説明

構造体の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】基板との密着性を確保し、かつ空域の断面積を確保した微細な構造体を製造方法することが可能な構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の層10aと第2の層10bとがこの順で積層されている基板12を用意する工程と、前記構造体を形成するための型となる型部材の一部である第2の型を前記第2の層10bから形成する工程と、前記第2の型をマスクとして前記第1の層10aをエッチングして、前記型部材の他の一部である第1の型を前記第1の層から形成する工程と、前記第1の型と前記第2の型とを被覆するように前記構造体となる被覆層13を設ける工程と、前記第1の型と前記第2の型とを除去して前記構造体を形成する工程と、を含む構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に微細な構造体を形成する技術は、MEMS分野に応用されている。インクジェットヘッドに使用される液体吐出ヘッドもその1つである。
【0003】
インクジェットヘッドの記録特性をより高度なものにするため、より小さい液滴、より高い駆動周波数、より多い吐出口数といった性能向上に対する技術開発が続けられている。中でも、画質向上のための小液滴化に対する要求は強く、インクの流路やノズルとなる微小な構造物を高精度で作製する技術が求められている。そのような技術としては、精度、工程の簡便さの両面でフォトリソグラフィーが優れており、インクジェットヘッドをフォトリソグラフィーにより作製する方法が特許文献1に開示されている。
【0004】
しかし近年では、画質向上のための小液滴化、高速化のためのノズルの高密度化を実現するため、さらなるノズル構造の微細化が求められており、前述の製法は様々な課題を内包していることがわかってきた。例えば、微細化により流路間隔が狭くなれば、流路形成層と基板との密着性が低下する可能性がある。また一方で、インクの吐出性能を維持するためには液体流路の断面積の大きさの確保も重要になってくる。
【0005】
特許文献2には、このインクジェットヘッドのインク流路断面積を確保するために基板をエッチングにより加工する方法が開示されている。
【0006】
しかし、この製造工程は、複雑な工程と高額な装置を必要とするものであったため、より安価で容易な製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5478606号明細書
【特許文献2】米国特許第7575303号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、基板との密着性を確保し、かつ空域の断面積を確保した微細な構造体を製造方法することが可能な構造体の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、流路形成層と基板との密着性を確保し、かつ必要な流路断面積を有する信頼性の高い液体吐出ヘッド製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
構造体の製造方法であって、
第1の層と第2の層とがこの順で積層されている基板を用意する工程と、
前記構造体を形成するための型となる型部材の一部である第2の型を前記第2の層から形成する工程と、
前記第2の型をマスクとして前記第1の層をエッチングして、前記型部材の他の一部である第1の型を前記第1の層から形成する工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを被覆するように前記構造体となる被覆層を設ける工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを除去して前記構造体を形成する工程と、
を含む構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板との密着性を確保し、かつ空域の断面積を確保した微細な構造体を製造方法することが可能となる。また、簡便な方法で3次元的に流路を形成することができ、さらに、微細なノズル構造においても充分な流路断面積及び流路形成層と基板との密着面積を同時に確保することが可能になる。その結果として、良好な吐出特性と高い信頼性を有する液体吐出ヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための概略工程図である。
【図2】実施例及び比較例における流路パターンの断面を表す概念図である。
【図3】本発明に係るインクジェット記録ヘッドを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して本発明を説明する。なお、以下の説明では構造体の一例として液体吐出ヘッドの流路を例にとり、液体吐出ヘッドの製造方法を例示しながら説明を行う。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、本発明に係る構造体は、加速度センサー等のMEMS分野に応用可能である。
