説明

構造的に安定な難燃性寝具物品

難燃性寝具物品は、水流交絡された難燃性不織成分と、特に構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる、マットレス、枕カバーまたはマットレスパッドなどの寝具物品を含んでなる。この成分は、燃焼時に寝具物品の構造的完全性を維持するように相乗的な関係を有する少なくとも2層を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、水流交絡された難燃性不織成分を含んでなる難燃性寝具物品と、特に前記成分が燃焼時に寝具物品の構造的完全性を維持するように相乗的な関係を有する少なくとも2層を含んでなる、構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなるマットレス、枕カバーおよびマットレスパッドを含む寝具物品に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼性標準は、30年以上前に消費者製品安全委員会により16C.F.R.§1632の下に制定された。これらの標準は、くすぶっているたばこに暴露した場合の着火に抵抗するマットレスの燃焼性の要求に対応するものであった。しかしながら、この米連邦規制基準は、マッチ、ライターおよびろうそくにより生じる小直火に暴露された場合にマットレスが耐着火性を示すという必要性に対応できるものでなかった。
【0003】
技術進歩は、燃焼防止性が著しく良好なマットレス、ならびに寝具部品を提供することが判明した。これらの進歩を考慮して、カリフォルニア議会は、消費者製品安全委員会がマットレスおよび寝具が直火着火試験に確実に合格する改正された標準を確立することを命じた。下院法案603(AB603)として知られているが、カリフォルニア議会はこの改正された標準が2004年1月1日に発効することを命じた。
【0004】
難燃性ステープル繊維は当業界で既知である。更には、難燃性繊維は寝具用途の不織布の加工において使用されてきた。不織布は、布を製造することができる効率が在来のテキスタイルに比してこれらの布に対して著しい経済的利点をもたらす広範で多様な用途における使用に対して好適である。しかしながら、布の性質を比較した場合、不織布は、通常、特に多使用用途において表面磨耗、けば立ちおよび耐久性の点で不利な立場に立たされてきた。布中の繊維またはフィラメントの交絡の結果であって、改善された性質の水流交絡された布が開発され、改善された布の完全性をもたらした。交絡の後、バインダー組成物の塗布によりそして/あるいは交絡された繊維マトリックスの熱安定化により、布耐久性が更に増進可能である。
【0005】
引用により本明細書に組み込まれている、(特許文献1)は、不織布の水流交絡を行うための方法を開示している。更に最近、三次元イメージ転写装置上で水流交絡を行うことにより交絡された布にイメージまたはパターンを付与する水流交絡法が開発された。このような三次元イメージ転写装置は、引用により本明細書に組み込まれている、(特許文献2)で開示されていて、このようなイメージ転写装置の使用は増進された物理的性質ならびに美的に心地よい外観の布を提供するのに望ましい。
【0006】
引用により本明細書に組み込まれている、(特許文献3)で述べられているように、不織布は、従来、難燃性布の製造に有利に使用されてきた。通常、このタイプの用途に使用される不織布は、ニードルパンチングにより交絡され、集積化されてきたが、これは、時にはニードルフェルト化と呼ばれ、繊維状ウエブ構造物からのかかりのある針を挿入し、引き抜くことを伴う。このタイプの加工はこの繊維状構造物を集積化し、それに完全性を付与するように作用する一方で、このかかりのある針は多数の構成繊維を不可避的に剪断し、そして望ましくないこととしてはこの繊維状構造物中に孔を作る。ニードルパンチングは、得られる布の強度に対してマイナスである可能性があり、布が充分な強度を呈するために比較的高い坪量を有することを必要とする。
【特許文献1】米国特許第3,485,706号(Evansへの)
【特許文献2】米国特許第5,098,764号
【特許文献3】米国特許第6,489,256号(Kentらへの)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
費用効果が高く、構造的に安定であり、柔軟であるが、耐久性があり、そして限定ではないが、マットレス、マットレスパッド、マットレス用布(ticking)、寝台かけ(comforters)、ベッドカバー、キルト、カバーレット(coverlet)、デュベット(duvet)、枕、枕カバーを含む種々の寝具物品、他の家庭使用に加えて、保護用アパレル用途、室内装飾および工業用最終使用用途に好適である、費用効果が高い難燃性寝具不織布に対する必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水流交絡された難燃性不織成分を含んでなる難燃性寝具物品と、特に燃焼時に寝具物品の構造的完全性を維持するように相乗的な関係を有する、少なくとも2層を含んでなる構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品に関する。
