説明

標的化した薬物送達のための白金錯体

本発明は、直接的および間接的な(免疫学的)抗腫瘍細胞活性を示す、ビオチン結合白金錯体に関する。本発明はまた、ビオチン部分に結合した抗体、リガンド、受容体等などの他の分子を有する、本発明のビオチン-白金錯体に関する。本発明はまた、腫瘍障害および炎症障害を処置するための本発明の白金錯体の使用にも関する。本発明の白金錯体はまた、インビボまたはインビトロでウイルス、細菌、または寄生生物による感染症を処置または予防するためにも用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年11月10日に出願され、任意の図、表、および図面を含むその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第60/626,730号の恩典を主張するものである。
【0002】
発明の背景
プロトタイプがシスプラチン(Cis-Pt)である白金錯体は、精巣癌、卵巣癌、膀胱癌、頭頚部癌、および肺の非小細胞癌を含む様々なヒト腫瘍において、活性な抗癌剤として広く用いられている(Ardizzoniら、1999;Nitiss、2002)。シスプラチンおよび他の白金含有錯体による処置の転帰は、DNAに及ぼすそのアルキル化作用に強く関連している。しかし、細胞のシグナル伝達に及ぼす白金錯体に基づく治療の影響の可能性、およびそのような相互作用の治療的重要性はまだ、研究されていない。シスプラチンが、薬剤誘発性のアポトーシスに影響を及ぼす可能性があるマイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路(Personsら、1999;Sanchez-Perezら、1998)のメンバーの活性化を誘導することを示す報告がある。
【0003】
増殖因子およびサイトカインに対する細胞の反応は、細胞質転写因子のシグナル伝達転写活性化(STAT)ファミリーの活性化を特徴とする(Darnell, 1997;Darnellら、1994;Schindlerら、1995;Starkら、1998;Smithgallら、2000;Akira、2000;Hiranoら、2000;Brombergら、1996;Fukudaら、1996;Kotenkoら、2000)。STATは、増殖因子受容体、受容体関連ヤーヌスキナーゼ(Jaks)、またはSrcキナーゼファミリーに関連するチロシンのタンパク質チロシンキナーゼリン酸化を伴う非常に初期段階において活性化される。次に、二量体形成においてこれは二つのSTAT単量体のあいだのホスホチロシン(pTyr)-SH2相互作用、核への移動、特異的DNA反応エレメントへの結合を誘導し、細胞増殖、分化、発達、および生存にとって必須の遺伝子の発現を調節する。
【0004】
正常なSTAT活性化は、厳密に制御されて短期間であり、外部刺激に対する反応を開始するという正常な細胞の必要条件と一致している。しかし、特異的STATタンパク質、特にStat3およびStat5の持続的な活性化は、いくつかの腫瘍において高頻度で起こり、乳癌、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌細胞、リンパ腫、および白血病細胞を含む、形質転換細胞および腫瘍性細胞の増殖および生存を促進することによって、悪性の形質転換において原因的役割を有する(Brombergら、1999;Turksonら、1998;Brombergら、1998;Catlett-Falconeら、1999a;Garciaら、2001;Grandisら、2000;Grandisら、1998;Nielsenら、1997;Nielsenら、1999;Epling-Burnetteら、2001;Bowmanら、2000における総説;Turksonら、2000;Songら、2000;Cofferら、2000;Linら、2000;Catlett-Falconeら、1999b;Garciaら、1998)。臨床的に重要であるのは、それらを含む悪性細胞および腫瘍全体における異常なStat3シグナル伝達を遮断すると、アポトーシスおよび腫瘍の退縮を誘導する点である。
【発明の開示】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、ビオチン結合白金錯体およびその利用に関する。本発明はまた、ビオチン部分に結合した抗体、リガンド、受容体等などの他の分子を有する、本発明のビオチン-白金錯体に関する。本発明の白金錯体は、腫瘍学的、ウイルス性、細菌性、免疫学的、炎症性、心臓病学的、神経学的、および寄生虫性の疾患状態を処置するために用いることができる。
【0006】
発明の詳細な開示
本発明は、ビオチン結合白金錯体およびその使用に関する。ビオチンは、本発明の白金錯体の軸配位子である。ビオチン含有分子は、本明細書記載のように、白金錯体に結合させることができる。ビオチンは、ビオチンの硫黄原子を介して、錯体のPt原子に対し金属-共有結合を形成すると予想される。本発明はまた、ビオチン部分に結合した他の分子に対する結合特異性を有する抗体、リガンド、受容体等などの第二の分子を有する、本発明のビオチン-白金錯体に関する。このようにして、本発明のビオチン-白金錯体は、受容体、細胞、タンパク質など標的部分に対して結合特異性を有する分子(例えば抗体またはタンパク質)への共有結合によって、部位への送達を標的とする。本分子は共有結合によってビオチン部分に直接結合することができ、または分子がアビジンもしくはストレプトアビジンなどのその誘導体と結合するアビジン-ビオチン結合を介してビオチン部分に結合させることができる。本発明の白金錯体は、アポトーシスを誘導する、および/またはテロメラーゼ活性を阻害する、および/または腫瘍細胞増殖を阻害する、および/または免疫細胞(マクロファージまたはT細胞など)を標的とすることができ、かつ、癌組織のビオチン含量が正常組織よりも高いため、癌を標的とするために使用することもできる(Merck, 第10版)。最も豊富な供給源は膵臓および肝臓を含み、これはこれらの組織に対するターゲティングに利益を与えうる。本発明の白金錯体はまた、抗ウイルス薬、抗菌薬、および抗寄生虫薬として用いることができる。抗細菌用途または抗真菌用途のために、細菌または真菌の抗原またはタンパク質に特異的に結合する分子が、本発明のビオチン白金錯体と共に用いられる。白金(IV)錯体の細胞障害性は、細胞において白金(IV)錯体が白金(II)に還元された結果であると示唆されている。意外にも、本発明の白金(IV)錯体は、細胞障害性を有するために細胞においてこのタイプの還元を必要としない可能性がある。したがって、本発明の白金錯体は、既存の白金(II)錯体よりも有効かつ毒性の低い白金(IV)錯体としてのその正確な酸化的コンフォメーションを維持することにより、当技術分野における白金錯体とは異なる。さらに、本発明の特定の白金錯体は、細胞においてフリーラジカル酸化窒素を産生するまたは産生を誘導し、それにより、フリーラジカル形成を通して細胞を殺すこともできる。
【0007】
本発明の白金錯体には、以下の式IまたはIIに示される構造を有する錯体、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:

