説明

構造物モニタリングシステムおよび測定装置

【課題】センサで取得された測定データを、電波を使用せずに収集することが可能な構造物モニタリングシステムを提供すること。
【解決手段】構造物に取り付けられたセンサS,S,…と、構造物に付設された測定装置Mと、可搬型のデータ収集装置Dと、を具備する構造物モニタリングシステムMSであって、測定装置Mは、光を受けて発電する測定側受光手段15と、センサSで取得された測定データを光信号に変換する測定側発光手段16と、を備えており、データ収集装置Dは、測定側発光手段16から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段22を有し、測定装置Mは、測定側受光手段15で発電された電力を利用してデータ収集装置Dとの間で光無線通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物や土木構造物などに適用される構造物モニタリングシステムおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブ型の無線ICタグに接続したセンサを耐力フレームに取り付け、受信診断装置と無線ICタグとの間で無線通信を行うことで、センサで取得したデータを収集する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−250585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、無線ICタグに向けて電波を発信することで、データを読み取っているが、無線ICタグを鋼構造物に取り付けると、鋼構造物の表面で電波が反射してしまい、データを読み取れない虞がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、センサで取得された測定データを、電波を使用せずに収集することが可能な構造物モニタリングシステムおよび測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明に係る構造物モニタリングシステムは、構造物に取り付けられたセンサと、前記構造物に付設された測定装置と、可搬型のデータ収集装置と、を具備する構造物モニタリングシステムであって、前記測定装置は、光を受けて発電する測定側受光手段と、前記センサで取得された測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、を備えており、前記データ収集装置は、前記測定側発光手段から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段を有し、前記測定装置は、前記測定側受光手段で発電された電力を利用して前記データ収集装置との間で光無線通信を行う、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記した課題を解決する本発明に係る測定装置は、構造物に付設される測定装置であって、光を受けて発電する測定側受光手段と、前記構造物に取り付けられたセンサで取得された測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、を備えており、前記測定側受光手段で発電された電力を利用してデータ収集装置との間で光無線通信を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明では、光発電で得られた電力を利用して測定装置を作動させ、測定装置とデータ収集装置との間で光無線通信を行うことによって、センサで取得された測定データを収集する。本発明によれば、測定装置の測定側受光手段に光を照射することで、光無線通信に必要な電力を得ることができるので、例えば、災害や電池切れ等により測定装置への電力供給が絶たれたような場合であっても、測定データを収集することができる。
【0009】
本発明を適用可能な構造物の種類に制限はなく、住宅、多層階建てのビル、工場用の建屋、橋梁、トンネルといった各種建築構造物や土木構造物に適用することができる。
【0010】
なお、測定装置に接続された外部電源や測定装置に具備させた内部電源(乾電池や蓄電池など)から得た電力をセンサに供給してもよいが、前記測定側受光手段で発電された電力をセンサに供給するとよい。測定側受光手段で発電された電力を利用して前記センサが測定データを取得するように構成すると、災害や電池切れ等により測定装置への電力供給が絶たれたような場合や測定装置に外部電源や内部電源を具備させていない場合であっても、モニタリング(センサによる測定)を行うことが可能になる。
