説明

構造物の据付方法および構造物

【課題】 基礎杭以外の仮設杭が不要で、基礎杭や上部構造物の設置時に歪みが生じた場合にも、上部構造物の設置高さを確実に調整し、各基礎杭に相応に荷重を配分して基礎杭と上部構造物とを一体化できる構造物の据付方法および構造物を提供すること。
【解決手段】 地盤3に基礎杭5を設置し、上部構造物1のジャケットレグ7に高さ調整装置13の鋼管39を挿入する。そして、高さ調整装置13の上端に設けた吊り点金具を吊点として上部構造物1を吊り下げ、基礎杭5をジャケットレグ7に挿入し、鋼管39のエンドプレート55を基礎杭5上に載置する。このとき、球面軸受け51を介して下部鋼管39cで中部鋼管39bを支え、スライドジャッキ45を介して中部鋼管39bで上部鋼管39aを支える。その後スライドジャッキ45を伸縮させて、上部構造物1の設置高さを調整し、基礎杭5と上部構造物1とを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の据付方法および構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋構造物を構築する際などに、(1)水底の地盤に仮受杭を設置し、上部構造物を仮受杭上に設置した後、直杭および斜杭を水底に打ち込んで上部構造物を固定する方法が用いられている。上部構造物は、仮受杭上に、水平に調整保持して設置される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、(2)あらかじめ水底の地盤に本設の基礎杭を打設し、上部構造物のレグを基礎杭に挿入して、レグと基礎杭とをグラウト材で固定する方法もある。この場合、レグとブレースで構成された上部構造物のレグの適切な位置に、基礎杭の外径より大きい径の支持材を設ける。そして、レグを基礎杭に挿入した際、支持材を基礎杭上端に当接させる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−44199号公報
【特許文献2】特許第3423394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法では、杭打設を2回(仮受杭、基礎杭)行う必要があるため、費用がかかり、工期が長くなる問題があった。また、基礎杭と上部構造物との連結工では、溶接工が杭頭まで降りる足場と作業床が必要である。
【0006】
また、(2)の方法では、上部構造物の設置高さを支持材の固定位置で調整するため、上部構造物の取り付け作業中には高さ調整ができない。高さ調整ができず、上床面に必要な勾配が確保できない場合は、調整コンクリート等を用いることとなり、荷重が増える。また、レグを基礎杭に挿入する際、複数のレグに設けられた支持材が同時に杭に当たらない(極端な場合、杭に当たらない支持材がある)と、杭の負担する荷重にバラツキが生じる。なお、複数の支持材を取付けるレグのいくつかは、構造物の吊点として使用する必要がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、基礎杭以外の仮設杭が不要で、基礎杭や上部構造物の設置時に歪みが生じた場合にも、上部構造物の設置高さを確実に調整し、各基礎杭に相応に荷重を配分して基礎杭と上部構造物とを一体化できる構造物の据付方法および構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、上段筒体と下段筒体からなる筒体と、前記上段筒体と前記下段筒体との境界部に設けられた球面軸受けと、前記筒体に対する前記上部構造物の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入して設置する工程(b)と、前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記球面軸受けを介して前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物の設置高さを調整する工程(d)と、前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、を具備することを特徴とする構造物の据付方法である。
【0009】
球面軸受けは、1対の片方が上段筒体の下端部に設けられる。また、他方が下段筒体の上端部に設けられる。上段筒体と下段筒体とは、吊りボルトで連結される。吊りボルトは、例えば、上段筒体側の球面軸受けに設けられたフランジと下段筒体側の球面軸受けに設けられたフランジとを連結する。