式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONO、もしくは以下の構造であるか

またはXおよびYは共に以下の構造を形成し



R1は-NO2、-ONO、-OH、Cl、Br、I、もしくはFであり;
R2はビオチン含有分子であり;
R3は独立してアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-NH3、-NHR7、NH2R7、-NH(R7)2、-N(R7)3、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
R7はH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-NO2、もしくは-COOHによって置換されていてもよい。
【0008】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)となりうる。特定の態様において、XおよびYはいずれもClである。その他の特定の態様において、XおよびYはいずれもBrである。
【0009】
一つの態様において、R1は-NO2であり、R2はビオチンまたはビオチン-リシンであり、およびR3は-NH3である。
【0010】
本発明の白金錯体はまた、以下の式IIIに示される構造、またはその薬学的に許容される塩も有しうる:

式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲンもしくは以下の構造であるか

またはXおよびYは共に以下の構造を形成し


R4は-NO2、-ONO、-OH、Cl、Br、もしくはFであり;
R5はビオチン含有分子であり;
R6は独立してNH2、NH、NHR7、N(R7)2、NHR8、N(R8)2、NHR9、N(R9)2、もしくはNR8R9であり;
R7はH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-NO2、もしくは-COOHによって置換されていてもよく;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、もしくは-OHであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;
R12およびR13は独立して、H、C1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
nは0から6の任意の整数である。
【0011】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)となりうる。特定の態様において、XおよびYはいずれもClである。その他の特定の態様において、XおよびYはいずれもBrである。
【0012】
一つの態様において、R4は-NO2であり、R5はビオチンまたはビオチン-リシンであり、R6は-NH2であり、およびnは0である。
【0013】
本発明の白金錯体にはまた、式VA、VB、またはIVに示される構造を有する錯体、またはその薬学的に許容される塩も含まれる:



式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、もしくは-SO(CH3)2であるか;
またはXおよびYは共に以下の構造を形成し


