説明

樋管の止水構造

【課題】底樋などの樋管の周囲における有害な水みちの発生を防止する。
【解決手段】堤体に埋設される樋管12の外周につば状の止水板13を設け、この止水板13の表面に、水分を吸収して膨張する材料19を設ける。また、堤体に埋設される樋管12の周囲に、水分を吸収して膨張する材料を混合した土を配する。水分を吸収して膨張する材料は、ベントナイトであることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋管の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
樋管として、ため池からの取水を目的として、このため池の堤体を水平方向に貫通して設置される管路構造物が知られている。この管路構造物は、底樋と呼ばれている。また、樋管として、河川からの取水を目的として、堤防を貫通した状態で敷設されるものもある。このような樋管として、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
ため池からの取水用の底樋として、コンクリート構造物にて構成されたものが知られている。このような底樋の例を、図4および図5を参照して説明する。
図4において、51はため池を示し、52はその堤体、53は、ためられている水である。54は底樋で、堤体52の底部を水平方向に貫通した状態で敷設されている。55は、底樋54への通水を制御するためのゲートである。堤体52には、底樋54に連通する斜樋56が設置されている。底樋54は、上記のようにコンクリート構造物にて構成されている。57は、そのコンクリート継ぎ目である。
【0004】
底樋54と、堤体52においてこの底樋54を埋設している土砂との間に隙間が生じると、この隙間は、水みちとなって、ため池51の内部の水53が堤体の外部へ漏れ出すことになる。このような漏れ出しを防止するために、堤体52の内部における底樋54の長さ方向に沿った適当位置には、コンクリート製の止水壁58が、底樋54の外面に密着した状態で設けられている。
【0005】
図5は、底樋54および止水壁58の詳細構造を示す。底樋54は、管本体を構成するヒューム管59をコンクリートブロック60の内部に埋設したもので、コンクリートブロック60には、底樋54の長さ方向の鉄筋61が配されている。継ぎ目57の部分においては、底樋54の長さ方向に隣り合うコンクリートブロック60、60どうしの隙間に目地材62が充填されている。そして、一方のコンクリートブロック60から目地材62を貫通して底樋54の長さ方向に伸びるダウエルバー63が設けられている。このダウエルバー63の先端部は、他方のコンクリートブロック60に形成された凹部64の中に入り込んでいる。65は止水板である。止水壁58は、底樋54のコンクリートブロック60の外面に密着している。
【特許文献1】特開平7−331631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
底樋54が敷設されている部分の地盤が軟弱な場合には、底樋54を敷設した後に堤体を構築するための盛土を施すと、それに伴って沈下が生じる。このとき、図4に示すように堤体52は一般に底樋54の軸心方向に台形状の断面をなし、よって底樋54への上乗せ荷重が不均一であるため、底樋54の沈下量も不均一すなわち不同沈下となる。特に、腹付け盛土や嵩上げ盛土などを行う場合には、新たに上載荷重が作用するため、非常に大きな局部沈下を生じる場合がある。
【0007】
ところが、図5に示すように、コンクリートブロック60、60どうしの継ぎ目57では、ダウエルバー63がせん断抵抗力を受けながら、ダウエルバー63と凹部64との口径差によって段差や隙間を生じるだけの構造であるため、大きな変位には対応できない。すなわち、底樋54は、全体として剛な構造体であり、不同沈下に十分に対応できない。これにより、沈下した周囲の地盤と底樋54との間に隙間が生じて、水漏れの原因となる水みちを形成するおそれがある。また、不同沈下に十分に対応できないと、地盤における亀裂発生の起点になるとともに、地盤内に亀裂が進展して水みちの形成を助長するおそれがある。
【0008】
これに対処するために、沈下が予測される場合には地盤改良を行って地盤変位を拘束することが一般に行われているが、十分ではない。また止水壁58もコンクリート製であるため、周辺地盤との重量差や剛性差があり、これによって地盤への追従性が損なわれるおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、底樋などの樋管の周囲における有害な水みちの発生を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため本発明は、堤体に埋設される樋管の外周につば状の止水板を設け、この止水板の表面に、水分を吸収して膨張する材料を設けたものである。
また本発明は、堤体に埋設される樋管の周囲に、水分を吸収して膨張する材料を混合した土または水分を吸収して膨張する材料を含むシートを配したものである。
【0011】
本発明によれば、水分を吸収して膨張する材料がベントナイトであることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水分を吸収して膨張する材料によって、樋管の外側において空間が形成されることを防止でき、これにより樋管の周囲の止水性を向上させて水みちの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1において、12は樋管としての水平方向の底樋であり、鋳鉄管や樹脂管などより形成されている。底樋12の長さ方向に沿った複数位置の外周には、つば状の止水板13が設けられている。図示のように、止水板13は周方向に沿って複数に分割された構成であり、その分割部14がボルト・ナットなどの締結手段15によって締結されることで、底樋12の敷設現場において環状に形成して、底樋12に固定可能である。止水板13は、金属材料などによって形成されており、底樋12の外周に沿って配置される筒状部16と、筒状部16から径方向の外向きに配置されるつば状部17とが一体化された構成である。筒状部16は、底樋12の外面との間に板状のエラスティックフィラー18を挟み込んだ状態で、底樋12の外周に固定されている。エラスティックフィラー18としては、ゴム板などを用いることができる。
【0014】
止水板13におけるつば状部17の表面には、水分を吸収して膨張する材料としてのベントナイトシート19が貼り付けられている。このベントナイトシート19は、図1において実線で示すようにつば状部17の片面だけに貼り付けても良いし、図1において実線および仮想線で示すようにつば状部17の両面に貼り付けることもできる。
