説明

構成部品のコーティング

【課題】構成部品のコーティングを提供する。
【解決方法】本発明は、構成部品の表面、好ましくは金属表面のコーティングのための方法のほか、構成部品のコーティング、詳しくは、腐食耐性コーティングに関し、ここでコーティング溶液が、好ましくは、構成部品の金属表面上へ表面のコーティングのために塗布されており、または塗布される。
さらに、本発明は、コーティング溶液の使用に関する。この方法は、有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液を表面上へ塗布し、かつ更なるステップにおいて塗布したポリマー溶液を乾燥させ、表面上にコーティングを形成させることによって展開される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部品の表面、好ましくは金属表面をコーティングするための方法のほか、構成部品のコーティング、詳しくは、腐食耐性コーティングに関し、ここでコーティング溶液が、好ましくは、構成部品の金属表面上へ表面のコーティングのために塗布されており、または塗布される。さらに、本発明は、コーティング溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムおよびその合金が軽金属および卑金属の構成材料であることが周知である。したがって、マグネシウムおよびその合金はそれによりきわめて強く腐食の傾向がある。
【0003】
マグネシウムおよびマグネシウム表面の腐食反応は、変換層もしくは反応層によって、かつ無機または有機コーティングによって変化されうる。例えば、電解質プラズマにおける陽極酸化または基板表面が結果として生じる方法においては、電気絶縁作用および優れた摩耗抵抗を有するマグネシウムオキシドおよび/またはリン酸塩の固定および緻密層が製造される。しかし、これらの層は通常、長期間の腐食保護を保証するために、有機コーティング(トップ・コート(Top-Coat))によるシーリングを追加的に必要とする。さらに、これらの方法は比較的費用がかかる。
【0004】
マグネシウムは空気には優れた腐食耐性を有するが、塩化物、硫酸、炭酸、および硝酸含有溶液は安定ではない。マグネシウム合金はpH値が11を超えると初めて安定した緻密層を形成し、アルミニウムが安定した緻密層を発生させる技術的に関連した4.5〜8.5のpH範囲では、有効かつ障害に際して自然アニーリングする保護層は存在しない。
【0005】
さらに、マグネシウムは最も基礎の構成材料であり、一方では、ミクロガルバニック腐食の結果、詳しくは、Fe、Ni、およびCo含有汚染物によって引き起こされる強い溶解の傾向があり、かつ他方では、マグネシウム合金において、第2の貴重な段階または封入による内部ガルバニック腐食をもたらす。マグネシウムはしばしば貴重な材料と結合して使用されるため、腐食媒体における使用および/または水の存在に際して、構成部品のコーティングが接触腐食の回避のためにきわめて重要である。
【0006】
マグネシウム表面の腐食および摩耗反応は、使用および投入に応じて、変換もしくは反応層によって、かつ無機または有機コーティングによって変化されうる。
【0007】
例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7において、マグネシウムおよびその合金の腐食保護のための多くの方法または措置が記載されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/10063872Al号明細書
【特許文献2】欧州特許第0949353BI号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0067057Al号明細書
【特許文献4】米国特許第4,973,393号明細書
【特許文献5】米国特許第5,993,567号明細書
【特許文献6】国際公開第99/02759Al号パンフレット
【特許文献7】独国特許発明第19913242C2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来技術に基づき、本発明の課題は、構成部品、詳しくは、マグネシウム材料、またはマグネシウムもしくはマグネシウム合金の構成部品、またはマグネシウム含有表面を有する構成部品のための有利かつ簡単な腐食耐性およびクロムを含まないコーティングを提供することであり、ここでコーティングは高温でも安定でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、構成部品の表面、好ましくは金属表面をコーティングするための方法によって解決されるが、これはコーティング溶液として有機ポリオキサゾール(Polyoxazol)含有ポリマー溶液を表面上に塗布し、かつ更なるステップにおいて塗布したポリマー溶液を乾燥させ、表面上にコーティングを形成させることによって展開される。
【0011】
本発明は、構成部品、詳しくは、マグネシウム製の構成部品のためのポリオキサゾールベースの、有機コーティングによって、腐食耐性コーティングもしくは腐食コーティングが意図されるという考えに基づく。提案された方法によって、簡単な、すなわち費用のかからないコーティング方法が提案されるが、これはさらに経済的である。構成部品は、好ましくは、マグネシウム材料で製造され、製造もしくは塗布されたコーティングによって、構成部品もしくはマグネシウムまたはその合金のためのポリマーベースの、クロムを含まない腐食保護が提供される。好ましくは、コーティング溶液もしくはポリマー溶液は、非プロトン性有機溶液において可溶性であるフッ素含有ポリオキサゾールを含有する。