【0010】
工程(c)では、基礎杭の天端に下段筒体の下端面を載置するが、下段筒体を基礎杭の天端に載置するまでは、上段筒体と下段筒体とは、吊りボルトにより連結された状態である。下段筒体を基礎杭の天端に載置した後は、球面軸受けを介して下段筒体が上段筒体を支える。球面軸受けは、基礎杭の天端が傾斜面となっている場合に、基礎杭の傾斜を吸収し、筒体に偏荷重が作用するのを防ぐ。
【0011】
第2の発明は、地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、筒体と、前記筒体の上端部付近に設けられた吊り点金具と、前記筒体に対する前記上部構造物の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入して設置する工程(b)と、前記吊り点金具を吊点として前記上部構造物を運搬して前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物の設置高さを調整する工程(d)と、前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、を具備することを特徴とする構造物の据付方法である。
【0012】
吊り点金具は、例えば、筒体の上端部に固定された第1のフランジと、第1のフランジの下方に配置され、筒体の内周面に固定された第2のフランジと、第1のフランジと第2のフランジを連結する補強部材とからなる。
【0013】
吊り点金具は、高さ調整装置に揚重機船等の吊り金具を設置するための治具である。吊り点金具は、上部構造物の上方突出量ができるだけ少なくなるように設置される。これにより、工程(c)で、吊り点金具を吊点として上部構造物を運搬する際に、揚重機船等の巻き上げ揚程を最大限に確保できる。
【0014】
第3の発明は、地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、上段筒体と下段筒体からなる筒体と、前記上段筒体と前記下段筒体との境界部に設けられ、前記下段筒体に対する前記上段筒体の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入し、前記上段筒体の上端部を前記上部構造物に固定して設置する工程(b)と、前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物に固定された前記上段筒体の設置高さを調整する工程(d)と、前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、を具備することを特徴とする構造物の据付方法である。
【0015】
調整手段は、例えば、上段筒体の下端付近の内周面に固定された反力受け台と、下段筒体の上端付近の内周面に固定されたジャッキ受け台との間に配置されたジャッキである。上段筒体と下段筒体とは、吊りボルトで連結される。吊りボルトは、例えば、上段筒体に設けられた反力受け台と下段筒体に設けられたジャッキ受け台とを連結する。
【0016】
工程(c)では、基礎杭の天端に下段筒体の下端面を載置するが、下段筒体を基礎杭の天端に載置するまでは、上段筒体と下段筒体とは、吊りボルトにより連結された状態である。下段筒体を基礎杭の天端に載置した後は、ジャッキ等の調整手段を介して下段筒体が上段筒体を支える。
【0017】
上段筒体は、例えば、上端に設けられたフランジを脚部の上端に設けられたフランジと一体化することにより、上部構造物に固定される。上段筒体の下端部と下段筒体の上端部とは、例えば、印篭状にスライド可能に嵌合される。工程(d)では、例えば、調整手段であるジャッキを伸縮させて下段筒体に対して上段筒体をスライドさせることにより、上段筒体が固定された上部構造物の設置高さを調整する。
【0018】
第4の発明は、第1から第3の発明の構造物の据付方法を用いて構築された構造物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基礎杭以外の仮設杭が不要で、基礎杭や上部構造物の設置時に歪みが生じた場合にも、上部構造物の設置高さを確実に調整し、各基礎杭に相応に荷重を配分して基礎杭と上部構造物とを一体化できる構造物の据付方法および構造物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、一体化される前の上部構造物1および基礎杭5の立面図、図2は、上部構造物1を上方から見た平面図、図3は、高さ調整装置13を設置した状態の上部構造物1の断面図である。図1は、図2の矢印Bに示す方向から見た図である。図3は、図1のAに示す部分の拡大断面図である。
