説明

構造体及び構造体の製造方法

【課題】 規則化した合金材料が、細孔中に充填されている構造体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 以下の3つの工程を有する。
多孔質層の孔内に合金を構成する第1の材料を充填する第1の工程。該多孔質層上に第2の材料を含み構成される膜を成膜する第2の工程。該膜を有する該多孔質層を熱処理する第3の工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は孔を有する構造体に関するものであり、特に磁気記録媒体の記録層に用いられる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュター(PC)の主記録装置であるハードディスク(HDD)の記録密度の増加は著しく、特に近年、HDDは、PCのみならずデジタル家電や携帯末端用の記録装置として検討されており、更なる記録密度の増大が期待されている。
【0003】
現在のHDDでは、ディスクの面内方向に磁化を保持する長手記録方式が採用されている。しかし、この方式では、磁区内に生じる反磁界を低減するために、磁気記録層を薄くしていく必要がある。磁性層が薄くなると、その中に含まれる個々の磁性粒子の体積が小さくなり、粒子が保持する磁気エネルギーの大きさが、熱エネルギーの大きさを無視できなくなる。即ち、記録された磁化が失われる超常磁性の効果(熱揺らぎ)が顕著になる。
【0004】
一方、長手記録方式に対して、ディスクの面直方向に磁化を保持する垂直記録方式では、記録密度が増大しても、膜厚を確保することで、超常磁性を起こり難くすることが可能である。このため、近年、磁気記録の高記録密度化を実現する技術として、垂直磁気記録方式が注目されつつある。
【0005】
垂直磁気記録媒体の記録層用の材料としては主にCoCr系合金が現在使用されている。しかし、近年、記録領域のサイズを小さくしても超常磁性効果を抑制する事が可能な、磁気異方性定数の大きなCuAu型(L1型)あるいはCuAu型(L1型)硬磁性規則合金が注目されている。
【0006】
例えば、FePtの規則化合金(L1型)を得るには、成膜後に熱処理することが必要であり、特許文献1においては、CoとPtからなる連続膜を基板上に成膜した後、350℃で熱処理することにより規則化することが開示されている。
【0007】
また、記録密度を向上させていく上では、磁性領域間に働く磁気的な交換結合を切断あるいは低減させるために、特許文献2に記載されているように、磁性領域が酸化物などの非磁性領域に分散した構造が有用である。上記特許文献2は、陽極酸化アルミナにより構成される細孔を有する構造体にCoPt等の磁性材料を充填し、その後熱処理により規則化構造を実現するものである。
【特許文献1】特開2003−006830号公報
【特許文献2】特開2002−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、陽極酸化アルミナにより構成される細孔に磁性材料を充填し、上記規則化合金相を得る際の熱処理温度は、前記特許文献1に記載の連続膜を規則化させる際の温度よりも高く、650℃である。従って、熱処理温度を低下させるための更なる改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、細孔内に規則化した合金を備えた構造体を製造するに際して、650℃よりも低い温度での熱処理が可能な構造体の製造方法、及び当該製造方法を用いることにより実現される新規構造体を提供することを目的とする。
【0010】
本発明に係る構造体の製造方法は、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に第2の材料を含み構成される膜を成膜する成膜工程、及び
該膜を有する該部材を熱処理する熱処理工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法は、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に該合金を構成する第2の材料を成膜することによって、該充填物と繋がり、且つ該多孔質層の孔上及び孔壁上を被覆する膜を該部材上に設ける成膜工程、
及び該多孔質層の孔上及び孔壁上を該膜が被覆した状態で該部材を熱処理する熱処理工程を有することを特徴とする。
【0012】
ここで、本発明は、前記第1及び第2の材料が互いに異なる場合、及び前記第1及び第2の材料が同じである場合を含むものである。
【0013】
また、本発明に係る多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法は、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に第2の材料を含み構成される膜を、該充填物と繋がるように成膜する成膜工程、及び
該充填物を規則合金化処理をする工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る構造体は、
基板上に柱状の孔を備える部材有し、
該孔内に充填物が設けられている構造体は、該充填物が、該柱状の孔の深さ方向に第1の領域と第2の領域を備え、
該第1の領域は規則化している合金領域であり、
該基板側の該第2の領域は、該第1の領域よりも規則化の程度が低い合金領域、あるいは非合金領域、あるいは該第1の領域とは異なる規則構造を有する領域であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る、基板上に磁性層を有する磁気記録媒体は、
該磁性層は、該基板側から第1の磁性層と第2の磁性層を含み構成され、
該第1の磁性層は、第1の磁性材料が非磁性体により分離されており、且つ該第2の磁性層は第2の磁性材料が連続的に繋がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも低温で、孔内に規則化した合金を有する構造体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法について図1を用いて具体的に説明する。
【0018】
まず、図1(a)に示すように表面に多孔質層を有する部材1000を用意する。1011は孔を、1012は孔壁である。図1は断面形状であるが、図1に記載の部材を孔上面側から見ると、孔が図2のように分散した状態である。1111は、本発明において孔上を示している。図2において、11は細孔、12は細孔間に介在する孔壁である。この孔壁部を細孔が分散配置されている母材(あるいはマトリックス部)と表現する場合がある。なお、細孔の配置は、分散していればよいが、規則的に分散していてもよい。
【0019】
次に、図1(b)に示すように孔内1022に合金を構成する第1の材料を充填するとともに、その孔上及び孔壁上には当該合金を構成する第2の材料からなる膜を成膜して設ける。
【0020】
なお、多孔質層の孔上とは、換言すれば、孔の開口部のことであり、孔壁上とは、多孔質層の当該開口部以外の領域である。
【0021】
図1(b)において、前記膜の内、1122が孔上に設けられた部分であり、1112が孔壁上に設けられている部分である。そして、図1(b)のように、多孔質層の孔上及び孔壁上を前記膜が被覆した状態で前記部材1000を熱処理する。こうして、孔内に規則化した合金が充填されている構造体が実現する。
【0022】
(部材)
前記部材1000は、別の基板上に形成されていてもよいし、前記多孔質の細孔底部への充填に寄与する材料が設けられていてもよい。また、図1(a)の1050は前記部材の多孔質部を、1055は非多孔質部をそれぞれ示すが、この多孔質部と非多孔質部間に別な層が設けられていても良い。その概念を図7(a)に示す、1700がここでいう別な層である。