【0012】
したがって、本発明によれば、金属構成部品上、好ましくは、構成部品のマグネシウム表面上に腐食コーティングが提供されるが、ここで非プロトン性有機ポリオキサゾール溶液を表面に塗布し、更なるステップにおいて、塗布したポリマー溶液を乾燥させ、1つのコーティングまたは1つもしくは複数のコーティング層が表面上に形成される。
【0013】
これには、有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液の表面への塗布前にポリオキサゾールポリマーおよび/またはポリオキサゾールコポリマーが、有機、好ましくは、非プロトン性溶液に溶解され、ポリマー溶液が生じることが意図されている。ポリマー溶液における溶媒によって、金属表面における、詳しくは構成部品のマグネシウムまたはマグネシウム合金表面の腐食が回避される。さらに、非プロトン性溶媒によって、酸およびプロトン性溶媒が回避される。
【0014】
さらに、ポリオキサゾールがポリマー溶液において使用されると、構成部品もしくはマグネシウム材料の表面上に製造されたコーティングの低い透水性が達成される。提案された本発明によるポリマーコーティングには、さらに、クロムを含まないコーティング組成、もしくは金属表面、詳しくは、マグネシウム、およびその合金のためのコーティングが提案されるという利点がある。
【0015】
ポリオキサゾールポリマーまたはコポリマーを有するクロムを含まない腐食耐性コーティング溶液によって、溶媒、水、湿度はもちろん、引掻き、すなわち機械的損傷、および金属表面およびその合金の腐食に対するコーティングされた表面の耐性は明らかに改善される。
【0016】
さらに、ポリマー溶液において、好ましくは、伝導性または非伝導性の充填剤もしくはフィラーが溶解され、および/または、好ましくは、インシチュ(in situ)で発生され、および/または懸濁され、またはされていることが提案されている。この方法ステップは、詳しくは、ポリオキサゾールを有するポリマーまたはコポリマーが有機溶媒において溶解されていると実施される。
【0017】
持続的な腐食保護を確実にするために、構成において、構成部品の表面がポリマー溶液の塗布前に処理され、詳しくは、洗浄され、またはされていることが提案される。
【0018】
さらに、この方法は、構成部品の表面上に塗布されたポリマー溶液もしくはコーティングが100℃未満、好ましくは、80℃未満の温度で乾燥される更なる方法ステップによって特徴づけられる。これによって、構成部品もしくはマグネシウム材料の表面上へ塗布され、注がれたポリマー溶液または懸濁液(充填剤とともに)は表面上のコーティングフィルムに形成される。
【0019】
さらに、ポリオキサゾール含有ポリマー溶液が、ポリオキサジアゾールおよび/またはポリトリアゾールおよび/またはポリ(オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−トリアゾール)を有すると有利である。
【0020】
詳しくは、ポリマーは次の構造
【化3】

[式中、XはOまたはNであり、R”はH、ハロゲン原子、または有機基であり、R、R’は有機基でありうる。詳しくは、R、R’、および/またはR”の有機基が、吸水を低下させるためにフッ素原子を有するポリオキサゾールであると好ましい]を有する。
【0021】
ポリマー溶液におけるポリオキサゾールは、詳しくは、2個以上の窒素原子を有する少なくとも1つの共役5員複素環を含有し、詳しくは、窒素原子は共役環において並んで結合され、または別の原子から分離されている。
【0022】
好ましくは、ポリマーは次の構造
【化4】

[式中、Rは、好ましくは、フッ素原子を含有する1〜40個の炭素原子を有する基であり、
Yは、次の式
【化5】

[式中、R’は1〜40個の炭素原子を有する基であり、ここでR”は水素原子または1〜40個の炭素原子を有する基である。]の少なくとも1つもしくは複数の基である]を有する。
【0023】
ポリオキサゾールは、ブロックポリマー(ジブロックまたはトリブロック)の形態、静的コポリマー、周期的コポリマー、および/または交互コポリマーの形態で出現しうるが、ここでnおよびmは自然数である。
【0024】
さらに、ポリマー溶液またはポリマーが少なくとも1つの酸基で官能化された少なくとも1つのポリオキサゾールを有すると好ましい。
【0025】
別の構成によれば、本発明によるポリマー溶液は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリル、ポリエーテル、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリジエン、ヒドロキシ−ポリマー、ポリアンヒドリド、ポリシロキサン、ポリヒドラジド、ポリスルホン、ポリビニル、および上記の物質の混合物、および/または、それから誘導されるコポリマーの群からのオリゴマーまたはポリマーを有する。詳しくは、別の構成によれば、オリゴマーまたはポリマーは1つの機能性もしくは複数の機能性酸基によって官能化されており、または官能化される。さらに、充填剤またはフィラーが、好ましくは、官能化された二酸化ケイ素、および/または、好ましくは、ゾルゲル法からの官能化された製品、および/または、好ましくは、官能化されたアルミニウム、および/または、好ましくは、官能化されたチタン、および/または、好ましくは、官能化されたモンモリロナイト、および/または、好ましくは、官能化されたケイ酸塩であると有利である。
【0026】
透水性を低下させるために、詳しくは、非伝導性充填剤またはフィラーがポリマー溶液へ取り入れられる。一般に、ポリマー溶液における充填剤もしくはフィラーの体積比が増大すると浸透率が減少する。同時に、コーティングの熱的および/または機械的特徴がそれによって改善される。
