説明

構造化充填物を有する物質移動装置

波様の形状を有する構造化充填物に用いる層10が含まれており、波様の形状によって、複数の開放通路12、14、16が形成される吸収装置又は脱着装置である。本発明によれば、前記開放通路は、第1の波の谷22、第1の波の山32及び第2の波の山42を有している。第1の波の山32及び第2の波の山42は、第1の波の谷22の境界を定めている。第1の波の山及び第2の波の山は、第1の頂部及び第2の頂部を定めている。第1の頂部33の方向に延在している凹所34は、第1の波の山32の第1の頂部33に形成されている。第1の波の谷22は谷底23を有しており、凹所34の少なくとも1つの点から波の谷22の谷底23までの垂直距離27は、第1の頂部33から波の谷22の谷底23までの垂直距離28より短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化充填物及びこのような構造化充填物を収容する物質移動装置、例えば吸収塔又は脱着塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造化充填物は、商用の実施例では、次々に配置された、互いに連続的に交差する傾斜した通路を有する構造の折畳み金属シートとして製造されている。この通路は、充填物内における気相及び液相の流れに有利な影響を及ぼし、相間の物質移動を促進している。つまり、気相及び液相が充填物の通路内で接触し、相間の物質移動が促進されている。
【0003】
構造化充填物の分離能力を高くするために、通常、構造化充填物の表面は広くなっており、これは、ほとんどの場合に、充填層の数をより多くし、及び/又は通路の幾何構造をより緊密にすることによって実現されている。しかしながら、これらの手段は、構造化充填物内における圧力降下を増大させる原因になっている。このことから、圧力降下を小さくし、それにより、充填物の効率である分離能力の低下を小さくするためには、充填物の表面をより狭くしなければならないことが分かる。さらに、より開放された交差通路を提供することも可能である。より開放された交差通路とは、通路の傾斜角が流れの主方向に対してより小さくなるように選択されることを意味する。これは、用途に応じて、圧力降下と最良の可能分離能力との間で最適条件を見出さなければならないことを意味している。
【0004】
しかしながら、交差する通路には多数の接触位置があるため、いくつかの用途では有利な効果を有する可能性があるが、他の用途では不利な効果を有する可能性がある。
【0005】
デッドゾーンは、液体が流れる方向から見て接触位置の下流側に形成される可能性がある。このデッドゾーンでは、液体が物質移動に加わる程度は、構造化充填物上に存在している残りの液体と比べて小さい。この現象は、米国特許第6378332号明細書(B1)によってすでに公知であり、このようなデッドゾーンの発生を抑制することを意図した低温精留のための充填物が記載されている。米国特許第6378332号明細書(B1)による解決法は、個別層それぞれの高い折目及び低い折目を交互に配置することによって層と層の間の接触点の数を少なくすることに基づいている。
【0006】
このように、精留プロセスは、米国特許第6378332号明細書(B1)で知られており、この文献では、交差通路構造を有する、つまり互いに斜めに積み重ねられる波形金属シート又は折畳み金属シートで製造される構造化充填物が使用されている。隣接する金属シートは、うねの山に沿って、或いは縁に沿って互いに接触している。揮発性のより高い流体とりわけ気相は、揮発性のより低い流体とりわけ液相に対して、折畳み金属シート間を逆流することができ、物質移動を生じさせることができる。米国特許第6378332号明細書(B1)には、隣接する2つの金属シート間の接触点の数を少なくするための方法が示されている。そのために、個々の金属シートのうねの山又は縁のいくつかのみが最大高さを有するようにうねの山の高さ又は縁の高さを変化させておくようになっている。したがって、金属シートは、うねの山又は縁に沿って最大高さでのみ互いに接触する。
【0007】
米国特許第6378332号明細書(B1)によって提案されている充填物の欠点は、その機械的安定性が不十分であることである。さらに、充填物が占有する体積は、折目の高さが部分的に高くなくなっているため、幾何学的移動面積に理想的に一致してはいないため、結果としてこの構造設計には物質移動面積の損失が伴っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6378332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、本発明の目的は、同じ数又はより少ない数の接触位置を有し、安定性が改善された構造化充填物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、特に物質移動速度が液相によって制御される吸収装置又は脱着装置のための物質移動を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
解決法には、うねを有する構造化充填物に用いる第1の層を備えた吸収装置又は脱着装置が含まれており、このうねによって複数の開放通路が形成される。構造化充填物の第1の層は、第1のうねの谷、第1のうねの山及び第2のうねの山を含む複数の開放通路を有しており、第1のうねの山及び第2のうねの山は第1のうねの谷の境界を定めており、第1及び第2のうねの山は、第1の頂部及び第2の頂部を有している。第1の頂部の方向に延在しているへこみは、第1のうねの山の第1の頂部に形成されており、第1のうねの谷は谷底を有しており、うねの谷の谷底からのへこみの少なくとも1つの点の垂直間隔は、うねの谷の谷底からの第1の頂部の垂直間隔よりも狭い。
【0012】
さらに、うねを備えた第2の層を備えており、第1の層及び第2の層は、第1の層の通路と第2の層の通路が交差するように配置される。第1の層は第2の層と接触し、それによりへこみの個々の領域で接触が分断される。
【0013】
へこみを利用することにより、液体の流れを案内するためのさらなる可能性が得られ、しかも、充填物表面の最大濡れを可能にする接触位置の配置も得られる。