【0013】
本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、流路形成層と基板との良好な密着性及び大きいインク流路断面積を実現でき、良好な吐出特性と高い信頼性を有する液体吐出ヘッドを提供するものである。本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法では、流路壁の厚さを基板付近で厚くした構造を形成する。
【0014】
そのためには、液体流路の型となる部材(型材と呼ぶ)を少なくとも2つ以上の樹脂層で形成する。また、型材のうち最も基板側に位置する層(最下層)は、上層に比較して、用いる溶解液に対して溶解性が高いものを用いる。型材の上層をパターニングした後に、溶解液を用いて最下層を部分的に除去することにより、最下層が上層の下側に彫り込まれ細くなった流路形状を得ることができる。また、上層よりも最下層の寸法が小さくなるように前記最下層の除去を行う。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら示し、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。また、以下の説明では、本発明の適用例として、インクジェット記録ヘッドを例に挙げて説明を行うが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、バイオッチップ作製や電子回路印刷用途の液体吐出ヘッド等にも適用できる。液体吐出ヘッドとしては、インクジェット記録ヘッドの他にも、例えばカラーフィルター製造用ヘッド等も挙げられる。
【0016】
図3は本発明に係るインクジェット記録ヘッドの一例を示す模式的斜視図である。インクジェット記録ヘッド100は、インクを吐出するためのエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子11が設けられた基板12を有している。また、基板12上に設けられ、複数のインクの吐出口14と連通する流路15を形成する構造体としての流路壁部材16と、基板12を貫通して設けられたインクの供給口17を有している。
【0017】
ついで、図1を参照して本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明する。図1は本発明に係るインクジェット記録ヘッドの製造方法を説明するための切断面図であり、図3のA−A’を通り、基板12に垂直な位置で切断した場合の各工程での切断面を表わす模式的切断面図である。
【0018】
図1(a)は、インクを吐出するためのエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子11が設けられた基板12上に、インク流路の型材となる樹脂を設けた状態を示している。図1(a)では、後工程で用いる溶解液に対して比較的溶解性の低い樹脂からなる第1の層(上層:10a)と、比較的溶解性の高い、樹脂からなる第2の層(下層:10b)からなっている。なお、この上層も下層も、複数の層で形成することは可能であるが、ここでは簡略化のために2層の積層構造の場合を図示する。
【0019】
ここで、上層としては、パターニング性があること、後工程での除去が容易であることなどの要求特性のために、例えばポジ型レジスト(ポジ型感光性樹脂)を用いる。ポジ型レジストとしては、特に耐溶剤性が高いことが望ましいため、主鎖分解型のポジ型レジストが好適に用いられる。このようなポジ型レジストとしては、例えば、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)、ポリビニルケトン、ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルから構成される高分子化合物、ポリメチルグルタルイミドなど、カルボニル基を有し250nmから300nmのUV領域に吸収を持つ樹脂を主成分とするものが挙げられる。これらの中でも、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)又はポリメチルメタクリレートが、感度、コントラスト等の観点から好適である。
【0020】
一方、最下層となる樹脂としては、前記上層をパターニングする際に用いる現像液等の溶剤に耐性を有すると同時に、後工程で用いる溶解液に対して上層の樹脂材料よりも溶解しやすい。一般に前述の主鎖分解型のポジ型レジストは、有機溶剤を用いて塗布、現像を行うことから、最下層の樹脂としては、有機溶剤に対しては耐性があり、アルカリ水溶液(アルカリ性溶液)に対して溶解する樹脂が好適である。
【0021】