【0009】
本発明によれば、不織成分を含む寝具は少なくとも第1および第2層を含んでなる。この第1層はリオセル(lyocell)繊維とモダクリル繊維の混紡を含んでなる。この第1層の繊維の混紡は、柔軟さに加えて例外的な強度を持つ層化された不織成分を提供する。更には、このモダクリル繊維は自己消火性であり、そして燃焼した時溶融するのでなく炭化することが知られている。
【0010】
この第1層に隣接して、リオセル繊維、モダクリル繊維、およびパラ−アラミド繊維の混紡を含んでなる第2層がある。1つ以上のパラ−アラミド繊維を組み込むことは、この布の繊維の構造完全性を維持し、ならびにいかなる熱収縮も低下させる。この難燃性の層化された布内で使用される繊維の複合物は、相乗的な関係を有して、例外的な強度、柔軟性、および難燃性を持つ費用効果が高い布を提供し、燃焼時には、この布は炭化するが、パラ−アラミド繊維の組み込みにより構造完全性を維持する。
【0011】
この難燃性の不織寝具物品成分の層化された構造物は寝具の美的な品質に役立つ。パラ−アラミド繊維は、通常、この布の変色を増大させ、望ましくない黄色い着色を付与する。しかしながら、この第2層の最上部に位置決めされるこの第1層中のパラ−アラミド繊維の欠如は、この第2層の変色を遮蔽する。場合によっては、この構造物は3層以上を含んでなり得、その場合には更なる層は不織布、織布、および/またはスクリムなどの支持層から選択され得る。
【0012】
この難燃性の不織寝具成分の第1および第2層は、並置され、引き続いて水流交絡されて、構造的に安定な複合布を形成する。加えて、この不織布は、限定ではないが、三次元イメージ転写装置、エンボスされたスクリーン、三次元に表面仕上げされたベルト、または孔あきドラムを含む小孔のあいた表面上で水流交絡され得、好適には、特定の最終使用用途に対して布の美的品質を更に増進する。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は種々の形の態様が可能であるが、本発明で好ましい態様は図面中で示され、この明細書でこれ以降説明されるであろうが、これは、本発明の開示は本発明の例示と考えられ、そして本発明を例示された特定の態様に限定するようには意図されていないということを理解することによるものである。
【0015】
層化された不織布からなる本発明の構造的に安定な難燃性の寝具成分は、費用効果が高く、構造的に安定であり、柔軟であるが、耐久性があり、そして限定ではないが、マットレス、マットレスパッド、マットレス用布、寝台かけ、ベッドカバー、キルト、カバーレット、デュベット、枕、枕カバーを含む種々の寝具物品、他の家庭使用に加えて、保護用アパレル用途、室内装飾および工業用最終使用用途に好適である。
【0016】
引用により本明細書に組み込まれている、Evansへの米国特許第3,485,706号は、不織布の水流交絡を行う方法を開示している。図1を参照すると、構造的に安定な難燃性不織寝具成分を形成する本発明の方法を実施するための装置が図示されている。リオセルおよびモダクリル繊維成分を梳き(carded)、場合によってはクロスラップ(cross−lapped)して、Pと表示した前駆体ウエブを形成し、これを水力エネルギーにより団結させて、層化された不織布を形成する。
【0017】
本発明によれば、リオセル、モダクリル、およびパラ−アラミド繊維の成分の混紡を含んでなる、第2の前駆体ウエブが形成され、P’と表記され得る。引き続いて、この第2前駆体ウエブはこの第1前駆体ウエブと並置され、ここで水流交絡により一体化される。場合によっては、この隣接された第1および第2前駆体ウエブは、限定ではないが、三次元イメージ転写装置、エンボスされたスクリーン、三次元に表面仕上げされたベルト、または孔あきドラムを含む小孔のあいた表面上で水流交絡され得、好適には、特定の最終使用用途に対して布の美的品質を更に増進する。
【0018】
更なる難燃性繊維がこの前駆体ウエブの一方または両方に組み込まれること、これらの繊維が限定ではないがメラミン繊維、American Kynol,IncからのKynol(商標)繊維などのフェノール系繊維、R.K.Textiles Composite Fibres Limitedへの登録商標のPanoxa(登録商標)繊維などの予備酸化されたポリアクリロニトリル繊維を含むことは本発明の範囲内にある。
【0019】
図1は、小孔のあいた成形表面をベルト12の形で含む水流交絡装置を更に図示する。このベルト上に前駆体ウエブPおよびP’を位置付けし、マニホルド14により交絡または予備交絡する。
【0020】