【0027】
充填剤は、好ましくは、官能化された炭素ナノチューブ、および/または、好ましくは、分子ふるいされる炭素、および/またはグラファイト、および/または熱分解ポリオキサゾール粒子であると特に好ましい。これによって、表面上のコーティングの腐食耐性がさらに改善される。
【0028】
さらに、充填剤の比率はポリマー溶液において0.5重量%より多く、好ましくは、5重量%より多く、特に好ましくは、20重量%より多いと、さらに有利である。これに関して、ポリマー層もしくはポリマー溶液における充填剤の粒子が十分に溶解されており、表面の均一なコーティングが達成されると好ましい。コーティング溶液もしくはコーティングの構成部品の金属表面との付着を高めるために、コーティングもしくは塗布されたコーティング層の厚さが、少なくとも1μmより厚い、好ましくは、10μmより厚い、詳しくは、50μmより厚いと好ましい。
【0029】
さらに課題は、構成部品のコーティング、好ましくは、腐食耐性のクロムを含まないコーティングによって解決され、ここでコーティング溶液が、コーティング層として表面をコーティングするために、好ましくは、構成部品の金属表面に塗布されており、または塗布されるが、これは、コーティング溶液が有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液であることによって展開される。
【0030】
詳しくは、有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液は乾燥されており、または乾燥され、構成部品もしくはマグネシウム材料の表面上のコーティングが形成され、または形成されている。有利には、ポリマー溶液において、ポリオキサゾールポリマーおよび/またはポリオキサゾールコポリマーが、有機、好ましくは、非プロトン性溶液中に溶解されており、または溶解され、ポリマー溶液が生じ、または得られることである。これに関して、ポリマー溶液において、好ましくは、伝導性または非伝導性の充填剤が溶解され、および/または、好ましくは、インシチュで発生され、および/または懸濁され、またはされているとさらに有利である。
【0031】
さらに、構成部品の表面はポリマー溶液の塗布前に処理される、詳しくは、洗浄される、または、されていることが意図されている。表面上のコーティングの塗布後には構成部品の表面上に塗布されたポリマー溶液またはコーティングが100℃未満、好ましくは、80℃未満の温度で乾燥され、またはされている。
【0032】
コーティングのさらに有利な構成は、明確に参照される本発明による方法のための上記の実施形態からもたらされる。
【0033】
課題はさらに、構成部品のコーティングのためのコーティング溶液の使用によって解決されるが、ここで構成部品のコーティングは前述されているように構成されている。繰返しを回避するために、先の実施形態が明確に参照される。
【0034】
本発明による方法および本発明によるコーティングによって、構成部品およびマグネシウム材料のための有効かつ経済的な腐食保護が達成され、ここでコーティング方法は簡単かつ経済的である。さらに、構成部品上に塗布されたコーティングは、コーティングまたはコーティング層もしくは腐食コーティング層が高温でも安定であるという利点を有し、コーティングの製造は、例えば、金属の薄板の変形過程の前に可能であり、ここでさらに変形過程の前および最中に腐食保護が存在する。
【0035】
さらに、適切な試薬もしくは材料の添加によって、機械的損傷に際してコーティングのアニーリングを促進することが可能である。詳しくは、フッ素含有ポリマーもしくはフッ素含有ポリマー溶液(コーティング溶液)を使用し、これにより低い吸水がもたらされる。
【0036】
以下、本発明を一般に発明の意図を限定することなく実施例によって例示的に説明するが、これによって本発明の範囲もしくは適正が限定されることはない。
【実施例】
【0037】
実施例1:ポリマー合成
ポリ(2,2−ビス(4−フェニル)ヘキサフルオロプロパン−1,3,4−オキサジアゾール)を、例えば、刊行物ゴメス(Gomes)ら、Polymer 42(2001年)、851−865頁に記載されているように合成した。これにより最適化されたポリオキサゾール合成が実施された。4,4’−ジカルボキシフェニルヘキサフルオロプロパン(99%、アルドリッチ(Aldrich))および硫酸ヒドラジン(>99%、アルドリッチ(Aldrich))の3時間、160℃での反応後、反応媒体を5%水酸化ナトリウム(99%、ベテック(Vetec))の含量を有する水中に注ぎ、ポリマーを分離した。このポリマー懸濁液のpH値を文献(ゴメス(Gomes)ら、Polymer 45(2004年)、4997−5004頁を参照)に記載されているように調節した。
【0038】
ポリマーの化学構造は以下に示されている。すなわち
【化6】

17(370):計算(%)C55.1、H2.2、N7.6;発見C55.3、H3.2、N6.6。
【0039】
したがって、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって測定される200,000g/モルに対応する平均分子量を有する溶媒NMP、DMSO、CFCOOH、CHCl、THFにおいて可溶性である89%の収率を有するポリオキサゾールが達成された。
【0040】
