標的検出装置及びその製造方法
【課題】標的核酸を高精度且つ短時間で検出可能な標的検出装置及びその製造方法の提供。
【解決手段】標的検出装置は、基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置された。
【解決手段】標的検出装置は、基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的検出装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「ナノバイオ」乃至「バイオナノ」をキーワードとして、試験管、フラスコなどを用いた従来のバイオ実験を固体基板上で実施可能な、バイオチップ、バイオ検出デバイスの研究開発が精力的に行われている。標的分子として特定の核酸を評価乃至検出可能なチップは、DNAチップ(RNAチップ)と呼ばれ、遺伝子解析に広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定のタンパク質を検出可能なチップは、プロテインチップと呼ばれ、現在開発途上である。
【0003】
これらのDNAチップ、RNAチップなどを用いた遺伝子解析は、ライフサイエンス、食品、農業、創薬、医療など様々な分野に応用されている。DNAチップ(RNAチップ)の基本原理は、標的(検査対象)DNA(RNA)を蛍光色素等でラベル化(可視化)し、基板に固定された相補配列のDNA(RNA)との2本鎖形成(ハイブリダイゼーション)を通して、標的DNA(RNA)の有無、配列の同定を蛍光色素等のラベルから発光される光の信号により解析している。このような手法では、標的DNA(RNA)のラベル化は必須である。よって、標的DNA(RNA)を確実にラベル化する手法と、基板に固定された相補配列のDNA(RNA)と2本鎖を形成していないラベル化DNA(RNA)からの信号(非特異的吸着による信号)を低減して、SN比を改善する方法が必要である。このため、標的DNA(RNA)を含んだサンプルのラベル化工程と、非特異吸着したDNA(RNA)を除去する洗浄工程が別途必要となり、その工程に時間がかかり、また、十分な洗浄処理ができなかった場合に、SN比が低下するという問題がある。
【0004】
また、電荷を有する分子を基板に付着させるに際し、前記分子を含んだ溶液に電解質を共存させ、前記基板への分子付着密度をコントロールすること(例えば、特許文献2参照)が検討されており、さらに、導電性基材上に、分子による分子膜を形成し、導電性基材上に電位を印加し、該分子膜における分子の一部を前記導電性基材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調節することにより、基板上に形成された分子間の立体障害を小さくすること(例えば、特許文献3参照)が検討されているが、基板上に形成された分子間の立体障害を利用して、標的核酸の評価乃至検出を行うことは未だ検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/075735号パンフレット
【特許文献2】特許4230431号公報
【特許文献3】特開2007−202451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、標的核酸を高精度且つ短時間で検出可能な標的検出装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
開示の標的検出装置は、基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置された。
また、開示の標的検出装置の製造方法は、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させるプローブ配置工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
開示の標的検出装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、標的核酸を高精度且つ短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、標的検出装置を説明するための図である(その1)。
【図1B】図1Bは、標的検出装置を説明するための図である(その2)。
【図1C】図1Cは、標的検出装置を説明するための図である(その3)。
【図1D】図1Dは、標的検出装置を説明するための図である(その4)。
【図2A】図2Aは、6方最密(細密)充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その1)。
【図2B】図2Bは、6方最密充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その2)。
【図2C】図2Cは、6方最密充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その3)。
【図3A】図3Aは、標的検出装置としてのDNAチップを示す図である(その1)。
【図3B】図3Bは、標的検出装置としてのDNAチップを示す図である(その2)。
【図3C】図3Cは、基板からの距離と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、1本鎖オリゴヌクレオチドの付着密度と電解質のイオン濃度の関係と電解質のイオン濃度の関係を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、実施例1を説明するための図である(その1)。
【図5B】図5Bは、実施例1を説明するための図である(その2)。
【図5C】図5Cは、実施例1を説明するための図である(その3)。
【図5D】図5Dは、実施例1を説明するための図である(その4)。
【図6A】図6Aは、実施例2を説明するための図である(その1)。
【図6B】図6Bは、実施例2を説明するための図である(その2)。
