説明

構造色表示用材料およびその製造方法

【課題】 構造色表示層および粘着剤層に高い一体性が得られ、その結果、粘着剤層を対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合においても構造色表示層の剥がれなどが生じることのない構造色表示用材料およびその製造方法の提供。
【解決手段】 本発明の構造色表示用材料は、裏面に粘着剤層が設けられたシート状の構造色表示層支持体の表面に、構造色用粒子およびマトリックスよりなり構造色を発現する構造色表示層が形成されてなる構造色表示用材料であって、前記構造色表示層支持体は、その表面の接触角が60〜100°であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象面に貼り付けることのできる、構造色を発現する構造色表示用材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色素などの光の吸収によらない色表示の方法として、構造色を用いる方法が注目されている。構造色は、光の反射を利用するために高反射率で高い彩度が得られることや、褪色しにくいことなどの特性を有している。
このような構造色の特性を利用した構造色表示用材料として、構造色を発現する構造色表示層の裏面に、対象面に貼り付けられるよう粘着剤層を有する下地シートが形成されてなる構造色粘着シートが挙げられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、このような構造色粘着シートにおいては、構造色表示層と下地シートとの間の一体性が十分ではないおそれがあり、その結果、対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合に、構造色表示層が下地シートから剥離し、貼り付けられた構造色表示層の品質を保持することができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276492号公報
【特許文献2】特開2006−28202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、構造色表示層および粘着剤層に高い一体性が得られ、その結果、粘着剤層を対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合においても構造色表示層の剥がれなどが生じることのない構造色表示用材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造色表示用材料は、裏面に粘着剤層が設けられたシート状の構造色表示層支持体の表面に、構造色用粒子およびマトリックスよりなり構造色を発現する構造色表示層が形成されてなる構造色表示用材料であって、
前記構造色表示層支持体は、その表面の接触角が60〜100°であることを特徴とする。
【0007】
本発明の構造色表示用材料においては、前記マトリックスが、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン樹脂のいずれかよりなることが好ましい。
【0008】
また、本発明の構造色表示用材料においては、前記構造色表示層支持体が、プラスチックフィルム、または、紙からなる支持体の表裏面にそれぞれ樹脂層が形成されてなるコート紙であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の構造色表示用材料においては、前記構造色表示層支持体が可撓性を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の構造色表示用材料においては、前記粘着剤層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面に、剥離材が設けられてなる構成とすることができる。
【0011】
さらに、本発明の構造色表示用材料においては、前記構造色表示層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面に、光透過性の保護層が設けられてなり、前記粘着剤層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面が、当該保護層の表面に接触するようロール状に巻回されてなる構成とすることができる。
【0012】
本発明の構造色表示用材料の製造方法は、上記の構造色表示用材料を製造する方法であって、
裏面に粘着剤層が設けられ、その表面の接触角が60〜100°である構造色表示層支持体の当該表面に、構造色用粒子を水系媒体に分散させた構造色用粒子分散液を塗布して構造色を発現する周期構造体を形成する工程を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構造色表示用材料によれば、構造色を発現する構造色表示層が、特定の高い接触角を有する表面を備える構造色表示層支持体の当該表面上に形成されているために、構造色表示層と構造色表示層支持体との間に十分な固着状態が得られ、従って、構造色表示層および粘着剤層に構造色表示層支持体を介して高い一体性が得られ、その結果、粘着剤層を対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合においても構造色表示層の剥がれなどが生じることなく、貼り付けられた構造色表示層の品質を保持することができる。
【0014】
また、本発明の構造色表示用材料の製造方法によれば、予め粘着剤層が設けられた構造色表示層支持体の表面に、構造色用粒子を水系媒体に分散させた構造色用粒子分散液を塗布して周期構造体を形成するために、予め形成された構造色表示層に対して粘着剤層を設ける方法に比して、操作の煩雑さが極めて軽減され、また、大面積のものを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の構造色表示用材料の構成の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図2】図1の構造色表示用材料における構造色表示層を拡大して示す説明用断面図である。
【図3】構造色表示層の構成の別の一例を示す説明用断面図である。
【図4】本発明の構造色表示用材料の構成の別の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図5】実施例および比較例に係る構造色表示用材料の構造色表示層支持体と構造色表示層との層間固着力の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の構造色表示用材料の構成の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【0017】
本発明の構造色表示用材料は、裏面に粘着剤層17が設けられた、シート状の構造色表示層支持体13の表面に、構造色用粒子12およびマトリックスMよりなり構造色を発現する構造色表示層10が形成されてなるものであって、構造色表示層支持体13が、その表面の接触角が60〜100°、好ましくは70〜90°であるものとされている。
【0018】
構造色表示層支持体13の表面における接触角が上記の範囲にある場合には、構造色表示層10と構造色表示層支持体13との間に十分な固着状態が得られる。一方、構造色表示層支持体13の表面における接触角が60°未満である場合、もしくは100°を超える場合は、構造色表示層10と構造色表示層支持体13との十分な固着状態が得られず、従って、構造色表示層10および粘着剤層17に構造色表示層支持体13を介して高い一体性が得られず、その結果、粘着剤層17を対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合に構造色表示層10の剥がれが生じて貼り付けられた構造色表示層10の品質を保持することができないおそれがある。
【0019】
構造色表示層支持体13の表面における接触角は、以下のように測定されるものである。
すなわち、純水に対する接触角を接触角計「CA−DT・A型」(協和界面科学社製)を用いて温度20℃、湿度50%RHの環境下で測定される。
【0020】
〔構造色表示層支持体〕
本発明の構造色表示用材料を構成する構造色表示層支持体13は、例えば、プラスチックフィルム、または、紙からなる支持体(以下、「紙支持体」という。)の表裏面にそれぞれ樹脂層が形成されてなるコート紙からなることが好ましい。このコート紙における樹脂層は、耐水性を有するものとされることが好ましい。
【0021】
コート紙の紙支持体の材料としては、天然パルプ、合成パルプ、天然パルプと合成パルプの混合物の他、各種の抄き合わせ紙用原料などを挙げることができる。天然パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合パルプなどが挙げられる。抄紙された原紙は、製造法により中性紙、酸性紙などに分類されるところ、紙支持体としては、その製造法による原紙の種類によらずに用いることができるが、紙支持体としては、写真用印画紙グレードの原紙、特に写真用印画紙グレードの中性紙を使用することが好ましい。