【0015】
ベントナイトシート19としては、布などのシート状の材料にベントナイトを貼り付けたものや、ベントナイトを加工してシート状に形成したものなどを好適に用いることができる。シートの形状やその強度は、用途に応じたものを適宜選択することができる。
【0016】
水分を吸収して膨張する材料としては、ベントナイトに代えて、これと同様の性質を有する粘度鉱物や人工高分子材料などを用いることもできる。その材料は、粉末であっても、これを加工した粒子状のものであってもかまわない。
【0017】
底樋12の敷設に際しては、たとえば図2に示すようにため池の堤体11を開削したうえで、底樋12を設置し、その後に土砂の埋め戻しを行う。20は、その開削部である。この場合に、たとえば止水板13のつば状部17の径方向の寸法を大きくとれば、単に土砂を埋め戻すだけで、十分な止水効果を発揮することができる。すなわち、ベントナイトシート19は、水分の吸収に伴って膨張するため、底樋12の外面とこの樋管を埋設する土砂とに密着し、これにより止水性を向上させて水みちの発生を防止することができる
さらに、たとえば図2に示すように止水板13を包み込むように止水壁23を設置すれば、いっそう確実な止水効果を期待することができる。あるいは、止水壁23による止水効果の分だけ止水板13のつば状部17を小さく形成することもできる。止水壁23として、特に粘性土を用いれば、止水板13に密着し、かつ止水板13以外の部分では底樋12の外周面に密着して、格段の止水効果を期待することができる。粘性土22は、水を通しにくく、しかも止水板13との密着性が良好なものを用いることが必要であるとともに、埋め戻し後は堤体11の一部を構築するものであるために、締まりの良いものすなわち軟弱でないものであることが必要である。この条件を満たせば、適宜のものを利用できる。開削部20において、止水壁23以外の部分は、普通の土砂24を埋め戻す。
【0018】
さらに、上記の構成であると、従来のようなコンクリート製のブロックを用いるものではなく、底樋12を構成する管体の外周に止水板13を取り付けただけであるので、底樋12を柔構造とすることができる。このため、地盤への追従性を高めることができて、それにもとづく水みち形成防止効果を得ることもできる。また、従来のコンクリート構造物に比べて大幅に施工性を向上させることができるとともに、軟弱地盤上のため池の改修や耐震性の向上に適用することができる。
【0019】
止水板13は、エラスティックフィラー18を介して底樋12に取り付けられているため、底樋12を構成する管体に対し隙間なく密着することができるうえに、周辺地盤への底樋12の追従性を妨げないようにすることができる。
【0020】
本発明によれば、底樋12の周囲の土が、水分を吸収して膨張する材料を混合したものであることが好適である。この場合は図3に示すように施工することができる。すなわち、まず、図3(a)に示すように、底樋12を敷設するために形成した開削部20に台基礎26を設けて、その上に底樋12を設置する。台基礎26は、土にベントナイトを混合した材料27を用いて形成する。次に、同図(b)に示すように、底樋12の管底部への材料27の充填・突き固めを行う。次に、同図(c)に示すように、管底側部への材料27の投入・突き固めを行う。次に、同図(d)に示すように、材料27よりも外側には普通の土砂24を投入して、撒き出し・転圧を行う。また、同図(e)に示すように180°撒き出し・転圧を行う。最後に、同図(f)に示すように管頂部を材料27で覆うようにして、撒き出し・転圧を行う。
【0021】
このようにすれば、土にベントナイトを混合した材料27が底樋12の周囲に配されることになり、この材料27は、水分の吸収にともなって膨張するため底樋12の外面に密着し、これにより止水性を向上させて水みちの発生を防止することができる。なお、ベントナイトは膨張すると強度が低下するため、低膨張の混合比で土とベントナイトとを均一に混合することが好ましい。その混合比は、様々な条件にもとづいて決定することができる。
【0022】
このように底樋12の周囲に土にベントナイトを混合した材料27を用いたものは、底樋12における上述の止水壁23や止水板13を設けた箇所以外の部分に適用することが好適である。なお、場合によっては、止水壁23と止水板13との少なくともいずれかを省略して、土にベントナイトを混合した材料27だけで止水を図ることも可能である。
【0023】
なお、底樋12の周囲に土にベントナイトを混合した材料27を用いることに代えて、底樋12の周囲に、上記と同様の、ベントナイトシートなどの、水分を吸収して膨張する材料を含有するシートを埋設することによっても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の樋管の止水構造を示す図である。
【図2】図1における底樋の埋め戻し構造を示す図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の樋管の止水構造を示す図である。
【図4】従来の底樋が敷設された堤体の断面構造を示す図である。
【図5】図4における底樋の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
11 堤体
12 底樋
13 止水板
19 ベントナイトシート
27 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体に埋設される樋管の外周につば状の止水板を設け、この止水板の表面に、水分を吸収して膨張する材料を設けたことを特徴とする樋管の止水構造。
【請求項2】
堤体に埋設される樋管の周囲に、水分を吸収して膨張する材料を混合した土または水分を吸収して膨張する材料を含むシートを配したことを特徴とする樋管の止水構造。
【請求項3】
水分を吸収して膨張する材料がベントナイトであることを特徴とする請求項1または2記載の樋管の止水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−231531(P2007−231531A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51405(P2006−51405)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100113859
【弁理士】
【氏名又は名称】板垣 孝夫
【Fターム(参考)】