【図6C】図6Cは、実施例2を説明するための図である(その3)。
【図6D】図6Dは、実施例2説明するための図である(その4)。
【図7A】図7Aは、比較例1を説明するための図である(その1)。
【図7B】図7Bは、比較例1を説明するための図である(その2)。
【図7C】図7Cは、比較例1を説明するための図である(その3)。
【図8A】図8Aは、比較例2を説明するための図である(その1)。
【図8B】図8Bは、比較例2を説明するための図である(その2)。
【図8C】図8Cは、比較例2を説明するための図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(標的検出装置)
本発明の標的検出装置は、基材と、プローブとを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0011】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、適宜目的に応じて選択することができるが、導電性基材が好ましく、その構造としては、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、全体が導電性材料で形成された構造であってもよいし、絶縁性基材上に導電性材料による電極層が設けられた構造などであってもよい。
【0012】
前記基材としては、その形状、大きさ、表面性状、数等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状、円状、楕円状などが挙げられる。前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記表面性状としては、例えば、光沢面、粗面などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記絶縁性基材の材質としては、例えば、石英ガラス、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、サファイヤ、等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性材料又は前記電極層の材質としては、導電性を有する限り、特に制限はなく、例えば、金属、合金、導電性樹脂、炭素化合物、などが挙げられる。前記金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、亜鉛、などが挙げられる。前記合金としては、例えば、前記金属として例示したものの2種以上の合金などが挙げられる。前記導電性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、などが挙げられる。前記炭素化合物としては、例えば、導電性カーボン、導電性ダイヤモンド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記電極層を前記絶縁性基材上に設ける場合、該電極層と該絶縁性基材との密着性を向上させる目的で、これらの間に密着層を設けてもよい。
前記密着層の材質、形状、構造、厚み、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記材質としては、例えば、クロム、チタンなどが挙げられ、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0014】
前記電極層としては、その表面に絶縁膜を被覆して該電極層の一部のみが露出するようにして、該電極層の大きさ、形状等を適宜所望の程度に調節してもよい。前記電極層の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
前記絶縁膜としては、その材質、形状、構造、厚み、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、アモルファスガラス、ノンドープ・ドープSiO2、SiNxなどの酸化物、窒化物、また、ポリイミドやフォトレジストのような高分子化合物が好適に挙げられる。前記フォトレジスト材料としては、例えば、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト、電子線レジストなどが挙げられる。
【0015】
なお、本発明においては、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に電位を印加するために、これらとは異なる対向電極、参照電極などを有するのが好ましい。これらの数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記対向電極は、前記導電性基材乃至前記電極(作用電極)と対向して配置され、これらに電位を印加するための電極である。前記参照電極は、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)との間の電位を調整するための電極である。前記参照電極を用いた電位の調整は、三電極法として知られている。
前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)が2以上設けられている場合、これらの前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に対し、異なるタイミングで任意に電位を印加乃至変化させることにより、異なるタイミングで各作用電極層に固定(結合)させた前記プローブを脱離させることができる。
【0016】
<プローブ>
前記プローブとしては、前記基材に一端が結合され、標識を一部に有し、標的核酸と共に2本鎖を形成可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記プローブは、通常、水溶液中で負に帯電している。
前記基材との結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電気的結合、化学結合、吸着などが挙げられる。
