説明

構造部材の結合構造

【課題】温度差の大きい環境下で使用される構造物の嵌合による結合構造において、構造物を構成する材料の熱膨張係数の違いに起因する、結合構造の嵌合状態の緩みを防止し、結合構造部分の熱応力破壊を防止することができる結合構造を提供する。
【解決手段】嵌合部分において矩形状開口部を有する構造部材と、少なくとも嵌合部分において矩形状断面を有する軸部材からなり、当該軸部材の矩形状断面部分が当該構造部材の矩形状開口部に挿入、嵌合される結合構造において、当該軸部材の嵌合部分には少なくとも1の穿孔部が設けられており、当該穿孔部には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置されている構成の結合構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合部分を有する構造部材の結合構造に関係する。 更に詳細には、温度差の大きい環境下で使用される、嵌合部分を有する構造部材の結合構造に関係する。
【背景技術】
【0002】
一般産業用熱処理炉の中でワークを処理する場合、処理用治具として種々の構造物が使用される。 例えば、連続熱処理炉でワークを熱処理する場合、ワークを搬送するための搬送装置や、ワークを所定の空間に保持するための保持治具が使用される。 また、バッチ熱処理炉でワークを熱処理する場合にもワークを所定の空間に保持するための保持治具が必要になる。
【0003】
このような搬送装置や保持治具には、板状またはブロック状部材と棒状部材を連結するために板状またはブロック状部材と棒状部材を嵌合させた結合構造が多用されている。
一方、このような搬送装置や保持治具としては、ワーク処理中の振動やガタつきを抑えるために、その構造物の剛性を高める必要がある。 そしてこのような構造物の剛性は前述した結合構造の嵌合状態に大きく依存する。 即ち、搬送装置や保持治具に関する構造物の剛性を高めるためには板状またはブロック状部材と棒状部材の結合構造の嵌合状態をタイトにすることが不可欠である。
【0004】
しかし、このような搬送装置や保持治具は上述した熱処理炉で使用されるものであり、500℃前後の温度環境下で使用され場合や、1000℃を越える温度環境下で使用される場合もある。 このような高温下で使用される場合、搬送装置や保持治具を構成する構造物に使用される材料としては、特殊耐熱鋼、セラミックス、グラファイト材、カーボン/カーボン材のような特殊な材料が単独で、またはこれらの材料を組み合わせて使用されることが多い。
【0005】
特に、異種材料を組み合わせて構造物を構成したり、材料異方性を有する材料を使用して構造物を構成する場合には、材料の熱膨張係数の差に基づく問題が発生する。
【0006】
例えば、熱膨張係数の異なる異種材料を使用して、嵌合による結合構造を有する構造物を構成する場合、常温下においてしっかりした結合状態が得られるようなタイトな嵌合状態を実現したとしても、前述したような高温環境下に晒された場合、熱膨張係数の差によって嵌合による結合構造に隙間が生じてしまって、構造物全体の剛性が大きく低下してしまうという問題が生じていた。
また、逆に、異種材料の熱膨張係数の差によって嵌合による結合構造部分に過大な熱応力が発生して、部材そのものが破壊してしまうという問題が生じる場合もあった。
【0007】
特に、材料の選定によっては熱膨張係数として1桁程度の差が生じる場合があり、上述した問題が顕著に現れていた。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、係る課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、温度差の大きい環境下で使用される構造物の嵌合による結合構造において、構造物を構成する材料の熱膨張係数の違いに起因する、結合構造の嵌合状態の緩みを防止し、結合構造部分の熱応力破壊を防止することができる結合構造を提供するものである。
【0009】
係る目的を達成するため、少なくとも嵌合部分において矩形状開口部を有する構造部材と、少なくとも嵌合部分において矩形状断面を有する軸部材からなり、当該軸部材の矩形状断面部分が当該構造部材の矩形状開口部に挿入、嵌合される結合構造において、当該軸部材の嵌合部分には少なくとも1の穿孔部が設けられており、当該穿孔部には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置されている構成の結合構造とした。
【0010】
上述したような構成の結合構造を提供することにより、温度差の大きい環境下で使用される構造物の嵌合による結合構造において、構造物を構成する材料の熱膨張係数の違いに起因する、結合構造の嵌合状態の緩みを防止し、結合構造部分の熱応力破壊を防止することができる結合構造を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、連続熱処理炉内においてワークを搬送するための搬送ローラ10の例を示したものである。
【図2】図2は、熱膨張補償部材17の配置に関する第一の実施例を示したものである。