【0021】
水中構造物を据付けるには、まず、図1に示すように、水19の底の地盤3に基礎杭5を設置する。また、図1および図2に示すように、上部構造物1を組み立てる。
【0022】
図1および図2に示すように、上部構造物1は、トラス部11、ジャケットレグ7、ブレース9等からなる。トラス部11は、上部構造物1の本体である。ジャケットレグ7は、上部構造物1の脚部であり、トラス部11から下方に伸びるように配置され、トラス部11に固定される。
【0023】
図3に示すように、ジャケットレグ7の上端部には、フランジ15が固定される。フランジ15は、ジャケットレグ7の外周方向に張り出すようにして設けられる。フランジ15は、例えば、環状の板材とする。フランジ15とジャケットレグ7、ジャケットレグ7とトラス部11により形成される入隅部は、補強部材46によって補強される。
【0024】
図1、図2に示すように、ブレース9は、上部構造物1を補強するためにジャケットレグ7の間に固定される。基礎杭5は、鋼管杭、鋼管コンクリート杭等である。基礎杭5の本数および設置位置は、上部構造物1のジャケットレグ7の本数および設置位置に合わせて決定される。
【0025】
高さ調整装置13は、図3に示すように、吊り点金具、鋼管39等で構成される。吊り点金具は、図3に示すフランジ35、フランジ41、補強部材42からなる。フランジ35は、鋼管39の上端部に固定される。フランジ35は、例えば、図4の(b)図に示すような環状の板材であり、鋼管39の外周および内周方向に張り出すように設けられる。
【0026】
フランジ41は、鋼管39の内周方向に張り出すように、フランジ35の下方に配置される。フランジ41は、例えば環状の板材であり、外周部が鋼管39の内周面に固定される。フランジ35とフランジ41との間には、筒状等の補強部材42が固定される。
【0027】
高さ調整装置13には、必要に応じて、吊り金具21が設置される。吊り点金具は、高さ調整装置13に吊り金具21を設置するための治具である。吊り金具21は、図3に示すように、吊り部材23、連結部材25、拡幅部27、切替部材29等からなる。吊り部材23は、揚重機船等(図示せず)に連結される。連結部材25は、吊り部材23と拡幅部27とを連結する部材である。拡幅部27は、本体33と拡幅部材31とからなり、吊り点金具を介して吊り金具21を鋼管39に取り付けるための部材である。切替部材29は、拡幅部材31の形状を切り替えるための部材である。
【0028】
図4は、吊り金具21の着脱方法を示す図である。図4の(a)図は、吊り金具21を取り付けた状態の高さ調整装置13の立面図、図4の(b)図は、吊り金具21を取り外した状態の高さ調整装置13の平面図である。
【0029】
吊り金具21の拡幅部27では、図3に示すように、切替部材29を上向きにすると、1対の拡幅部材31が離れた状態となる。また、図4の(a)図に示すように、切替部材29を下向きにすると、1対の拡幅部材31が接触した状態となる。
【0030】
フランジ35、フランジ41等からなる吊り点金具を用いて吊り金具21を鋼管39に取り付けるには、まず、図4の(a)図に示すように、1対の拡幅部材31が接触した状態の拡幅部27を、フランジ35の開口部を介して鋼管39の内部に挿入する。そして、図3に示すように、切替装置29を上向きにして1対の拡幅部材31が離れた状態とし、拡幅部材31の凸部44をフランジ41に引掛ける。
【0031】
図1に示すように、上部構造物1では、少なくとも4箇所に、高さ調整装置13が設置される。高さ調整装置13は、クレーン等を用いて鋼管39をジャケットレグ7に挿入することにより、あらかじめ上部構造物1に設置される。高さ調整装置13の鋼管39の上端部に固定されたフランジ35と、ジャケットレグ7の上端部に固定されたフランジ15とは、固定具37を用いて一体化される。固定具37は、例えば、ボルトおよびナットである。なお、高さ調整装置13を設置しないジャケットレグ7aに対応する基礎杭5aの上端部には、ガイドキャップ17が設置される。
【0032】
図3に示すように、高さ調整装置13の鋼管39は、上部鋼管39a、中部鋼管39b、下部鋼管39cからなる。図5は、上部鋼管39aと中部鋼管39bとの境界部付近を示す図である。図5の(a)図は、図3のD1に示す部分の拡大図、図5の(b)図は、図5の(c)図のH−Hによる断面図、図5の(c)図は、図5の(a)図のG−Gによる断面図である。