前記化学結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、硫黄原子(S)を含む結合、具体的には、チオール基(−S−H)、ジスルフィド基(−S−S−)などを含んだプローブと導電性基材との結合が挙げられる。該導電性基材と前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を含むプローブとの結合である場合には、後述するように、該導電性基材に一定の電位を印加すると、前記導電性基材と結合する硫黄原子(S)との結合が切断され、前記プローブのうちのいくつかが前記導電性基材から脱離する。その結果、いくつかの前記プローブの脱離によってプローブ密度が低減され、所望の程度に調整される。
【0017】
前記プローブの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、粒状、板状、これらの2以上の組合せ、など挙げられるが、これらの中でも、線状などが好ましい。
【0018】
前記プローブの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、プローブの一部に前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を有するポリヌクレオチドが好ましく、末端に前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を有する、DNA、RNA、これらとタンパク質との複合体などが特に好ましい。なお、前記DNA及びRNAは、一本鎖である。
【0019】
前記プローブの大きさ乃至長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該プローブが前記ポリヌクレオチドである場合、少なくとも6塩基以上が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜150塩基が特に好ましい。
【0020】
前記プローブの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学合成法、発酵生産法などのいずれでもよく、また、該プローブは、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0021】
−標識−
前記標識としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光色素、酸化還元マーカーなどが好適に挙げられる。
なお、前記標識が蛍光色素である場合、蛍光強度により、標識と基材との距離を検出でき、前記標識が酸化還元マーカーである場合、酸化還元電流により、標識と基材との距離を検出できる。
【0022】
−−蛍光色素−−
前記蛍光色素は、基材と相互作用している間(例えば、該金属の近傍に位置している間)は、吸収可能な波長の光が照射されても発光せず、該金属と相互作用しなくなった時(例えば、該金属とは離接している時)には、吸収可能な波長の光が照射されるとその光エネルギーにより発光可能であるものが特に好適に使用可能である。前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、下記構造式1で表される化合物などが好適に挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
−−酸化還元マーカー−−
前記酸化還元マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式2で表される化合物、下記構造式3で表される化合物、などが挙げられる。
【化2】
【化3】
【0025】
−標的核酸−
前記標的核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドが挙げられ、ポリヌクレオチドの具体例としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子、病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子、などが挙げられる。
前記標的核酸の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、ループ状、立体構造状、などが挙げられるが、これらの中でも、線状が好ましい。
前記標的核酸の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3塩基〜2,000塩基が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜200塩基が特に好ましい。
前記長さが3塩基未満であると、2本鎖を形成する力が弱く、ハイブリダイゼーションが進まないことがあり、2,000塩基を超えると、標的核酸自身がハイブリダイゼーションを起こし、プローブとの2本鎖形成を阻害することがある。一方、特に好ましい範囲であると、2本鎖形成がスムーズに進む点で有利である。
前記標的核酸の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記プローブの全てが2本鎖を形成するのに十分な量であることが好ましい。
十分な量の標的核酸を得るために、該標的核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等で増幅させてもよい。
【0026】
−2本鎖−
前記2本鎖は、プローブと標的核酸が結合して二重螺旋を形成したものである。
前記プローブの塩基と、前記標的核酸の塩基とが一旦結合すると、該結合点から塩基同士の結合が基材側及び標識側に進むと考えられる。
前記2本鎖形成において、プローブの長さが、標的核酸の長さより長い場合、2本鎖は、二重螺旋構造と、標的核酸と二重螺旋を形成していないプローブ部分とを有する。一方、前記2本鎖形成において、標的核酸の長さが、プローブの長さより長い場合、2本鎖は、二重螺旋構造と、プローブと二重螺旋を形成していない標的核酸部分とを有する。