【0022】
紙支持体は、それ自体が耐水性を有することが好ましい。紙支持体それ自体が耐水性を有することにより、後述する製造工程において構造色用粒子分散液が塗布される際に、裁断面から水系媒体が侵入することが防止され、これにより、得られる構造色表示用材料の品質が低下することが抑止される。
このような耐水性を有する紙支持体としては、製紙時にサイズ剤、定着剤、張力増強剤、填料、帯電防止剤、染料、カブリ防止剤などの添加剤などが配合されたものが挙げられる。また、表面サイズ剤、表面張力剤、帯電防止剤などを適宜表面に塗布したものを用いることもできる。
【0023】
紙支持体の表裏面にそれぞれ形成される樹脂層は、樹脂層を形成するための材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステルなどのポリエステル樹脂、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリエーテル樹脂、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタンなどのウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、これらを単独で使用してもよく、これらを主成分として上記の他の任意の樹脂と混合して使用してもよい。
【0024】
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンのいずれも好ましく用いることができ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
樹脂層を形成するための材料として特に好ましいものとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリエチレンテレフタレートを主構造とした変性ポリエステル樹脂(以下、「特定の変性ポリエステル樹脂」ともいう。)が挙げられる。
特定の変性ポリエステル樹脂は、主鎖のほとんどを占める、ポリエチレンテレフタレート構造のポリエステル部分と、変性部分とからなるものである。
主鎖における変性部分は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−キシリデンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、5−アルカリ金属スルホ−イソフタル酸、4−アルカリ金属スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸などの二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ヘキシレンジオール、1,4−ベンゼンジオール(ハイドロキノン)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜30,000)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜30,000)などのグリコール(ジオール)とから形成されるエステル結合による構造を有するものである。なお、上記においてアルカリ金属スルホ基のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムなどが挙げられ、好ましくはナトリウムである。
主鎖における変性部分としては、これらのうち、二塩基酸としてテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−アルカリ金属スルホ−イソフタル酸、4−アルカリ金属スルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸を用い、グリコールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜30,000)を用いて得られる構造を有するものが好ましい。また、二塩基酸としてアルカリ金属スルホ基を有する化合物を用いる場合は、グリコールとしてポリエチレングリコールおよび/または飽和脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸を用いて変性部分を形成させることも好ましい。
【0026】
主鎖における変性部分の含有量は、当該変性部分に係るエステル結合の割合が全エステル結合に対して好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、特に好ましくは30モル%以下となる含有量とされる。変性部分に係るエステル結合の割合が全エステル結合に対して50モル%を超える場合は、得られる構造色表示層支持体が、機械的強度、ガラス転移点、耐水性などの物性の低いものとなってしまう。
【0027】
変性部分にアルカリ金属スルホ基を有する構造単位が含まれる場合は、アルカリ金属スルホ基に係るエステル結合の割合が全エステル結合に対して好ましくは2〜10モル%、より好ましくは2〜7モル%、特に好ましくは3〜6モル%とされる。アルカリ金属スルホ基に係るエステル結合が上記の割合で含まれる構造色表示層支持体13によれば、構造色表示層10との固着状態が優れたものとなる。このアルカリ金属スルホ基を供する化合物が例えば5−ナトリウムスルホ−イソフタル酸である場合、ナトリウムスルホ基に係るエステル結合の割合が全エステル結合に対して2モル%未満であるときは特定の変性ポリエステル自体がほとんどポリエチレンテレフタレートと変わりなく、構造色表示層10との固着状態の向上性が十分に得られず、一方、ナトリウムスルホ基に係るエステル結合の割合が全エステル結合に対して10モル%を超えるときは吸水率が大きくなり、得られる構造色表示層支持体において紙支持体と樹脂層との密着状態が劣化しやすく製造工程において剥離が生じるおそれがあり、また、耐水性が低く、本発明の構造色表示用材料に係る構造色表示層支持体として使用に耐えないおそれがある。
【0028】
以上の特定の変性ポリエステル樹脂は、従来公知のポリエステルの製造法に従って合成することができる。具体的には、エステル化反応としては二塩基酸とグリコールとを直接反応させる直接エステル化と、二塩基酸をジメチルエステルとしてからグリコールに反応させるエステル交換法によるエステル化とのいずれを利用してもよい。この特定の変性ポリエステル樹脂の際、必要に応じてエステル化反応においてエステル交換反応触媒を、また重合反応においては酸化アンチモンの如き重合反応触媒を用いて合成することができる。
以上のような特定の変性ポリエステル樹脂の合成は、例えば高分子実験学第5巻「重縮合と重付加」(共立出版、1980年)第103〜136頁、または「合成高分子V」(朝倉書店、1971年)第187〜286頁の記載を参考に行うことができる。より具体的には、米国特許第4,217,441号公報、特開平5−210199号公報に記載に従って行うことができる。
【0029】
コート紙の樹脂層の材料としてポリエステル樹脂を用いる場合、このポリエステル樹脂としては、十分に高い分子量のものを使用する必要がある。具体的には、固有粘度が0.40〜0.75のものが好ましく、特に、安定した溶融押出しができることから、0.45〜0.65のものがより好ましい。固有粘度が0.40未満であるポリエステル樹脂を用いた場合は、溶融押出し後、当該ポリエステル樹脂による樹脂層が白化して脆いものとなるおそれがある。また、ポリエステル樹脂を得るための樹脂チップを十分に乾燥させることにより水分を十分に除去したものを使用する必要がある。樹脂チップの乾燥は、通常、10-3トール程度の真空下において約150℃で行われる。水分を含んだままの樹脂チップを用いて溶融押出しを行うと、極端に固有粘度が低下するおそれや、十分に固有粘度が高くとも溶融中に加水分解を起こすおそれがある。
【0030】
コート紙における樹脂層は、具体的には、紙支持体上に、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂などの樹脂層を形成するための材料を溶融押出し、塗布してラミネートすることにより、形成される。
この溶融押出し塗布法は、樹脂層を形成するための材料(樹脂組成物)を押出機中で所定の温度に溶融し、走行する紙支持体に対してダイスリットから塗布するものであるが、塗布されて形成された樹脂組成物層はそれが単一スリットから塗布される単一層であってもよく、また複数のスリットから塗布される複数層であってもよい。
【0031】
コート紙における、紙支持体の表裏面にそれぞれ形成される樹脂層は、以上のような材料を用いて、ラミネートする方法によって形成されることに限定されず、例えば、樹脂層を形成するための材料として、電子線を照射されることにより硬化される化合物(以下、「電子線硬化性化合物」ともいう。)を含む電子線硬化性樹脂組成物を用い、これを紙支持体に塗布加工して電子線を照射して硬化させることにより樹脂層を形成する方法を採用することもできる。このような方法は、例えば特開昭57−27257号公報、特開昭57−49946号公報、特開昭61−262738号公報、特開昭62−61049号公報などに開示されている。