【0033】
図3、図5の(a)図、図5の(b)図に示すように、上部鋼管39aの下端部付近には、反力受け台43が固定される。反力受け台43は、上部鋼管39aの内周面に沿って設けられ、反力受け台43と上部鋼管39aとの接続部は、補強部材65によって補強される。
【0034】
また、中部鋼管39bの上端部付近には、ジャッキ受け台47が固定される。ジャッキ受け台47は、中部鋼管39bの内周面に沿って設けられ、ジャッキ受け台47と中部鋼管39bとの接続部は、補強部材67によって補強される。
【0035】
図5の(a)図、図5の(b)図に示すように、ジャッキ受け台47の上面には、固定治具57を介して、スライドジャッキ45が固定される。スライドジャッキ45は上下方向に伸縮する。図5の(b)図、図5の(c)図に示すように、反力受け台43とジャッキ受け台47とは、吊りボルト59で連結される。吊りボルト59は、反力受け台43側の端部に頭部61が設けられ、ジャッキ受け台47側の端部にナット63が設けられる。
【0036】
なお、図5の(a)図、図5の(b)図では、スライドジャッキ45の上端部に反力受け台43の下面が接触しているが、図3に示す状態、すなわち、上部構造物1が基礎杭5上に設置されていない図1に示す状態のときは、スライドジャッキ45と反力受け台43は接触せず、上部鋼管39aが吊りボルト59を介して中部鋼管39bを吊下げている。
【0037】
図3、図5の(a)図、図5の(b)図に示すように、中部鋼管39bの上端部は縮径され、上部鋼管39aの下端部に挿入される。中部鋼管39bの上端部と上部鋼管39aの下端部は、境界面58において摺動可能である。また、図3、図5の(a)図に示すように、上部鋼管39aの内部には、管軸方向の補強部材69が設けられる。
【0038】
図6は、中部鋼管39bと下部鋼管39cとの境界部付近を示す図である。図6の(a)図は、図3のE1に示す部分の拡大図、図6の(b)図は、図6の(a)図のI−Iによる断面図、図6の(c)図は、図6の(a)図のJ−Jによる断面図である。
【0039】
図3、図6の(a)図に示すように、中部鋼管39bの下端部には、球面軸受け51aが固定される。球面軸受け51aは、厚みを有する環状の部材であり、下面が球面73の一部となり、外縁部が中部鋼管39bと連続するように成形される。球面軸受け51aには、環状の板材であるフランジ77aが固定される。フランジ77aは、鋼管39の内周方向に張り出すように配置される。
【0040】
図3、図6の(a)図、図6の(c)図に示すように、下部鋼管39cの上端部には、球面軸受け51bが固定される。球面軸受け51bは、厚みを有する環状の部材であり、上面が球面73の一部となり、外縁部が下部鋼管39cと連続するように成形される。球面軸受け51bには、環状の板材であるフランジ77bが固定される。フランジ77bは、鋼管39の内周方向に張り出すように配置される。フランジ77aとフランジ77bとは、吊りボルト75で連結される。吊りボルト75は、両端部にナット79が設けられる。
【0041】
なお、図6の(a)図では、球面軸受け51aと球面軸受け51bとが接触しているが、図3に示す状態、すなわち、上部構造物1が基礎杭5上に設置されていない図1に示す状態のときは、球面軸受け51aと球面軸受け51bとは接触せず、中部鋼管39bが吊りボルト75を介して下部鋼管39cを吊下げている。
【0042】
図3、図6の(a)図に示すように、中部鋼管39bには、固定治具71を介して芯出し用手動ジャッキ49が固定される。芯出し用手動ジャッキ49は、球面軸受け51aの上方に、中部鋼管39bの周方向に所定の間隔をおいて配置される。芯出し用手動ジャッキ49は、中部鋼管39bの外側の端部にテーパ部87を有し、中部鋼管39bの径方向に伸縮する。
【0043】
図6の(b)図に示すように、中部鋼管39bの内部には、作業台84が適宜設けられる。作業台84には、開口部81、エアダクト83、壁付灯85等が設けられる。また、図6の(a)図、図6の(b)図に示すように、中部鋼管39bの内部には、管軸方向の補強部材69が設けられる。
【0044】
図7は、下部鋼管39cの下端部付近を示す図である。図7の(a)図は、図3のF1に示す部分の拡大図、図7の(b)図は、図7の(a)図のK−Kによる断面図である。
【0045】
