説明

構造物

【課題】載置面上に2次側機器が載置されると、送電装置が自発的に1次コイルと2次コイルとの相対的な位置関係を検出することができ、その位置置関係の検出情報を用いて、両コイルの位置合わせを効率的に行うことが可能な机等の構造物を提供する。
【解決手段】載置面SAの下方に送電側装置704を埋設する。送電側装置704は、送電装置とXYステージ702とを含む。送電装置10は、例えば高調波検波回路を用いて1次コイルと2次コイルとの相対位置関係を検出し、XYステージ702をアクチュエータを用いて駆動し、2次コイルに対する1次コイルの位置決めを自動的に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無接点電力伝送に対応した構造物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁誘導を利用し、金属部分の接点がなくても電力伝送を可能にする無接点電力伝送(非接触電力伝送)が脚光を浴びている、この無接点電力伝送の適用例として、携帯電話機や家庭用機器(例えば電話機の子機や時計)の充電などが提案されている。
【0003】
1次コイルと2次コイルを用いた無接点電力伝送装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
また、無接点電力伝送システムにおいて、1次コイルと2次コイルとの位置ずれを検出する技術は、特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の技術では、受電装置の整流回路の出力電圧に基づいて、1次コイルと2次コイルの相対位置関係が正常であるか否かを検出し、正常である場合にその旨を発光ダイオードLEDの点灯により使用者に知らせる。位置関係が異常である場合にはLEDが点灯しない。この場合には、ユーザが手動で位置関係を調整する。
【特許文献1】特開2006−60909号公報
【特許文献2】特開2005−6460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無接点電力伝送システムにおいて、1次コイルと2次コイルとの位置合わせを正確に行うためには、例えば、受電装置を内蔵する2次側機器に専用の送電台(送電装置を内蔵する1次側電子機器)を使用するのがよい。但し、この場合は、2次側機器が異なれば、その都度、専用の送電台を用意する必要が生じて、送電台の汎用性を担保することができない。
【0006】
例えば、無接点電力伝送システムを利用して携帯端末のバッテリを充電する場合、例えば、同じ大きさの端末であっても、メーカが異なれば、外観の形状(デザイン)が異なり、かつ、2次コイルの設置位置も異なるのが普通であり、一台の送電台(充電台)で、異なるメーカの複数の携帯端末に対応することは困難である。
【0007】
また、種類の異なる端末(例えば、携帯電話端末とPDA端末)では、端末の大きさや形状(デザイン)が異なり、2次コイルの設置位置も異なる。よって、同様に、1台の送電台で、種類の異なる端末に対応することは困難である。
【0008】
また、専用の送電台を使用せずに、例えば、フラットな平面をもつ構造物(例えば机)の所定エリア上に携帯端末を載置するだけで充電が可能となれば、無接点電力伝送システムの利便性は格段に向上する。しかし、所定のエリア上の概略位置に置かれた携帯端末の2次コイルの正確な位置は、上記と同様の理由で特定することができない。よって、このような次世代の無接点電力伝送システムは、現状の技術では実現できない。
【0009】
特許文献2の技術では、1次コイルと2次コイルとの位置合わせが正確であるか否かをユーザに提示することはできるが、位置合わせは、結局のところ、ユーザの手動による調整に頼るしかない。
【0010】
本発明はこのような考察に基づいてなされたものである。本発明の少なくとも一つの実施形態の構造物を用いると、送電装置(1次側機器)が自発的に、送電装置(1次側機器)と受電装置(2次側機器)との相対的な位置関係を検出することができる。この位置関係の検出情報を用いることによって、1次コイルと2次コイルの位置合わせを効率的に行うことができる。1次コイルと2次コイルの位置合わせを自動的に行うことも可能である。よって、2次側機器のメーカ、大きさ、種類、機器デザイン等に依存せずに、常に両コイルの相対位置を自動的に適正化することができる。よって、次世代の無接点電力伝送システムを日常生活において手軽に利用できるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の構造物の一態様は、無接点電力伝送用の受電装置を有する電子機器が載置される載置面を備える載置部材と、無接点電力伝送用の送電装置と、を含む構造物であって、前記送電装置は1次コイルを有し、前記受電装置は2次コイルを有し、前記送電装置は、電磁結合された前記1次コイルおよび2次コイルを経由して無接点で前記受電装置に電力を伝送し、かつ、前記送電装置は、前記1次コイルと前記2次コイルの位置関係を検出する位置検出回路を有する。
【0012】
本態様の構造物では、送電装置(1次側機器)が自発的に、送電装置(1次側機器)と受電装置(2次側機器)との相対的な位置関係を検出することができる。この位置関係の検出情報を用いることによって、1次コイルと2次コイルの位置合わせを効率的に行うことができる。1次コイルと2次コイルの位置合わせを自動的に行うことも可能である。また、コイル間の位置関係を検出できるということは、載置エリアに置かれたのはネジや釘等ではなく、送電対象となり得る(少なくともそのような可能性がある)2次側機器であるということを前提とした検出である。つまり、位置関係の検出回路は、載置エリアに置かれた物品が、送電対象になり得る機器であるか否かを検出する手段(適正な2次側機器であるか否かの検出器)としての機能も有している。
【0013】
(2)本発明の構造物の他の態様では、前記位置検出回路による位置関係の検出結果を報知する報知示部を有する。
【0014】
これによって、ユーザは、例えば載置面の下方に埋設されている送電装置に対して、構造物の載置面上に載置された2次側機器(携帯端末等)がどのような位置関係にあるのか(例えば、送電可能範囲ではあるが1次コイルと2次コイルの中心が相当量ずれている、両コイルの中心位置が合致している、といった相対的な位置関係)をリアルタイムで知ることができる。ユーザは、例えば、この報知情報を指標として、2次側機器を載置面上で試行錯誤的に移動させることによって、2次コイルを1次コイルに対して容易に位置決めすることができる。これに加えて、載置エリアを透明としておき、ユーザが載置エリアの下側に位置するコイル位置を直接的あるいは間接的に目視できるようにする等の工夫をすれば、位置決めはさらに容易となる。
【0015】
また、位置検出回路によって2次側機器のセットやリーブ(取り去り)も検出することができ、報知部は、その検出結果をユーザに報知することもできる。また、報知部は、2次側機器が、送電対象になり得る機器(例えば、規格に適合した2次側構成をもつ2次側機器)であるか否かをユーザに報知する場合もあり得る。
【0016】
(3)本発明の構造物の他の態様では、前記位置検出回路は、磁性体付きの前記2次コイルの接近によって変動する前記1次コイルのコイル端電圧またはコイル電流に基づいて、前記1次コイルと2次コイルの位置関係を検出する。
【0017】
磁性体付きの2次コイルが接近することによる1次コイルのインダクタンスの変化に基づいて、1次コイルと2次コイルの位置関係(2次コイルの1次コイルへの接近自体を含む)を、簡単な回路で検出することができる。すなわち、2次コイルに備わる磁性体は、例えば、2次コイルの磁束と2次側の回路とを遮断する遮蔽板であり、あるいは、2次コイルのコアであってもよい。2次コイルが接近すると、1次コイルの磁束が2次コイルの磁性体を貫くことになり、これによって1次コイルのインダクタンスが上昇する。ここでいう「インダクタンス」は、磁性体付きの2次コイルの接近によって変動するインダクタンス(正確には、見かけ上のインダクタンス)である。「見かけ上のインダクタンス」という用語は、1次コイル単独のインダクタンス(2次コイルの接近の影響を受けないときのインダクタンス)と区別するために使用している。この見かけ上のインダクタンスの値は、例えば、2次コイルが接近したときの1次コイルのインダクタンスを計測器で実測することによって得られる。本明細書では、「見かけ上のインダクタンス」と明記した方がよい場合を除いて、見かけ上のインダクタンスのことを、単にインダクタンスと表記する。これに伴い1次コイルのコイル端電圧(コイル電流)が減少するため、この変化を検出することによって、1次コイルの接近を検知することができる。
【0018】
また、2次コイルの接近を検出できるということは、すなわち、送電対象となり得る2次側機器が近づいていることを示しており、この点で、接近検出回路は、載置エリア上の機器が、2次コイルをもつ送電対象となり得る2次側機器であるか否かを検出する手段(適正な2次側機器であるか否かの検出器)としての機能も有している。
【0019】
(4)本発明の構造物の他の態様では、前記位置検出回路は、前記1次コイルの駆動周波数の高調波信号を検出する高調波検波回路である。
【0020】
高調波検波回路によって、1次コイルの駆動周波数の高調波共振ピークを検出することができる。例えば、2次側(受電装置側)に、1次コイルの駆動周波数の高調波に共振する共振回路が形成される。すなわち、1次コイルと2次コイルが所定の相対的位置関係になったときに2次側の共振回路が構成されるようにしておき、例えば、1次コイルを間欠的に駆動して高調波検波回路の検波出力レベルをみれば、1次コイルと2次コイルとが所定の相対的位置関係になったことを、高精度に、かつ2次側機器の動作とは無関係に(つまり1次側が自発的に)検出することができる。例えば、1次コイルを構成要素とする1次側共振回路の共振周波数をfpとすると、通常、1次コイルの駆動周波数は、動作の安定性を重視してその共振周波数(fp)から離れた周波数(fd)に設定される。1次コイルの駆動周波数の高調波(fs)は、上下対称の駆動信号の場合、奇数次高調波のみであり、例えば、5次高調波(fs:=5fd)を使用することができる。高調波信号は1次コイルから2次コイルへの通常の電力伝送に関係しない周波数であり、通常動作に何ら影響を与えないため安全であり、また、n次高調波(nは例えば3以上の奇数)ならば、共振のエネルギは基本周波数の約1/nに低減されるため、共振ピーク値も妥当なレベルとなり、高調波検波回路による検出も容易である。高調波検波回路の検波出力は、1次コイル(送電装置)と2次コイル(受電装置や2次側機器)の広義の位置検出に使用でき、その検波出力は、種々の用途に利用することができる。例えば、高調波検波回路の検波出力を指標として、1次コイルと2次コイルの位置合わせを行うことができる。また、高調波検波出力が得られることによって2次側機器が所定位置にセットされたことを検出することができる(2次側機器のセット検出)。また、高調波検波出力のレベル変動をウオッチングすることによって、1次コイルと2次コイルのいずれかが遠ざかっている(あるいは近づいている)ことをリアルタイムで検出することもできる(移動、接近、離間等の検出)。また、今まで得られていた所定レベルの高調波検波出力が得られなくなったことによって、一度セットされた2次側機器が取り外されたことを検出することもできる(リーブ検出)。
【0021】
(5)本発明の構造物の他の態様では、前記1次コイルの中心と前記2次コイルの中心が所定の位置関係にて電磁結合しているときに、前記1次コイルの駆動周波数の高調波に共振する共振回路が構成されて、前記高調波検波回路から共振ピーク信号が出力される。
【0022】
受電装置側に、1次コイルの駆動周波数の高調波に共振する共振回路が形成され、これによって高調波の共振ピークが得られる。上述の共振回路は、例えば、両コイルが所定距離R(R≧0)だけ離れているときの洩れインダクタンスに共振するように、2次コイル側の共振コンデンサの容量値を設定される。この場合には、両コイルがRだけ離れているときに高調波共振ピークが検出される。同様に、1次コイルと2次コイルの位置が一致しているときの洩れインダクタンスとコンデンサによって共振回路が構成されるようにしておけば、両コイルの位置が合致しているときに高調波共振ピークが得られる。つまり、高調波検波回路の検波出力は、両コイルの位置が合致(一致)していることを示す位置検出信号として利用可能である。よって、その位置検出信号としての高調波検波出力のレベルを指標として、1次コイルと2次コイルの位置合わせを行うことができる。例えば、所定レベルを超える高調波検波出力が得られるときに表示ランプが点灯するようにしておき、2次側機器を試行錯誤的に手動で移動させ、ランプが点灯する位置を探ることによって、2次コイルを1次コイルに対して位置決めすることができる。
【0023】
(6)本発明の構造物の他の態様では、さらに、前記送電装置の前記1次コイルのXY平面上における位置を移動させるためのアクチュエータと、前記アクチュエータによる駆動によって、前記1次コイルの位置を移動させるXYステージと、が設けられる。
【0024】
例えば、所定レベル以上の高調波検波出力が得られるまで、アクチュエータによって1次コイルの位置を試行錯誤的に移動させる。これによって、1次コイルと2次コイルの所定の相対的位置関係を自動的に実現することができる。ここで、1次コイルを試行錯誤的に移動させる方式には、1次コイルを、例えば、所定の移動シーケンスに基づいて(例えば螺旋状スキャンシーケンスに基づいて)移動させる場合が含まれ、また、まったくランダムに移動させる場合も含まれる。
【0025】
(7)本発明の構造物の他の態様では、前記送電装置は、送電制御装置を含み、前記送電制御装置は、前記受電装置への送電を制御する送電側制御回路と、前記1次コイルの駆動周波数の前記高調波信号を検出する高調波検波回路と、前記高調波検波回路の検波信号に基づいて所定の演算を行い、前記2次コイルの中心の位置を求める演算回路と、前記1次コイルのXY平面上における位置を移動させるためのアクチュエータの動作を制御するアクチュエータ制御回路と、を含み、前記アクチュエータ制御回路は、前記2次コイルの位置を検出するために前記1次コイルを走査し、前記2次コイル位置検出のための走査によって得られたデータに基づいて、前記演算回路が前記所定の演算を行って前記2次コイルの中心の位置を求め、前記アクチュエータ制御回路は、前記一次コイルの中心位置が、前記演算によって求められた前記2次コイルの中心位置になるよう前記1次コイルを移動させる。
【0026】
演算回路は、この高調波共振ピークが得られたときの座標位置データに基づいて2次コイルの中心位置を求める。共振ピークを利用して2次コイルの中心を正確に求め、求められた2次コイルの中心位置に、1次コイルの中心が重なるように1次コイルを移動させて位置合わせを行うため、両コイル間の高精度の位置合わせが実現される。
【0027】
(8)本発明の構造物の他の態様では、前記1次コイルおよび2次コイルは円形コイルであり、前記アクチュエータ制御回路は、前記アクチュエータを駆動して前記1次コイルを、前記2次コイルと交差する第1の軸に沿って移動させて、2次コイル位置検出のための第1の走査を実行し、前記演算回路は、前記第1の走査中において、前記高調波検波回路の検波信号のピークが得られる2点の各々を結ぶ線分の中点の座標を演算により求め、前記アクチュエータ制御回路は前記アクチュエータを駆動して前記1次コイルを、前記第1の軸に直交し、かつ、前記第1の走査において求められた前記中点を通過する第2の軸に沿って移動させて2次コイル位置検出のための第2の走査を実行し、前記演算回路は、前記第2の走査中において、前記高調波検波回路の検波信号のピークが得られる2点の各々を結ぶ線分の中点の座標を演算により求め、前記アクチュエータ制御回路は、前記アクチュエータを駆動して、前記1次コイルの中心の位置が、前記第2の走査において求められた前記中点の位置になるように前記1次コイルを移動させる。
【0028】
円形コイルおよび高調波検波を利用した直交2軸サーチを行う点を明らかとしたものでる。円形の1次コイルを任意方向の一軸(第1の軸)に沿って走査する(第1の走査)。例えば、1次コイルのサーチ範囲が4角形の場合、対角方向の軸に沿って1次コイルを移動させれば、1次コイルは2次コイルに必ず交わることになる。第1の走査中において、1次コイルと2次コイルの各中心が所定距離(R)のときに高調波ピークが得られるが、このような位置関係は、1次コイルが2次コイルに接近するとき、ならびに、1次コイルが2次コイルから離れるときに実現される。よって、第1の走査を行うとXY平面上の2点において高調波共振ピークが得られることになる。演算回路は、その2点を結ぶ線分の中点を求める。次に、その中点を通り、かつ第1軸に直交する第2の軸に沿って第2の走査を実行する。演算回路は、同様に、第2の走査で高調波ピークが得られた2点を結ぶ線分の中点を求める。求められた中点の座標が、2次コイルの中心の座標を示す。よって、円形の1次コイルの中心が、求められた2次コイルの中心に重なるように、1次コイルを移動させる。これによって、1次コイルを、2次コイルに高精度に位置合わせすることができる。