かつAはビオチン含有分子であり;
かつ、式中
R1は独立してNH2、NH、NR4、NHR4、N(R4)2、NR5、NHR5、N(R5)2、もしくはNR4R5であり;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルであって、これらのうち任意のものはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルによって置換されていてもよく;
R4およびR5は独立して、H、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共にシクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルを形成し、これらのうち任意のものはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
nは0から6の任意の整数である。
【0014】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)となりうる。特定の態様において、XはClであり、YはClである。
【0015】
本明細書の表1は、本発明の範囲内であることが意図されるビオチン結合白金錯体の具体例を示す。
【0016】
本明細書において用いられるように、アルキルは、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の、飽和または単もしくは多不飽和炭化水素基を意味し、C1-xアルキルは、炭素原子1〜X個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。例えば、C1-6アルキルは、炭素原子1〜6個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルコキシは、アルキル基が既に記述されている通りであるアルキル-O-基を意味する。シクロアルキルには、融合環およびスピロ環を含む、炭素原子約3〜約10個の単芳香環単環または多環系が含まれる。環状アルキルは任意で、部分的に不飽和であってもよい。シクロアルコキシは、シクロアルキルが本明細書において定義されたとおりであるシクロアルキル-O-基を意味する。アリールは炭素原子約6〜約14個を含む、融合環およびスピロ環を含む、芳香族単環または多環式炭素環系を意味する。アリールオキシは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-O-基を意味する。アルキルカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアルキル基であるRC(O)-基を意味する。アルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのアルキル基であるROC(O)-基を意味する。シクロアルキルカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるRC(O)-基を意味する。シクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0017】
ヘテロアルキルは、炭素原子1〜20個と、窒素および硫黄原子が任意で酸化されてもよい、すなわちN-オキシド型またはS-オキシド型であってもよい、窒素、酸素、または硫黄から選択される一つまたは複数のヘテロ原子とを有する直鎖または分岐鎖を意味する。ヘテロシクロアルキルは、元素約5個〜約10個の融合環およびスピロ環を含む、単環または多環系(飽和または部分的不飽和であってもよい)であって、環系における一つまたは複数の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択される環系を意味する。ヘテロアリールは、環系における一つまたは複数の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択され、N原子がN-オキシドの形であってもよい、融合環およびスピロ環を含む、5〜約14員環の芳香族単環または多環式炭化水素環系を意味する。アリールカルボニルは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-CO-基を意味する。ヘテロアリールカルボニルは、ヘテロアリール基が本明細書に記載される通りであるヘテロアリール-CO-基を意味し、ヘテロシクロアルキルカルボニルは、ヘテロシクロアルキル基が本明細書に記述されるとおりであるヘテロシクロアルキル-CO-基を意味する。アリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロアリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシは、ヘテロシクロアルキル基が既に記述されたとおりであるヘテロシクロアルキル-O-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0018】
飽和アルキル基の例には、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル、N-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、N-ペンチル、N-ヘキシル、N-ヘプチル、およびN-オクチルが含まれるがこれらに限定されない。不飽和アルキル基は一つまたは複数の二重または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基には、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、ビニル、2-プロピニル、2-イソペンテニル、2-ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、3-プロピニル、および3-ブチニルが含まれる。シクロアルキル基には、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、およびシクロヘプチルが含まれる。ヘテロシクロアルキル基には、例えば、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、3-モルフォリニル、4-モルフォリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、および1,4-ジアザビシクロオクタンが含まれる。アリール基には、例えばフェニル、インデニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、およびフェナントラセニルが含まれる。ヘテロアリール基には、例えば1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾキノリニル、カルバゾリル、およびジアザフェナントレニルが含まれる。
【0019】
本明細書において用いられるように、ハロゲンはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)元素を意味する。
【0020】
薬学的に許容される塩という用語は、本明細書に記述の本発明の錯体に存在する特定の置換基に応じて、酸または塩基として調製された本発明の白金錯体の塩を意味する。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、またはマグネシウム塩が含まれる。薬学的に許容される塩付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、および酢酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マンデル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等のような有機酸が含まれる。本発明の白金錯体の薬学的に許容される塩は、通常の技術を用いて調製することができる。
【0021】
本発明の特定の白金錯体は、立体異性体を生じうる一つまたは複数の非対称に置換された炭素原子を含んでもよいことは当業者に認識されるであろう。エナンチオマーおよびジアステレオマー、およびそのラセミ混合物を含む混合物を含むそのような全ての立体異性体が本発明の範囲に意図される。
【0022】
本発明の白金錯体への接触または曝露の標的とされる癌細胞または他の細胞の表面または中に存在する標的部分に特定の様式で結合することができる任意のタンパク質部分を、本発明に使用することができる。ある態様において、タンパク質部分は、形質転換細胞上または癌細胞上に優先的に発現される抗原またはマーカーに結合する抗体である。特定の態様において、前記抗体は腫瘍関連マーカーまたは腫瘍特異抗原に結合する。腫瘍関連マーカーおよび腫瘍特異抗原は、例えば前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、癌抗原(CA)125、癌胎児抗原(CEA)、α-フェトプロテイン(AFP)、CA 19-9、CA 15-3、CA 27-29、およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)を含む。ビオチンと結合させるか、またはアビジンもしくはアビジンのビオチン結合誘導体で標識し、その後本発明のビオチン-白金錯体と結合させる抗体/タンパク質の例は、抗VEGF抗体(癌);抗CD14抗体(マクロファージ);抗CD15抗体(ホジキン、T細胞リンパ腫、白血病);インターフェロン誘導性T細胞化学誘引物質;抗-c-Myc抗体(癌);抗メラニン抗体(黒色腫);抗CD20抗体(リンパ腫);抗CD33抗体(白血病);抗Her2抗体(癌);および抗EGFR抗体(癌)を含むがこれらに限定されない。本タンパク質部分は、標準的な化学物質および方法を使用することにより、ビオチンまたはビオチン含有分子もしくはビオチン関連分子に直接結合させることができる。あるいは、タンパク質部分は、ビオチンに結合することができるアビジンまたはその誘導体もしくは類似体(例えばストレプトアビジン)と結合させることができる。
【0023】
本発明の範囲内であることが意図される抗体には、ポリクーナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が含まれる。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体であるか、またはその抗原結合性断片である。抗原結合性断片はF(ab')2、Fab'、Fab、およびFvを含むがこれらに限定されず、かつ、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて調製することができる。本抗体は、標的抗原またはエピトープに対して抗体を産生することことが可能な、かつ例えば霊長類、ラット、ネズミ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、およびウシを含む任意の動物に由来することができる。好ましくは、抗体ビオチン白金錯体をヒトに投与する場合、抗体はヒト抗体であるか、または非ヒト動物に由来する「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化する方法は当技術分野において公知であり、米国特許第5,530,101号; 第5,585,089号; 第5,693,762号; 第6,180,370号;および第6,407,213号に記載されている。本発明の抗体は当技術分野において公知の標準的な技術を用いて調製することができ、または商業的供給源から得ることができる。モノクローナル抗体は、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて調製することができる(Kohler et al., 1975)。
【0024】
本明細書で使用する場合、「ビオチン」および「ビオチン関連」という用語は、ビオチン活性、すなわちアビジンまたはアビジン関連分子(例えばストレプトアビジン)に高い親和性で結合する能力を含む任意の分子を含む。本発明の範囲内であることが意図されるビオチン分子の例は、以下を含む。
ビオチン:

ビオチン N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル:

ビオチニル-L-リシン:

および、6-(ビオチンアミドカプロイルアミド)カプロン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma-Aldrich、製品B3295)、ビオチンアミドカプロアート-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma-Aldrich、製品B2643)、ビオチンアミドカプロン酸 3-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma-Aldrich、製品B1022)、およびビオチン-マレイミド(Sigma-Aldrich、製品B1267)。
【0025】
本発明の白金錯体は、STAT活性の強力かつ選択的な破壊剤である。本発明の白金錯体はStat3活性を破壊し、そのコンセンサス結合配列に結合するその能力を妨害することができる。本発明の白金錯体は、持続的に活性なSTATを有する形質転換細胞および腫瘍細胞において細胞増殖阻害およびアポトーシスを誘導することができる。本発明のビオチン結合白金錯体は、活性について、MTTおよびXTTアッセイなどの適切なアッセイ法で試験することができる。
【0026】
本発明の方法は、細胞内に取り込まれるかまたはそうでなければ細胞内もしくは細胞膜上で提供される本発明の白金錯体に、STATを発現する細胞を接触させることによって、STATの機能を阻害する段階を含む。本発明の白金錯体はStat3のDNA結合ドメインと物理的に相互作用し、それによってDNAに対するその結合能を破壊する。あるいは、本発明の白金錯体はStatまたはホスホStatの単量体または二量体に直接相互作用することができ、DNAに及ぶリン酸化された二量体の活性化レベルを減少させる。Src形質転換マウスの繊維芽細胞、ならびにヒトの乳腺および前立腺の腫瘍細胞、ならびにマウス黒色腫細胞は、構成的なStat3活性を含む。本発明の白金錯体はStat3のシグナル伝達機能を消失させることができ、それによって細胞の増殖阻害およびアポトーシスを誘導する。
【0027】
本発明の方法はまた、Stat1、Stat3、またはStat5のようなSTATを異常または構成的に発現する細胞の機能および/または増殖、ならびに複製を阻害する段階を含む。一つの態様において、方法は本発明の白金錯体を細胞に接触させる段階を含む。一つの態様において、細胞は腫瘍細胞、癌細胞、または形質転換細胞である。細胞は、ヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、およびウマを含む哺乳類の細胞でありうる。
【0028】
本発明の白金錯体は、細胞との直接接触を通して、または担体手段によって細胞に送達することができる。組成物を細胞に送達する担体手段は当技術分野で公知であり、例えばリポソーム部分に組成物を封入することが含まれる。本発明の白金錯体を細胞に送達するもう一つの手段は、標的細胞への送達の標的とされるタンパク質または核酸に、白金錯体を結合させる段階を含む。米国特許第6,960,648号および公開された米国特許出願第20030032594号は、もう一つの組成物に結合させることができ、組成物を生体膜を越えて転移させるアミノ酸配列を開示している。公開された米国特許出願第20020035243号はまた、細胞内送達のために細胞膜を越えて生物学的部分を輸送するための組成物を記述する。白金錯体はポリマーに組み込まれていてもよく、そのポリマーの例には、頭蓋内腫瘍のためのポリ(D-Lラクチド-コ-グリコリド)ポリマー;ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン:セバシン酸]モル比20:80(GLIADELにおいて用いられるように);コンドロイチン;キチン;およびキトサンが含まれる。
【0029】
本発明はまた、患者における腫瘍障害または炎症障害を処置するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量が、腫瘍障害または炎症障害を有し、その処置を必要とする患者に投与される。本発明の方法には、腫瘍障害または炎症障害の処置を必要とする、または必要とする可能性がある患者を同定する段階が任意で含まれうる。患者は、腫瘍障害を有するヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物でありうる。患者に投与するための白金錯体を投与および調剤するための方法は、当技術分野で公知であり、その例を本明細書において記述する。腫瘍障害には、骨、乳腺、腎臓、口腔、喉頭、食道、胃、精巣、子宮頚部、頭部、頚部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚(例えば、黒色腫)、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血球(リンパ球を含む)、および脳の癌および/または腫瘍が含まれる。炎症障害には、関節炎、多発性硬化症、狼瘡、クローン病、乾癬、線維筋痛症(fibromyalgia)、アルツハイマー病、ならびに関連する神経性および炎症性の結合組織疾患(例えば、シェーグレン症候群)が含まれる。
【0030】
腫瘍障害を処置するため、本発明の白金錯体を、他の抗腫瘍もしくは抗癌物質、放射線および/もしくは光力学治療、または腫瘍を切除するための外科治療と併用して、処置を必要とする患者に投与することができる。これらの他の物質または放射線処置は、本発明の白金錯体と同時に、または異なる時期に投与してもよい。例えば、本発明の白金錯体は、タキソールまたはビンブラスチンのような分裂阻害剤、シクロホスアミド(cyclophosamide)またはイフォスファミドのようなアルキル化剤、5-フルオロウラシルもしくはヒドロキシウレアのような抗代謝剤、アドリアマイシンもしくはブレオマイシンのようなDNAインターカレート剤、エトポシドもしくはカンプトテシンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、アンジオスタチンのような抗血管新生剤、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤、および/または例えばそれぞれ、GLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation)およびHERCEPTIN(Genentech, Inc.)のような他の抗癌剤または抗体と併用して用いることができる。
【0031】
多くの腫瘍および癌が、腫瘍または癌細胞に存在するウイルスゲノムを有する。例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)は、哺乳動物の多数の悪性疾患に関連している。本発明の白金錯体は、細胞の形質転換を引き起こしうるウイルスに感染した患者を処置するために、および/または細胞におけるウイルスゲノムの存在に関連した腫瘍または癌を有する患者を処置するために、単独で、または抗癌剤もしくはガンシクロビル、アジドチミジン(AZT)、ラミブジン(3TC)等のような抗ウイルス剤と併用して用いることができる。本発明の白金錯体はまた、腫瘍形成疾患のウイルスに基づく処置と併用して用いることができる。例えば、本発明の白金錯体は、肺の非小細胞癌の処置において変異体単純ヘルペスウイルスと共に用いることができる(Toyoizumiら、1999)。