このようなアルカリ可溶性樹脂とは、主鎖又は側鎖に水酸基、カルボキシル基ホスホン基又はスルホン酸基を有する樹脂であり、例えばクレゾール型ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂若しくはその前駆体、又はポリイミド樹脂若しくはその前駆体等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂の一部が閉環し、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリイミド構造となっているものも挙げられる。このような樹脂としては、一般式(1)で表される構造を有するものが例として挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
ここで、X、Yはいずれも芳香環を有する2〜6価の有機基であり、R1は、水酸基、−OR3であり、R3は炭素数1〜15の有機基である。また、R2は水酸基、カルボキシル基、−OR3、−COOR3であり、m、nは0〜4の整数である。また、複数のR1、R2がある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、R1が水酸基である場合には、塗布後の加熱により閉環し一部がベンゾオキサゾール構造となり、R2がカルボキシル基である場合には一部がイミド構造となる。これらのベンゾオキサゾール構造またはイミド構造は、塗布後の加熱によって生じるが、一部塗布前に閉環、生成していてもよい。
【0024】
また、前記最下層は、ポリアミック酸誘導体を前記基板の上に塗布し、加熱によりポリイミド化したものであることが好ましい。
【0025】
次に、上層10aを露光及び現像によってパターニングして流路の型の一部である第2の型18aを形成する(図1(b))。そして、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液、KOH水溶液等のアルカリ水溶液に浸漬させ、下層10bを部分的に除去することにより、流路の型の他の部である第1の型18bを形成し、図1(c)に示したような流路の型部材18が得られる。第2の型18aから基板1に向かう方向にみて、第2の型18aの内側の領域内に前記第1の型18bが形成されるように下層10bのエッチングを行う。
【0026】
次に、上述のようにして形成した型部材18の上に、該パターンを覆うように被覆層13を形成する(図1(d))。この被覆層は、特に制限されるものではないが、パターニング特性、耐インク性などの観点から、カチオン重合性樹脂、光カチオン重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物が好適である。カチオン重合性樹脂とは、カチオン重合性の基である、ビニル基、環状エーテル基などを有する化合物を含む樹脂を意味する。なかでもエポキシ基、オキセタン基を有する化合物が好適に用いられる。エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル若しくはビスフェノール−F−ジグリシジルエーテル等のビスフェノール骨格を有するモノマーまたはオリゴマーからなるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、又は3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート等の脂環式エポキシ構造を有する樹脂が挙げられる。
【0027】
さらに、以下の構造のように脂環型の骨格の側鎖にエポキシ基を有する樹脂も好適に用いられる。
【0028】
【化2】

【0029】
また、以下の構造のように、ビスフェノールA骨格を有するノボラック樹脂も好適に用いられる。式中のnは1から3の整数であるものが好適であり、特にn=2のものが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
また、オキセタン化合物を含有する樹脂としては、フェノールノボラック型オキセタン化合物、クレゾールノボラック型オキセタン化合物、トリスフェノールメタン型オキセタン化合物、ビスフェノール型オキセタン化合物、ビフェノール型オキセタン化合物等からなる樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂にこれらオキセタン化合物からなる樹脂を併用する場合、硬化反応が促進され好適な場合もある。
【0032】
この被覆層は、前記型部材18を型としてインク流路(液体流路)を形成する。良好なパターニング特性を得るためには、これらカチオン重合性樹脂は重合前の段階で、室温で固体状、あるいは融点が40℃以上であるものが好ましい。また、エポキシ当量(又はオキセタン当量)が2000以下、さらに好ましくは、1000以下の化合物が好適に用いられる。エポキシ当量が2000を超えると、硬化反応の際の架橋密度が低下し、硬化物のTgもしくは熱変形温度が低下したり、基板に対する密着性、耐インク性に問題が生じたりする場合がある。
【0033】
