリエステルフィルムを得た。
〔比較例5〕
・軟質ポリ塩化ビニルフィルムの製造
塩ビモノマーと可塑剤にフタル酸ジイソデシルを用い、カレンダ加工により、厚み300μmの軟質ポリ塩化ビニルフィルムを得た。得られた軟質ポリ塩化ビニルフィルムに、接着層を塗布後、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.2μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、軟質ポリ塩化ビニルフィルムを得た。
・上記同等の軟質ポリ塩化ビニルフィルムを用いた軟質ポリ塩化ビニル構成体の製造
塩ビモノマーと可塑剤にフタル酸ジイソデシルを用い、カレンダ加工する際に、ロール状に巻いたポリ乳酸織布を巻きだし、フィルム状に加工された軟質ポリ塩化ビニルに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmの軟質ポリ塩化ビニル積層体を得た。得られた軟質ポリ塩化ビニル積層体のポリ塩化ビニルフィルム側に、接着層を塗布後、ウレタン系樹脂であるCRISVON NY−360を(大日本インキ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド/トルエンの60/40(重量比)の溶剤に溶解し、ハンドコーターを用い、溶剤を除いた固形分の厚み1.2μmとなるよう塗布し、熱風オーブンにて80℃、1分間で樹脂を硬化させ、軟質ポリ塩化ビニル構成体を得た。
〔比較例6〕
・ポリウレタンフィルムの製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工により厚み300μmのポリウレタンフィルムを得た。
・上記同等のポリウレタンフィルムを用いたポリウレタン構成体の製造
ジエチレングリコールとフェニルジイソシアネートを原料とし、カレンダ加工の際に、ロール状に巻いたPET織布を巻きだし、フィルム状に加工されたポリウレタンに接触させ、同一方向に流れるように調整した。それらを、二つの金属ロールでニップし熱融着させ、厚み350μmのポリウレタン積層体を得た。
【0067】
【表1−1】

【0068】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、
ポリエステルフィルム(A)の片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有し、
ポリエステルフィルム(A)の層(B)を有さない他面に、支持体(E)を有することを特徴とする、構成体(F)。
【請求項2】
前記支持体(E)が、布又は発泡シートであることを特徴とする、請求項1に記載の構成体(F)。
【請求項3】
前記ウレタン系樹脂が、ウレタン結合のみからなる樹脂、及び/又は、ウレタン結合と尿素結合からなる樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の構成体(F)。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂が、フッ素を含有するアクリル系樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の構成体(F)。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルム(A)が、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の構成体(F)。
【請求項6】
前記層(B)の厚みが0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の構成体(F)。
【請求項7】
弾性率が5MPa以上500MPa以下であり、かつ、破断伸度が300%以上2000%以下であるポリエステルフィルム(A)と、
(A)の少なくとも片面にウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂の層(B)を有することを特徴とする、ポリエステルフィルム(C)。
【請求項8】
前記ウレタン系樹脂が、ウレタン結合のみからなる樹脂、及び/又は、ウレタン結合と尿素結合からなる樹脂であることを特徴とする、請求項7に記載のポリエステルフィルム(C)。
【請求項9】
前記アクリル系樹脂が、フッ素を含有するアクリル系樹脂であることを特徴とする、請求項7に記載のポリエステルフィルム(C)。
【請求項10】
前記ポリエステルフィルム(A)が、長鎖脂肪族ジカルボン酸共重合ポリエステルを含むことを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載のポリエステルフィルム(C)。
【請求項11】
前記層(B)の厚みが0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載のポリエステルフィルム(C)。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のポリエステルフィルム(C)の片面に、支持体(E)を貼り合わせてなる構成体(F)。
【請求項13】
前記支持体(E)が、布又は発泡シートであることを特徴とする、請求項12に記載の構成体(F)。

【公開番号】特開2009−78489(P2009−78489A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250813(P2007−250813)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】