説明

標的依存性の環状化及びトポロジー的結合が可能なポリヌクレオチド

本発明は、標的依存性環状化及び標的核酸分子とのトポロジー的結合能力を有するアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、標的結合配列及び調節エレメント(標的結合が存在しないときは環状化を妨げる)を含む。ポリヌクレオチドは触媒ドメインを含むことができ、前記は、ポリヌクレオチドの標的結合配列が標的と結合しているときは、触媒による環状化を進行させる。トポロジー的に結合したポリヌクレオチドは、標的分子の検出、又は標的の転写若しくは翻訳の阻害に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然に存在するアンチセンスRNA、触媒RNA(リボザイム)、RNAのランダムライブラリーからアプタマーを選択する技術(SELEX)及びRNA干渉(RNAi)(Sullenger & Gilboa, 2002)の発見以来、RNAをベースとする技術は研究及びバイオテクノロジーでますます重要になってきている。相補性配列との有効なハイブリダイゼーションに頼るいずれのRNA薬剤(RNA agent)は、どの標的部位にin vivoで近づくことができるかを同定することである。結果として、有効なRNA薬剤の合理的な設計には時間を要し非効率的である。
過去25年間の間、改変アンチセンスオリゴヌクレオチド(Lichtenstein & Nellen, 1998;Stein & Krieg, 1998;Crooke, 2001)及び人工リボヌクレアーゼ(リボザイム及びデオキシリボザイム(Rossi, 1999;Opalinska & Gewirtz, 2002;Scherer & Rossi, 2003)を含む)を用いて、メッセンジャーRNA又はウイルスRNAの標的化を介してアンチセンス仲介遺伝子サイレンシング(ASGS)について様々な程度の成功が得られてきた。最近、RNAi利用に対する実際的なアプローチとして、小型の干渉性RNA(siRNA)の使用が出現してきた(Tuschl, 2002;Zamore, 2002;Paddison & Hannon, 2003;Shi, 2003)。最適化されたアンチセンス化合物及び切断性リボザイム(又はDNAザイム)はsiRNAと同様に効果的に機能するが、より高濃度のASGS薬剤が要求される(Al-Anouti & Ananvoranich, 2002;Braasch & Corey, 2002;Brantl, 2002a;Opalinska & Gewirtz, 2002;Grunweller et al., 2003;Miyagishi et al., 2003;Vickers et al., 2003)。天然に存在する多数のアンチセンスRNAが、原核細胞(Brantl, 2002b;Brantl & Wagner, 2002;Wagner et al., 2002)及び真核細胞(Vanhee-Brossollet & Vaquero, 1998;Kumar & Carmichael, 1998;Yelin et al., 2003)の両方で同定されており、ASGSにおいて高度に特異的且つ有効であることが示されている。ヒトの細胞における遺伝子発現のアンチセンス調節は、一般的な調節メカニズムであると示唆されている(Carmichel, 2003;Yelin et al., 2003)。さらにまた、アンチセンスRNAと標的RNAとの間で形成される複合体に関する最近の結果によって、ASGS及びRNAiの間(両者は二本鎖RNAを含む)の機械的結合について直接的な証拠が提供された(Di Serio et al., 2001;Martinez et al., 2002;Tijsterman et al., 2002;Holen et al., 2003)。人工的に設計したアンチセンスRNAもまた、原核細胞及び真核細胞の両方で標的遺伝子(小型干渉RNAにとって不得手な標的である遺伝子を含む)の発現をダウンレギュレートするための強力なツールであることが証明されている(Lafarge-Frayssinet et al., 1997;Upegui-Gonzalez et al., 1998;Varga et al., 1999;Chadwick & Lever, 2000;Terryn & Rouze, 2000;Ji et al., 2001;Wang et al., 2001;De Backer et al., 2001, 2002, 2003;Ji et al., 2002;Martinez et al., 2002;Yin & Ji, 2002;McCafferey et al., 2003)。
【0002】
siRNAはそれらの標的の切断を介して翻訳を阻害するが、アンチセンス薬剤の作用メカニズムは完全には理解されていない。アンチセンス薬剤による翻訳阻害は、常に標的mRNAのレベル低下の結果であるとは限らないことを示す証拠が存在する(Probst and Skutella, 1996)。実際、多くの有効なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的のRNaseH仲介切断によるのではなく、翻訳機構の立体的遮断を介して(調節タンパク質結合部位における立体的遮断を含む)又は標的RNAにおける構造的変化を誘導することによって、機能する(Stein, 2000;Toulme, 2001;Braasch and Corey, 2002)。これらの非切断性の作用様式は、mRNA標的の排除又は切断を所望しない用途、例えば、選択的スプライシングの調節(又は再指令)(Volloch et al., 1991a, b;Taylor et al., 1999;Zeng et al., 1999;Gong et al., 2000;Sierakowska et al., 2000;Mercatante et al., 2001)又は遺伝子発現の細胞内画像化(Paillasson et al., 1997;Pan et al., 1998;Politz et al., 1998;Tavitian et al., 1998;Chartrand et al., 2000;Molenaar et al., 2001;Pederson, 2001;Dirks et al., 2003)においてアンチセンス技術を使用することを可能にする。したがって、ASGS法は、RNAi技術に対する実行可能な補足的アプローチを提供する(Lavery and King, 2003;Scherer and Rossi, 2003)。
【0003】
より強力で選択性が高くより強靭(robust)で信頼性のあるアンチセンス薬剤の必要性は広く認識されており、そのような認識によって、より高い結合親和性及び選択性を有する新規な薬剤の開発とともに、配列ライブラリーを用いてそのような薬剤を選択するためのスキームの開発がもたらされた(Sohail & Southern, 2000)。標的部位に対するアンチセンス配列の親和性(Walton et al., 1999)及びハイブリダイゼーションの動態(Patzel & Sczakiel, 2000)は、アンチセンス薬剤の有効性におけるもっとも重要な因子である。最近、いくつかの新規な核酸誘導体(N3'-P5'-及びモルホリノホスホロジアミデート、2'-O-メトキシエチル-及び2'-フルオロアラビノ核酸を含む)は、標的の切断をもたらすことなく標的RNAと強力に結合することが示されている(Toulme, 2001;Braasch & Corey, 2002;Heasman, 2002;Kurreck, 2003)。しかしながら、これら核酸分子のいずれも人工的なものであり、したがって、効率的な翻訳阻害に必要な高い細胞内濃度を提供する非常に優れた方法である転写によって発現させることができない。DNA及びRNAは、化学的に改変されたそれらの誘導体に比してin vivoでの安定性が低い場合もあるが、それらは両方とも、適切なPCR鋳型、プラスミド及びウイルスベクターからin situで効率的且つ系統的に(systemically)発現させることができる。RNAは、DNAを超えるある種の利点を有する−それは、RNAが細胞内でDNAよりも効率的に発現させることができること(例えばU6又はH1 pol IIIプロモーターを用いて)(Noonberg et al., 1994)、またRNA-RNA二重鎖がDNA-RNAハイブリッドよりも安定であることである(Beckmann & Daniel, 1974;Roberts & Crothers, 1992;Lesnik & Freier, 1995;Landgraf et al., 1996;Wu et al., 2002)。アンチセンスRNAが標的転写物の相補性配列とアニールするとき、それらはRNAの安定性又は翻訳に直接影響を及ぼし、又は標的転写物を核内にとどまらせ、又はRNA干渉及び/又はPKR-インターフェロン反応を刺激することができる(Kumar & Carmichael, 1998)。RNA-RNA二重鎖は、RNaseHの基質ではないが、ダイサー、RNaseL及びRNasePリボヌクレアーゼによって分解され得る(アンチセンス配列に対していくらかの制約があるが)(Kumar & Carmichael, 1998;Terryn & Rouze, 2000;Di Serio et al., 2001;Martinez et al., 2002;Tijsterman et al., 2002;Holen et al., 2003;Pulukkunat et al., 2003;Raj & Liu 2003)。かつては、細胞内でのRNAの安定性についての懸念のためRNAを遺伝子阻害剤として用いるという考え方はありえないものであったが、今やRNAをベースとする薬剤に見込まれる有効性の明瞭な証拠が存在する(Sullenger & Gilboa, 2002)。
【0004】
環状化することができる核酸の開発は、核酸をベースとする治療薬及びハイブリダイゼーションプローブ診断薬の分野において目覚しい進歩を遂げた。核酸二重鎖のらせん状の性質のために環状化プローブは標的鎖の周囲に巻きつき、2つのポリヌクレオチドとトポロジカルに結合する(図1、下)。環状化することができるオリゴヌクレオチドは、単純なハイブリダイゼーションによって結合した核酸に比して、トポロジカルに結合した核酸複合体の優れた安定性のために、直線状のオリゴヌクレオチドよりも遺伝子発現阻害においてより高い有効性を提供すると期待される。Gryaznov & Lloyd(1995)は、環状化し得る核酸の末端の非ヌクレオチド反応基の間の化学的反応を用いて、標的の周囲で環状化することができる、いわゆるDNA“クランプ”の設計を他に先駆けて行った。プローブの末端が標的DNA又はRNA配列上の隣接部位とのハイブリダイゼーションによって集められたときに、DNAリガーゼによる処理で環状化する“南京錠”プローブ(C-プローブ又はクリップ(CLiP)としても知られている)(図1A)は、Landegrenと共同研究者らによって導入された(Nilsson et al., 1994;Landgren et al., 1996;Lizardi et al., 1998;Escude et al., 1999;Zhang et al., 1998;Thomas et al., 1999;Antson et al., 2000;Nilsson et al., 2000;Baner et al., 2001;Christian et al., 2001;Hafner et al, 2001;Myer & Day, 2001;Nilsson et al., 2001;Qi et al., 2001;Kuhn et al., 2002;Hardenbol et al., 2003)。南京錠プローブは、点変異識別能力とローリングサークル増幅(RCA)による随意(optional)増幅とを併用する。上述のDNAクランプは、末端が結合される不自然なインターヌクレオチド結合のため、RCAによって増幅させることができないことを注記すべきである。
【0005】
南京錠プローブの特異性及び有効性は、別々の鋳型上の基質配列を連結するための酵素であるDNAリガーゼの忠実度及び有効性に依存する。しかしながら、DNAリガーゼは、ミスマッチを有する配列を常に識別するとはかぎらない。末端ミスマッチ及び内部ミスマッチの両者は、ハイブリダイゼーションに際して(特にGCに富む領域で)しばしば生じ、DNAリガーゼによって結合され得る(Goffin et al., 1987;Wu & Wallace, 1989a, b;Luo et al., 1996;Pritchard & Southern, 1997;James et al., 1998)。T4DNAリガーゼによってもっとも効率的に連結することができる配列のin vitro選択実験(ランダム化ヌクレオチドを含む基質配列を用いて)では、選択された配列の多くは連結接合部でさえも1又は2以上のミスマッチを有することが示された(Harada & Orgel, 1993;James et al., 1998;Vlassov et al., 2004)。しかしながら、DNAリガーゼの正確さは、ある種の条件下(例えば、耐熱性DNAリガーゼを用いた高温、高濃度塩化ナトリウム及び低濃度リガーゼ)で強化できることは特記すべきである(Luo et al., 1996)。個々の配列について連結条件を最適化させ、in vitroでのSNP検出を可能にすることができるが(Luo et al., 1996)、これらの連結条件が他の配列又はオリゴヌクレオチドライブラリーで普遍的に最適であるとはかぎらない。また、RNA標的上で整列したDNA終端の連結は極めて低い効率で起こり(Nilsson et al., 2000;Nilsson et al., 2001)、したがって、それらを翻訳阻害剤として使用するには限界がある。
【0006】
南京錠プローブは、典型的には長さが70−100ヌクレオチド(nt)であり(Antson et al., 2000)、特異性及び有効性は材料の純度に絶対的に左右されるため、調製用HPLC及びゲル電気泳動による面倒な精製を必要とする。不完全な合成オリゴヌクレオチド配列の割合は、不完全なヌクレオチドの脱保護、脱保護の間の脱プリン化とそれに続く鎖の分離、合成の中途での終結、及び脱リン酸化の結果として、長さが増すとともに増加する(Kwiatkowski et al., 1996)。末端ヌクレオチド又は5'-ホスフェートを失った南京錠プローブは、特異的に連結することができない。これらのより短い又は脱リン酸化配列も標的配列に対して競合し、したがって完全な連結物の収量を低下させるであろう。あるいは、南京錠プローブは、非対称PCRによって調製することができる(Antson et al., 2000;Myer & Day, 2001)。この方法の欠点は、DNAポリメラーゼは、合成される鎖の3'-末端にヌクレオチドを付加するか(それらがエキソヌクレアーゼ-マイナスである場合)、又はヌクレオチドを除去する(それらがエキソヌクレアーゼ-プラスである場合)傾向を有するということである(Antson et al., 2000)。いずれの事例においても、完全な末端が連結要件であるため、南京錠プローブの環状化は阻害される。エキソヌクレアーゼ-マイナスのDNAポリメラーゼを用いるPCRプロトコルを慎重に最適化した後の連結可能な南京錠プローブについて、報告された最大収量はわずかに60−70%である(Antson et al., 2000)。
【0007】
“Lasso”(ラッソ(商標))は、標的分子の周囲で環状化して、前記標的分子とトポロジー的な結合(topological linkage)を形成することができる、別の種類の核酸分子である(図1B)。アンチセンス配列エレメントの他に、そのような核酸分子は、一次転写物からそれら自身を切り出し(全ての不要な配列を除去し、環状化に必要な正確な末端を作り出す)、ポリヌクレオチド標的とのハイブリダイゼーションに続いてそれらの末端を自己連結してトポロジー的に結合した複合体を作ることができるリボザイム部分を含んでいる(Johnston et al., 1998, 2003)。クランプ及び南京錠プローブ(図1A)とは対照的に、Lassoの末端は標的とハイブリダイズせず(図1B)、Lassoの環状化は、外部のタンパク質リガーゼも反応性の非ヌクレオチド基を有する末端も必要としない。天然のRNA配列を用いることができ、末端の連結のために通常用いられるリボザイムは、特有なステム及びループといった構造上の特徴を有し、RNAの切断及び連結の両方で有効なヘアピンリボザイム(HPR)である。HPRのドメイン間ループ1−3のいずれかは(図2)、触媒的に活性を有する構造の目立った摂動をもたらすことなく、追加の配列の導入に用いることができる(Feldstein & Bruening, 1993;Komatsu et al., 1993, 1995;Berzal-Herranz & Burke, 1997;Kisich et al., 1999;Fedor, 2000)。リボザイムコアの近傍にアンチセンス配列を付加することによって、Lassoは標的核酸とハイブリダイズすることができ、2つのポリヌクレオチドの絡み合いを生じる。続いて前記末端は、HPRの天然の構造内へリフォールディングして自己連結を行ない、共有結合の強度をもつポリヌクレオチド間結合を作ることができる。したがって、前記リボザイムは、標的を切断するためではなく、ハイブリダイズした阻害剤を標的とトポロジー的に結合させるために用いられる。RNAの環状化もまた、Lassoをエキソヌクレアーゼ耐性にする。
【0008】
前述のRNA Lasso ATR1(図3A)は、マウスの腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)mRNAのコード領域中の部位と結合するように設計された(Johnston et al., 1998, 2003)。T7RNAポリメラーゼを用いDNA鋳型の転写によるATR-1の合成によって、内部HPRによる転写物(UP)の自発的な自己プロセッシングがもたらされ、結果として半プロセッシングされた(5'-HP, 3'-HP)直線状RNA種及び完全にプロセッシングされた(L)直線状RNA種が得られた。さらに、共有結合により閉鎖状Lの環状型である(図4)別の種Cも、標的の存在下又は非存在下で、L型の末端を連結するHPR の能力によって生成される。L型及びC型は動的平衡状態で自発的に相互変換される。ATR1はその標的RNA と迅速にハイブリダイズし(図3B)、8Mの尿素を含む変性PAGEによって検出できるほど充分に安定で強力な複合体を形成する(図3B−C)。温度の上昇に際して、直線状Lassoとの複合体は環状Lassoとの複合体よりも低い温度で分離し、環状Lasso複合体は直線状複合体よりも安定であることが示される(図3Cのレーン3及び4)。
【0009】
RNA Lassoは、いくつかのモデル系における遺伝子発現の阻害で有効であった(Johnston et al., 2000, 2002;Seyhan et al., 2001)。特に、LassoとTNFアルファ標的との間の結合の安定性強化は、通常のアンチセンスRNAよりも良好なタンパク質合成阻害を提供できることが示された。20ヌクレオチドのTNF標的配列をルシフェラーゼレポター遺伝子と融合させ、T7RNAポリメラーゼプロモーターを上流に結合させてカセットT7-TNF-Luc(図5A)を作製した。前記を続いてpGL3ベクター(Promega)に挿入した。このカセットの転写によってT7-TNF-Luc標的RNAが生成され、これを続いてATR1 Lasso又はAT(ATR1と同一であるが自己環状化リボザイムドメインを欠くアンチセンス分子)のどちらかと予備ハイブリダイズさせた。前記複合体をウサギ網状赤血球溶解物(Promega)による翻訳の鋳型として用いた。ルシフェラーゼ活性アッセイ(6つの別個の実験)によって、最適ATR1/標的分子比が30:1の場合、ATR1は翻訳の98%のノックダウンを提供したが、ATは実質的に無効であることが示された(図5B−C)。
【0010】
培養細胞におけるLassoのin vivo有効性を判定するために、陽イオン脂質と複合体を形成したRNA Lassoをマクロファージ様細胞株に送達し、リポ多糖類(LPS)による細胞の刺激の後のTNFα分泌を阻害するそれらの能力についてテストした。TNFαmRNA上の種々の部位(5'-UTR及びコード配列の両方を含む)を標的とする種々のLasso構築物(ATR1及び他の4種を含む)をテストした。Lasso構築物(M101)(TNFαmRNAに対する相補性配列が完全に欠落している)を陰性コントロールとして用いた。前記Lassoは、LPS刺激後少なくとも24時間明白な阻害作用を示した(非特異的毒性を惹起しないレベル(10μg)で90%までTNF分泌を低下させた)(IC50は46nM)。同じレベルのM101では分泌の阻害は観察されなかった。ALR229のマルチマーがセムリキ森林ウイルス(SFV)をベースにした細胞質複製ウイルスベクターにより送達する別の実験では、約95%阻害が観察された(Johnston et al., 1998)。
全てのLassoが有効であると判明したわけではなく、これはおそらく標的mRNA部位へ接近し、さらに標的の周囲で環状化する能力がことなっているためであろう。
【0011】