【0023】
別な層としては、例えば充填材料の配向を制御し得る機能を有することが好ましい。
当該別な層の例としては、MgO(001)、またはZnO(001)等が挙げられる。
【0024】
ここで、MgO(001)とは、MgOにより結晶が構成され、その(001)で表される面が、非多孔質部1055が有する面に平行であることを意味する。非多孔質部1055が有する面とは、細孔の深さ方向に垂直な、非多孔質部の面のことである。
【0025】
換言すれば、MgO結晶において[001]を法線ベクトルに持つ面の当該法線ベクトルが、前記非多孔質部が有する面に垂直(即ち、孔の深さ方向に平行)であることを意味する。
ZnO(001)に関しても同様である。
【0026】
また、別な層として、該MgO(001)或いは該ZnO(001)上であって、且つ多孔質部1050下に、更にfcc構造の(001)で表される面、或いは(111)で表される面が配向している層を設けても良い。
【0027】
多孔質部の孔は、柱状の細孔であるが、この複数の細孔の平均直径は例えば、1nm以上100nm以下である。好ましくは1nm以上40nm以下である。細孔の深さ(細孔の長手方向の厚さ)は、5nm以上500nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下である。
【0028】
なお、多孔質部の孔内へ材料を充填を、メッキなどのウエットプロセスではなく、CVDなどのドライプロセスにより行う場合には、細孔のアスペクト比が10以下、好ましくは5以下、更に好ましくは2以下にする方が良い。これは、ドライプロセスでは、細孔の断面直径が、小さい場合は細孔内への充填が難しくなったり、時間が非常にかかったりする場合があるからである。
【0029】
アスペクト比とは、細孔の深さ方向に垂直な断面の直径に対する、孔の深さ方向の長さの比のことである。
特に、本発明は、細孔の平均直径が15nm以下であり、且つ細孔間の平均間隔20nm以下であるような、多孔質の細孔内に規則化した合金を得るためには有用な手法である。
前記部材は、以下の方法により得られる。
【0030】
例えば、特開2002−175621号公報に記載されているように、アルミニウムやアルミニウムを含む合金を、シュウ酸やリン酸等の溶液中で陽極酸化処理して細孔を形成する方法である。当該方法によれば、酸化物であるアルミナを孔壁に有する多孔質体が形成される。
【0031】
また、特開2004−237429号公報に記載されているように、柱状の部材がそれを取り囲む領域に分散した構造から、当該柱状の部材を除去することにより多孔質層を得ることができる。その例を図2を用いて説明する。
【0032】
図2において、10は基板を、11は細孔を、12は細孔が分散している母材を示している。このような細孔を有する構造体は以下のようにして得られる。
【0033】
具体的には、柱状の部材の周囲が別な材料により構成される領域に取り囲まれている構造物を用意する。該構造物には前記領域を構成する材料が、前記柱状の部材を構成する材料と前記領域を構成する材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれている構造物である。上記割合の範囲であれば、実質的に柱状の部材がそれを取り囲むマトリックス領域に分散した構造体が実現される。ここで柱状の部材の構成材料としては、AlやAuやAgやMgなどが挙げられる。前記柱状の部材を取り囲む領域を構成する材料としては、Si、Ge、SiとGeの混合物(以降、Six Ge1−x(0<x<1)と記載することがある。)、あるいはCなどが挙げられる。このような柱状の部材がそれらを取り囲む領域に分散した構造体を得るには、前記柱状の部材及びそれを取り囲む領域を構成する材料の両方を含むターゲットを用いたスパッタリング法などの非平衡成膜法により実現される。後述する実施例中においてより具体的に説明する。
【0034】
(充填)
前記孔内を充填する前記第1の材料と孔壁上及び孔上に形成する膜の構成材料(前記第2の材料)を互いに異なるもので構成してもよいし、同じ材料で構成してもよい。例えば、2種の金属M1とM2からなる合金の場合は、まず孔内にM1を充填し、その上にM2からなる膜を成膜し、その後の熱処理により合金化するとともに、規則化することもできる。また、予め合金を構成する2種の金属材料を細孔内に充填するとともに同じ材料で、孔壁上及び孔上をも被覆してもよい。いずれにせよ、細孔内に充填されている材料と、孔壁上及び孔上を被覆している材料とが繋がっていることが好ましい。
【0035】
また、細孔内へ予め合金の構成材料全てを充填し、多孔質層上に形成する膜として、合金の構成材料以外の材料で構成される膜(例えばCuやZnOやCuとSiの積層膜など)を形成して、その後、充填物の規則化処理を進めてもよい。即ち、図7(c)に示すように、細孔内へ予め合金の構成材料全てを充填た充填物7022を形成し、その上に、多孔質層上に形成する膜7122として、合金の構成材料以外の材料で構成される膜を設けてもよい。
【0036】
充填方法は、めっき法やスパッタリング法あるいは、CVD等の化学蒸着法などを用いることができる。
【0037】
前記第1及び第2の材料が異なる場合には、いずれか一方の材料は、Fe、Co、あるいはNiの少なくとも1種類の元素を含み構成され、他方がPtあるいはPdの少なくとも1種類の元素を含み構成される。なお、両者同一材料を用いる場合には、FeとPdの2種の金属を含む材料、FeとPtの2種の金属を含む材料、CoとPtの2種の金属を含む材料、FeとPdの2種の金属を含む材料、NiとPtの2種の金属を含む材料などが挙げられる。
【0038】
前記孔上及び孔壁上に形成される合金材料を含む膜の膜厚としては、細孔により分断されていない連続膜が実質的に形成されていればよく、その膜厚は1nm以上1μm以下、好ましくは、3nm以上100nm以下、より好適には5nm以上30nm以下である。
【0039】
なお、めっき等において細孔に合金構成材料を充填する場合、多孔質層の前記孔から当該材料が溢れ、且つ複数の孔から溢れた前記材料同士が、前記孔壁上でそれぞれ繋がっていることが好ましい。
以下、具体的に、めっきにより細孔に材料を充填する場合について述べる。
【0040】
めっき法により充填される材料としては、CuAu型あるいはCuAu型硬磁性規則合金である、FePt、FePd、CoPt、CoPd、FePd、FePd、FePt、FePt、CoPt、CoPt等である。
【0041】
構成元素が同じである、FePt、FePt、FePt合金等は、めっき浴の中におけるFeとPtの原料比及びめっき条件を制御する事により作り分ける事が可能である。
【0042】
Fe原料として塩化鉄及び硫酸鉄等を用い、Pt原料としてヘキサクロロ白金(IV)酸塩を用いるめっき浴を用いることができる。
【0043】
なお、めっき浴中のFeイオンは比較的不安定であり沈殿物を形成しやすいので、Feイオンの安定化のために、錯化剤を添加することもできる。錯化剤には酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸が適用できる。また、これらの塩から適宜選択してもよい。特に酒石酸もしくはその塩および/またはクエン酸もしくはその塩、酒石酸ナトリウムおよび/または酒石酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0044】
また、ヘキサクロロ白金(IV)酸塩の経時変化を抑制するために、NaClなどのClイオンを過剰に含む溶液とすることも効果的である。従って、必要に応じてアンモニウムイオンを添加することによりヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムの錯体を形成し溶液中での安定化を更に促進することも可能である。