【図3】図3は、熱膨張補償部材17の配置に関する第二の実施例を示したものである。
【図4】図4は、熱膨張補償部材17の配置に関する第三の実施例を示したものである。
【図5】図5は、熱膨張補償部材17の配置に関する第四の実施例を示したものである。
【図6】図6は、熱膨張補償部材17の配置に関する第五の実施例を示したものである。
【図7】図7は、熱膨張補償部材17の配置に関する第六の実施例を示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
用語の定義
本明細書、および特許請求の範囲において使用する用語の内、以下に定義する用語は、ここに定義する意義を有するものとして理解しなければならない。
【0013】
矩形状開口部とは、少なくとも2組の対向する互いに平行な2辺で囲まれた空洞部分をいい、4辺の交差部分においては、円弧または直線で2辺を結ぶようにしたもの(即ち角部に円弧状部分または斜面部分が形成されたもの)も含まれる。 また、円形断面に1組の対向する互いに平行な2辺を設けた形状のものも矩形状開口部の範疇に含まれるものとする。 また円弧状部分または斜面部分の大きさは問わない。 また、この矩形状開口部は構造部材を貫通しているか、貫通していないかにはとらわれない。
【0014】
矩形状断面とは、長方形、正方形の両者を含む意で使用するものであって、少なくとも2組の対向する互いに平行な2辺で囲まれた断面をいい、4辺の交差部分においては、円弧または直線で2辺を結ぶようにしたもの(即ち角部に円弧状部分または斜面部分が形成されたもの)も含まれる。 また、円形断面に1組の対向する互いに平行な2辺を設けた形状のもの(即ち、円柱状部材に2面幅加工を施したもの)も矩形状開口部の範疇に含まれるものとする。 また円弧状部分または斜面部分の大きさは問わない。
【0015】
構造部材とは、平面または曲面を有する2次元的な広がりを有する構造要素をいい、板厚の薄い平板状のものから、板厚の厚い平板状のもの、即ちブロック状のものまで含む意である。
【0016】
軸部材とは、中空または中実の棒状の構造要素をいい、その外形断面としては、丸状断面、楕円状断面、矩形状断面など全ての断面形状を含むものであり、軸部材の長さは特に限定されるものではない。
【0017】
以下図面に基づき、本発明にかかる結合構造について説明する。
【0018】
図1は、一つの実施例として、連続熱処理炉内においてワークを搬送するための搬送ローラ10を示したものである。
【0019】
この搬送ローラ10は、二つの構造部材11(ワークを搬送するローラ部分)と軸部材12(ワークを搬送するローラ部分を保持し、回転駆動する部材)とから成り、この構造部材11と軸部材12が嵌合することによって両部材が連結される結合構造13を備えている。
【0020】
この構造部材11には矩形状開口部14が設けられている。 また、軸部材12には矩形状断面15が設けられている。 この構造部材11の矩形状開口部14の中へ、軸部材12の矩形状断面15が挿入されることによって、嵌合するようになっている。 構造部材11の矩形状開口部14の内側寸法と、軸部材12の矩形状断面15の外側寸法の間には、所定の寸法公差を設けることによって両者がタイトに嵌合できるようになっている。 また、軸部材12の熱膨張係数が構造部材11の熱膨張係数より大きい場合には、構造部材11の矩形状開口部14の内側寸法よりも、軸部材12の矩形状断面15の外側寸法を小さくして、両部材の間に所定の隙間を設けておくことにより、構造部材11、軸部材12の温度が上昇した場合に熱応力によっていずれかの部材が破壊するというトラブルを防止することができる。
【0021】
この構造部材11と軸部材12とが嵌合されることになる軸部材12の矩形状断面15の部分には、熱膨張補償部材17が挿入、配置される穿孔部16が設けられている。
【0022】
ここで、熱膨張補償部材17の機能について詳細に説明する。
【0023】
熱膨張補償部材17は、構造部材11と軸部材12を構成する材料の熱膨張係数の違いに起因する、結合構造の嵌合状態の緩みを防止し、結合構造部分の熱応力破壊を防止するために重要な機能を発揮するものである。
図1に示す搬送ローラ10に適用された結合構造13を例に挙げて、熱膨張補償部材17の機能を説明する。
【0024】
まず、図1に示すA方向における構造部材11の熱膨張係数がA方向における軸部材12の熱膨張係数よりも大きい場合を考える。
【0025】
この場合、常温において構造部材11と軸部材12がタイトに嵌合するように、構造部材11の矩形状開口部14の内側寸法よりも、軸部材12の矩形状断面15の外側寸法を僅かに小さく加工し、両者を嵌合させたときにA方向における両部材間に隙間が生じないように設定したとしても、この結合構造13を高温環境下におけば、軸部材12の矩形状断面15のA方向寸法の伸びよりも、構造部材11の矩形状開口部14のA方向寸法の伸びが大きくなる。 従って、構造部材11と軸部材12との嵌合部のA方向において隙間が生じてしまい、嵌合部にガタが生じてしまうことになる。
【0026】