一般的には、アンチセンス系の遺伝子阻害剤の有効性は標的部位の位置及び配列の両方に左右されるが、この有効性はRNA標的部位の接近しやすさと常に相関性を有するとはかぎらない(Far & Sczakiel, 2003)。アンチセンス薬剤の使用は、もっとも感受性の高い標的配列を選択する簡便で信頼性のある方法を欠くことによって複雑化している。ほとんどの事例で、遺伝子発現の効果的なノックダウンを可能にする部位を見つけるために、潜在的な標的部位を個々にスクリーニングしなければならない。しかし接近可能部位を特定するための“試行錯誤”的な方法は骨の折れる高価な方法である。結果として、優れた部位を選択する試みはコンピュータによる予測及びin vitroの順列組合せによるアプローチにより実施されてきた(Stull et al., 1996;Bruce & Lima, 1997;Lima et al., 1997;matveeva et al., 1997;Milner et al., 1997;Ho et al., 1996, 1998;Patzel & Sczakiel, 2000;Lloyd et al., 2001;Sohail & Southern, 2000;Wrzesinski et al., 2000;Allawi et al., 2001;Pan et al., 2001;Scherr et al., 2001;Sczakiel & Far, 2002;Yang et al., 2003)。しかしながら、前記の方法により接近可能であると特定された配列と生細胞中で実際に標的部位として活性を有する配列との間にほとんど相関性が存在しないことがしばしばある(Laptev et al., 1994;Yu et al., 1998;Sczakiel & Far, 2002)。この不一致は、無細胞媒体中のミクロ環境に対し生細胞中のミクロ環境におけるRNAの異なる折り畳み、又は細胞内でのRNA結合タンパク質とRNAとの相互作用の結果としての異なる折り畳みを反映しているのかもしれない。in vivoで接近可能な領域を予測するこれらの方法には貧弱な工程記録しか存在しないので、ランダム化したアンチセンス配列ライブラリーを用いて標的配列選択を実施する相当な努力がなされた(Lieber & Strauss, 1995;Kramer et al., 1997;Kruger et al., 2000;Kawasaki & Taira, 2002)。したがって、核酸をベースとする標的照準物質のための標的部位を選択するより優れた方法が希求される。
さらにまた、標的とのトポロジー的な結合の形成においてより高い有効性を示し、さらに標的結合における配列特異性を制御する改善されたLassoが希求される。
【発明の開示】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、例えば遺伝子標的の画像化、検出及び阻害のために用いることができる従来のヌクレオチド結合物質を超える利点を有する、アロステリックに調節されるポリヌクレオチド分子(“Lasso”とも称される)の新規なクラスを提供する。これらの分子は、標的依存自己環状化を経て、核酸標的とトポロジー的に結合できるようになる。前述のLassoは、自発的に直線状又は環状構造のどちらかを取ることができる、非アロステリックに調節可能なヘアピンリボザイム(HPR)触媒ドメインを含む。本発明のアロステリック調節は、標的結合アンチセンス配列を“センサー”配列に変換することによって達成される。前記調節配列は、標的結合が存在しないときには、触媒ドメインによる触媒を遮断するか、又は隙間のある(open)構造中にLassoを閉じ込め、したがって標的とのハイブリダイゼーション前にLassoの自己環状化を防ぐように機能する。センサー-アンチセンス配列は、調節性エレメントに対するよりも相補性標的配列(触媒“エフェクター”として機能する)に対してより高い親和性を有するように設計される。センサー-アンチセンス配列と標的-エフェクター配列との結合に際して、Lassoの2つのヌクレオチド間での共有結合(連結)、強力な非共有結合(例えばH-結合)、スタッキング相互作用及び金属イオンを必要とする配位結合(又は前記タイプ及び相互作用の2つ以上の組合せ)の形成を介して立体構造の再構成が生じ、標的の周囲でLassoの環状化を可能にする。
【0013】
アロステリック調節のこのスキームは、ハンマーヘッドリボザイム(Porta & Lizaridi, 1995;George et al., 1998;Burke et al., 2002)によって触媒される切断反応について以前に記載された“TRAP”様メカニズムと類似する。しかしながら、そのようなスキームが、ヘアピンリボザイムの切断及び結合活性を調節することは以前には記載されなかった。さらにまた、本発明は、標的の周囲でポリヌクレオチドを環状化させるためにアロステリックに調節可能なリボザイムを使用することにおいても特有である。
理想的な調節性エレメントは、Lassoの環状化及び標的との非特異的ハイブリダイゼーションの両方を阻害するために充分に競合性でなければならないが、Lassoのアンチセンスとセンス標的配列との間の完全にマッチした二重鎖の形成を妨害するほど競合性であってはいけない。アロステリック調節の他に、そのような競合は潜在的なLassoのオフターゲット結合を顕著に低下させるであろう。換言すれば、前記調節配列は、“置き換えハイブリダイゼーション(displacement hybridization)”を介して標的認識及び結合の配列特異性を増強させた“ストリンジェンシーエレメント”として機能することができた(Roberts & Crothers, 1991;Hertel et al., 1998;Bonnnet et al., 1999;Ohmichi & Kool, 2000)。自己相補性エレメントを含むオリゴヌクレオチドプローブの単一ヌクレオチドミスマッチ又は欠失に対する高い選択性に関する最近の報告は、単一ヌクレオチド変異(SNP)の識別でさえも可能であると提唱している(Li et al., 2002)。
【0014】
Lasso構築物中のアンチセンス配列は、利用可能な実験データを基にして合理的に設計するか、又は以下でさらに詳細に述べるようにランダム化Lassoライブラリーを用いる適切に改変したSELEX技術によって選択することができる。そのようなライブラリーは完全にランダムなアンチセンスライブラリー又は指向性アンチセンスライブラリーのどちらかを含むことができる。選択されたアンチセンス配列は調節エレメントを合理的に設計するために用いることができる。さらにまた、Lassoの他の部分(触媒配列及び非触媒配列、又は場合によってセンサー配列とアンチセンス配列の両方を同時に含む)は、アロステリック調節及び環状化活性を選択/最適化するために少なくとも部分的にランダム化することができる。以下で考察するように、我々は、モデル標的(muTNFαmRNA)に対してアロステリックに調節されるされたLassoを調製し、それらの標的との特異的結合及び標的依存性環状化の両方を提示した。環状化は、核酸標的との非常に強い結合とともにエキソヌクレアーゼに対する耐性の強化を提供した。
環状化しさらにトポロジー的に結合したLassoは、ローリングサークル増幅(RCA)及び/又は本明細書に記載するRT-PCRによって、たとえ微量であっても選択的に増幅させることができる。そのような増幅は、特異的RNA標的の検出及び最適なLasso構築物(これらの標的と結合し標的の周囲で効率的に環状化する)の選択の両方のために用いることができる。そのような強力で特異的な結合は標的分子の検出及び/又は機能の阻害のために用いることができる。以下で極めて詳細に記述するように、そのような選択スキームを開発しその実現性を示した。
標的の周囲で効率的に環状化することができるLassoを選択するために、ランダム化Lassoライブラリーを作製し、mRNA標的に暴露した。得られた強力な(安定的な)Lasso-標的複合体を単離し、環状化Lasso分子を図6に示すようにRT-PCRで選択的に増幅した。得られたPCR生成物を、図7に示すようにさらにもう一ラウンドの標的結合及び選択のためのRNALasso転写の鋳型として用いた。数ラウンドの後で、DNA鋳型をクローニングし配列を決定した。選択したRNALasso配列を再合成し、in vitroで標的と強固に、かつ特異的に結合するそれらの能力、及びin vitro抽出物及び培養細胞の両方で翻訳を阻害するそれらの能力についてテストした。最適な配列特異性のために選択した配列の合理的な最適化の後で(必要な場合)、Lasso構築物を、例えば標的実証及び遺伝子機能分析、抗ウイルス剤、抗菌剤及び遺伝子療法薬剤のために用いることができる。
【0015】
最適化されたLassoはまたハイブリダイゼーションプローブとして(例えばノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション及びマイクロアレイのために)用いることができ、遺伝子科学、生体防御、法医学、微生物学、ウイルス学及び腫瘍学の分野で有用である。トポロジー的に結合したLasso-標的複合体は極めて増強された結合強度を提供し、一方、アロステリック調節をもたらすセンサーエレメントはまた通常のcRNAプローブと比較してより高い配列特異性を提供する(なぜならば、前記はアンチセンス配列とミスマッチをもつ標的との結合に対して効果的に競合するが、マッチする標的によって効率的に競合されるからである)。単独逆転写又はPCR補強逆転写による環状化プローブのローリングサークル増幅(RCA)は非常に鋭敏な検出を提供する。トポロジー的に結合したプローブは、高いストリンジェンシーで環状又は固定標的との複合体として残存することができる。洗浄及びRCA工程の両方が、標的特異的環状化を経たプローブのみに検出されることを許容するので、シグナル対ノイズ比は顕著に強化される。使用することができるまた別の検出方法には、例えば放射能、蛍光、ハプテン若しくは酵素標識、又は結合対(binding pair)、例えばビオチン-アビジン若しくはストレプトアビジンが含まれ、前記は、化学的若しくは酵素的合成時に、又は合成後改変によって直接的又は間接的にプローブに取り込ませることができる。上述の選択アプローチは、接近可能な標的部位との迅速で特異的なハイブリダイゼーション、標的依存性環状化、及び標的とのトポロジー的な結合能力を有するプローブを迅速に提供することができた。
【0016】
ある特徴では、本発明はアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを提供する。前記ポリヌクレオチドは、標的核酸分子と特異的に結合し、前記標的の周囲で環状化しトポロジー的な結合を形成することができる。
ある実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、標的結合配列(標的の配列と少なくとも部分的に相補的であり、さらに前記と結合することができる)及び触媒ドメイン(触媒活性を有し、この活性は本ポリヌクレオチドの標的結合配列と標的との結合が存在しないときには発生が阻害又は妨げられる)を含む。前記標的結合配列と標的との結合が存在するとき、前記触媒性ドメインの触媒活性は、標的周囲の前記ポリヌクレオチドの環状化を触媒し、前記ポリヌクレオチドと標的とのトポロジー的な結合が形成される。いくつかの実施態様では、前記触媒活性はリガーゼ活性であり、前記触媒ドメインは、前記アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドの2つのヌクレオチド残基間の連結を触媒する。ある実施態様では、前記リガーゼ活性は前記ポリヌクレオチドの5'及び3'末端間の連結を触媒する。別の実施態様では、前記リガーゼ活性は、前記ポリヌクレオチドの5'末端と前記ポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドの2'ヒドロキシル基間の連結を触媒し、それによって“ラリアット”形の構造を前記ポリヌクレオチドの周囲に形成する。ラリアット構造は、検出することができる標識を場合によって結合させることができる自由な未連結末端を有する。
【0017】
本発明のポリヌクレオチドの触媒性ドメインはRNA若しくはDNA残基又は両方、又はこれらヌクレオチドの類似体及び/又は改変体を含むことができる。いくつかの実施態様では、前記触媒ドメインは、RNA残基又はその類似体及び/又は改変体(例えばリボザイムの触媒ドメイン、例えばヘアピンリボザイムの触媒ドメインを含むか、前記から成るか、又は本質的に前記から成る)を含むか、それらから成るか、又は本質的にそれらから成る。いくつかの実施態様では、前記触媒ドメインは、DNA残基、その類似体及び/又は改変体(例えばデオキシリボザイムの触媒ドメイン)を含むか、それらから成るか、又は本質的にそれらから成る。
いくつかの実施態様では、前記触媒ドメインの触媒活性は、標的結合配列と少なくとも部分的に相補的であり、さらに前記の少なくとも一部分と結合する調節配列によって阻害され、前記触媒活性を前記ポリヌクレオチドと前記標的との結合に依存させる。ポリヌクレオチドの環状化及び前記ポリヌクレオチドと標的とのトポロジー的な結合は標的結合が存在しないとき妨げられ、前記ポリヌクレオチドと標的との結合に際して許容される。いくつかの実施態様では、結合された調節エレメントが存在するときのポリヌクレオチドの構造は、標的の周囲でポリヌクレオチドが環状化するために要求される触媒ドメインと基質配列の接近を妨げる。
【0018】
また別の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、標的配列と少なくとも部分的に相補的で、さらに規格遵守結合することができる標的結合配列を含み、さらに、環状化は、ポリヌクレオチドの配列間の非共有結合による相互作用を介して進行し、標的結合ドメインを囲むループ又は環状ドメインを創出する。この実施態様では、触媒ドメインは要求されない。アロステリック調節は、標的結合時のポリヌクレオチド内の構造変化によって達成される。例えば、アロステリック調節は、標的結合が存在しない時に標的結合配列を部分的に遮断するまた別の折り畳みによって達成されるであろう。ポリヌクレオチドと標的との結合に際して、また別の相互作用が崩壊し、塩基対形成を成立させ、標的周囲でポリヌクレオチドを環状化させてループを形成し、前記ループと標的がトポロジー的に結合する(図9B)。
核酸標的は、RNA若しくはDNA、又は両方、又はこれらヌクレオチドの類似体及び/又は改変体を含むことができる。いくつかの実施態様では、標的は、RNA残基又はその類似体及び/又は改変体(例えばmRNA)を含むか、それらから成るか、又は本質的にそれらから成る。いくつかの実施態様では、前記標的は、DNA残基又はその類似体及び/又は改変体(例えばcDNA、ゲノムDNA)を含むか、それらから成るか、又は本質的にそれらから成る。ある実施態様では、前記標的は一本鎖である。別の実施態様では、前記標的は二本鎖であり、標的到達は、標的と本発明のポリヌクレオチドとの間のトリプレックス又はD-ループ複合体の形成による。
【0019】
本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、化学的合成によって、又は発現ベクターからin vitro若しくはin vivo転写することによって調製することができる。ある実施態様では、前記ポリヌクレオチドは、RNAポリメラーゼ(例えばファージT7、SP6又はT3)を用いてin vitroで転写される。別の実施態様では、ポリヌクレオチドは宿主細胞の核内で、例えばRNAポリメラーゼII又はIIIによって転写される。本発明はまた、本明細書に記載する方法のいずれかによって調製されるアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを提供する。
合成又はin vitro転写したアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、細胞標的にリポゾーム複合体で直接送達されるか、又はそれらはプラスミド又はウイルスベクターを用いてin situで発現させることができる。polIIRNAポリメラーゼによる(適切な発現ベクターを用いる)核内でのアロステリックに調節可能なポリヌクレオチド構築物の発現の場合には、前記ポリヌクレオチドの3'末端のプロセッシングの抑制によって、ポリヌクレオチドの細胞質へのポリ(A)-仲介、強化輸送を提供することができた。polII仲介ポリアデニル化はまた更なるヌクレアーゼ耐性を提供し、一定の構造を有するmRNA標的部位への結合を容易にすることができるヘリカーゼ活性をもつタンパク質の誘引を促進する(Kawasaki et al., 2002)。
また別の特徴では、本発明は、核酸標的分子の周囲で環状化し、さらに前記分子とトポロジー的に結合する、上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを含む複合体を提供する。
【0020】
別の特徴では、本発明は、標的核酸の周囲でポリヌクレオチドを環状化させ、前記標的とトポロジー的な結合を形成する方法を提供する。そのような方法は、標的核酸分子を上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドと接触させ(ここで前記ポリヌクレオチドの標的結合配列を介する前記ポリヌクレオチドと標的との結合は、ポリヌクレオチドの触媒活性の阻害を緩和するか、又は環状化に必要な配列を解放する)、それによって標的周囲でのポリヌクレオチドの環状化を介してトポロジー的な結合を発生させることを含む。本発明はまた、標的核酸の転写及び/又は翻訳の効率を低下させる方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載した方法にしたがって、上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを環状化させ、標的とトポロジー的に結合させることを含む。
また別の特徴では、本発明は、標的核酸分子の有無を検出する方法を提供する。そのような方法は、標的を含むと考えられる組成物を上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドと接触させ、ポリヌクレオチドの環状化及び標的との複合体形成を検出することを含み、ここで環状化及び複合体形成があれば、それらは、前記組成物中に標的が存在することを示す。ある実施態様では、前記標的は固形担体(例えばハイブリダイゼーションメンブレン)に結合される。別の実施態様では、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドが固形担体に結合される。場合によって、複数のポリヌクレオチドをアレイとして提供することができる。いくつかの実施態様では、結合ポリヌクレオチド及びトポロジー的に結合したポリペプチドの検出は、本明細書に記載及び例示するように、結合ポリヌクレオチドの、例えばローリングサークル増幅(RCA)による増幅によって実施される。他の適切な増幅方法は本技術分野で周知であり、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT-PCR又はイソサーマル増幅による方法である。前記イソサーマル系の方法には、置き換え増幅(displacement amplification)(Spargo et al., 1996)、転写仲介増幅(Pasternack et al., 1997)、セルフサステイン配列複製(3SR)(Mueller et al., 1997)、核酸配列依拠増幅(nucleic acid sequence based amplification, NASBA)(Heim et al., 1998)、三方向結合構造形成によるアッセイ(Wharam et al., 2001)、分枝増幅(ramification amplification)(Zhang et al., 2001)、ループ仲介増幅(LAMP)(Endo et al., 2004;Nagamine et al., 2002)が含まれる。
【0021】
いくつかの実施態様では、検出は検出可能な標識により実施される。前記標識は、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチド、標的又はその両方に取り込ませることができる。適切な検出可能標識の例は本技術分野で周知であり、以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):放射能標識、蛍光標識、ハプテン標識若しくは酵素標識、又は緊密に結合することができるリガンドのメンバーを構成する標識、例えばビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗体-抗原など。他の実施態様では、検出はシグナル増幅の方法により実施される。前記方法には例えば、連続侵入シグナル増幅反応(serial invasive signal amplification reaction)(Hall et al., 2000;Olson et al., 2004)、分枝鎖DNA(b-DNA)術(Wiber, 1997)、チラミドシグナル増幅(TSAD)及び触媒支援報知堆積(catalyzed assisted reported deposition, CARD)(Rapp et al., 1995)が含まれる。
別の特徴では、本発明は、上述の複数のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを含むライブラリーを提供し、さらにそのようなライブラリーを調製する方法が本明細書に記載され、例示される。種々の実施態様で、本発明のライブラリーは、標的結合配列、触媒ドメイン及び調節配列の少なくとも1つに少なくとも1つの部分的にランダム化された配列を含む。
本発明はまた、標的核酸分子の周囲で環状化し、さらに前記分子とトポロジー的に結合することができるポリヌクレオチドを選択する方法を提供する。そのような方法は、標的を上述のライブラリーに由来する複数のポリヌクレオチドと接触させ、前記標的とトポロジー的に結合したポリヌクレオチドを増幅することを含む。場合によって、マルチラウンドの増幅と選択を実施して、選択ポリヌクレオチドの標的との結合の特異性を高めることができる。