【0045】
所望の組成のFexPt1−xを得るためには、めっき液中に加えるFe及びPt原料の割合、及びめっき電位の制御を行う。電位の変化は作用電極の面積に対する電流密度の変化に相当し、この電流密度が、形成されるめっき物の組成比に影響する。なお、めっき液中には界面活性剤等の添加剤を用いても構わない。
【0046】
上記FePtめっき液を用いることにより、20〜80原子%Feを有するFePt磁性体を細孔内に充填された構造体を作製することができる。FePt組成は蛍光X線分析(XRF)及び高周波誘導プラズマ結合分析(ICP)などにより確認することができる。
【0047】
Co、Ni、Pd等を含むCuAu型及びCu3Au型硬磁性規則合金を作製する場合にもめっき浴の合成が必要になる。めっき浴中にはFe、Co、Niのうち少なくとも1種類以上のイオンが浴中に存在することになるが、Feを原料とするめっき浴と比較すると、Co、Niの方がイオンとしての安定性が高く沈殿物を形成しにくい。PdにはヘキサクロロPd酸塩を用いる事が可能である。
【0048】
以下に、メッキなどのウェットプロセスではなく、ドライプロセスにより充填する場合について説明する。
【0049】
このドライプロセスとしては、スパッタ法、CVD法、蒸着法等がある。
【0050】
特に、アークプラズマガンは、イオン化された金属粒子を成膜するイオンプレーティングに近い手法であり、ダマシン等の配線形成において埋め込み性能に優れる成膜手法であることが証明されている。このアークプラズマガンとは、真空アーク法を用いたアークプラズマを使用する方法である。なお、真空アーク法とは、蒸着粒子を溶解、イオン化させるためのアーキング発生を伴う手法である。
【0051】
また、基板バイアスをかけることにより充填性が良好となる。この他、堆積する粒子が基板に対して直進性良く飛散する、例えばイオンビームスパッタ等も細孔内への埋め込みに適した手法である。
【0052】
しかしながら、ドライプロセスを用いる場合、細孔内のみならず細孔の内壁上や細孔壁1012上へも成膜されるため、充填性が悪化する可能性がある。
【0053】
故に、特に細孔の直径が50nm以下の小さな孔に対してドライプロセスを用いて材料を充填する場合は、(細孔の深さ)/(孔の直径)で示されるアスペクト比を以下のようにしておくことが好ましい。
即ち、5以下、好ましくは2以下、さらに好ましくは、1以下である。
【0054】
また、必要に応じて、細孔壁上の堆積物をエッチングプロセスにより取り除く工程と、充填工程とを交互に行なう事で充填性を改善する事も可能である。ドライプロセスによる充填の場合は、細孔内に空隙部分が生じなければ、若干のボイド等が形成されてもかまわないが、ボイドなどが生じないアスペクト比、充填手法、及び充填条件を選択することが好ましい。
【0055】
なお、前記充填物形成工程及び前記成膜工程一方を、前記合金を構成する材料を用いたドライプロセスにより行ってもよいし、両工程を同じ手法のプロセスで行ってもよい。
【0056】
また、前記成膜工程後、即ち、図1(b)の構造体を実現した後、前記膜(1122、1112)上に第3の材料を含み構成される第2の膜1200を設けることもできる(図7(b))。
【0057】
この第2の膜は、例えば、前記合金の配向制御及び/または規則合金化温度の低減に寄与する膜である。
【0058】
第2の膜の具体例としては、(001)で表される面が配向しているZnOや、Cuや、CuとSiの積層膜である。
【0059】
また、第2の膜として、面心立法構造(fcc)を有する材料が(001)で表される面が配向している膜(即ち、基板に対して垂直方向から見た場合に、膜表面に(001)で示される面が表れている膜)を適用できる。更に、(111)配向膜、MgO(001)配向膜なども適用できる。
【0060】
(熱処理)
合金を構成する材料が細孔内に充填された部材を熱処理して、規則化合金を得るための温度は、400℃から600℃、より好ましくは450℃から550℃の範囲である。従来、細孔内に充填されている材料を熱処理し、規則化合金を得るためには、650℃という高温が必要であったが、本発明によれば、この温度を低減することができる。勿論、規則合金化処理ができれば、熱処理温度が400℃以下でもよいし、熱処理を行わなくても構わない。
【0061】
なお、熱処理は、例えば、水素等を含む還元性雰囲気下で行うことも好ましい。これは、充填されている材料に含まれる不純物の酸素が効果的に除去されるために、金属原子同士の拡散が進みやすいと考えられるからである。
【0062】
なお、本発明における規則化した合金とは、例えば、CuAu型(L1型)の強磁性規則合金や、CuAu型(L1型)強磁性規則合金のことである。
【0063】
前者の例としては、FePd,FePt,CoPtなどが挙げられ、後者の例としては、FePd、FePd、FePt、FePt、CoPt、CoPt、NiPt、NiPt等が挙げられる。また、L1型に規則化する合金を本発明に適用してもよい。なお、このような規則化構造については、例えば特開2002−175621号公報の図8などに説明されている。
【0064】
連続膜、即ち細孔壁により分断されていない、例えば数nm以上の膜厚を有する薄膜の場合、規則化のための熱処理温度は、低温で実現できることが報告されている。具体的には既述の公知例のように350℃にて規則合金相が得る手法が報告されている。
【0065】
本発明においては、規則化が比較的低温で可能な連続膜を利用することで、充填材料を規則化するための熱処理温度の低温化を実現している。
【0066】
詳しいメカニズムは明らかではないが、連続膜中では、原子の拡散がスムーズに行われるために、規則合金相がより低温でも形成されると考えられる。そして、その薄膜中の規則化した合金相に誘起されて細孔内部の合金材料の規則化が進行すると考えられる。これは、細孔内に充填されている合金構成材料が前記多孔質層上の薄膜と接することで、当該細孔内の充填材料も連続膜と同様に、規則化のために必要とされる拡散がスムーズに行なわれるからではないかと考える。
【0067】
(その他)
前記熱処理工程後、多孔質層表面上に形成されている膜を研磨や研削等により除去することもできる。特に、本発明に係る構造体を磁気記録媒体の記録層として用いる場合には、除去するのがよい。
【0068】
(構造体)
また、前記本発明に係る構造体の製造方法を用いれば、細孔の深さ方向に合金の規則化の程度が異なる構造体の提供が可能となる。
【0069】
具体的には、図4(e1)に示すように、柱状の孔の深さ方向に、その表面側(基板から離れている側)から第1の領域4623と第2の領域4622を備える。そして、該第1の領域は規則化している合金領域であり、該基板側の該第2の領域は、該第1の領域よりも規則化の程度が低い合金領域あるいは非合金領域、あるいは該第1の領域とは異なる規則構造を有する領域である。
【0070】
なお、前記第1の領域と第2の領域との境界は必ずしも明瞭である必要は無い。垂直磁気記録媒体においては、硬磁性層下に透磁率の高い軟磁性層を設ける場合があるが、例えば、前記第2の領域をこのような軟磁性層の代わりに用いてもよい。
【0071】
また、磁気特性を調整(例えば、保磁力の上限を制御)するために、規則化していない、あるいは規則化の程度が低く、保磁力の弱い第2の領域を利用することもできる。
勿論、第2の領域を非合金化領域としてもよい。
【0072】
更にまた、第1の領域と第2の領域とで、規則化合金の規則化構造が異なるようにすることもできる。例えば、第1の領域をL1構造とし、第2の領域をL1やL1構造とするような場合である。