【0032】
本発明はまた、本発明の白金錯体を用いて患者の細菌およびウイルス感染症を処置するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量を、細菌またはウイルス感染症を有する患者に投与する。本発明の方法には、細菌またはウイルス感染症の処置を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が任意で含まれうる。患者は、細菌もしくはウイルスに感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物でありうる。本発明に従って処置することができる細菌感染症には、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)の感染症が含まれる。本発明に従って処置することができるウイルス感染症には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、乳頭腫ウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス(例えば、SV40、BKウイルス、DARウイルス)、オルソポックスウイルス(例えば、大痘瘡ウイルス(天然痘ウイルス))、EBV、単純ヘルペスウイルス(HSV)、肝炎ウイルス、ラブドウイルス(例えば、エボラウイルス)、およびサイトメガロウイルス(CMV)に関連した感染症が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金組成物はまた、光力学治療(Cunyら、1999)の存在下でウイルス疾患を処置するために用いることができる。これらの錯体は光によって活性化されて、その抗ウイルス作用、抗菌作用、抗腫瘍作用、抗寄生虫作用、または細胞作用を増強することが意図される。
【0033】
本発明の白金錯体はまた、寄生生物に感染した患者を処置するために用いることができる。一つの態様において、本発明の白金錯体の治療的有効量を患者に投与する。本発明の方法には、寄生虫感染症の処置を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が任意で含まれうる。患者は、寄生生物に感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物でありうる。本発明に従って処置することができる疾患状態には、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症が含まれるがこれらに限定されない。本発明に従って処置可能な疾患状態を引き起こしうる寄生虫には、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)、およびトリパノソーマ(Trypanosoma)が含まれるがこれらに限定されない。本発明はまた、体内寄生性アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、ならびに回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、アメリカ鉤虫(Necator)、鉤虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)などの線虫、のような寄生生物によって引き起こされる胃腸障害を処置するためにも用いることができる。もう一つの態様において、本発明の白金錯体は、非感染患者が、寄生虫疾患が流行しているまたは患者にリスクを与える地域に、旅行するまたは在住するであろう場合に、患者に予防的に投与することができる。したがって、患者は、寄生虫感染症が流行しているまたはリスクを与える地域での患者の曝露または在住の前に、および/または寄生生物感染症の前に、本発明の組成物によって処置することができる。
【0034】
本発明の白金錯体はまた、細菌または寄生生物上でウイルスに汚染された、または汚染が疑われる生体産物をインビトロで処置するためにも用いることができる。本発明の白金錯体によって処置することができる生体産物には、全血、分画血、血漿、血清、臓器全体または臓器の一部、ならびに血球、筋細胞、皮膚細胞、および神経細胞を含む細胞、ならびに細胞に由来する産物が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金錯体によって処置することができる細胞に由来する産物には、インターフェロン、インターロイキン、第VIII因子、第IX因子、第X因子等のような血液凝固因子、インスリン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、増殖因子、サイトカイン、ならびに他の産物が含まれるがこれらに限定されない。生体産物の処置は、本発明の白金錯体の有効量に、有効な時間、産物を接触させる段階を含む。必要であれば、生体産物をその後、リン酸緩衝生理食塩液のような適当な滅菌水溶液によって洗浄して、産物を処置するために用いた白金錯体を除去することができる。
【0035】
本発明の白金錯体およびそれらを含む組成物の治療上の適用は、当業者に現在公知であるか、公知となる見通しである任意の適した治療法および技術によって行うことができる。本発明の白金錯体は、例えば経口、鼻腔内(例えば、エアゾル吸入によって)、直腸内、および非経口投与経路を含む、当技術分野における任意の適した経路によっても投与することができる。本明細書において用いられるように、非経口という用語には、局所、真皮下(例えば、インプラントの場合のように)、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腹腔内、および注射によるような胸骨内投与が含まれる。本発明の白金錯体の投与は、当業者によって容易に決定されうるように、連続的または不連続な間隔となりうる。
【0036】
本発明の白金錯体は薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調剤することができる。製剤は、当業者に周知であって容易に入手できる多数の起源において詳細に記述されている。例えば、E.W. Martinによって記述される「Remington's Pharmaceutical Science」は、本発明に関連して用いることができる製剤について記述している。一般的に、本発明の組成物は、生物活性白金錯体の有効量を、組成物の有効な投与を促進する目的で適した担体と組み合わせるように調剤する。本発明の方法において用いられる組成物はまた、多様な形態となりうる。これらには、例えば錠剤、丸剤、粉剤、液体溶液または懸濁液、坐剤、注射剤および注入溶液、エアゾル粒子、ならびに噴霧剤のような、固体、半固体、および液体剤形が含まれる。好ましい剤形は、意図される投与様式および治療上の適用に依存する。組成物にはまた、当業者に公知である通常の薬学的に許容される担体および希釈剤が含まれる。本発明の白金錯体と共に用いられる担体または希釈剤の例には、エタノール、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルミナ、デンプン、ならびに同等の担体および希釈剤が含まれる。本発明の望ましい治療的処置のためのそのような用量の投与を提供するために、本発明の薬学的組成物は、担体または希釈剤を含む総組成物の重量に基づいて、本発明の白金錯体の一つまたは複数を全体の重量の約0.1〜99%、特に1〜15%含むことが有利であろう。
