説明

構造物製造方法

【課題】摩擦攪拌接合ツールを中空構造型材の片側からのみ移動させて、中空構造型材同士を接合することができ、しかも、ボビン型摩擦攪拌接合回転ツールを用いて接合するのに適した中空構造型材及びそれを用いた構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】2つの板同士を摩擦接合して構造物を製造する構造物製造方法において、一方の板と他方の板との少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、次に、前記一方の板と前記他方の板とを接着剤を塗った箇所で接触させて配置する工程と、次に、前記一方の板と前記他方の板とを摩擦接合を行うことにより前記板同士を接合させる工程とからなることを特徴とする。これにより、簡単にしっかりと仮止めができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
摩擦攪拌接合用回転ツールを用いて、摩擦攪拌により接合可能な板からなるハニカム構造の中空構造型材同士を接合して構造物を製造する技術に関し、特に、ボビン型摩擦攪拌接合回転ツールを用いて接合するのに適した中空構造型材及びそれを用いた構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両構造として、車両の左右の側構体、床構体、屋根構体等を、長手方向に延在する長尺の中空構造型材を用い、該中空構造型材を長手方向にのみ接合するだけで、前記側構体、床構体、屋根構体等を構成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような中空構造型材同士の接合に関し、図9で示すように、中空構造型材である中空パネル20は、垂直リブ20bから下面板20cが延びた形をしている。そして、先ずこの下面板20cを突合せて接合し、次いで、この突き出した下面板20cの上部の空いたところに、継手板21をはめ、この継手板21の両端を上面板20a接合する。こうすることにより中空パネル20の上下面板を一方の側のみから接合できるものが知られている。
【0004】
しかしながら、摩擦攪拌接合回転ツール11として、接合する板に対して回転面を一方からのみ押し付けて摩擦攪拌接合するプローブ型を用いているため、面板に押し付ける力を支えるための架台(ベッド)等の支持部材13が必要である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平2−246863号公報(第二頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−314181号公報(段落0027、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来技術によれば、中空構造型材を用いて車両などの構造物を摩擦攪拌接合によって製作する場合において、架台等の支持部材が必要であった。中空構造型材を水平な状態で並べて接合する場合には、架台等の支持部材を必要とするものの、架台等の構造や架台等への中空構造型材の設置も簡単であった。
【0007】
しかし、屋根構体、側構体、床構体をサブユニットとして組み立てて完成した車体とするときには、最終工程で、各構体は立体的に配置されているから、垂直の状態で接合する箇所があり、垂直面を支持する支持部材を車体内部側に設置する必要も生じ、このような支持部材を各接合箇所に一々セットするのは面倒な作業であると共に過大な設備が必要となる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、この問題に対し、摩擦攪拌接合ツールを中空構造型材の片側からのみ移動させて、中空構造型材同士を接合することができ、しかも、支持部材を設ける必要のないようにするため、接合する板を対向する2つの回転面に挟んで摩擦攪拌接合をするボビン型摩擦攪拌接合回転ツールを用いて接合するのに適した中空構造型材及びそれを用いた構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用することとした。
請求項1に記載の発明は、2つの板同士を摩擦接合して構造物を製造する構造物製造方法において、一方の板と他方の板との少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、次に、前記一方の板と前記他方の板とを接着剤を塗った箇所で接触させて配置する工程と、次に、前記一方の板と前記他方の板とを摩擦接合を行うことにより前記板同士を接合させる工程とからなることを特徴としている。
【0010】