【0073】
なお、細孔内への充填する材料やその構成比を変えておくことで、以下のような構成にすることもできる。
【0074】
即ち、前記第2の領域を規則化合金領域とし、前記第1の領域を、第2の領域よりも規則化の程度が低い合金領域あるいは非合金領域、あるいは該第2の領域とは異なる規則構造を有する領域とすることもできる。
【0075】
本発明においては、多孔質層上に形成される連続膜を起点として、細孔内に充填されている合金構成材料の規則化が進む。従って、熱処理の時間を制御することにより、細孔内で規則化している合金領域(第1の領域)と、第1の領域よりも規則化の程度が低い、あるいは、規則化されていない合金領域(第2の領域)を得ることができる。
【0076】
前記第1の領域と第2の領域の長さを制御することで、細孔の厚さを変えずに飽和磁化や残留磁化等の磁気特性の異なる構造体が得られる。
【0077】
(図4から図6を用いた本発明に実施形態に係る発明)
次に、本発明に係る構造体について、特に細孔内に充填される合金構成材料と、細孔を備えた多孔質層上に形成される膜の構成材料とが同一の場合について図4及び図5を用いて説明する。
図4は、プロセスフローである。
【0078】
まず、図4(a)に示す細孔を有する構造体4000を用意する。図中4050は、多孔質層部、4055は非多孔質部であり、4100は基板、4150は、基板と多孔質層部間に介在する層である。次に、図4(b)に示すように、充填材料4022としてFePt合金を構成するFeとPtを含む材料を充填する。引き続きめっきを続けて、図4(c)に示すように多孔質層部4050上に、例えば10nm程度の膜厚を有する薄膜(連続膜)を形成する。
【0079】
その後、熱処理を施す事により規則合金相を形成する(図4(d1))。上記のようにして作製されるFePt磁性体は、めっき直後はfcc相を有する合金(なお、当該合金相は、非晶質である場合もある。)であるがL10で表される規則性を有していない。
【0080】
上記成膜後の熱処理により規則合金相が形成される。なお、図4(d1)では、多孔質層の孔内の充填物で基板と離れている側の第1の領域4623は規則合金相が実現されている。基板側により近い側にある第2の領域4622は規則合金相が形成されていないか、あるいは前記第1の領域よりも規則化の度合いが低い領域である。一方図4(d2)では、前記第2の領域も含めて規則化合金相が形成されている場合を示している。
【0081】
FePt及びFePtのCuAu型規則合金相(L1)の方が、FePtのCuAu型規則合金相(L1)よりも低い温度で形成されるが、大きな異方性磁界を有するL1規則合金を形成する場合は、L1構造形成よりも高温が必要とされる。このように規則化させることにより、磁気記録媒体に好適な高い保磁力(Hc)が実現される。
【0082】
図4(d1)や(d2)に示すように、細孔を有する構造体膜厚及び加熱処理条件(温度や時間)に応じて柱状構造体上部のみまたは全体に規則合金相を作成する事が可能である。
【0083】
次に、上記薄膜4112を選択的に除去する事により、図4(e1)あるいは(e2)に示すようなCuAu型またはCuAu型硬磁性規則合金がシリコン酸化物などのマトリックス中に孤立した構造を得ることができる。特に、ダイヤモンドスラリーまたはコロイダルシリカ等を用いた精密研磨を施す事により、凹凸のrms(凹凸の2乗平均の平方根)は1nm以下の平坦性が得られる。
【0084】
上記構造は磁気記録媒体の磁性層として利用する事が可能である。図5に磁気記録媒体の構成例を示す。40は基板、41は下地電極層、42は記録層、43は保護層、44は潤滑層、である。基板40にはガラス基板、Al基板、Si基板等を用いる事ができる。硬度を確保するためにNiP膜をめっき法などにより下地層として形成しておくことが望ましい。基板40と記録層42間には軟磁性層を裏打ち層として形成することが有効である。その裏打ち層としては、NiFe1−tを主成分とする膜が使用可能であり、tの範囲は0.65から0.91である事が望ましく、さらに一部Ag,Pd,Ir,Rh,Cu,CR,P,Bなどを含んでも良い。その他のFeTaCや、CoZrNb等のアモルファス軟磁性体材料の採用も可能である。
【0085】
また、前記裏打ち軟磁性層の上には、記録層に充填される磁性材料の配向制御のために(001)配向したMgOなどの配向制御層を挿入し、更に配向制御層の上にめっきのための電極層などを設けることも好ましい形態である。前記配向制御層に基づき、前記電極層を配向させることも好ましい。また、配向制御及び電極層の両者の役割を果たすZnO等を用いる事も可能である。ここで、細孔に充填する磁性材料の配向を制御するために下地電極層の配向を(111)または(001)を適宜選択することが好ましい。本発明の磁性体におけるL1規則合金層のc軸を基板垂直方向に配向させるためには下地電極層が基板面に対して平行に正方状の結晶配列を有していることが好ましい。特に、fcc構造の(001)配向を利用することが好ましい。本発明の記録層の上には表面保護層を形成することが好ましく、ヘッドとの摩擦に対して耐磨耗性を持たせるために、カーボンの他、カーバイト、窒化物等の高硬度の非磁性材料を用いることが有効である。更に、潤滑層としてPFPE(パーフルオロポリエーテル)を塗布することが好ましい。本発明の磁気記録媒体は垂直磁気記録媒体として有効である。
【0086】
次に、本発明に係る構造体について、特に細孔内に充填される合金構成材料と、細孔を備えた多孔質層上に形成される膜の構成材料とが異なる場合について図6を用いて説明する。
本製造方法のプロセスフローである一実施形態を図6に示す。
【0087】
ここでは、FePt磁性体を作製する場合を例に挙げ説明する。前記細孔を有する4000を用意する(図6(a))。なお、図4と同一物については同じ番号を記載している。構造体の細孔体内に第1回目のめっきにてFeまたはPtを充填し、細孔内充填物6022を形成する(図6(b))。多孔質層と基板間の層4150は必要に応じて設ければよい。特にPtの場合、電気めっきだけでなく無電解めっきを採用することが可能である。無電解めっきは充填時に水素の発生などが抑制されるため、充填性に優れた手法である。めっき後は、必要に応じて細孔上部の端面を表面に露出させてもよい。更に、図6(c)に示すように構造物の上に第1のめっき材料とは異なる材料、すなわち第1のめっき材料がFeならばPtを、第1のめっき材料がPtならばFeの薄膜6112を作製する。前記薄膜はスパッタ、蒸着等の気相法やめっき等の液相法等どのような手法をとってもかまわない。
【0088】
その後、熱処理を行なう事により、薄膜6112と細孔内充填物界面にて相互拡散が生じ、FePt規則合金相が形成される。
【0089】
なお、図6(d1)では、多孔質層の孔内の充填物で基板と離れている側の第1の領域6623は規則合金相が実現されている。そして、基板側により近い第2の領域6622は規則合金相が形成されていないか、あるいは前記第1の領域よりも規則化の度合いが低い領域である。一方図6(d2)では、前記第2の領域も含めて規則化合金相が形成されている場合を示している。
【0090】
そして、図6(e1)あるいは(e2)に示すように、再び研磨や研削等の手法により薄膜部分を必要に応じて除去することにより、磁気記録媒体記録層に適用可能な構造体を作成することが可能である。
【0091】
なお、細孔を有するナノ構造体の膜厚及び薄膜の膜厚の制御、更には、熱処理条件の制御により、CuAu型のFePt規則合金だけでなく、FePt、FePt等のCuAu型規則合金の作成も可能である。また、細孔内底部と上部でCuAu型及びCuAu型規則合金が共存した状態を作り出す事も可能である。
【0092】