【0029】
(9)本発明の構造物の他の態様では、前記載置面を備える載置部材は、所定重量に耐え得る強度を有し、かつ、前記1次コイルと前記2次コイルは、前記載置部材を介して電磁結合する。
【0030】
1次コイルと2次コイルとの間には、載置部材が介在し、その載置部材を介して両コイルが電磁的に結合する。載置部材は、磁束を通過させることができ、剛性をもつ材料で構成することができる。また、載置部材は所定重量に耐える強度を有している。例えば、載置部材は、厚さ数ミリのアクリル等の樹脂板で構成することができる。載置部材の材料と厚みは、載置が予定される物品の重量等を考慮し、かつ、両コイルの電磁結合のロスを小さくするという観点からの検討の下、慎重に決定するのが望ましい。本態様の構造の場合、送電装置は、構造物の載置面の下方に埋設されているため、送電装置は、載置部材(剛性をもつ平板等)によって外部と遮断されていることになり、よって、例えば、水等の液体が送電装置側に流入する心配がなく、また、物が落下してくる心配もなく、安心して使用可能である。また、構造物の載置面の一部が2次側機器の載置領域として利用される場合、載置面の他の領域は、例えば、2次側機器以外の物を置くスペースとして利用することができる。また、2次側機器の充電等を行わないときは、2次側機器の載置領域にも、2次側機器以外の物を置くこともできる。
【0031】
(10)本発明の構造物の他の態様では、前記載置面を備える載置部材は、前記1次コイルと前記2次コイルとが対向する領域において切り欠き部が設けられ、これによって、前記1次コイルと前記2次コイルは、前記載置部材を介さずに電磁結合する。
【0032】
1次コイルと2次コイルが対向する領域(1次コイルと2次コイルが少なくとも重なりを有する領域をカバーする領域である)において、載置部材(平板等)に切り欠きを設けて、1次コイルと2次コイルとが載置部材を介さずに直接的に送電と受電を行うことができるようにする。この場合、両コイル間には載置部材が介在しないため、無接点伝送電力のロスが生じず、その分、伝送効率の低下を防止することができる。
【0033】
(11)本発明の構造物の他の態様では、前記載置面の少なくとも一部は、平面状の前記1次コイル面に平行な面を有する。
【0034】
載置面の形状については、種々、考えられるが、少なくともその一部は、平面状の一次コイル(巻き線コイルや、半導体基板等に渦巻き状の導線を埋め込んで形成されたコイル等も含む)のコイル面に平行な面を有している。一般的には、載置面は水平面と考えられるが、何らかの理由で載置面全体が斜面であったり、2次側機器の位置決めのために突起や斜面が部分的に設けられたりする場合も想定され、載置面が水平面からなるとは限らず、同様に載置面の全エリアが同一平面からなるとは限らない。但し、平面状の1次コイルと平面状の2次コイルを対向させて電力伝送を行う以上、1次コイル面と2次コイル面は平行であるのが通常であり、したがって、2次コイルを備える2次側機器を載置する載置面の少なくとも一部は、1次コイルのコイル面と平行の面であり、この面(2次側機器を載置することができる程度の広さをもつ面)に、2次側機器の主面(2次コイル側の筐体面)を当接させて載置することによって、1次コイルと2次コイルが平行な位置(無接点電力伝送に最適な位置関係)に保たれることになる。
【0035】
(12)本発明の構造物の他の態様では、前記構造物は机状の構造物である。
【0036】
本態様の無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、システム机のような多機能な事務用机として利用でき、これによって、極めて汎用性および利便性の高い次世代の無接点電力伝送システムを日常生活に取り入れることが可能となる。机状の構造物には、例えば、携帯電話の販売店における、複数の携帯端末を同時に充電可能な充電テーブルが含まれ、その他、ファミリーレストランや若者に人気の居酒屋などにおけるカウンタテーブル等も含まれる。
【0037】
(13)本発明の構造物の他の態様では、前記構造物は、壁状の構造物である。
【0038】
本態様の無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、マンションや一戸建て住宅における壁(送電装置等が壁内に埋設されている構造物)としても利用可能である。この場合、例えば、ストラップにて壁に吊り下げた状態の携帯端末を、壁の内部に設けられた送電装置からの無接点電力伝送によって自動的に充電することができる。この壁内に送電装置を組み込んだ構造物は、携帯端末の充電の他、例えば、家電製品への動作電力の供給等にも応用できる(この点は、2次側機器を水平に載置するタイプの構造物の場合も同様である)。
【0039】
(14)本発明の構造物の他の態様では、前記構造物は、可搬性をもつプレート状構造物である。
【0040】
本態様の無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、プレート状の構造物とすることもできる。プレート状構造物とは、例えば、比較的小面積の板状物であり、可搬性に優れるものである。プレート状構造物の材質は問わないが、例えば、アクリル等の合成樹脂を使用することができ、また、摩擦や衝撃の緩衝機能を持たせるべく、可撓性(たわむことができる性質)や弾力をもつゴムやプラスチック、合成繊維の織物などを使用することもできる。プレート状構造物の場合、移動性や持ち運び性に優れるため、ユーザは、自分の好みの位置において無接点電力伝送を気軽に利用することができる。送電装置をプレート内に埋設しておけば、プレートと共に送電装置も移動できる。
【0041】
(15)本発明の構造物の他の態様では、前記構造物は、可搬性をもつパッド状構造物である。
【0042】
本態様の無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、パッド状の構造物とすることもできる。パッド状構造物とは、例えば、比較的小面積の詰め物、敷物、該当箇所に当てる当て物であり、可搬性に優れるものである。パッド状構造物の材質は問わないが、例えば、アクリル等の合成樹脂を使用することができ、また、摩擦や衝撃の緩衝機能を持たせるべく、可撓性(たわむことができる性質)や弾力をもつゴムやプラスチック、合成繊維の織物などを使用することもできる。パッド状構造物の場合、移動性や持ち運び性に優れるため、ユーザは、自分の好みの位置において無接点電力伝送を気軽に利用することができる。送電装置をパッド内に埋設しておけば、パッドと共に送電装置も移動できる。
【0043】
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、汎用性および利便性が格段に向上した次世代の無接点電力伝送システムを手軽に利用できるようになり、無接点電力伝送システムの、社会的インフラとしての活用が促進され、無接点電力伝送システムの普及に貢献することができる。
【0044】
(16)本発明の構造物の他の態様では、前記載置面には、複数の前記電子機器を載置することができ、かつ、前記複数の電子機器の各々に対して、並行的に無接点電力伝送を行う。
【0045】
本態様では、例えば、複数の2次側機器の2次電池を同時に充電することができる。本態様の構造物は、例えば、複数台の携帯端末を同時に充電できる充電テーブルとして、携帯電話会社の販売店の店内に設置して、顧客の自由な利用に供することができる。
【0046】
(17)本発明の構造物の他の態様では、前記2次コイルの接近を検出するために、前記送電装置は、所定周波数の駆動信号によって前記1次コイルを間欠的に駆動する。
【0047】
送電装置が間欠的に1次コイルを所定周波数で駆動し、コイル端電圧(コイル電流)の変化が生じるかをウオッチングすることによって2次側機器の接近を自動的に検出することができる。2次側機器の接近が検出されると、例えば、高調波検波回路を用いた直交2軸サーチによる2次コイル位置を自動的に特定し、1次コイルをその特定された位置に移動させることができる。これによって、全自動のコイルの位置合わせが実現され、ユーザは快適に無接点電力伝送を利用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0049】
(第1の実施形態)
まず、本発明の構造物の一例について説明する。
【0050】
(無接点電力伝送用送電装置が埋設された構造物の例)
図1(A),図1(B)は、無接点電力伝送用送電装置が埋設された構造物の一例を示す図である。図1(A)は構造物の一例としてのシステム机の斜視図であり、図1(B)は図1(A)のシステム机のP−P’線に沿う断面図である。
【0051】
図1(B)に示すように、送電側装置(送電装置10、アクチュエータ(不図示)ならびにXYステージ702を備えた1次側構造体)704は、載置面SAを備える構造物(ここではシステム机)620に内蔵されている。
【0052】
すなわち、送電側装置704は構造物としてのシステム机620の内部に設けられた凹部に設置される。システム机620の上部には、載置部材としての平板(例えば、数ミリの厚さのアクリル板)600が設けられており、この載置部材としての平板600は、支持部材610によって支持されている。
【0053】
なお、以下の説明では、「載置部材としての平板」のことを、単に、「平板」あるいは「載置部材」ということがある。また、同様に、「構造物としてのシステム机」のことを単に、「システム机」あるいは「構造物」ということがある。
【0054】
平板600の一部には、例えば、携帯端末(携帯電話端末、PDA端末、持ち運び可能なコンピュータ端末を含む)を載置するための携帯端末載置領域Z1が設けられている。
【0055】
図1(A)に示すように、平板600に設けられた携帯端末載置領域(載置エリア)Z1は、他の部分と色が異なっており、携帯端末をセットする領域であることがユーザに一目でわかるようになっている。なお、携帯端末載置領域(載置エリア)Z1の全体の色を変えるのではなく、その領域Z1と他の領域の境界部分の色を変えてもよい。
【0056】
また、載置エリアZ1を透明部材で構成し、載置エリア以外を不透明部材で構成することもできる。この場合、ユーザは、載置エリアZ1を認識でき、かつ、載置エリアZ1の下側(内部)を目視できるため、載置エリアZ1の下方に設けられている1次コイルの位置を直接的に、あるいは間接的に把握しやすくなる。よって、ユーザ自らが2次側機器の位置を移動させて1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の位置合わせを行う場合、位置合わせを、より容易に行うことができ、ユーザの利便性が向上する。
【0057】
携帯端末(2次側機器)510には、送電装置10からの電力伝送を受ける受電装置40(2次コイルを含む)が内蔵されている。
【0058】
システム机620に内蔵されている送電装置10は、携帯端末510が携帯端末載置領域Z1上の概略位置に置かれると、そのことを自動的に検出し、アクチュエータ(図1では不図示)を駆動してXYステージ(可動ステージ)を移動させて、1次コイル位置を、2次コイル位置に合うように自動的に調整する。この1次コイル位置の自動調整機能によって、携帯端末のメーカ、種類、大きさ、形状、デザイン等に関係なく、常に、1次コイルと2次コイルの位置を最適化して無接点電力伝送を行うことができる。
【0059】
図1(B)に示されるように、1次コイルと2次コイルとの間には、平板(載置部材)600が介在し、その平板(載置部材)600を介して両コイルが電磁的に結合する。平板(載置部材)600は、磁束を通過させることができ、剛性をもつ材料で構成することができる。また、平板(載置部材)600は、所定重量に耐える強度を有している。
【0060】
例えば、平板(載置部材)600は、厚さ数ミリのアクリル等の樹脂板で構成することができる。平板(載置部材)600の材料と厚みは、載置が予定される物品の重量等を考慮し、かつ、両コイルの電磁結合のロスを小さくするという観点からの検討の下、慎重に決定するのが望ましい。
【0061】
図1(B)の構造の場合、送電装置10は、システム机(構造物)620の載置面(SA)の下方に埋設されているため、送電装置は、載置部材(剛性をもつ平板等)によって外部と遮断されていることになり、よって、例えば、水等の液体が送電装置側に流入する心配がなく、また、物が落下してくる心配もなく、安心して使用可能である。
【0062】
また、システム机(構造物)の載置面の一部が2次側機器の載置領域として利用される場合、載置面(SA)の他の領域は、例えば、2次側機器以外の物を置くスペースとして利用することができる。また、2次側機器の充電等を行わないときは、2次側機器の載置領域(Z1)にも、2次側機器以外の物を置くこともできる。すなわち、図1(A),図1(B)に示されるシステム机は、例えば、ダイニングテーブルを兼ねることもできる。
【0063】
また、図1(B)の構造では、送電装置10と受電装置40との間に平板(載置部材)600が介在しており、1次コイルから2次コイルへの送電は、その平板(載置部材)600を介して行うことになり、この場合、少々の送電ロスが生じる場合がある。その送電ロスが気になる場合には、送電エリアに対応させて、平板(載置部材)600に切り欠きを設け、1次コイルと2次コイルが、平板(載置部材)600を介さずに電磁結合するようにしてもよい。
【0064】
すなわち、1次コイルと2次コイルが対向する領域(1次コイルと2次コイルが少なくとも重なりを有する領域をカバーする領域であり、送電エリアということができる)において、載置部材(平板)600に切り欠きを設けて、1次コイルと2次コイルとが平板(載置部材)600を介さずに直接的に送電と受電を行うことができるようにする。この場合、両コイル間には平板(載置部材)600が介在しないため、無接点伝送電力のロスが生じず、その分、伝送効率の低下を防止することができる
このように、本発明の構造物は、例えば、システム机のような多機能な事務用机として利用でき、これによって、極めて汎用性および利便性の高い次世代の無接点電力伝送システムを日常生活に取り入れることが可能となる。
【0065】
机状の構造物には、例えば、携帯電話の販売店における、複数の携帯端末を同時に充電可能な充電テーブルが含まれ、その他、ファミリーレストランや若者に人気の居酒屋などにおけるカウンタテーブル等も含まれる。
【0066】
また、本発明の構造物には、壁状構造物やプレート状あるいはパッド状の構造物も含まれる(これらについては後述する)。
【0067】
(無接点電力伝送システムの構成と動作)
図2は、送電装置、受電装置を含む無接点電力伝送システムにおける、各部の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【0068】
(送電装置の構成と動作)
図示されるように、送電側装置(1次側構造体)は、XYステージ(可動ステージ)702と、このXYステージ702によってX軸方向およびY軸方向に移動可能に設けられた送電装置10と、アクチュエータドライバ710と、X方向アクチュエータ720と、Y方向アクチュエータ730と、を含む。具体的には、送電装置10はXYステージ702のトッププレート(可動板)上に載置される(この点については、図28を用いて後述する)。
【0069】
送電装置10は、送電制御装置20と、送電部12と、波形モニタ回路14と、を有する。また、送電制御装置20は、送電側制御回路22と、駆動クロック生成回路23と、発振回路24と、比較器250と、ドライバ制御回路26と、アクチュエータ制御回路37と、波形検出回路(ピークホールド回路またはパルス幅検出回路)28と、1次コイル位置制御回路310と、を有する。
【0070】
波形検出回路28および比較器250は、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置関係を示す相対位置信号を生成する位置検出回路290として機能する。
【0071】
また、受電装置40には、受電部40と、負荷変調部46と、給電制御部48とが設けられている。また、本負荷90は、充電制御装置92とバッテリ(2次電池)94が含まれる。
【0072】