この構成により、板と板とを接着剤で固定することにより、簡単にしっかりと仮止めができる。特に、接合する板同士に構造的な仮止め構造が設けられていない場合に有効である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明においては以下の効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、板と板とを接着剤で固定することにより、簡単にしっかりと仮止めができる。特に、接合する板同士に構造的な仮止め構造が設けられていない場合に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〈ボビン型摩擦攪拌回転ツール〉
摩擦接合をするため手段である摩擦攪拌接合回転ツールとして、ボビン型の摩擦攪拌接合回転ツール(以下単に「ボビンツール」と記す)30を使用する。なお、以下において、特に断りがない限り、上とか下の語は絶対的な上下を規定する意図ではなく、相対的な関係を示しているにすぎず、配置によっては左右にも成り得るものである。
【0013】
ボビンツール30そのものは、公知の技術である。図2に示すようにボビンツール30はピン30a(「回転軸」に相当)をはさんで、略円柱状の上ショルダ30bと略円柱状の下ショルダ30cがある。ピン30は円柱状であり、上ショルダ30bの下面(「対向する回転面」の一に相当)とこれに対抗する下ショルダ30cの上面(「対向する回転面」の他の一に相当)の中心に接続固定されている。
【0014】
上ショルダ30bから連続する上方に広がり方向の円錐台形状の部分30dがあり、この部分からさらに連続する上方にそれらよりも径の大きい略円柱状の部分30eがある。この略円柱状の部分30e、円錐台形状の部分30d、上ショルダ30b、ピン30a、下ショルダ30cは一体となってそれらのセンターを貫く軸を中心に回転するものであり、図示していない回転駆動装置の駆動が略円柱状の部分30e側に伝えられて、これらが一体に回転する。
【0015】
摩擦攪拌による固相接合は、ワークWより実質的に固い材質からなる回転ツールの先端をワークWの接合部に挿入し、回転ツールを回転させながら移動することにより、回転ツールとワークWの間に生じる摩擦熱による塑性流動によってワークWを接合する。ボビンツール30では、摩擦攪拌接合に必要な摩擦熱を発生させるため、上下ショルダ30b、30cの間隔は接合するワークWの厚さよりやや狭くなっている。
【0016】
このため、上下ショルダ30b、30cとワークWの間に押し付け力が発生し、摩擦攪拌接合に必要な摩擦熱が発生する。ワークWとなる部材は、例えばアルミニウム合金などの摩擦攪拌接合の可能な部材からなる。このワークWは、後述する中空構造材を構成する板や継手板に相当するものである。
【0017】
〈ボビン型摩擦攪拌回転ツールの利点〉
ボビンツール30によれば、押し付け力は上下ショルダ30b、30cとワークWに同時に、反対向きに発生し、互いに打ち消しあうから、ワークWに対して一方の側のみから押し付け力を作用させて摩擦攪拌を行うプローブ型の回転ツールのように、支持部材13を設けて、押し付け力を支持しなくてもワークWが曲がって変形することはない。
【0018】
また、摩擦攪拌接合の一般的な利点として、接合部分を溶融させることなく接合できるので加熱温度が低く、接合後のワークWの変形がほとんどなく、接合部分は溶融されていないため、欠陥が少ない。
【0019】
〈中空構造型材〉
図1の各図には、互いに接合される2つの中空構造型材40が左右に並んで配置されている。中空構造型材40である二面中空パネル40ともいい、対向する2つの板40a、40bと両板40a、40bを接続支持する複数のリブ板40cからなるハニカム構造である。複数のリブ板40cはトラス状に配置され、複数のリブ板40cの前記板40a、40bに対する傾斜方向は交互に反転している。この構造型材40はアルミニウム合金などの摩擦攪拌接合可能な部材からなり、一般的には、押出しにて成形される。
【0020】
図1(a)に示すように、接合する中空構造型材40の下側の面板40bを長くしておく。更に、中空構造型材40の上側(作業する方から見て近い側)の面板40aは下面板40bよりも短い位置で切断し、または、中空構造型材40の成形時に短い形状として押出し成形し、他方の中空構造型材40の上面板40aとの間に間隔を設ける。即ち、対向する2つの板40a、40bは最も端のリブ板40cとの接続部分よりも先端が延出しかつ前記対向する2つの板のうち一の板40aは他の板40bよりも先端が短くなっている。
【0021】
更に、上面板40aと下面板40bとを結合するリブ板40cと上面板40aと下面板40bの端部は所定の長さ(L1、L2、M1、M2)だけ突出し、上面板同士40aの間隔(N1、N2)は所定の長さだけ確保するように形成されている。