しかし、軸部材12に設けた穿孔部16に熱膨張補償部材17を挿入、配置しておくことによりこの問題を解決することができる。 即ち、熱膨張補償部材17のA方向の熱膨張係数が、構造部材11のA方向と同じ熱膨張係数を有するようにし、常温において、熱膨張補償部材17の両端部が構造部材11の矩形状開口部14のA方向端面にタイトに接触するように加工しておけば、高温環境下においても構造部材11の矩形状開口部14のA方向寸法と熱膨張補償部材17の両端部間寸法の間には差が生ぜず、嵌合部のA方向において隙間が生じて、嵌合部にガタが生じてしまうようなことは無い。
【0027】
また、この場合、軸部材12と熱膨張補償部材17の相対的な位置関係を固定するようにしても良い。 このためには、図1に示すように軸部材12の側方から穿孔部16に連通する固定ピン穴18を設け、この固定ピン穴18に固定ピン19を挿入させることによって、熱膨張補償部材17の側方に設けた穴の中まで挿入できるようになっている。 この固定ピン19によって、軸部材12と熱膨張補償部材17の相対的な位置関係は固定され、構造部材11と軸部材12との嵌合部において隙間が生じたとしても、ガタの生じない堅固な結合状態を維持することができる。 更に、図1に示すように構造部材11の熱膨張補償部材17の端面が当接する部分には、熱膨張補償部材17の端面形状に合わせた掘り込み部分20を設けることによって構造部材11と熱膨張補償部材17との噛み込みを堅固にすることもできる。
なお、図1に示す位置決めピン21は、構造部材11と軸部材12との相対的な位置を固定するための機能を有するものである。
【0028】
次に、図1に示すA方向における構造部材11の熱膨張係数がA方向における軸部材12の熱膨張係数よりも小さい場合を考える。
【0029】
この場合、常温において構造部材11と軸部材12がタイトに嵌合するように、構造部材11の矩形状開口部14の内側寸法よりも、軸部材12の矩形状断面15の外側寸法を僅かに小さく加工し、両者を嵌合させたときにA方向における両部材間に隙間が生じないように設定し、この結合構造13を高温環境下におけば、構造部材11の矩形状開口部14のA方向寸法の伸びよりも、軸部材12の矩形状断面15のA方向寸法の伸びが大きくなるので、構造部材11と軸部材12との嵌合部には、この熱膨張差による熱応力が生じてしまう。 そして、温度変化の程度、両部材の熱膨張係数の差、および両部材の強度によっては、この熱応力によっていずれかの部材または両部材が破壊してしまうという問題が生じる。
【0030】
この場合、熱膨張差による熱応力が生じないようにするために、予め温度変化、構造部材11と軸部材12の熱膨張係数の差を考慮に入れて、構造部材11の矩形状開口部14の内側A方向寸法よりも、軸部材12の矩形状断面15の外側A方向寸法を小さく加工し、両者を嵌合させたときに熱膨張差を見越した隙間が生じるようにしてしまうと、常温環境下では構造部材11と軸部材12との嵌合部においてガタが生じてしまい堅固な結合状態を確保することができない。
従って、このような場合にも、軸部材12に設けた穿孔部16に熱膨張補償部材17を挿入、配置しておくことによりこの問題を解決することができる。 即ち、熱膨張補償部材17のA方向の熱膨張係数が、構造部材11のA方向と同じ熱膨張係数を有するようにし、常温において、熱膨張補償部材17の両端部が構造部材11の矩形状開口部14のA方向端面にタイトに接触するように加工しておけば、高温環境下においても構造部材11の矩形状開口部14のA方向寸法と熱膨張補償部材17の両端部間寸法の間には差が生ぜず、嵌合部のA方向において隙間が生じて、嵌合部にガタが生じてしまうようなことは無い。 また、高温下における構造部材11の矩形状開口部14のA方向寸法の伸びよりも、軸部材12の矩形状断面15のA方向寸法の伸びが大きくなるが、構造部材11と軸部材12とのA方向嵌合部においては予め熱膨張差を見越した隙間を設けてあるので熱応力が発生することもない。
【0031】
なお、図1に示す熱膨張補償部材17では、長楕円断面形状を有する平板形状をしたものとして表されているが、必ずしもこのような形状に限定されるものではない。 丸断面、矩形断面等どのような断面形状であっても良い。
【0032】
次に穿孔部16の機能について詳細に説明する。
【0033】
嵌合部分に相当する軸部材12の矩形状断面15部分には、穿孔部16が設けられている。 この穿孔部16の中には、熱膨張補償部材17が挿入されるようになっており、通常はこの穿孔部16と熱膨張補償部材17とはタイトに嵌合されるようになっている。 図1には、この穿孔部16は、軸部材12に掘り込まれた孔として現されているが、軸部材12の側面に切り欠き状に設ける(即、軸部材12に熱膨張補償部材17を配置した場合、熱膨張補償部材17の側面が軸部材12の外部へ露出する状態になるように穿孔部16を設ける)こともできる。
【0034】
次に熱膨張補償部材17の配置の例について詳細に説明する。
【0035】