ここでは、上記に示すようにFePt磁性体の場合に関して述べたが、その他の材料によるCuAu型またはCuAu型規則合金相を形成する事も可能である。
【0093】
更に、磁気記録媒体の特性を向上させる方法について下記に述べる。
【0094】
本明細記載の規則合金相を磁気記録媒体の記録層として用いるためには、規則化温度をより一層低減することが好ましい。
【0095】
不規則/規則変態時には、構成原子の相互拡散に基づく拡散エネルギー及び格子変形に基づく弾性エネルギーが、規則化の活性化エネルギーに影響を及ぼすと考えられる。
【0096】
Cu等の第3元素を規則合金材料に添加した場合、規則合金の結晶化が促進され、規則化温度が低減する事が知られている(特開2002−216330号公報)。
【0097】
従って、本発明においても、例えば、細孔内に充填された規則合金材料及び細孔壁上の連続膜の規則合金材料にCu等を添加する事により規則化温度を低減する事が可能である。
【0098】
また、下地層(本発明における多孔質層下の層のことである。)と規則合金層の格子歪みや膜応力の違い等の歪みエネルギーを用いることで規則化温度を低減することもできる。
【0099】
これらの手法では、規則合金層の下地に、歪みエネルギーを誘起する層(本明細中では歪み誘起層と称する。)を設ける。
【0100】
特に、下地層として、Si基板上に100nm程度のCu層を成膜した層を用いた場合、熱処理により生じるシリサイド形成が生じる。このシリサイド形成時の歪みエネルギーが、規則化温度の低減に効果的である(Applied Physics Letters,Vol.85,4430−4432(2004))。
【0101】
本発明に係る構造体、すなわち、細孔体中へ規則合金材料を充填し、更に細孔壁上に連続膜を形成した構造体上に、歪み誘起層を形成する手法は、連続膜の規則化温度の低減及び細孔内の規則化の促進を図上でも有効に寄与する。
【0102】
一方、今後有望視されている、裏打ち軟磁性層を有する垂直磁気記録媒体を考慮すると、上述したSi及びCu層が、軟磁性層及び記録層の中間に形成することが必要とされる。しかし、これはとりもなおさず、記録層と裏打ち軟磁性層との層間距離を広げる事となり、記録特性が劣化する可能性がある。
【0103】
本発明の構造体では、細孔壁上の連続層及び歪み誘起層は研磨等のエッチングプロセスにより除去する事が可能であり、細孔内の規則合金層から成る記録層と軟磁性層間との距離の増大をもたらすことがないため、良好な磁気記録媒体を提供することが可能である。
【0104】
記録膜の特性としては、記録材料の結晶配向を制御することが必要であり、配向制御のために、MgO等の配向制御層を軟磁性層と記録層間に挿入する方法を上述した。
【0105】
細孔壁上の連続膜上に、更に配向制御層を形成する事により、規則化の進行し易い細孔壁上の連続膜の結晶配向を制御する事が可能である。
【0106】
細孔内のFePt等の充填材料は、規則化されるだけでなく上部連続膜の配向に応じた結晶成長が促進されるため、細孔内では配向の制御された規則合金相を得る事が可能である。
配向制御層にはZnOを用いることが可能である。
ZnOは、スパッタ法により成膜し、成膜条件を選ぶ事によりXRD測定により(002)回折線の強い、c軸配向したZnOを作製する。
これまで、ZnOを配向制御層に用いる場合には、熱処理の際にZnO界面で生じる酸化反応が問題視されてきた。
【0107】
しかしながら、上部連続層及び配向制御層を除去する記録媒体の場合、記録層となる細孔内の規則合金とZnOとは、直接接触しないため、界面で生じる酸化反応への考慮が不必要となり、良好な記録媒体を提供することが可能である。
以下に、本発明に係る実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0108】
以下に実施例をあげて、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0109】
(実施例1)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す(図4)。
【0110】
基板4100としてSi基板を用いる。Si基板上に4150下地層Pt膜20nmを用意する。下地層上にAlSiを成分とする膜厚25nmのAlSi構造体薄膜を形成する(尚、本実施例ではAlSiの例を示すが、AlSi部分をAlGe,AlSiGeとしても良い)。このAlSi構造体薄膜をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて観察すると、Si領域に囲まれた円形のAlを含む柱状の部材が二次元的に配列した構造を形成することが分かる。Alを含む柱状の部材を形成している細孔径は8nmであり、その平均中心間間隔は10nmである。また、誘導結合型プラズマ発光分析法を用いてこのAlSi構造体薄膜の組成分析を行うと、SiがAlSiの全量に対して40atomic%含んだAlSi構造体であることが分かる。
【0111】
このAlSi構造体薄膜の成膜にはマグネトロンスパッタリング法を用いており、直径が4インチ(101.6mm)の円形のAlターゲット上に、15mm角のSiチップを8枚置いたものを用いる。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kW、基板温度は室温(25℃)とする。
【0112】
この他、Al/Siの比を調整することにより、Siの量がAlSiの全量に対して20〜70atomic%のAlSi構造体を作成することが可能である。このような構造体の製造方法は、国際公開公報WO03/069677、WO03/078687、WO03/078688、WO03/078685などに記載されている。
【0113】
成膜した薄膜を、室温で2.8%のアンモニア水溶液(pH〜10.8)に10分程度浸漬し、Al柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔体を形成する(図2)。この細孔体表面をFE−SEMにより観察すると、直径8nm、間隔10nmの細孔が確認される。更に、断面構造をFE−SEMでは、Alを含む柱状の部材部分は完全に溶解しており、Siにより隔たれたナノホールがお互いに独立して形成している様子が確認できる。また、細孔の底部に被膜の存在は確認できず、下地表面が露出しているものと考えられる。尚、本工程により作成されたナノ細孔体はエッチング工程により一部酸化が進行し、SiOの酸化物である。
【0114】
細孔の底部に下地のPt表面が露出したナノ細孔体中にめっき法を用いてFePt合金を充填する。ここで用いためっき浴は、ヘキサクロロ白金(IV)酸塩0.011mol/L、塩化アンモニウム0.022mol/L、硫酸鉄0.02mol/L、酒石酸アンモニウムを0.02mol/L、塩化ナトリウム0.1mol/Lからなる。
浴温度は、50℃としてpH8に調整する。
【0115】
界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.0001mol/Lを加えることも可能である。上記めっき浴を用いてめっきを施す事により、細孔内へFePt合金を充填する事が可能である。
【0116】
めっきされるFePt合金組成は、作成条件により選択することが可能あり、50atomic%FeーPtを作製する。上記めっきを続けることにより、細孔体に充填されたFePt柱状構造体上部に連続して、FePt薄膜を形成することが可能である。
【0117】
即ち、細孔内に充填された材料が細孔から溢れだし、それぞれの細孔から溢れ出した充填材料同士が多孔質層の孔上及び孔壁上で繋がることにより、多孔質層上に連続膜である薄膜が形成される。そして、この状態で規則化のための加熱処理を行う。