図3、図7の(a)図、図7の(b)図に示すように、下部鋼管39cの下端部には、エンドプレート55が固定される。エンドプレート55は、例えば、厚みのある環状の部材である。エンドプレート55の外径は、下部鋼管39cの外径より大きいものとする。エンドプレート55の下面には、鉢形部89が固定される。
【0046】
エンドプレート55の内周面には、作業台91が固定される。作業台91は、開口部93を有する。また、エンドプレート55には、芯出し用手動ジャッキ49が固定される。芯出し用手動ジャッキ49は、エンドプレート55の周方向に所定の間隔をおいて配置される。芯出し用手動ジャッキ49は、下部鋼管39cの外側の端部にテーパ部87を有し、下部鋼管39cの径方向に伸縮する。
【0047】
下部鋼管39cの内部には、管軸方向の補強部材69が設けられる。また、下部鋼管39cは、下端部に、切欠き部である開口部53を有する。開口部53は、下部鋼管39cの周方向に適切な間隔をあけて設けられる。
【0048】
図8は、基礎杭5にジャケットレグ7を挿入した状態での立面図を、図9は、ジャケットレグ7の上端部付近の垂直断面図を示す。図9は、図8のCに示す部分の拡大断面図である。
【0049】
図1に示すように、基礎杭5を地盤3に設置し、上部構造物1を組み立てた後、高さ調整装置13の鋼管39の上端に、吊り点金具を介して吊り金具21を取りつける。次に、吊り点金具を吊り点として上部構造物1を揚重機船等(図示せず)で吊り、ジャケットレグ7と基礎杭5の平面位置を合わせる。
【0050】
そして、上部構造物1を吊り降ろし、図8に示すように、ジャケットレグ7に基礎杭5を挿入する。さらに、図9に示すように、基礎杭5の上端を、高さ調整装置13の鋼管39の下端に固定されたエンドプレート55に接触させ、基礎杭5に上部構造物1を仮受けさせる。
【0051】
上部構造物1を仮受けした後、基礎杭5aの上端部に設置されたガイドキャップ17(図1)を撤去し、ジャケットレグ7aに高さ調整装置13を設置する。高さ調整装置13は、クレーン等(図示せず)を用いて吊下げて設置される。
【0052】
ジャケットレグ7aに設置された高さ調整装置13においても、他の高さ調整装置13と同様に、基礎杭5の上端を、鋼管39の下端に固定されたエンドプレート55に接触させる。また、高さ調整装置13の鋼管39の上端部に固定されたフランジ35を、固定具37を用いて、ジャケットレグ7の上端部に固定されたフランジ15と一体化する。
【0053】
図9に示す状態、すなわち、上部構造物1が基礎杭5上に設置された図8に示す状態のとき、図9のF2に示す部分を拡大すると、図7の(a)図において破線で示す基礎杭5が、エンドプレート55を介して下部鋼管39cを支える。
【0054】
また、図9のE2に示す部分を拡大すると、図6の(a)図に示すように、下部鋼管39cに固定された球面軸受け51bに、中部鋼管39bに固定された球面軸受け51aが載置される。すなわち、下部鋼管39cが、球面軸受け51aと球面軸受け51bとからなる球面軸受け51を介して中部鋼管39bを支える。
【0055】
図1に示す工程において基礎杭5が垂直に設置されず、基礎杭5の天端に傾斜面が生じた場合、図8に示す工程で、基礎杭5の天端の傾斜面に下部鋼管39cを載置することとなる。しかし、球面軸受け51を設けることにより、基礎杭5の傾斜を吸収し、高さ調整装置13の鋼管39に偏荷重が作用するのを防ぐことができる。
【0056】
さらに、図9のD2に示す部分を拡大すると、図5の(a)図、図5の(b)図に示すように、中部鋼管39bのジャッキ受け台47に固定されたスライドジャッキ45に、上部鋼管39aに固定された反力受け台43が載置される。すなわち、中部鋼管39bがスライドジャッキ45等を介して上部鋼管39aを支える。
【0057】
高さ調整装置13を基礎杭5上に設置した後、吊り金具21は、使用終了後、適切な時期に、高さ調整装置13から順次取り外される。吊り金具21を取り外すには、図4の(a)図に示すように、切替装置29を下向きにして、1対の拡幅部材31を接触した状態とし、拡幅部27を鋼管39から取り出す。
【0058】
高さ調整装置13を基礎杭5上に設置した後、図6の(a)図、図7の(a)図に示す芯出し用手動ジャッキ49を伸縮させ、テーパ部87をジャケットレグ7の内周面に押付けて、鋼管39の周方向の位置を調整する。その後、上部構造物1の設置高さを調整する。
【0059】