このために、シリアルナンバーHC286および1515161、および8×300mmの大きさのユーロゲルカラムSEC10,000およびPSSグラム100、1,000を備えたビスコテク(Viscotek)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用した。ビスコテク(Viscotek)のSEC装置を使用し、ポリマーの平均分子量を測定した。測定を309〜944,000g/モルの平均分子量を有するポリスチレン標準を使用して行った。DMAc中0.05M臭化リチウムを有する溶液を使用した。
【0041】
実施例2:マグネシウムのコーティング
AM50マグネシウム合金の表面へのろ過後にNMP中4重量%の濃度のポリマー溶液を注ぐことによって均質コーティングを調製し、60℃で24時間にわたって乾燥させた。ポリマー溶液およびコーティングの塗布前にマグネシウム合金の試料を粒度が2,500までのSiCで研磨し、蒸留水中で洗浄し、アセトン中で超音波洗浄した。残りの溶媒を除去するためにコーティングされたマグネシウムを真空オーブンにおいて80℃で24時間にわたって取り入れた。ポリマーコーティングの最終的な厚さは約10μmであった。
【0042】
実施例3:フィルムの調製
事前にろ過されたNMP中4重量%の濃度のポリマー溶液から均質なフィルムをテフロンコーティングされた表面へ60℃で注いだ。フィルムを24時間乾燥させ、次いでプレートからわずかに除去した。次いで、フィルムを真空オーブンにおいて80℃で24時間乾燥させ、溶媒の残留物を除去した。フィルムの最終的な厚さは約10μmであった。
【0043】
吸水率の測定
フィルムを80℃で一夜、測定を行う前に乾燥させた。乾燥フィルムの重量の測定後、試料を0.1M NaCl溶液中に66時間、室温(21℃)で浸漬した。ハイブリダイズしたフィルムの重量の測定前にペーパーハンドタオルで拭くことによってフィルムの表面から水を除去した。吸水率を次式によって計算した。すなわち
【数1】

式中、重量/乾燥および重量/湿潤は乾いたおよび湿った試料の重量である。
【0044】
POD6Fフィルムにおいては、66時間後に水の吸収は確認されなかった。これにより、炭素原子とフッ素原子との化学結合はきわめて強い。フッ素が分子の一部である場合、これは、例えば、水などの別の分子をはじき、別の分子がフッ素原子を含有する場合も、はじく。
【0045】
実施例4:インピーダンス分光法
試料を2時間、36時間、および72時間にわたって0.1M NaCl溶液中にさらした後に、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)による検査を行った。EIS実験を0.001Hz〜30kHzの周波数範囲で行ったが、ここで周波数分析器が使用されている(ファブリカート・ジル(Fabrikat Gill)AC、ACMインスツルメンツ(Instruments)、英国)。
【0046】
図1および2において、コーティングされていない金属面もしくは試料(図1)およびコーティングされた試料(図2)のインピーダンス分光法の曲線が示されている。
【0047】
ポリオキサゾールでコーティングされた試料(図2)は、処理されていない試料(図1)と比べ腐食耐性における明らかな改善を示している。ポリオキサゾールによってフィルム加工された試料の腐食耐性は、むき出しの金属表面よりも約5倍高い。腐食耐性はコーティングされていない合金については時間とともに減少する。36時間の浸漬浴後、コーティングされていない試料における分極抵抗は1.31×10Ωcmであるが、ポリオキサゾールによりコーティングされたマグネシウム合金試料のコーティング抵抗は36時間後に8.0×10Ωcmの値(図2)で一定に保持された。
【0048】
実施例5:電気化学的分極
コンピュータ制御ポテンシオシタット/ガルバノスタットを使用し、かつ作用電極として試料、カウンター電極としてプラチナガーゼ、および基準電極としてAg−AgCl電極を有する電気化学的腐食セルとともに電気化学的分極の検査を実施した。実験を0.1M NaCl溶液において1mV/秒のスキャン速度で行った。
【0049】
0.1M NaCl中のむき出しの、すなわちコーティングされていない金属およびコーティングされた試料(POD−6F)の分極曲線は図3に示されている。ポリオキサゾールコーティングされた試料は、コーティングされていない金属と比べ腐食耐性における顕著な改善を示す。ポリオキサゾールコーティングされた試料の腐食電流密度は、56×10−3mA/cmから1.4×10−6mA/mへ減少した。
【0050】
さらに、ポリオキサゾールコーティングされた試料は、腐食電位を超える1,000mVに至るまで電位の崩壊を示さない。これにより腐食環境における試料のコーティングの高い安定性が証明される。
【0051】
表面上のポリマー層の腐食耐性は、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)および0.1M NaCl溶液中の分極検査によって行われた。分極検査は、ポテンシオスタットもしくはガルバノスタット電圧電流密度曲線の受容として示されている。いわゆるボード線図において周波数の対数を超えるインピーダンス値|Z|の対数として適用されているEIS検査の結果(図1および2を参照)、および受容された電圧電流密度曲線(図3)は、本発明によるコーティングされたマグネシウム基板の腐食耐性の顕著な改善を示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コーティングされていないマグネシウム合金の電気化学的インピーダンススペクトルを示す図である。
【図2】コーティングされたマグネシウム合金の電気化学的インピーダンススペクトルを示す図である。