【0011】
前記データ収集装置に収集側発光手段を具備させてもよい。この収集側発光手段は、測定装置の測定側受光手段に向う光を発光する。この場合、測定装置の前記測定側受光手段は、データ収集装置の前記収集側発光手段から照射された光を受けて発電する。このようにすると、データ収集装置を持ち込み、データ収集装置に具備させた収集側発光手段から、測定装置の測定側受光手段に向けて光を照射するだけで、測定データをデータ収集装置に転送することが可能になるので、測定装置を起動させるための専用の投光器等が不要になる。
【0012】
前記測定装置に、前記測定データを表示する表示手段を具備させてもよい。この場合、前記表示手段は、表示画像を保持する際に電力を必要としない電子ペーパーにて構成することが好ましい。このようにすると、測定装置への電力供給が絶たれたような場合であっても、測定データを目視にて確認することが可能になる。
【0013】
前記測定側受光手段において、前記測定データとともに前記測定データの識別情報を光信号に変換してもよい。このようにすると、測定データとともにその識別情報を収集することが可能になる。なお、測定データの識別情報とは、測定データを識別(区別)するための情報であって、例えば、測定データの取得時刻、測定データを取得したセンサSの位置情報やID番号、測定装置Mの位置情報、測定装置MのID番号などが含まれる。
【0014】
前記課題を解決する本発明に係る他の構造物モニタリングシステムは、構造物に取り付けられた複数のセンサと、前記構造物に付設された複数の測定装置と、可搬型のデータ収集装置と、を具備する構造物モニタリングシステムであって、前記各測定装置は、少なくとも一つの前記センサで取得された測定データを他の前記測定装置に送信可能であり、少なくとも一つの前記測定装置は、光を受けて発電する測定側受光手段と、前記測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、を備えており、前記データ収集装置は、前記測定側発光手段から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段を有し、少なくとも一つの前記測定装置は、前記測定側受光手段で発電された電力を利用して前記データ収集装置との間で光無線通信を行う、ことを特徴とする。
【0015】
このようにすると、各測定装置に蓄積された測定データを或る測定装置に集約することが可能になるので、測定装置が構造物の各所に点在しているような場合であっても、測定データを効率よく収集することが可能になる。なお、複数の測定装置のうちの一つを「親機」としておき、複数の測定装置のそれぞれに蓄積されている測定データが「親機」に集約されるように構成してもよいし、二以上の測定装置を「親機」としておき、複数の測定装置のそれぞれに蓄積されている測定データが各親機に集約されるように構成してもよい。二以上の「親機」を設けておけば、一の親機に故障等が発生したとしても、他の「親機」を利用して、複数の測定装置で得られた測定データを収集することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、災害や電池切れ等により測定装置への電力供給が絶たれたような場合であっても、測定データを収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る構造物モニタリングシステムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る構造物モニタリングシステムの機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る構造物モニタリングシステムの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る構造物モニタリングシステムMSは、図1に示すように、構造物Tに取り付けられたセンサS,S,…と、構造物Tに付設される測定装置Mと、可搬型のデータ収集装置Dとを備えて構成されている。なお、本実施形態では、構造物Tが多層階建の建物である場合を例示しているが、本発明の適用範囲を限定する趣旨ではない。
【0019】
センサSは、構造物Tの構造躯体(例えば、柱、梁、スラブ、壁など)の現状を直接的または間接的に計測するものである。各センサSを測定装置Mに直接接続してもよいし、複数のセンサS,S,…をカスケード接続してもよい。計測に必要な電力は、測定装置Mから供給される。カスケード接続センサSの種類に制限はないが、例えば、ひずみゲージのほか、ひずみゲージ変換式、圧電式、サーボ式等の各種計測器(加速度計、変位計、荷重計(圧力計)など)、直流電圧出力式の変位計、温度計(熱伝対)などである。