上部構造物1の設置高さを調整するには、高さ調整装置13を用いて、上部構造物1を上下に移動させる。上部構造物1を上昇させるには、図5の(a)図等に示すスライドジャッキ45を伸ばし、中部鋼管39bに対して上部鋼管39aを上方向に摺動させる。上部構造物1を下降させるには、スライドジャッキ45を縮め、中部鋼管39bに対して上部鋼管39aを下方向に摺動させる。
【0060】
上部鋼管39aは上部構造物1に固定されているので、上部構造物1は上部鋼管39aに追随して上下に移動する。上部構造物1の設置高さの調整と並行して、スライドジャッキ45に設けられた荷重計(図示せず)を用いて設計上の支持荷重を確認し、全体の支持状況を確認してもよい。
【0061】
高さ調整装置13を用いて上部構造物1の設置高さを調整した後、開口部53の位置で、基礎杭5とジャケットレグ7との間にシムプレート(図示せず)を設置する。シムプレート(図示せず)は、基礎杭5とジャケットレグ7の双方に溶接され、上部構造物1の設置高さを固定する。シムプレート(図示せず)の設置作業は、作業台91を用いて行われる。
【0062】
上部構造物1の設置高さを固定した後、固定具37によるジャケットレグ7のフランジ15と鋼管39のフランジ35との固定を解除し、上部構造物1から高さ調整装置13を撤去する。次に、ジャケットレグ7の下端部と基礎杭5との間に、パッカ等のグラウトシール(図示せず)を設置する。そして、ジャケットレグ7と基礎杭5との間に、グラウト(図示せず)を注入する。これにより、上部構造物1と基礎杭5とが一体化される。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、高さ調整装置13を用いて上部構造物1の設置高さを調整することにより、基礎杭5以外の仮設杭が不要となり、工費を削減でき、工期を短縮できる。また、高さ調整装置13の鋼管39の上端部に、フランジ35、フランジ41等からなる吊り点金具を設けることにより、基礎杭5に高さ調整装置13が設置された上部構造物1を設置する際に、吊り点金具を吊点として用いることができ、作業が容易になる。
【0064】
本実施の形態では、高さ調整装置13の鋼管39を上部鋼管39a、中部鋼管39b、下部鋼管39cに分割し、中部鋼管39bと下部鋼管39cとの間に球面軸受け51を設置する。これにより、基礎杭5の天端に傾斜面が生じても、基礎杭5上に載置する高さ調整装置13に偏荷重が作用するのを防ぎ、上部構造物1の荷重を各基礎杭5に確実に伝えることができる。
【0065】
さらに、上部鋼管39aの下端部に中部鋼管39bの上端部を挿入し、上部鋼管39aに固定された反力受け台43と中部鋼管39bに固定されたジャッキ受け台47との間にスライドジャッキ45を設置する。これにより、スライドジャッキ45を伸縮させ、中部鋼管39bに対して上部鋼管39aを摺動させて、上部構造物1の設置高さを調整することができる。
【0066】
なお、上部構造物1に固定されるジャケットレグ7の本数は、6本に限らない。高さ調整装置13は、ジャケットレグ7の本数に関わらず、上部構造物1を基礎杭5に仮受けさせる前に、少なくとも4本のジャケットレグ7に設置すればよい。
【0067】
また、本実施の形態の高さ調整装置13は、鋼管39の上端に設けられるフランジ35、フランジ41等からなる吊り点金具、上部鋼管39aと中部鋼管39bの間に設けられるスライドジャッキ45、中部鋼管39bと下部鋼管39cの間に設けられる球面軸受け51の全てを有するものとしたが、いずれか1つを有する高さ調整装置13を用いて構造物を据付ける場合もある。
【0068】
例えば、球面軸受け51を有するが、吊り点金具を有さない高さ調整装置を用いてもよい。この場合、例えば、鋼管39を2分割し、上段の鋼管と下段の鋼管との間に球面軸受け51を設け、高さ調整用のジャッキは、鋼管の上端と上部構造物の上端との間に設ける。
【0069】
また、吊り点金具を有するが、球面軸受け51を有さない高さ調整装置を用いてもよい。この場合、鋼管39を2分割し、上段の鋼管と下段の鋼管との間にスライドジャッキ45を設け、鋼管39の上端部付近に吊り点金具を設ける。
【0070】
高さ調整装置13に取り付ける吊り点金具は、本実施の形態で示した構造のものでなくてもよい。吊り点金具は、吊り金具の取り付けが可能で、上部構造物1を吊下げる吊り点として用いるための十分な強度を有する構造であればよい。
【0071】
図10は、他の高さ調整装置13aの上端部付近を示す図である。図10の(a)図は、鋼管39に吊り金具21aを取り付けた状態での断面図、図10の(b)図は、図10の(a)図のL−Lによる断面図を示す。
【0072】