【0022】
即ち、接合する中空構造型材40のうち少なくとも一方の、一の板である上面板40aと他の板である下面板40bとの先端の短さ(N1、N2)は摩擦攪拌接続用回転ツールの半径よりも大きく。両方の短さ(N1、N2)を合計して摩擦攪拌接続用回転ツール30の直径よりも大きくしている。好ましくは、接合する中空構造型材40の両方とも、同程度の短さ(N1、N2)とするのが良い。これにより、中空構造型材40同士を接続して構造物を製造するときに、上面板40aと摩擦攪拌接続用回転ツール30の両側に同程度の間隔をとることができ、摩擦攪拌接続用回転ツール30の位置決めや操作がし易くなるからである。
【0023】
対向する2つの板である上面板40aと下面板40b、それぞれにおいて、最も端のリブ板40cとの接続部分よりも延出する部分の長さ(L1、L2、M1、M2)がボビンツール30の上下ショルダ30b、30cの回転面の半径よりも長くしてある。これにより、中空構造型材40同士を接続して構造物を製造するときに、支障なくボビンツール30を用いることができる。
【0024】
〈構造体の製造方法〉
このボビンツール30により、中空構造型材40である二面中空パネル(別名、ダブルスキンパネル)同士、あるいは中空構造型材40とその補助材や補強材等を、突合せにて接合し、車体などの構造物を製造する方法を、図1に基いて、以下に説明する。なお、図1では、図の見易さを考慮して、中空構造型材40が水平に配置されているが、垂直に支持して配置した場合も同様であり、車体などの構造物の製造には、垂直に配置されている場合に、特に、本発明の効果が大きい。
【0025】
最初に中空構造型材40同士が連続するように並べて配置するに際して、一の板である上面板40aの先端同士は間隔を空けて、他の板である下面板40bの先端同士は付き合わせて配置する。
【0026】
次に、この下面板40b同士をボビンツール30により接合する。即ち、ボビンツール30を用いて、上下シャフト30b、30cの回転面により下面板40bを挟んで下面板40b同士を摩擦攪拌により接合させながら、ボビンツール30を上面板40aの先端同士の間隔(N1、N2)からなる空間を移動させて、接合を完了する。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、一の板40a同士の間に継手板41を配置する。即ち、上面板40aの先端と継手板41の端とが付き合わさるように、上面板40a同士の間に継手板41がはまるように配置する。この場合、図3や図4に関連して後述する手段を用いることにより、継手板41を一の板40aに対して固定し易くできる。
【0028】
また、後に詳述するように、一の板40a同士の間に前記継手板41を配置する前に、予め、少なくともいずれか一方の板に接着剤を塗布しておくことにより、一の板40a同士の間に前記継手板41をしっかりと仮止めすることができて、中空構造型材40を垂直に配置して接合するような場合であっても、継手板41をしっかりと仮止めできる。
【0029】
次に、図1(b)に示すように、ボビンツール30を用いて前記継手板41と前記一の板40aとを摩擦攪拌により接合する。即ち、上下シャフト30b、30cの回転面により上面板40aの一端と継手板41の一端を挟んで上面板40aと継手板41とを摩擦攪拌により接合させながら、ボビンツール30を上面板40aの外側から移動操作させて、接合を完了する。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、図1(b)に関して説明したのと同様に、継手板41の他端ともう一方の上面板40aをボビンツール30で接合する。
こうすることにより、支持部材を設けることなく、片側から中空構造型材40の上下面板40a、40bをそれぞれ接合することができる。
【0031】
このように、上下2枚の面板40a、40bを有する中空構造型材40を、片側から、しかも、摩擦攪拌回転ツールの押し付け力に抗するための強固な支持部材等の特別の補助装置を用いること無く、接合することができる。
【0032】
〈継手板の位置決め固定〉
図3に示すように、上面板40aの側面と継手板42の側面に段を付けて嵌め合わせできるようにすることが好ましい。即ち、上面板40aは外表面側にへこんだ段状に先端側面が形成され、継手板42は上面板40aの先端側面と合わさる段状に端部が形成されている。この場合、上面板40aの先端側面の段状形状が外表面に向かってへこんでいるため、継手板42を上面板40aの外側からはめやすく、上面板40aと継手板42との段状同士により簡単に位置決め固定できる。
【0033】