図2の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送し、受電装置40の電圧出力ノードNB6から負荷90に対して電力(電圧VOUT)を供給する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
【0073】
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、1次コイルL1、送電部12、波形モニタ回路14、表示部16、送電制御装置20を含むことができる。なお、送電装置10や送電制御装置20は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば表示部、波形モニタ回路)を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
【0074】
送電部12は、電力伝送時には所定周波数の交流電圧を生成し、データ転送時にはデータに応じて周波数が異なる交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。
【0075】
図3(A)および図3(B)は、1次側機器と2次側機器との間の情報伝送の原理を説明するための図である。1次側から2次側への情報伝達には周波数変調が利用される。また、2次側から1次側への情報伝達には負荷変調が利用される。
【0076】
図3(A)に示されるように、例えば、データ「1」を送電装置10から受電装置40に対して送信する場合には、周波数f1の交流電圧を生成し、データ「0」を送信する場合には、周波数f2の交流電圧を生成する。
【0077】
また、図3(B)に示すように、受電装置40は、負荷変調によって低負荷状態/高負荷状態を切り換えることができ、これによって、「0」,「1」を1次側(送電装置10)に送信することができる。
【0078】
図2の送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバと、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバと、1次コイルL1と共に共振回路を構成する少なくとも1つのコンデンサを含むことができる。そして、送電部12が含む第1、第2の送電ドライバの各々は、例えば、パワーMOSトランジスタにより構成されるインバータ回路(あるいはバッファ回路)であり、送電制御装置20のドライバ制御回路26により制御される。
【0079】
図1に示すように、平板600上に携帯電話機510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。
一方、電力伝送が不要なときには、平板600と携帯電話機510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
【0080】
1次コイルL1と2次コイルL2としては、例えば、絶縁された単線を同一平面内で渦巻き状に巻いた平面コイルを用いることができる。但し、単線を縒り線に代え、この縒り線(絶縁された複数の細い単線を縒り合わせたもの)を渦巻き状に巻いた平面コイルを用いてもよい。但し、コイルの種類は、特に限定されるものではない。
【0081】
波形モニタ回路14は、1次コイルL1の誘起電圧を検出する回路であり、例えば、抵抗RA1、RA2や、RA1とRA2の共通接続点NA3とGND(広義には低電位側電源)との間に設けられるダイオードDA1を含むことができる。具体的には、1次コイルの誘起電圧を抵抗RA1、RA2で分圧することによって得られた信号PHINが、送電制御装置20の波形検出回路28に入力される。
【0082】
表示部16は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、色や画像などを用いて表示するものであり、例えばLED(発光ダイオード)やLCD(液晶表示装置)などにより実現される。
【0083】
送電制御装置20は、送電装置10の各種制御を行う装置であり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。この送電制御装置20は、送電側制御回路22と、駆動クロック生成回路23と、発振回路24と、ドライバ制御回路26と、波形検出回路28と、比較器250と、1次コイル位置制御回路310と、アクチュエータ制御回路37と、を含む。
【0084】
送電側制御回路22は、送電装置10や送電制御装置20の制御を行うものであり、例えば、ゲートアレイやマイクロコンピュータなどにより実現できる。
【0085】
具体的には、送電側制御回路22は、電力伝送、負荷検出、周波数変調、異物検出、あるいは着脱検出などに必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。
【0086】
発振回路24は、例えば、水晶発振回路により構成され、1次側のクロックを生成する。駆動クロック生成回路23は、発振回路24で生成されたクロックや送電側制御回路22からの周波数設定信号に基づいて、所望の周波数の駆動制御信号を生成する。
【0087】
ドライバ制御回路26は、例えば、送電部12に含まれる2つの送電ドライバ(不図示)が同時オンしないように調整しつつ、駆動制御信号を送電部12の送電ドライバ(不図示)に出力し、その送電ドライバの動作を制御する。
【0088】
波形検出回路28は、1次コイルL1の一端の誘起電圧に相当する信号PHINの波形をモニタし、負荷検出、異物検出等を行う。例えば、受電装置40の負荷変調部46が、送電装置10に対してデータを送信するための負荷変調を行うと、1次コイルL1の誘起電圧の信号波形が、それに対応して変化する。
【0089】
具体的には、図3(B)に示すように、データ「0」を送信するために、受電装置40の負荷変調部46が負荷を低くすると、信号波形の振幅(ピーク電圧)が小さくなり、データ「1」を送信するために負荷を高くすると、信号波形の振幅が大きくなる。したがって、波形検出回路28は、誘起電圧の信号波形のピークホールド処理などを行って、ピーク電圧がしきい値電圧を超えたか否かを判断することで、受電装置40からのデータが「0」なのか「1」なのかを判断できる。なお、波形検出の手法は、上述の手法に限定されない。例えば、受電側の負荷が高くなったか低くなったかを、ピーク電圧以外の物理量を用いて判断してもよい。例えば、ピーク電流を用いて判断することもできる。
【0090】
また、波形検出回路28としては、ピークホールド回路(あるいは、電圧と電流の位相差で決まるパルス幅を検出するパルス幅検出回路)を用いることができる。波形検出回路28の出力信号のレベルを、比較器250によって所定のしきい値と比較することによって、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的位置関係を示す相対位置信号PEが得られる(この点は、図4を参照して後述する)。
【0091】
(受電装置の構成と動作)
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、2次コイルL2、受電部42、負荷変調部46、給電制御部48、受電制御装置50を含むことができる。なお、受電装置40や受電制御装置50は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
【0092】
受電部42は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流電圧に変換する。この変換は受電部42が有する整流回路43により行われる。この整流回路43は、ダイオードDB1〜DB4を含む。ダイオードDB1は、2次コイルL2の一端のノードNB1と直流電圧VDCの生成ノードNB3との間に設けられ、DB2は、ノードNB3と2次コイルL2の他端のノードNB2との間に設けられ、DB3は、ノードNB2とVSSのノードNB4との間に設けられ、DB4は、ノードNB4とNB1との間に設けられる。
【0093】
受電部42の抵抗RB1、RB2はノードNB1とNB4との間に設けられる。そしてノードNB1、NB4間の電圧を抵抗RB1、RB2により分圧することで得られた信号CCMPIが、受電制御装置50の周波数検出回路60に入力される。
【0094】
受電部42のコンデンサCB1及び抵抗RB4、RB5は、直流電圧VDCのノードNB3とVSSのノードNB4との間に設けられる。そしてノードNB3、NB4間の電圧を抵抗RB4、RB5により分圧して得られる分圧電圧VD4は、信号線LP2を経由して、受電側制御回路52および位置検出回路56に入力される。位置検出回路56に関しては、その分圧電圧VD4が、位置検出のための信号入力(ADIN)となる。
【0095】
負荷変調部46は、負荷変調処理を行う。具体的には、受電装置40から送電装置10に所望のデータを送信する場合に、送信データに応じて負荷変調部46(2次側)での負荷を可変に変化させ、1次コイルL1の誘起電圧の信号波形を変化させる。このために負荷変調部46は、ノードNB3、NB4の間に直列に設けられた抵抗RB3、トランジスタTB3(N型のCMOSトランジスタ)を含む。
【0096】
このトランジスタTB3は、受電制御装置50の受電側制御回路52から信号線LP3を経由して与えられる制御信号P3Qによりオン・オフ制御される。本送電が開始される前の認証ステージにおいて、トランジスタTB3をオン・オフ制御して負荷変調を行って送電装置に信号を送信する際には、給電制御部48のトランジスタTB2はオフにされ、負荷90が受電装置40に電気的に接続されない状態になる。
【0097】
例えば、データ「0」を送信するために2次側を低負荷(インピーダンス大)にする場合には、信号P3QがLレベルになってトランジスタTB3がオフになる。これにより負荷変調部46の負荷はほぼ無限大(無負荷)になる。一方、データ「1」を送信するために2次側を高負荷(インピーダンス小)にする場合には、信号P3QがHレベルになってトランジスタTB3がオンになる。これにより負荷変調部46の負荷は、抵抗RB3(高負荷)になる。
【0098】
給電制御部48は、負荷90への電力の給電を制御する。レギュレータ(LDO)49は、整流回路43での変換で得られた直流電圧VDCの電圧レベルを調整して、電源電圧VD5(例えば5V)を生成する。受電制御装置50は、例えばこの電源電圧VD5が供給されて動作する。
【0099】
また、レギュレータ(LDO)49の入力端と出力端との間には、PMOSトランジスタ(M1)からなるスイッチ回路が設けられている。このスイッチ回路としてのPMOSトランジスタ(M1)をオンすることによって、レギュレータ(LDO)49をバイパスする経路が形成される。例えば、高負荷時(例えば、消耗が激しい2次電池の充電の初期においては、ほぼ一定の大電流を定常的に流すことが必要となり、このようなときが高負荷時に該当する)においては、レギュレータ49自体の等価インピーダンスによって電力ロスが増大し、発熱も増大することから、レギュレータを迂回して、バイパス経路を経由して電流を負荷に供給するようにする。
【0100】
スイッチ回路としてのPMOSトランジスタ(M1)のオン/オフを制御するために、パイパス制御回路として機能するNMOSトランジスタ(M2)およびプルアップ抵抗R8が設けられている。
【0101】
受電側制御回路52から、信号線LP4を介して、ハイレベルの制御信号がNMOSトランジスタ(M2)のゲートに与えられると、NMOSトランジスタ(M2)がオンする。すると、PMOSトランジスタ(M1)のゲートがローレベルになり、PMOSトランジスタ(M1)がオンしてレギュレータ(LDO)49をバイパスする経路が形成される。一方、NMOSトランジスタ(M2)がオフ状態のときは、PMOSトランジスタ(M1)のゲートは、プルアップ抵抗R8を介してハイレベルに維持されるため、PMOSトランジスタ(M1)はオフし、バイパス経路は形成されない。
【0102】
NMOSトランジスタ(M2)のオン/オフは、受電制御装置50に含まれる受電側制御回路52によって制御される。
【0103】
また、トランジスタTB2(P型のCMOSトランジスタ)は、電源電圧VD5の生成ノードNB5(レギュレター49の出力ノード)とノードNB6(受電装置40の電圧出力ノード)との間に設けられ、受電制御装置50の制御回路52からの信号P1Qにより制御される。具体的には、トランジスタTB2は、ID認証が完了(確立)して通常の電力伝送(すなわち、本送電)を行う場合にはオン状態となる。
【0104】
受電制御装置50は、受電装置40の各種制御を行う装置であり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。この受電制御装置50は、2次コイルL2の誘起電圧から生成される電源電圧VD5により動作することができる。また、受電制御装置50は、制御回路52(受電側)、位置検出回路56、発振回路58、周波数検出回路60、満充電検出回路62を含むことができる。
【0105】
受電側制御回路52は、受電装置40や受電制御装置50の制御を行うものであり、例えば、ゲートアレイやマイクロコンピュータなどにより実現できる。この受電側制御回路52は、シリーズレギュレータ(LDO)49の出力端の定電圧(VD5)を電源として動作する。この電源電圧(VD5)は、電源供給線LP1を経由して、受電側制御回路52に与えられる。
【0106】
この受電側制御回路52は、具体的には、ID認証、位置検出、周波数検出、満充電検出、認証用の通信のための負荷変調、異物挿入検出を可能とするための通信のための負荷変調などに必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。
【0107】
位置検出回路56は、2次コイルL2の誘起電圧の波形に相当する信号ADINの波形を監視して、1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係が適正であるかを判断する。
【0108】
具体的には、信号ADINをコンパレータで2値に変換して、位置関係が適正であるか否かを判断する。
【0109】
発振回路58は、例えばCR発振回路により構成され、2次側のクロックを生成する。周波数検出回路60は、信号CCMPIの周波数(f1、f2)を検出して、送電装置10からの送信データが「1」なのか「0」なのかを判断する。
【0110】
満充電検出回路62(充電検出回路)は、負荷90のバッテリ94が、満充電状態(充電状態)になったか否かを検出する回路である。具体的には満充電検出回路62は、例えば、充電状態の表示に使用されるLEDRのオン・オフを検出することによって、満充電状態を検出する。すなわち、所定時間(例えば5秒)連続でLEDRが消灯した場合に、バッテリ94が満充電状態(充電完了)であると判断する。
【0111】
また、負荷90内の充電制御装置92も、LEDRの点灯状態に基づいて満充電状態を検出することができる。
【0112】
また、負荷90は、バッテリ94の充電制御等を行う充電制御装置92を含む。充電制御装置92は、発光装置(LEDR)の点灯状態に基づいて満充電状態を検出することができる。この充電制御装置92(充電制御IC)は集積回路装置などにより実現できる。なお、スマートバッテリのように、バッテリ94自体に充電制御装置92の機能を持たせてもよい。なお、本負荷90は、2次電池に限定されるものではない。例えば、所定の回路が動作することによって、その回路が本負荷となる場合もあり得る。
【0113】
(2次側機器の接近検出および両コイルの位置合わせについて)
図4は、2次側機器の接近検出および両コイルの自動的な位置合わせについて説明するための図である。図4では、図2に示される送電装置10の内部構成が、より具体的に示されている。
【0114】
図4では、1次コイル位置制御回路310は、送電側制御回路22内に設けられている。波形検出回路28は、ここではピークホールド回路とする。波形検出回路28からは、コイル端電圧のピーク電圧Vpが出力される。
【0115】
また、比較器250は、第1のコンパレータCP1と、第2のコンパレータCP2とを有し、第1のコンパレータCP1は、コイル端のピーク電圧Vpを第1のしきい値電圧Vth1と比較し、その結果に応じて、第1の相対位置信号PE1を生成する。同様に、第2のコンパレータCP2は、コイル端のピーク電圧Vpを第2のしきい値電圧Vth2と比較し、その結果に応じて、第2の相対位置信号PE2を生成する。
【0116】
1次コイル位置制御回路310は、相対位置信号(PE1,PE2)に基づいて、2次側機器(2次コイルL2)の接近を検出し、かつ、その相対位置信号(PE1,PE2)を指標として1次コイルL1の位置をXY平面上で移動させ、コイル間の自動位置合わせを実行する。
【0117】
(コイル間の相対位置を検出する原理)
以下、コイル間の相対位置を検出する原理について、図5〜図11を用いて説明する。