【0032】
電子線硬化性化合物としては、例えば特公昭60−17104号公報、特開昭60−126649号公報、および特開平2−157747号公報などに記載された電子線硬化性モノマーあるいはオリゴマー、具体的には、アクリル系またはメタクリル系オリゴマー、多官能性アクリル系またはメタクリル系モノマーなどの、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和化合物などが挙げられる。
これらの不飽和化合物は、電子線を照射されることによりラジカル重合して分子間、架橋反応による架橋結合が形成され硬化し、硬化樹脂が生成される。
【0033】
不飽和化合物を具体的に例示すると、ポリウレタンの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAあるいはこのエポキシ縮合物の(メタ)アクリル酸エステル、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタジエンアクリレートまたはジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰り返し単位n=4〜300)ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパンポリアクリレート、1,3−ビス(N,N−ジエポキシプロピルアミノメチル)シクロヘキサン、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ポリエステルのマレイン酸エステルまたはフマル酸エステル、アジピン酸などの2価以上の有機酸とエチレングリコールなどの2価以上のアルコールとの縮合ポリエステルまたはオリゴエステル、あるいはポリエステルのジ−(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0034】
電子線硬化性樹脂組成物においては、電子線硬化性化合物の他に、当該電子線硬化性樹脂組成物の粘度を調節する必要がある場合には、架橋重合体中に組み込むことができる不飽和二重結合を1個有する希釈性モノマーを含有させることができ、この希釈性モノマーとしては、例えば、単官能性アクリルモノマー、メタアクリルモノマー、ビニルモノマーなどの1分子中に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む不飽和化合物が挙げられ、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸アクリレート、スチレン、ポリオキシエチレンフェニルアルコールのアクリル酸エステル、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0035】
また、電子線硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて希釈剤として有機溶媒を含有させてもよいが、その場合には、これらの有機溶媒を、電子線硬化性樹脂組成物による塗布膜中に残存しないよう塗布後に蒸発させてから電子線を照射することが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを用いることができる。
【0036】
電子線硬化性樹脂組成物の紙支持体への塗布方法としては、ロールコート法、バーコート法、エアードクターコート法、プレートコート法、スクイズコート法、エアーナイフ法、リバースロールコート法およびトランスファーコート法などのいずれの方法を用いてもよい。また、ファウンテンコーター方式およびスリットオリフィスコーター方式などの方法も用いることができる。
【0037】
紙支持体に塗布された電子線硬化性樹脂組成物を硬化させるための電子線の特性としては、加圧電圧が好ましくは100〜1000kV、より好ましくは100〜300kV、吸収線量が好ましくは0.5〜20メガラッド(mrad)、より好ましくは0.5〜10mradである。このような電子線を放射する電子線加速器としては、バンデグラーフ型のスキャニング方式、ダブルスキャニング方式およびカーテンビーム方式のものなどが挙げられる。
【0038】
構造色表示層支持体13がコート紙よりなるものである場合における樹脂層を形成する材料の塗布量は、樹脂層の厚みが後述する範囲になるように適宜に選択すればよい。
【0039】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、並びに、未変性のポリエステルフィルムと変性ポリエステルフィルムとの積層フィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。製造のし易さ、フィルムの性質、接着のし易さなどからポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0040】
ポリエステルフィルムの材料としては、例えば上述した特定のポリエステル樹脂などを用いることができ、この特定のポリエステル樹脂を従来公知のポリエチレンテレフタレートフィルムの製膜方法によって製膜することにより、ポリエステルフィルムを得ることができる。
特定のポリエステル樹脂の固有粘度は0.50〜0.85であることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.70である。ただし積層フィルムを形成する場合、変性ポリエステルの固有粘度は、取り扱い上の利点から、0.40〜0.60の範囲であることが好ましい。
【0041】
本発明に係る構造色表示層支持体13としては、プラスチックフィルム、特に、ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0042】
以上の構造色表示層支持体13は、構造色表示層10の色表示の効果をより得るために、それ自体、または当該構造色表示層支持体13がコート紙よりなるものである場合は、構造色表示層10と接触する表面側の樹脂層が、黒色、灰色など所望に応じた光を吸収する色のものとされていることが好ましく、特に、黒色とされていることが好ましい。構造色表示層支持体13がコート紙よりなるものである場合、紙支持体および裏面側の樹脂層は何色でもよい。
【0043】
このような黒色は、構造色表示層支持体13がプラスチックフィルムよりなるものである場合におけるそれ自体、またはコート紙よりなるものである場合における構造色表示層10と接触する表面側の樹脂層に、黒色顔料が含有されることにより、得ることができる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化鉄、チタンブラックなどが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。黒色顔料の含有量は、樹脂層中における濃度が4〜70%となる範囲であることが好ましい。
また、コバルトブルー、群青、例えばフタロシアニン染料などの有機染料などの色味づけ染料あるいは顔料がこれらの黒色顔料と共に含有されていてもよく、その含有量は黒色顔料を含めた全体の0.0001〜0.05質量%であることが好ましい。
【0044】
黒色顔料を含有させる方法としては、構造色表示層支持体13がコート紙よりなるものである場合における構造色表示層10と接触する表面側の樹脂層については、当該樹脂層がラミネートによって形成されるときは、当該樹脂層を形成する材料である樹脂チップを高真空下において温度をかけて乾燥した後に、所定の濃度になるように黒色顔料を直接まぶして押し出し機に投入し、200〜350℃の範囲内の樹脂の所定の温度で溶融混合させることにより当該樹脂層に黒色顔料を含有させる方法と、予め樹脂チップと黒色顔料とをニーダーなどの混練機によって溶融混合して所定の濃度の着色チップを得、これを真空乾燥後、着色チップをそのまま、あるいは無色のチップと所定の濃度になるように混合して、押し出し機で溶融混合する方法とが挙げられる。
また、前記樹脂層が電子線を照射して硬化させることによって形成されるときは、電子線硬化性樹脂組成物中に予め黒色顔料を含有させる方法が挙げられる。
【0045】
また、構造色表示層支持体13がプラスチックフィルムよりなるものである場合における当該プラスチックフィルムについては、黒色顔料を含有させる方法としては、予め樹脂チップと黒色顔料とをニーダーなどの混練機によって溶融混合して所定の濃度の着色チップを得、これを真空乾燥後、着色チップをそのまま、あるいは無色のチップと所定の濃度になるように混合して、プラスチックフィルムを製膜する方法が挙げられる。
【0046】
このような構造色表示層支持体13の厚みは、例えば10〜300μmとされ、特に、構造色表示用材料を構成する構造色表示層支持体13がコート紙である場合は、紙支持体の厚みが例えば40〜100μmであって、樹脂層の厚みが、耐水性が得られる厚みとして、当該樹脂層がラミネート膜よりなるときは例えば10〜40μmとされることが好ましい。また、当該樹脂層が電子線硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜よりなるときは例えば3〜40μmとされることが好ましく、特に好ましくは5〜30μmである。