以下に、図10を用いて、他の高さ調整装置13aについて説明する。高さ調整装置13aは、図3等に示す高さ調整装置13とほぼ同様の構成であるが、鋼管39の上端部に、フランジ35、フランジ41、補強部材42からなる吊り点金具(図3)のかわりに、フランジ101、フランジ105、フランジ109、補強部材107、補強部材111からなる吊り点金具が設けられる。
【0073】
フランジ101は、図10の(a)図に示すように、鋼管39の上端部に固定される。フランジ101は、図10に示すように、径が鋼管39の径より大きい円形状の板材である。フランジ101は、中央部に扁平形の開口部103を有する。
【0074】
フランジ105は、鋼管39の内周方向に張り出すように、フランジ101の下方に配置される。フランジ105は、例えば円形状の板材であり、外周部が鋼管39の内周面に固定される。フランジ105は、フランジ101と同様に、中央部に扁平形の開口部103を有する。フランジ101とフランジ105との間には、断面が扁平形の筒形等の補強部材107が固定される。
【0075】
フランジ109は、鋼管39の内周方向に張り出すように、フランジ105の下方に配置される。フランジ109は、例えば円形状の板材であり、外周部が鋼管39の内周面に固定される。フランジ109は、中央部に円形の開口部を有する。フランジ105とフランジ109、フランジ101との間には、円筒形等の補強部材111が固定される。
【0076】
図10に示す吊り金具21aは、吊り部材23、連結部95、回転部97、ロック部99等からなる。吊り部材23は、揚重機船等(図示せず)に連結される。連結部95は、吊り部材23と回転部97とを連結する部材である。回転部97は、ロック部99を回転可能に保持する。ロック部99は、棒材99aの端部に、凸部99bを設けた形状である。
【0077】
フランジ101、フランジ105、フランジ109等からなる吊り点金具は、吊り金具21aを高さ調整装置13aの鋼管39に取り付けるための治具である。吊り金具21aを鋼管39に取り付けるには、まず、図10の(a)図、図10の(b)図に示すように、吊り金具21aのロック部99を、フランジ101およびフランジ105に設けられた扁平形の開口部103に挿入する。開口部103、補強部材107の内空は、ロック部99の凸部99bを挿入することができるような大きさとする。
【0078】
そして、図10の(b)図の矢印Mに示す方向に回転部97を回転させ、ロック部99の凸部99bをフランジ105の下面に引掛ける。フランジ109に設けられる円形の開口部、補強部材111の内空は、内部でロック部99の凸部99bを回転させることができるような大きさとする。
【0079】
高さ調整装置13aを用いた場合にも、鋼管39の上端部に、フランジ101、フランジ105、フランジ119等からなる吊り点金具を設けることにより、基礎杭5に高さ調整装置13aが設置された上部構造物1を設置する際に、吊り点金具を吊点として用いることができ、作業が容易になる。
【0080】
本実施の形態では、上部構造物1と基礎杭5とを一体化して水中構造物を構築したが、同様の方法を、水中以外の場所で上部構造物と基礎杭とを一体化して構造物を構築する際にも適用できる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる構造物の据付方法および構造物の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】一体化される前の上部構造物1および基礎杭5の立面図
【図2】上部構造物1を上方から見た平面図
【図3】高さ調整装置13を設置した状態の上部構造物1の断面図
【図4】吊り金具21の着脱方法を示す図
【図5】上部鋼管39aと中部鋼管39bとの境界部付近を示す図
【図6】中部鋼管39bと下部鋼管39cとの境界部付近を示す図
【図7】下部鋼管39cの下端部付近を示す図
【図8】基礎杭5にジャケットレグ7を挿入した状態での立面図
【図9】ジャケットレグ7の上端部付近の垂直断面図
【図10】他の高さ調整装置13aの上端部付近を示す図
【符号の説明】
【0083】
1………上部構造物
3………地盤
5………基礎杭
7………ジャケットレグ
11………トラス部
13、13a………高さ調整装置
15、35、41、77a、77b、101、105、109………フランジ
21、21a………吊り金具
39………鋼管
39a………上部鋼管
39b………中部鋼管
39c………下部鋼管