【0014】
好ましい実施例によれば、第2のへこみが第2の頂部に配置される。別法又は追加として、第3のへこみを第1の谷底に配置することも可能である。当然、複数の第1、第2又は第3のへこみを層の上に提供することができる。
【0015】
個々の層は、第1の周縁境界及び第2の周縁境界を含むことができ、第1の周縁境界は、第2の周縁境界に対して実質的に平行に配置されている。特に第1の周縁境界と第2の周縁境界の間に複数のへこみを配置することができる。
【0016】
同じ数又はより少ない数の接触位置で改良型安定性を得るために、充填物は、うねの高さが実質的に一定のうねを有している。
【0017】
好ましい実施例によれば、頂部の少なくとも一部は縁として構築されており、及び/又はうねの谷の少なくともいくつかはV字形に構築されている。
【0018】
したがって構造化充填物には、上で説明した実施例のうちの任意の実施例による第1の充填物層及び第2の層が含まれており、第2の層は、第1の層と同様のうねを有しており、第1の層及び第2の層は、第1の層の通路と第2の層の通路が交差するように配置されている。第1の層は、好ましくは第1の層のうねの山の複数の頂部と第2の層のうねの谷の複数の頂部が接触する点で、第2の層と接触している。
【0019】
へこみは、第1及び第2の層の各々の上に配置することができる。第1の層と第2の層の接触は、このへこみによって分断される。
【0020】
本発明による充填物は構造化充填物層で構築されており、構造化充填物層の折畳みは、すべて同じ高さになっている。それにより充填物の高い安定性が保証され、直径が大きい塔の場合、この高い安定性はとりわけ重要である。個々の層の交点の数の低減は、本発明によれば、へこみを導入することによって実現される。これらのへこみは、例えば頂部の塑性変形によって加えることができるレンズ状の窪みとして形成することができる。これらのへこみは、折畳み充填物層上の特定の位置に加えられ、したがって互いに定義済みの間隔で、且つ、互いに定義済みの位置で充填物層を分離することができる。
【0021】
代替として、挿入部材を加えることができる中空空間を準備することによって充填物層の中にへこみを付けることも可能である。
【0022】
さらに、へこみの少なくとも一部は、頂部の長さの最大75%に相当する長さにわたって延在している。へこみは、充填物のための安定性がより高い形状の周縁領域が形成されるように、第1及び第2の周縁境界のうちの少なくとも一方の間に配置されることが好ましい。
【0023】
へこみの各々は、とりわけへこみが頂部の長さの最大75%にわたって延在している場合には、中間に山を配置することができる。この場合、この中間にある山は、隣接する層の頂部に設けるか、或いは隣接する層に対して間隔を隔てて配置することができる。
【0024】
層の各々は開口を備えることができる。このような開口は、隣接する通路への気体及び/又は液体の通過を容易にすることができる。これらの開口は、うねの山又はうねの谷の頂部のうねの壁断面にも(手前に)配置することができ、或いは同じくへこみの断面に(手前に)配置することも可能である。
【0025】
可能であれば、へこみの製造は、整形プロセスによって層の製造と共に実施される。これによって、層の製造は、最も少ない工程ステップ数で実施することができる。そのために、へこみは、定義済みの位置、例えば充填物層の上縁及び下縁におけるプレス、打抜き又は深絞りによってシート・メタルから製造することができる。個々の層が互いに積み重ねられると、へこみの領域では、通路がそれぞれ互いに接触することはない。層の上縁及び下縁又は層の側縁のいずれかにおける少なくとも個々の2つの周縁領域にはへこみは存在していないため、うねの高さによって定義される間隔を隔てて隣接する層を互いに保持するための十分な接触位置、詳細には接触点が存在している。周縁領域の各々に複数のへこみを準備することにより、接触位置が実質的に低減されるだけでなく濡れた充填物表面が最大化される。これと同時に、個々の層が安定し、かつ、複数の層で構成される充填層本体も安定する。
【0026】
個々の充填物層の間隔は、へこみが開放通路の境界を定めている複数の頂部に位置している場合であっても一定に維持されている。頂部は、うねの山、又は通路の隣接する2つの側面によって形成される先端である縁のいずれかとして理解することができる。
【0027】
物質移動は、より揮発性の流体の精製、特に気体の精製のために逐次実行される、複数の部分的なステップの中で生じる。気体に含まれている分離される成分は、対流及び拡散によって液体の界面に輸送される。次に、これらの成分は、界面を通過し、液体中に取り込まれることになる。物質移動を改善するためには、液体のための可能な限り広い物質移動領域を提供しなければならない。
【0028】
本発明の他の目的は、接触位置による物質移動の変化が最小になるように接触位置の配置を選択することである。
【0029】
接触位置は、詳細には、上で説明した実施例のうちのいずれかの実施例による装置の第1の層の周縁領域に数を増やして配置される。従来技術とは対照的に、この配置においても、接触位置の分布は依然として一様であることが望ましいが、接触位置の数が少なくなるため、本発明によれば充填物の表面全体にわたる接触位置の一様な分布が完全になくなる。このように、少数の接触位置で互いにより緊密に置かれる場合、流れが制限され、そのために接触位置の後方に逆流がもたらされるため、接触位置の後方の濡れていない表面が減少する。したがって濡れていない表面がより少ないいくつかの接触位置が得られ、要するに総表面に対する濡れていない面積の最小比率が得られる。
【0030】
装置の有利な実施例によれば、個々の層の上に複数のへこみが配置される。この場合、すべての層が同じ構造を有し、したがって製造労力及び/又はコストが低減される。層は、この形態で連続的に製造することができ、帯が連続的に折り畳まれ、その間にへこみが同じく製造される。へこみを備えた折り畳まれた帯が所望の寸法に切断される。所望の寸法に切断された帯部品によって層が製造され、それぞれの第2の層が回転されることで、それらが互いに隣接して互いに積み重ねられると、交差した配置の層が得られる。