別の特徴では、本発明はキットを提供する。ある実施態様では、前記キットは、上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを含む。別の実施態様では、前記キットは、複数の上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを含むライブラリーを含む。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、現存している核酸結合物質よりも有利な、新規のアロステリックに調節されるポリヌクレオチド分子を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、転写や翻訳の効率を減少させるため、核酸標的の検出や画像化のため、標的の検証のため、遺伝子の機能解析のため、又は抗菌薬(例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤)として、又は遺伝子治療のため、に使用することができる。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションのプローブ(例えば、ノーザン法又はサザンブロット法、in situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ)としても使うことができ、ゲノミクス、生体防御、法医学、微生物学、ウイルス学、腫瘍学の分野に有用性がある。本発明のポリヌクレオチドは、標的の核酸分子の配列に結合できる標的結合配列と、本発明のポリヌクレオチドが標的分子に結合していないと阻害される環状化する能力の両方を含む。標的結合配列が標的に結合すると、構造再構成が生じ、標的核酸分子の周囲のポリヌクレオチドの環状化が可能となる。本明細書において、“環状化”という語は、環状ドメインを作る共有結合性相互作用と非共有結合性相互作用、の両方を含む。
【0023】
一実施態様において、“環状化”は、標的結合配列を取り囲む“環状”ドメインを作り出す、ポリヌクレオチド内の非共有結合性相互作用を含む(図9B)。この環状化は、標的結合配列の一部を含む別の相互作用によって、結合する標的が欠如すると、妨げられる。標的が結合すると、この別の相互作用は破壊され、標的の周辺の環状化を可能にする再構成を誘起する。
他の実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、環状化を誘導する能力を持つ触媒ドメインを含む。この環状化は、ポリヌクレオチドと標的分子の結合の欠如によって阻害される。標的結合配列が標的に結合すると、ポリヌクレオチドの立体構造の変化により、触媒ドメインが標的の周囲のポリヌクレオチドの“環状化”を生じさせる結果になり、触媒作用を可能にする。(図1B、C)
以前に説明したLassoは、自発的に直線状か環状のどちらかを選ぶことができる、非アロステリックに調節されるヘアピン型リボザイム(HPR)ドメインを含む。(PCT 出願 No. WO 99/09045; オーストラリア特許No. AU756301)反対に、本発明のポリヌクレオチドはアロステリックに調節される。本発明において、Lassoのトポロジー的な標的連結効果及び標的配列特異性は、アロステリックな調節を用いてLasso環状化を標的依存性にすることによって、高められる。
【0024】
“センサー”配列と、合成オリゴヌクレオチド又は標的配列のどちらかにより供給される外部のエフェクター配列との間の競合に基づくリボザイムのアロステリックな調節がこれまでに報告されている(Porta & Lizardi, 1995; George et al., 1998; Robertson & Ellington, 2000; Soukup & Breaker, 2000; Warashina et al., 2000; Kazakov, 2001; Burke et al., 2002; Komatsu et al., 2002; Wang et al., 2002; Silverman, 2003)。エフェクターの非存在下でリボザイムの正常な機能を阻害する相互作用を生じさせるため、センサー配列は、リボザイム上の又はリボザイム付近の配列と部分的に相補的であるように設計されている。センサー配列は、機能的に重要なリボザイム配列よりも相補的なエフェクター配列に対し、より高い親和性を持つように設計されている。センサーがエフェクターに結合すると、リボザイムの触媒ドメインがアンマスキングされるので、ヌクレアーゼかリガーゼのどちらか一方として又は両者として活性化する。広範な合理的設計を行わない場合でさえ、エフェクター活性化-ハンマーヘッドリボザイム反応において250倍を超える速度増大が、これまでに観察されている(Burke et al., 2002; Silverman, 2003)。活性化の程度の限界は、折り畳まれたコアを有するセンサー-エフェクターの二重鎖とセンサー-リボザイム複合体との相対的な安定性の割合に比例しているようである。合理的設計又はin vitro選択(SELEX)を介する進化的な最適化を利用することにより、この割合をより一層最適化することが可能な筈である(Burke et al., 2002)。
【0025】
[一般的な技術]
本発明の実施は、特に示さない限り、本技術の範囲内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学の従来技術を用いるであろう。そのような方法は、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”vol. 1-3, third edition (Sambrook et al), 2001)、“Oligonucleotide Synthesis”(M. J.Gait, ed., 1984)、“Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.)、“Current Protocols in Molecular Biology”F. M. Ausubel et al., eds., 1987)、“PCR Cloning Protocols”(Yuan and Janes, eds., 2002, Humana Press)のような文献に充分に説明されている。
【0026】
[本発明のポリヌクレオチド]
本明細書において“Lasso”と称されるポリヌクレオチドを含む本発明のポリヌクレオチドは、標的核酸分子に特異的に結合し、前記標的の周囲で環状化する。環状化は標的配列へのポリヌクレオチドの結合に依存する。本発明のポリヌクレオチドは、標的結合配列と前記標的結合配列を取り囲む環状化ドメインを作り出す手段の両者を含む。ある実施態様において、環状化の手段は核酸触媒ドメインによる作用を含む。前記触媒ドメインは、標的結合配列の標的への結合がない場合、環状化を引き起こすことができない。ポリヌクレオチドが標的に結合すると、環状化が進行できる。前記触媒ドメインの触媒活性が標的の周囲にポリヌクレオチドを環状化するのに役に立ち、ポリヌクレオチドと標的とのトポロジー的な結合が形成される。他の実施態様において、“環状化”の手段は標的の周囲に環状ドメインを作る非共有結合性相互作用の形成を含み、ポリヌクレオチドの標的への“トポロジー的な結合”を形成する。
【0027】
本明細書における“ポリヌクレオチド”の語は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又はデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドの類似物又は改変型を含む、任意の長さ及び任意の三次元構造の一本鎖又は複数鎖(例えば、一本鎖、二本鎖、三重らせん等)のヌクレオチドの多量体型を指し、改変されたヌクレオチドもしくは塩基又はそれらの類似物を含む。ポリヌクレオチドが使用状況下で所望される機能性を保持する限り、改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似物のどんなタイプも使ってよく、ヌクレアーゼ抵抗性を増強した改変(例えば、デオキシ,2'-O-Me, ホスホロチオエート等)を含む。検出や捕捉の目的のために標識を取り込ませてもよく、例えば、放射能標識、非放射能標識又はアンカー、例えばビオチンを取り込ませてもよい。ポリヌクレオチドという語は、ペプチド核酸(PNA)も含む。ポリヌクレオチドは天然に存在するものでも天然に存在しないものでもよい。本明細書において用語“ポリヌクレオチド”及び“核酸”及び“オリゴヌクレオチド”は、互換的に用いられる。本発明のポリヌクレオチドは、RNA、DNA、又はその両者、及び/又はそれらの改変型及び/又はそれらの類似物を含んでよい。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。一つ又はそれ以上のホスホジエステル結合が、別の結合基によって置き換えられてもよい。このような代替的な結合基は、リン酸を、P(O)S(“チオエート”)、P(S)S(“ジチオエート”)、(O)NR2(“アミデート”)、P(O)R 、P(O)OR'、CO、又はCH2(“ホルムアセタール”)によって置き換える態様を含むが、これらに限られない。ここで、各R又は R'は、独立に、H、又は場合によりエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルジル(araldyl)を含む置換若しくは未置換のアルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは、鎖状もしくは環状であってもよく、又は鎖状部分と環状部分の組合せを含んでもよい。本明細書において、用語“ポリヌクレオチド”と“核酸”及び“オリゴヌクレオチド”は、互換的に用いられる。
【0028】
本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、標的結合配列を含み、また触媒ドメインを含んでもよい。本明細書において“標的結合配列”又は“アンチセンス配列”は、標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的であり、標的核酸配列へ結合能力がある配列を指す。ある実施態様において、標的結合配列の長さは約10塩基対〜約30塩基対であり、しばしば約20塩基対である。標的結合配列は標的配列と完全に相補的でもよく、また結合が配列特異的であり標的結合が存在しない場合に環状化を阻害する別の相互作用を破壊するのに充分に強固な結合である限り、結合配列と標的の間に一つかそれ以上のミスマッチがあってもよい。標的結合配列は、標的分子の配列に少なくとも“実質上相補的”な配列を一般的に含み、これは通常の塩基対結合を介してそれらの間にハイブリダイゼーションが可能となる、充分に相補的な配列を意味する。実質上相補的な配列は、完全に相補的であってもよく、又は1以上のミスマッチを有してもよい。標的結合配列と標的のどちらか一方又は両方が、DNA、RNA、又はその両方、及び/又はそれらの類似物やそれらの改変型、及び/又は改変されたインターヌクレオチド結合を含んでよい。
【0029】
本明細書において“触媒ドメイン”は、例えばヌクレオチド間のライゲーション又は核酸配列の切断とそれに続くライゲーションという反応を触媒することができる核酸配列を指す。一実施態様において前記触媒ドメインは、本発明のポリヌクレオチド分子の5'末端と3'末端の間のライゲーション反応を触媒して環状化し、前記ポリヌクレオチドを標的へトポロジー的に連結することができる。そのような触媒ドメインの例は、図2に示したようなヘアピン型リボザイムの触媒ドメインである。他の実施態様において、前記触媒ドメインは、ヌクレオチド内部の2'ヒドロキシル基と本発明のポリヌクレオチドの5'末端との間のライゲーション反応を触媒し、ポリヌクレオチドが標的の周囲で環状化し標的にトポロジー的に連結するとき、“ラリアット”構造を形成させることができる。(核酸が2'-5'リガーゼ活性を触媒する例として以下を参照されたい、Prior et al. (2004) Nucleic Acids Res. 32(3): 1075-82; Flynn-Charlebois et al. (2003) J.Am. Chem. Soc. 125(18): 5346-50; Flynn-Charlebois et al. (2003) J. Am. Chem. Soc. 125(9): 2444-54)触媒ドメインは、触媒活性が標的周辺のポリヌクレオチドの環状化及びそこへのトポロジー的な結合を促進するために充分である限り、DNA(例えばデオキシリボザイムの触媒ドメイン)、RNA(例えばリボザイムの触媒ドメイン)、又はDNAとRNAの両方、及び/又はそれらの類似物やそれらの改変型、及び/又は改変されたインターヌクレオチド結合を含んでいてもよく、これらからなっていてもよく、又は本質的にこれらからなってもよい(RNA/DNAのキメラの触媒ドメインの例として以下を参照されたい、Perrault et al. (1990) Nature 344 (6266):565-7; Taylor et al. (1992) Nucleic Acids Res. 29(17): 4559-65; Shimayama et al. (1992) Nucleic Aids Symp. Ser. 27: 17-18; Chowrira et al. (1993) J. Biol. Chem. 68(26): 19458-62; Kong et al. (2002) Biochem Biophys Res Comm. 292(4): 1111-5)。本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、一般に、触媒的に完全に活性な触媒ドメインの形成に必要なヌクレオチド配列の全てを含む。しかしながら,ある実施態様において、触媒ドメインの一部分は標的の配列によって供給される。本発明のポリヌクレオチドが触媒ドメインを含む実施態様において、そのようなドメインは、標的への標的結合配列の結合が無い場合、標的の周囲にポリヌクレオチドのトポロジー的な結合を誘導できない。
【0030】
本明細書において、“標的”、“標的配列”、又は“標的核酸”は対象の配列を含んでいるポリヌクレオチドである。標的は、DNA、RNA、又はその両方、及び/又はそれらの類似物又はそれらの改変型、及び/又は改変されたインターヌクレオチド結合を含んでよい。ある実施態様において、標的は、mRNA、ゲノムDNA、cDNA、cRNA、ウイルスRNA、リボソームRNA、非コードRNA、ウイルスのRNA−DNA複製中間体、又はRNA−タンパク質複合体である。本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、標的核酸の構造に関係なく、本明細書で説明する種々のメカニズムの1又は2以上によって、標的にトポロジー的に連結されるようになる。標的核酸は、鎖状でも、環状でもよく、又は鎖状部分と環状部分の両方を含んでもよく、又は標的核酸への本発明のポリヌクレオチドのトポロジー的な結合を可能にする他のどんな形状をとってもよい。
【0031】
本明細書において“トポロジー的な結合”は、本発明の環状化したポリヌクレオチドを標的核酸分子に絡み合わせることを指し(図1C参照)、“リンケージ数(linking number)”は主として、対形成(pairing)相互作用の長さ、従って二つの分子が絡み合ったらせん回転の数によって決定される。トポロジー的な結合は、標的結合配列と標的との間の結合を、ヘリカーゼ、リボソーム又は修飾酵素によって促進される解離に対して抵抗性にするようにしばしば作用し、次には、改善された翻訳又は転写調節特性、もしくは標的検出の向上を生じさせる。本明細書の“トポロジー的に結合した(topologically linked)”ポリヌクレオチドは、標的分子の周囲で環状化したポリヌクレオチドを指す。標的核酸の周囲で環状化したポリヌクレオチドを外すことは一般的に困難である。環状分子においてヌクレオチド鎖内分解的切断事象が起こらない限り、二つの分子間の水素結合は同時に破壊されなければならず、標的は環からすり抜けなければならず、これは、とりわけmRNA標的が顕著な二次構造を有している場合、速度論的に非常に遅いと予想される。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドのトポロジー的な結合は、アロステリックに調節でき、環状化は標的結合に依存する。環状化は標的結合が無い場合、阻害される。一実施態様において環状化は、少なくとも標的結合配列の一部に結合する“調節”(本明細書において“阻害性”又は“阻害因子”とも称される)核酸によって阻害され、その結果、本発明のポリヌクレオチドが標的に結合していないとき、本発明のポリヌクレオチドの環状化が抑制される。一実施態様において前記調節配列は、本アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドの配列であり、前記ポリヌクレオチドの内部又は片方もしくは両方の端のどちらかにある。他の実施態様において前記調節配列は、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドとは異なる核酸にある。一実施態様において、調節核酸配列は、標的結合配列と少なくとも部分的に相補的な配列、しばしば実質的に相補的な配列、ときどきは完全に相補的な配列を含む。調節エレメントは、ミスマッチを含んでもよいが、それでも目的とする標的への結合の高い正確さを維持する。調節エレメントと標的結合配列との結合は、標的結合配列の標的核酸配列への結合が存在しない場合は、環状化を阻害するために充分に強いことだけが必要である。調節配列と標的結合配列との間の結合は、前記調節配列と前記標的結合配列が結合する標的の配列との間の競合を通して、ポリヌクレオチドの標的への結合の特異性を高める。環状化が触媒活性に依存する実施態様において、標的への標的結合配列の結合により調節配列が置換され、これにより触媒ドメインによる触媒作用が可能になり、標的の周囲にポリヌクレオチドが環状化する結果となる。
【0033】
本発明は、標的分子の周囲に環状化し標的分子にトポロジー的に連結した、上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを含む複合体も提供する。しばしば、ホルムアミドは、前記複合体形成のための反応混合物に含まれる。様々な実施態様において、約5、10、15又は20%ホルムアミドが用いられる。ホルムアミドは、リボザイムのin vitro有効性とin vivo有効性との間により強い相関関係をもたらすことが報告されてきた(Crisell et al., 1993; Kisich et al., 1997; Sullivan et al., 2002)。このような複合体の存在は、標的核酸からの転写及び/又は翻訳の効率を減少する場合がある。
【0034】
[標的分子へのポリヌクレオチドLassoのトポロジー的な結合の方法]
本発明は、上記に説明したようなアロステリックに調節可能なポリヌクレオチド分子を標的分子の周囲に環状化させてトポロジー的な結合を形成する方法を提供する。本発明の方法は、標的結合配列を有するポリヌクレオチドを含む組成物を標的分子と接触させることを含み、前記方法において、前記標的への前記標的結合配列の結合は環状化及び前記標的のトポロジー的な結合が進行するのを可能にする。
ある実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは標的結合配列と触媒作用の能力を有する触媒ドメインとを含み、前記標的結合配列と標的との結合は触媒作用を進行させ、ポリヌクレオチドの環状化及びポリヌクレオチドと標的とのトポロジー的な結合をもたらす。標的との結合が存在しないとき、触媒作用は生じず、環状化及び標的とのトポロジー的な結合は妨げられるか又は顕著に低下する。触媒作用の阻害は、上述のように、しばしば調節配列によって達成される。ある実施態様では、前記触媒活性はリガーゼ活性であり、前記ポリヌクレオチドの5'末端及び3'末端との間に連結を引き起こして、標的の周囲で環状構造を形成する。別の実施態様では、前記触媒活性はリガーゼ活性であり、5'末端と内部ヌクレオチド残基の2'ヒドロキシル基との間で連結を引き起こしてラリアット形状の構造を形成し、その環状部分は標的と絡み合っている。2'−5'連結は、前記ポリヌクレオチドの自由な3'末端における潜在的な標識を許容し、そのような標識は、トポロジー的に結合したポリヌクレオチドと標的の検出に用いることができる。本明細書で用いられる“連結”とは、1つのヌクレオチドのヒドロキシル基と別のヌクレオチドのリン酸基との間での(例えば、1つのヌクレオチドの3'-OH又は2'-OHと別のヌクレオチドの5'-リン酸基との間での)ホスホジエステル結合の形成を指し、従って、連結によってつながれたヌクレオチド間には介在するヌクレオチドが存在しない。
【0035】
別の実施態様では、ポリヌクレオチドは標的結合配列を含み、前記標的結合配列と標的との結合は、前記ポリヌクレオチド内の構造的再編成を介して環状化を進行させて標的結合配列を囲む環状ドメインを作り出し、標的の周囲でポリヌクレオチドを環状化し、トポロジー的な結合を形成する。
本発明はまた、標的からの転写及び/又は翻訳の効率を低下させる方法又はスプライシングの阻害若しくは再指令の方法を提供し、そのような方法は、上述のようにアロステリックに調節されたポリヌクレオチドを標的とトポロジー的に結合することを含む。転写及び/又は翻訳は、部分的に低下させるか又は完全に排除することができる。転写又は翻訳の低下は本技術分野で周知の方法によって検出することができ、転写についてはノザンブロット若しくはサザンブロットが挙げられ、又は翻訳についてはウェスタンブロット若しくはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)が挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施態様では、転写又は翻訳は、標的とトポロジー的に結合した本発明のポリヌクレオチドを含む複合体の形成に起因し、標的部位の接近し易さ、ポリヌクレオチドの結合効率及び調節効率その他の影響などの特定要素に依存して、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80若しくは90%低下するか又は完全に排除される。