次に、被覆層に、パターン露光及び現像処理を行って開口を形成し、吐出口14を設ける(図1(e))。
【0034】
次に、第1の層18aおよび第2の層18bを除去し、インク流路15を形成する(図1(f))。第1の層18a及び第2の層18bを除去して形成した空間が流路となる。樹脂層を除去する方法としては、例えば、上層に主鎖分解型のポジ型レジストを用いた場合には、その分解に必要なUV照射(光分解型)を行い、その後有機溶剤による現像処理を施す。さらに例えば下層のアルカリ可溶性樹脂を溶解させるため、アルカリ洗浄を施すというように、複数の除去工程により行うことができる。これにより構造体としての流路壁部材16が得られる。
【0035】
最後に、必要な場合には、UV照射、加熱等を施し、流路壁部材の硬化を促進することができる(図1(g))。
【0036】
また、上記の製造工程の途中あるいは終了後、必要に応じて適宜、基板側にインク供給口を形成する。供給口の形成には、異方性エッチングやドライエッチングが用いられる。
【0037】
<実施例>
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0038】
(実施例1)
本実施例では、図1(a)〜(g)に示す手順に従って、インクジェット記録ヘッドを作製した。
【0039】
まず、吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子を形成したシリコン基板上にポリイミド前駆体ProLIFT(商品名、BrewerScience社製)をスピンコートで塗布し、120度のホットプレートで90秒加熱した後、200℃のオーブンで30分間加熱した。加熱後の膜厚は3μmであった。その上にポリメチルイソプロペニルケトンをスピンコートで塗布し、ホットプレートにより120℃で6分加熱し、第1および第2の層を形成した(図1(a))。加熱後のポリメチルイソプロペニルケトン膜の膜厚は13μmであった。尚、前述のポリイミド膜はアルカリ可溶性であり、ポリメチルイソプロペニルケトンは、UV照射により、分解し有機溶剤に対して可溶となる、主鎖分解型のポジ型レジストである。
【0040】
次に、マスクアライナーUX3000(商品名、ウシオ電機社製)にてインク流路のパターン露光および現像を行って第1の型18aを形成した。現像はメチルイソブチルケトン、リンスはイソプロピルアルコールを用いた(図1(b))。
【0041】
その後、TMAH、2.38%水溶液に45秒間浸漬し、純水で洗浄を行うことで、第2の型18aを形成して型部材18を形成した(図1(c))。
【0042】
次いで、表1に記載の組成物を被覆層13として型部材18の上にスピンコートにより塗布し、90℃で3分加熱した(図1(d))。
【0043】
キヤノン製マスクアライナー「MPA600 super」(商品名)を用いて、吐出口のパターン露光を行い、メチルイソブチルケトン(MIBK)で現像し、イソプロピルアルコールでリンスし、吐出口14を形成した(図1(e))。
【0044】
【表1】

【0045】
ノズルの表面をゴム系の保護膜で保護した後、基板裏面にインク供給口(不図示)を形成するためのマスクを適宜配置し、シリコン基板の異方性エッチングにてインク供給口(不図示)を形成した。
【0046】
異方性エッチングが終了後、ゴム系保護膜を除去し、さらに、ウシオ電機製マスクアライナーUX3000にて再び全面にUV照射を行い、第1の型18aを分解させた。
【0047】
次いで、前記基板に超音波を付与しつつ、乳酸メチル中に1時間浸漬し、第1の型18aを溶出させた。次いで、TMAH2.38%水溶液に浸漬し、第2の型18bを除去して流路壁部材16を得た(図1(f))。その後、被覆層を完全に硬化させるために、1時間加熱処理を施した(図1(g))。
【0048】
最後に、インク供給口にインク供給部材を接着してインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0049】
(比較例1)
ポリイミド膜及びポリメチルイソプロペニルケトン膜からなる第1の層の代わりに、ポリメチルイソプロペニルケトン膜からなる第1の層を16μmの厚さで形成した。
【0050】
次に、マスクアライナーUX3000(商品名、ウシオ電機社製)にてインク流路のパターン露光を行った。現像はメチルイソブチルケトン、リンスはイソプロピルアルコールを用いた。
【0051】
次いで、表1に記載の組成物を型部材18の上にスピンコートにより塗布し、90℃で3分加熱した。
【0052】
キヤノン製マスクアライナー「MPA600 super」(商品名)を用いて、吐出口のパターン露光を行い、メチルイソブチルケトン(MIBK)で現像し、イソプロピルアルコールでリンスし、吐出口を形成した。
【0053】
ノズルの表面をゴム系の保護膜で保護した後、基板裏面にインク供給口を形成するためのマスクを適宜配置し、シリコン基板の異方性エッチングにてインク供給口を形成した。
【0054】