【0118】
図5(A)〜図5(F)は、1次コイルに2次コイルの磁性体が接近した場合のインダクタンスの増加について説明するための図である。上述のとおり、ここでいう「インダクタンス」は、磁性体付きの2次コイルの接近によって変動するインダクタンス(正確には、見かけ上のインダクタンス)である。「見かけ上のインダクタンス」という用語は、1次コイル単独のインダクタンス(2次コイルの接近の影響を受けないときのインダクタンス)と区別するために使用している。以下の説明では、Lpsと表記されるインダクタンスが、見かけ上のインダクタンスである。
【0119】
図5(A)に示すように、2次コイルL2には、磁性体(FS)が付属している。図5(B)に示すように、この磁性体(FS)は、例えば、平面コイルである2次コイルL2と回路基板3100間に存在する磁気シールド材としての磁性体である(これに限定されるものではなく、2次コイルL2のコアとしての磁性体であってもよい)。
【0120】
図5(C)に示される1次コイルL1単独の等価回路は、図5(D)に示されるようになり、その共振周波数は図示されるようにfpとなる。すなわち、共振周波数は、L1とC1によって決定される。ここで、図5(E)に示すように、2次コイルL2が接近すると、2次コイルL1に付属している磁性体(FS)が1次コイルL1と結合し、図5(F)に示すように、1次コイル(L1)の磁束が磁性体(FS)を通過することになり、磁束密度が増加する。これによって、1次コイルのインダクタンスは上昇する。このときの1次コイルL1の共振周波数は、図示されるようにfscとなる。すなわち、共振周波数は、Lps(2次コイルの接近による影響を考慮した1次コイルの見かけ上のインダクタンス)と1次側のコンデンサC1に依存する。すなわち、1次コイルの見かけ上のインダクタンスLpsは、次のように表すことができる。Lps=L1+ΔL。この式において、L1は、1次コイル単独のインダクタンスであり、ΔLは、1次コイルに磁性体FSが接近したことに起因するインダクタンスの上昇分である。Lpsの具体的な値は、2次コイルが接近したときの1次コイルのインダクタンスを、例えば、計測器で実測することによって取得することができる。
【0121】
次に、両コイルの接近によって、1次コイルのインダクタンスがどのように変化するかについて考察する。
【0122】
図6(A)〜図6(D)は、1次コイルと2次コイルの相対的な位置関係の例を示す図である。図中、PA1は、1次コイルL1の中心点を示し、PA2は、2次コイルL2の中心点を示す。
【0123】
図6(A)では、両コイルの位置が遠いため相互の影響はないが、図6(B)のように2次コイル(L2)が1次コイル(L1)に接近すると、図5で説明したように1次コイルのインダクタンスが増大しはじめる。図6(C)では、自己誘導に加えて、両コイルが結合して相互誘導(一方のコイルの磁束を他方のコイルの磁束によって相殺しようとする作用)が働き、そして、図6(D)に示すように、両コイルの位置が完全に一致すると、2次コイル(L2)側に電流が流れるため、相互誘導による磁束の相殺によって洩れ磁束は減少し、コイルのインダクタンスは減少する。すなわち、位置合わせが行われたことによって2次側機器が動作を開始し、その2次側機器の動作開始に伴って2次コイル(L2)に電流が流れ、これによって相互誘導による磁束の相殺が生じ、洩れ磁束が減少して1次コイル(L1)のインダクタンスが減少する。
【0124】
図7は、1次コイルと2次コイルの相対距離と、1次コイルのインダクタンスの関係を示す図である。図7において、横軸が相対距離であり、縦軸がインダクタンスである。ここで、「相対距離」とは、「2つのコイルの中心の横方向のずれ量を規格化した相対値」である。なお、相対距離は、両コイルが横方向にどれだけずれているかを示す指標の一つであり、相対距離の代わりに、絶対距離(例えば、両コイルの中心がどれだけずれているかを、ミリメートルで示した絶対値)を使用してもよい。図7において、相対距離がd1のときは、2次コイルの影響がなく、1次コイルL1のインダクタンスは、1次コイル単独のインダクタンス“a”である。2次コイルL2が接近してくると(相対距離d2)、磁性体の影響で磁束密度が増大するためインダクタンス“b”まで上昇する。
【0125】
さらに2次コイルL2が接近すると(相対距離d3)、インダクタンスは“c”まで上昇する。さらに2次コイルが接近すると(相対距離d4)、インダクタンスは“d”まで上昇する。この状態となるコイル間の結合が生じ、以後は、相互インダクタンスの影響が支配的となる。
【0126】
すなわち、相対距離d5では、相互誘導の影響が支配的になるためにインダクタンスは低下して“e”となる。相対距離0(1次コイルと2次コイルの各中心が、XY平面の中心に位置する場合)では、磁束の相殺によって洩れ磁束が最小となり、インダクタンスは一定値(図7の「中心のインダクタンス」)に収束する。
【0127】
ここで、相対距離“d2”が送電限界範囲を示し、また、相対距離が“d3”と“d4”で規定される範囲に収まっていれば所望の送電が可能であるとする(つまり、d3とd4で規定される範囲が位置許容範囲LQとする)。この場合、インダクタンスしきい値(INth1)を用いれば、2次コイル(L2)が相対距離d2まで接近したことを検出することができる。同様に、インダクタンスしきい値(INth2)を用いれば、2次コイル(L2)が、相対距離d2とd4で規定される相対距離内にあるか否かを検出することができる。すなわち、インダクタンスの増大に起因する1次コイルのインダクタンスの上昇の程度を調べることによって、1次コイルと2次コイルの相対距離が、位置許容範囲(LQ)内にあるか否かを判定することができる(この場合、相対距離がより小さい範囲での判定はできないが、送電の位置合わせの指標としては、このレベルの判定であれば十分に実用に耐える)。
【0128】
例えば、2次コイル(L2)の接近によってインダクタンス値が上昇したことを第1のインダクタンスしきい値(INth1)を用いて検出したとすれば、それは、2次コイルL2が送電可能範囲付近にまで接近してきたことを示している。
【0129】
そこで、次に、1次コイルを所定の走査パターンに従って移動(スキャン)させる。これによって、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の相対距離がさらに縮小されれば、インダクタンスはさらに上昇し、やがて、図7のc点まで達する。このことが、第2のインダクタンスしきい値(INth2)によって検出されると、1次コイルの移動(スキャン)を停止する。使用するXYステージの制動の精度にもよるが、これによって、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の相対距離は、ほぼd3〜d5の範囲(位置許容範囲LQ)に収まることになる。
【0130】
実際には、上述のインダクタンスしきい値(INth1,INth2)に対応する電圧しきい値(Vth1,Vth2)を用いて、両コイルの相対位置関係を判定する。以下、具体的に説明する。
【0131】
図8は、インダクタンスの増大によって、1次コイルを含む共振回路の共振周波数の変化を示す図である。2次コイルL2に付属する磁性体(FS)の接近によって1次コイルのインダクタンスが増大すると、図8に示すように、1次コイルを含む共振回路の共振特性はQ1からQ2に変化する。ここで、1次コイルの駆動周波数をfdとすれば、1次コイルL1のインダクタンス値の増大に伴う共振特性のシフトに起因して、コイル端電圧(もしくは電流)がΔAだけ低下することになる。このΔAの変化に着目することによって、コイル端電圧(もしくは電流)に基づく両コイルの相対位置の判定が可能となる。
【0132】
図9(A)〜図9(C)は1次コイルと2次コイルの相対位置の変化例を示す図である。図10は、1次コイルと2次コイルの位置関係を自動的に調整する方法を説明するための図である。
【0133】
送電制御装置20(図2参照)は、図10の期間T1,期間T2に示すように、所定周期で間欠的に1次コイルL1を、周波数fdで駆動する。そして、図9に示されるようにコイル端電圧Vf(あるいはコイル電流)を観測する。図9(A)のように2次コイルL2がないときは、図10の期間T1,T2に示すように、コイル端電圧(交流)の振幅Vfは、Vth1を下回ることはない。
【0134】
図10の時刻t4における駆動では、コイル端電圧Vfは、第1の電圧しきい値Vth1を下回る。これによって、送電制御装置20は、2次コイルL2の接近を検出することができる。この場合、送電制御装置20は、続いて1次コイル(L1)のスキャンを行いながらコイル端電圧Vfの変化を連続的に監視し、両コイルの相対位置のサーチを行う必要がある。よって、送電制御装置20は、時刻t4以降、間欠送電を連続送電に切り換える。この連続送電は、1次コイルL1の移動(スキャン)期間T3は継続される。
【0135】
1次コイルL1の移動によって、2次コイルとの距離が縮小され、位置許容範囲LQ(図7参照)内になったときは、コイル端電圧Vfは、第2の電圧しきい値Vth2を下回る。これによって、1次コイルL1の移動(スキャン)が停止されると共に、1次コイルL1の連続駆動も停止される。このようにして、2次コイルL2(磁性体FS)の接近検出ならびに1次コイルL1の位置調整が自動的になされる。
【0136】
より具体的には、図11(A),図11(B)に示されるような動作が行われる。図11(A),図11(B)は、1次コイルと2次コイルの位置関係を自動的に調整するための具体的な回路動作を示す図である。図11(A)に示すように、コイル端電圧Vfが波形モニタ回路14内の抵抗RA1,RA2によって分圧され、ピークホールド回路28によってピーク電圧Vpが検出され、そのピーク電圧Vpが、比較器250内の第1および第2のコンパレータCP1,CP2によって、第1および第2の電圧しきい値(Vth1,Vth2)と比較される。
【0137】
1次コイル位置制御回路310は、第1のコンパレータCP1の出力信号(相対位置信号)PE1がハイレベルからローレベルに変化すると(図11(B)の時刻t10)、アクチュエータ制御回路37に指示して1次コイル(L1)の移動を開始させ、かつ、上述のとおり、間欠駆動を連続駆動に切り換える。
【0138】
その後、第2のコンパレータCP2の出力信号(相対位置信号)PE2がハイレベルからローレベルに変化すると(図11(B)の時刻t11)、アクチュエータ制御回路37に指示して1次コイル(L1)の移動を停止させると共に、1次コイルの駆動を停止させる。
【0139】
図12(A),図12(B)は、1次コイルの移動(スキャン)について説明するための図である。図12(A)に示すように、送電装置(送電モジュール)10は、1次コイルL1を備える。1次コイルL1の位置を移動させるときは、アクチュエータを用いて、下地のXYステージ702をX方向またはY方向に移動させる。なお、図12(A)において、PA1は、1次コイルL1の中心を示す。
【0140】
図12(B)に示すように、1次コイルL1の位置調整のための走査は、例えば、螺旋状のパターンで行われる。螺旋状スキャンによれば、1次コイル位置を、高精度に広範囲にわたって移動させることができる(但し、これに限定されるものではない)。
【0141】
以上説明した、1次コイルの自動的な位置調整の手順を示すと、図13のようになる。図13は、1次コイルの自動的な位置調整の手順を示すフロー図である。
【0142】
図示されるように、2次コイルの接近を検出するために、1次コイルの間欠的な駆動(周波数fd)を行い(ステップS1)、Vth1を用いた判定によって2次コイル接近が検出されると(ステップS2)、連続駆動に切り換えると共に螺旋状スキャンを開始する(ステップS3)。
【0143】
続いて、Vth2による判定によって両コイルの相対位置が許容範囲内であると判定されると(ステップS4)、連続駆動を停止すると共に螺旋状スキャンを停止する(ステップS5)。
【0144】
(第2の実施形態)
図14は、送電装置、受電装置を含む無接点電力伝送システムにおける、各部の具体的な構成の他の例を示す回路図である。
【0145】
図14の無接点電力システムの基本的な構成は、図2と同様であるが、図14の場合、送電制御装置20が位置検出回路として機能する高調波検波回路25を有しており、この点で、図2と異なる。
【0146】
図14の送電装置10は、送電制御装置20と、送電部12と、波形モニタ回路14と、報知手段としての表示部16とを有する。また、送電制御装置20は、送電側制御回路22と、駆動クロック生成回路23と、発振回路24と、高調波検波回路25(フィルタ回路27、高調波fsとのミキシングを行うミキサ29および検波回路31を有する)と、ドライバ制御回路26と、波形検出回路(ピークホールド回路またはパルス幅検出回路)28と、比較器(CP1,CP2)と、アクチュエータ制御回路37と、を有する。
【0147】
送電制御装置20は、送電装置10の各種制御を行う装置であり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。この送電制御装置20は、送電側制御回路22と、駆動クロック生成回路23と、発振回路24と、高調波検波回路25と、ドライバ制御回路26と、波形検出回路(ピークホールドまたはパルス幅検出回路)28と、比較器CP1,CP2と、アクチュエータ制御回路37と、を含む。
【0148】
送電側制御回路22は、送電装置10や送電制御装置20の制御を行うものであり、例えば、ゲートアレイやマイクロコンピュータなどにより実現できる。具体的には、送電側制御回路22は、電力伝送、負荷検出、周波数変調、異物検出、あるいは着脱検出などに必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。
【0149】
発振回路24は、例えば、水晶発振回路により構成され、1次側のクロックを生成する。駆動クロック生成回路23は、発振回路24で生成されたクロックや送電側制御回路22からの周波数設定信号に基づいて、所望の周波数の駆動制御信号を生成する。
【0150】
ドライバ制御回路26は、例えば、送電部12に含まれる2つの送電ドライバ(不図示)が同時オンしないように調整しつつ、駆動制御信号を送電部12の送電ドライバ(不図示)に出力し、その送電ドライバの動作を制御する。
【0151】
波形検出回路28は、第1の実施形態と同様に、1次コイルL1の一端の誘起電圧に相当する信号の波形をモニタし、負荷検出、異物検出等を行う。例えば、受電装置40の負荷変調部46が、送電装置10に対してデータを送信するための負荷変調を行うと、1次コイルL1の誘起電圧の信号波形が、それに対応して変化する。この点は、図3を用いて説明したとおりである。
【0152】
(2次側機器の接近検出および両コイルの位置合わせについて)
図15は、2次側機器の接近検出および両コイルの自動的な位置合わせを行うための送電装置の構成の一例を示す図である。図15では、図14に示される送電装置10の内部構成が、より具体的に示されている。
【0153】
図15では、波形検出回路28はピークホールド回路とする。波形検出回路28からは、コイル端電圧のピーク電圧SRが出力される。このピーク電圧SRは、2次コイルL2の接近検出に利用することができる。このピーク電圧SRは、比較器CP1によって第1のしきい値(接近検出用しきい値)V1と比較される。比較器CP1の出力信号PE1は、送電側制御回路22に供給される。
【0154】
また、高調波検波回路25は、波形モニタ回路14からの電圧信号をフィルタリングするフィルタ回路27と、1次コイルL1の奇数次高調波(ここでは、5次高調波とする)fsをミキシングするミキサ29と、検波回路31と、を有している。
【0155】
ここで、1次コイルL1とコンデンサC1で構成される1次側の直列共振回路の共振周波数を(fp)とすると、通常、1次コイルの駆動周波数は、動作の安定性を重視してその共振周波数(fp)から離れた周波数(fd)に設定される。1次コイルの駆動周波数の高調波(fs)は、上下対称の駆動信号の場合、奇数次高調波のみであり、上述のとおり、例えば、5次高調波(fs:=5fd)を使用することができる。
【0156】
高調波検波回路25の検波出力は、比較器CP2によって第2のしきい値(高調波共振ピーク検出用しきい値)V2と比較される。比較器CP2の出力信号PE2は、送電側制御回路22に供給される。
【0157】
また、送電側制御回路22は、比較器CP1の出力信号(PE1)に基づいて2次側機器(2次コイルL2)の接近を検出することができる。また、送電側制御回路22は、比較器CP2の出力信号(PE2)を指標として、アクチュエータ制御回路37に、1次コイル(1次側機器)の走査命令を送出する。アクチュエータ制御回路37は、送電側制御回路22からの走査命令に応じてアクチュエータを駆動する。なお、比較器CP2の出力信号(PE2)をアクチュエータ制御回路37に入力し、アクチュエータ自身の判断でアクチュエータを駆動することも可能である。