【0031】
物質移動装置、特に塔は、上で説明した実施例のうちの任意の実施例による構造化充填物を含むことができる。
【0032】
構造化充填物を含んだ物質移動装置内で流体を精製するための方法は、揮発性がより小さい流体を物質移動装置に供給するステップと、供給された揮発性がより小さい流体を充填物の表面全体に分配するステップと、より揮発性が大きい流体を物質移動装置の流体入口領域に供給するステップと、気体入口領域のより揮発性が大きい流体を充填物の表面全体に分配するステップであって、より揮発性の大きい流体が液体に対して逆流するステップと、流体出口領域で充填物から流出するより揮発性の大きい流体を収集するステップが含まれており、構造化充填物には第1の層及び第2の層が含まれており、第1の層及び第2の層は、うねの高さが一定のうねを有しており、該うねによって開放通路が形成され、第1の層の通路と第2の層の通路が交差し、より揮発性の流体が通路を通って流体入口領域から流体出口領域の方向へ流れ、揮発性がより小さい流体が、通路を通って流れ、且つ、通路の壁に沿って流れるより揮発性の大きい流体を取り囲んでいる。第1の層は、うねの山の複数の頂部を介して第2の層と接触しており、したがって物質移動は、通路によって形成される物質移動領域全体にわたって、より揮発性の大きい流体とより揮発性が小さい流体との間で生じる。
【0033】
へこみを使用することによって、また、接触位置の配置によって、物質移動装置内の充填物表面の液体濡れを最大にすることができる。
【0034】
充填物は、折畳みの高さがすべて一様である構造化層でできていることが好ましい。それにより充填物の高い安定性が得られ、直径が大きい塔の場合には、この高い安定性はとりわけ重要である。個々の層と層の間の交点の数は、本発明によれば、2つの個々の層のうちの少なくとも一方のうねの山の複数の頂部にへこみを導入することによって少なくなる。
【0035】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】複数の充填物層を含んだ本発明による装置を示す図である。
【図2a】本発明による2つの隣接する充填物層の断面図である。
【図2b】本発明によるうねを備えた2つの隣接する充填物層を示す図である。
【図3】従来の充填物層を揮発性がより小さい流体の流路と共に示す図である。
【図4】従来技術の解決法による交点を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例の交点を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例の交点を示す図である。
【図7a】層の上の本発明によるへこみの配置の変形態様を示す斜視図である。
【図7b】折畳み方向の図7aによる層を示す図である。
【図8a】従来技術による、横荷重下における充填物の変形を示す図である。
【図8b】本発明による、横荷重下における充填物の変形を示す図である。
【図9】本発明の応用例としての吸収層を示す図である。
【図10】気相側制御吸収システム又は脱着システムのためのNTUM値に対する測定値を示すグラフである。
【図11】液相側制御吸収システム又は脱着システムのためのNTUM値に対する測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、充填物・ボディを形成している構造化充填物7のいくつかの層を含んだ本発明による装置1を示したものである。2つの流体相の間での物質移動のための手段は、構造化充填物7として理解される。構造化充填物7は、物質移動装置2に使用されている。物質移動装置は、詳細には、吸収又は脱着のために使用することができる塔5として構築することができる。
【0038】
構造化充填物7は、互いに規則的に繰返す幾何学的関係にある複数の層からできている。この幾何学的関係のための一実例として、隣接する層の間隔を選択することができる。この幾何学的関係によれば、隣接する層の互いの間隔は、周期的に同じ値を用いることができ、これにより同じ間隔又は少なくとも周期的に同じ間隔である複数の層を足し合わせると1つの構造が生じるようになる。この周期性は構造化充填物の全体に見出され、したがって充填物は規則的な構造を有している。この構造は、特にうねとして構築することができる。
【0039】
これとは対照的に、バルク充填体(bulk−fill)充填物は、バルク充填体から、すなわち同じ幾何学的構造を有する部材から作成されるが、個々のバルク充填体は隣接するバルク充填体から所望の間隔を有することができるため、これらの間隔の周期性を認識できない。バルク充填体は、充填材として塔の中に導入される。バルク充填体は、塔の基底に山を形成する。この山は、個々のバルク充填ボディにおいて無作為に配置されることを特徴としている。
【0040】
図1による層は、薄い壁状の波形部材でできている。これらの波形は、周期的に繰り返す波形の山の部分である高められた部分、及び波形の谷である谷様凹所の連続を特徴としている。これらの波形(うね)は、詳細には、鋭角に収斂する縁を有するジグザグ断面を備えた折畳みとして構築することができる。層は互いに相対的に配置され、したがって隣接する2つの層のうねは、流れの主方向に対して一定の角度で傾斜している。隣接する層のうねは、互いに対して斜めに配置されている。
【0041】
図2aは、図1による構造化充填物7の隣接する2つの層10、100を示したものである。第1の層10は第2の層100に隣接して配置されている。第1の層10及び第2の層100は、詳細にはシート・メタルの部材又は金属織物の部材を含むことができる。これらの層は、それらの代替としてプラスチックの部材又はセラミック材料の部材を含むことも可能である。この点に関して、部材は全体層を含むことができるが、それらの一部のみを形成することも可能である。部材は、うね、詳細にはジグザグ断面を含んだ板、又は丸い山及び谷底を有するうねを含んだ板の形態を有することができる。部材は、腐食などの化学的な影響、又は温度などの熱による影響、或いは圧力などの機械的な影響に対する層の耐性をより永続的にするために、プラスチック又はセラミックのコーティングを有することができる。