原則として、アロステリックに調節されたポリヌクレオチド-標的複合体は、次の3つの別々のプロセスによって標的RNAの能力を奪うことができる:標的RNAの機能的配列の物理的な遮断、標的RNAの機能的に活性な構造の破壊、及び標的RNAの分解の誘発。これらの広く定義されるプロセスの範囲内で、種々のメカニズムが可能である。これらのメカニズムには翻訳の抑止、RNAプロセッシングの妨害、選択的スプライシングの調節、又は標的の転写物の核内保持が含まれるが、それらに限定されない;そのようなメカニズムは、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドの設計、選択された標的配列、又はコンビナトリアルライブラリーからアロステリックに調節された環状化し得る有効なポリヌクレオチドを同定するために用いられる選択手法に左右される。本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、リポソーム複合体として直接的に、又はプラスミド若しくはウイルスベクターからin situで発現させることにより細胞標的まで送達することができる。
【0036】
[標的核酸分子の有無を検出する方法]
本発明は、標的核酸分子の有無を検出する方法を提供する。検出方法は、標的分子を含むことが疑われる組成物を上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドと接触させること、及び、前記標的分子にトポロジー的に結合した環状化ポリヌクレオチドを検出することを含み、ここで、環状化ポリヌクレオチドが存在すれば、組成物中に前記標的分子が存在することを示し、環状化ポリヌクレオチドが存在しないことは前記標的分子が存在しないことを示す。
ある実施態様では、標的分子は、固形担体に会合している(associated with)又は結合されている。そのような固形担体は、例えば、ハイブリダイゼーションメンブレン(例えば、ニトロセルロース又はナイロン(ドットブロット、ノーザンブロット、サザンブロット));ガラス、シリコン若しくは金の改変表面(マイクロアレイ);磁性若しくはガラスの改変ビーズ(親和性捕捉)である。
別の実施態様では、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチド分子が、固形担体に会合している又は結合されている。例えば、前記ポリヌクレオチドは、アレイに含まれてもよい。本明細書で互換的に用いられる“マイクロアレイ”及び“アレイ”は、しばしば未定の特性を有する生化学的サンプル(標的)に対して仮定的結合部位(例えばハイブリダイゼーションによる)のアレイ、好ましくは整列されたアレイを有する表面を含む。好ましい実施態様では、マイクロアレイは、基質上の規定された位置に固定された、上述のアロステリックに調節可能な別個のポリヌクレオチドの集合体を指す。アレイは、紙、ガラス、プラスチック(例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、シリコン、光ファイバー又は他の任意の固形若しくは半固形担体などの材料で作製された基質上に形成され、平らな構造(例えばガラスプレート、シリコンチップ)又は三次元的構造(例えばゲル、ピン、線維、ビーズ、粒子、マイクロタイターウェル、キャピラリー)に形作られる。アレイを形成するプローブは任意の方法によって基質に結合でき、そのような方法には次のものが含まれる:(i)フォトリソグラフィー技術を用いたin situ合成(例えば、高密度オリゴヌクレオチドアレイ)(以下を参照されたい:Fodor et al., 1991, Science 251:767-773;Pease et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5022-5026;Lockhart et al., 1996, Nature Biotechnology 14:1675;米国特許第5,578,832号、5,556,752号及び5,510,270号);(ii)ガラス、ナイロン又はニトロセルロース上への中〜低密度のスポッティング/プリンティング(例えばcDNAプローブ)(Schena et al., 1995, Science 270:467-470;DeRisi et al., 1996, Nature Genetics 14:457-460;Shalon et al., 1996 Genome Res. 6:639-645;Schena et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10539-11286);(iii)マスキングによるもの(Maskos & Southern, 1992, Nuc. Acids Res. 20:1679-1684);及び、(iv)ナイロン又はニトロセルロースのハイブリダイゼーションメンブレン上でのドットブロッティングによるもの(例えば以下を参照されたい:Sambrook et al., Eds., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Vol1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (Cold Spring Harbor, N.Y.))。ポリヌクレオチドはまた、アンカーへのハイブリダイゼーションによって、磁性ビーズの手段によって、又は液相で(例えばマイクロタイターウェル又はキャピラリー中で)基質上に非共有結合的に固定してもよい。
【0037】
トポロジー的に結合したポリヌクレオチドの検出は、本技術分野で周知な幾つかの方法のいずれかによって実施できる。そのような方法には、例えば、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチド分子及び/又は標的核酸分子のどちらかに存在する標識の検出が含まれる。検出可能な標識には、例えば、放射性同位元素(例えば、3H、35S、32P、33P、125I又は14C)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、Cy3、Cy5、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、酵素(例えば、LacZ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ)、ジゴキシゲニン、比色標識(金コロイド又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ)、及び結合対のメンバー(例えば、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗体-抗原など、この場合、結合対の一方のメンバーが標識されており、結合対の他方のメンバーとの結合によって検出される)が含まれる。上記標識のいずれの検出も定性的及び/又は定量的であろう。
トポロジー的に結合したポリヌクレオチドの検出はまた、前記結合したポリヌクレオチド分子の増幅を介して行うこともできる。本技術分野で公知のいずれの増幅方法も、検出可能な量の増幅生成物が得られるかぎりは、用いることができる。増幅には例えば、ローリングサークル増幅及び/又はポリメラーゼ連鎖反応が含まれる。本明細書で用いられる“増幅”とは、所望の核酸配列又はその相補配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。“複数のコピー”とは、少なくとも2つのコピーを意味する。“コピー”は、鋳型配列に対して必ずしも完全な相補性又は同一性をもつ必要はない。例えば、コピーは、デオキシイノシンのようなヌクレオチド類似体、意図的な配列の変更(例えばプライマーによって導入されるもの)、及び/又は増幅の間に生じる配列エラーを含んでいてもよい。“ローリングサークル増幅”は、標的とトポロジー的に結合される本発明の環状化ポリヌクレオチド分子が増幅される増幅プロセスを指す。標的とトポロジー的に結合される本発明の環状化ポリヌクレオチド分子は、標的の親和性(ハイブリダイゼーション)捕捉と、それに続くローリングサークルスキームで何度も前記環状物の周囲を移動していくポリメラーゼ(典型的には、逆転写酵素)による環状ポリヌクレオチドの長い一本鎖コピーの合成によって単離することができる。本発明のポリヌクレオチドのためのローリングサークル増幅の例は、下記の実施例13で提供される。他の適切な増幅手法は本技術分野で周知であり、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT-PCR、又はイソサーマル増幅法である。前記イソサーマル法には、置き換え増幅(Spargo et al., 1996)、転写仲介増幅(Pasternack et al., 1997)、自己保持(self-sustained)配列複製(3SR)(Mueller et al., 1997)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)(Heim et al., 1998)、三方向結合構造の形成に基づくアッセイ(Wharam et al., 2001)、分枝(ramification)増幅(Zhang et al., 2001)、ループ仲介増幅(LAMP)(Endo et al., 2004;Nagamine et al., 2002)が含まれる。
【0038】
[アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドLasso分子の調製方法]
上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、本技術分野で公知なポリヌクレオチド分子の調製方法のいずれによっても調製することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドは、合成的に調製してもよく、又は発現ベクターから発現させてもよい。
本発明のポリヌクレオチドは当業者に周知の方法を用いて合成により調製することができ、そのような方法には例えば、Narangらのホスホトリエステル法(Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90-99)、Brownらのホスホジエステル法(Brown et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:109-151)、Beaucageらのジエチルホスホルアミダイト法(Beaucage et al., 1981, Tetra. Lett. 22:1859-1862)又は米国特許第4,458,066号の固形担体法などの方法による直接化学合成が含まれる。合成方法は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又はそれらの改変体又は類似体を含むポリヌクレオチドを生成するために用いることができる。
本発明のポリヌクレオチドはまた、発現ベクターから転写により調製することができる。転写はin vitro転写であってもよく、又は適切な宿主細胞でin vivoで行ってもよい。本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドをコードする核酸は、in vitro又はin vivoでの発現に適した形態で、組換え体発現ベクター中に組み込むことができる。本明細書で用いられる“発現ベクター”は、組み込んだ対象ポリヌクレオチドの発現(例えば、複製又は転写)を容易にする適切な配列を含む核酸である。in vivo発現のために、発現ベクターは適切な宿主細胞に導入することができる。発現ベクターは、プロモーターのような転写調節エレメント(例えば、T7プロモーター)、及び/又はエンハンサー、及び/又は他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことができる。そのような配列は当業者には公知である(例えば以下を参照されたい:Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Meth. Enzymol. 185, Academic Press, Sandiego, CA;Berger & Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA;Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning‐A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, NYなど)。いくつかの実施態様では、組換え発現ベクターはプラスミド又はコスミドである。他の実施態様では、発現ベクターはウイルス又はその一部であり、ウイルス核酸中に導入された核酸の発現を許容する。例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ付随ウイルスを用いることができる。好ましいin vitro発現系としては、例えば、適切な鋳型(一本鎖DNA鋳型(直線状及び環状)、二本鎖DNA鋳型及びプラスミドベクターを含む)からT7、SP6及びT3RNAポリメラーゼを用いるランオフ転写が挙げられる。好ましいin vivo発現系には、例えば、二本鎖DNA鋳型と、PolII若しくはPolIII RNAポリメラーゼプロモーターを有するプラスミドベクターあるいはウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)とが含まれる。
【0039】
ウイルス発現ベクターは、バクテリオファージ(全てのDNA及びRNAファージを含む)(例えばコスミド)、又はバキュロウイルス及びレトロウイルスなどの真核細胞ウイルス、、アデノウイルス及びアデノ付随ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、全ての一本鎖、二本鎖及び部分的二本鎖DNAウイルス、全ての+鎖及び−鎖RNAウイルス、並びに複製欠損レトロウイルスから誘導することができる。発現ベクターの別の例は、1つの動原体及び2つのテロメアを含む酵母人工染色体(YAC)であって、YACを小さな直線状染色体として複製させることができる。多数の適切な発現系が市販されており、それらを改変して本発明のベクターを生成することができる。例示的な発現系としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:昆虫細胞(例えばSF9)での発現用のバキュロウイルス発現ベクター(例えば以下を参照されたい:O'Reilly et al., 1992, Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, Stockton Press)、哺乳類細胞用の種々の発現ベクター(例えばpCMV-Script(登録商標)Vector、pCMV-Tag1(Stratagene))、酵母用ベクター(例えばpYepSec1(Baldari et al., 1987, EMBO J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan & Herskowitz, 1982, Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz et al., 1987, Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)など)、原核細胞ベクター(例えばアラビノース調節プロモーター(Invitrogen pBADベクター)を参照されたい)、T7発現系(Novagen, Promega, Stratagene)、Trc/Tacプロモーター系(Clontech, Invitrogen, Kodak, Life Technologies, NBI Fermentas, New England BioLabs, Pharmacia Biotech, Promega)、PLプロモーター(Invitrogen pLEX及びpTrxFusベクター)、ラムダPRプロモーター(Pharmacia pRIT2Tベクター)、ファージT5プロモーター(QIAGEN)、tetAプロモーター(Biometra pASK75ベクター)など。
【0040】
本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、宿主細胞で発現させることができる。本明細書で用いられる“宿主細胞”という用語は、上述するように、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチドを生成する組換え体発現ベクターをトランスフェクションされ得るいずれの細胞又は細胞株をも含むことを意図する。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は、自然的変異、自発的変異又は意図的変異のために、本来の親細胞と(形態的又は全体的ゲノムDNA相補性において)必ずしも完全に同一である必要はない。宿主細胞には、上述の発現ベクターをin vivoでトランスフェクションした又は形質転換した細胞が含まれる。
適切な宿主細胞には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):藍藻細胞、細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞(例えば、S.セレビシエ、S.ポンベ、P.パストリス、K.ラクチス、H.ポリモルファ(例えば以下を参照されたい:Fleer, 1992, Curr. Opin. Biotech. 3(5):486-496))、真菌類細胞、植物細胞(例えばアラビドプシス)、無脊椎動物細胞(例えばSF9細胞などの昆虫細胞)、及び脊椎動物細胞(哺乳類細胞を含む)。使用することができる哺乳類細胞株の非限定的な例には、CHO細胞(Urlaub & Chasin, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220)、293細胞(Graham et al., 1977, J. Gen. Virol. 36:59)又はミエローマ細胞(例えばSP2又はNS0、以下を参照されたい:Galfre & Milstein, 1981, Meth. Enzymol. 73(B):3-46)などが含まれる。ある実施態様では、発現系には昆虫宿主細胞で発現されるバキュロウイルスベクターが含まれる。
【0041】
本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドをコードする発現ベクターは、標準的な技術を用いて宿主細胞にトランスフェクションすることができる。“トランスフェクション”又は“形質転換(トランスフォーメーション)”とは、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞中に挿入することを指す。前記外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えばプラスミド)として維持されてもよく、あるいは宿主細胞ゲノム中に組み込まれてもよい。“トランスフェクションする(トランスフェクトする)”又は“トランスフェクション”という用語は、核酸を宿主細胞に導入するための一般的な技術の全てを包含することを意図する。トランスフェクション技術の例には、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラン仲介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及びマイクロインジェクションが含まれるが、これらに限定されない。宿主細胞にトランスフェクションする適切な方法は、Sambrookらの著書(Sambrook et al., 1998, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press)及び他の研究用参考書で見出すことができる。核酸はまた、in vivoで核酸を細胞に導入するのに適する次のような送達メカニズムを介して、細胞にトランスフェクションすることができる:レトロウイルスベクター(例えば以下を参照されたい:Ferry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381;Kay et al., 1992, Human Gene Therapy 3:641-647)、アデノウイルスベクター(例えば以下を参照されたい:Rosenfeld, 1992, Cell 68:143-155;Herz & Gerard, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2812-2816)、レセプター仲介DNA取り込み(例えば以下を参照されたい:Wu & Wu, 1988, J. Biol. Chem. 263:14621;Wilson et al., 1992, J. Biol. Chem. 267:963-967;米国特許第5,166,320号)、DNAの直接注入(例えば以下を参照されたい:Acsadi et al., 1991, Nature 332:815-818;Wolff et al., 1990, Science 247:1465-1468)又は粒子衝撃(微粒子銃)(例えば以下を参照されたい:Cheng et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4455-4459;Zelenin et al., 1993, FEBS Letts. 315:29-32)。