【0118】
尚、前記薄膜は連続膜であることが必要であり、膜厚は10nm程度が適当である。以下に示す熱処理後、前記薄膜を除去するが、研磨工程における負担及び排除される材料を極力減らす上でも10nm程度の膜厚が都合がよい。
【0119】
上記工程により作製される構造体を500℃、10分間の熱処理を行い、熱処理後FePt薄膜部分を研磨により除去し、柱状構造体上部を露出させる。実際に細孔内に充填されている合金材料によるL1規則合金相が形成されているか否かは、当該L1規則構造に伴うx線回折のピークが観測されるかどうかにより分かる。また、後述のように同一の量の磁性材料の保持力の相違から規則化構造が実現しているか否かを推察することもできる。
【0120】
比較例として細孔体内に充填された柱状構造体FePtを用意する。比較例1の構造体は、FePt合金柱状構造上部にはFePt合金薄膜がない状態である(即ち、細孔の深さと充填材の厚さが同じ場合である)。この構造体を作成後500℃、30分間にて加熱処理をする。実施例1の構造体と比較例1の構造体に対してそれぞれ、AGM(Alternating Gradient Magnetometer)にてヒステリシスループ測定を行い、保磁力の違いを測定する。比較例1では数100 Oe程度の保磁力しか得られないが、本実施例1の製造方法により作製する構造体は3000 Oe以上の保磁力を有する。本実施例1の構造体では、上部に形成された薄膜部分にL1規則合金相が形成され、この規則化に誘起されて柱状構造体上部にL1規則合金相が形成されると推察される。これに対して、薄膜部分の規則化促進部分を持たない比較例1では、L1規則化が進行しにくいと推察される。
【0121】
本実施例1の構造体を記録層とする磁気記録媒体を作成することが可能である。
また、上記例では、50atomic%−FePtのFePt合金からL1−FePtを作成する方法を述べた。
【0122】
めっき原料であるFe及びPt原料比の異なるめっき浴を用いて、めっき条件を調整する事により、L1構造を有するFePt,FePt等のCuAu型規則合金を細孔内に形成する事も可能である。
【0123】
更に、細孔体中に50atomic%FeーPtのFePt合金を上記めっき法により充填して柱状構造体を形成した後、以下のような工程を行うこともできる。
【0124】
即ち、細孔への充填後、柱状構造体と連続する薄膜にFePt組成の異なる75atomic%FeーPt及び25atomic%FeーPtのFePt合金を成膜することも可能である。
【0125】
なお、75atomic%FeーPtとは、Fe0.75Pt0.25の組成の合金という意味である。
【0126】
このような構成の複合構造体を加熱処理することで、柱状構造体がL1構造、上部薄膜部分がL1構造となる。また、表面平坦性のみを研磨などにより確保し、上部薄膜を完全に除去しない形態の構造体を磁気記録媒体の記録層とすることも可能である。
【0127】
例えば、図7(c)に示すように、基板7000上に、細孔内へ磁性材料が充填されている第1の磁性層7022を有し、更に、その上に、第2の磁性層7122を有する構成である。詳述すれば、基板7000側から第1の磁性層と第2の磁性層を含み構成され、該第1の磁性層は、第1の磁性材料が非磁性体により分離されており、且つ該第2の磁性層は第2の磁性材料が連続的に繋がっていることになる。なお、第1の磁性材料と第2の磁性材料の保磁力などの磁気特性が異なることが好ましい。両者の材料の組成、即ち構成元素は同じでも、結果として磁気特性が相違すればよい。勿論、構成元素自体が異なっていても良い。特に第1の磁性層の保磁力を第2の磁性層の保磁力の5倍以上、好ましくは10倍以上、更に好ましくは50倍以上にするのがよい。また、第2の磁性層を軟磁性層として、第1の磁性層を硬磁性層としてそれぞれ用いることにより、垂直磁気記録媒体を実現することも好ましい形態である。
即ち、本発明は、このような構成を有する磁気記録層も包含するものである。
【0128】
なお、多孔質層部を用意する部材を得るための出発部材として、AlとSiを有する構造部材を例に挙げているが、他の材料も適用できる。
【0129】
例えば、アルミニウムを成分とする柱状アルミニウム部分と柱状アルミニウム部分の側面を囲むように配置されるSi,GeまたはSiGeを成分とする構造部材を用いることもできる。
【0130】
また、このAlSi構造体を硫酸等の水溶液中で陽極酸化することでも柱状Al部分を除去することが可能である。このとき、Si部分は陽極酸化中に酸化され、(AlSi1−x1−zとなる。そこで、xの範囲は0<x<0.2で好ましくは、0<x<0.1である。また、酸化状態は0.334<z<1の範囲であり、酸化していない状態も含まれる。また、酸化する場合には、陽極酸化等を行えばよく、その陽極酸化の終了は、下地層へ細孔が到達した時点から30秒〜60秒の間に終了することが好ましい。または、陽極酸化の電流値が極小値に達する時点まで陽極酸化を行っても良い。さらに、酸化は酸素雰囲気中でのアニールでも良い。
【0131】
このAlを除去したAlSi構造体は、組成にも依存するが細孔の直径の範囲が1nm〜15nmで、細孔間の間隔の範囲が3nm〜20nmであることを特徴とする。以上からAl部分の除去の手段によっては、微細な細孔11を取り囲む壁はSiまたはその酸化物で構成されることが特徴である。
【0132】
上記のSi,GeまたはSiGeを成分とする構造体の具体例は、特開2003−266400及び特開2004−179229号公報等に記載されている。
【0133】
また、本施例1では、記録材料としてFePt合金の例を示しているが、磁気異方性の大きなFePt以外の規則合金や、Cu等の添加物を含むFePtCu等でも構わない。
【0134】
(実施例2)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す(図6)。
実施例1と同様に下地層上にAlSi構造体薄膜を形成し、Al柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔体を形成する。
【0135】
細孔の底部に下地電極表面が露出したナノ細孔体中にめっき法を用いてFe、Co、Niの少なくとも1種類以上含むめっき物を充填する。ここでは、Feを充填する場合に関して述べるが、他の元素の場合もめっきで充填する事が可能である。Feめっきは様々なめっき浴を用いることが可能である。特に、塩化鉄または硫酸鉄または両者を含むめっき液等が一般的であるが、スルファミン酸鉄等や、酒石酸鉄、クエン酸鉄等の錯体として溶液中に安定したFeめっき浴を作製し充填する事も可能である。細孔外への余剰なめっきは極力避けるべきであるが、溢れた部分は研磨等により取り除き細孔体に充填された柱状構造体上面を露出させることが必要である。
【0136】
更に、Fe、Co、Ni等とCuAu型及びCuAu型規則合金相を形成する事が可能なPt、Pd等の金属を上記構造体表面上に成膜する。成膜方法は、めっき法を用いてもスパッタまたは蒸着等の手法を用いても構わないが、本実施例ではめっき法の場合を示す。ここでは、Ptめっきの場合は示す。Ptめっき浴もFeめっき浴と同様に様々なめっき浴を用いる事が出来るが、下地表面となるFeを溶解させないように注意することが必要である。ここでは、シクロヘキサクロロ白金酸を水産化ナトリウムでpH7に調整しためっき浴を用いる。めっき膜厚は、10〜20nm程度が好ましい。
【0137】
めっき終了後550℃で加熱処理を施し、Pt/Fe界面における相互拡散によりCuAu型またはCuAu型規則合金相を形成させる。その後、柱状構造体上面が露出するところまで研磨を行い、表面の薄膜部分を除去する。AGMにて保磁力の大きさを測定するとHc〜3000 Oeである。