図1の交絡装置は、軽く交絡された前駆体ウエブのイメージ形成およびパターン形成を行うために三次元イメージ転写装置を含んでなるイメージ形成およびパターン形成ドラム18を場合によっては含み得る。このイメージ転写装置は、このイメージ転写装置のイメージ形成表面により規定される三次元要素と協働して作用して、形成中の布のイメージ形成およびパターン形成を行う複数の交絡マニホルド22に対して移動する可動のイメージ形成表面を含む。
【0021】
この難燃性不織布の第1および第2層に加えて、スパンボンド布を含み得る1つ以上の補助層を本発明の布に付加することも考えられる。一般に、連続フィラメント前駆体ウエブの形成は、「スパンボンド」法を実施することを伴う。スパンボンド法は、溶融ポリマーを供給し、次にこれを圧力下に紡糸口金またはダイとして既知のプレート中の多数のオリフィスから押し出すことを含む。得られる連続フィラメントを急冷し、そしてスロットドロー(slot draw)システム、アテニュエーター(attenuator)ガン、またはゴデットロール(Godet rolls)などの多数の方法のいずれによっても延伸する。この連続フィラメントは、ワイヤメッシュコンベヤーベルトなどの小孔のあいた移動表面上にゆるいウエブとして捕集される。多層化された布を形成する目的で、1つ以上の紡糸口金を一線で使用する場合には、後のウエブは前に形成されたウエブの最上表面上に捕集される。更には、連続フィラメント布の付加は、引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,678,379号および第6,114,017号で教示されるようにナノデニールを有するフィラメントから形成される布を含み得る。なお更には、この連続フィラメント布は慣用のフィラメントとナノデニールフィラメントの混紡から形成され得る。
【0022】
本発明の不織布はメルトブロー層を組み込むということが考えられた。メルトブロー法はメルトブロー法において不織布の層を形成するためのスパンボンド法に関連した手段である。再度であるが、溶融ポリマーは紡糸口金またはダイ中のオリフィスから圧力下で押し出される。高速空気はフィラメントに衝突し、ダイを出る時に同伴する(entrains)。この段階のエネルギーは、形成されるフィラメントの直径が大きく低下し、そして有限の長さの微少繊維が生成するように破壊を受けるようなものである。これは、フィラメントの連続性が保存されるスパンボンド法と異なる。単一層あるいは多層の布を形成する工程は連続的であり、すなわち、この結合されたウエブがロールに巻かれるまで、この工程段階はこのフィラメントの押し出しから妨害を受けずに、第1層を形成する。これらのタイプの布の製造方法は米国特許第4,041,203号で述べられている。ナノ繊維布も使用され得、そして引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,678,379号および第6,114,017号により代表される。メルトブロー法、ならびにメルトブローされた微少繊維の断面プロフィールは、本発明の実施に対する決定的な制約でない。
【0023】
本発明によれば、水流交絡された難燃性の不織寝具成分はフィルム層を含んでなり得る。強固で、耐久性のあるキャリア基材層として好適な有限の厚さのフィルムを熱可塑性ポリマーから形成することはよく行われることである。熱可塑性ポリマーフィルムは、キャストフィルムとして知られているように大量の溶融ポリマーを所望の最終製品の寸法を有する金型の中に分散させるか、あるいは押し出しフィルムとして知られているように溶融ポリマーをダイから連続的に押し出すことにより形成可能である。押し出された熱可塑性ポリマーフィルムは、このフィルムを冷却し、次に完成した材料として巻き取るか、あるいは二次基材材料上に直接に分配して、基材とフィルム層の両方の性能を有する複合材料を形成するように形成可能である。
【0024】
押し出しフィルムは次の代表的な直接押し出しフィルム法により形成可能である。熱可塑性ポリマーチップ用の少なくとも一つのホッパーローダー(hopper loader)と、場合によってはペレット化された熱可塑性キャリア樹脂中の添加剤用のものを含んでなる混紡および添加用貯蔵物が可変速のオーガー(auger)の中にフィ−ドされる。この可変速のオーガーは、予め決められた量のポリマーチップと添加物ペレットを混合ホッパーの中に移す。この混合ホッパーは混合プロペラーを含んで、この混合物に均一性を向上させる。述べたような基本的な容積測定の(volmetric)システムは、添加物を熱可塑性ポリマーの中に精確にブレンドするための最低の要求である。このポリマーチップと添加物ペレットのブレンドは多域押し出し機の中にフィードされる。この多域押し出し機からの混合および押し出し時、このポリマーコンパウンドはスクリーン交換機(changer)から加熱されたポリマー配管経由で移送され、ここで異なるスクリーンメッシュを有するブレーカープレートが使用されて、固体あるいは半溶融ポリマーチップおよび他の巨視的な破片を保持する。次に、この混合されたポリマーは、メルトポンプの中に、次に合体ブロック(combining block)にフィードされる。この合体ブロックによって、同一の組成のものであるか、あるいは上述のように異なる系からフィードされる多層フィルムを押し出すことが可能となる。この合体ブロックは押し出しダイに連結され、これは上向きに(overhead orientation)配置されて、溶融フィルム押し出し物がニップロールとキャストロールの間のニップに堆積される。