【0042】
図2aの第1の層10及び第2の層100は、充填物7の第1の表面8の詳細を示す観点で示されている。充填物7の第1の表面8は、流れの主方向6に対して実質的に直角に配置されている。この流れの方向は、流れの主方向6と呼ばれており、より揮発性の流体、特に気体が、装置が設備されていない塔5のヘッドの方向である上に向かって流れる。この流れの方向に対する代替として、逆の方向も同じく流れの主方向として定義することができる。この場合、流れの主方向は、一般的には液体である揮発性がより小さい流体が、装置が設備されていない自由落下状態で塔を通って流れる方向に対応している。充填物内では、充填物の層によって流れがそらされるため、流れの方向が流れの主方向から局所的に逸脱する。
【0043】
構造化充填物7の第1の層10はうねを有しており、このうねによって複数の開放通路12、14、16が形成されている。これらの開放通路には、第1のうねの谷22、第1のうねの山32及び第2のうねの山42が含まれている。第1のうねの山32及び第2のうねの山42は、第1のうねの谷22の境界を定めている。第1のうねの山32及び第2のうねの山42は、第1の頂部33及び第2の頂部43を有している。第2の頂部43の方向に延在しているへこみ44は、第2のうねの山42の第2の頂部43の上に形成されている。第1のうねの谷22は谷底23を有している。第1のうねの谷22は谷底23を有しており、うねの谷22の谷底23からのへこみ34の少なくとも1つの点の垂直間隔27は、うねの谷22の谷底23からの第1の頂部33の垂直間隔より狭い。
【0044】
第1のうねの山32の第1の頂部33と第1のうねの谷22の谷底23の間の垂直間隔は、うねの高さ28と呼ばれる。したがってうねの高さ28は垂直間隔27より高い。本発明による層の場合、谷の高さ28は、詳細には実質的に一定であり、つまり0.5mmの範囲内である一般公差の範囲内にある。
【0045】
第1のへこみ34は第1の頂部33に配置することも可能である。第2のへこみ24は、第1の谷底23に選択的に配置することも可能である。
【0046】
構造化充填物7の第2の層100はうねを有しており、このうねによって複数の開放通路112、114、116が形成されている。これらの開放通路には、第1のうねの谷122、第1のうねの山132及び第2のうねの山142が含まれている。第1のうねの山132及び第2のうねの山142は、第1のうねの谷122の境界を定めている。第1のうねの山132及び第2のうねの山142は、第1の頂部133及び第2の頂部143を有している。第1の頂部133の方向に延在しているへこみ134は、第1のうねの山132の第1の頂部133の上に形成されている。第2の頂部143の方向に延在しているへこみ144は、第2のうねの山142の第2の頂部143の上に形成されている。第1のうねの谷122は谷底123を有している。へこみ134及びへこみ144は、うねの谷122の谷底123からの第2のうねの山142の第2の頂部143よりも狭いうねの谷122の谷底123からの垂直間隔を有している。頂部の少なくとも一部は縁として構築することができる。うねの谷の少なくともいくつかはV字形で構築することができる。谷底と頂部の間の垂直間隔は、図2aによる層のすべてのうねの山に対して本質的に同じである。
【0047】
図2bは、うねを有する構造化充填物の隣接する2つの層を示したもので、この図2bによれば、頂部は丸い部分として構築されており、鋭角の縁は全く形成していない。それ以外については図2aの説明を参照されたい。
【0048】
図3は、接触位置の配置による層の表面の湿潤性(wettability)に対する影響を示したもので、例えば図2a又は図2bに示されている充填物の層10の表面の湿潤性に対する影響を示したものである。この点に関し、図3aには、従来技術による配置が示されている。層10は層100を覆っており、層100は図面の平面の背後に位置しているため見えない。層10の第1の頂部33、第2の頂部43並びにそれらの間に配置されている谷底23が一例として示されている。第1及び第2の頂部33、43並びに谷底23は折畳み縁を形成している。頂部33、42は、層100に属している谷底123に位置している。層10の各々及び層100の各々には、当然、複数の他の頂部及び谷底が含まれているが、それらは、示されている頂部及び谷底と同じであるため、特に示されていない。図3では、うねの山の頂部に属している線は、谷底に属している線より太くなっている。さらに、第2の層100のうねの山の頂部には長いダッシュ線が提供されており、また、層100の谷底には短いダッシュ点線が提供されている。図3に円のマークが付けられている接触点48は、層10の谷底と層100の頂部が一致する点で生じている。これらの接触点は、示されている2つの層10、100の総表面全体に一様に分布している。
【0049】
図3から、接触点は互いに極めて接近して配置され、そのために濡れていない表面の微小帯域46の数が極めて多く、したがって充填物の総面積に対して比較的広い部分が濡れていない表面になっていることが分かる。図3には、1つの単一の帯域46のみが示されており、矢印47は、揮発性がより小さい流体の流れを記号で示したものである。
【0050】
図4は、例えば、米国特許第6378332号明細書(B1)の中で提案されているように層を折り畳むことによって接触点を少なくする事例を示したものである。著しく数が少ないものの、より広い面積の濡れていない領域46が、矢印47で示される揮発性のより小さい流体の流れによって生じる。液体の流れは、この実施例ではさらにそらされる。要するに、この場合も、層10の総表面のうちの濡れていない広い部分が出現する。図4による層の幾何学形状については、図8aで詳細に考察する。
【0051】
図5は、本発明による、隣接する層10と100の間の接触点48の配置を示したものである。層100は層10の背後に配置されている。描写に関しては図3を参照されたい。接触点の数は、層10の表面に関しては少なくなっている。接触点は、詳細には、表面全体にわたって一様には分布していない。
【0052】