【0037】
本発明の白金錯体はまた、リポソーム技術、徐放性カプセル、埋め込み型ポンプ、および生体分解性容器を利用して投与することができる。これらの送達法は、均一な用量を一定期間にわたって有利に提供することができる。本発明の白金錯体はまた、当業者に公知のその塩誘導体型または結晶型で投与することができる。
【0038】
本発明はまた、薬学的に許容される用量で調剤された本発明の少なくとも一つの白金化合物を一つまたは複数の容器に含む包装された投与製剤にも関する。
【0039】
本明細書において言及したまたは引用した全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、全ての図面および表を含むその全内容物が、本明細書の明白な教示と矛盾しない程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【0040】
ニトロ白金(IV)錯体の合成
シスプラチン0.300g(0.00100モル、FW=300.1)またはトランスプラチンを使用し、超脱イオン水150mLおよびジクロロエタン50mLを250mLのアーレンマイヤーフラスコに加える。しかしながら、ヘキサンおよび任意の有機溶媒を、ここで用いたジクロロエタンと置き換えることができる。cis-ジアンミン白金(II)ジクロリド(シスプラチン)は、Sigma-Aldrich(製品番号4394)から純度99.9%で購入することができる。trans-白金(II)ジアンミンジクロリド(トランスプラチン)は、Sigma-Aldrich(製品番号1525)から純度99.9%で購入することができる。六番目のリガンドの選択には、窒素原子、硫黄原子、または酸素原子が酸化Ptに対する結合のためにルイス塩基を提供する化学構造で利用できることが含まれる。ビオチンまたはビオチン-リシンは、硫黄原子を介したPtへの金属-共有結合の形成を通し、NO2ガスによって白金錯体に結合したリガンドであることができる。金属、ハロゲン化物(Cl-など)との、またはキレート化もしくはπ分子軌道との相互作用による他の結合が可能である。シスプラチン1モルあたり選択したリガンド1モルを量り取って、混合物に加えるべきである。ジクロロエタンのような有機溶媒は、疎水性特性の有機リガンドの溶解性を提供する。磁気攪拌子を混合物に入れて、フラスコを化学実験用換気フードの中で磁気攪拌プレート上に置く。四酸化窒素のレクチャーボトルを、レギュレータおよびTeflonホースに固定して、ホースの出口にガラスピペットを取り付ける。ピペットの先端を低いほうの溶媒(例えば、ジクロロエタン)に挿入して、レクチャーボトルを温水浴においてわずかに加温する。二酸化窒素ガスを、攪拌混合物に1秒間に気泡約1個の割合で放出する。ガスは黄色のシスプラチンが全て消費されるまで添加すべきである;黄色の固体が消失して黄色い溶液となれば、利用可能なシスプラチンが消費されたことを示す。ニトロシル中間体の形成を示すために、青色を観察する;この色の色調および持続の変化を観察する。次に、ガスの添加を終了して(レクチャーボトルへの真空吸引を防止するためにピペットを外す)、光の曝露を防止するためにフラスコをアルミニウムホイルで覆う。フラスコは一晩攪拌すべきである。
【0041】
翌日、さらなる二酸化窒素を、反応の完全性をチェックするために加えてもよい。青色は継続中の反応および白金(II)の不完全な酸化を示す。通常、この青色は10分以内に褪色する。無色のリガンドに関して、溶液は一晩で黄色になった。青色が残っている場合には、攪拌を継続する。混合物は、完全な酸化のために空気を必要とすることから、しっかりと蓋をすべきではない。空気による持続的な酸化は、アーレンマイヤーにおいてトラップを通して液体の上に空気を吹き込むことによって加速されうる。溶媒を約2日間かけて蒸発させると黄橙色の沈殿物が得られ、これが産物である。
【0042】
沈殿物は、メタノール、DMSO、または他の適した溶媒において再結晶によって精製することができる。または、産物はシリカカラムまたはHPLCを用いて精製することができる。
【0043】
抗体または他のタンパク質をビオチンに結合させるために、0.3モルのビオチンジアンミンジクロロニトロPt(IV)錯体を、1mLのDMSO中に溶解させる。抗体またはタンパク質は、0.3モルの抗体(またはタンパク質)を、100mMの炭酸水素塩の緩衝溶液に、pH 8.4で、約1.5〜4mgの抗体(タンパク質)/mLの濃度になるように測定することによって、調製すべきである。このタンパク質溶液に白金-DMSO溶液を加え、ホイルで覆い、室温で約4時間穏やかに回転させる。セファデックスG-25Mのカラムを使用し、10mM Tris, 150mM NaCl, 0.1% NaN3, pH 8.2の移動相を用いて、産物を分離する。
【0044】
MTTアッセイ
1.添加DMEM/F12増殖培地においてA549細胞または他の適当な標的細胞(例えば、本発明のビオチン白金錯体に結合する抗体によって認識される抗原を発現する細胞)2×105細胞/mLの浮遊液を調製する。
2.各ウェルに保存浮遊液100μLを加えることによって96ウェル細胞培養プレートにおいて1ウェルあたり2×104細胞を播種する。
3.各白金化合物(既に溶液中)に関して、容易に使用可能な保存液をDMEM/F12培地において調製する。
4.各化合物に関して、濃度0、10、20、30、40、50、60、および70μMについて3連で試料を作製する。これは、最終容積200μLにおいて所望の濃度を得るために必要な無処置培地の容量と共に、適当な容量の保存溶液を各ウェルに加えることによってインサイチューで行われる。
5.プレートを穏やかに攪拌して内容物を混合する。37℃、7%CO2で45時間インキュベートする。
6.各ウェルに5mg/mL MTT溶液(PBS)20μLを加える。
7.プレートを穏やかに攪拌して内容物を混合し、さらに3時間インキュベートして産物を生成させる。
8.インキュベーターからプレートを取り出して攪拌し、ホルマザン生成物を沈降させる。
9.針とシリンジを用いて各ウェルの液体内容物を吸引して捨てる。
10.各ウェルにDMSO 200μLを添加してホルマザン生成物を溶解する。
11.ホルマザン生成物が溶液となって、ウェルの底面に紫色の結晶が認められなくなるまでプレートを攪拌する。
12.光ファイバープローブ付属器を備えたCary 50 UV-vis分光光度計のためのバリアンソフトウェアを用いて、各ウェルの475nmでの吸光度を読み取る。
【0045】
XTTアッセイ
96ウェルプレートをアッセイに用いる。対数期の標的細胞約2.5×104個を各ウェルに加える。本発明の白金錯体を各ウェルに分配して(20%DMSOおよび80%培地に溶解)、均一な容量にするために必要なさらなる培地を加える。対照ウェルには細胞と培地のみを含む。各濃度のアッセイを3連で行ってもよい。プレートを37℃、7.5%CO2で48時間インキュベートする。次に、MD Biosciences, QuebecのXTTを、提供されたプロトコール濃度に従って加えて、3時間反応させる。プレートを5分間攪拌してから、光ファイバープローブを備えたVarian Cary 50分光光度計において475nmでの吸光度を読み取る。対照ウェルと比較した生存率(%)を白金錯体濃度に対してプロットする。
【0046】
百分率は全て重量であり、特に明記していない限り、溶媒混合比は全て容積である。
【0047】
【表1】