【図3】コーティングされた、かつコーティングされていないマグネシウム合金の分極曲線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部品の表面、好ましくは構成部品の金属表面をコーティングするための方法において、有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液を上記表面に塗布し、かつ更なるステップにて前記塗布したポリマー溶液を乾燥させて、前記表面上にコーティングを形成させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液を前記表面へ塗布する前に、ポリオキサゾールポリマーおよび/またはポリオキサゾールコポリマーを有機溶液、好ましくは、非プロトン性溶液に溶解して、ポリマー溶液が生じるようにすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー溶液において、好ましくは伝導性または非伝導性の充填剤が溶解され、および/または、好ましくはインシチュで発生され、および/または懸濁され、またはされていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記構成部品の表面を,ポリマー溶液の塗布前に処理され、特に洗浄され、またはされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記構成部品の表面上に塗布されたポリマー溶液を、100℃未満、好ましくは80℃未満で乾燥させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー溶液における前記ポリオキサゾールが2個以上の窒素原子を有する少なくとも1つの共役5員複素環を含有し、その際、とりわけ前記窒素原子が共役環にて並んで結合されている、または別の原子から分離されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが次の構造
【化1】

[式中、Rは、好ましくはフッ素原子を含有する1〜40個の炭素原子を有する基であり、
Yは、次の式
【化2】

[式中、R’は1〜40個の炭素原子を有する基であり、ここでR”は水素原子または1〜40個の炭素原子を有する基である]の少なくとも1つもしくは複数の基である]を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオキサゾール含有ポリマー溶液が、ポリオキサジアゾールおよび/またはポリトリアゾールおよび/またはポリ(オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−トリアゾール)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー溶液または前記ポリマーが少なくとも1つの酸基で官能化された少なくとも1つのポリオキサゾールを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー溶液が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリル、ポリエーテル、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリジエン、ヒドロキシ−ポリマー、ポリアンヒドリド、ポリシロキサン、ポリヒドラジド、ポリスルホン、ポリビニル、および上記物質の混合物、および/または、それらから誘導されるコポリマーの群からのオリゴマーまたはポリマーを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記オリゴマーまたはポリマーが1つの機能性もしくは複数の酸基によって官能化されている、またはされることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤が、好ましくは官能化された二酸化ケイ素、および/または、好ましくは、ゾルゲル法からの官能化された製品、および/または、好ましくは官能化されたアルミニウム、および/または、好ましくは官能化されたチタン、および/または、好ましくは官能化されたモンモリロナイト、および/または、好ましくは官能化されたケイ酸塩であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記充填剤が、好ましくは官能化された炭素ナノチューブ、および/または、好ましくは分子ふるいされる炭素、および/またはグラファイト、および/または熱分解ポリオキサゾール粒子であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記充填剤の比率が、ポリマー溶液において0.5重量%より多く、好ましくは、5重量%より多く、特に好ましくは、20重量%より多いことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングの厚さが、少なくとも1μmより厚く、好ましくは、10μmより厚く、詳しくは、50μmより厚いことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
構成部品のコーティング、特に腐食耐性コーティングであって、コーティング溶液が、前記構成部品の表面、好ましくは金属表面上へ表面コーティングのために塗布されており、または塗布されるコーティングにおいて、前記コーティング溶液が有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液であることを特徴とするコーティング。
【請求項17】