【0158】
また、図15の右上に示されるように、2次コイル(L2)には、高調波共振用のコンデンサC2が設けられ、また、磁性体FSが設けられている。この磁性体FSは例えば磁束と回路を分離する遮蔽板であり、あるいは2次コイルのコアであってもよい。磁性体FSがあることによって、1次側における2次コイルの接近検出が可能となる(詳細は後述する)。
【0159】
(2次コイルの接近検出の原理)
以下、2次コイルの接近検出の原理について、図16〜図18用いて説明する。図16(A)〜図16(F)は、1次コイルに2次コイルの磁性体が接近した場合のインダクタンスの増加について説明するための図である。上述のとおり、ここでいう「インダクタンス」は、磁性体付きの2次コイルの接近によって変動するインダクタンス(正確には、見かけ上のインダクタンス)である。「見かけ上のインダクタンス」という用語は、1次コイル単独のインダクタンス(2次コイルの接近の影響を受けないときのインダクタンス)と区別するために使用している。以下の説明では、Lpsと表記されるインダクタンスが、見かけ上のインダクタンスである。
【0160】
図16(A)に示すように、2次コイルL2には、磁性体(FS)が付属している。図16(B)に示すように、この磁性体(FS)は、例えば、平面コイルである2次コイルL2と回路基板3100間に存在する磁気シールド材としての磁性体である(これに限定されるものではなく、2次コイルL2のコアとしての磁性体であってもよい)。
【0161】
図16(C)に示される1次コイルL1単独の等価回路は、図16(D)に示されるようになり、その共振周波数は図示されるようにfpとなる。すなわち、共振周波数は、L1とC1によって決定される。ここで、図16(E)に示すように、2次コイルL2が接近すると、2次コイルL1に付属している磁性体(FS)が1次コイルL1と結合し、図16(F)に示すように、1次コイル(L1)の磁束が磁性体(FS)を通過することになり、磁束密度が増加する。これによって、1次コイルのインダクタンスは上昇する。このときの1次コイルL1の共振周波数は、図示されるようにfscとなる。
【0162】
すなわち、共振周波数は、Lps(2次コイルの接近による影響を考慮した1次コイルの見かけ上のインダクタンス)と1次側のコンデンサC1に依存する。すなわち、1次コイルの見かけ上のインダクタンスLpsは、次のように表すことができる。Lps=L1+ΔL。この式において、L1は、1次コイル単独のインダクタンスであり、ΔLは、1次コイルに磁性体FSが接近したことに起因するインダクタンスの上昇分である。Lpsの具体的な値は、2次コイルが接近したときの1次コイルのインダクタンスを、例えば、計測器で実測することによって取得することができる。
【0163】
次に、両コイルの接近によって、1次コイルのインダクタンスがどのように変化するかについて考察する。
【0164】
図17(A)では、両コイルの位置が遠いため相互の影響はないが、図17(B)のように2次コイル(L2)が1次コイル(L1)に接近すると、図5で説明したように1次コイルのインダクタンスが増大しはじめる。図17(C)では、自己誘導に加えて、両コイルが結合して相互誘導(一方のコイルの磁束を他方のコイルの磁束によって相殺しようとする作用)が働き、そして、図17(D)に示すように、両コイルの位置が完全に一致すると、2次コイル(L2)側に電流が流れるため、相互誘導による磁束の相殺によって洩れ磁束は減少し、コイルのインダクタンスは減少する。すなわち、位置合わせが行われたことによって2次側機器が動作を開始し、その2次側機器の動作開始に伴って2次コイル(L2)に電流が流れ、これによって相互誘導による磁束の相殺が生じ、洩れ磁束が減少して1次コイル(L1)のインダクタンスが減少する。
【0165】
図18は、1次コイルと2次コイルの相対距離と、1次コイルのインダクタンスの関係を示す図である。図18において、横軸が相対距離であり、縦軸がインダクタンスである。ここで、「相対距離」とは、「2つのコイルの中心の横方向のずれ量を規格化した相対値」である。
【0166】
なお、相対距離は、両コイルが横方向にどれだけずれているかを示す指標の一つであり、相対距離の代わりに、絶対距離(例えば、両コイルの中心がどれだけずれているかを、ミリメートルで示した絶対値)を使用してもよい。
【0167】
図18において、相対距離がd1のときは、2次コイルの影響がなく、1次コイルL1のインダクタンスは、1次コイル単独のインダクタンス“a”である。2次コイルL2が接近してくると(相対距離d2)、磁性体の影響で磁束密度が増大するためインダクタンス“b”まで上昇する。
【0168】
さらに2次コイルL2が接近すると(相対距離d3)、インダクタンスは“c”まで上昇する。さらに2次コイルが接近すると(相対距離d4)、インダクタンスは“d”まで上昇する。この状態となるコイル間の結合が生じ、以後は、相互インダクタンスの影響が支配的となる。
【0169】
すなわち、相対距離d5では、相互誘導の影響が支配的になるためにインダクタンスは低下して“e”となる。相対距離0(1次コイルと2次コイルの各中心が、XY平面の中心に位置する場合)では、磁束の相殺によって洩れ磁束が最小となり、インダクタンスは一定値(図7の「中心のインダクタンス」)に収束する。
【0170】
ここで、相対距離“d2”が送電限界範囲となる。この場合、インダクタンスしきい値(INth1)を用いれば、2次コイル(L2)が相対距離d2まで接近したことを検出することができる。つまり、2次コイル(L2)の接近によってインダクタンス値が上昇したことを第1のインダクタンスしきい値(INth1)を用いて検出したとすれば、それは、2次コイルL2が送電可能範囲付近にまで接近してきたことを示している。なお、実際には、上述のインダクタンスしきい値(INth1)に対応する電圧しきい値(第1のしきい値V1)を用いて、2次コイルの接近を判定する。
【0171】
本実施形態では、このような2次コイル(L2)の接近を自動的に検出するために、1次コイル(L1)を間欠的(例えば、周期的に)駆動することができる。これによって、2次コイル(2次側機器)の接近を自動的に検出することができる。ただし、この検出方法に限定されるものではなく、メカニカルな検出スイッチを用いて2次側機器の載置を検出する方法を採用することもできる。
【0172】
2次コイル(L2)の接近が検出されると、次に、高調波共振を利用した2次コイル位置の検出動作が実行される。以下、具体的に説明する。
【0173】
(高調波共振を利用した1次コイルと2次コイルの相対的位置関係の検出の原理)
図19は、1次コイルと2次コイルが電磁結合したトランスにおける洩れインダクタンスの概念を説明するための図である。図19の上側には、近接して配置されたコイル間の磁束の様子が示され、下側には、トランスの等価回路が示される。
【0174】
図19では、1次コイル(L1),2次コイル(L2)は、共に半径Rの円形コイルである。1次コイル(L1)から発生する磁束φAが2次コイル(L2)と鎖交すると、相互誘導によって2次コイル(L2)には1次コイル(L1)の磁束を相殺するように電流が流れるため、見かけ上磁束は0になる。つまり、理想的には、トランスの相互インダクタンスMは0となる。
【0175】
但し、実際には、1次コイル(L1)には洩れ磁束φBが存在し、2次コイル(L2)には洩れ磁束φCが存在する。1次側の洩れ磁束φBによって1次側洩れインダクタンスLQが生じ、2次側の洩れ磁束φCによって2次側洩れインダクタンスLTが生じる。なお、理論上、理想的なトランスが存在すると考えられるが、洩れインダンクタンスのモデルには関係なく、無視することができる。
【0176】
図20(A)〜図20(E)は、高調波共振回路の構成と動作を説明するための図である。図20(A)に示されるように、2次コイル(L2)には、高調波共振用のコンデンサC2が接続される。この場合のトランスの等価回路は、図20(B)に示すようになる。送電前であるため、2次側の負荷(RL)は接続されない状態である。また、上述のとおり、相互インダクタンスは実質的に0であるから、無視することができる。また、1次側の洩れインダクタンス(LQ)と、2次側の洩れインダクタンス(LT)は直列に接続されるから、両者を合成したインダクタンスは(LQ+LT)となる。よって、トランスの等価回路は、図20(C)に示すように変形することができる。
【0177】
図20(C)に示すように、SY1とSY2の2つの共振回路が構成されるが、ここでは、SY1は無視し、SY2のみに着目する。また、1次コイル(L1)の駆動信号(VD)の駆動周波数(fd)の奇数次高調波は、図20(D)に示すようになる。ここでは、5次高調波(5fd)に着目する(但し、これに限定されるものではなく、3次高調波や7次高調波等を使用することもできる)。
【0178】
本実施形態では、図20(E)の下側の式に示すように、共振回路SY2の共振周波数fsを、1次コイル(L1)の駆動周波数の5次高調波(5fd)に一致するように、コンデンサC2の容量値を設定する。これによって、共振回路SY2は、1次コイルの駆動周波数の5次高調波に共振する高調波共振回路となる。よって、図20(C)の共振特性は、図20(E)のようになり、周波数軸上の5fdの位置にて、高調波共振のピークが得られる。
【0179】
先に説明したように、洩れインダクタンスは、鎖交しない洩れ磁束が生み出すインダクタンスであり、その洩れ磁束の量は、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)との相対的な位置関係によって異なる。
【0180】
したがって、例えば、図20で説明した高調波共振回路SY2において、両コイル位置が一致しているときの洩れインダクタンスを前提としてコンデンサC2の容量を設定すれば、その高調波共振回路SY2は、1次コイルおよび2次コイルの位置が一致したときに高調波共振を生じる高調波共振回路となり、両コイル位置が所定距離Rだけ離れた場合の洩れインダクタンスを前提としてコンデンサC2の容量を設定すれば、その高調波共振回路SY2は、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)が所定距離Rだけ離れた場合に高調波共振を生じる高調波共振回路となる。
【0181】
図21(A),図21(B)は、両コイルが所定距離Rだけ離れたときに共振が生じる高調波共振回路について説明するための図である。図21(A)に示すように、両コイル(L1,L2)の中心位置が距離Rだけ離れているときの洩れインダクタンス(φBとφC)を前提としてコンデンサC2の容量を設定すれば、その高調波共振回路SY2は、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)が所定距離Rだけ離れた位置関係になったときに高調波共振を生じる高調波共振回路となる。
【0182】
すなわち、図21(B)に示すように、所定距離Rだけ離れたときの洩れインダクタンスをLQ(R),LT(R)とした場合、図21(B)の下側に示す式を満足するように、コンデンサC2の容量値を設定すれば、高調波共振回路SY2は、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)が所定距離Rだけ離れた位置関係になったときに高調波共振を生じる。
【0183】
図22(A)〜図22(D)は、2次コイルに対して1次コイルを走査(スキャン)した場合の、高調波共振ピ−クが得られる位置を説明するための図である。図22(A)に示すように、1次コイル(L1)の中心をPA1とし、2次コイル(L2)の中心をPA2とする。
【0184】
図22(A)に示すように、1次コイル(L1)を、左側から、2次コイル(L2)に向けて直線状に走査する場合を想定する。この場合、図22(B)に示すように、1次コイル(L1)が2次コイル(L2)に接近して両コイルの距離がRになる場合に高調波共振ピークが得られ、同様に、図22(C)に示すように、1次コイル(L1)が2次コイル(L2)から遠ざかるときにも高調波共振ピークが生じる。
【0185】
ここで、静止状態にある2次コイル(L2)と交わるあらゆる軸を想定し、その軸上で1次コイル(L1)を走査した場合を想定すると、共振ピークは、図22(D)に示すように、2次コイル(L2)の中心点PA2から距離Rだけ離れた円周上の位置において得られることになる。すなわち、高調波共振ピ−クが得られる位置をWとすれば、Wは、2次コイル(L2)の最も外側の円に一致する。
【0186】
図23は、2次コイルに対して1次コイルが接近した場合の1次コイルのインダクタンスの変化例および高調波検波回路から得られる高調波電圧の変化例を示す図である。図23の上側に示される図は、図18と同じである。図23の下側に示すように、高調波検波回路25による高調波共振ピークは、両コイルの相対位置が距離R(=相対距離d5)だけ離れているときに得られる。よって、高調波ピーク検出用のしきい値電圧(V2)との比較によって、その高調波ピークを検出することができる。
【0187】
また、先に図18で説明したように、両コイルの中心間の距離がL(=相対距離d2)であるときに、1次コイルのインダクタンス上昇によるコイル端電圧(コイル電流)の減少によって2次コイルの接近を検出することができる。図23より、R(高調波共振ピークが生じる距離)<L(接近検出距離)であることは明らかである。つまり、接近検出によって、距離Lの範囲に2次コイルが入ったことが検出され、高調波検波によって、両コイルが距離Rの位置関係になったことが検出される。
【0188】
なお、上述のおとり、R(高調波共振ピークが生じる距離)=0の場合を排除しない。つまり、R=0のとき(つまり両コイルの位置が一致するとき)に高調波共振が生じれば、その高調波ピークを指標として、1次側機器を試行錯誤的に移動させて両コイルの位置あわせを行うことができ、あるいは、2次側機器の手動による移動によって両コイルの位置合わせをすることができる。また、その高調波ピークの有無によって2次側機器のセットや取り去り(リーブ)を検出することもでき、有用であるからである。この点については、後述する。
【0189】
(直交2軸サーチによる2次コイル位置検出)
図24〜図27を用いて、直交2軸サーチによる2次コイル位置の検出について説明する。図24〜図27は、直交2軸サーチによる2次コイル位置検出方法および位置決め方法を説明するための図である。
【0190】
図24において、2次コイル(L2)は、1次コイル移動範囲Z内に置かれている。図1に示すように、2次側機器510のセット範囲を、色を変えたZ1領域に限定する等すれば、2次コイル(L2)は、必然的に、1次コイル移動範囲内に置かれることになる。
【0191】
上述したように、1次コイルを間欠的に駆動すれば、2次コイル(L2)の接近を検出できるから、次に、図2の送電側制御回路22は、アクチュエータ制御回路37に指示して、2次コイル位置検出のための直交2軸サーチを実行させる。以下、具体的に説明する。
【0192】
なお、図示されるようにXY軸によるXY平面が設定され、そのXY平面における座標位置が、図2の演算回路35によって求められる。また、上述したとおり、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)は共に半径Rの円形の平面コイルであり、両コイルの中心(PA1とPA2)間の距離がrのときに高調波ピークが得られる。
【0193】
まず、図24に示すように、アクチュエータ制御回路37は、アクチュエータ720,730を駆動して1次コイル(L1)を、2次コイルと交差する第1の軸(J1)に沿って移動させて、2次コイル位置検出のための第1の走査を実行する(ステップ(S1))。
このとき、PQ1,PQ2の2点において高調波共振ピークが生じる(ステップ(S2),ステップ(S3))。演算回路35は、PQ1およびPQ2の2点を結ぶ線分の中点の座標PQ3を求める(ステップ(S4))。
【0194】
次に、図25に示すように、アクチュエータ制御回路37は、アクチュエータ720,730を駆動して1次コイル(L1)を、第1の軸(J1)に直交し、かつ、第1の走査において求められた中点PQ3を通過する第2の軸(J2)に沿って移動させて2次コイル位置検出のための第2の走査を実行する(ステップ(S5))。このとき、PQ4,PQ5の2点において高調波共振ピークが生じる(ステップ(S6),ステップ(S7))。演算回路35は、PQ4およびPQ5の2点を結ぶ線分の中点の座標PQ6を求める(ステップ(S8))。