【0025】
加えて、通気性フィルムは開示された連続フィラメント積層物と一緒に使用可能である。引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,191,211号に教示されているモノリシックフィルム、および米国特許第6,264,864号に教示されている微細多孔性フィルムは、このような通気性フィルムを形成する機構を表す。
【実施例】
【0026】
本発明によれば、試料Aは、60%のステープル長のTencel(登録商標)(Courtaulds Fibres(Holdings) Limitedの登録商標である)リオセル繊維および40%のPBX(登録商標)(Kanekaの登録商標である)モダクリル繊維の約2.0オンス/ヤード2の坪量第1層と、42%のTencel(登録商標)リオセル繊維、37%のPBX(登録商標)モダクリル繊維、および21%のTwaron(登録商標)(Enka B.V.Corporationの登録商標である)パラ−アラミド繊維の混紡を含んでなる約4.0オンス/ヤード2の第2層を含んでなる。この層を水流交絡により複合した難燃性の不織複合布に団結させた。引き続いて、この複合布を三次元イメージ転写装置上に進めて、布に三次元パターンを付与する。表1は前述の布の物理的試験結果を示す。表2は、また、本発明により製造される難燃性成分に対する物理的試験結果も含んでなる。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
前出から、本発明の真の精神と新規な概念の範囲から逸脱せずに多数の改変および変形を行うことができることが観察されるであろう。この明細書中で例示される特定の態様に関する制限は意図されたり、あるいは推測されるべきものでないことは理解されるべきである。この開示は、添付の特許請求の範囲によって、特許請求の範囲内に入るすべての改変を網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1はこの難燃性不織布を製造するのに本発明により使用される装置の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品であって、前記成分が第1層と第2層を含んでなり、前記第1層はリオセル繊維とモダクリル繊維の混紡を含んでなり、そして前記第2層がリオセル繊維、モダクリル繊維、およびパラ−アラミド繊維の混紡を含んでなり、前記第1および第2層が水流交絡されて、前記成分を形成することを特徴とする寝具物品。
【請求項2】
前記成分が寝台かけ、キルト、ベッドカバー、デュベット、カバーレット、またはこれらの組み合わせ物からなる群から選択される請求項1に記載の構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品。
【請求項3】
前記成分がマットレスである請求項1に記載の構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品。
【請求項4】
前記成分がマットレスパッドである請求項1に記載の構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品。
【請求項5】
前記成分が枕カバーである請求項1に記載の構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品。
【請求項6】
三次元イメージ形成された、構造的に安定な難燃性不織成分を含んでなる寝具物品であって、前記成分が第1層と第2層を含んでなり、前記第1層はリオセル繊維とモダクリル繊維の混紡を含んでなり、そして前記第2層がリオセル繊維、モダクリル繊維、およびパラ−アラミド繊維の混紡を含んでなり、前記第1および第2層が三次元イメージ転写装置上で水流交絡されて、前記成分を形成することを特徴とする寝具物品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−527292(P2007−527292A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501963(P2007−501963)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/006836
【国際公開番号】WO2005/093143
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506298150)ポリマー・グループ・インコーポレーテツド (4)
【Fターム(参考)】