説明

構造物の設置方法及び構造物の設置設備

【課題】どのような場所においても構造物の設置が簡単で、設備のコスト及び設置のコストを低減でき、しかも緊急時に迅速にシステムを展開できる構造物の設置方法及び構造物の設置設備を提供すること。
【解決手段】無線通信設備1は、アンテナ2と、フレーム部材10をX−Y平面に縦横に配置して構成され、X方向及びY方向のそれぞれに複数の固定部15を有し、アンテナ10を搭載する架台3と、地面Gから露出する露出部16を有するように、各固定部15に対応する位置の地面Gに打ち込まれる複数の杭4と、架台3が水平になるように、各固定部15を各露出部16の所定の位置に固定する複数の固定部材5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナなど構造物の設置方法及び構造物の設置設備に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは水平及び指向性を基準として定まり、正確に調整することで対向極に対して送受信することができる。従って、アンテナは、水平を基準にして設置し、その状態を長期にわたり保つ必要がある。
【0003】
従来から、アンテナなどは、地中に対してコンクリートなどで強固な基礎を作り、その基礎の上に水平になるように設置されている。例えば、特許文献1では、基礎の上に基台をボルトナットにより固定し、この基台に対してマスト部材を固定している。このマスト部材にアンテナが取付けられる。
【0004】
都心部においては、例えばビルの屋上を利用してアンテナを比較的簡単な設備で設置することが可能であるが、例えば山間部のようなところでは、基礎を作るために地中に穴を掘り、その穴にコンクリートを流し込んで基礎を作る必要がある。しかもこのような場合、山間部にコンクリートなどの重量物を運搬する必要もある。そのため、アンテナ設置のための手間がかかり、コストも非常に高くなる、という問題がある。
また、地震や災害などが発生したときは、容易に迅速かつコスト安で無線通信設備を用意することは困難な状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−163614号公報(図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、どのような場所においても構造物の設置が簡単で、設備のコスト及び設置のコストを低減でき、しかも緊急時に迅速にシステムを展開できる構造物の設置方法及び構造物の設置設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る構造物の設置方法は、フレーム部材をX−Y平面に配置して構成され、X方向又はY方向に複数の固定部を有し、構造物を搭載する架台を準備し、地中から露出する露出部を有するように、各前記固定部に対応する位置の地中に複数の杭を打ち込み、各前記固定部を各前記露出部の所定の位置に固定する。
【0008】
本発明では、フレーム部材をX−Y平面に配置して構成され、X方向又はY方向に複数の固定部を有し、構造物を搭載する架台を準備し、このような架台を地中に打ち込まれた杭に固定し、この固定時に架台を位置決めしている。従って、本発明では、平面、斜面を問わず、どのような場所においても構造物を搭載する設備の設置を簡単に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る構造物の設置方法では、コンクリートのような大掛かりな基礎は不要であって、設備の主要部を例えば鉄製のフレームやパイプによって構成できるので、設備のコストを低減できる。
【0010】
さらに、本発明に係る構造物の設置方法では、上記のように設置が簡単でしかもコンクリートなどの重量物の運搬も不要であるので、設置のコストを低減できる。また、緊急時等においても迅速にシステムを展開できる。
【0011】
本発明では、前記構造物が搭載される前記架台を前記複数の杭により地中に打ち込んだときの前記杭一本当りの引き抜き力を計算により算出し、1本の前記杭が地中に打ち込まれたときの前記杭一本当りの杭摩擦力が前記杭一本当りの引き抜き力より大きくなるように、前記杭の径及び前記杭の地中への打ち込み深さを決定することが好ましい形態である。
【0012】
本発明では、地中の地質が一定の条件下に該当するかが分かればその他の調査は不要で設備に応じて杭の種類を選択し、杭の打込深さを決定すればよい。従って、非常に簡単に設備の設計が可能である。
【0013】