前記有機ポリオキサゾール含有ポリマー溶液が乾燥され、またはされており、前記表面上のコーティングが形成され、またはされていることを特徴とする請求項16に記載のコーティング。
【請求項18】
前記ポリマー溶液において、ポリオキサゾールポリマーおよび/またはポリオキサゾールコポリマーが有機溶液、好ましくは、非プロトン性溶液に溶解されており、または溶解され、ポリマー溶液が生じることを特徴とする請求項16または17に記載のコーティング。
【請求項19】
前記ポリマー溶液において、好ましくは伝導性または非伝導性の充填剤が溶解され、および/または、好ましくはインシチュで発生され、および/または懸濁され、またはされていることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項20】
前記構成部品の表面をポリマー溶液の塗布前に処理され、特に洗浄され、またはされていることを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項21】
前記構成部品の表面上に塗布されたポリマー溶液を100℃未満、好ましくは80℃未満で乾燥させることを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項22】
前記ポリオキサゾール含有ポリマー溶液が、ポリオキサジアゾールおよび/またはポリトリアゾールおよび/またはポリ(オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−オキサジアゾール−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−オキサジアゾール)および/またはポリ(ヒドラジド−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルスルホン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルケトン−コ−トリアゾール)および/またはポリ(エーテルアミド−コ−トリアゾール)を有することを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項23】
前記ポリマー溶液または前記ポリマーが少なくとも1つの酸基で官能化された少なくとも1つのポリオキサゾールを有することを特徴とする請求項16〜22のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項24】
前記ポリマー溶液が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリル、ポリエーテル、エポキシ、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリジエン、ヒドロキシ−ポリマー、ポリアンヒドリド、ポリシロキサン、ポリヒドラジド、ポリスルホン、ポリビニル、および上記物質の混合物、および/または、それらから誘導されるコポリマーの群からのオリゴマーまたはポリマーを有することを特徴とする請求項16〜23のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項25】
前記オリゴマーまたはポリマーが1つもしくは複数の機能性酸基によって官能化されている、またはされることを特徴とする請求項24に記載のコーティング。
【請求項26】
前記充填剤が、好ましくは官能化された二酸化ケイ素、および/または、好ましくはゾルゲル法からの官能化された製品、および/または、好ましくは官能化されたアルミニウム、および/または、好ましくは官能化されたチタン、および/または、好ましくは官能化されたモンモリロナイト、および/または、好ましくは官能化されたケイ酸塩であることを特徴とする請求項16〜25のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項27】
前記充填剤が、好ましくは官能化された炭素ナノチューブ、および/または、好ましくは分子ふるいされる炭素、および/またはグラファイト、および/または熱分解ポリオキサゾール粒子であることを特徴とする請求項16〜26のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項28】
前記充填剤の比率がポリマー溶液において0.5重量%より多く、好ましくは5重量%より多く、特に好ましくは20重量%より多いことを特徴とする請求項16〜27のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項29】
前記コーティングの厚さが少なくとも1μmより厚く、好ましくは10μmより厚く、特に50μm以上より厚いことを特徴とする請求項16〜28のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項30】
構成部品のコーティングのためのコーティング溶液の使用であって、前記構成部品のコーティングが請求項16〜29のいずれか一項に従って構成されている使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−194687(P2008−194687A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31848(P2008−31848)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504187593)ゲーカーエスエス・フォルシュングスツェントルム ゲーストアハト ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】