ある種のベクターは、低い頻度で宿主細胞に組み込まれる。これらの組み込み体を特定するために、いくつかの実施態様では、選択マーカー(例えば薬剤耐性)を含む遺伝子が対象核酸とともに宿主細胞に導入される。選択マーカーの例には、G418及びヒグロマイシンなどのある種の薬剤に対して耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーは、対象核酸とは別個のベクターで、又は同じベクターで導入することができる。続いて、選択マーカーを用いて細胞を選択することによって、トランスフェクションされた細胞を特定することができる。例えば、選択マーカーがネオマイシン耐性を付与する遺伝子をコードする場合、核酸を取り込んだ宿主細胞は、G418の存在下での増殖によって特定することができる。前記選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死ぬであろう。
ある実施態様では、本発明のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドは、宿主細胞の核内でRNAポリメラーゼII又はIIIにより発現されることによって調製される。
【0042】
[ライブラリー]
本発明はまた、複数の上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチド(その各々が標的結合部位を含む)を含むライブラリーを提供する。各ポリヌクレオチドはまた、前記標的結合配列と標的が結合していない場合に前記標的の周囲での前記ポリヌクレオチドの環状化を妨げる調節配列を含む。ある実施態様では、各ポリヌクレオチドは標的結合配列及び触媒ドメインを含み、前記触媒ドメインは、前記標的結合配列と標的との結合に際して前記標的の周囲で前記ポリヌクレオチドを環状化させることができる触媒活性を有する。種々の実施態様では、標的結合配列、調節配列、及び/又は触媒ドメインは少なくとも部分的にランダム化されている。
ポリヌクレオチドライブラリーの多様な調製方法は、本技術分野でよく知られている。例えば、ランダム化された配列挿入物を有するポリヌクレオチドは、合成的に(合理的に選択された配列の混合物として又は部分的若しくは完全にランダムな配列の混合物として)調製されてもよく、又は指向性(遺伝子特異的又はゲノム特異的)ライブラリーから得ることもできる。指向性ライブラリーは、ヌクレアーゼ消化、例えば、エキソヌクレアーゼIII/マングビーン(Mung bean)/BsmFI-Bbs制限(IIS型)ヌクレアーゼの組合せ(Pierce and Ruffner, 1998, Nucleic Acids Res. 26:5093-101;WO99/50457)若しくはDNase I/Mme Iの組合せ(Shirane et al., 2004, Nat. Genet. 36:190-196)を用いることによって、又はHinpI-BsaHI-AciI-HpaII-HpyCHIV-TaqaI制限エンドヌクレアーゼの混合物をMmeIヌクレアーゼと組み合わせて用いる連続消化によって(Sen et al., 2004, Nat. Genet. 36:183-189)調製することができる。指向性ライブラリーを調製するための別のアプローチには、固定化DNA標的との直接的ハイブリダイゼーション(WO00/43538;Bruckner et al., 2002, Biotechniques 33:874-882)又はDNA/RNA標的鋳型上の鋳型依存的連結(WO03/100100A1)のどちらかに基づいて選択される、セミランダム(半ランダム)オリゴヌクレオチドのPCR増幅を含む。
本発明はまた、環状化する能力を有し、且つ標的核酸分子とトポロジー的に結合することができるポリヌクレオチドを選択する方法を提供する。前記方法は、標的分子を上述のようなライブラリーに由来するアロステリックに調節可能なポリヌクレオチドと接触させること、及び、前記標的分子とトポロジー的に結合したポリヌクレオチドを増幅することを含む。
【0043】
本明細書で開示する、ランダム化されたLassoライブラリーで始める新規な選択アプローチは、接近可能な標的部位と、環状化が先行する標的とのハイブリダイゼーションに依存するようなLassoの最適な設計との同時選択を提供する。Lassoライブラリーの個々のメンバーは、次のように互いに異なっていてもよい。前記個々のメンバーは、標的の種々のセグメントに相補的なアンチセンス配列を含むことができる。前記個々のメンバーはまた、環状化部分の配列が異なっていてもよく、例えば、天然に生じる若しくは存在する例えばヘアピンリボザイムの部分的にランダム化された誘導体であってもよく、又はin vitro選択によって得られた触媒性核酸であってもよい。前記アンチセンス配列は、完全にランダムなアンチセンスライブラリー又は“指向性”の遺伝子特異的なアンチセンスライブラリーを構成することができる。Lassoの環状化は、調節エレメントの導入によって調節することができ、前記調節エレメントも場合によっては部分的にランダム化された配列を含んでいてもよい。
ある実施態様では、HPRドメインのループ1−3のいずれも(図2参照)、HPRの触媒的に活性な構造に感知できるほどの摂動を与えることなく、付加的ヌクレオチド又は改変ヌクレオチド(例えばランダム化された配列)の導入に用いることができる(Feldstein & Bruening, 1993;Komatsu et al., 1994;Berzal-Herranz & Burke, 1997;Kisich et al., 1999;Fedor, 2000)。さらにまた、ヘアピンリボザイムドメインの他の部分における触媒的に必須でない残基もまた部分的に(セミランダム)又は完全にランダム化(ランダム)して、Lasso配列ライブラリーの最初のプールを大きくすることができる。
以下は、RCA-PCRによる選択及び増幅のために、Lassoの最初のプールを作製するのに用いることができる部分的/完全にランダム化された配列の可能な組合せを示す部分的なリストである:
(規定されたアンチセンス配列)と(セミランダム内部調節配列)との組合せ;
(規定されたアンチセンス配列)と(ランダム内部調節配列)との組合せ;
(セミランダムアンチセンス配列)と(セミランダム内部調節配列)との組合せ;
(セミランダムアンチセンス配列)と(ランダム内部調節配列)との組合せ;
(ランダムアンチセンス配列)と(セミランダム内部調節配列)との組合せ;
(ランダムアンチセンス配列)と(ランダム内部調節配列)との組合せ;
(セミランダムHPR配列)と(セミランダムアンチセンス配列)と(セミ調節配列)との組合せ;
(セミランダムHPR配列)と(セミランダムアンチセンス配列)と(ランダム内部調節配列)との組合せ;
(セミランダムHPR配列)と(ランダムアンチセンス配列)と(セミランダム調節配列)との組合せ;
(セミランダムHPR配列)と(ランダムアンチセンス配列)と(ランダム調節配列)との組合せ。
上述の領域の各々でランダム化したヌクレオチドの数を増やして選択することによって、予期できないが最適な有効性をもつLassoのアロステリック調節の分子メカニズムがもたらされる。各事例において、Lassoのプールを標的とインキュベートし、標的依存的な様式で環状化し得るLassoは上述するようにRCA-RT-PCRによって選択的に増幅される(図7)。必要な場合には、選択工程の後で、選択した配列の精密な調整を実施して、選択した配列の性能をさらに最適化することができる。前記精密な調整は、必要ならば、個々の残基を改変ヌクレオチドで置換することを含んでいてもよい。これらの改変には本技術分野で公知の核酸塩基、糖残基及びインターヌクレオチド結合の誘導体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
さらにまた、触媒ドメイン内の配列(すなわち、触媒的に必要不可欠の残基)を、切断及び連結反応の効率が改善されるように、(合理的に又はSELEXを用いて)さらに改変することができる。
【0044】
[キット]
本発明はまた、上述のアロステリックに調節可能なポリヌクレオチド又はライブラリーを1又は2以上含むキットを提供する。本発明のキットは、アロステリックに調節可能なポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むライブラリー、緩衝液のような試薬、発現ベクター、宿主細胞、増殖培養液、トポロジー的に結合したポリヌクレオチド-標的複合体の検出用及び/又は増幅用の試薬、及び/又はライブラリー又はアレイの調製用試薬をそれぞれ別々に又は組み合わせて含む。
各試薬は、在庫保存に適し得る固体又は液体緩衝液として供給され、液体緩衝液は、反応媒体若しくは培地の交換又は反応媒体若しくは培地への添加にも適し得る。適切なパッケージが提供されている。本明細書で用いられる“パッケージ”は、1つの系で慣習的に用いられ、本発明の1つ若しくは2つ以上のポリヌクレオチド若しくはライブラリー、又は本発明のポリヌクレオチド、ライブラリー及び/若しくは方法と共に使用される1つ若しくは2つ以上の試薬成分を、定められた限度内で保持することができる固体マトリックス又は材料を指す。そのような材料には、ガラス及びプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート)のビン、バイアル、紙、プラスチック及びプラスチック-ホイル積層エンベロープなどが含まれる。
さらにまた、前記キットは、場合によって本発明の方法を実施するための指示を提供する教材(すなわち、プロトコル)を含む。教材は、典型的には手書き又は印刷された教材を含むが、そのようなものに限定されない。そのような指示を保存することができ、且つエンドユーザーにそれらを伝達することができる媒体のいずれもが本発明に包含される。そのような媒体には、電子保存媒体(例えば磁性ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD-ROM)などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。そのような媒体には、そのような教材を提供するインターネットのサイトのアドレスが含まれていてもよい。
【0045】
[本発明の実施態様]
本発明は、アロステリックに調節されるLassoの調製のための設計及び方法を提供する。前記Lassoは、核酸標的との迅速で配列特異的なハイブリダイゼーション能力及びLassoと標的との間に強力なトポロジー的な結合を創出する標的依存性環状化の能力を有する。自発的に直線状又は環状構造をとることができる非調節性ヘアピンリボザイム(HPR)ドメインを含むRNA Lassoは以前に報告された(Johnston et al., 1998, 2003)。Lassoの標的に対する結合及び前記標的の周囲での環状化の効率及び特異性を改善するために、本発明者らは、アロステリック調節のユニークな変形を用いて、Lassoが標的と結合した後でのみLassoを環状化させる方法を開発した。原理の証明として我々は以下の実験を実施した(実験は以下の実施例で詳細に述べる)。
先ず第一に、最初に用いられたヘアピンリボザイムのコア配列(Feldstein & Bruening(1993)に記載)を改変し、Estebanら(1997)の方法にしたがって自己プロセッシング(切断工程及び連結工程を含む)をより効率的にした。第二に、ATR1で用いられたアンチセンス以外の別のアンチセンスを選択した。この新規なアンチセンス配列は、ハンマーヘッドリボザイムを用いた実験でin vivoで接近できることが示されたTNFαmRNA部位と一致する(Sioud et al., 1992, 1994, 1996;Kisich et al., 1997)。第三に、Lassoのプロセッシング及び連結を標的依存性にするために、ハンマーヘッドリボザイムによって触媒される切断反応について以前に記載された“TRAP”様メカニズム(Porta & Lizardi, 1995;George et al., 1998;Burke et al., 2002)と類似のアロステリック調節スキームを用いた。我々が初めて本発明でヘアピンリボザイムの切断及び連結活性の調節のためにアロステリック調節を利用した。非調節性Lassoの関しては、我々はリボザイムを標的切断のためではなくて標的の周囲でリボザイムを環状化させるために使用した。
【0046】
我々は、Lassoのアンチセンス配列(センサーエレメント)とLassoのまた別の配列(調節エレメント又は阻害性エレメント)との間に相補性を導入し、標的RNAとのハイブリダイゼーションが存在しないときには環状化を妨げる調節複合体を形成することによってアロステリック調節を達成した。アンチセンス(センサー)配列上の内部対形成領域は、アンチセンス配列が、相補的な調節配列に対するよりも、エフェクターとして機能する相補的な標的配列に対して、より高い親和性を有することができるように選択した。アンチセンス(センサー)配列と標的(エフェクター)配列との結合に際して、前記調節複合体は破壊され、Lasso末端の自己プロセッシング及び標的周囲でのそれらの連結を進行させる。
アロステリックに調節されるLassoの例として、“調節”エレメントに対して相補的であり、且つLassoループ配列中に数ヌクレオチドだけ(典型的には0〜5ヌクレオチド)伸長したヘアピンリボザイム3'末端基質配列(長さが5nt)を含む(図8)ように、センサー-アンチセンス配列を設計した。この調節構造(典型的には長さが5〜10bp)の存在は、RNA標的が存在しない場合に3'末端の自己プロセッシング及び自己環状化を妨げる。HPRコンセンサス配列はその3'末端基質配列に相当な配列変動性を許容するので(図2参照)、非常に多様な調節構造が合理的に設計されてもよく、又は(部分的又は完全)ランダム化された配列ライブラリーから選択されてもよい。
長いTNF2転写物(709nt)中のマウスTNFαの229−249領域を標的とするような一組のアロステリックに調節されるLassoを設計し、短いTNF-20(長さが20nt)合成RNAと共に合成した。これらのLasso誘導体(ALR229-5、229-6、229-7、229-8、229-9及び229-10)は、調節エレメントの長さが異なっていた(すなわちLassoアンチセンスドメインに対して相補的な5、6、7、8、9及び10ヌクレオチドを有する)(図8)。これら調節配列の全ては、リボザイムの切断/連結部位の直ぐ近傍に5ヌクレオチドを含む。調節エレメントとLassoのアンチセンスドメインとの間の相補性が長ければ長いほど、標的結合前の環状化の内部阻害は強くなる。図9でALR229-8について模式的に示したように、TNF標的との結合に際して基質配列は遊離することができ、Lassoは環状化した。
【0047】
期待されたように、冒頭のLasso転写物の全ては、転写中にそれらの5'末端で自己切断を示した。もっとも短い調節配列を有するLassoのALR229-5及びALR229-6は3'末端もプロセッシングされて環状化し、一方、Lasso ALR229-7からALR229-10の3'末端切断は阻害され、アロステリック調節を示した(図10)。ALR229-9及びALR229-10のより長い調節エレメントはプロセッシングの阻害にもっとも有効であったが(図10)、それらはまたこれらLassoとTNF標的との結合も阻害した(図11)。全般的に、Lasso ARL229-6、ALR229-7及びALR229-8が標的結合でもっとも有効であった(図11及び12)。ALR229-5からALR229-8が短い標的よりも長い標的とより強力且つより効率的に結合すること、さらにまた、Lasso-TNF2複合体が変性PAGE条件下でLasso-TNF-20よりも安定であることを見出した(図12、レーン2−3)。追跡実験によって、[Lasso-TNF2]複合体の優れた安定性も確認された。短いセンス又はアンチセンスRNA(TNF-α標的部位と同一又は相補的)は、[Lasso-TNF2]複合体から長い標的をはずすことはできないことが見出された(図12、レーン4−5)。理論に拘束されたくないが、Lasso-TNF2複合体の安定性は、変性ゲル条件下でさえTNF2に依然として存在する(しかしTNF-20には存在しない)2つのRNA二次構造の間での嵌合の結果であろう。
【0048】
高度な変性条件(60%ホルムアミド/10mMのEDTA、95℃)を用いてTNF2に結合したLassoをはずすことによって、標的結合によって誘導されたALR229-7, 8, 9 Lassoの環状化を収量は多くはないが検出した(図13)。標的依存性環状化の効率は、Lassoの配列の合理的な調整によってさらに最適化された。上述の実験を基にして、Lasso 229-7をもっとも性能のよいアロステリックLasso候補物として選択した。HPR基質配列として、3'末端に変更配列を有する一組のLasso 229-7(0−5)を調製し、環状分子の収量を改善した(図14)。これら構築物のLasso3'末端の長さにおける変化は、HPRの酵素ドメインに対する親和性を変調した。Lasso 229-7(0−5)を、標的RNAと結合する能力及び標的依存性環状化を経る能力の両能力についてアッセイした(図15)。Lassoの3'末端の相補性の長さの短縮は、より高レベルの環状化を促進し、一方、環状種の最も高い収量を示す229-7(0)ではアロステリック調節が維持される。Lasso 229-7(0)を単独でインキュベートしたとき、半分だけプロセッシングされた直線状種及びいくらかの完全にプロセッシングされた直線状種が観察された(図16、レーン1)。複合体形成及び熱による解離の後、環状Lasso種の顕著な蓄積が観察された(図16、レーン5)。全てのLasso種を標的RNAの存在下でゲル移動させたが、ATR1ゲル移動の結果(図3)と対比して、標的と環状Lasso種との複合体及び標的と直線状Lasso種との複合体は、同様なゲル移動度を有していた。ATR1と同じく、複合体形成後のサンプルを加熱したときは、環状種よりも低温で直線状Lasso種が標的RNAから解離するが観察された。図16、レーン4における直線状Lasso種の再出現は、レーン2及び3で観察された分散したスメアの消失と相関性を有する。CTバンドで観察されたLassoの量は、複合体解離後の環状種のバンド(レーン5及び6)で観察される量と同じであった。したがって、強い複合体バンドのCTは標的RNAと結合した環状Lasso RNAから成ると推論される。
【0049】
アロステリックに調節されたLasso RNA(例えば229-7(0))は、多様な緩衝液条件下で活性を有する。標準的緩衝液条件(50mMトリス-Cl(pH8)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド)よりも生理的に適切であると考えられる緩衝液条件(20mMのHEPES(pH7.3)、140mMのKCl、10mMのNaCl、1mMのMgCl2、1mMのCaCl2)下で、標的結合及び標的依存性環状化をテストしたとき、229-7(0)は標的依存性環状化の能力を有し、標的のTNF2と結合した(図17)。したがって、標的RNAとインキュベーション後の229-7(0)の環状化は、細胞内状態で提示されるような低い濃度の二価陽イオンの条件下で、Lassoが環状化できることを示している。
アロステリックに調節されるLassoは、他の標的部位と結合させるために合理的に設計された。例えば、標的TNFの562−583と結合するアロステリックに調節されるLassoが設計される。ALR562-1から562-4と同定される種々の長さの調節配列(7〜10ntの範囲)を有するいくつかのLassoを設計した(図18)。LassoをTNF標的結合についてアッセイしたとき(図19)、7nt(7ヌクレオチド)の調節配列を有するALR562-2は、効率的な標的結合と標的依存性環状化との両方を示した。しかしながら、ALR562-2のアロステリック調節のメカニズムはLasso 229-7シリーズのものとは異なっていた。なぜならば、Lasso環状化のみが調節され、3'-末端プロセッシングは調節されなかったからである(図19)。この結果は、調節エレメントの設計において同様な原理を用いながら、異なるアロステリック調節メカニズムを達成できることを示している。
【0050】
RNA標的との結合に際してLassoが環状化し、実際にトポロジー的な結合の形成をもたらすことを証明するために、アロステリックに調節されるLasso 229-7(0)とTNF229-248部位を含む直線状又は環状120ntモデル標的との結合を変性PAGEによって解析した(図20A)。種々のLasso種及びLasso標的複合体に対応する各バンドの正体を、95℃分の高度の変性処理の前後の分析で割り当てた。前記のLassoを直線状標的RNAとインキュベートしたとき、前記はMg2+の存在下で効率的な標的依存性環状化を示すが(図20B、レーン1−3)、3'-末端のプロセッシングも環状化もEDTA含有緩衝液では生じない(図20B、レーン7−9)ことが見出された。Lasso 229-7(0)を熱変性されていない環状標的RNAとインキュベートしたとき、4つの別個にゲル移動するバンドが観察されたが(図20B、レーン5及び11)、このLassoを直線状標的とインキュベートしたとき、対応するLasso-標的複合体は変性電気泳動中に解離し、スメアとしてのみ見ることができた(図20、レーン2及び8)。229-7(0)と環状標的をEDTA含有緩衝液中でインキュベートしたとき(EDTAはLasso埋め込みHPRを触媒的に不活性化させる)、より高い移動度を有する2つの複合体が観察された。短い直線状標的とのLasso複合体は、より長い標的とのLasso複合体と同じような安定性をもたないことを見出した;これはおそらく、より大きな標的RNAによって形成されるより広範な二次及び三次構造がLasso-標的複合体を安定化させるためであろう。環状標的とのEDTA含有反応について、解離したLasso種は、プロセッシングされていないLasso種及び半分プロセッシングされたLasso種と相関性を示す(図20B、レーン11−12)。Mg2+含有緩衝液については、上方に移動したバンドは加熱に際して解離し、一方、下方に移動したバンドは95℃での長時間の(10分間まで)インキュベーションでも残存していた(図20B、レーン5−6)。環状Lassoバンドは解離の生成物として観察されないので、前記残存するバンドが環状Lassoと環状標的との間でトポロジー的に結合した複合体を表しているように考えられる。
【0051】