【0020】
測定装置Mは、構造物Tの外壁に付設されている。なお、図3に示すように、構造物Tの内部に測定装置Mを付設してもよい。図2に示すように、測定装置Mは、スイッチボックス11と、記憶手段12と、表示手段13と、測定制御手段14と、測定側受光手段15と、測定側発光手段16と、通信制御手段17とを備えている。
【0021】
スイッチボックス11は、センサSから延びる導線の接続端子やセンサSから出力された微小電圧(電流)を増幅する増幅回路、A/D変換回路などを備えている。
【0022】
記憶手段12は、センサSで取得された測定データ(センサSから出力された電圧値または当該電圧値に校正係数を乗じて得た物理量に関する情報)や当該測定データの識別情報(測定データの取得時刻、測定データを取得したセンサSの位置情報やID番号、測定装置Mの位置情報、測定装置MのID番号など)を記憶するものであり、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリ)により構成されている。なお、ハードディスクや光ディスクなどを記憶手段12としても差し支えない。
【0023】
表示手段13は、センサSで取得された測定データや当該測定データの識別情報などを表示するものであり、本実施形態のものは、表示画像を保持する際に電力を必要としない電子ペーパーからなる。
【0024】
測定制御手段14は、センサS,S,…への電力供給を制御する電力制御機能、センサSから出力された電圧値に校正係数を乗じて所定の物理量を演算する校正機能、センサSで取得された測定データ(センサSから出力された電圧値または前記物理量)をその識別情報とともに記憶手段12に書き込む機能、記憶手段12の中から測定データを読み出す機能、表示手段13に表示させる画像データを生成する描画機能などを具備している。
【0025】
測定側受光手段15は、光を受けて発電する機能(すなわち、光起電力効果により発電する機能)、データ収集装置Dから発信された光信号を電気信号に変換する機能、得られた電気信号を通信制御手段17に出力する機能などを具備している。本実施形態の測定側受光手段15は、光発電用受光素子(または受光素子アレイ)15aと、光発電用受光素子15aで発電された電力を測定装置M内の部品に供給するための給電回路(図示略)と、信号変換用受光素子(または受光素子アレイ)15bと、信号変換用受光素子15bから出力された電気信号を復調する復調回路(図示略)とを備えて構成されている。
【0026】
光発電用受光素子15aは、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトIC、太陽電池セルなどからなる。なお、本実施形態では、光発電用受光素子15aとして、赤外線領域の光に好適に反応する受光素子を使用するが、可視光領域の光に好適に反応する受光素子を使用しても差し支えない。
【0027】
信号変換用受光素子15bは、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトICなどからなる。なお、本実施形態では、信号変換用受光素子15bとして、赤外線領域の光に好適に反応する受光素子を使用するが、可視光領域の光に好適に反応する受光素子を使用しても差し支えない。
【0028】
測定側発光手段16は、センサSで取得された測定データやその識別情報など(以下、「測定データ等」という。)を光信号に変換するものである。本実施形態の測定側発光手段16は、測定データを変調する変調回路と、変調回路から出力された電気信号に対応する光を発光する発光素子16aと、を備えて構成されている。発光素子16aは、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオードなどからなり、赤外線領域の光を発光する。なお、可視光領域の光を発光する発光素子16aを使用しても差し支えない。
【0029】
通信制御手段17は、測定側受光手段15から出力された電気信号にデータ送信を要求する信号(送信要求信号)が含まれているか否かを判定し、送信要求信号が含まれていると判定した場合には、記憶手段12の中から測定データ等を読み出し、読み出した測定データ等を測定側発光手段16に出力する。また、通信制御手段17は、測定側受光手段15から出力された電気信号にモニタリング(センサによる測定)を要求する信号(測定要求信号)が含まれているか否かを判定し、測定要求信号が含まれていると判定した場合には、その結果を測定制御手段14に出力する。すなわち、通信制御手段17は、測定側受光手段15から出力された電気信号に送信要求信号または測定要求信号が含まれているか否かを判定する機能、記憶手段12の中から測定データ等を読み出す機能、読み出した測定データ等を測定側発光手段16に出力する機能、測定要求信号を測定制御手段14に出力する機能などを具備している。