図2から図7は、熱膨張補償部材17の配置の実施例について説明するための模式図である。 これらの図においては、構造部材11と軸部材12との境界部分には誇張した隙間が描かれているが、これは両部材の境界を明確に示すためのものであり、実際にこのような隙間が設けられていることを示すものではない。
【0036】
熱膨張補償部材17の配置に係る第一の実施例
図2は熱膨張補償部材17の配置に関する第一の実施例を示したものである。 図2に示す結合構造13は、嵌合部分において矩形状開口部14を有する構造部材11と、嵌合部分において矩形状断面15を有する軸部材12から構成されている。 軸部材12の矩形状断面15が構造部材11の矩形状開口部14に挿入、嵌合されている。 この軸部材12の嵌合部分には少なくとも1の穿孔部16 (図2では2の穿孔部16) が設けられており、この穿孔部16には少なくとも1の熱膨張補償部材(図2では2の熱膨張補償部材17) が挿入、配置されている。 図2に示す結合構造13では、図面上下方向に熱膨張補償部材17が配向されており、図面上下方向における構造部材11の熱膨張係数と軸部材12熱膨張係数の差に起因する熱膨張差を補償できるようになっている。
この場合、熱膨張補償部材17の長手方向熱膨張係数は、構造部材11の図面上下方向の熱膨張係数と同じ(近似した熱膨張係数である場合も含む意である)であることが望ましい。
また、図2では穿孔部16の中に1の熱膨張補償部材17が挿入された状態が示されているが、このようなものに限定される訳ではない。 複数の異なった材料(即ち、異なった熱膨張目係数を有する材料)を熱膨張補償部材17の長手方向に組合せて使用するようにしてもよい。 この場合、組み合わせた熱膨張補償部材17の長手方向の熱膨張特性は、構造部材11の図面上下方向の熱膨張係数と同じ(近似した熱膨張係数である場合も含む意である)であることが望ましい。
【0037】
図2における結合構造13では、熱膨張補償部材17が図面上下方向にのみ配向されたものを示したが、これに限定されるものではなく、図面左右方向にのみ熱膨張補償部材17を配向するようにしても良いし、あるいは図面上下方向と図面左右方向の両方向に配向するようにしても良い。
【0038】
熱膨張補償部材17の配置に係る第二の実施例
図3は熱膨張補償部材17の配置に関する第二の実施例を示したものである。
【0039】
図3に示すように、軸部材12と熱膨張補償部材17の相対的な位置関係を固定するようにしても良い。 このためには、図3に示すように軸部材12の側方から穿孔部16に連通する固定ピン穴18を設け、この固定ピン穴18に固定ピン19を挿入させることによって、熱膨張補償部材17の側方に設けた穴の中まで挿入できるようになっている。 この固定ピン19によって、軸部材12と熱膨張補償部材17の相対的な位置関係は固定され、構造部材11と軸部材12との嵌合部においてガタの生じない堅固な結合状態を維持することができる。
【0040】
熱膨張補償部材17の配置に係る第三の実施例
図4は、熱膨張補償部材17の配置に関する第三の実施例を示したものであり、構造部材11および軸部材12の各々が直交異方性材料からなる場合の結合構造13を示したものである。
【0041】
この結合構造13では、構造部材11が平板状の2次元的広がりを有する部材である。
この構造部材11に設けられた矩形状開口部の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X1が配向され、矩形状開口部の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y1が配向され、構造部材11の厚さ方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向されている。
【0042】
また、軸部材12の矩形状断面の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X2が配向され、矩形状断面の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y2が配向され、軸部材12の長手方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向されている。
【0043】
なお、構造部材11の弾性主軸X1, Y1と軸部材12の弾性主軸X2, Y2の方向がそれぞれ一致するように嵌合されている。
【0044】
また、軸部材12の嵌合部分に設けられた穿孔部16の軸芯と、熱膨張補償部材17の軸芯は、軸部材12の弾性主軸X2または弾性主軸Y2に平行に配置するようにしても良い。
【0045】
熱膨張補償部材17の配置に係る第四の実施例
図5は、熱膨張補償部材17の配置に関する第四の実施例を示したものである。
【0046】
図4における結合構造13では、熱膨張補償部材17が構造部材11の弾性主軸Y1 (軸部材12の弾性主軸Y2) の方向にのみ配向されたものを示したが、これに限定されるものではなく、構造部材11の弾性主軸X1 (軸部材12の弾性主軸X2) の方向にのみ熱膨張補償部材17を配向するようにしても良いし、あるいは構造部材11の弾性主軸X1、Y1 (軸部材12の弾性主軸X2、Y2) の両方向に熱膨張補償部材17を配向するようにしても良い。