また、構造色表示用材料を構成する構造色表示層支持体13がプラスチックフィルムである場合は、当該プラスチックフィルムの厚さは40〜130μmであることが好ましく、取り扱い性が良好であることから、50〜100μmであることが特に好ましい。
【0047】
本発明の構造色表示用材料を構成する構造色表示層支持体13は、可撓性を有することが好ましい。このような構造色表示層支持体13に加えて、構造色表示層10および粘着剤層17も可撓性を有する構成として構造色表示用材料全体が可撓性を有する構成とすることにより、ロール状に巻回された状態において保存することができ、また、平面以外の対象面に貼り付けることができる。
【0048】
〔構造色表示層〕
本発明の構造色表示用材料を構成する構造色表示層10は、マトリックスM中に周期構造体16が形成されてなるものであり、構造色表示層10においてこのような周期構造が形成されていることにより、可視域光の照射によって有彩色が視感される。
【0049】
構造色表示層10は、具体的には、図2に示されるように、例えば固体の粒子よりなる構造色用粒子12同士が面方向に接触する状態に規則的に配されて形成される構造色用粒子層15が、厚み方向においても構造色用粒子12同士が接触する状態で規則的に配された構成を有するものである。
また例えば、マトリックスMが固体状のものである場合は、図3に示されるように、マトリックスM中に構造色用粒子12同士が面方向に非接触状態で規則的に配されて形成される構造色用粒子層15が、厚み方向においても構造色用粒子12同士が非接触状態で規則的に配された構成を有していてもよい。
この構造色用粒子層15は、光が入射する方向に対して一方向に規則的に構造色用粒子12が配列された構成を有しており、特に、周期構造体が面心立方構造などの立方最密構造や、六方最密構造などの最密充填構造を呈するよう構造色用粒子12が配列された構成を有することが好ましい。
【0050】
構造色表示層10においては、構造色用粒子12の屈折率とマトリックスMの屈折率との差の絶対値(以下、「屈折率差」という。)が、0.02〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.6である。
この屈折率差が0.02未満である場合は、構造色が発色しにくくなり、この屈折率差が2.0より大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化してその表示色が認識されにくいものとなってしまう。
【0051】
構造色表示層10における構造色用粒子層15の厚みは、例えば0.1〜100μmであることが好ましい。
構造色用粒子層の厚みが0.1μm未満である場合は、得られる構造色の色が薄いものとなり、一方、構造色用粒子層の厚みが100μmよりも大きい場合は、光散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化してその表示色が認識されにくいものとなってしまう。
【0052】
構造色表示層10における構造色用粒子層15の周期数は、少なくとも1以上である必要があり、好ましくは5〜500である。
周期数が1未満である場合は、構造色表示層が構造色を発現するものとならない。
【0053】
本発明の構造色表示用材料において、構造色による表示色は、可視域にピーク波長を有する色とされる。
【0054】
〔構造色〕
構造色表示層10において得られる構造色とは、色素などの光の吸収による色ではなく、周期構造などによる選択的な光の反射により発現される色であり、薄膜干渉、光散乱(レイリー散乱、ミー散乱)、多層膜干渉、回折、回折格子、フォトニック結晶などによるものを挙げることができる。
構造色表示層10は、当該構造色表示層10によって光を反射することのできる構造を有しており、観察角に基づいて規定される波長の光が選択的に反射されることにより、構造色の発現が視認される。
【0055】
構造色表示層10において選択的に反射される光は、ブラッグの法則、スネルの法則より、下記式(1)で表される波長の光とされる。
なお、下記式(1)および下記式(2)は近似式であり、実際上はこれらの計算値に完全には合致しない場合もある。
式(1):λ=2nD(cosθ)
この式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される構造色表示層10の屈折率、Dは構造色用粒子層15の層間隔(構造色用粒子12の構造色表示層10の垂線方向における間隔)、θは構造色表示層10の垂線との観察角である。
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
この式(2)において、naは構造色用粒子12の屈折率、nbはマトリックスMの屈折率、cは構造色表示層10における構造色用粒子12の体積率である。
ここに、構造色のピーク波長λは、ファイバーを用いて反射光源と観察角度との関係を確認できる「MCPD−3700」(大塚電子社製)を用いて測定されるものとすることができる。
【0056】
構造色表示層10における層間隔Dは、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔Dが上記の範囲にあることにより、得られる構造色表示層10において発現される構造色が可視域にピーク波長を有する表示色となる。一方、層間隔Dが500nmよりも大きい場合は、得られる構造色表示層10が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0057】
〔構造色用粒子〕
本発明において、構造色用粒子とは、3次元において粒子形状を有する物質のことであり、真球に限定されるものではなく、おおよそ構造色用粒子形状を有すればよい。この物質は、固体状のものであることが好ましいが、マトリックスMが固体状のものである場合は、当該物質は気体状または液体状のものであってもよい。
【0058】
構造色表示層10に係る構造色用粒子12を構成する材料は、マトリックスMを形成すべき材料との組み合わせによって、適宜に選択することができる。
具体的には、その屈折率がマトリックスMを形成すべき材料の屈折率と異なるものであること、マトリックスMを形成すべき材料と互いに非相溶性のものであることが必要とされる。
また、構造色用粒子12を構成する材料としては、マトリックスMを形成すべき材料との親和性の高いものが好ましい。
【0059】
構造色表示層10を構成する構造色用粒子12としては、種々のものを挙げることができる。
具体的には例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(イソ)プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸単量体などの重合性単量体のうちの1種を重合した粒子、または2種以上を共重合した樹脂よりなる有機粒子を挙げることができる。
また、構造色用粒子12を構成する樹脂は、重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合したものであってもよく、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
また例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅などの無機酸化物および複合酸化物などや、ガラス、セラミックスなどにより形成された無機粒子を挙げることができる。
また例えば、上記の有機粒子または無機粒子をコア粒子として、これの表面に当該コア粒子を構成する材料と異なる材料のシェル層が形成されてなるコア−シェル型粒子を挙げることができる。シェル層は、金属微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物ナノシートなどを用いて形成することができる。
さらに例えば、上記のコア−シェル型粒子から、焼成、抽出などの方法によってコア粒子を除去することにより得られる中空型粒子を挙げることができる。
これらの粒子のうち、有機粒子が好適に用いられる。
【0060】
構造色用粒子12の平均粒径は、当該構造色用粒子12の屈折率およびマトリックスMの屈折率との関係において設定する必要があり、さらに少なくともその分散液が安定したコロイド溶液となる大きさであることが好ましいところ、例えば50〜500nmであることが好ましい。
構造色用粒子12の平均粒径が上記の範囲にあることにより、その分散液を安定したコロイド溶液とすることができ、また、得られる構造色表示層10において発現される構造色が可視域にピーク波長を有する色となる。
一方、構造色用粒子の平均粒径が50nm未満である場合は、視認される構造色が色濃度の小さいものとなるおそれがあり、構造色用粒子の平均粒径が500nmよりも大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって視認される構造色が白濁化してその表示色が認識されにくいものとなることがある。
【0061】
また、粒径分布を表すCV値は10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。