図3に示すように、上面板40aと継手板42との両方に段状を形成することが固定の安定性からは好ましいが、上面板40aと継手板41、42の一方のみに段状を形成しても、固定できる。図4に示すように、継手板41の端部を段状に形成せず、上面板40aだけに段状を形成してもよい。また、図5のように、継手板42の端部を内表面となる側にへこんだ段状に形成してもよい。
【0034】
図6に示すように、上面板40aの側面と継手板43の側面に傾斜を設けて嵌め合わせできるようにすることが好ましい。特に、上面板40aの傾斜は外側に向かって開く方向、即ち、一の板40aは先端側面が一の板40aの内表面から外表面に向かって開いた傾斜面になっていることが好ましい。これにより、継手板42を上面板40に対し位置決め固定し易いのみならず、継手板43を一の板40aの外側から嵌めやすく、かつ、継手板43と一の板40aとの接合部分が傾斜面同士であるため隙間ができ難いので、摩擦攪拌接合した際の欠陥を生じ難い。
【0035】
〈接着剤の使用〉
図5の接合のように、中空構造型材50が垂直に配置されているところでの接合においては、上述のような図3〜図6に示したような継手板41の位置決め固定手段が設けられていても、自重での位置決めが不安定となる。このような場合や中空構造材が水平に配置された場合であっても継手板41の端部等に位置決め固定手段が施されていない場合には、1の板40a同士の間に、継手板41を配置する前に、一の板40aの端部と継手板41の端部との少なくとも一方に接着剤等を塗布して継手板41板を一の板40aに仮付けしておくのが望ましい。
【0036】
これにより、継手板41板を一の板40aに簡単にしっかりと仮止めできる。なお、接着剤による仮止めによれば、摩擦接合で恒久的な固定ができた後に、仮止めのための部材や装置を除くなどの後処理作業の必要もないため、構造物製造方法が簡単になる。接着剤としては、シアノアクリルレート系、低温硬化エポキシ系、2液高性能エポキシ系やアクリル系等の接着剤の内で、摩擦攪拌接続により部材などが温度上昇するが、この温度上昇に起因するガス発生、例えば燃焼ガスの少ない接着剤を用いるのが好ましい。ガス発生が多い場合、作業空間の換気作業や換気設備の負担が多くなるからである。
【0037】
〈接合の強度を上げる凸部〉
図7に示す中空構造型材44のごとく、下面板44bの接合箇所に接合相手の下面板40bと重ね合わせとなる凸部44cを設けることにより、接合の強度を上げることも可能である。なお、このように接合の強度を上げるための凸部44cは接合箇所だけに設ければよく、接合箇所から離れたところの板厚までも厚くする必要はない。
【0038】
図4、図5に示すように、上面板と継手板の接合箇所においても、いずれか一方の板に他方の板と重ね合わせとなる凸部を設けることは、下面板40b、44bの場合と同様に、接合箇所の強度を上げることができる。この場合も、接合箇所のみに凸部があればよく、接合箇所と関係しないところの板厚までも厚くする必要はない。
【0039】
〈鉄道車両の車体〉
本発明は、広く適応できるものであるが、好適な例として、鉄道車両の車体への適応について説明する。図8は鉄道車両の車体全体の概略断面構成を示し、符号Kの矢印の先にある箇所が中空構造型材50、51同士の接合箇所となる。図1では、中空構造型材を水平にした状態が示されているが、車体などに適応する場合には、垂直にした状態に配置される。
【0040】
即ち、中空構造型材50、51同士の接合については図1に関する説明と基本的には同じであり、図8のKの矢印の先の円印の箇所に適応した場合、図1の各図を右に90度回転させた状態の配置となる。
【0041】
図8に示すように、中空構造型財50、51を突合せて、立体的に配置し支持する。ボビンツール30を車体の外側から挿入して、先ず、屋根構体1を構成する中空構造型材50の車体内側の板(図1の左側の他の板40bに相当)と側構体2を構成する中空構造型材51の車体内側の板(図1の右側の他の板40bに相当)とを接合する。図8に示す側構体2の断面の白抜きの部分は、窓が設置されることを想定しているが、中空構造型材51がそのまま連続している場合もある。
【0042】
次に、屋根構体1を構成する中空構造型材50の外面板(図1の左側の一の板40aに相当)と側構体2を構成する中空構造型材51の外面板(図1の右側の一の板40aに相当)との間に継手板(図1の継手板41に相当)はめる。
【0043】
次に、ボビンツール30を用いて、継手板と屋根構体1を構成する中空構造型材50の外面板(図1の左側一の板40aに相当)とを接合する。次に、継手板と側構体2を構成する中空構造型材51の外面板(図1の右側の一の板40aに相当)とを接合する。
【0044】