アロステリックに調節されるLassoが非アロステリックに調節されるLassoと比較してより高い配列特異性を付与することを示すために、1の変異及び複数の変異をMuTNF標的に部位特異的変異導入によって導入した。調節エレメントに対して相補的なヌクレオチドの位置に標的配列にミスマッチが生じたとき、アロステリックに調節されるLasso 229-7(0)ではほとんど又は全く複合体形成は観察されなかった。しかしながら、アロステリックに調節されていない229-5は変異した標的RNAと複合体を形成し、前記複合体は変性ゲル電気泳動下で安定であった(図21)。
直線状及び環状RNAの両方を含むRNAプールから環状分子を選択しさらに増幅するために、RCA(ローリングサークル増幅)工程及びRT-PCR工程を含む方法を開発した(図7)。このRCA-RT-PCR増幅は、特異的な標的の検出と最適なLasso構築物(この構築物は前記の標的と迅速に結合し、標的の周囲で効率的に環状化する)の選択との両方に用いることができる。この選択方法は、RT-PCRによる環状化Lasso分子の配列の増幅とその後のLasso転写のスキームを用いて開発された(図7)。
このスキームでは、プライマー1が、5'-プロセッシングされたLassoの5'末端と相補性であり、HPRドメインの活性部位とハイブリダイズし、したがってその触媒活性を阻害し、その後の操作時におけるLassoの更なるプロセッシングをMg2+イオンの存在下でさえも妨げる。逆転写(RT)反応では、プライマー1は選択的に環状Lassoのみを伸長し、Lasso配列の一本鎖DNAマルチマーを生成する(RCAを介して)。続いて2つの別のプライマー(プライマー2及びプライマー3)を用いて、PCRによってRCA生成物を増幅し、また、生成物がin vitroで転写されるようにLassoの5'末端にT7プロモーター配列を付加する。原理の証明として、この技術を用いてLasso 229-5の環状形を選択的に増幅することができた。図22Bでは、RT-PCRの生成物は適切なコントロールとともに示されている。このPCR生成物(図22Bに星印で示されている)はアガロースゲルによる電気泳動で精製され、得られた鋳型をin vitroでの転写に用いて、活性を有するLassoが合成されたことを確認した(データは示さない)。図22Cに示したように、ゲル精製し続いてRCA-RT-PCRによって増幅したLasso-標的複合体について実験を繰り返した。PCR反応を15サイクル実施した場合、予測されたように。マルチマー生成物が観察されることが見出された。サイクルの数が増すにつれ、Lassoのモノマー形がPCR反応生成物で優勢になった。したがって、環状化Lassoは、(直線状の非連結Lassoに比して)逆転写及びPCRによるローリングサークル増幅(RCA)によって選択的に増幅されることが示された。
【0052】
完全にランダム化された標的結合領域を含むLassoのライブラリーを基に、図7に示したスキームを用いて選択を実施した。ランダム化アンチセンス領域を含むLassoライブラリーをコードするDNA鋳型を調製し、in vitro転写を行った。続いて、転写されたRNA LassoライブラリーをTNFαmRNA標的に暴露した。生じた強力なLasso-標的複合体を、結合していないLasso種から変性ゲル電気泳動によって分離した後で単離した。標的と結合した環状化Lasso分子は、特別に設計したプライマーを用いてRT-PCRによって選択的に増幅した(図6)。得られたPCR生成物を、さらに別ラウンドの標的結合及び選択のために、RNA Lassoの転写のための鋳型として用いた(図7)。数ラウンドの選択と増幅の後で、DNA鋳型をクローニングし、配列を決定した。選択したRNA Lassoの配列を再び合成し、in vitroで標的と強固にかつ特異的に結合し、さらにin vitro抽出物中及び培養細胞の両方で翻訳を阻害するそれらの能力についてテストした。(必要な場合には)最適な配列特異性について選択された配列の合理的な最適化の後で、Lasso構築物を標的の有効性及び遺伝子機能の解析のためのツールとして、又は抗ウイルス剤、抗菌剤若しくは遺伝子治療薬として用いることができる。
前述の発明は、明確さと理解のために例示としてある程度詳細に記載してきたが、ある種の変更及び改変が本発明の範囲から逸脱することなく実施することができることは当業者には明白であろう。したがって、前記記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものと解するべきではない。
本明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許及び特許出願が具体的にかつ個々に提示されたかのように参照により本明細書に含まれる。
以下の実施例は本発明の例示として提供され、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0053】
実施例1:5−10塩基対の種々のアロステリック調節エレメントを有するアロステリックに調節可能なLassoシリーズの調製と標的依存性環状化の評価
Lassoのin vitro転写のためのDNA鋳型の構築:
アンチセンス配列(ネズミTNFαRNAのnt229−248)に対する5−10の内部塩基対を含む6Lassoのシリーズ(229-5、229-6、229-7、229-8、229-9、229-10)を図8に示すように構築した。各Lassoについて4つのオーバーラップするDNAオリゴヌクレオチドを用いた。2つのオーバーラップする内部オリゴヌクレオチドをアニールさせ、張り出し部をクレノー伸長によって充填した。他の2つのオリゴヌクレオチドはPCRによって配列の残りを増幅させるために用いるプライマーであった。
2つの部分的に相補的なオーバーラップするオリゴヌクレオチドを以下のような229-5から229-10のために用いた(5'−3'方向で示されている):
CGTCCGTATGACGAGAGAAGCTGACCAGAGAAACACACGACGTAAGTCGTGGTACATTACCTGGTAACAGAGGC(74nt)(配列番号:1)
TGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGCCTATGTCTCAGCCTCTGTTACCAGGTAATGTACCACGACTTACGTC(69nt)(配列番号:2)
前記オリゴヌクレオチドを80℃で5分アニールさせ、1時間にわたってゆっくりと室温に冷却した。このオリゴヌクレオチドをクレノー伸長で充填し二本鎖の鋳型を作製した。この配列のPCRによる増幅及びT7プロモーター配列の付加のために用いたプライマーは以下のとおりであった:
フォワードPCRプライマー(Lasso 229-5から229-10まで):
TAATACGACTCACTATAGGGCAGCCGTCCTCGTCCGTATGACGAGAGAAGC(51nt)(配列番号:3)
リバースプライマー:
TATGACGAGGACGGCTGGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-5)(配列番号:4)
TATGACGAGGACGGCTGATTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-6)(配列番号:5)
TATGACGAGGACGGCTGAGTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-7)(配列番号:6)
TATGACGAGGACGGCTGAGAGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-8)(配列番号:7)
TATGACGAGGACGGCTGAGACTTGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-9)(配列番号:8)
TATGACGAGGACGGCTGAGACATGTTGTTGTTGTTGTTGTTGTGC(229-10)(配列番号:9)
PCR生成物は1.6%のアガロースゲルで精製した。これらのゲル精製フラグメントをT7RNAポリメラーゼによるin vitroランオフ転写のための鋳型として用いた。
Lassoのin vitro転写:
転写混合物中の[32P-α]CTPを用いT7RNAポリメラーゼ(Promega)を37℃で3−5時間使用してLassoをin vitroで転写した。転写物をG50マイクロスピンカラム(Amersham)で脱塩し、更なる使用まで-20℃で保存した。
【実施例2】
【0054】
実施例2:Lassoの自己プロセッシングと標的結合アッセイ
アッセイは、内部を放射能標識したLassoを用いて実施し、以下の3種の緩衝液の1つで前記Lassoを単独又は過剰のTFN2標的RNA(コールド)とともに37℃で120分インキュベートした:(i)50mMトリス-HCl、pH7.5、10mMのMgCl2;(ii)50mMトリス-HCl、pH7.5、10mMのMgCl2、20%ホルムアミドv/v;(iii)20mMのHEPES、pH7.3、140mMのKCl、10mMのNaCl、1mMのMgCl2、1mMのCaCl2。等容積のローディング緩衝液(90%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー、0.01%のキシレンシアノールを含む)で停止させた。サンプルを6%PAGE/8M尿素/0.5xTBEゲルで分析し、11ワットで約2時間電気泳動した。ゲルを乾燥させ、ホスホイメージャーで直接スキャンするか、又はX-線フィルムを感光させた。
【実施例3】
【0055】
実施例3:アロステリックに調節されるLassoの自己プロセッシング活性及び20%ホルムアミドの影響
Lasso 229-5及び229-6(それぞれ5及び6塩基対の調節配列)は、直線状及び環状ゲルバンドによって立証されるように、5'及び3'の両末端を完全に自己プロセッシングすることができた(図10)。Lasso 229-7から229-10は、標的RNAとインキュベートしたとき環状化せず、したがってアロステリックに調節されなかった。アッセイ緩衝液中に20%のホルムアミドが存在するとき、Lassoの自己プロセッシングは改善された(図10及び11)。
【実施例4】
【0056】
実施例4:標的結合能力に対する内部塩基対形成の増加の影響又は最適にアロステリック調節されたLassoの決定
実施例1で述べたLassoを20%のホルムアミドを含む緩衝液を用い実施例2で述べたように標的結合アッセイでテストした。調節配列の長さが増加するにつれ、標的結合効率は低下し、一方、標的非依存性プロセッシングの程度は低下した(図11)。各Lassoについてアロステリック調節の“レベル”と標的結合効率との間には二律背反性が存在した。ネズミのTNFαの229領域を標的とするLassoについて、最適な調節配列の長さは7又は8塩基対であると決定された。なぜならば、効率的な結合と標的結合前のLassoの環状化防止の両方がこれらの長さの塩基対形成調節配列で観察されたからである。
【実施例5】
【0057】
実施例5:短い標的RNAと長い標的RNAとの比較
Lasso 229-5-6-7-8-9-10をDNA鋳型から転写し、長いTNF2標的とともに短い20ntの合成TNF-20RNA(Dharmacon)(丁度20ntの標的TNF配列を含む)を用いる結合実験でテストした(図12)。32Pで内部標識したLassoを単独(レーン1)又は0.4μMの非放射能TNF-20(レーン2)又は0.4μMの非放射能TNF2(レーン3-5)とともに10mMのMgCl2/50mMトリス-HCl(pH8)中で合計120分37℃でインキュベートした。レーン4はレーン3と同じであるが、ただしTNF2に対して14倍過剰の20ntの競合アンチセンスRNA、アンチ-TNF-20でチェースされた。レーン5はレーン3と同じであるが、ただしTNF2に対して7倍過剰の競合センスTNF-20(20-nt)でチェースされた。サンプルは6%の変性PAGEで分析された。アンチ-TNF-20は、Lassoに取り込まれたアンチセンス配列と同一である。TNF-20はこれらLassoに標的とされるTNFαmRNAの配列と一致する。
Lasso転写物は(プレ-Lasso)は転写中にそれらの5'-末端で自己切断を生じ、一方、それらの3'-末端の切断は阻害された(図12を参照)。ALR229-9及びALR229-10は、他のLassoよりも低い効率でそれらの5'-末端を自己切断する(転写及びTNF2の存在下でのインキュベーションで、ただし単独又はTNF-20の存在下でインキュベートされた場合は自己切断しない)。我々は、調節配列の長さが増加するとともに阻害も増すことを見出した(図12、レーン1)。Lasso ALR229-6-7-8-9-10は標的配列との結合に際して実際にアロステリック調節を経ることを提示した。標的結合はリボザイムの自己プロセッシングを完了させ、完全にプロセッシングされた直線状Lassoが得られた(図12、レーン2)。
我々は、ALR229-5-6-7-8 Lassoは、長い標的に短い標的よりも強固にかつ効率的に結合し、さらにまたLasso-TNF2複合体は変性PAGEの条件下でLasso-TNF-20よりも安定であることを示した(図12、レーン2−3)。全体として、ALR229-6-7-8 Lassoは標的結合でもっとも有効であった。Lasso-TNF複合体の優れた安定性もまた追跡実験によって確認された。我々は、短いセンス又はアンチセンスRNA(TNF-α標的部位と同一又は相補的)は長い標的をLasso-TNF2複合体からはずすことができないことを見出した(図12、レーン4−5)。理論に拘束されないが、Lasso-TNF2複合体の安定性の増強は、変性ゲル条件下でTNF2においてなお存在する(TNF-20では存在しない)2つのRNA二次構造間での嵌合の結果であるかもしれない。
【実施例6】
【0058】
実施例6:標的依存性環状化のためのアッセイ
Lasso-標的複合体を実施例2に記載したように形成しさらに反応を停止させた。標的依存性環状化をテストするために、Lasso-標的複合体反応物の半分をローディング緩衝液中で90℃で2分加熱し、続いて直ちに氷上に静置して変性ゲルにロードする前に複合体が再びハイブリダイズするのを防いだ。標的RNA無しにインキュベートしたLasso、未解離複合体及び解離複合体を6%の変性ゲルの隣り合うレーンにロードした。(解離した)Lasso種を標的RNAとのインキュベーション前に存在するLasso種と比較し、標的依存性環状化の程度を判定した。
複合体は、Lasso 229-5から229-10を用い、インキュベーション緩衝液に含まれるホルムアミドを除いて形成させた。Lasso 229-7、229-8及び229-9は、Lassoを標的無しにインキュベートしたときには存在しない環状Lassoの蓄積を示す。229-5及び229-6は標的とのインキュベーションの前にいくらかの環状種を含み、アロステリック調節を示さなかった。熱処理後に環状形は残存したが、最初に存在していたものより多くはなかった。229-10はこれらの条件下では標的RNAと複合体を形成しなかった(図13)。
【実施例7】
【0059】
実施例7:Lassoの3'末端の最適化
アロステリックに調節されるLasso 229-7の環状化の能力を改善するために、改変3'末端をもつ一連のLassoを設計した(229-7(0-5))(図14)。229-7(0-5)Lassoを標的RNAと結合する能力について、及び複合体形成時の環状化についてアッセイした(図15)。前記Lassoのいずれも標的TNF2と効率的に結合することができたが、Lassoのヘアピンリボザイムドメインのヘリックス/ループ1領域に対する3'末端の相補性の長さが増すにつれ、標的結合時の環状化の量は低下した。Lasso 229-7(0,1及び2)は、本来の229-7(3)よりもTNF2とインキュベートした後で環状化したLassoの量に改善を示した。20%のホルムアミドを含有する緩衝液又は前記を欠く緩衝液中でのLasso 229-7(0)及び229-7(3)の比較を実施した(データは示されていない)。もっと強い変性条件下でさえも環状RNAは生成された。Lassoの3'末端の相補性の長さを短くすることによって、アロステリックな調節を維持しながらより高い環状化レベルが促進された。
【実施例8】
【0060】
実施例8:RNA Lassoの標的依存性環状化及び熱解離
合理的に設計しテストしたRNA Lasso229-7(0)は部分的に自己相補性アンチセンスドメインを有し、さらにTNFαRNA上の予め選択した接近可能な部位に対して標的依存性環状化能力を有することが示された。Lasso 229-7(0)を単独でインキュベートしたとき、半分だけプロセッシングされた直線状種及びいくらかの完全にプロセッシングされた直線状種が観察された(図16、レーン1)。複合体形成及び加熱による解離の後で、環状Lasso種の顕著な蓄積が観察された(図16、レーン5)。ATR1に関しては、複合体形成後サンプルを加熱したとき、環状物よりも低い温度で標的RNAから直線状Lasso種が解離するのが観察された(レーン4及び5を比較されたい)。図16のレーン4の直線状Lasso種の再出現は、レーン2及び3で観察された拡散したスメアの消失と相関する。CT複合体バンドで観察される32P-標識Lassoの量は、複合体の解離後環状種バンドで観察された量(レーン5及び6)と同じであった。したがって、我々は、強い複合体バンドCTは標的RNAと結合した環状Lasso RNAから成ると推論する。
【実施例9】
【0061】
実施例9:種々の緩衝液条件下でのアロステリック調節及びLassoプロセッシング
Lasso 229-7(0)は、標準的なアッセイ緩衝液条件(50mMトリス-Cl(pH8)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド)よりも生理学的に適切であると考えられる緩衝液条件(20mMのHEPES(pH7.3)、140mMのKCl、10mMのNaCl、1mMのMgCl2、1mMのCaCl2)下で標的依存性環状化できることが示された。これらの条件下で、Lasso 229-5b及び229-7(0)は標的TNF2と効率的に結合し、さらに37℃で120分のインキュベーション後及びそれに続く95℃処理による複合体の解離後に標準的緩衝液について観察されたものと類似の量の環状化を示した(図17)。(Lasso 229-5bはLasso 229-5の変種である。229-5と229-5bとの間の配列における唯一の相違は、追加された3つのヌクレオチド(5'-AAC-3')がアンチセンス配列に対して5'側に直接挿入されているということである。229-5bは229-5のように5塩基対の調節エレメントを有し、一方、229-7(0)は7塩基対の調節エレメントを有する)。標的RNAとのインキュベーション後の229-7(0)の環状化によって、前記Lassoは低い二価陽イオン濃度を有する条件で自己連結することができることが示された。アロステリックに調節されるLasso 229-7(0)については、環状化は完全に標的の存在に依存し、一方、非アロステリックに調節されるLasso 229-5bについては、環状化は標的RNAの非存在下で生じたことは特記されるべきである。
【実施例10】
【0062】
実施例10:TNF標的部位へ誘導されるLasso
コード領域内のTNF562−583配列を標的とする一組のアロステリックに調節されるLassoを設計した。これらのLassoの調節配列は7塩基対から10塩基対の範囲であった(図18)。前記Lassoを標的結合及び標的依存性環状化についてアッセイした(図19)。これら新規なLassoの全てが標的RNAとインキュベートしたとき環状化し、さらに全てが標的RNAと強力に結合した。562-2(これは7塩基対のマスキング配列を有する)は、標的RNAとインキュベートしたときだけ非常に効率的に環状化した。しかしながら、そのアロステリック調節メカニズムは他のアロステリックに調節されるLassoとは異なっていた。なぜならば、前記は、標的の非存在下で標準的な緩衝液中でインキュベートしたときほぼ完全に直線状にプロセッシングされたからである(5'及び3'がプロセッシングされた)。前記Lassoプロセッシングの平衡は、3'は効率的にプロセッシングされたが、連結はLassoが標的RNAとインキュベートされるまで発生しないというものであった。したがって、調節エレメントの設計は同じであるが、異なるアロステリック調節メカニズムが可能である。
【実施例11】
【0063】
実施例11:アロステリックに調節される229-7(0)と環状標的RNAとのトポロジー的な結合
TNF229-248nt部位を含む120ntの環状RNA標的を、Beaudry & Perreault(1995)が記載した方法を用いて調製した。32P-標識Lasso 229-7(0)を直線状及び環状標的とともに、Lassoが自己プロセッシングすることができる条件下(すなわちMg2+の存在下)(図20B、レーン1−6)及びできない条件下(すなわち遊離Mg2+の非存在下)(図20B、レーン7−12)でそれぞれインキュベートした。Lassoを10mMのMg2+の存在下で環状標的RNAとともにインキュベートしたとき、3つの別個のゲル移動バンドが観察され(図20B)、一方、229-7(0)が両緩衝液で直線状標的とインキュベートしたとき、複合体は電気泳動条件下で解離しスメアとしてのみ見ることができた。Lassoを触媒的に不活性にするEDTAを含有する緩衝液中で229-7(0)と環状標的とのインキュベーションに際して、2つのより移動度の高い複合体が観察された。