【0047】
熱膨張補償部材17の配置に係る第五の実施例
図6は、熱膨張補償部材17の配置に関する第五の実施例を示したものである。
【0048】
軸部材12の弾性主軸X2に平行に配置された穿孔部16は、軸部材12の矩形状断面15における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部16をそれぞれ構成している。 この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の深さは、穿孔部16の軸芯方向における軸部材12の幅寸法の1/2になっている。
【0049】
また、この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の軸芯は互いに一致せず、一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の中に熱膨張補償部材17が挿入、配置されている。
【0050】
なお、ここでは熱膨張補償部材17は軸部材12の弾性主軸X2に平行に配置されているが、熱膨張補償部材17を軸部材12の弾性主軸Y2に平行に配置するようにしても良い。
【0051】
熱膨張補償部材17の配置に係る第六の実施例
図7は、熱膨張補償部材17の配置に関する第六の実施例を示したものである。
【0052】
軸部材12の弾性主軸X2に平行に配置された穿孔部16は、軸部材12の矩形状断面15における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部16をそれぞれ構成している。 この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の深さは、穿孔部16の軸芯方向における軸部材12の幅寸法の1/2になっている。
【0053】
また、この一対の穿孔部16の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の中には熱膨張補償部材17が挿入、配置されている。
【0054】
更に、軸部材12の弾性主軸Y2に平行に配置された穿孔部16は、軸部材12の矩形状断面15における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部16をそれぞれ構成している。 この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の深さは、穿孔部16の軸芯方向における軸部材12の幅寸法の1/2になっている。
【0055】
また、この一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、この一対の穿孔部16の各々の穿孔部16の中には熱膨張補償部材17が挿入、配置されている。
【0056】
以上の説明においては、構造部材11および軸部材12の各々が直交異方性材料からなる場合について説明したが、構造部材11または軸部材12のいずれか一方だけが直交異方性材料である場合についても、同様な構成をもった結合構造13を採用することができる。
【0057】
なお、以上説明した結合構造13においては、熱膨張補償部材17の軸芯方向の熱膨張係数が、熱膨張補償部材17の軸芯方向に一致する方向における構造部材11の熱膨張係数に一致させるようにすることが望ましい。
【0058】
また、図には示していないが、熱膨張補償部材17の端面と構造部材11の矩形状開口部14内側面との間に、クサビ状の部材を配置することによって、更に結合構造13の結合状態を堅固にすることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも嵌合部分において矩形状開口部を有する構造部材と、少なくとも嵌合部分において矩形状断面を有する軸部材からなり、当該軸部材の矩形状断面部分が当該構造部材の矩形状開口部に挿入、嵌合される結合構造であって、
当該軸部材の嵌合部分には少なくとも1の穿孔部が設けられており、
当該穿孔部には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の結合構造であって、
少なくとも前記構造部材が直交異方性材料からなり、
当該異方性材料の熱膨張係数が当該異方性材料の弾性主軸の方向によって異なった特性値を示すものである
ことを特徴とする結合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の結合構造であって、
前記構造部材が平板状の2次元的広がりを有する部材であり、
当該構造部材に設けられた矩形状開口部の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X1が配向され、矩形状開口部の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y1が配向され、当該構造部材の厚さ方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項4】