このように標的核酸とのハイブリダイゼーションにより生じた2本鎖の形状としては、特に制限はなく、標的核酸がプローブに比べて長い場合、プローブが標的核酸に比べて長い場合、標的核酸とプローブが同じ長さの場合などが挙げられるが、これらの中でも、標的核酸とプローブが同程度の長さが好ましい。
前記2本鎖形成部分の直径は、塩を適宜含んだ水溶液中では、2nmであることが広く知られている。
前記2本鎖の直径とは、二重螺旋を円柱とした場合の直径を示す。
前記2本鎖の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも6塩基以上が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜150塩基が特に好ましい。
前記長さが6塩基未満であると、2本鎖を形成する力が弱く、ハイブリダイゼーションが進まないことがあり、1,000塩基を超えると、標的核酸自身がハイブリダイゼーションを起こしプローブとの2本鎖形成を阻害することがある。一方、特に好ましい範囲であると、2本鎖形成がスムーズに進む点で有利である。
前記2本鎖の長さは、二重螺旋部分の長さである。
【0027】
<基材におけるプローブの配置>
前記基材におけるプローブの配置としては、前記標的核酸と共に2本鎖を形成可能であり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。ただし、六方最密で基板上に配置される分子の理論上の上限は、7.6×10−10mol/cm2(4.6×1014molecules/cm2)であるため、配置されるプローブの面密度は、この面密度以下が好ましい(Journal of the American Chemical Society Vol.113,p.2805−2810,1991 Cindra A. Widrig, Carla A. Alves, Marc D. Porter参照)。
「前記標的核酸と共に2本鎖を形成可能である」ためには、複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、2本鎖の直径以上である必要がある。
また、「前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる」ためには、複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、前記一のプローブの長さと前記一のプローブに隣接する他のプローブの長さとの合計未満である必要がある。
【0028】
また、後述する図2Aで示すように、プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密で配置されたとしたとき、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置することが好ましい。
また、プローブの長さより短い任意の長さを半径とする円が六方最密で配置されたとしたとき、前記円の中心に、複数のプローブの基材に対する結合点が位置する場合、Xがプローブ(一本鎖)の平均長さを示すとすると、複数のプローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(1)を満たすと、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる。
面密度>√3/(6X2) ・・・式(1)
【0029】
前記複数のプローブの基材に対する結合点の面密度のコントロールは、電解液中の塩濃度及び浸漬時間を調節する方法(例えば、特許文献2参照)や、ssDNAを導電性基板上に固定した後で、電気的に一部のssDNAを脱離させる方法(例えば、特許文献3参照)等を用いて行う。
【0030】
図1A〜Cは、標的検出装置を説明するための図であり、図1A〜Cでは、信号観測用に蛍光色素を用いたDNAチップが例示されている。
【0031】
図1Aに示すように、DNA10の先端にラベルした蛍光色素11は、導電性基板12に近づくと発光のエネルギーが導電性基板12に移動し(共鳴エネルギー移動)、発光が弱まったり、消光したりする現象が知られている。このことから、数百ナノメートルの距離のオーダーでは、発光強度は距離の3乗に比例することが、Rant, U., Arinaga, K., Fujita, S., Yokoyama, N., Abstreiter, G., Tornow, M., “Dynamic electrical switching of DNA layers on a metal surface”, 2004. Nano Lett. 4, 2441−2445.に報告されている。
【0032】
図1Aでは、蛍光強度によりDNA10の形態を検出する方法が模式的に表されている。DNA10が立ち上がった状態では、蛍光色素11と導電性基板12表面の距離が大きく、発光強度が高い。一方、DNA10が倒れたり、収縮した状態では、蛍光色素11と導電性基板12表面との距離が縮まり、発光が抑えられる。
【0033】
図1Bでは、比較的密に検出用の1本鎖プローブDNA(ssDNA)15を形成した状態を示す。1本鎖プローブDNA(ssDNA)15は、柔軟で、屈曲、収縮が可能なため、平均として、基板17上で収縮したような構造を取り、先端にラベルした蛍光色素16と基板17の表面との距離は小さい。このような状態では蛍光強度も小さい。