各複合体の実体は、ゲルにロードする前に複合体を95℃で2分インキュベートし続いて氷上で反応を停止させた後、解離した生成物を分析することによって判定した(図20Bを参照されたい)。Lasso及び環状標的を含む反応物を加熱したとき、LassoはMg2+イオンの存在下で環状化することができたが、EDTA-含有緩衝液では環状化しなかった。より短い直線状標的を含むLasso複合体は長い標的を含む複合体のように安定ではなかった。これはおそらく、より大きな標的RNAによって形成されたより広がった二次構造及び三次構造がLasso-標的複合体の解離を妨げるためであろう。環状標的を含むEDTA-含有反応物の場合、解離したLasso種は、プロセッシングされなかったLasso種及び半分プロセッシングされたLasso種と相関性を有する。Mg2+イオン含有緩衝液の場合、2つの上部ゲル移動バンドは高温でのインキュベーションに際してほとんど解離し、それぞれ完全プロセッシング及び半分プロセッシングされたLassoの直線状形の再出現と関係を有する。これらゲル移動バンドの1つ、一番下の移動度のバンドは95℃で10分までのインキュベーションですら残存した。環状Lassoバンドは解離した生成物として観察されなかったので、残存バンドはアロステリックに調節される環状Lassoと環状標的との間でトポロジー的に結合した複合体を表していると結論した。
【実施例12】
【0064】
実施例12:ミスマッチ標的RNAに対するアロステリックに調節されるLassoの特異性の増強
図21に示すように、229-7(0)アンチセンス配列に対しミスマッチを含む一連の変異導入TNF標的を合成した(ストラタジーン・クィックチェンジ(Stratagene Quick Change)変異導入キット)。ミスマッチがアロステリックエレメント又は“センサー”エレメント内の配列エレメントとオーバーラップするとき、ミスマッチ標的との結合は大きく低下するか又はなくなった(図21A)。結合アッセイを非アロステリックに調節されるLasso 229-5及びアロステリックに調節されるLasso 229-7(0)を用いて実施した。Lasso 229-7(0)はセンサーエレメントに2つのミスマッチを含む標的とは結合しなかったが、229-5ははるかに効率的に結合した。ミスマッチがセンサーエレメントの外側に存在するとき、両Lassoがミスマッチ標的と結合することができた(図21B)。
【実施例13】
【0065】
実施例13:RCA-RT-PCRによる環状Lassoの増幅
直線状種及び環状種の両方を含むLasso RNAプールから環状分子だけを選択し増幅させるために、我々は、RT-PCR反応でRCA(ローリングサークル増幅)を用いるスキームを開発した(図7に模式的に示されている)。
このスキームでは、環状分子のみを逆転写するために用いられるプライマー(RTプライマー1:5'-GCTTCTCTCGTCATACG-3'(配列番号:10))をLasso転写物の5'末端の近くの固有の相補性配列と、85℃で1分インキュベートし続いて室温で5分冷却することによってアニールさせた。前記プライマーはHPRドメインの活性部位にわたってハイブリダイズし、さらにその後の操作の間に自己プロセッシングがさらに進行するのを妨げた。逆転写(RT)反応では、RTプライマー1は、環状Lasso種のみを選択的に伸長させ、Lasso配列の一本鎖DNAマルチマーを(RCAを介して)生成する。直線状(又は非連結)Lassoは短い未発達の生成物しか生じず、前記は次の工程でPCRによって増幅されないであろう。いくつかの市販の逆転写酵素をテストし前記方法を最適化した。テストしたもののうちで、スーパースクリプト(SuperScript II)(Invitrogen)が定常的に信頼できるローリングサークル増幅を提供した。RT反応はスーパースクリプトII酵素で製造元のプロトコルにしたがって1時間実施した。続いて、2つのまた別のプライマー(PCRプライマー2:5'-TAATACGACTCACTATAGGGCAGCCGTC-3'(配列番号:11)及びPCRプライマー3:5'-GGTGACATCATGATGCATATGACGAGGAC-3'(配列番号:12))を用いてRCA生成物をPCRによって増幅し、さらに、生成物がT7RNAポリメラーゼによって転写されるようにLassoの5'-末端にT7プロモーター配列を付加した。
最初この技術は遊離Lassoについてその標的に非存在下でテストされた。我々は、原理の証明として、mTNFαのヌクレオチド229-248と相補的である規定アンチセンス配列を用いて先に性状が決定されたLasso 229-5の環状形を選択的に増幅させることができた。図22Bでは、RT-PCRの生成物は適切なコントロールとともに示されている。このPCR生成物(図22で星印で示されている)をアガロースゲル上で電気泳動によって精製し、得られた鋳型をin vitro転写に用いて、活性なLassoが合成されたことを確認した(データは示されていない)。図22Cでは、Lasso-標的複合体について実験を繰り返し、前記をゲル精製し、続いてRCA-RT-PCRによって増幅した。PCR反応が15サイクル実施された場合、予想通りマルチマー生成物が観察された。サイクル数が増すにつれ、Lassoのモノマー形がPCR反応生成物で優勢になる。
【実施例14】
【0066】
実施例14:完全にランダム化された“アンチセンス”領域を含むRNA Lassoプールによるin vitro選択
20Nのランダム化標的領域を含むLasso DNAカセットの調製:
完全にランダム化された20Nの標的配列及びT7RNAポリメラーゼプロモーターをコードするLasso DNAカセットを、実施例1に記載したオーバーラップするオリゴヌクレオチドスキーム(ただし229アンチセンスに対応する配列は20Nのランダム化塩基によって置き換えられている)を用いてPCRクローニングによって調製した。
Lassoライブラリーの選択:
前記20N LassoライブラリーをT7RNAポリメラーゼ(Ambion)を用いてin vitroで転写し、in vitro選択のための最初のLassoプールを作製した(図6A)。転写されたライブラリーが自己プロセッシングしさらに環状化できる活性なLasso種を含んでいることは確認された(データは示されていない)。図6A及び6Bに示したRCA-RT-PCRのためのプライマーを用いて選択を6ラウンド実施した。最初の選択ラウンドの場合、1000pmolのLassoライブラリーを過剰の標的RNAと50mMトリス-HCl(pH7.5)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド中で37℃、60分インキュベートした。これらの条件は、ライブラリーのコンプレキシティーが最初の選択ラウンドを通して維持されることを担保した。反応混合物を6%変性ゲルで電気泳動し、遊離Lasso及び遊離標的RNAをLasso-標的複合体から分離させた(図7Aの模式図参照)。RNAは臭化エチジウム染色によりゲル内で可視化した。ゲルから切り出し溶出させた複合体を実施例13に記載したようにRCA-RT-PCRによって増幅した。RT-PCR生成物を1.5%アガロースゲルでゲル精製し、キアクィック(QIAquick)ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて抽出した。得られたDNAを転写鋳型として用いて次の選択ラウンドのための濃縮Lassoライブラリーを作製した。前記の全選択工程をインキュベーション時間を短縮して5回繰り返した。各選択ラウンドについて、選択されたLassoプールから形成される複合体の量が増し、標的RNAとの相互反応のための濃縮工程がより迅速かつ効率的になっていることを示した。
【実施例15】
【0067】
実施例15:合理的に設計されたヘアピンリボザイムドメイン、ランダム化調節エレメント及び規定アンチセンス配列を含む小さなLassoライブラリーの調製
ミニライブラリーをALR229-5N Lasso(図8)から合成した。前記は、合理的に設計されたヘアピンリボザイムドメイン、規定アンチセンス配列及び半ランダム調節エレメントを含む。ミニライブラリー転写のためのDNA鋳型は4つのDNAプライマーを用いて調製した。第一に、2つのオーバーラップするプライマー(内部Lasso領域をコードする)をアニールさせ、DNAポリメラーゼI(クレノーフラグメント)によって伸長した。さらに別の2つのプライマー(フランキングしているLasso配列を含む)を用い、前記生成されたDNA鋳型をPCRによって伸長し増幅させた。続いて、調製されたDNAライブラリー(5bpのランダム化領域を含む)を転写し、Lasso RNAライブラリーを調製した。Lasso RNAをゲルろ過(G-50マイクロスピンカラム)によって脱塩し、TNF2標的とインキュベートした。Lasso-標的複合体を単離し、環状化Lasso RNAを上記のように数ラウンドの選択に付した。
最後の選択ラウンドの後、生成された20のDNAフラグメントをクローニングし、配列を決定した。得られた配列をALR229-5-6-7-8-9-10の関連配列と比較し、統計的に解析した。
【実施例16】
【0068】
実施例16:部分的にランダム化したライブラリーから最適化Lassoの選択
我々は、共有結合により連結された環状形のLassoのみを検出し増幅する方法を開発した。Lasso RNAの環状化を検出するために、我々は、環状Lassoのみを増幅するRT-PCR(図6に示したものと類似する)のためのプライマーを設計した。
プライマー1は5'-プロセッシングされたLassoの5'-末端と相補的であるように設計した。逆転写(RT)反応では、プライマー1(5'-GCTTCTCTCGTCATACG-3'(配列番号:10))は環状Lassoのみを選択的に伸長し、Lasso配列の一本鎖DNAマルチマーを生成する(ローリングサークル増幅、RCA)。さらに別の2つのプライマー、プライマー2(5'-TAATACGACTCACTATAGGGCAGCCGTC-3'(配列番号:11))及びプライマー3(5'-GGTGACACTATGATGCATATGACGAGGAC-3'(配列番号:12))を用いて、RCA生成物をPCRによって増幅し、さらに生成物をin vitroで転写することができるようにLassoの3'-末端にT7プロモーター配列を復活させた。このPCR反応は時にマルチ生成物を生じるので、モノマーLasso配列に対応するDNAフラグメントをゲル精製した。得られたDNA鋳型を選択Lasso RNAの転写に用いた。
内部を32P-標識したLasso RNAをTNF2標的(TNFmRNAの709-ntフラグメント)とともに、50mMトリス-Cl(pH7.5)/10mMのMgCl2/20%ホルムアミド(標準的結合条件)を含む緩衝液中で37℃でインキュベートした。生じた複合体を変性PAGEで単離した。Lasso-標的複合体に対応するバンドをオートラジオグラフィーによってゲル上の位置を決定し、続いて切り出し抽出した。標的と複合体を形成している前記溶出Lassoを続いて上述のようにRT-PCRによって増幅した。
【実施例17】
【0069】
実施例17:Lasso RNAライブラリーをコードするLasso DNAカセットの設計及び調製
RNA Lassoの足場配列を部分的ランダム化ヘアピンリボザイムドメイン、標的依存性環状化を選択するためのランダム化調節エレメント、及び指向性アンチセンス配列を含むように設計した。229-5N Lassoミニライブラリーを足場として用い、部分的ランダム化リボザイム及び調節配列を含むRNA Lassoライブラリー並びに指向性アンチセンスライブラリーを設計した。制限部位(XhoI及びBamHI)は20-ヌクレオチドアンチセンスカセット配列(前記は指向性ライブラリーによって供給される)のどちらかの側にフランキングする。前記Lassoは10ヌクレオチドのランダム化領域をBamHI部位及びループの下流に含み、前記領域は、選択と増幅を繰り返して最適化される可変性アロステリック調節エレメントを構成する。前記リボザイムコアの5'末端もまた部分的にランダム化され、標的との結合によって誘発されるLasso分子の3'末端の適切なプロセッシングを可能にする。Lassoの全体を通してヘアピンリボザイム活性に必須のヌクレオチド(図2参照)は保存される。
RNA Lassoライブラリーの構造を土台にして、リボザイム、調節配列、及び指向性アンチセンスライブラリーを所望の向きで挿入することを可能にする制限部位をコードするDNAライブラリーカセットを設計し、合成する。このDNAライブラリーカセットは2つの半分部分で調製され、指向性ライブラリーが挿入されていないカセットのPCR増幅を防止する。この最初の半分はT7プロモーター配列、ヘアピンリボザイムドメイン及びXhoI制限部位を含む。第二の半分はBamHI部位、調節エレメント及びLassoの3'-末端を含む。各鋳型セグメントは制限部位の近傍に任意の配列を含み、効率的消化を可能にする。
20ヌクレオチドまでの長さの、TNFαと相補的な配列をコードする指向性DNAライブラリーを、WO03/100100A1及びVlassov et al.(2004, Oligonucleotides、印刷中)に記載された方法を用いて、DNAライブラリーカセットへ挿入できるように制限部位とフランキングさせた。規定の配列(PCRプライマー及び制限部位配列)及び10-ntのランダム化領域から成る2つの半ランダムプローブを調製した。前記半ランダムプローブをTNFαcDNAとハイブリダイズさせ、近傍のプローブをDNAリガーゼで連結した。この連結生成物をPCRによって増幅し、続いて適切な制限酵素で消化した。
標的cDNA(標的mRNAの配列を含む)をプラスミドPGEM-4/TNF(MuTNFαをコードする)を用いて非改変プライマーによる非対称PCRによって調製する。また別に、ビオチン化プライマーによる規則的エキスポネンシャルPCRとそれに続くストレプトアビジン磁性ビーズ、ダイナビーズM-280ストレプトアビジン(Dynal, 2001)でのccDNA鎖の分離を用いてもよい。第一の工程では、dsDNAをビオチン-ストレプトアビジン結合によりビーズ上に固定する。続いて混合物を加熱し、DNA鎖を分離させる。非ビオチン化鎖はフロースルーに出現し、一方ビオチン化鎖はビーズに付着したままである。
ランダム化領域(10nt)を有する2つの半ランダムDNAプローブ(規定のPCRプライマー(20nt)及び制限部位(XhoI及びBamHI(6nt))の配列を含む)を設計し合成する。さらにまた、プローブの定常領域と相補的なマスキングオリゴヌクレオチドも調製する。前記半ランダムプローブ(マスキングオリゴヌクレオチドで保護された定常領域を有する)をTNF-αcDNAとハイブリダイズさせ、近傍のプローブをKazakov et al.(2002)の記載にしたがって25−40℃でT4DNAリガーゼにより連結する。前記連結されたプローブを特異的プライマーを用いてPCRで増幅する。
Lasso DNAライブラリーカセットを適切な制限酵素で消化し、消化した指向性アンチセンスライブラリーと連結する。前記連結生成物をPCRで増幅し、さらに転写してRNA Lassoライブラリーを調製する。
指向性ライブラリーを前記DNAライブラリーカセットの半分部分を合体させるために、DNAライブラリーカセットの2つの半分部分と前記指向性ライブラリー種を適切な制限酵素で消化して粘着末端を作製した。前記消化生成物をゲル精製し、DNAリガーゼによって連結する。前記連結された生成物を完全長連結生成物に特異的なプライマーを用いてPCR増幅する。前記増幅されたDNA分子をゲル精製し、図7bに模式的に提示したように、Lasso RNAライブラリーの転写のための鋳型として用いる。
【実施例18】
【0070】
実施例18:特異的標的と結合してトポロジー的な結合を形成する能力が一番高いRNA Lassoの選択
上述のRNA Lassoライブラリーを標的とともにインキュベートし、続いて親和性カラムで複合体を単離し、Lasso-標的複合体から環状化Lassoを選択的に増幅し、さらにPCR生成物からRNAを転写する。さらに数回の選択ラウンドの後、ライブラリーの残存メンバーをクローニングし、配列を決定し、再合成して結合アッセイでテストする。前記RNA Lassoライブラリーを標的TNFαmRNAとインキュベートする。生じた複合体を、以前に記載されたように(Deyev et al., 1984;Stiege et al., 1988;Dynal, 2000)、ストレプトアビジン被覆磁性ビーズに固定されたTNFαmRNAと相補的なビオチン化ccDNAを用いて単離する。非特異的にビーズと結合し、標的非依存性態様で自己環状化を起こす無関係のRNAの濃縮(偽陽性)を防止するために、空の磁性ビーズ又は非特異的RNA標的(例えばビオチン化IL-1ccDNA)を用いて副選択を実施する。短いインキュベーション後に、ビーズを充分に洗浄して非結合分子及び非特異的結合分子を除去する。続いて標的RNAと特異的に結合したLassoを溶出させる。
溶出させた、TNF標的と複合体を形成したLassoを上述のようにRT-PCRによって増幅させる。そのままのLasso-標的複合体では増幅が困難であると判明した場合、Lasso-標的複合体をプライマー伸長の前に、環状化Lassoの完全性を維持する高度な変性条件下で解離させることができる。第1回目の選択ラウンドの後、Lasso DNAライブラリーをLasso RNAライブラリーに転写する。Lasso RNAを(例えばG-50マイクロスピンカラムで)ゲルろ過によって脱塩し、再び標的TNF-αmRNAとインキュベートする。Lasso-標的複合体を上述のように単離し、環状化Lasso RNAをさらに新たな数ラウンドの選択に付す。
最後の選択ラウンドの後で、約50−100個の生成DNAフラグメントをクローニングし、配列を決定する。得られた配列をTNF標的配列に割り当て、統計的に解析する。
【0071】
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【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】環状化することができる核酸物質を模式的に示す:南京錠プローブ(A)、RNALasso(B)。これらの物質は、標的DNA又はRNAとハイブリダイズすることができる直線状ポリヌクレオチドである。それらの末端配列は、DNAリガーゼ(南京錠プローブ、DNA)又はコードされるリボザイムによる自己連結によって(Lasso、RNA)結合される。標的との結合前に直線状物質が環状化することによって、トポロジー的に結合した複合体が形成される。Cは、鎖が撚り合わされた、トポロジー的に結合したポリヌクレオチド-標的複合体を示す。
【図2】ヘアピンリボザイム(HPR)のコンセンサス構造を模式的に示す。前記HPRは、タバコリングスポット(Tobacco ringspot)ウイルスのサテライトRNA(sTRSV)のマイナス鎖の配列に由来する。リボザイムによって誘発された部位特異的RNA切断によって、2',3'-環状ホスフェート末端及び5'-OH末端を有するフラグメントが生成される。HPRはこれらの末端を効率的に連結し、相互に変換される直線状及び環状形として存在することができる。切断及び連結反応は生理的条件下でMg2+を要求する。環状形と直線状形との間の内部平衡はその切断形及び連結形の相対的安定性に左右される。ループ1−3はリボザイム活性について必須ではなく(Feldstein & Bruening, 1993)、欠落又は伸長させることができる(例えばアンチセンス及び調節エレメント配列を挿入することができる)。ループAは鋳型-基質複合体を表し、ループBは触媒コアを表す。ドットは任意のヌクレオチド(A、U、G又はC)を表し、ダッシュは要求される対合形成を表し、Vは“Uではないこと”(A、C又はG)を示し、Yはピリミジン(U又はC)であり、Rはプリン(A又はG)であり、Bは“Aでないこと”(U、C又はG)を示し、Hは“Gでないこと”(A、C又はU)を示す(Berzal-Herranz & Burke, 1997)。
【図3】Lasso ATR1とTNFRNA標的との結合を示す。Aは、TNF-705(ネズミTNFαmRNAの280−985ntを含む)と完全にプロセッシングされたATR1 Lasso(TNF標的の562−583ntを標的とする)との間の複合体の模式図である。Bは、ATR1とTNFRNAとの結合のタイムコースを示す。32P-標識TNF標的をコールドのATR1 Lassoと、37℃でゲルの各レーンの上に表示した時間インキュベートした。複合体の形成は、50mMトリス-HCl(pH8.0)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド(左)又は50mMトリス-HCl(pH8.0)、10mMのMgCl2(右)のどちらかで実施した。複合体形成後、95%のホルムアミド及び10mMのEDTAを含む1容積のローディング緩衝液により反応を停止した。Cは、TNF標的RNAと直線状及び環状Lasso種とにより形成された複合体の加熱誘発解離を示す。32P-標識Lassoを、37℃で2時間、50mMトリス-HCl(pH8.0)、10mMのMgCl2を含む緩衝液中で、表示のようにコールドのTNF標的RNA(Lassoに対して過剰に)の存在下及び非存在下でインキュベートした。反応はBに記載したように停止させた。レーン1及び2のサンプルはさらにインキュベートされることはなかった。レーン3、4、5及び6のサンプルは、それぞれ50℃、65℃、80℃及び95℃でさらに2分間インキュベートし、直ちに氷上に移して複合体の再ハイブリダイゼーションを防止した。生成物は6%変性PAGE(8M尿素)で解析した。
【図4】Lassoヘアピンリボザイムのプロセッシングを模式的に示す。
【図5】ウサギ網状赤血球溶解物におけるLasso RNA(ATR1)によるin vitro翻訳阻害を示す。Aは、TNF-1融合カセットT7-TNF-lucのためのDNA鋳型の模式図である。Bは、コントロール5S RNA(アンチセンスTNF配列を欠く)、ATアンチセンス又はATR1 Lassoのいずれかと1:30の標的/添加物質比の下でT7-Luc及びT7-TNF-lucを予備ハイブリダイズした結果としてのルシフェラーゼ活性の阻害を示す。T7-lucは、T7ポリメラーゼプロモーターのみが挿入されたpGL3-コントロールベクターから転写されたコントロールmRNA(TNF結合部位を欠く)である。T7-Luc-TNFは、Aに示した構築物から転写されたmRNAである。ATR1又はhuIL-1(2)の量の増加。Cは、翻訳に対するLassoの量の増加の影響を示す。ATR1 LassoをTNF/Luc mRNA及びプロ-IL-1 mRNAの混合物に添加した(レーン2−6、レーン1はTNF/LucRNAのみを含む)。35S-標識Metの存在下でウサギ網状赤血球とともに40分インキュベートした後、翻訳生成物をSDS 12%ポリアクリルアミドゲルで分離し、オートラジオグラフィーで可視化した。レーン3−6は、標的に対し20、40、80及び160倍のモル過剰ATR1 Lassoを含む。