請求項3に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分に設けられた穿孔部の軸芯と、前記熱膨張補償部材の軸芯は、前記構造部材の弾性主軸X1または弾性主軸Y1に平行に配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項5】
請求項4に記載の結合構造であって、
前記構造部材の弾性主軸X1または弾性主軸Y1に平行に配置された少なくとも1の穿孔部の各々は、前記軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中に前記熱膨張補償部材が挿入、配置されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項6】
請求項3に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分には複数の穿孔部が設けられており、
当該複数の穿孔部の各々には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の一部の穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該構造部材の弾性主軸X1に平行に配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の残りの穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該構造部材の弾性主軸Y1に平行に配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項7】
請求項6に記載の結合構造であって、
前記構造部材の弾性主軸X1に平行に配置された穿孔部は、前記軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置されており、
当該構造部材の弾性主軸Y1に平行に配置された穿孔部は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置され
ていることを特徴とする結合構造。
【請求項8】
請求項1に記載の結合構造であって、
少なくとも前記軸部材が直交異方性材料からなり、
当該異方性材料の熱膨張係数が当該異方性材料の弾性主軸の方向によって異なった特性値を示すものである
ことを特徴とする結合構造。
【請求項9】
請求項8に記載の結合構造であって、
前記構造部材が平板状の2次元的広がりを有する部材であり、
前記軸部材の矩形状断面の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X2が配向され、矩形状断面の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y2が配向され、当該軸部材の長手方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項10】
請求項9に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分に設けられた穿孔部の軸芯と、前記熱膨張補償部材の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸X2または弾性主軸Y2に平行に配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項11】
請求項10に記載の結合構造であって、
前記軸部材の弾性主軸X2 または弾性主軸Y2に平行に配置された少なくとも1の穿孔部の各々は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中に前記熱膨張補償部材が挿入、配置されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項12】
請求項9に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分には複数の穿孔部が設けられており、
当該複数の穿孔部の各々には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の一部の穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸X2に平行に配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の他の穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸Y2に平行に配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項13】
請求項12に記載の結合構造であって、
前記軸部材の弾性主軸X2に平行に配置された穿孔部は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置されており、