【0138】
柱状構造内のみでFeとPtの拡散を利用して規則合金相形成を行なう比較例1に対して、柱状構造体上部に大きな容積のPt薄膜を有する本実施例2では、界面部分で相互拡散が起こり易く、規則化が進行しやすい。本実施例では、初期に用意するAlSi構造体の膜厚及び加熱温度や条件に応じて、柱状構造体上部のみに規則合金相が形成する場合と、柱状構造体全体が規則合金化する場合とに作り分ける事が可能である。
本実施例2の構造体を記録層とする磁気記録媒体を作成することが可能である。
【0139】
(実施例3)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す(図6)。
【0140】
下地層上にAlSi構造体薄膜を形成し、Al柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔体を形成する。ここで示す下地層は、以下のプロセスに応じて電解めっきの場合は電極層として、無電解めっきを用いる場合は触媒層として機能する。
【0141】
細孔の底部に下地電極表面が露出したナノ細孔体中にめっき法を用いてPt,Pdの少なくとも1種類以上含むめっき物を充填する。特に、PtやPdは電解及び無電解めっきの利用が可能である。無電解めっきの場合、導通性の確保が不必要であるため、下地層の膜厚は数nm程度でも問題がなく、ここでの下地層厚はPd5nmである。本実施例では市販の無電解Ptめっき浴を用いた場合を示す。Pt無電解めっき溶液は、(1)レクトロレスPt100基本液100ml、(2)2.8%アンモニア水10ml、(3)レクトロレスPt100還元剤2mL、(4)純水88mLを混合して調整しためっき液であり、前記めっき液のpHは11である。このめっき浴を60℃に維持することにより細孔内部にPtを充填させる。実施例2と同様に余剰のPtを研磨等により取り除き細孔体に充填された柱状構造体上面を露出させることが必要である。
【0142】
更に、Ptと合金化してCuAu型及びCuAu型規則合金相を形成する事が可能なFe,Co,Ni等の金属を上記構造体表面上に成膜する。成膜方法は、めっき法を用いてもスパッタまたは蒸着等の手法を用いても構わないが、本実施例ではめっき法の場合を示す。ここでは、FePtめっきの場合は示す。Feめっきは実施例1と同様である。膜厚は10nm程度とする。
【0143】
めっき終了後550℃で加熱処理を施し、Pt/Fe界面における相互拡散によりCuAu型またはCuAu型規則合金相を形成させる。その後、柱状構造体上面が露出するところまで研磨を行い、表面の薄膜部分を除去する。AGMにて保磁力の大きさを測定するとHc〜3000 Oe以上である。
【0144】
柱状構造内のみでFeとPtの拡散を利用して規則合金相形成を行なう比較例1に対して、柱状構造体上部に大きな容積のFe薄膜を有する本実施例3では、界面部分で相互拡散が起こり易く、規則化が進行しやすい。本実施例では、初期に用意するAlSi構造体の膜厚及び加熱温度や条件に応じて柱状構造体上部のみに規則合金相が形成する場合と、柱状構造体全体が規則合金化する場合とに作り分ける事が可能である。
本実施例3の構造体を記録層とする磁気記録媒体を作成することが可能である。
【0145】
(実施例4:ドライプロセスにより充填)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す。
【0146】
細孔体の形成工程は実施例1とほぼ同様である。
【0147】
図4の基板4100としてSi基板を用いる。Si基板上に4150下地層MgO膜10nmを用意する。下地層上にAlSiを成分とする膜厚15nmのAlSi構造体薄膜を形成する(尚、本実施例ではAlSiの例を示すが、AlSi部分をAlGe,AlSiGeとしても良い)。このAlSiは、複数の柱状のAlがSiのマトリックスに取り囲まれている構造である。
【0148】
このAlSi構造体薄膜をFE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて観察すると、Si領域に囲まれた円形のAlを含む柱状の部材が二次元的に配列した構造を形成することが分かる。Alを含む柱状の部材を形成している細孔径は8nmであり、その平均中心間間隔は10nmである。
【0149】
成膜した薄膜を、温度250℃、2.8%のアンモニア水溶液(pH〜10.8)に10分程度浸漬し、Al柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔体を形成する(図2)。この細孔体表面をFE−SEMにより観察すると、直径8nm、間隔10nmの細孔が確認される。更に、断面構造をFE−SEMでは、Alを含む柱状の部材部分は完全に溶解しており、Siにより隔たれたナノホールがお互いに独立して形成している様子が確認できる。また、細孔の底部に被膜の存在は確認できず、下地表面が露出しているものと考えられる。尚、本工程により作成されたナノ細孔体はエッチング工程により一部酸化が進行し、SiOの酸化物である。
【0150】
このような細孔体に、アークプラズマガンを用いてFePt合金を充填し、細孔内部が完全に充填された状態から更に、5nmのFePt連続膜を成膜する。成膜後連続膜表面には凹凸があり、細孔壁直上の連続膜の膜厚は厚くなっている。
【0151】
上記工程により作製される構造体を500℃で熱処理し、熱処理後FePt連続膜部分を研磨により除去し、柱状構造体上部を露出させる。AGMにて保磁力の大きさを測定するとHc〜3000 Oe以上である。
【0152】
(実施例5:多孔質層上部に配向制御層を形成)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す。
細孔体の形成、規則合金を形成する材料の細孔内への充填、及び細孔壁上の連続膜の形成方法は上記実施例1と同様である。
【0153】
FePt合金の例を示すが、磁気異方性の大きなFePt以外の規則合金またはCu等の第3添加物を含むFePtCu等でも構わない。
【0154】
図1(b)に示す構造体を形成する。この構造体の上に、図7(b)に示すように、配向制御層としてZnO(図7(b)の1200)をスパッタ法により形成する。
【0155】
ZnOは、Ar圧力15mTorrの雰囲気でマグネトロンスパッタにより、基板温度300℃にて作製する。膜厚40nmのZnOを作成し、XRDにて回折像を観察すると、ZnOに基づく(002)の強いピークが観察され、不規則層であるFePt上にc軸配向を有するZnOが成長している。
【0156】
この後、500℃にて熱処理を行なうと、連続膜及び充填されたFePtが規則化し、XRD回折像からFePtのc軸配向を示す(001)及び(002)ピークが観察され、上部に形成したZnOにより、FePtの配向制御が可能であることが確認できる。ZnOを含む細孔壁上部の積層物を研磨にて除去後、改めてXRD観察を行なうと、先程と同様にFePtがc軸配向していることが分かり、充填しているFePtも配向制御されていることが分かる。
【0157】
(実施例6:多孔質層上部に規則化温度低減層を形成)
本発明におけるナノ構造体の製造方法の一実施例を示す。