【図6】ランダム化アンチセンスセグメント(Nとして表示)を含むLassoライブラリーのメンバーの配列及び構造を示す。Aは、プロセッシングされていないLassoを示す。RT-RCAにより選択的に環状化Lassoを伸長する(直線状Lassoは伸長しない)ためのプライマーの位置が表示されている。Nは任意のヌクレオチド(A、G、C及びU)を表わす。Bは、標的mRNAの相補的部位と結合した自己プロセッシングした環状Lassoを示す。RT-RCA生成物を増幅し、前記を転写鋳型に変換するためのプライマーが表示されている。
【図7】標的RNAの周囲で環状化するLasso種のための選択スキームを模式的に示す。A:選択の各サイクルについて、Lassoライブラリーを標的RNAとインキュベートする。続いて、Lasso-標的複合体を変性ポリアクリルアミドゲルで単離し、環状Lassoを選択的にRCA-RT-PCRにより増幅する。BAで述べた方法によって単離したLasso種を、ローリングサークル増幅(RCA)によって環状Lassoのみが伸長されるように、全てのLassoの規定された5'-末端と相補的なプライマーを用いて逆転写酵素(例えばInvitrogen)によって転写し、Lasso配列の一本鎖DNAマルチマーを得る。前記RCA生成物をさらにPCRで増幅して、続いてin vitro転写に用いることができる鋳型を生成する。さらに別の2つのプライマー(PCRプライマー2及びPCRプライマー3)を用いて、モノマーLasso配列を増幅し、フランキングLasso配列を復元し、生成されたDNA鋳型をin vitroで転写できるようにLasso5'末端にT7プロモーターを付加することができる。このPCR反応は多数の生成物を生じるので、モノマーLasso配列に対応するDNAフラグメントをゲル精製することができる。
【図8】プロセッシングされていないALR229-5N Lassoならびに特異的配列ALR229-5、229-6、229-7、229-8、229-9及び229-10(これらは調節配列の長さが異なり、Lassoのアンチセンスドメインと相補的なそれぞれ5、6、7、8、9及び10ヌクレオチドを有する)のプールを模式的に示す。前記調節配列は、リボザイム切断/連結部位の直ぐ側の配列に対応する5ntを含む。ALR229-5Nは前記Nの位置に4種の全てのヌクレオチド(A、G、C及びU)を有するLassoライブラリーである。
【図9】共有結合による環状化(A)及び非共有結合による環状化(B)を介する標的依存性環状化の例を示す。Aは、Lasso ALR229-8の自己プロセッシング及びLassoのTNF標的との結合を示す。プロセッシングされていないプレLassoは5'末端の自己切断を経る。3'末端の自己切断は、Lassoのアンチセンスドメインを含む8-ntの長いセンサーエレメントの分子内塩基対形成によって阻害される。センサー配列は5ntのHPR基質配列を含み、前記はリボザイム/連結部位の直ぐ側に存在する。標的との結合に際して、この5-ntの基質配列は自由になり、Lassoの3'末端の切断を可能にする。完全にプロセッシングされたLasso(標的と結合)は、続いて環状化を経る。Bは、リボザイムの非存在下での標的依存性環状化を示す。この事例では、標的の非存在下では、Lassoは“オープン(open)”構造をとる。標的との結合に際して、前記オープン構造の内部対合形成が崩壊し、末端がハイブリダイズし、標的結合配列を包含する環状ドメインを創出し、それによって標的の周囲でポリヌクレオチドを環状化させる。この例では、3つの塩基対形成領域の好ましい相対的安定性は、[末端対合形成]<[オープンLasso対合形成]<[標的-Lasso対合形成]である。
【図10】32P-内部標識したアロステリックに調節されるLassoの自己プロセッシング及びホルムアミドの影響を示す。Lassoの各々を、50mMトリス-HCl(pH8)、10mMのMgCl2(−レーン)又は50mMトリス-HCl、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド(v/v)(+レーン)のどちらかで37℃で120分インキュベートした。反応は図3Bに記載したように停止した。サンプルは8Mの尿素及び0.5xTBEを含む6%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。C:環状Lasso、UP:プロセッシングされていないLasso、HP:半分プロセッシングされたLasso、L:完全にプロセッシングされた直線状Lasso。
【図11】32P-内部標識したアロステリックに調節されるLassoと標的RNAとの50mMトリス-HCl、10mMのMgCl2、20%ホルムアミド20%ホルムアミド中での結合を示す。図8に記載したようなLassoを、単独で(−)又は1.4mMの標的RNA(Lassoに対して過剰)とともに(+)37℃で120分間インキュベートした。反応は図10に記載したように停止及び解析した。
【図12】ALR229-5からALR229-10とTNF(709nt)及びTNF-20(20nt)標的RNAとの結合を標的依存プロセッシング及び複合体形成とともに示す。微量の32P-内部標識Lassoを10mMのMgCl2/50mMトリス-HCl(pH8)中で合計120分37℃で、単独で(レーン1)又は非放射能性0.4μMのTNF-20とともに(レーン2)又は0.4μMのTNF2とともに(レーン3−5)インキュベートした。レーン4はレーン3と同じであるが、ただしTNF2に対して14倍過剰の20ntの競合アンチセンスRNA、アンチ-TNF-20でチェースされた。レーン5はレーン3と同じであるが、ただしTNF2に対して7倍過剰の競合センスTNF-20(20nt)でチェースされた。サンプルは6%変性PAGEで解析した。アンチ-TNF-20はLassoに取り込まれているアンチセンス配列と同一である。TNF-20はこれらのLassoによって標的とされるTNF-αmRNAの配列と一致する。略語:SはPAGEの開始点;LLTは長い標的(TNF2)とのLassoの複合体;LSTは短い標的(TNF-20)とのLassoの複合体;CLは完全にプロセッシングされたLassoの環状形;UPLはプロセッシングされていないプレLasso転写物;5PLは5'末端がセミプロセッシングされたプレLasso;Lは(5'及び3'末端の両方で)完全にプロセッシングされた直線状Lasso。
【図13】Lasso 229-5、-6、-7、-8、-9及び-10の標的依存性環状化の解析を示す。32P-内部標識したアロステリックに調節されるLassoを図11に記載したように標的RNAとインキュベートした。反応を図10に記載したように停止した。Lasso-標的複合体サンプルの半分を90℃で2分加熱し、続いて直ちに氷上に移した。続いてサンプルを8Mの尿素及び0.5xのTBE緩衝液を含む6%PAGEゲルにロードした。
【図14】アロステリックに調節可能なLasso 229-7及びその3'末端配列が異なる変種の配列及び二次構造を模式的に示す。
【図15】Lasso 229-7に対するプロセッシング及び標的結合に対する3'末端配列の長さの影響を示す。32P-内部標識Lassoを図11に記載したようにインキュベートし、図10に記載したように反応を停止した。Lasso-標的複合体サンプルの半分を90℃で2分加熱し、続いて直ちに氷上に移した。続いてサンプルを8Mの尿素及び0.5xのTBE緩衝液を含む6%PAGEゲルにロードした。C:環状Lasso、UP:プロセッシングされていないLasso、HP:半分プロセッシングされたLasso、L:完全プロセッシングされた直線状Lasso。
【図16】Lasso 229-7(0)の標的依存性環状化及び加熱誘発解離を示す。32P-標識Lasso 229-7(0)を50mMトリス-HCl(pH8)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミドを含む緩衝液で37℃で、単独で(レーン1)又は非放射能性標的RNA(レーン2)とともにインキュベートした。複合体の形成後、図10に記載したように反応を停止させた。Lasso-標的複合体のアリコットをさらに50℃、65℃、80℃及び95℃(それぞれレーン3、4、5及び6)でインキュベートして解離を誘発し、さらに直ちに氷上に移して再ハイブリダイゼーションを防止した。サンプルを6%PAGE/8M尿素ゲルにロードした。C:環状Lasso、UP:プロセッシングされていないLasso、HP:半分プロセッシングされたLasso、L:5'及び3'がプロセッシングされた直線状Lasso;CT:環状Lasso-標的複合体。
【図17】標準的緩衝液及び生理的緩衝液を比較した標的依存性環状化及びLasso-標的複合体形成を示す。32P-内部標識Lassoを図11に記載したようにインキュベートし、図10に記載したように反応を停止した。Lasso-標的複合体サンプルの半分を90℃で2分加熱し、続いて直ちに氷上に移した。続いてサンプルを8Mの尿素及び0.5xのTBEを含む6%PAGEゲルにロードした。C:環状Lasso、UP:プロセッシングされていないLasso、HP:半分プロセッシングされたLasso、L:完全プロセッシングされた直線状Lasso。
【図18】ネズミTNFαのヌクレオチド562−583の標的配列に対するアンチセンス配列を含むアロステリックに調節可能なLassoを模式的に示す。
【図19】図18に示したALR-562シリーズのLassoの標的結合及び標的依存性環状化を示す。前記シリーズの各Lassoについて、レーン1は標的非存在下で37℃120分インキュベートしたLassoを示し、レーン2は37℃120分インキュベートしたLasso+標的TT-280RNAを示し、レーン3はレーン2と同じであるが、95℃でさらに2分インキュベートしてからローディングの前に直ちに氷上に移されている。C:環状Lasso、UP:プロセッシングされていないLasso、HP:半分プロセッシングされたLasso、L:完全にプロセッシングされた直線状Lasso;CT:環状Lasso-標的複合体。
【図20】環状及び直線状標的とアロステリックに調節可能なLasso 229-7(0)との相互作用の解析を示す。Aは、プロセッシングされていない(上段)及び標的RNAと結合した(下段)Lasso 229-7(0)の配列及び二次構造の模式図である。B32P-内部標識Lasso 229-7(0)を50mMトリス-HCl(pH7.5)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミドを含む緩衝液(レーン1−6)、又は50mMトリス-HCl(pH7.5)、10mMのEDTA、20%ホルムアミドを含む緩衝液(レーン7−12)で37℃120分、表示のように単独で、直線状標的RNAとともに、又は環状RNAとともにインキュベートした。37℃でインキュベートした後、95%のホルムアミド、10mMのEDTAを含むローディング緩衝液で反応を停止した。標的RNAとともにインキュベートしたサンプルを半分に分けた。半分をさらにインキュベートすることなくロードし(3つの各セットの中央のレーン、すなわちレーン2、5、8、11)、他方の半分を95℃で5分インキュベートした後氷上で反応を停止させ(各パネルの右のレーン、すなわちレーン3、6、9、12)、6%変性PAGE(8M尿素)で解析した。コントロールとして、標的を含まない緩衝液でLassoをインキュベートした(レーン1、4、7及び10)。
【図21】アンチセンス配列に対してミスマッチを含む標的RNAと結合したLasso 229-5及び229-7(0)のゲル移動分析を示す。32P-標識Lassoを50mMトリス-HCl(pH7.5)、10mMのMgCl2、20%ホルムアミドを含む緩衝液で37℃120分、表示のように単独で、野生型標的RNAとともに、又は変異体標的RNAとともにインキュベートした。37℃でインキュベートした後、95%のホルムアミド、10mMのEDTAを含むローディング緩衝液で反応を停止し、6%変性PAGE(8M尿素)で解析した。229アンチセンス配列及び変異体標的RNAに対するミスマッチの位置は、各ゲルの下のLassoの二次構造上に示されている。
【図22】RCA-RT-PCRによる環状化Lassoの増幅のためのスキームを示す。Aは、模式的に表したRT-PCRプライマーとともにTNFαの229−248領域を標的とするLasso 229-5の構造を示す。逆転写(RT)反応では、プライマー1は選択的に環状Lassoのみを伸長し、Lasso配列の一本鎖DNAマルチマーを生成する(rolling circle amplification, RCA)。さらに別の2つのプライマー(プライマー2及びプライマー3)を用いてPCRによってRCA生成物を増幅し、さらにin vitroで前記生成物を転写することができるようにLassoの5'末端にT7プロモーター配列を復元した。Bは、Lasso 229-5についてのRCA-RT-PCRの結果である。MWは100bpずつのはしご状分子量マーカーである。レーン1は鋳型もTaqポリメラーゼも添加されていない陰性コントロールである。レーン2は鋳型が添加されていない陰性コントロールである。レーン3はRCA-RT-PCRによって増幅されたLasso 229-5である。星印(*)は予想される反応生成物を示す。C:RCA-RT-PCRはゲル精製後のLasso複合体で実施された。PCR反応は、22Bのもの(25サイクル)よりも少ないサイクル(15)で実施された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子と特異的に結合して、前記標的核酸分子の周囲で環状化するポリヌクレオチドであって、
i)前記標的核酸分子の配列と少なくとも部分的に相補性であって、且つ前記標的核酸分子と結合することができる、標的結合配列;及び
ii)触媒活性の能力を有し、且つ前記ポリヌクレオチドと前記標的核酸分子との結合が存在しないときは前記触媒活性が阻害される、触媒ドメイン;
を含む前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
触媒活性が、標的の周囲でのポリヌクレオチドの環状化を触媒する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
触媒活性がリガーゼ活性である、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
リガーゼ活性が、ポリヌクレオチドを標的核酸分子とトポロジー的に結合させる前記ポリヌクレオチドの5'末端と3'末端との連結を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
リガーゼ活性が、ポリヌクレオチドの5'末端と前記ポリヌクレオチドの内部ヌクレオチドの2'ヒドロキシル基との連結を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
触媒ドメインがヘアピンリボザイムの触媒ドメインである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
触媒ドメインがリボヌクレオチド残基又はその類似体を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
触媒ドメインがデオキシリボヌクレオチド残基又はその類似体を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
触媒ドメインが、リボヌクレオチド残基とデオキシリボヌクレオチド残基との両方又はそれらの類似体を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
触媒活性の阻害は、調節核酸配列が標的結合配列の少なくとも一部分と結合して、前記標的結合配列が標的核酸分子と結合していない場合にポリヌクレオチドの環状化を妨げることによって達成される、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
標的核酸分子がRNAを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
標的核酸分子がDNAを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
ポリヌクレオチドが合成的に調製される、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが発現ベクターからの発現によって調製される、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
発現がin vitroで起こる、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
発現がin vivoで起こる、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
ポリヌクレオチドが、宿主細胞の核内でRNAポリメラーゼII又はIIIによって発現される、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
標的核酸分子の周囲で環状化した請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む、複合体。
【請求項19】
標的核酸分子の周囲でポリヌクレオチドを環状化させる方法であって、
前記標的核酸分子を請求項1のポリヌクレオチドと接触させることを含み、ここで、標的結合配列と前記標的核酸分子との結合は触媒活性の阻害を妨げ、それによって環状化が進行する、前記方法。
【請求項20】
転写の効率を低下させる方法であって、
請求項19記載の方法に従ってポリヌクレオチドと標的をトポロジー的に結合させることを含み、ここで、前記トポロジー的な結合は標的核酸分子からの転写の効率を低下させる、前記方法。
【請求項21】
翻訳の効率を低下させる方法であって、
請求項19記載の方法に従ってポリヌクレオチドと標的をトポロジー的に結合させることを含み、ここで、前記トポロジー的な結合は標的核酸分子からの翻訳の効率を低下させる、前記方法。
【請求項22】
標的核酸分子の有無を検出する方法であって、
前記標的核酸分子を含むことが疑われる組成物を請求項1記載のポリヌクレオチドと接触させること、及び、前記標的核酸分子の周囲での前記ポリヌクレオチドの環状化を検出することを含み、ここで、前記環状化の存在は、前記組成物における前記標的核酸分子の存在を示す、前記標的核酸分子の有無を検出する方法。
【請求項23】
標的核酸分子が固形担体に結合されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
固形担体がハイブリダイゼーションメンブレンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリヌクレオチドがアレイ内に含まれている、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
検出が、環状化したポリヌクレオチドを増幅させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
増幅がローリングサークル増幅を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ポリヌクレオチドが検出可能な標識を含み、検出が標的核酸分子に結合した前記標識を検出することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
標識が、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識、酵素標識、及び結合対のメンバーから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
複数のポリヌクレオチドを含むライブラリーであって、
前記ポリヌクレオチドの各々が、標的結合配列、触媒活性の能力を有する触媒ドメイン、及び、前記標的結合配列と核酸標的との間で結合が存在しない場合に前記触媒活性を阻害する調節配列を含み、ここで前記標的結合配列、前記触媒ドメイン及び前記調節配列の少なくとも1つが少なくとも部分的にランダム化されている、前記ライブラリー。
【請求項31】
標的核酸分子とトポロジー的に結合することができるポリヌクレオチドを選択する方法であって、
前記標的核酸分子を請求項30記載のライブラリーに由来する複数のポリヌクレオチドと接触させること、及び、前記標的核酸分子にトポロジー的に結合したポリヌクレオチドを増幅することを含む、前記方法。
【請求項32】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
【請求項33】
請求項30に記載のライブラリーを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−524395(P2007−524395A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517706(P2006−517706)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020589
【国際公開番号】WO2005/001063
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505474511)ソーマジェニックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】