この場合、ボビンツール30を中空構造型材50、51に車体の外側からのみ挿入でき、車体の内部にボビンツール30を移動させる機器を設ける必要がなく、また、ボビンツール30のある反対側、即ち、車両の内部に摩擦攪拌接合回転ツールの押し付け力に抗する支持部材を設ける必要がないことが、製造設備を簡単にし、製造作業も簡易としている。
【0045】
また、従来のMIG溶接や埋れアーク溶接による場合と比較して、摩擦攪拌接合の採用により、接合部を溶融させることなく接合できるので加熱温度が低く、接合後の変形が少なく、且つ、歪や欠陥が少ないと言う利点を享受できる。従って、装置点数の大幅な削減、及び、製造作業工数の大幅な節減ができるとともに作業性の向上、及び、品質の向上が図れる。
【0046】
さらに、上述したように、継手板41を接着剤で仮付けすることにより、構造の簡素化、作業性の向上が図れる。また、上述したように、継手板42、43の端部に設けた段や斜面により位置決めが容易となり、作業性の向上が図れる。
【0047】
以上、説明は図8に示すような、垂直に配置された構体同士の組立時の接合について述べたが、中空構造型材同士を略水平な状態に於いて接合し、構体を製作する場合にあっても、前述のように片側から、しかも、支持部材等の特別の補助装置を用いること無く、接合することができるので、中空構造型材の支持装置は自重を支える程度の簡易なもので良く、また、片面を接合した後で反対面を接合するために反転する必要が無い。
【0048】
このことから、略水平な状態に配置した中空構造型材同士の接合の場合にあっても装置の簡素化、作業性の向上が図れる。部品点数及び組立工数を節減できるとともに作業性の向上と相俟って制作期間の短縮化が図れ、生産性の向上と大幅なコストダウンにより、堅牢で軽量な車両を安価に提供することができる。
【0049】
なお、本発明は、車両の構体の製造に適したものとして説明をしているが、航空機、及び、船舶等の構体を形成する中空材を突合せて摩擦攪拌接合する場合にあっても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る構造物製造方法及び中空構造型材を示す断面図
【図2】本発明の一実施形態に係るボビンツールでの接合を示す断面図
【図3】本発明の一実施形態に係る板同士の位置決め固定のための形状を示す断面図
【図4】本発明の別の実施形態に係る板同士の位置決め固定のための形状を示す断面図
【図5】本発明の別の実施形態に係る板同士の位置決め固定のための形状を示す断面図
【図6】本発明の別の実施形態に係る板同士の位置決め固定のための形状を示す断面図
【図7】本発明の別の実施形態に係る他の板同士の接合を示す断面図
【図8】本発明の一実施形態に係る車両の車体の製造途中の概略断面図
【図9】従来の構造物製造方法及び中空構造型材を示す断面図
【符号の説明】
【0051】
1…屋根構体
2…側構体
3…床構体
11…プローブ型回転ツール
12…形状保持材
13…支持部材
20…中空パネル
20a…上面板
20b…垂直リブ
20c…下面板
21…継手板
30…ボビンツール
30a…ピン
30b…上ショルダ
30c…下ショルダ
40…中空構造型材
40a…上面板
40b…下面板
40c…リブ
41…継手板
42…継手板(段付き)
43…継手板(傾斜付き)
44…中空材
44b…下面板
44c…凸部
50…中空構造型材
51…中空構造型材
K…接合部
W…ワーク
L1、L2…リブ板からの一の板(上面板)の突出し量
M1、M2…リブ板からの他の板(下面板)の突出し量
N1、N2…一の板(上面板)と他の板(下面板)との先端の短さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの板同士を摩擦接合して構造物を製造する構造物製造方法において、
一方の板と他方の板との少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、
次に、前記一方の板と前記他方の板とを接着剤を塗った箇所で接触させて配置する工程と、
次に、前記一方の板と前記他方の板とを摩擦接合を行うことにより前記板同士を接合させる工程とからなることを特徴とする構造物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28795(P2009−28795A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279192(P2008−279192)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【分割の表示】特願2003−36243(P2003−36243)の分割
【原出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】