【0030】
本実施形態の測定装置Mは、外部電源および内部電源(乾電池や蓄電池など)の少なくとも一方を具備していて(以下、「常時電源」と称する。)、通常時においては常時電源から得た電力で作動するが、災害や停電などにより常時電源から電力が得られない場合には、測定側受光手段14で発電された電力で作動する。すなわち、測定装置Mは、常時電源からの電力供給が継続している場合には、予め設定された時間間隔ごとに起動してセンサS,S,…で計測を行い、取得した測定データ等を記憶手段12に格納するとともに、表示手段14に表示するが、常時電源からの電力供給が停止もしくは不十分になった場合には、測定側受光手段14で発電された電力で作動し、データ収集装置Dからの指示に基づいて各種処理を実行する。
【0031】
データ収集装置Dは、図1に示すように、リーダ部D1と、コントロール部D2と、図示せぬ内部電源とを備えている。
【0032】
リーダ部D1は、図2に示すように、測定側受光手段15に向う光を発光可能な収集側発光手段21と、測定側発光手段16から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段22とを備えて構成されている。
【0033】
収集側発光手段21は、コントロール部D2から出力された電気信号を光信号に変換する機能を具備している。本実施形態の収集側発光手段21は、コントロール部D2から出力された送信要求信号や測定要求信号を変調する変調回路(図示略)と、変調回路から出力された電気信号またはコントロール部D2から直接出力された電気信号に対応する光を発光する発光素子(または発光素子アレイ)21aとを備えて構成されている。
【0034】
発光素子21aは、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオードなどからなる。本実施形態では、光発電用受光素子15aおよび信号変換用受光素子15bに赤外線領域の光に好適に反応する受光素子を使用していることに対応して、赤外線領域の光を発光する発光素子21aを使用するが、可視光領域の光に好適に反応する受光素子を光発電用受光素子15aおよび信号変換用受光素子15bに使用した場合には、可視光領域の光を発光する発光素子21aを使用する。
【0035】
収集側受光手段22は、測定装置Mから発信された光信号を電気信号(測定データ等)に変換する機能、得られた電気信号をコントロール部D2に出力する機能などを具備している。本実施形態の収集側受光手段22は、受光素子(または受光素子アレイ)22aと、受光素子22aから出力された電気信号を復調する復調回路(図示略)とを備えて構成されている。
【0036】
受光素子22aは、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトICなどからなる。本実施形態では、赤外線領域の光を発光する発光素子16aに対応して、赤外線領域の光に好適に反応する受光素子22aを使用するが、可視光領域の光を発光する発光素子16aを使用した場合には、可視光領域の光に好適に反応する受光素子22aを使用する。
【0037】
コントロール部D2は、入力手段23と、収集制御手段24と、記憶手段25と、表示手段26と、通信手段27とを備えている。
【0038】
入力手段23は、「収集開始」や「測定開始」といったオペレータの指示を入力するための手段であり、例えば、キーボードや操作ボタンにより構成されている。
【0039】
収集制御手段24は、入力手段23を介して入力されたオペレータの指示に応じてトリガー信号、送信要求信号、測定要求信号といった電気信号を生成する機能、生成した電気信号を収集側発光手段21に出力する機能、収集側受光手段22から出力された電気信号(測定データ等)を記憶手段25に書き込む機能、表示手段26に表示させる画像データを生成する描画機能などを具備している。
【0040】
記憶手段25は、収集側受光手段22から出力された測定データ等を記憶するものであり、書き込み可能な不揮発性の半導体メモリ(フラッシュメモリ)により構成されている。なお、ハードディスクや光ディスクなどを記憶手段25としても差し支えない。
【0041】
表示手段26は、記憶手段25に記憶されている測定データ等やデータ収集の状況等を表示するものであり、液晶ディスプレイや電子ペーパーなどにより構成されている。