本発明の一形態に係る構造物の設置設備は、フレーム部材をX−Y平面に配置して構成され、X方向又はY方向に複数の固定部を有し、構造物を搭載する架台と、地中から露出する露出部を有するように、各前記固定部に対応する位置の地中に打ち込まれる複数の杭と、各前記固定部を各前記露出部の所定の位置に固定する複数の固定部材とを具備する。
【0014】
従って、本発明では、平面、斜面を問わず、どのような場所においても構造物の設置を簡単に行うことができる。また、本発明では、設備の主要部を例えば鉄製のフレームやパイプによって構成できるので、設備のコストを低減できる。さらに、本発明では、設置のコストを低減できる。また、緊急時等においても迅速にシステムを展開できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、どのような場所においても構造物の設置が簡単で、設備のコスト及び設置のコストを低減でき、しかも緊急時に迅速にシステムを展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信設備の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る無線通信設備の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る無線通信設備の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無線通信設備における固定部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るアンテナの設置方法を示すフローである。
【図6】杭が地中に打込まれた状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
以下に示す実施形態は、アンテナを有する無線通信設備に本発明を適用した例である。ただし、本発明はこのような無線通信設備に限定されるものでない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信設備の構成を示す斜視図である。図2はその無線通信設備の平面図である。図3はその無線通信設備の側面図である。
これらの図に示すように、無線通信設備1は、アンテナ2と、架台3と、複数の杭4と、複数の固定部材5を具備する。
アンテナ2は、例えば指向性を有するアンテナである。アンテナ2は、マスト14を介して架台3に取付けられている。
【0019】
架台3は、フレーム部材10をX−Y平面(地中に対して平行な平面)に縦横に配置して構成される。フレーム部材10としては、例えばめっきが施された鉄製のL字状のアングル部材を持ちいればよい。この実施形態においては、X方向に180cm程度の長さのフレーム部材10を4本平行に配置し、これらの上にY方向に180cm程度の長さのフレーム部材10を2本平行に配置している。X方向に配置されたフレーム部材10とY方向に配置されたフレーム部材10との交差点においてボルトナット11によりX方向に配置されたフレーム部材10とY方向に配置されたフレーム部材10とが固定されている。
【0020】
Y方向に配置された2本のフレーム部材10の隙間のほぼ中央には、例えばめっきが施された鉄製で30cm角程度の矩形の板状部材12が配置されている。Y方向に配置された2本のフレーム部材10と板状部材12とはボルトナット13により固定されている。この板状部材12の中央には、めっきが施された鉄製で直径が9cm程度、高さが50cm程度のマスト14が溶接により固定されている。つまり、板状部材12とマスト14とで一つの部品を構成している。このマスト14に対してアンテナ2が取付けられている。これにより、架台3は、アンテナ2を搭載するものである。
【0021】
架台3は、X方向及びY方向のそれぞれに複数の固定部15を有する。固定部15は、固定部材5としてのU字ボルトが挿入される一対の孔である。固定部15は、X方向に配置された4本の各フレーム部材10の2箇所に設けられている。より具体的には、各フレーム部材10の右端から35cm程度の箇所及び左端から35cm程度の箇所に固定部15が設けられている。これにより、X方向及びY方向のそれぞれに複数の固定部15が設けられることになる。
【0022】
各杭4は、各固定部15と対応する位置の地中Gに打ち込まれる。各杭4は、地中Gから露出する露出部16と、地中Gに打ち込まれた打ち込み部17とを有する。杭4は、例えばめっきが施された鉄製のパイプである。このパイプの直径や打ち込み部17の長さ(杭打ち込み深さ)は、後述する本発明に係る手法によって適宜選択されるものである。