一方、いくつかの接触位置が互いにより緊密に配置され、したがって互いに短い距離で配置されると、流れが制限され、そのために接触位置の後方に逆流がもたらされ、延いては接触位置の後方の濡れていない表面が減少する。したがってより少ない数の濡れていない表面を有するいくつか接触位置が得られ、要するに層の総表面に対する濡れていない面積の最小比率が得られる。
【0053】
層10には、第1の周縁境界50及び第2の周縁境界60が含まれており、第1の周縁境界50は、第2の周縁境界60に対して実質的に平行に配置されている。層を垂直方向に整列させることにより、周縁境界50は上部界面まで及んでおり、また、第2の周縁境界60は下部界面まで及んでいる。層10には、さらに、第1の周縁境界51及び第2の周縁境界61が含まれている。第1の周縁境界51及び第2の周縁境界61は、物質移動装置の内壁、詳細には塔の内壁に隣接して延在しており、層は充填物内で垂直方向に整列している。少なくとも1つの他の充填物が隣接する間隙は、上部界面の少なくとも1つ、又は下部界面の少なくとも1つに隣接させることができる。
【0054】
接触位置48は、第1及び/又は第2の周縁境界50、51、60、61の近傍に配置される。隣接する層は、これらの接触位置で互いに接触する。他の接触位置は、周縁境界に近いこれらの接触位置間では、へこみを加えることによって少なくとも部分的に回避される。図2a又は図2bによる第1、第2又は第3のへこみ24、34、44のうちの1つと同じ構造を有することができる複数のへこみは、第1の周縁境界50、51と第2の周縁境界60、61の間に配置される。
【0055】
へこみは、当然、第1及び第2の周縁境界の各々の少なくとも一方の近傍にも配置することができる。
【0056】
図6は、他の変形態様をさらに示したもので、接触位置は、互いに隣接してではなく、互いの上に配置されている。この場合も、接触位置に沿って流れる液体により、接触位置と接触位置の間の濡れていない領域の最小化がもたらされる。
【0057】
図7aは、本発明による層10を斜視図で示したものである。図7bは、図7aによる層を折畳みの方向から見た図である。関連する構造化充填物1には、第1の層10及び第2の層100が含まれており、第2の層100は、第1の層10と同様のうねを有していることが好ましい。第1の層10及び第2の層100は、第1の層10の通路と第2の層100の通路が交差するように配置されている。第1の層10は、第1の層10のうねの山の反対側に配置された第2の層100のうねの谷の複数の頂部を介して第2の層100と接触している。第1及び第2の頂部33、43、133、143は、第1及び第2の層10、100の各々の上に配置されている。接触位置を形成している第1及び第2の頂部33、43、133、143は、図5又は図6のように配置されている。接触位置は、これらの図に円で示されている。円がない位置には接触点は存在せず、その代わりにへこみが存在している。
【0058】
第2の層100は、分かり易くするために図7には図式では示されていない。第1の層10のへこみ24、44は、図には示されていない、図7の頂部に配置されることになる第2の層100のうねの谷の第1及び第2の頂部からのすきまを少なくとも1つの点で有している。第1の周縁境界50の近傍に配置されているへこみ44は、層10の第1の側11の凹所部分としてそれらが構築されるように配置されることが好ましい。第1の周縁境界50と第2の周縁境界60の間に配置されているへこみ24は、層10の第2の側13のへこみとして構築されている。層10の第1の側11は、第2の側13の反対側に配置されており、層の個々の表面のうちの一方を形成している。
【0059】
これらのへこみは、詳細には、第1及び第2の層10、100において垂直方向に整列させて互いに真下に配置することができる。この配置の代替として、或いはこの配置と組み合わせて、第1及び第2の層において垂直方向に整列させてこれらのへこみを互いに隣り合わせに配置することも可能である。
【0060】
また、窪みとして構築されない他のへこみ、或いは窪みとして排他されない他のへこみを、層10、100の頂部に沿って配置することも可能である。このようなへこみは、挿入部材が含まれる中空空間を含むことができ、断面は、隣接する層の頂部から間隔を隔てている。断面は、断面が少なくとも部分的に垂直方向の折畳み高さよりも低くなるようになされている。折畳み高さは、うねの山と隣接するうねの谷の間の間隔として理解される。うねの谷が有限曲率をその頂部に有している場合、この間隔は、互いに平行に配置された2つの頂部ポイント接線同士の垂直間隔として定義される。曲率が無限である場合、つまり頂部が鋭角で、したがって最高点が明確に定義される接線を有していない場合、層の一つの面のすべての頂部ポイントを含んだその最高点を通る平面が配置される。同様に、そのうねの谷及び他のうねの谷のすべての点を含んだうねの谷の最低点を通る平面が配置される。これらの2つの平面は互いに平行でなければならない。このことから、折畳み高さは、これらの2つの平面の間の垂直間隔であることが分かる。
【0061】
上で説明した実施例のうちのいずれかの実施例によるへこみは、頂部又は縁の一部にわたって延在している。これらのへこみは、成形、つまりプレス、打抜き又は深絞りによって、層のための素材、例えば充填物金属シートから製造することができる。これらのへこみは、有利には、折畳みのうねの山又は谷の頂部の一方の側に加えられる。
【0062】
この構造の利点は、際限なく長い素材を加工することができることである。このような素材は、例えば板様金属シートとして帯材料で製造することができる。次に、帯材料から特定の長さの部分が切断される。これらの部分が例えば曲げプロセスによってうねの形に変換される。うねへの変換の代替として、既にうねを有している帯材料が使用される。次に、うねを有する長さに切断された部分によって層が形成される。曲げ手順の間にへこみが製造されるよう、曲げ手順の間、これらのうねに成形手順を重ねることができる。次に、すべての第2のうねを回転させることにより、整合する方法で第1の層10及び第2の層100が互いに積み重ねられる。すべての層の間の上部周縁境界及び下部周縁境界の近傍及び/又は横方向の周縁境界の近傍に、少なくとも1列のへこみが配置される。