【0042】
通信手段27は、通信回線Nに接続されており、記憶手段25に記憶されている測定データ等を通信回線Nに接続された管理用コンピュータCに送信する。なお、通信回線Nは、有線(光回線や電話回線など)でも無線でもよい。
【0043】
次に、測定装置Mへの常時電源による電力供給が絶たれている状況下における構造物モニタリングシステムMSの使用方法を説明する。
【0044】
まず、データ収集装置Dを携行したオペレータを構造物T(図1参照)に向わせる。測定装置Mの設置場所に到着したならば、データ収集装置Dのリーダ部D1を、測定装置Mに接触させるか、若しくは、測定装置Mの測定側受光手段15および測定側発光手段16がデータ収集装置Dのリーダ部D1との間で双方向通信が可能になるまで測定装置Mに近接させつつ対向させる。
【0045】
次に、入力手段23を介して「収集開始」または「測定開始」の指示を入力する。例えば、オペレータが「収集開始」の指示を入力すると、収集制御手段24によってトリガー信号と送信要求信号とが生成され、収集側発光手段21に出力される。なお、トリガー信号は、送信要求信号に先立って生成される。
【0046】
収集側発光手段21に出力されたトリガー信号および送信要求信号は、変調回路により変調されたうえで発光素子21aにより光信号に変換され、測定装置Mの測定側受光手段15に向けて照射される。
【0047】
トリガー信号に対応する光(光信号)が測定側受光手段15に達すると、光発電用受光素子15aの光起電力効果により、光無線通信の初期動作に必要な電力が発電され、図示せぬ給電回路を介して通信制御手段17等に給電される。トリガー信号に対応する光(光信号)に引き続き、送信要求信号に対応する光信号が測定側受光手段15に達することになるが、当該光信号が測定側受光手段15に達するまでに、光無線通信の初期動作に必要な電力が発電されているので、送信要求信号に対応する光信号が測定側受光手段15に達すると、信号変換用受光素子15bによって電気信号に変換されるとともに、復調回路で送信要求信号に復調され、通信制御手段17に出力される。なお、通信制御手段17も、測定側受光手段15で発電された電力により作動する。ちなみに、光発電用受光素子15aは、送信要求信号に対応する光(光信号)を受光することでも発電する。
【0048】
通信制御手段17に送信要求信号が入力されると、記憶手段12の中から測定データ等が読み出され、読み出された測定データ等が測定側発光手段16に出力される。なお、測定側発光手段16も、測定側受光手段15で発電された電力により作動する。
【0049】
測定側発光手段16に測定データ等が入力されると、変調回路により変調されたうえで発光素子16aにより光信号に変換され、データ収集装置Dの収集側受光手段22に向けて発信される。
【0050】
測定データ等に対応する光(光信号)が収集側受光手段22に達すると、受光素子22aによって電気信号に変換されるとともに、復調回路で測定データ等に復調され、収集制御手段24に出力される。
【0051】
収集制御手段24に入力された測定データ等は、記憶手段25に書き込まれる。なお、記憶手段25に格納された測定データ等は、必要に応じて、通信回線Nを介して管理用コンピュータCに送信される。
【0052】
なお、測定装置Mへの常時電源による電力供給が絶たれた状況下において、構造物Tの最新の状態をモニタリングしたい場合には、入力手段23を介して「測定開始」の指示を入力する。
【0053】
オペレータが「測定開始」の指示を入力すると、収集制御手段24によってトリガー信号と測定要求信号とが生成され、収集側発光手段21に出力される。なお、トリガー信号は、測定要求信号に先立って生成される。
【0054】
収集側発光手段21に出力されたトリガー信号および測定要求信号は、変調回路により変調されたうえで発光素子により光信号に変換され、測定装置Mの測定側受光手段15に向けて照射される。
【0055】
トリガー信号に対応する光(光信号)が測定側受光手段15に達すると、光無線通信の初期動作に必要な電力およびセンサSによる測定(モニタリング)に必要な電力が発電され、通信制御手段17等に給電される。トリガー信号に対応する光(光信号)に引き続き、測定要求信号に対応する光信号が測定側受光手段15に達すると、信号変換用受光素子15bによって電気信号に変換されるとともに、復調回路で送信要求信号に復調され、通信制御手段17に出力される。
【0056】
通信制御手段17に測定要求信号が入力されると、測定制御手段14に出力され、センサSによる測定、取得した測定データ等の記憶手段12への書き込みといった一連の動作が実行される。