細孔体の形成、規則合金を形成する材料の細孔内への充填、及び細孔壁上の連続膜の形成方法は上記実施例1と同様でFePt合金であり、図1(b)に示す構造体を形成する。FePt合金をめっき法にて作成する場合は、めっき時に含まれる不純物、特に水酸化物を除去するために、予め水素還元雰囲気下300℃にて熱処理を行なう。ドライプロセスによるFePtを形成する場合はこの熱処理工程は必要ない。この構造体の上に、図7(b)に示すようにbuffer層としてPt20nm、その上にCu30nm、Si10nmの連続膜1200を作成する。成膜後400℃にて熱処理を行い、熱処理後細孔壁上のFePt連続薄膜部分を研磨により除去し、柱状構造体上部を露出させる。300℃程度で形成するCuシリサイドの歪みエネルギーの影響により、FePtの規則合金化が促進され、AGMにて保磁力の大きさを測定するとHc〜3000 Oe以上である。上部歪み誘起層となるCu及びSi層を形成する事で、細孔内部のFePt規則合金相形成温度を低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明に係る構造体の製造方法は、例えばハードディスクやメモリなどの磁気記録媒体の構成材料に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明に係る製造方法を説明する為の模式的断面図である。
【図2】本発明に適用される細孔を有する構造体を説明する為の図である。
【図3】本発明に係る構造体を説明するための図である。
【図4】本発明に係る製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係る構造体を利用した磁気記録媒体の構成例を説明するための図である。
【図6】本発明に係る製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明に係る製造方法を説明するための模式的断面図である。
【符号の説明】
【0160】
1000 部材
1011 孔
1012 孔壁
1050 多孔質部
1055 非多孔質部
1122 孔上に設けられている膜
1112 孔壁上に設けられている膜
1022 孔内に充填されている充填物
1200 第2の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法であって、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に第2の材料を含み構成される膜を成膜する成膜工程、及び
該膜を有する該部材を熱処理する熱処理工程を有することを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項2】
多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法であって、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に該合金を構成する第2の材料を成膜することによって、該充填物と繋がり、且つ該多孔質層の孔上及び孔壁上を被覆する膜を該部材上に設ける成膜工程、及び
該多孔質層の孔上及び孔壁上を該膜が被覆した状態で該部材を熱処理する熱処理工程を有することを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の材料が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の材料のいずれか一方の材料は、Fe、Co、あるいはNiの少なくとも1種類の元素を含み構成され、他方がPtあるいはPdの少なくとも1種類の元素を含み構成されることを特徴とする請求項1に記載構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の材料が同じであることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項6】
前記規則化した合金の規則化構造が、L1型あるいはL1型である請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質層の孔が柱状構造の細孔であり、該細孔の平均直径が1nm以上40nm以下である請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
前記充填物形成工程及び前記成膜工程が、前記合金を構成する材料のめっき処理により行われることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項9】
前記めっき処理は、前記多孔質層の前記孔から前記材料が溢れ、且つ複数の孔から溢れた前記材料同士が、前記孔壁上でそれぞれ繋がっていることを特徴とする請求項8に記載の構造体の製造方法。
【請求項10】
前記充填物形成工程及び前記成膜工程の少なくとも一方が、前記合金を構成する材料を用いたドライプロセスにより行われることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項11】
前記成膜工程により前記部材上に設けられる膜の厚さが、1nm以上の厚さを有する連続膜であることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項12】
前記成膜工程後、前記膜上に、第3の材料を含み構成される第2の膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項13】
前記第2の膜が、前記合金の配向制御及び/または規則合金化温度の低減に寄与する膜であることを特徴とする請求項12記載の構造体の製造方法。
【請求項14】
前記第2の膜が、ZnO、MgO、Cu、あるいはCuとSiの積層膜から選ばれていることを特徴とする請求項12に記載の構造体の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理工程が、還元性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理工程後、前記部材上の前記膜を除去する工程を有する請求項1に記載の構造体の製造方法。
【請求項17】
多孔質層の孔内に規則化した合金を有する構造体の製造方法であって、
表面に多孔質層を有する部材を用意する工程、
該多孔質層の孔内に該合金を構成する第1の材料を充填する充填物形成工程、
該多孔質層上に第2の材料を含み構成される膜を、該充填物と繋がるように成膜する成膜工程、及び
該充填物を規則合金化処理する工程を有することを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項18】
基板上に柱状の孔を備える部材有し、該孔内に充填物が設けられている構造体であって、
該充填物は、該柱状の孔の深さ方向に第1の領域と第2の領域を備え、該第1の領域は規則化している合金領域であり、
該基板側の該第2の領域は、該第1の領域よりも規則化の程度が低い合金領域、あるいは非合金領域、あるいは該第1の領域とは異なる規則構造を有する領域であることを特徴とする構造体。
【請求項19】
基板上に磁性層を有する磁気記録媒体であって、
該磁性層は、該基板側から第1の磁性層と第2の磁性層を含み構成され、
該第1の磁性層は、第1の磁性材料が非磁性体により分離されており、且つ該第2の磁性層は第2の磁性材料が連続的に繋がっていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項20】
前記第1の磁性材料と第2の磁性材料との磁気特性が異なる請求項19記載の磁気記録媒体。
【請求項21】
前記第1の磁性層の保磁力が、前記第2の磁性層の保磁力より大きいことを特徴とする請求項19記載の磁気記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−107086(P2007−107086A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98005(P2006−98005)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】