【0195】
求められた座標PQ6が、2次コイル(L2)の中心PA2の位置を示している。すなわち、これによって、2次コイル(L2)の中心位置が求められたことになる。
【0196】
次に、図26に示すように、1次コイル(L1)をJ3方向に移動させ、1次コイル(L1)の中心PA1が、2次コイル(L2)の中心PA2に重なるようにする(ステップ(S9))。このようにして、コイル間の極めて高精度の位置合わせを、自動的に行うことができる。
【0197】
以上の手順をまとめると図27のようになる。図27は、直交2軸サーチを利用した2次コイル位置検出方法ならびに1次コイルの位置決め方法の手順を示すフロー図である。なお、図27のフローには、2次コイルの接近検出動作も含めている。但し、接近検出は、必須ではなく、省略することもできる。
【0198】
まず、1次コイルの間欠的な駆動を行い、2次側機器(2次コイル)の接近を1次コイルのインダクタンスの上昇により検出する(ステップST1)。2次側機器の所定エリアへのセット(2次コイルの接近)が検出されると、次に、第1の走査線軸に沿う第1の走査を実行する(ステップST2)。
【0199】
第1の走査において、2点の高調波検出信号ピーク(高調波共振ピーク)が得られ(ステップST3)、次に、2点間を結ぶ線分の中点の座標を演算により求める(ステップST4)。
【0200】
次に、求められた中心座標を通り、第1の走査線軸に直交する第2の走査線軸に沿う第2の走査を実行する(ステップST5)。この第2の走査によって、2点の高調波検出信号ピーク(高調波共振ピーク)が得られる(ステップST6)。
【0201】
第2の走査により求められた2点を結ぶ線分の中点の座標を求める(ステップST7)。求められた中点の座標が、2次コイル(L2)の中心位置の座標である。
【0202】
1次コイル(L1)の中心を、求められた2次コイルの中心位置に移動させる(ステップST8)。これによって、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)との位置合わせが完了する。
【0203】
(XYステージの構成例と動作)
次に、XYステージの構成例と動作について説明する。図28は、XYステージの基本構成を示す斜視図である。
【0204】
図示されるように、XYステージ702は、一対のガイドレール100と、X軸スライダ200と、Y軸スライダ300と、を有する。これらに使用する材料は、例えば、アルミニウム、鉄、グラナイト(御影石)、セラミックス等である。
【0205】
一対のガイドレール100は互いに対向するガイド溝110を持ち、X軸方向に延在して平行に設けられる。一対のガイドレール100は図示しない定盤に固定される。
【0206】
一対のガイドレール100の間にX軸スライダ200が係合される。X軸スライダ200は矩形平板状をしており、その両端部がそれぞれ対向するガイド溝110に嵌め込まれて係合され、ガイド溝110に沿ってX軸方向の移動は許容されるが、Y軸方向の動きは規制されるようになっている。したがってX軸スライダ200は一対のガイドレール100に沿ってX軸方向に往復運動できる。
【0207】
なお、ガイドレール100に設けたガイド溝110をX軸スライダ200側に設け、ガイドレール100側にX軸スライダ200に設けたガイド溝に嵌まる凸条を設けるようにしてもよい。ガイドレール100とX軸スライダ200との係合部は、3つの面で支持されていればよく、ガイド溝の形状は問わない。
【0208】
X軸スライダ200を囲むようにY軸スライダ300が装着されている。Y軸スライダ300は、矩形平板状のX軸スライダ200の断面形状に合致するように、断面略コ字型をしている。その略コ字型をしたY軸スライダ300の開口部が内側に折り返されている。なお、Y軸スライダ300は上部が開口していてもよく、さらには全く開口していない断面略ロ字型をしたものでもよい。
【0209】
これによりガイド溝110に係合するX軸スライダ200の幅方向の両端部は、Y軸スライダ300によって上面、側面、下面の3面が支持される。そしてY軸スライダ300はX軸スライダ200に装着されることにより、X軸スライダ200に対してX軸方向の動きが規制されて、X軸スライダ200がX軸方向に移動するとそれに伴ってX軸方向に移動する。また、X軸スライダ200に対してY軸方向の動きが許容されて、X軸スライダ200に対してY軸方向に移動できるようになっている。X軸スライダ200はスライドするだけでなく、X軸スライダ200に対してY軸スライダ300をY軸方向に移動させるガイドも兼ねている。また、Y軸スライダ300の上部が、XY軸運動をさせる対象を載せるトッププレート(可動主面)となる。
【0210】
図示されるように、トッププートとしてのY軸スライダ300の主面には、1次コイル(円形の巻線コイル)L1と、IC化された送電制御装置20と、を含む送電装置10が搭載されている。
【0211】
また、図28のXYステージ702では、駆動源として、高精度なリニアモータを使用している。なおリニアモータに代えてボールネジ機構としてもよい。
【0212】
X軸スライダ200を移動させるX軸リニアモータ600は一対のガイドレール100間に設けてある。ロッド状の固定子610に装着されたX軸リニアモータ600の可動子620をX軸スライダ200の下部に固着することで、X軸スライダ200を往復動自在としている。
【0213】
また、Y軸スライダ300は、Y軸リニアモータ700によって往復駆動される。X軸スライダ200に凹部210が設けられ、その凹部210に、Y軸リニアモータ700が収納されている。これによって、ステージ高を抑えることができる。
【0214】
X軸リニアモータ600およびY軸リニアモータ700は各々、図2に示されるX方向アクチュエータ720およびY方向アクチュエータ730に相当する。
【0215】
このようなXYステージ702に、1次コイル(円形の巻線コイル)L1およびIC化された送電制御装置20を含む送電装置10が搭載されることによって、送電側装置(無接点電力伝送システムの送電機構)704が構成される。
【0216】
そして、図1(B)に示したように、送電側装置704は、プレーンな平面をもつ構造物(例えば、机等)の内部に埋め込まれる。これによって、概略な位置に置かれた2次側機器(携帯端末等)の2次コイル位置に対応するように、1次コイルのXY平面における位置を自動的に移動させることが可能な、次世代の無接点電力伝送システムに対応した送電側装置704が実現される。
【0217】
上述のとおり、本発明の送電制御装置20は、間欠的に1次コイルを駆動し、1次コンダクタンスの上昇によるコイル端電圧(電流)の減少が生じているか否かを常に監視する。そして、2次側機器の接近(2次側機器が所定エリアZ1内に載置されたこと)が検出されれば、1次コイル位置制御回路310による1次コイル位置の自動調整がなされる。したがって、2次側機器の接近検出ならびに1次コイルの位置調整が自動的に行われることになり、ユーザの手間は一切、生じない。
【0218】
(第3の実施形態)
本実施形態では、両コイル位置が一致しているときに高調波共振が生じるようにしておき、高調波検波出力を指標として、試行錯誤的に1次コイルを走査する。
【0219】
図29(A),図29(B)は、両コイルの位置が一致しているときに共振が生じる高調波共振回路について説明するための図である。
【0220】
図29(A)に示すように、両コイル(L1,L2)の中心位置が一致するときの洩れインダクタンス(φBとφC)を前提としてコンデンサC2の容量を設定すれば、その高調波共振回路SY2は、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)位置が一致(合致)したときに高調波共振を生じる高調波共振回路となる。
【0221】
すなわち、図29(B)に示すように、両コイルの位置が一致したときの洩れインダクタンスをLQ(0),LT(0)とした場合、図29(B)の下側に示す式を満足するように、コンデンサC2の容量値を設定すれば、高調波共振回路SY2は、1次コイル(L1)および2次コイル(L2)が一致する位置関係になったときに高調波共振を生じる。
【0222】
(高調波検波出力を指標とした1次コイルの走査)
図30(A),図30(B)は、高調波共振回路の検波出力を指標として、1次コイルを試行錯誤的に走査して1次コイルの位置決めを行う方法を説明するための図である。なお、「1次コイルを試行錯誤的に移動させる方式」には、1次コイルを、例えば、所定の移動シーケンスに基づいて(例えば螺旋状スキャンシーケンスに基づいて)移動させる場合が含まれ、また、まったくランダムに移動させる場合も含まれる。ここでは、1次コイルを螺旋状に走査する場合を想定する(但し、これに限定されるものではなく、ジグザグスキャン等、種々のスキャンパターンを採用することができる)。
【0223】
図30(A)に示すように、XYステージ702上には、1次コイル(L1)を含む送電装置10が載置されている。なお、図中、PA1は、1次コイルの中心を示す。
【0224】
送電制御装置20に含まれる送電側制御回路22は、上述の接近検出によって2次側機器のセットを検出すると、アクチュエータ制御回路37に指示してXYステージ702を移動させ、図30(B)に示すように、1次コイルL1を螺旋状にスキャンする。すなわち、1次コイルL1の中心PA1が螺旋を描くように、1次コイルを少しずつ移動させる。その1次コイルの移動と併行して、高調波検波回路25の出力レベルが、しきい値電圧V2を超えるか否かをコンパレータCP2によって判定する。送電制御回路22は、しきい値電圧V2を超えた場合に、1次コイル(L1)の走査を終了する。
【0225】
すなわち、例えば、2次側に形成される高調波共振回路(図20のSY2)が両コイルの位置が一致しているときに共振するのであれば、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の位置は一致しているはずである。つまり、2次コイル(L2)に対する1次コイル(L1)の位置決めが行われたことになる。
【0226】
このように、高調波検波出力を指標として1次コイル(L1)をスキャンすることによって、1次コイル(L1)の自動的な位置決めを行うことができる。以上の手順をまとめると図31のようになる。
【0227】
図31は、高調波検波出力を指標とした1次コイルの走査の手順を示すフロー図である。上述のとおり、送電側制御回路22は、2次側機器のセット(2次コイルの接近)を自動的に検出するために、駆動周波数fdにて、1次コイルを間欠的(例えば、周期的)に駆動し(ステップS1)、インダクタンスの上昇によるコイル端電圧(コイル電流)の減少に着目することによって2次コイルの接近を検出する(ステップS2)。
【0228】
送電側制御回路22は、上述の接近検出によって2次側機器のセットを検出すると、アクチュエータ制御回路37に指示してXYステージ702を移動させ、1次コイルを、例えば螺旋状にスキャンし(ステップS3)、そのスキャンに伴って高調波検波出力のレベルが所定のしきい値を超えるか否か(つまり、所望の位置関係になったか否か)を判定する(ステップS4)。そして、送電制御回路22は、両コイルが所望の位置関係になったときに、1次コイルのスキャン(螺旋状スキャン)を停止する。
【0229】
(第4の実施形態)
本実施形態では、1次側には、アクチュエータを用いた1次コイルの走査機構は設けない。両コイル間の位置合わせは、ユーザが手動で2次側機器を移動させて行う。以下、具体的に説明する。
【0230】
図32は、送電装置の他の構成(2次側機器の接近検出および両コイルの相対位置関係情報の報知を行う構成)を示す図である。図32の主要な構成は図15と同じであるが、図32では、図15と異なり、アクチュエータ制御回路37が設けられず、その代わりに、表示制御部39が設けられている。
【0231】
すなわち、図32の送電装置10(送電制御装置20)は、高調波検検波回路25の高調波検波出力による両コイルの相対位置関係の検出結果(相対位置関係情報)を、表示部16によってユーザに報知する機能を有するのみである。なお、ユーザに対する報知方法は、音声等による報知であってもよい。
【0232】
図33(A),図33(B)は、図32の構成をもつ送電装置を用いた無接点電力伝送システムの利用態様の一例を示す図である。図33(A)はシステム机の斜視図であり、図33(B)は図33(A)のシステム机のP−P’線に沿う断面図である。
【0233】
図33(B)に示すように、送電装置10は、載置面を備える構造物(ここではシステム机)620に内蔵されている。
【0234】
すなわち、送電装置10は、システム机620の内部に設けられた凹部に設置される。システム机620の上部には、平板(載置部材:例えば、数ミリの厚さのアクリル板)600が設けられており、この平板600は、支持部材610によって支持されている。
【0235】
また、平板600上には、表示部(LED)16が設けられており、高調波検波出力による両コイルの相対位置関係の検出結果(相対位置関係情報)が、表示部(LED)16によってユーザに報知される。例えば、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の位置が合致(一致)したとき、表示部(LED)16は赤色に点灯し、一致しないときは消灯する。
【0236】
また、平板600の一部には、携帯端末(携帯電話端末、PDA端末、持ち運び可能なコンピュータ端末を含む)を載置するための携帯端末載置領域Z1が設けられている。図18(A)に示すように、平板600に設けられた携帯端末載置領域Z1は、他の部分と色が異なっており、携帯端末をセットする領域であることがユーザに一目でわかるようになっている。なお、携帯端末載置領域Z1の全体の色を変えるのではなく、その領域Z1と他の領域の境界部分の色を変えてもよい。
【0237】
携帯端末(2次側機器)510には、送電装置10からの電力伝送を受ける受電装置40(2次コイルを含む)が内蔵されている。
【0238】
システム机620に内蔵されている送電装置10は、携帯端末510が携帯端末載置領域Z1上の概略位置に置かれると、そのことを自動的に検出する。これによって送電装置10は、高調波検波出力に基づく両コイルの相対位置関係の検出ならびに検出結果の表示を実行できる状態になる。
【0239】
ユーザは、携帯端末510を手動で移動させ、表示部(LED)16が点灯するかを確認する。ユーザは、表示部(LED)16が点灯したとき、携帯端末510の移動を停止する。これによって1次コイル(L1)に対する2次コイル(L2)の位置合わせが完了する。
【0240】
このように、所定レベルを超える高調波検波出力が得られるときに表示部(LED)16が所定の色に点灯するようにしておき、2次側機器である携帯端末510を試行錯誤的に手動で移動させ、表示部(LED)16が点灯する位置を探ることによって、2次コイル(L2)を1次コイル(L1)に対して位置決めすることができる。
【0241】
その後、送電装置10は、送電のための所定の動作を開始し、送電が開始されれば、例えば、表示部(LED)16が黄色に点灯し、送電中(充電中)であることをユーザに報知する。
【0242】
表示部(LED)16によるユーザへの報知の態様には種々のバリエーションが考えられる。例えば、両コイルの相対的位置関係の検出信号としての高調波検波出力のレベルに応じて、多段階の報知を行うこともできる。例えば、第1のレベルを超える高調波検波出力が得られるときに表示部(LED)16は赤色に点灯し、第1レベルを超える第2のレベルの高調波検波出力が得られるときに緑色に点灯するようにしておき、ユーザが2次側機器である携帯端末510を試行錯誤的に手動で移動させ、表示部(LED)16の点灯の有無ならびに点灯の色を確認するようにすれば、2次コイル(L2)を1次コイル(L1)に対して、より効率的に位置決めすることが可能となる。
【0243】
すなわち、赤色が点灯すれば、2次コイル(L2)が1次コイル(L1)にある程度、接近していることがわかるから、ユーザは、その後、探索(移動)範囲を絞って、より慎重に2次側機器(携帯端末)510を移動させることができる。この例では、色の表示によって、2次側機器(携帯端末)510を、位置決めポジションに無理なく誘導することができる。これによって、2次コイル(L2)を1次コイル(L1)に対して位置決めするのが容易となる。
【0244】
なお、表示部(LED)16の状態(点灯、消灯、点灯色等)によって、2次側機器(携帯端末)510のセットやリーブ(取り去り)を報知することもできる。
【0245】
(第5の実施形態)
本実施形態では、複数の2次側機器に対して同時に送電可能な構造物について説明する。
【0246】