【0057】
最新の測定データ等が記憶手段12に格納されると、それまでに格納されていた測定データ等とともに読み出され、読み出された測定データ等が測定側発光手段16に出力される。以後の動作は、「収集開始」を指示した場合と同様である。
【0058】
このように、本実施形態に係る構造物モニタリングシステムMSでは、測定側受光手段15で発電された電力を利用してデータ収集装置Dとの間で光無線通信が行われ、センサSで取得された測定データや当該測定データの識別情報などが光無線通信によってデータ収集装置Dに転送される。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る構造物モニタリングシステムMSによれば、測定側受光手段15に光を照射することで、光無線通信に必要な電力を得ることができるので、測定装置への常時電源による電力供給が絶たれたような場合であっても、測定データ等をデータ収集装置Dに転送し、収集することができる。
【0060】
また、測定側受光手段15で発電された電力を利用してセンサSが測定データを取得するので、測定装置への常時電源による電力供給が絶たれたような場合であっても、センサSによる測定(モニタリング)を実行することが可能になる。
【0061】
また、データ収集装置Dが収集側発光手段21を具備しているので、データ収集装置Dのみを携行して測定装置Mに近接させるだけで、測定データ等を収集することができる。つまり、本実施形態に係る構造物モニタリングシステムMSによれば、測定装置Mを作動させるための専用の投光器等が不要になる。
【0062】
さらに、本実施形態では、測定装置Mの表示手段13を電子ペーパーとしたので、電力供給が絶たれる前の測定データ等を目視にて確認することができる。
【0063】
なお、前記した測定装置Mおよびデータ収集装置Dの構成は適宜変更しても差し支えない。
【0064】
例えば、前記した実施形態では、測定装置Mの測定側受光手段15に、光発電用発光素子15aと信号変換用受光素子15bとを設けた場合を例示したが、一の受光素子(または受光素子アレイ)で光発電と信号変換の両方を行うように構成してもよい。
【0065】
また、前記した実施形態では、データ収集装置Dの収集側発光手段21に、一の発光素子21aを具備させた場合を例示したが、光発電用の光を発光する光発電用発光素子(または発光素子アレイ)と、電気信号を光信号に変換する信号変換用発光素子とを設けても差し支えない。この場合には、赤外線領域の光を発光する発光素子を信号変換用発光素子とし、可視光領域の光を発光する発光素子を光発電用発光素子とすることが望ましい。このようにすると、信号変換用発光素子から発光された光が、光発電用発光素子から発光された光によって妨害され難くなる。
【0066】
なお、データ収集装置Dの収集側発光手段21から発光される光量が不足するような場合には、別途用意した投光器から発した光を測定装置Mの測定側受光手段15に照射して光無線通信に必要な電力を発電してもよい。
【0067】
また、前記した実施形態では、データ収集装置Dから送信された送信要求信号や測定要求信号を契機として、光無線通信が行われる場合を例示したが、光無線通信に必要な電力が発電されたときに自動的に光無線通信を行うように構成してもよい。この場合には、送信要求信号や測定要求信号を省略することができるので、データ収集装置Dの信号変換用発光素子を省略することができる。
【0068】
本実施形態では、複数のセンサS,S,…から得られたデータを一の測定装置Mに集約した場合を例示したが、図3に示すように、複数の測定装置M,M,…を構造物Tに設けてもよい。すなわち、複数のセンサS,S,…を複数のグループに分け、グループごとに測定装置Mを設けてもよい。各測定装置Mは、対応するグループに属する複数のセンサS,S,…とカスケード接続されており、各センサSで取得された測定データを蓄積する。
【0069】
複数の測定装置Mを設けた場合には、一の測定装置Mと他の測定装置Mとの間で双方向通信が可能となるように、有線回線(同軸ケーブル、LANケーブル、光ファイバー、電力線、専用線、人体などを利用した回線)N1または無線回線(電波や赤外線などを利用した回線)N2を介して測定装置Mどうしを接続するとよい。このようにすると、各測定装置Mに蓄積された測定データを他の測定装置Mに送信することが可能になる。つまり、複数の測定装置M,M,…に蓄積された測定データを各測定装置Mに集約することが可能になるので、測定装置M,M,…が構造物の各所に点在しているような場合であっても、データ収集(データ収集装置Dによるデータ収集)を何れか一つの測定装置Mにおいて一括して行うことが可能になる。なお、測定装置Mごとにデータ収集装置Dを用いてデータ収集を行っても勿論差し支えない。