CV値が10より大きい場合は、規則的に配列されるべき構造色用粒子層が大きな乱れが生じたものとなって得られる構造色表示層が白濁化してその構造色が認識されにくいものとなることがある。
平均粒径は、走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を撮影し、この写真画像における構造色用粒子12の200個について、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、構造色用粒子12の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
なお、構造色用粒子12が凝集体として撮影される場合には、凝集体を形成する一次粒子(構造色用粒子)の最大長を測定するものとする。
CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値(%)=((標準偏差)/(平均粒径))×100
【0062】
構造色用粒子12の屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明における構造色用粒子12の屈折率は、液浸法によって測定した値とする。
構造色用粒子12の屈折率の具体的な例としては、例えばポリスチレンが1.59、ポリメタクリル酸メチルが1.49、ポリエステルが1.60、フッ素変性ポリメタクリル酸メチルが1.40、ポリスチレン・ブタジエン共重合が1.56、ポリアクリル酸メチルが1.48、ポリアクリル酸ブチルが1.47、シリカが1.45、酸化チタン(アナターゼ型)が2.52、酸化チタン(ルチル型)が2.76、酸化銅が2.71、酸化アルミニウムが1.76、硫酸バリウムが1.64、酸化第二鉄が3.08である。
【0063】
構造色用粒子層15を構成する構造色用粒子12は、単一組成の単一物であっても複合物であってもよいが、構造色用粒子の表面に構造色用粒子同士を接着させる物質が付着されたものとしてもよく、あるいは、構造色用粒子の内部に構造色用粒子同士を接着させる物質が導入されたものとしてもよい。このような接着物質を用いることによって、構造色用粒子層15を形成する際に自己配列などを生じにくい物質による構造色用粒子であっても、構造色用粒子同士を接着させることができる。また、屈折率が高い材料によって構造色用粒子を形成する場合は低屈折率物質を内添するなどしてもよい。
【0064】
構造色用粒子層15を構成する構造色用粒子12は、構造色用粒子層15を形成させる際に規則配列させやすいことから、単分散性の高いものであることが好ましい。
単分散性の高い構造色用粒子を得るために、構造色用粒子が有機粒子である場合は、構造色用粒子は、通常一般的に用いられるソープフリー乳化重合法、懸濁重合法、乳化重合などの重合法によって得ることが好ましい。
【0065】
構造色用粒子12は、マトリックスMとの親和性を高いものとするために、各種の表面処理を行ってもよい。
【0066】
〔マトリックス〕
構造色表示層10を構成するマトリックスMとしては、固体状のものであってもよく、また、空気であってもよい。マトリックスMが固体状のものである場合は、得られる構造色表示層10が高い強度、構造色用粒子剥離抑制能および可撓性を有するものとなる。
マトリックスMが固体状のものである場合、当該マトリックスMを形成すべき材料としては、その屈折率が構造色用粒子12の屈折率と異なるものを、適宜に選択することができる。マトリックスMを形成すべき材料としては、構造色用粒子12との親和性の高い材料が好ましい。
【0067】
マトリックスMが固体状のものである場合の当該マトリックスMの屈折率は、公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明におけるマトリックスMの屈折率は、別個にマトリックスMのみよりなる薄膜を作成し、この薄膜をアッベ屈折率計にて測定した値とされる。
マトリックスMの屈折率の具体的な例としては、例えばシリコーンゲルが1.41、ゼラチン/アラビアゴムが1.53、ポリビニルアルコールが1.51、ポリアクリル酸ナトリウムが1.51、フッ素変性アクリル樹脂が1.34、ポリN−イソプロピルアクリルアミドが1.51、発泡アクリル樹脂が1.43である。
【0068】
マトリックスMが固体状のものである場合の当該マトリックスMを形成すべき材料としては、例えば有機溶剤に可溶である樹脂、ヒドロゲル、オイルゲル、光硬化剤、熱硬化剤および湿気硬化剤などが挙げられる。マトリックスMを形成すべき材料としては、製造過程における周期構造体16に塗布する工程において液体状であり、熱、光などのエネルギーが付与されることにより固化することができるものが好ましく使用される。
有機溶剤に可溶である樹脂としては、具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、水に可溶である樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
ヒドロゲルとしては、具体的にはゼラチン、カラギナン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどのゲル化剤と水とを混合して得られるゲルが挙げられ、オイルゲルとしては、シリコーンゲル、フッ素変性シリコーンゲルなどや、アミノ酸系誘導体、シクロヘキサン系誘導体、ポリシロキサン系誘導体などのゲル化剤とシリコーンオイル、有機溶剤とを混合して得られるゲルが挙げられる。
特に、本発明の構造色表示用材料の構造色表示層10を構成するマトリックスMとしては、構造色表示層支持体13の表面との間に良好な固着状態を得る観点から、その接触角が構造色表示層支持体13の表面の接触角(60〜100°)に近いものを用いることが好ましく、具体的には、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂などが好ましい。
【0069】
以上のような構造色表示層10には、当該構造色表示層10上に粘着層を介して光透過性の表面保護層が設けられていてもよい。
表面保護層としては、透明性が高く、構造色表示層10において発現される構造色の視認を阻害しないポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などよりなるフィルム、UV硬化樹脂よりなるフィルムなどを用いることができる。この表面保護層は、対象面に貼り付けられた後も構造色表示層10上に残るものである。
【0070】
〔粘着剤層〕
本発明の構造色表示用材料を構成する粘着剤層17は、対象面に接着される層であって、粘着剤層17としては、構造色表示層支持体13に塗設された状態において、(アルコールの如き)脱脂肪溶剤によって表面を清浄にした平坦なステンレス板に対し、JIS Z 1538に準じて測定される粘着力が1,000g/25mm幅以上であるものが好ましい。
このような粘着剤層17を有することにより、当該構造色表示用材料を裁断する際に、裁断する刃、具体的にはロータリースリッター断裁刃あるいはギロチン断裁刃などに粘着剤が付着しないこと、後述する剥離材18に対して適当な粘着力を有すること、断裁加工の際あるいは構造色表示層10を形成する際に剥離材18が剥離しない程度の粘着力を有すること、構造色表示層支持体13に強固に接着して構造色表示層10を形成する際に剥離材18と共に当該粘着剤層17が構造色表示層支持体13から剥離しないこと、また対象面に接着させた後は当該構造色表示用材料が十分な接着力で接着されることなどの条件が満足される。
【0071】
粘着剤の粘着力は、具体的には、厚さ100μmの市販のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に15g/m2 の塗布量になるように塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、25mm×500mm(塗布部分25mm×250mm)の大きさに裁断し、温度23℃、湿度55%RHの条件下で、アルコールで清浄した25mm×500mmの大きさの同形状の平坦なステンレス板に、形を揃えた状態で、粘着剤がステンレス板に接触する状態に向かい合わせ、2kgのローラーを3往復転がして圧着して貼り付け、24時間後、JIS Z 1538に準じて、温度23℃、湿度55%RHの条件下で、ステンレス板における粘着剤が接触されていない一端をインストロン引っ張り試験機のクランプによって固定し、一方、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける粘着剤が塗布されていない一端を下方に垂らし、その末端を下側のクランプに挟み、ポリエチレンテレフタレートフィルムを180°の方向にインストロン型引張り試験機で300mm/分の速度で引っ張り、剥がれた時の荷重を測定し、これが、粘着剤の粘着力とされる。
【0072】
このような粘着剤層17を構成する粘着剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばエチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂などのうち、所定の粘着力を有するものを選ぶことができる。