【0023】
固定部材5は、架台3が水平になるように、各固定部15を各露出部15の所定の位置に固定する。より具体的には、固定部材5は、図4に示すように、例えばU字ボルト18とナット19とから構成され、U字ボルト18に杭4であるパイプを挿入しつつU字ボルト18を固定部15として一対の孔を通しナット19で固定する。この固定の位置を各固定部15間で適宜調整することで、架台3を水平になるようにする。この実施形態では、このような調整方法で架台3を水平にしている。従って、この実施形態の無線通信設備1は、平面、斜面を問わず、どのような場所においてもアンテナ設備の設置を簡単に行うことができる。また、この実施形態の無線通信設備1は、コンクリートのような大掛かりな基礎は不要であって、設備の主要部を鉄製のフレームやパイプによって構成できるので、設備のコストを低減できる。さらに、この実施形態の無線通信設備1は、上記のように設置が簡単でしかもコンクリートなどの重量物の運搬も不要であるので、設置のコストを低減できる。また、緊急時等においても迅速にシステムを展開できる。
次に、本発明の一実施形態に係るアンテナの設置方法を説明する。
図5は本発明の一実施形態に係るアンテナの設置方法を示すフローである。
まず、架台5を構成する部品及びアンテナ2などをアンテナの設置場所に搬送する(ステップ501)。
【0024】
次に、架台3を組み立てる(ステップ502)。具体的には、4本のフレーム部材10(X方向のフレーム部材)を所定の間隔で平行になるように並べて、その上の所定の位置に2本のフレーム部材10(Y方向のフレーム部材)を載せて上下のフレーム部材10をボルトナットにより固定する。そして、2本のフレーム部材10の隙間のほぼ中央に板状部材12を配置し、フレーム部材10とマスト14が固定されている板状部材12とをボルトナット13により固定する。これにより、架台3が組み立てられる。
【0025】
次に、架台3が配置される位置(各固定部15)と対応する所定の位置の地中Gに杭4をそれぞれ打ち込む(ステップ503)。なお、杭4の地中Gへの打ち込み深さについては、後述する。
【0026】
次に、架台3が水平になるように、架台3の各固定部15を各杭4の露出部16の所定の位置に固定する(ステップ504)。これは、すでに説明したとおり、固定部材5を構成するU字ボルト18に杭4を挿入しつつU字ボルト18を固定部15として一対の孔を通しナット19で固定する(図4参照)。そして、この固定の位置を各固定部15間で適宜調整することで、架台3を水平になるようにする。なお、この実施形態では、杭5を地中Gに打ち込み、その後に杭5と架台3とU字ボルトナットで固定していたが、架台3にU字ボルトナットを遊びのある状態で取付け、その後U字ボルトに杭5を通してから杭5を地中Gに打ち込むみ、最後に水平出しをしながらU字ボルトナットを固定するようにしても勿論かまわない。
次に、架台3のマスト14の上部にアンテナ2を取付け(ステップ505)、アンテナ2の指向性などを調整する(ステップ506)。
以上で、アンテナの設置が終了する。
【0027】
ところで、受風面積が大きく重さもかなりあるアンテナを搭載する無線通信設備では、強度設計は重要である。具体的には、このように野外に設置される設備は例えば風速40m/s(甲種風圧加重)に耐え得るものでなければならい。そのため、本発明に係る設備では、杭5の径とその杭5の地中Gへの打ち込み深さによって強度を決定している。
以下、その決定方法について説明する。
【0028】
この決定方法では、まずアンテナ2が搭載される架台3を複数の杭5により地中Gに打ち込んで無線通信設備1を構成したときの、杭一本当りの引き抜き力を計算により算出する。
【0029】
そして、1本の杭5が地中Gに打ち込まれたときの杭一本当りの杭摩擦力が杭一本当りの引き抜き力より大きくなるように、杭5の径及び杭5の地中Gへの打ち込み深さを決定する。
以下、これらの点をより具体的に説明する。
[支持物仕様・荷重計算の決定]
(1)耐風圧の設定
P0:風圧荷重
【0030】
ここで、風圧の法令基準は「配電規定」200―3の風圧荷重の種別とその適用(1)(2)(3)により風圧荷重の種別、風圧を受けるのの区分、地域及び施設場所により分類される。
(2)受風面積の算出
受風面積:Am=支持物寸法の縦(m)×横(m)
(3)支持物の荷重計算
支持物自重:鉛直力(N)=支持物重量(Kg)×9.80665
水平荷重:P(N)=単位風荷重(P0)×受風面積(A)
(4)合計風荷重計算