【0070】
また、複数の測定装置M,M,…のうちの一つを「親機」としておき、測定装置M,M,…のそれぞれに蓄積されている測定データが「親機」に集約されるように構成してもよいし、二以上の測定装置Mを「親機」としておき、測定データが両親機のそれぞれに集約されるように構成してもよい。二以上の「親機」を設けておけば、一の親機に故障等が発生したとしても、他の「親機」を利用して、複数の測定装置で得られた測定データを収集することが可能になる。なお、「親機」以外の測定装置Mにおいては、測定側受光手段15および測定側発光手段16を省略してもよい。
【符号の説明】
【0071】
MS 構造物モニタリングシステム
S センサ
M 測定装置
13 表示手段
15 測定側受光手段
16 測定側発光手段
D データ収集装置
21 収集側発光手段
22 収集側受光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に取り付けられたセンサと、
前記構造物に付設された測定装置と、
可搬型のデータ収集装置と、を具備する構造物モニタリングシステムであって、
前記測定装置は、光を受けて発電する測定側受光手段と、前記センサで取得された測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、を備えており、
前記データ収集装置は、前記測定側発光手段から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段を有し、
前記測定装置は、前記測定側受光手段で発電された電力を利用して前記データ収集装置との間で光無線通信を行う、ことを特徴とする構造物モニタリングシステム。
【請求項2】
前記センサは、前記測定側受光手段で発電された電力を利用して測定データを取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の構造物モニタリングシステム。
【請求項3】
前記データ収集装置は、前記測定側受光手段に向かう光を発光可能な収集側発光手段を有し、
前記測定側受光手段は、前記収集側発光手段から照射された光を受けて発電する、ことを特徴とする請求項2に記載の構造物モニタリングシステム。
【請求項4】
前記測定装置は、前記測定データを表示する表示手段を有し、
前記表示手段は、表示画像を保持する際に電力を必要としない電子ペーパーからなる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の構造物モニタリングシステム。
【請求項5】
前記測定側受光手段は、前記測定データとともに前記測定データの識別情報を光信号に変換する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の構造物モニタリングシステム。
【請求項6】
構造物に取り付けられた複数のセンサと、
前記構造物に付設された複数の測定装置と、
可搬型のデータ収集装置と、を具備する構造物モニタリングシステムであって、
前記各測定装置は、少なくとも一つの前記センサで取得された測定データを他の前記測定装置に送信可能であり、
少なくとも一つの前記測定装置は、光を受けて発電する測定側受光手段と、前記測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、を備えており、
前記データ収集装置は、前記測定側発光手段から発信された光信号を電気信号に変換する収集側受光手段を有し、
少なくとも一つの前記測定装置は、前記測定側受光手段で発電された電力を利用して前記データ収集装置との間で光無線通信を行う、ことを特徴とする構造物モニタリングシステム。
【請求項7】
構造物に付設される測定装置であって、
光を受けて発電する測定側受光手段と、
前記構造物に取り付けられたセンサで取得された測定データを光信号に変換する測定側発光手段と、
を備えており、
前記測定側受光手段で発電された電力を利用してデータ収集装置との間で光無線通信を行うことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−287170(P2010−287170A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142450(P2009−142450)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】