【0048】
本明細書に記述の実施例および態様は説明する目的に限られ、それに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるであろうが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【0049】
参考文献





【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式IまたはIIに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONO、もしくは以下の構造であるか

またはXおよびYは共に以下の構造を形成し


R1は-NO2、-ONO、-OH、Cl、Br、I、もしくはFであり;
R2はビオチン含有分子であり;
R3は独立してアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-NH3、-NHR7、NH2R7、-NH(R7)2、-N(R7)3-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
R7はH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-NO2、もしくは-COOHによって置換されていてもよい。
【請求項2】
XおよびYが独立してF、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項1記載の白金錯体。
【請求項3】
XおよびYがいずれもClである、請求項1記載の白金錯体。
【請求項4】
R1が-NO2である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項5】
R3が-NH3である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項6】
XおよびYがいずれもBrである、請求項1記載の白金錯体。
【請求項7】
以下の式IIIに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲンもしくは以下の構造であるか

またはXおよびYは共に以下の構造を形成し


R4は-NO2、-ONO、-OH、Cl、Br、もしくはFであり;
R5はビオチン含有分子であり;
R6は独立してNH2、NH、NHR7、N(R7)2、NHR8、N(R8)2、NHR9、N(R9)2、もしくはNR8R9であり;
R7はH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-NO2、もしくは-COOHによって置換されていてもよく;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、もしくは-OHであって、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;
R12およびR13は独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、これらのうち任意のものは、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、もしくはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
nは0から6の任意の整数である。
【請求項8】
XおよびYが独立してF、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項7記載の白金錯体。
【請求項9】
XおよびYがいずれもClである、請求項7記載の白金錯体。
【請求項10】
R4が-NO2である、請求項7記載の白金錯体。
【請求項11】
R6が-NH2である、請求項7記載の白金錯体。
【請求項12】
XおよびYがいずれもBrである、請求項7記載の白金錯体。
【請求項13】
以下の式IV、VA、またはVBに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:


式中、
XおよびYは独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、もしくは-SO(CH3)2であるか;
またはXおよびYは共に以下の構造を形成し


Aはビオチン含有分子であり;
R1は独立してNH2、NH、NR4、NHR4、N(R4)2、NR5、NHR5、N(R5)2、もしくはNR4R5であり;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルであって、これらのうち任意のものはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルによって置換されていてもよく;
R4およびR5は独立して、H、もしくはC1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共に、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、もしくはヘテロアリールカルボニルを形成し、これらのうち任意のものはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されていてもよく;かつ
nは0から6の任意の整数である。
【請求項14】
XおよびYが独立してF、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項13記載の白金錯体。
【請求項15】
XおよびYがいずれもClである、請求項13記載の白金錯体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者における腫瘍障害または炎症障害を処置するための方法。
【請求項17】
第一に、腫瘍障害または炎症障害を有する患者を同定する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
患者が哺乳動物である、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項16または17記載の方法。
【請求項20】
腫瘍障害が、骨、乳腺、腎臓、口腔、喉頭、食道、胃、精巣、子宮頚部、頭部、頚部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血球、または脳の癌または腫瘍を含む、請求項16または17記載の方法。
【請求項21】
腫瘍障害が黒色腫である、請求項16または17記載の方法。
【請求項22】
炎症障害が関節炎、多発性硬化症、狼瘡、クローン病、乾癬、線維筋痛症(fibromyalgia)、アルツハイマー病、または関連する神経性および炎症性の結合組織疾患である、請求項16または17記載の方法。
【請求項23】
炎症障害がシェーグレン症候群である、請求項16または17記載の方法。
【請求項24】
白金錯体がリポソーム部分に封入されている、または白金錯体が白金錯体の細胞への送達を標的とするタンパク質もしくは核酸を含む、請求項16または17記載の方法。
【請求項25】
白金錯体が、患者における腫瘍障害または炎症障害の少なくとも一つの症状を緩和するのに有効な量で投与される、請求項16または17記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者におけるウイルス、細菌、または寄生虫の感染症を処置または予防するための方法。
【請求項27】
第一に、ウイルス、細菌、または寄生虫の感染症の処置を必要とする患者を同定する段階をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
光力学治療の存在下で白金錯体を投与する段階をさらに含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
患者が哺乳動物である、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項30】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項31】
寄生虫感染症が、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma,)、プラスモジウム(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、体内寄生アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、アメリカ鉤虫(Necator)、鉤虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項32】
患者が、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症からなる群より選択される疾患状態を有する、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項33】
細菌感染症が、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項34】
ウイルス感染症が、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、オルソポックスウイルス、EBV、単純ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、ラブドウイルス、およびサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項35】
ウイルス感染症が、ヒト乳頭腫ウイルス、SV40、BKウイルス、DARウイルス、天然痘ウイルス、またはエボラウイルスにより引き起こされる、請求項26、27、または28記載の方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、白金錯体の合成法:
(a)水中のシスプラチンまたはトランスプラチン(transplatin)と有機溶媒を混合する段階;
(b)段階(a)の混合物に、シスプラチンまたはトランスプラチンの白金に結合することができるビオチン含有リガンドを混合して、白金錯体産物を形成する段階;
(c)段階(b)の混合物を二酸化窒素ガスに接触させる段階;ならびに
(d)白金錯体産物を溶媒から分離する段階。
【請求項37】
有機溶媒がジクロロエタンまたはヘキサンである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
白金錯体産物が溶媒の蒸発によって溶媒から分離される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
段階(d)の後に、白金錯体産物がさらに精製される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
白金錯体産物が溶媒における再結晶によってさらに精製される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
白金錯体産物がシリカカラムでの吸着によって、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製される、請求項39記載の方法。
【請求項42】
異常にまたは構成的にSTATを発現する細胞の機能、増殖、および/または複製を阻害する方法であって、請求項1〜15のいずれか一項記載の白金錯体の有効量を該細胞に接触させる段階を含む方法。
【請求項43】
細胞が、腫瘍細胞、癌細胞、または形質転換細胞である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
細胞が、ヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、またはウマの細胞である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
ウイルスに汚染された生体産物をインビトロで処置する方法であって、生体産物を、請求項1〜15のいずれか一項記載の白金錯体の有効量に接触させる段階を含む方法。
【請求項47】
生体産物が、全血、分画血、血漿、血清、臓器全体、臓器の一部、血球、筋細胞、皮膚細胞、神経細胞、インターフェロン、インターロイキン、血液凝固因子、インスリン、抗体、増殖因子、またはサイトカインである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記請求項のいずれか一項記載の白金錯体の使用。
【請求項49】
薬学的組成物における、請求項1〜15のいずれか一項記載の白金錯体の使用。

【公表番号】特表2008−519859(P2008−519859A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541392(P2007−541392)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/041129
【国際公開番号】WO2007/008247
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【Fターム(参考)】