合計風荷重合計:ΣP(N)=支持物の水平荷重(P)×支持物数量(個)
(5)風時曲げモーメント計算
曲げモーメント:Mp(N・m)
={支持物設置高さ(m)×風荷重合計(ΣP)}×支持柱地上高(m)/2
ここで、{支持物設置高さ(m)×風荷重合計(ΣP)}は支持物の設置数量に応じて加算する。
[杭の強度・仕様の決定]
(6)杭群の断面係数
杭間の断面係数(正方形に杭設置の例)
断面係数(cm/cm):Zb
=(辺毎の杭本数)×4辺全幅の中点A(cm)+4辺内へ設置する杭本数×杭間中点B(cm)/4辺全幅の中点A(cm)
(7)杭1本当たりの引き抜き力
引抜力:Tb=Mp/Zb
(Mpは上記(5)より、Zbは上記(6)より求まる。)
(8)土質条件の決定
【0031】
土質条件は、N値によって決定する。ここで、N値とは、標準貫入試験(JIS A 1219)によって求められる地盤の強度等を求める試験結果(数値)である
(9)杭一本当りの杭摩擦力
短期荷重(N):Rf=地質(N)/5×Φ(杭径mm)×L(杭打込深さm)
通常は、短期荷重で考える。ちなみに、長期荷重の場合、以下のとおりである。
長期荷重(N):Rf=地質(N)/5×Φ(杭径mm)×L(杭打込深さm)×1.5
(1.5は長期係数である。)
(10)強度の決定
杭摩擦力 Rf(N)>杭1本当たりの引き抜き力 Tb(N)
【0032】
となるように、杭の径Φ(mm)、杭の長さL1(mm)及び杭の打込深さL2を選択する(図6参照)。実際には、上記計算に基づき、既製品の中から径Φと長さL1が条件あった杭を選択し、実際の工事において杭を計算結果の深さL2だけ地中に打込む。
【0033】
従来からアンテナなどを設置する場合に、設置する場所でどの程度の強度の設備や基礎が必要かなどの調査を行い、それらの設備や基礎を設計する必要があった。これに対して、本発明に係る強度の決定方法では、一般的には法令(配電規程58条)による土質種類での一定条件下の土質条件N値が分かればその他の調査は不要で設備に応じて杭の種類を選択し、杭の打込深さを決定すればよい。
【0034】
上記のアンテナなどを有する無線通信設備に本発明を適用することによって、例えば緊急時にこの設備を展開することで、通信が遮断したような地域においても非常に簡単にかつ迅速に携帯電話の回線などを復旧することが可能である。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、上記の実施形態においては、架台を構成するフレーム部材としてL字状のアングル部材を例にして説明したが、パイプ等の他の部材であっても勿論かまわない。X−Y平面に縦横に配置されるフレーム部材の本数についても適宜定めることができる。固定部についても孔以外の他の手段を用いても勿論かまわない。また、固定部材として、U字ボルトを例にして説明したが、勿論他の部材であってもかまわない。
【符号の説明】
【0036】
1 無線通信設備
2 アンテナ
3 架台
4 杭
5 固定部材
10 フレーム部材
15 固定部
16 露出部
G 地中

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部材をX−Y平面に配置して構成され、X方向又はY方向に複数の固定部を有し、構造物を搭載する架台を準備し、
地中から露出する露出部を有するように、各前記固定部に対応する位置の地中に複数の杭を打ち込み、
各前記固定部を各前記露出部の所定の位置に固定する
構造物の設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物の設置方法であって、
前記構造物が搭載される前記架台を前記複数の杭により地中に打ち込んだときの前記杭一本当りの引き抜き力を計算により算出し、
1本の前記杭が地中に打ち込まれたときの前記杭一本当りの杭摩擦力が前記杭一本当りの引き抜き力より大きくなるように、前記杭の径及び前記杭の地中への打ち込み深さを決定する
構造物の設置方法。
【請求項3】
フレーム部材をX−Y平面に配置して構成され、X方向又はY方向に複数の固定部を有し、構造物を搭載する架台と、
地中から露出する露出部を有するように、各前記固定部に対応する位置の地中に打ち込まれる複数の杭と、
各前記固定部を各前記露出部の所定の位置に固定する複数の固定部材と
を具備する構造物の設置設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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