【0063】
これらのへこみの深さは、層の高さの10%から30%までの範囲の深さであることが好ましく、それにより個々の層の間に、ちょうどこの範囲の値の間隙が得られる。これらの間隙の幅は、水システムの場合、最小1.5mmまでである。間隙の幅がこれより狭くなると、隣接する2つの縁と縁の間に液体、特に水が捕捉され、そこに水が留まって液体架橋が形成されることがあるため、場合によっては不利になることがある。
【0064】
図8aは、接触位置を少なくするために可変高さの折畳みを有する、公知の構造形状による層を示したものである。この構造形状の欠点は、上側及び下側に荷重がかかると層が圧縮されることであり、矢印20、21は、層が圧縮される力の方向を示している。折目には、第1の頂部65及び第2の頂部85並びにそれらの間に配置されたうねの谷75が含まれている。第1及び第2の頂部65、85は、図には示されていない隣接する層と接触することができる。折畳みを形成している中間のうねの谷66及び中間のうねの山67は、第1の頂部65と谷底75の間に配置されている。中間のうねの谷66は中間の谷底68を有しており、また、中間のうねの山67は中間の山69を有している。中間の谷底68と中間の頂部69の間の垂直間隔70は、頂部65と谷底75の間の垂直間隔71より小さい。垂直間隔70は、図8aに示されている実施例では、垂直間隔71のほぼ半分の大きさである。したがって中間のうねの谷66と中間のうねの山67の間に、高さが半分の折目が形成されている。高さが半分のこの折目は、しわくちゃの帯域として機能し、変形することができる。一方では、この変形のために安定した充填物本体を構築することはできず、他方では、層の高さが固定された充填物の観察もできない。層の高さは、上で定義した垂直間隔71に対応している。
【0065】
この問題は、本発明による構造形状によって回避することができる。図8bに示されているように、個々の折目の上にへこみを備えた層はほとんど圧縮されず、上側及び下側に層にいっそう大きい負荷をかけることができる。したがって、安定した充填物本体を設計することができ、且つ、実質的に一定の層の高さを保証することで特定の充填物表面を得ることができる。
【0066】
さらに、物質移動のためにへこみの表面を利用することができる。これは、物質移動領域における利得が、従来技術との比較で期待されるだけでなく、うねの高さが一定であるうねを備えた交差層を有する従来の充填物との比較でも期待されることを意味している。
【0067】
図9は、吸収システム90を示したものである。吸収システム90には、吸収装置91及び脱着装置92の2つの物質移動装置が含まれており、これらは、特に塔として構築されている。吸収システムの吸収装置91の中で、気体の流れから1つ又は複数の成分が分離される。そのために液体溶媒又は吸着剤が使用されている。脱着装置92の中で、これらの溶媒又は吸着剤は、取り上げられた成分から精製される。
【0068】
吸収及び精留は、いずれも、既存の供給流93から1つ又は複数の成分を分離する分離プロセスである。精留は、個々の成分の異なる沸点に基づいて液体混合物を分離するために使用され、精留は連続蒸留として理解されており、この連続蒸留には具体的には複数の分離ステップが含まれている。一方、吸収では、適切な溶媒又は吸着剤94の助けを借りて、気体の流れから1つ又は複数の成分が分離され、したがって気体の流れから1つ又は複数の成分が分離される。したがって吸収装置91の高い部分にできる製品は、精製された気体の流れ95である。吸収装置91の底にできる製品96は、1つ又は複数の成分を帯びた吸着剤又は溶媒である。吸着剤又は溶媒を精製し、且つ、精製された溶媒又は吸着剤94としてそれを再び吸収装置に供給することは、経済的、エネルギー的又は環境学的理由から賢明なやり方である。吸着剤又は溶媒の精製は脱着装置92の中で行われる。吸収装置の底にできる生成物96である、成分を帯びた吸着剤又は溶媒は、脱着装置の供給流となる。この供給流は、図10による液体として脱着装置に供給される。脱着装置92は、上で説明した実施例のうちのいずれかの実施例による1つ又は複数の充填物を含むことができる。成分を帯びた溶媒又は吸着剤は、水溜め95の方向に流れる。吸着剤又は溶媒は、水溜めの中で少なくとも一部が蒸発し、そのために水溜め蒸発器98が提供されている。水溜め蒸発器の中で蒸発する吸着剤又は溶媒は、分離すべき成分を含んでおり、そして塔の中を上昇している間に水溜めの方向に流れる成分を帯びた吸着剤又は溶媒の供給流から、分離すべき成分を吸収する。したがって、脱着装置中で気体状の部分流99が生じ、この部分流99には、分離すべき成分が豊富に含まれている。分離すべきこれらの成分は、熱的に、つまり凝縮によって分離することができ、或いは他の下流側分離ステップを介して、気体状の部分流99から分離することができる。
【0069】
これに対する代替又は追加として、吸収装置より低い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は膨張装置を備えることもでき、或いは吸収装置より高い圧力で脱着装置を動作させなければならない場合は圧縮装置を備えることもできる。
【0070】
気体と液体の間の物質移動は、通常、精留における両方向の水溜めから塔頂部までの温度降下に基づいて生じている。沸点がより高い流体は、気相から凝縮して液体中に取り込まれ、また、沸点がより低い流体は、液相から気相に蒸発する。吸収の場合、物質移動は一方向にのみ行われ、ここでは気体が、液体によって吸収される。
【0071】
精留と吸収の間の相違は、精留では気体の流れ及び液体の流れが互いに対になっており、一方、吸収ではこの両方の流れを互いに独立して設定することができることにある。精留では、特定の量の液体が蒸発し、塔の塔頂部の方向に上に向かって上昇する。すべての蒸気は、塔頂部で凝縮し、少なくともその一部が液体の流れとして再び塔の中に導かれる。したがって考えられる最大液体量は、塔頂部に到達する蒸気の総凝縮量である。水溜めの中で蒸発する液体が多ければ多いほど、より多くの液体が流れて戻ることになる。この点で、両方の流れが互いに対になっており、物質移動は、決定的に蒸気の流れに依存している。したがって精留は、概して気体側で制御される。