当該軸部材の弾性主軸Y2に平行に配置された穿孔部は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置され
ていることを特徴とする結合構造。
【請求項14】
請求項1に記載の結合構造であって、
前記構造部材と前記軸部材が直交異方性材料からなり、
当該異方性材料の熱膨張係数が当該異方性材料の弾性主軸の方向によって異なった特性値を示すものである
ことを特徴とする結合構造。
【請求項15】
請求項14に記載の結合構造であって、
前記構造部材が平板状の2次元的広がりを有する部材であり、
当該構造部材に設けられた矩形状開口部の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X1が配向され、矩形状開口部の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y1が配向され、当該構造部材の厚さ方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向され、
前記軸部材の矩形状断面の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸X2が配向され、矩形状断面の他の1組の対向する2辺と平行な方向に異方性材料の弾性主軸Y2が配向され、当該軸部材の長手方向に異方性材料の弾性主軸Z1が配向されており、
当該構造部材の弾性主軸X1, Y1と当該軸部材の弾性主軸X2, Y2の方向がそれぞれ一致するように嵌合されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項16】
請求項15に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分に設けられた穿孔部の軸芯と、前記熱膨張補償部材の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸X2または弾性主軸Y2に平行に配置されていることを特徴とする結合構造。
【請求項17】
請求項16に記載の結合構造であって、
前記軸部材の弾性主軸X2または弾性主軸Y2に平行に配置された少なくとも1の穿孔部の各々は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中に前記熱膨張補償部材が挿入、配置されている
ことを特徴とする結合構造。
【請求項18】
請求項15に記載の結合構造であって、
前記軸部材の嵌合部分には複数の穿孔部が設けられており、
当該複数の穿孔部の各々には少なくとも1の熱膨張補償部材が挿入、配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の一部の穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された当該熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸X2に平行に配置され、
当該軸部材の嵌合部分に設けられた複数の穿孔部の内の他の穿孔部の軸芯と、この穿孔部に挿入、配置された当該熱膨張補償部材の各々の軸芯は、当該軸部材の弾性主軸Y2に平行に配置され
ていることを特徴とする結合構造。
【請求項19】
請求項18に記載の結合構造であって、
前記軸部材の弾性主軸X2に平行に配置された穿孔部は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置されており、
当該軸部材の弾性主軸Y2に平行に配置された穿孔部は、当該軸部材の矩形状断面における一組の対向する辺から各々掘り込まれた一対の穿孔部をそれぞれ構成し、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の深さは、穿孔部の軸芯方向における当該軸部材の幅寸法の1/2になっており、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の軸芯は互いに一致せず、
当該一対の穿孔部の各々の穿孔部の中には少なくとも1の前記熱膨張補償部材が挿入、配置され
ていることを特徴とする結合構造。
【請求項20】
請求項1乃至19に記載の結合構造であって、
前記熱膨張補償部材の軸芯方向の熱膨張係数が、熱膨張補償部材の軸芯方向に一致する方向における当該構造部材の熱膨張係数に一致させるようにしたことを特徴とする結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−230137(P2010−230137A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80800(P2009−80800)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390021717)株式会社アクロス (11)
【Fターム(参考)】