異方性エッチングが終了後、ゴム系保護膜を除去し、さらに、ウシオ電機製マスクアライナーUX3000にて再び全面にUV照射を行い、型部材18を形成している第1の層の上層を分解させた。
【0055】
次いで、前記基板に超音波を付与しつつ、乳酸メチル中に1時間浸漬し、第1の層の上層を溶出させた。その後、被覆層を完全に硬化させるために、1時間加熱処理を施した。
【0056】
最後に、インク供給口にインク供給部材を接着してインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0057】
(耐久性評価)
得られたインクジェット記録ヘッドに、キヤノン製インクBCI−6Cy(商品名)を充填し、印字耐久試験を行ったところ、実施例及び比較例のどちらのヘッドにおいても高品位な画像が得られた。しかし、そのヘッドのシリコンチップ部分をBCI−6Cyに浸漬し、プレッシャークッカーテスト(121℃、2気圧、10時間)を行ったところ、実施例1のチップでは大きな変化は見られなかったが、比較例1のチップにおいては、ノズル間の流路壁と基板との間にハガレが観察された。
【0058】
(流路断面積評価)
型部材18の断面図を図2に示す。図2(a)及び(b)はそれぞれ比較例1及び実施例1における型部材18の断面を表す概念図である。図2(b)の状態は図1(c)の状態に相当する。比較例1の構成(ポリメチルイソプロペニルケトン膜からなるパターン19、厚さ16μm、流路パターンのテーパー角θ=83°)で、流路パターンの接地幅を10μmとすると、その流路断面積は、128.6μm2である(図2(a))。なお、パターン19は、露光時の回折光等の影響で上面の面積が下底の面積より小さい形状である。
【0059】
また、実施例1と同様の層構成(ポリイミド層からなる第1の型18b=3μm、テーパー角θ=45°、ポリメチルイソプロペニルケトン膜からなる第2の型18a=13μm、テーパー角θ=83°)として、ポリイミド層の基板接地幅を10μm、ポリメチルイソプロペニルケトン層の最大幅を13μmとした場合(b)の流路断面積は169.2μm2である。なお、第2の型18aは、露光時の回折光等の影響で上面の面積が下底の面積より小さい形状である。
【0060】
このことから本発明の製造方法によれば、一定の接地幅に対して、上層部分の流路幅を広げることが可能であり、流路断面積を大きくすることが可能といえる。
【符号の説明】
【0061】
10a 第1の層
10b 第2の層
13 被覆層
14 吐出口
15 流路
18a 第2の型
18b 第1の型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の製造方法であって、
第1の層と第2の層とがこの順で積層されている基板を用意する工程と、
前記構造体を形成するための型となる型部材の一部である第2の型を前記第2の層から形成する工程と、
前記第2の型をマスクとして前記第1の層をエッチングして、前記型部材の他の一部である第1の型を前記第1の層から形成する工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを被覆するように前記構造体となる被覆層を設ける工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを除去して前記構造体を形成する工程と、
を含む構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の層の厚さは前記第2の層の厚さより小さい請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の型から前記基板に向かう方向にみて、前記第2の型の内側の領域内に前記第1の型が形成されるように前記エッチングを行う請求項1又は2に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の層は主鎖分解型のポジ型感光性樹脂からなり、前記第1の層はポリイミドからなる請求項1乃至3のいずれかに記載の構造体の製造方法。
【請求項5】
アルカリ性の溶液を用いて前記第1の層をエッチングする請求項4に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通した液体の流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
さらに前記被覆層に対して前記吐出口となる開口を形成する工程を有し、
前記第1の型と前記第2の型とが除去されることでできる空間が前記流路となる請求項1乃至5のいずれかに記載の構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253945(P2010−253945A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81461(P2010−81461)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】