【0072】
一方、吸収の場合、ポンプ及びファンの助けを借りて異なる動作条件を設定することができ、大量の吸着剤の流れを比較的少量の気体の流れに接触させるか、或いはその逆に大量の気体の流れを比較的少量の吸着剤の流れに接触させることができる。さらに、吸着剤は、異なる方法で、例えば物理的に、化学反応によって、或いは物理的且つ化学的に気体成分を吸着剤に結合させることができる。この点に関し、特定の気体成分のための吸着剤又は溶媒の選択、及び気体並びに液体中における濃度の選択は、物質移動の制御がほとんど気体側で実施されるか、或いはほとんど液体側で実施されるかどうかの決め手になる。
【0073】
本発明による充填物の適用可能性を検査するために、接触点の数を少なくするための本発明によるへこみを含んだ充填物の試作品が製造された。調査された事例では、2つのうねの山の間のへこみによって生成される距離は2.5mmである。したがって試作品の接触点の数は、37’500m−3から18’000m−3に減少している。したがって、205m/mの同じ総表面で従来技術と比較すると、約50%の接触点の低減が達成される。
【0074】
この試作品は、へこみのない公知の充填物、例えば同じ幾何学的表面積を有するスイス連邦特許第398503号明細書による充填物と比較できる。この試作品のへこみは、接触位置の数を少なくしている。さらに、充填層の通路に沿って流れる気体を、斜めに配置されている充填層の隣の通路にへこみを介して流入する側流として部分的に導入することも可能である。気体の流れのこの変化のため、試作品では分離効率が低減することが期待される。
【0075】
上で言及した試作品は、最初に、内径が300mmの吸収塔の中で試験された。水を含んだ空気からイソプロパノールが吸収された。したがって、精留の場合と同様に、主として気体側で制御されるシステムが得られる。予測されたとおりに、より少ない数の移動単位即ちNTUM(1メートル当たりの移動単位の数)がこの試作品に対して測定され、これは、図10に、第1の一連の測定点52、53、54として示されている。物質移動に関しては、NTUMの数が大きいほど、充填物の効率が高くなる。このグラフ表現には、スイス連邦特許第398503号明細書による充填物及び本発明による充填物の、F係数として1.5Pa0.5を選択した場合のNTUMが例示的に示されている。液体負荷Lが変更された。F係数は、気体の密度の平方根を掛け合わせた、空の塔内における平均気体速度に対するインジケータである。F係数は、気体の運動エネルギーに比例する。スイス連邦特許第398503号明細書による公知の充填物に対する測定点55、56、57は、本発明による充填物の測定点52、53、54よりも高いNTUM値を示している。
【0076】
これらの知見によれば、接触位置の数が少なく、かつ、充填層と充填層の間の距離がより長い本発明による充填物は、圧力降下を小さくするものの、図10におけるより低いNTUM値から分かるように、追加的に分離効率の低下をもたらすことが示されている。したがって、このような充填物は、吸収又は精留には有利な充填物ではないように思われ、精留には明らかに有利である米国特許第6378322号明細書(B1)に示されている充填物とは著しく異なっている。
【0077】
驚くべきことには、さらなる試験によれば、本発明による充填物によって分離効率を改善することができる物質のシステムが存在することが分かった。調査された、物質の第2のシステムは、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を含んだ空気からのCOの吸収であり、そのためにCOが化学的に結合している。図11は、液体負荷が約10m/mh乃至80m/mhのための試作品を備えたこのシステムの測定点を示したもので、測定点58、59、63、64、72、73、74における試作品に対するNTUM値は、公知の充填物に対する測定値78、79、83、84、86、87、88よりも高くなっている。図11に示されているように、本発明による充填物によれば、少ない接触位置の数で、基準充填物の分離効率と少なくとも同じ分離効率が得られる。これは、実際には、接触位置を少なくし、且つ、接触位置を適切に配置することによって分離効率を改善することができることを意味している。それと同時に、本発明による充填物を使用することによって圧力降下を小さくすることもできる。図11の下側の曲線は、F係数が1.5Pa0.5の場合に揮発性がより小さい流体を備えた物質移動装置の負荷が増加した、スイス連邦特許第398503号明細書による市販の構造化充填物のNTUMを示したもので、負荷Lは、グラフのx軸上のm/mhで示されている。図11の上側の曲線102は、本発明による構造化充填物のNTUMを下側の曲線と比較して示したものである。同じ負荷Lで調査されたすべての測定点に対して、NTUMは、へこみを備えた充填物を使用する場合の方が、へこみを備えていない充填物を使用する場合より大きいと言える。
【0078】
本発明による充填物は、燃焼ガスの吸収処理に見られる利点をシステムに有している。このようなシステムでは、問題のある成分が反応性水溶液によって燃焼ガスから抽出される。環境を害する可能性のあるCOの発電所の燃焼ガスからの吸収には、実例として名前が付けられている。吸収は、MEA(モノエタノールアミン)又は炭酸カリウムなどの有機塩基性物質又は無機塩基性物質を含むことができる水成吸収手段を使用して実施される。
【0079】