42、107、111………補強部材
43………反力受け台
45………スライドジャッキ
47………ジャッキ受け台
51、51a、51b………球面軸受け
55………エンドプレート
59、75………吊りボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、
筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、上段筒体と下段筒体からなる筒体と、前記上段筒体と前記下段筒体との境界部に設けられた球面軸受けと、前記筒体に対する前記上部構造物の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入して設置する工程(b)と、
前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記球面軸受けを介して前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、
前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物の設置高さを調整する工程(d)と、
前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、
を具備することを特徴とする構造物の据付方法。
【請求項2】
前記上段筒体と前記下段筒体とが吊りボルトで連結されたことを特徴とする請求項1記載の構造物の据付け方法。
【請求項3】
地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、
筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、筒体と、前記筒体の上端部付近に設けられた吊り点金具と、前記筒体に対する前記上部構造物の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入して設置する工程(b)と、
前記吊り点金具を吊点として前記上部構造物を運搬して前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、
前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物の設置高さを調整する工程(d)と、
前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、
を具備することを特徴とする構造物の据付方法。
【請求項4】
前記吊り点金具が、
筒体の上端部に固定された第1のフランジと、
前記第1のフランジの下方に配置され、前記筒体の内周面に固定された第2のフランジと、
前記第1のフランジと前記第2のフランジとを連結する補強部材と、
からなることを特徴とする請求項3記載の構造物の据付方法。
【請求項5】
地盤に基礎杭を設置する工程(a)と、
筒状の脚部と本体からなる上部構造物に、上段筒体と下段筒体からなる筒体と、前記上段筒体と前記下段筒体との境界部に設けられ、前記下段筒体に対する前記上段筒体の設置高さを調整する調整手段とからなる高さ調整装置を、前記筒体を前記脚部内に挿入し、前記上段筒体の上端部を前記上部構造物に固定して設置する工程(b)と、
前記基礎杭を前記脚部に挿入し、前記筒体を前記基礎杭上に載置して、前記基礎杭で前記上部構造物を仮受けする工程(c)と、
前記高さ調整装置を用いて、前記上部構造物に固定された前記上段筒体の設置高さを調整する工程(d)と、
前記基礎杭と前記脚部とを一体化する工程(e)と、
を具備することを特徴とする構造物の据付方法。
【請求項6】
前記上段筒体と前記下段筒体とが吊りボルトで連結されたことを特徴とする請求項5記載の構造物の据付け方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された構造物の据付方法を用いて構築されたことを特徴とする構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−89964(P2006−89964A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274658(P2004−274658)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(591043477)寄神建設株式会社 (17)
【Fターム(参考)】