基板17上に、標的DNA18を含む水溶液を加えると、直ちにハイブリダイゼーションが始まり、最終的に、図1Cのような2本鎖(dsDNA)20を形成する。2本鎖(dsDNA)20は、このスケール(100ナノメートル程度)では、硬く、ロッド状の形状を取ることが知られているため、基板17上では、隣接する2本鎖(dsDNA)20による立体障害によって、大きく傾いたり、倒れこんだりすることができず、比較的立ち上がった状態を維持する。2本鎖(dsDNA)20と基板17上との固定点が、1本鎖プローブDNA(ssDNA)15の端部の1点のみであるため、根元(基板への固定点側)から倒れこむとも考えられるが、通常のDNAチップ等の測定温度である室温付近、あるいは2本鎖を形成する温度(4℃〜90℃)範囲では、熱エネルギーにより、2本鎖の先端(蛍光色素16)が図1Dにおける半球状領域A内を高速移動して、隣接する2本鎖(dsDNA)20による立体障害により、2本鎖の先端(蛍光色素16)の高さ位置がBより低くなることはない。このような状態では、蛍光色素16と基板17の表面との距離が大きく、蛍光強度も大きい。以上より、立体障害が発生するような面密度に調整した1本鎖プローブDNA(ssDNA)15を用いることにより、蛍光強度の変化を観察することによって、標的DNA18とのハイブリダイゼーションを検出するDNAチップを作製することができる。また、1本鎖プローブDNA(ssDNA)15のみをラベル化しているため、標的DNAは非標識(ノンラベル)で、検出可能である。これにより、ラベル化標的DNAの非特異吸着を防ぐための洗浄をなくすことができ、また、ラベル化標的DNAの非特異吸着によるSN比低減を防止することができる。
【0034】
本発明では、導電性基板に固定されている一端の反対側の他端を蛍光色素でラベル化したプローブDNA(ssDNA)(標的DNAの相補鎖DNA)を用い、2本鎖を形成する場合に立体障害が生ずる面密度(隣接するプローブDNA(ssDNA)の基板に対する結合点間の間隔が、2本鎖の直径以上であり、隣接するプローブDNA(ssDNA)の長さの合計未満に調整されたもの)で金属基板に固定する。標的DNAを含む溶液は、標的DNAがラベルフリーの状態で、基板上に注がれ、プローブDNA(ssDNA)と2本鎖を形成させる。なお、プローブDNA、標的DNAは、それぞれ、プローブRNA、標的RNAであってもよい。
【0035】
即ち、金属基板に固定されたプローブDNA(ssDNA)は、1本鎖で、構造に柔軟性があり(Tinland, B., Pluen, A., Sturm, J., Weill, G., “Persistence Length of Single−Stranded DNA”, 1997. Macromolecules 30, 5763−5765.参照)、立体障害が起きにくく、熱揺らぎにより、ある特定の平均的な構造を取っている。この状態で、プローブDNA(ssDNA)にラベルされた蛍光色素は、励起光によって蛍光を発するが、金属基板にも励起エネルギーの一部が移動するために、その蛍光強度はラベルと基板との距離に依存する。次に、標的DNAを挿入し、プローブDNA(ssDNA)とハイブリダイズし、2本鎖を形成させる。2本鎖DNAは、1本鎖DNAに比べ、硬く、棒のような構造を取ることが知られている(Marko, J.F., Siggia, E.D., “Stretching DNA”, 1995. Macromolecules 28, 8759−8770.参照)。よって、2本鎖DNAは、図1Dにおける半球状領域A内を高速移動して、隣接する2本鎖DNAによる立体障害を避けるために、立ち上がった構造を取る。その結果、2本鎖DNAの先端(他端)の蛍光色素と基板との距離はより広がり、ハイブリダイゼーション前より、蛍光強度は増大する。この蛍光強度の変化から、検査溶液中の標的DNAの有無、配列情報を得ることが可能となる。また、検査溶液中の標的DNAをラベル化する必要が無く、また、信号はハイブリダイゼーションに由来するもののみであることから、標的DNAの非特異吸着によるSN比の低下は、起こらない。
【0036】
以下に、本発明の動作原理について、図2A〜図2C、図3A〜図3Cを用いて、さらに詳細に説明する。
まず、導電性基板上に標的DNAと相補関係の1本鎖プローブDNA(ssDNA)を所定の密度で固定化する。1本鎖プローブDNA(ssDNA)の固定は、1本鎖プローブDNA(ssDNA)を含有する電解液中に導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度及び浸漬時間を調節する方法(例えば、特許文献2参照)や、ssDNAを導電性基板上に固定した後で、電気的に一部のssDNAを脱離させる方法(例えば、特許文献3参照)等を用いて行う。前記プローブは、水溶液中で負に帯電しているので、図2Aに示すように、プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置するものと考えられる。このため、基板30に固定するプローブ(ssDNA)31の長さXが決まれば(図2B)、2本鎖を形成したときに前記標識を前記基材から離間させる立体障害が発生する、プローブの基材に対する結合点の面密度を求めることができる(図2C)。図2Cの斜線部分の領域の面密度となるようにコントロールすれば、前記立体障害が発生する。
なお、プローブの長さXを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置すると仮定すると(図2A参照)、プローブの基材に対する結合点の面密度が下記式(2)を満たす。前記プローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(2)の面密度より大きくなると(プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置する)と、2本鎖を形成したときに立体障害が発生する。
面密度=1/(2X・2√3X/2)=√3/(6X2) ・・・式(2)
【0037】