したがって、特定の応用例において、接触位置の数を少なくすることによってより良好な吸収効率が得られる理由に対して次のような仮説を立てることができる。使用される液体の濡れ特性が乏しいため、その液体で全く濡れていない帯域が充填層の上の接触位置の背後に形成される。充填層の総表面を使用して液体をその表面全体にいきわたらせることはできない。液体は、接触位置でその流れが妨害され、保持され、且つ、両側に偏向する。水が膜として平らな表面を流れる場合にも同じことが観察され、導入された物体(例えば平面に置かれた指)によって流れが突然に攪乱される。膜の流れは、物体の背後で広がって乾燥し、濡れていない表面が生成され、この表面は、物体が流れから除去された場合にのみ、直ちにもう一度濡れることになる。吸収に使用する場合、本発明による修正によって害される気体の流れには、もはや分離効率に対する有害な影響はないため、分離効率を改善することができる。物質移動が気相側によって制御される水を含む空気からイソプロパノールを吸収するシステムの場合、濡れの程度は、物質移動に大きな影響は及ぼさない。液体水酸化ナトリウム(NaOH)中の空気からCOを吸収する場合のように、物質移動が液相側によって制御されるシステムの場合、完全に濡れた充填物表面によってNTUMが大きくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のうねを有する構造化充填物に用いる第1の層(10)を備えた吸収装置又は脱着装置であって、
前記第1のうねによって複数の開放通路(12、14、16)が形成され、
前記複数の開放通路が、第1のうねの谷(22)、第1のうねの山(32)及び第2のうねの山(42)を含み、
前記第1のうねの山(32)と前記第2のうねの山(42)との間に前記第1のうねの谷(22)があり、
前記第1及び前記第2のうねの山が、第1の頂部(33)及び第2の頂部(43)を有し、
前記第1の頂部(33)の方向に延在しているへこみ(34)が、前記第1のうねの山(32)の前記第1の頂部(33)に形成され、
前記第1のうねの谷(22)が谷底(23)を有し、
前記へこみ(34)の少なくとも1つの点での前記うねの谷(22)の前記谷底(23)からの垂直間隔(27)が、前記うねの山(22)の前記第1の谷底(23)から前記第1の頂部(33)までの垂直間隔(28)よりも狭くなっており、
第2の層(100)が設けられ、
前記第2の層(100)が第2のうねを有し、
前記第1の層(10)及び前記第2の層(100)が、前記第1の層(10)の前記通路と前記第2の層(100)の通路とが交差するように配置され、
前記第1の層(10)が前記第2の層(100)と接触する吸収装置又は脱着装置において、
前記接触が、第1、第2又は第3のへこみ(24、34、44)の各々で分断されることを特徴とする吸収装置又は脱着装置。
【請求項2】
第2のへこみ(44)が前記第2の頂部(43)に配置される、請求項1に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項3】
第3のへこみ(34)が前記第1の谷底(23)に形成される、請求項1又は請求項2に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項4】
第1の周縁境界(50、51)及び第2の周縁境界(60、61)を含み、前記第1の周縁境界(50、51)が前記第2の周縁境界(60、61)に対して実質的に平行に配置される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項5】
前記第1、第2又は第3のへこみ(24、34、44)が前記第1の周縁境界(50、51)と前記第2の周縁境界(60、61)の間に配置される、請求項4に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項6】
前記第1、第2及び第3のへこみ(24、34、44)のうちの少なくとも1つがレンズ状の窪みとして構築される、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項7】
前記うねの高さ(28)が実質的に一定である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項8】
前記頂部(33、43)の少なくとも一部が縁として構築される、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項9】
前記うねの谷の少なくともいくつかがV字形に構築される、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項10】
前記へこみ(24、34、34)が前記第1及び第2の層(10、100)の各々の上に配置される、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項11】
前記へこみ(24、34、44)が前記頂部(33、43)の長さの最大75%に及ぶ長さにわたって延在する、請求項1から請求項10までのいずれかに記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項12】
前記へこみ(24、34、44)が前記第1又は第2の周縁境界(50、51、60、61)のうちの少なくとも一方の内側に形成される、請求項4から請求項11までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項13】
前記第1の層(10)の前記へこみ(24、34、44)が前記第2の層(100)の前記へこみと少なくとも部分的に重畳して配置される、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項14】
前記へこみ(24、34、44)が中間にある山を備える、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。
【請求項15】
前記第1又は第2の層(10、100)のうちの少なくとも一方が開口を備える、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の吸収装置又は脱着装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−520755(P2012−520755A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500246(P2012−500246)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053491
【国際公開番号】WO2010/106119
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】