図34は、複数の2次側機器に対して同時に送電可能な構造物の要部を示す図である。基本的な構造は、図1(A),図1(B)に示したものと同じである
構造物(ここではシステム机とする)の平板600の一部には、複数の携帯端末(携帯電話端末、PDA端末、持ち運び可能なコンピュータ端末を含む)を載置するための携帯端末載置領域(Z1a,Z1b)が設けられている。平板600上には、より多くの携帯端末載置領域を設けることができる。載置領域(Z1a,Z1b)は、他の部分と色が異なっており、携帯端末をセットする領域であることがユーザに一目でわかるようになっている。なお、携帯端末載置領域(Z1a,Z1b)の全体の色を変えるのではなく、その領域Z1と他の領域の境界部分の色を変えてもよい。
【0247】
携帯端末載置領域(Z1a,Z1b)の各々において、載置面(SA)の下方には、受電装置(10a,10b)およびXYステージ(702a,702b)が設けられている。上述の第1の実施形態〜第3の実施形態において説明したとおりの動作により、本実施形態においても、2次コイル(L2)に対して、1次コイル(L1)を、自発的かつ自動的に位置決めすることができる。
【0248】
本実施形態では、例えば、複数の2次側機器の2次電池を同時に充電することができる。このような構造物は、例えば、複数台の携帯端末を同時に充電できる充電テーブルとして、携帯電話会社の販売店の店内に設置して、顧客の自由な利用に供することができる。
【0249】
なお、第4の実施形態のように、XYステージを設けず、2次側機器を試行錯誤的に移動させる実施形態を採用することもできる。この場合、高調波検波信号の状態を示す報知部を別途、設ける必要がある。
【0250】
(第6の実施形態)
本実施形態では、受電装置を壁に埋設する。図35は、壁に受電装置を埋設した構造を示す断面図である。
【0251】
上述の実施形態では、システム机を例にとって説明したが、本発明の構造物には壁(あるいは、壁に密着させて使用する壁時計タイプの構造物)も含まれる。すなわち、携帯端末等の2次側機器を横方向に載置する場合のみならず、縦方向に載置する場合も含まれる。
【0252】
図35に示されるように、送電装置10およびXYステージ702を含む送電側装置704が垂直な壁の内部に埋設されている。本実施形態では、壁面923が載置面(SA)となり、この壁面923の下方(ここでは、構造体の内部に向かう方向が下方である)に送電側装置704が設けられており、この点は前掲の実施形態と共通する。
【0253】
受電装置40を内蔵する携帯端末510(受電装置40を携帯端末に内蔵するのではなく、受電装置40を含むフォルダを携帯端末510に装着させる場合もあり得る)は、ストラップ927により止め具925に係止されている。
【0254】
上述の第1の実施形態〜第3の実施形態において説明したとおりの動作により、本実施形態においても、2次コイル(L2)に対して、1次コイル(L1)を、自発的かつ自動的に位置決めすることができる。
【0255】
なお、第4の実施形態のように、XYステージを設けず、2次側機器を試行錯誤的に移動させる実施形態を採用することもできる。この場合、高調波検波信号の状態を示す報知部を別途、設ける必要がある。
【0256】
無接点電力伝送に対応した壁状構造物は、例えば、マンションや一戸建て住宅における壁(送電装置等が壁内に埋設されている構造物)として利用可能である。この場合、例えば、ストラップにて壁に吊り下げた状態の携帯端末を、壁内の送電装置からの無接点電力伝送によって自動的に充電することができる。この壁内に送電装置を組み込んだ構造物は、携帯端末の充電の他、例えば、家電製品への動作電力の供給等にも応用できる(この点は、2次側機器を水平に載置するタイプの構造物の場合も同様である)。
【0257】
(第7の実施形態)
本実施形態では、プレート状やパッド状の構造物の例について説明する。本発明の構造物には、プレート(比較的小面積の板状物)や、パッド(比較的小面積の詰め物、敷物、該当箇所に当てる物であり、例えば、摩擦や衝撃等の緩衝機能を備える)も含まれる。
【0258】
プレートやバッドの材質は問わないが、例えば、摩擦や衝撃の緩衝機能を持たせるべく、可撓性(たわむことができる性質)や弾力をもつゴムやプラスチック、合成繊維の織物などを使用することができる(これに限定されるものではない)。当然のことながら、前掲の実施形態と同様にアクリル等の合成樹脂で構成することもできる。
【0259】
図36は、プレート状やパッド状の構造物の例を示す図である。本実施形態では、例えば、第4の実施形態の方式を採用することができる。すなわち、図33(A),図33(B)を用いて説明したように、高調波検波出力の状態を示す報知部を設け、報知信号を指標として、2次側機器を試行錯誤的に移動させて、1次コイルに対して2次コイルを位置決めする方式を採用することができる。
【0260】
図36において、プレート(パッド)650は、送電装置10を埋設することができる程度の厚みをもち、送電装置10は、プレート(パッド)650の内部に埋め込まれている。このプレート(パッド)650は、机950上に置かれている。
【0261】
携帯端末510のユーザは、高調波検波出力の状態を示す表示部(LED)16の点灯状態や点灯色等を指標として、携帯端末510を試行錯誤的に移動させ、1次コイル(L1)に対して2次コイル(L2)を位置決めする。位置決めが完了した後、送電装置10から受電装置40に対する送電が開始される。
【0262】
無接点電力伝送に対応したプレート状あるいはパッド状の構造物は、移動性や持ち運び性に優れるため、ユーザは、自分の好みの位置において無接点電力伝送を手軽に利用することができる。送電装置をプレートやパッド内に埋設しておけば、プレートやパッドと共に送電装置も移動できる。
【0263】
(第8の実施形態)
上述の実施形態では、高調波検波回路25や2次コイルの接近検出回路(28,CP1)は、1次コイル(L1)と2次コイル(L2)との位置関係の調整のための手段として説明したが、見方を変えれば、これらの回路は、載置エリア(Z1)上の物品が、送電対象となり得るか否かを検出(判定)する手段としても機能している。
【0264】
すなわち、高調波検出回路25によって高調波を検出できるということは、載置エリアに置かれたのはネジや釘等ではなく、送電対象となり得る(少なくともそのような可能性がある)2次側機器であるということを示していることになる。つまり、高調波検出回路25は、載置エリア(Z1)に置かれた物品が、送電対象になり得る機器であるか否かを検出する手段(適正な2次側機器であるか否かの検出器)としての機能も有している。
【0265】
同様に、2次コイルの接近検出回路(28,CP1)によって2次コイルの接近を検出できるということは、すなわち、送電対象となり得る2次側機器が近づいていることを示しており、この点で、接近検出回路は、載置エリア(Z1)上の機器が、2次コイルをもつ送電対象となり得る2次側機器であるか否かを検出する手段(適正な2次側機器であるか否かの検出器)としての機能も有している。
【0266】
すなわち、本実施形態によれば、1次側機器が自主的に(かつ、無接点電力伝送システムに当然に備わっている機能を活用して簡単な構成で無理なく)、載置エリア上の物品が送電対象となり得るか否かを検出すること(2次側機器の適格判定)を行うことができる。
【0267】
載置エリア上の物品が、送電対象となり得るか否かの判定を1次側単独で行うことができれば、送電対象となり得ない物品に対して不要な送電を行う心配がなくなり、無用な電力消費や発熱を防止する効果も得ることができる。
【0268】
上記の例では、1次側が自主的に2次コイル位置等を検出したが、必ずしも、これに限定されるものではない。例えば、2次側機器が、何らかの指標となる信号を1次側に送信し、1次側機器がこれを受信して2次コイル位置の判定を行うというような場合も想定され得る。また、2次側機器が、自己ID情報を発信し、1次側機器がこれを受信して、2次側機器が送電対象であることを認識することもあり得る。
【0269】
また、例えば、図33(A),図33(B)(あるいは図36)の構成において、表示部(報知部)16は、載置エリアZ1上の物品が、送電対象になり得る機器(例えば、規格に適合した2次側構成をもつ2次側機器)であるか否かをユーザに報知する場合もあり得る。例えば、高調波検波回路25による受信レベルが適正である場合には、送電可能な2次側機器であると判定して、例えば、緑のランプを点灯させる。これによって、ユーザは、無接点電力伝送システムの利用が許可されたことを知ることができる。
【0270】
(第9の実施形態)
本実施形態では、図1(A)に示される載置エリアZ1を透明部材(半透明部材を含む)で構成する。また、載置エリア以外を不透明部材(あるいは、載置エリアとは光の反射率が異なる部材)で構成することもできる。
【0271】
この場合、ユーザは、載置エリアZ1を認識できると共に、載置エリアZ1の下側(内部)を目視できるため、載置エリアZ1の下方に設けられている1次コイル(L1)の位置を直接的に、あるいは間接的に把握しやすくなる。
【0272】
例えば、1次コイル(L1)を直接に視認できる場合もあり得る。あるいは、例えば1次コイル(L1)はICパッケージ等に覆われているが、ICパッケージ等にコイル位置を示す目印が付けられている場合もあり得る。この場合、ユーザは、その目印を指標として、1次コイル(L1)の位置を把握することができる。
【0273】
よって、例えば、第2の実施形態のように、ユーザ自らが2次側機器の位置を移動させて1次コイル(L1)と2次コイル(L2)の位置合わせを行うような場合、位置合わせを、より容易に行うことができ、ユーザの利便性が向上する。
【0274】
以上、本発明を、実施形態を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々、変形、応用が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲において多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。
【0275】
従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(低電位側電源、電子機器等)と共に記載された用語(GND、携帯電話機・充電器等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態および変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0276】
また、送電制御装置、送電装置、受電制御装置、受電装置の構成ならびに動作や、1次側における2次側の負荷検出の手法も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0277】
また、構造物の大きさや用途にも限定がなく、本発明は広く適用可能である。
【0278】
また、上述の実施形態では、1次側機器にて2次側機器の相対位置を自発的に検出していたが、2次側機器から1次側機器に位置合わせ情報を通信し、これによって1次側機器がコイル間の位置合わせ状況を知るようにしてもよく、このような内容も本発明に含まれる。この場合、2次側機器からの位置合わせ情報に基づいて、両コイルの位置関係を検出する回路が、本発明の位置検出回路に相当することになる。
【0279】
また、2次側機器(電子機器)としては、カードタイプの機器や家電製品等、広範囲の機器が想定される。また、2次側機器が載置面上に載置されたことを検出する手法として、2次側機器の自重によってスイッチがオンするタイプの機械式の載置検出を利用することもでき、この内容も本発明に含まれる。この場合、スイッチのオンを検出して2次側機器のセット(載置)を検出する回路が、本発明の位置検出回路に相当することになる。
【0280】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施態様によれば、例えば、以下の効果が得られる。但し、以下の効果は同時に得られるとは限らず、以下の効果の列挙が本発明を不当に限定する根拠として用いられてはならない。
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態の構造物を用いると、送電装置(1次側機器)が自発的に、送電装置(1次側機器)と受電装置(2次側機器)との相対的な位置関係を検出することができる。この位置関係の検出情報を用いることによって、1次コイルと2次コイルの位置合わせを効率的に行うことができる。1次コイルと2次コイルの位置合わせを自動的に行うことも可能である。
(2)構造物の載置面の一部が2次側機器の載置領域として利用される場合、載置面の他の領域は、例えば、2次側機器以外の物を置くスペースとして利用することができる。
(3)送電装置と受電装置とが、所望の剛性を有しかつ載置面を備える平板によって隔てられている場合、2次側機器の充電等を行わないときは、2次側機器の載置領域に、2次側機器以外の物を置くこともできる。送電装置は、平板の載置面の下方に埋設されているため、送電装置は、その平板によって外部と遮断されていることになり、例えば、水等の液体が送電装置側に流入する心配がなく、また、物が落下してくる心配もなく、安心して使用可能である。平板としては、例えば、アクリル等の合成樹脂を用いることができる。
(4)1次コイルと2次コイルが対向する領域において平板に切り欠きを設けて、1次コイルと2次コイルとが平板を介さずに直接的に送電と受電を行う場合には、平板による伝送電力のロスがない分、伝送効率の低下を防止することができる。
(5)無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、システム机のような多機能な事務用机として利用でき、これによって、極めて汎用性および利便性の高い次世代の無接点電力伝送システムを日常生活に取り入れることが可能となる。
(6)無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、携帯電話の販売店における、複数の携帯端末を同時に充電可能な充電テーブルとして利用可能である。その他、ファミリーレストランや若者に人気の居酒屋などにおけるカウンタテーブル等としても利用可能である。
(7)無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、マンションや一戸建て住宅における壁(送電装置等が壁内に埋設されている構造物)としても利用可能であり、この場合、例えば、ストラップにて壁に吊り下げた状態の携帯端末を、壁内の送電装置からの無接点電力伝送によって自動的に充電することができる。この壁内に送電装置を組み込んだ構造物は、携帯端末の充電の他、例えば、家電製品への動作電力の供給等にも応用できる(この点は、2次側機器を水平に載置するタイプの構造物の場合も同様である)。
(8)無接点電力伝送に対応した構造物は、例えば、プレート状やパッド状の構造物とすることもできる。例えば、プレート(比較的小面積の板状物)や、パッド(比較的小面積の詰め物、敷物、該当箇所に当てる物であり、例えば、摩擦や衝撃等の緩衝機能を備える)も本発明の構造物となり得る。プレートやバッドの材質は問わないが、例えば、摩擦や衝撃の緩衝機能を持たせるべく、可撓性(たわむことができる性質)や弾力をもつゴムやプラスチック、合成繊維の織物などを使用することができる。パッドやプレートの場合、移動性や持ち運び性に優れるため、ユーザは、自分の好みの位置において無接点電力伝送を気軽に利用することができる。送電装置をプレートやパッド内に埋設しておけば、プレートやパッドと共に送電装置も移動できる。
(9)本発明の構造物を利用すれば、優れた無接点電力伝送システムを快適に利用することができる。本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、磁性体付きの2次コイルの接近による1次コイル1次コイルの駆動周波数の奇数次高調波の共振を利用した、新規な両コイルの相対位置関係の検出方法が実現される。
(10)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、2次側に設けられる高調波共振回路の回路パラメータを調整することによって、両コイルが所定関係にあること(一致していること、所定距離Rだけ離れていること等)を自在に検出することもできる。
(11)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、高調波検波出力に基づく位置検出結果を指標として、アクチュエータやXYステージを用いて1次コイルを自動的に走査すれことによって、コイル間の自動的な位置決めが可能となる。