【0073】
このような粘着剤としては、具体的には、「サイビノールX−491−267E」、「サイビノールX−491−268E」、「サイビノールX−490−213E」、「サイビノールX−490−229」(以上、サイデン化学社製)、「ニッカゾールTS−1413」、「ニッカゾールTS−1436」、「ニッカゾールTS−1446」、「ニッカゾールTS1448」(以上、日本カーバイト社製)、「アクロナールK−0672」、「アクロナールK−0611」、「アクロナールI−0510」、「アクロナールG−0412」(以上、三菱油化バーディシェ社製)などが挙げられる。
また、粘着剤としては、特開平4−298586号公報、特開平3−6277号公報に開示されているアクリル系ラテックスも用いることができる。
【0074】
粘着剤層17は、その塗布量が、例えば、5〜25g/m2 とされることが好ましく、特に、裁断の容易性および対象面に貼り付け後の粘着力の安定性の両方の観点から、10〜20g/m2 とされることがより好ましい。
【0075】
粘着剤の塗布方法としては、当該粘着剤が溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤またはホットメルト型粘着剤であるか、その種類によって適宜の方法を選択すればよく、例えば、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、ナイフコーター、あるいはダイコーターなどを使用して塗布することができる。
【0076】
粘着剤層17中には、粘着特性を損なわない程度に酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ、カオリン、クレーなどの顔料、帯電防止剤、防腐剤などを添加することができる。また、特開平4−298586号公報に開示されている水溶性可塑剤を添加することもできる。
【0077】
〔剥離材〕
本発明の構造色表示用材料は、図4に示されるように、粘着剤層17の構造色表示層支持体13に接触された面と反対の面(裏面)に剥離材18が設けられていることが好ましい。この剥離材18は、使用時に剥離して取り去ることにより粘着剤層17を露出させるものであって、基材シート18aの表面に粘着剤層17に接触される離型剤層18bが形成されたものとすることができる。
基材シート18aとしては、特に限定されずに用いることができるが、水系媒体の製造工程に耐えうるものであることが好ましく、例えば、紙支持体の少なくとも粘着剤層17に接触される一面に樹脂層が形成されたコート紙およびプラスチックフィルムなどを用いることが好ましい。
【0078】
コート紙の紙支持体としては、一般の離型紙の紙支持体を特に限定されずに用いることができるが、上述の構造色表示層支持体13としてコート紙を用いる場合の当該コート紙の紙支持体の場合と同様に、製紙時にサイズ剤、定着剤、張力増強剤、填料、帯電防止剤、染料、カブリ防止剤などの添加剤などが配合されたものが好ましい。紙支持体それ自体が耐水性を有することにより、後述する製造工程において構造色用粒子分散液が塗布される際に、裁断面から水系媒体が侵入することが防止され、これにより、得られる構造色表示用材料の品質が低下することが抑止される。
【0079】
紙支持体の両面に形成する樹脂層としては、上述の構造色表示層支持体13としてコート紙を用いる場合の当該コート紙の樹脂層と同様のものを挙げることができ、特に、ポリオレフィン樹脂よりなるものが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(コ−エチレン−コ−プロピレン)樹脂などが挙げられ、製造上の取り扱い易さの観点から、ポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。ポリエチレン樹脂は、低密度のものであっても高密度のものであっても問題なく使用できる。
【0080】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステルなどよりなるポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどよりなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。
【0081】
基材シート18aの厚さは、例えば20〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0082】
剥離材18の離型剤層18bを構成する離型剤としては、公知の種々のシリコーン樹脂を用いることができ、特に、形成される離型剤層18bの表面と、ショアーA硬度が65±2°であるクロロプレンゴムとのJIS P 8147に準じて測定される動摩擦係数が、0.21以上となる離型剤を用いることが好ましく、特に好ましくは0.21〜0.50である。このような離型剤を用いて形成された剥離材18を有する構造色表示用材料によれば、粘着剤層17を構成する粘着剤が、断裁の際に、ギロチン断裁刃やロタースリッター刃などに付着しにくい。
【0083】
このような離型剤としては、具体的には、「SD−7239」、「BY24−162」、「LTC−300B」、「LTC−350A」、「BY14−403」、「BY14−405」、「BY14−407」、「BY14−413」、「BY14−414」、「BY14−411」、「BY14−420」(以上、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン(株)製)、「KS−845」、「KS−770」、「KNS−202A」、「KNS−305」、「KNS−316」、「KNS−319」、「KNS−320」、「X−62−1232」、「X−62−1233」(以上、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0084】
離型剤層18bの厚さは、例えば、離型剤の塗布量が0.4〜2.0g/m2 となる厚さであることが好ましく、より好ましくは離型剤の塗布量が0.6〜1.3g/m2 となる厚さである。
【0085】
〔構造色表示用材料の製造方法〕
以上のような構造色表示用材料は、例えば、剥離材を有するものである場合、(1)剥離材18の基材シート18aに離型剤を塗布して離型剤層18bを形成し、続いて当該離型剤層18b上に粘着剤を塗布して粘着剤層17を形成し、これを、構造色表示層支持体13の裏面に粘着剤層17が接触される状態でプレスロールを通すことにより貼り合わせ、その後、構造色表示層支持体13の表面に構造色表示層10を塗設する方法と、(2)構造色表示層支持体13の裏面に粘着剤を塗布して粘着剤層17を形成し、一方、剥離材18の基材シート18aに離型剤を塗布して離型剤層18bを形成し、これらを、粘着剤層17と離型剤層18bとが接触する状態でプレスロールを通すことにより貼り合わせ、その後、構造色表示層支持体13の表面に構造色表示層10を塗設する方法とが挙げられる。
なお、予め構造色表示層支持体13の表面に構造色表示層10を形成したものを得、これに粘着剤層17を設ける方法は、操作が煩雑であって、さらに、大面積化が困難であるために、好ましくない。
【0086】
〔構造色表示層の形成方法〕
このような構造色表示層10は、具体的には、例えば、構造色用粒子12を水系媒体に分散させた構造色用粒子分散液を調製し、これを裏面に粘着剤層17が設けられ、その表面の接触角が60〜100°である構造色表示層支持体13の表面に塗布して自己配列させて構造色用粒子12が規則的に配列された周期構造体16を形成させた後乾燥させて水系媒体を除去する工程を経ることにより、形成することができる。
この方法において、構造色用粒子分散液として、さらにマトリックスMを形成すべき材料を溶解または分散させたものを用いることにより、適宜の固体状のマトリックスMを導入することができる。
また、構造色用粒子分散液としてマトリックスMを形成すべき材料を含まないものを使用し、形成された周期構造体16に液体状に調製したマトリックスMを形成すべき材料による溶液を塗布して構造色用粒子12間に隙間なく充填させた後固形化させることによっても、適宜の固体状のマトリックスMを導入することができる。
【0087】
ここに、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、樹脂を溶解しないことから、アルコール系有機溶媒が好ましい。
【0088】
構造色用粒子分散液の塗布方法としては、スクリーン塗布法、ディップ塗布法、スピンコート塗布法、カーテン塗布法、LB(Langmuir−Blodgett)膜作成法などを利用することができる。
【0089】
〔構造色表示層支持体の表面処理〕
構造色表示層10を上記のような水系の分散液を用いて形成する場合においては、構造色表示層支持体13に、活性化処理などを行ってその表面を親水性化することが好ましい。
【0090】
具体的には、構造色表示層10と接触する表面に対して、コロナ放電処理、火炎処理、グロー放電処理、紫外線照射処理、高周波処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などの活性化処理を行うことができる。
【0091】
以上の構造色表示用材料は、例えば、シート状のものとすることができる。シート状の構造色表示用材料においては、対象面に貼り付けられていない未使用の状態において、粘着剤層17の構造色表示層支持体13に接触された面と反対の面(裏面)に剥離材18が設けられていることが好ましい。
【0092】
また例えば、ロール状のものとすることもできる。ロール状の構造色表示用材料においては、対象面に貼り付けられていない未使用の状態において、構造色表示層10の構造色表示層支持体13に接触された面と反対の面(表面)に表面保護層が設けられている場合に、粘着剤層17の裏面が、当該保護層の表面に接触するよう巻回されている。
【0093】
以上のような構造色表示用材料は、対象面に貼り付けられて使用される。
この構造色表示用材料は、使用の目的に応じて裁断することができる。この構造色表示用材料を裁断する断裁刃としては、スリッターおよびロータリーカッター、クロスカッターおよびギロチンカッター、打ち抜きカッター、並びに、剥離材を有する場合当該剥離材のみを残して打ち抜くシールカッターなどがあり、いずれのカッターによって裁断しても粘着剤がこぼれて刃に付着することがなく、高い作業性が得られる。
【0094】
以上のような構造色表示用材料によれば、構造色を発現する構造色表示層10が、特定の高い接触角を有する表面を備える構造色表示層支持体13の当該表面上に形成されているために、構造色表示層10と構造色表示層支持体13との間に十分な固着状態が得られ、従って、構造色表示層10および粘着剤層17に構造色表示層支持体13を介して高い一体性が得られ、その結果、粘着剤層17を対象面に貼り付けた状態において外部からの力などが加わった場合においても構造色表示層10の剥がれなどが生じることなく、貼り付けられた構造色表示層10の品質を保持することができる。
【0095】
また、以上のような構造色表示用材料の製造方法によれば、予め粘着剤層17が設けられた構造色表示層支持体13の表面に、構造色用粒子12を水系媒体に分散させた構造色用粒子分散液を塗布して周期構造体16を形成するために、予め形成された構造色表示層10に対して粘着剤層17を設ける方法に比して、操作の煩雑さが極めて軽減され、また、大面積のものを容易に得ることができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、構造色用微粒子の平均粒径およびCV値、構造色表示層支持体の表面および裏面の接触角、剥離材に用いる離型剤の動摩擦係数、並びに粘着剤の粘着力の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。
【0098】
<実施例1〜4,比較例1〜3>
(1)剥離材の作製
剥離材の基材シートとして、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム「テトロンフィルム」(帝人社製)を用意し、この基材シートの両面に、シリコーン樹脂よりなる離型剤「SD−7239」(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製、動摩擦係数=0.25)を乾燥質量1.0g/m2 になる塗布量でバーコーターによって塗布、乾燥して離型剤層を形成して巻き取ることにより、剥離材を作製した。
【0099】
(2)粘着剤層の形成
次いで、上記の剥離材の片面上に粘着剤「サイビノールX−491−268E」(サイデン化学社製、粘着力=1,500g/25mm)を乾燥質量で16〜18g/m2 となる塗布量でリバースロールコーターによって塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、別の上記剥離材と同種の離型紙を当該粘着剤層面に合わせて巻き取ることにより、粘着剤層付き剥離材を作製した。
【0100】
(3)構造色表示層支持体の作製
〔構造色表示層支持体の作製例1:コート紙〕
写真印画紙グレードの硫酸塩晒針葉樹パルプ(NBSP)40%と、写真印画紙グレードの亜硫酸塩晒広葉樹パルプ(LBKP)60%とを混合し、濃度1.2%のパルプスラリーとし、この中に、パルプ(乾燥質量)に対する割合として、ポリアミドポリアミノエピクロルヒドリン樹脂0.82%、アルキルケテンダイマー0.45%、カチオン澱粉2.10%、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.12%、を添加した後、水酸化ナトリウムでpH=7.6に調整した。
このパルプスラリーを十分に分散した後、抄紙機で秤量70g/m2 、密度1.0g/m2 の紙支持体〔1〕を作製した。
【0101】
一方、ポリエチレン樹脂(密度0.95g/cc、メルトインデックス(略号MI)8.0g/10分)チップを乾燥させて押出機に投入して300℃で溶融し、上記の紙支持体〔1〕の裏面(粘着剤層を形成する側の面)に、ダイススリットから30g/m2 の塗布量で塗布されるよう押出しながら塗布し、次いで、紙支持体〔1〕の表面(構造色表示層を形成する側の面)に、ポリエチレン樹脂(密度0.92g/cc、MI5.0g/10分)90質量部にアナターゼ型酸化チタン10質量部を添加した混合物を押出機に導入して混練溶融後、ダイススリットから300℃で押出しコーティングにより、30g/m2 の塗布量で塗布して、構造色表示層支持体〔1〕を作製した。
【0102】
この構造色表示層支持体〔1〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が73°であった。
【0103】
〔構造色表示層支持体の作製例2:コート紙〕
まず、エポキシアクリレート「NKエステルEA800」(新中村化学社製)20質量部、ポリブタジエン「TEA−1000」(日本曹達社製)15質量部、トリエチレングリコールジアクリレート20質量部および黒色顔料カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)45質量部を混合し、ボールミルで20時間分散させ、電子線硬化型樹脂組成物〔1〕を得た。
この電子線硬化型樹脂組成物〔1〕を、上記の紙支持体〔1〕と同様にして得た紙支持体〔2〕の表面(構造色表示層を形成する側の面)にロールコーティング法により15g/m2 の塗布量で塗布した後、加速電圧175KV、吸収線量2mradの条件で電子線を照射して樹脂を硬化させた。次いで、当該紙支持体〔2〕の裏面(粘着剤層を形成する側の面)に、ポリエチレン樹脂(密度0.95g/cc、メルトインデックス(略号MI)8.0g/10分)チップを乾燥させて押出機に投入して300℃で溶融したものを、ダイススリットから30g/m2 の塗布量で塗布されるよう押出しながら塗布、乾燥することにより、構造色表示層支持体〔2〕を作製した。
【0104】
この構造色表示層支持体〔2〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が70°であった。
【0105】
〔構造色表示層支持体の作製例3:プラスチックフィルム〕
厚み50μmの黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーX30」(東レ社製)を用意し、これを構造色表示層支持体〔3〕とした。なお、このポリエチレンテレフタレートフィルムには、何も塗布しなかった。
【0106】
この構造色表示層支持体〔3〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が69°であった。
【0107】
〔構造色表示層支持体の作製例4:プラスチックフィルム〕
厚み50μmの超高分子ポリエチレン粘着テープ「No.4430」(日東電工社製)を用意し、これを構造色表示層支持体〔4〕とした。なお、この超高分子ポリエチレン粘着テープには、何も塗布しなかった。
この構造色表示層支持体〔4〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が81°であった。
【0108】
〔構造色表示層支持体の作製例5:コート紙〕
構造色表示層支持体の作製例1において、紙支持体〔1〕の表面にポリエチレン樹脂を塗布しないことの他は同様にして、構造色表示層支持体〔5〕を作製した。この構造色表示層支持体〔5〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が10°未満であった。
【0109】
〔構造色表示層支持体の作製例6:プラスチックフィルム〕
厚み50μmの黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーX30」(東レ社製)の一面に、8W/min・m2 の強度でコロナ放電処理し、その上に、下記の表面処理液〔3〕を塗布量が25ml/m2 となるように塗布し、再び8W/min・m2 の強度でコロナ放電処理し、さらにこの上に、下記の表面処理液〔4〕を塗布量が30ml/m2 となるように塗布することにより、片面に表面処理を施した構造色表示層支持体〔6〕を作製した。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムの他面には、何も塗布しなかった。