(12)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、高調波検波出力に基づく位置検出結果を指標として、ユーザが2次側機器を試行錯誤的に移動させて位置決めすることも可能となる。
(13)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、高調波検波出力に基づいて、2次側機器の所定エリアへのセットや取り去り(リーブ)を検出することもできる。
(14)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、磁性体付きの2次コイルの接近を1次側で自動的に検出する技術と、アクチュエータによる1次コイルの自動位置決め技術を組み合わせることによって、位置決め作業の全自動化が実現される。
(15)高調波検波回路や2次コイルの接近検出回路を用いれば、載置エリア上の物品が、2次コイルをもつ送電対象となり得る2次側機器であるか否かを検出することもできる。送電対象となり得ない物品であることが明らかであれば、例えば、送電側制御装置は、無接点電力伝送のための一切の手順の進行を停止することができる。これによって無駄な電力伝送がなされず、消費電力の増大や発熱等の問題が生じない。また、その検出結果を、報知手段を介してユーザに報知することもできる。これによって、ユーザは、例えば、無接点電力伝送システムの利用を許可されたか否かを知ることができる。
(16)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、2次側機器の大きさ、形状、機器デザイン等に影響されず、常に適正な送電が実現されるため、無接点電力伝送システムの汎用性が格段に向上する。
(17)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、2次側機器の設計の自由度は何ら制限されないため、2次側機器のメーカの負担が生じない。
(18)本発明の構造物に内蔵される無接点電力伝送システムを用いれば、例えば、特別な回路(位置検出素子等)を用いず、無接点電力伝送システムに備わっている回路構成を活用してコイル間の相対的な位置関係を検出するため、構成が複雑化しない。例えば、フラットな載置面をもつ構造物(例えば机)の所定エリア上に携帯端末等を載置するだけで、自動的に1次コイルの位置調整がなされて充電等が可能となり、あるいは、携帯端末等を手動で移動させて位置決めをすることも可能であり、したがって、極めて汎用性および利便性の高い次世代の無接点電力伝送システムが実現される。
(19)本発明によって、汎用性および利便性が格段に向上した次世代の無接点電力伝送システムを提供でき、また、新規な無接点電力伝送システムを手軽に利用できるようになり、無接点電力伝送システムの、社会的インフラとしての活用が促進され、無接点電力伝送システムの普及に貢献することができる。
(20)複数の2次側機器の2次電池を同時に充電することもできる。このような構造物は、例えば、複数台の携帯端末を同時に充電できる充電テーブルとして、携帯電話会社の販売店の店内に設置して、顧客の自由な利用に供することができる。
【0281】
以上、本発明を、実施形態を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々、変形、応用が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲において多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。
【0282】
従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(低電位側電源、電子機器等)と共に記載された用語(GND、携帯電話機・充電器等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態および変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0283】
また、送電制御装置、送電装置、受電制御装置、受電装置の構成ならびに動作や、1次側における2次側の負荷検出の手法も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0284】
本発明は、汎用性および利便性が格段に向上した次世代の無接点電力伝送システムの普及を促進するという効果を奏し、したがって、2次側機器の載置面をもつ構造物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】図1(A),図1(B)は、無接点電力伝送用送電装置が埋設された構造物の一例を示す図
【図2】送電装置、受電装置を含む無接点電力伝送システムにおける、各部の具体的な構成の一例を示す回路図
【図3】図3(A)および図3(B)は、1次側機器と2次側機器との間の情報伝送の原理を説明するための図
【図4】2次側機器の接近検出および両コイルの自動的な位置合わせについて説明するための図
【図5】図5(A)〜図5(F)は、1次コイルに2次コイルの磁性体が接近した場合のインダクタンスの増加について説明するための図
【図6】図6(A)〜図6(D)は、1次コイルと2次コイルの相対的な位置関係の例を示す図
【図7】1次コイルと2次コイルの相対距離と、1次コイルのインダクタンスの関係を示す図
【図8】インダクタンスの増大によって、1次コイルを含む共振回路の共振周波数の変化を示す図
【図9】図9(A)〜図9(C)は1次コイルと2次コイルの相対位置の変化例を示す図
【図10】1次コイルと2次コイルの位置関係を自動的に調整する方法を説明するための図
【図11】図11(A),図11(B)は、1次コイルと2次コイルの位置関係を自動的に調整するための具体的な回路動作を示す図
【図12】図12(A),図12(B)は、1次コイルの移動(スキャン)について説明するための図
【図13】1次コイルの自動的な位置調整の手順を示すフロー図
【図14】送電装置、受電装置を含む無接点電力伝送システムにおける、各部の具体的な構成の他の例を示す回路図
【図15】2次側機器の接近検出および両コイルの自動的な位置合わせを行うための送電装置の構成の一例を示す図
【図16】図16(A)〜図16(F)は、1次コイルに2次コイルの磁性体が接近した場合のインダクタンスの増加について説明するための図
【図17】図17(A)〜図17(D)は、1次コイルと2次コイルの相対的な位置関係の例を示す図
【図18】1次コイルと2次コイルの相対距離と、1次コイルのインダクタンスの関係を示す図
【図19】1次コイルと2次コイルが電磁結合したトランスにおける洩れインダクタンスの概念を説明するための図
【図20】図20(A)〜図20(E)は、高調波共振回路の構成と動作を説明するための図
【図21】図21(A),図21(B)は、両コイルが所定距離Rだけ離れたときに共振が生じる高調波共振回路について説明するための図
【図22】図22(A)〜図22(D)は、2次コイルに対して1次コイルを走査(スキャン)した場合の、高調波共振ピ−クが得られる位置を説明するための図
【図23】2次コイルに対して1次コイルが接近した場合の1次コイルのインダクタンスの変化例および高調波検波回路から得られる高調波電圧の変化例を示す図
【図24】直交2軸サーチによる2次コイル位置検出方法および位置決め方法を説明するための図
【図25】直交2軸サーチによる2次コイル位置検出方法および位置決め方法を説明するための図
【図26】直交2軸サーチによる2次コイル位置検出方法および位置決め方法を説明するための図
【図27】直交2軸サーチによる2次コイル位置検出方法および位置決め方法を説明するための図
【図28】XYステージの基本構成を示す斜視図
【図29】図29(A),図29(B)は、両コイルの位置が一致しているときに共振が生じる高調波共振回路について説明するための図
【図30】図30(A),図30(B)は、高調波共振回路の検波出力を指標として、1次コイルを試行錯誤的に走査して1次コイルの位置決めを行う方法を説明するための図
【図31】高調波検波出力を指標とした1次コイルの走査の手順を示すフロー図
【図32】送電装置の他の構成(2次側機器の接近検出および両コイルの相対位置関係情報の報知を行う構成)を示す図
【図33】図33(A),図33(B)は、図32の構成をもつ送電装置を用いた無接点電力伝送システムの利用態様の一例を示す図
【図34】複数の2次側機器に対して同時に送電可能な構造物の要部を示す図
【図35】壁に受電装置を埋設した構造を示す断面図
【図36】プレート状やパッド状の構造物の例を示す図
【符号の説明】
【0286】
L1 1次コイル、L2 2次コイル、10 送電装置、12 送電部、
14 波形モニタ回路、16 表示部、20 送電制御装置、22 送電側制御回路、
23 駆動クロック生成回路、24 発振回路、250 比較器、
26 ドライバ制御回路、37 アクチュエータ制御回路、28 波形検出回路、
290 位置検出回路、310 1次コイル位置制御回路、40 受電装置、
42 受電部、43 整流回路、46 負荷変調部、48 給電制御部、
50 受電制御装置、52 受電側制御回路、56 位置検出回路、58 発振回路、
60 周波数検出回路、62 満充電検出回路、90 2次側機器の負荷、
92 充電制御装置、94 バッテリ(2次電池)、
600 載置部材(平板)、610 支持部材、620 構造物、
510 2次側機器である電子機器(携帯端末自体の他、携帯端末に、受電装置を内蔵したフォルダを装着した複合的な機器も含まれる)、702 XYテーブル、
704 送電側装置(1次側構造体)、710 アクチュエータドライバ、
720 X方向アクチュエータ、730 Y方向アクチュエータ、
Z1 2次側機器の載置領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無接点電力伝送用の受電装置を有する電子機器が載置される載置面を備える載置部材と、
無接点電力伝送用の送電装置と、を含む構造物であって、
前記送電装置は1次コイルを有し、前記受電装置は2次コイルを有し、
前記送電装置は、電磁結合された前記1次コイルおよび2次コイルを経由して無接点で前記受電装置に電力を伝送し、
かつ、前記送電装置は、前記1次コイルと前記2次コイルの位置関係を検出する位置検出回路を有する、
ことを特徴とする構造物。
【請求項2】
請求項1記載の構造物であって、
前記位置検出回路による位置関係の検出結果を報知する報知部を有することを特徴とする構造物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の構造物であって、
前記位置検出回路は、磁性体付きの前記2次コイルの接近によって変動する前記1次コイルのコイル端電圧またはコイル電流に基づいて、前記1次コイルと2次コイルの位置関係を検出することを特徴とする構造物。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の構造物であって、
前記位置検出回路は、前記1次コイルの駆動周波数の高調波信号を検出する高調波検波回路であることを特徴とする構造物。
【請求項5】
請求項4記載の構造物であって、
前記1次コイルの中心と前記2次コイルの中心が所定の位置関係にて電磁結合しているときに、前記1次コイルの駆動周波数の高調波に共振する共振回路が構成されて、前記高調波検波回路から共振ピーク信号が出力されることを特徴とする構造物。
【請求項6】
請求項5記載の構造物であって、
さらに、前記送電装置の前記1次コイルのXY平面上における位置を移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータによる駆動によって、前記1次コイルの位置を移動させるXYステージと、
が設けられることを特徴とする構造物。
【請求項7】
請求項6記載の構造物であって、
前記送電装置は、送電制御装置を含み、前記送電制御装置は、前記受電装置への送電を制御する送電側制御回路と、前記1次コイルの駆動周波数の前記高調波信号を検出する高調波検波回路と、前記高調波検波回路の検波信号に基づいて所定の演算を行い、前記2次コイルの中心の位置を求める演算回路と、前記1次コイルのXY平面上における位置を移動させるためのアクチュエータの動作を制御するアクチュエータ制御回路と、
を含み、
前記アクチュエータ制御回路は、前記2次コイルの位置を検出するために前記1次コイルを走査し、
前記2次コイル位置検出のための走査によって得られたデータに基づいて、前記演算回路が前記所定の演算を行って前記2次コイルの中心の位置を求め、
前記アクチュエータ制御回路は、前記一次コイルの中心位置が、前記演算によって求められた前記2次コイルの中心位置になるよう前記1次コイルを移動させる、
ことを特徴とする構造物。
【請求項8】
請求項7記載の構造物であって、
前記1次コイルおよび2次コイルは円形コイルであり、
前記アクチュエータ制御回路は、前記アクチュエータを駆動して前記1次コイルを、前記2次コイルと交差する第1の軸に沿って移動させて、2次コイル位置検出のための第1の走査を実行し、
前記演算回路は、前記第1の走査中において、前記高調波検波回路の検波信号のピークが得られる2点の各々を結ぶ線分の中点の座標を演算により求め、
前記アクチュエータ制御回路は前記アクチュエータを駆動して前記1次コイルを、前記第1の軸に直交し、かつ、前記第1の走査において求められた前記中点を通過する第2の軸に沿って移動させて2次コイル位置検出のための第2の走査を実行し、
前記演算回路は、前記第2の走査中において、前記高調波検波回路の検波信号のピークが得られる2点の各々を結ぶ線分の中点の座標を演算により求め、
前記アクチュエータ制御回路は、前記アクチュエータを駆動して、前記1次コイルの中心の位置が、前記第2の走査において求められた前記中点の位置になるように前記1次コイルを移動させる、
ことを特徴とする構造物。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の構造物であって、
前記載置面を備える載置部材は、所定重量に耐え得る強度を有し、かつ、前記1次コイルと前記2次コイルは、前記載置部材を介して電磁結合することを特徴とする構造物。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の構造物であって、
前記載置面を備える載置部材は、前記1次コイルと前記2次コイルとが対向する領域において切り欠き部が設けられ、これによって、前記1次コイルと前記2次コイルは、前記載置部材を介さずに電磁結合することを特徴とする構造物。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の構造物であって、
前記載置面の少なくとも一部は、平面状の前記1次コイルのコイル面に平行な面を有することを特徴とする構造物。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の構造物であって、
前記構造物は、机状の構造物であることを特徴とする構造物。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の構造物であって、
前記構造物は、壁状の構造物であることを特徴とする構造物。
【請求項14】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の構造物であって、
前記構造物は、可搬性をもつプレート状構造物であることを特徴とする構造物。
【請求項15】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の構造物であって、
前記構造物は、可搬性をもつパッド状構造物であることを特徴とする構造物。
【請求項16】
請求項1〜請求項15のいずれかに記載の構造物であって、
前記載置面には、複数の前記電子機器を載置することができ、かつ、前記複数の電子機器の各々に対して、並行的に無接点電力伝送を行うことを特徴とする構造物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の構造物であって、
前記2次コイルの接近を検出するために、前記送電装置は、所定周波数の駆動信号によって前記1次コイルを間欠的に駆動することを特徴とする構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2009−81946(P2009−81946A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249443(P2007−249443)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】