この構造色表示層支持体〔6〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が30°であった。
【0110】
(表面処理液〔3〕)
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート25質量%、スチレン25質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%、コポリマーラテックス(固形分30%)720g、下記式(C−6)で表される化合物(C−6)0.8gおよびヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレン尿素)0.8gに、水を加えて1リットルに調製したもの。
【0111】
【化1】

【0112】
(表面処理液〔4〕)
ゼラチン10g、上記式(C−6)で表される化合物(C−6)0.2g、下記式(C−7)で表される化合物(C−7)0.2g、N,N’,N’’−トリスアクリロイル−1,3,5−トリメチレントリアミン0.1gおよびシリカ粒子(平均粒子径0.3μm)0.1gに、水を加えて1リットルに調製したもの。
【0113】
【化2】

【0114】
〔構造色表示層支持体の作製例7:プラスチックフィルム〕
ふっ素樹脂粘着テープ「ニトフロンNo.903UL」(日東電工社製)を用意し、これを構造色表示層支持体〔7〕とした。なお、このふっ素樹脂粘着テープには、何も塗布しなかった。
この構造色表示層支持体〔7〕の表面の接触角を測定したところ、表面の接触角が115°であった。
【0115】
(4)構造色表示層支持体への粘着剤層の圧着
構造色表示層支持体〔1〕〜〔3〕,〔5〕,〔6〕について、それぞれ、粘着剤層付き剥離材の離型紙を剥がしながら、露出された粘着剤層と、構造色表示層支持体〔1〕〜〔3〕,〔5〕,〔6〕の裏面とを密着させ、ニップロールまたはプレスロールによって構造色表示層支持体に粘着剤層を圧着した。これを、構造色表示層支持シート〔1〕〜〔3〕,〔5〕,〔6〕とする。また、構造色表示層支持体〔4〕,〔7〕については、これらをそのまま構造色表示層支持シート〔4〕,〔7〕とした。
【0116】
(5)構造色用粒子の合成
スチレン72質量部、n−ブチルアクリレート20質量部およびアクリル酸8質量部を80℃に加温して単量体溶液を調製した。一方、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.2質量部をイオン交換水263質量部に80℃で溶解させた界面活性剤溶液と上記の単量体混合液とを混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理することにより、乳化分散液を調製した。
撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、上記乳化分散液とドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この溶液に過硫酸カリウム1.4質量部、水54質量部を投入し、3時間重合を行うことによって微粒子の分散液を得、これを遠心分離機により大径粒子/小径粒子を分離し、単分散性の高い真球微粒子の分散液〔1〕を得た。この分散液〔1〕中の構造色用粒子〔1〕は平均粒径が250nm、CV値が5であった。
【0117】
(6)構造色表示用材料の製造
〔構造色表示用材料の製造例1〜7〕
上記の構造色表示層支持シート〔1〕〜〔7〕の粘着剤層と反対の面上に、上記の分散液〔1〕をバーコート法によって塗布し、温度20℃、湿度50%RHの環境下において20分間乾燥させて厚み20μm、面積100cm×100cmの周期構造体を形成させた。次いで、シリコーンゲルを周期構造体の上から塗布し、構造色用粒子間に塗布液を浸透させた後、60℃で1時間加熱して固形化することにより、構造色表示用材料〔1〕〜〔7〕を得た。
【0118】
以上の構造色表示用材料〔1〕〜〔7〕の各々の構造色表示層支持体と構造色表示層との層間固着力を測定した。
具体的には、図5(a)に示されるように、構造色表示用材料Pを、アルミニウム製のスリーブ21の両端にフランジ22が装着された中空筒状のローラ20(外径28mm、肉厚1mm)に貼り付け、ローラ20に貼り付けられた構造色表示用材料Pの中央部の構造色表示層10を、スリーブ21の外周に沿って幅2.5cmの切り込み(破線X1およびX2)を入れ、さらに、この切り込みに対して垂直方向に切り込み(破線Y)を入れて、そこから構造色表示層10を少し剥がし、図5(b)に示すように、剥がされた構造色表示層10の端部を「オートグラフAGS(島津製作所社製)」のグリップ25でつまみ、矢印Zで示す垂直方向に速度100mm/minで引き上げ、負荷容量を20Nとして、負荷が増加しなくても構造色表示層10が引き上げられる負荷値を構造色表示層支持体13から引き剥がされ始める力として測定し、これを層間固着力として、この層間固着力が5.0N以上である場合を「○」(十分満足でき、実用に足る。)、5.0N未満である場合を「×」(実用上、問題がある。)として評価した。結果を下記表1に示す。
【0119】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の構造色表示用材料は、構造色表示層によって表示される構造色が、色素などの光の吸収による色表示と比較して、光の反射を利用するために高反射率で高い彩度が得られることや、褪色しにくいことなどの特性を有する。このような発色上の特性を利用して、例えば、熟練を要さず、簡単な作業で貼り付けることができる交通標識や、自分で好きな大きさおよび形状に切って貼り付けることができる、ネイルシールなどの装飾用テープなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0121】
10 構造色表示層
12 構造色用粒子
13 構造色表示層支持体
15 構造色用粒子層
16 周期構造体
17 粘着剤層
18 剥離材
18a 基材シート
18b 離型剤層
20 ローラ
21 スリーブ
22 フランジ
25 グリップ
D 層間隔
M マトリックス
P 構造色表示用材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に粘着剤層が設けられたシート状の構造色表示層支持体の表面に、構造色用粒子およびマトリックスよりなり構造色を発現する構造色表示層が形成されてなる構造色表示用材料であって、
前記構造色表示層支持体は、その表面の接触角が60〜100°であることを特徴とする構造色表示用材料。
【請求項2】
前記マトリックスが、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン樹脂のいずれかよりなることを特徴とする請求項1に記載の構造色表示用材料。
【請求項3】
前記構造色表示層支持体が、プラスチックフィルム、または、紙からなる支持体の表裏面にそれぞれ樹脂層が形成されてなるコート紙であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造色表示用材料。
【請求項4】
前記構造色表示層支持体が可撓性を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の構造色表示用材料。
【請求項5】
前記粘着剤層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面に、剥離材が設けられてなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の構造色表示用材料。
【請求項6】
前記構造色表示層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面に、光透過性の保護層が設けられてなり、前記粘着剤層の構造色表示層支持体に接触された面と反対の面が、当該保護層の表面に接触するようロール状に巻回されてなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の構造色表示用材料。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の構造色表示用材料を製造する方法であって、
裏面に粘着剤層が設けられ、その表面の接触角が60〜100°である構造色表示層支持体の当該表面に、構造色用粒子を水系媒体に分散させた構造色用粒子分散液を塗布して構造色を発現する周期構造体を形成する工程を経ることを特徴とする構造色表示用材料の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104931(P2011−104931A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264494(P2009−264494)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】