図3Aに示すように、ssDNA1の他端(基板3に固定されている一端の反対側)には、蛍光色素等の標識(ラベル)2を付与し、ssDNA1の平均的な状態を可視化できるようにする。ssDNA1は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のssDNAと該一のssDNAに隣接した他のssDNAとの距離が、一のssDNAの長さと該一のssDNAに隣接した他のssDNAの長さの合計未満であっても、立体障害を起こしにくく、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な標識(他端)の位置はssDNA1の長さの半分であるDsに相当する。それに対し、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(dsDNA)4は、比較的硬い棒状の形態であると考えられるため、図3Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(dsDNA)4との間で立体障害が発生し、標識2(他端)が基板3に近づくことができない。このときの基板3から標識2(他端)までの平均的な距離は、2本鎖DNA(dsDNA)4の長さよりも短いDwである。
図3Cは、蛍光色素(標識2)のエネルギーの基板3への共鳴エネルギー移動を考慮して、蛍光強度と基板3からの距離の関係をプロットしたものである。図3Cより明らかなように、標的DNAと2本鎖を形成する前のssDNA1の標識2(他端)部分と基板3との距離は平均としてDs、2本鎖を形成した後のdsDNA4の標識2(他端)と基板3との距離の平均はDwであることから、蛍光強度を観察することによって、標的DNAの検出を距離Dsでの蛍光強度FIsと距離Dwでの蛍光強度FIwの差として、観察することが可能である。また、蛍光強度は距離の3乗に比例することから、検出はノンリニアで、感度が高いものといえる。
【0038】
(標的検出装置の製造方法)
本発明の標的検出装置の製造方法は、プローブ配置工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
【0039】
<プローブ配置工程>
前記プローブ配置工程は、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させる工程である。
【0040】
前記立体障害を生じる数は、例えば、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生じる面密度と、プローブを配置する領域の面積との積により算出することができる。
【0041】
前記プローブには、カウンターカチオンが配位したことが好ましい。
前記プローブに、カウンターカチオンが配位することにより、前記プローブにおけるアニオンがカウンターカチオンによって中和して、プローブ間の静電反発を抑制する。従って、カウンターカチオンの濃度を変えて、プローブ間の静電反発力を制御することで、プローブの密度をコントロールすることができる。
【0042】
前記カウンターカチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Na+、K+などが挙げられる。
【0043】
例えば、NaClを用い、NaClのイオン濃度(塩濃度)を変化させて、負電荷を有するオリゴヌクレオチドのスクリーニング効果を制御した。オリゴヌクレオチドの構造は既知であるが、水溶液中の実効サイズは不明なため、塩濃度3mM,500mM,1,000mMの条件で、あらかじめ、一本鎖オリゴヌクレオチドのチオール基を金電極と反応させ、金電極表面に付着したオリゴヌクレオチドの付着密度を測定した。
【0044】
図4は、1本鎖オリゴヌクレオチドの付着密度と電解質のイオン濃度の関係を示すグラフである。図4の○印は実験で求めた24残基1本鎖DNAの付着密度である。
【0045】
次に、所望の付着密度として、3×1012molecules/cm2にコントロールされた電極表面をこの計算曲線から得る場合には、一旦求められたこの計算曲線から、塩濃度を50mMに制御すればよいことが分かる。図4中●印は塩濃度を50mMに制御してオリゴヌクレオチドを付着させた実験値である。計算から容易に所望の付着密度の塩濃度の条件を得ることができる。
【0046】
また、■印は、同様のチオール基を持つ12残基1本鎖オリゴヌクレオチドを用いた場合の付着実験結果である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0048】
(実施例1)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を4.5×1011(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を50mMに調節し、浸漬時間を15分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が16nmになるように密度を4.5×1011(molecules/cm2)に調整した。なお、図2Cより、密度を1.1×1011(molecules/cm2)超に調整すれば立体障害が発生することが分かる。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0049】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0050】
図5Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(16nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)未満であっても、立体障害を起こしにくい。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。それに対し、ss48DNA5と標的DNAとで形成された2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であり、図5Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生し、標識6が基板7に近づくことができない。このときの基板7から2本鎖DNA(ds48DNA)8の他端(標識6)までの平均的な距離は、図5Cに示すように、(L48+√3/2L48)/2=(2+√3)L48/4(=15nm)である。
【0051】
図5Dは、観察される蛍光強度を推定される基板からの距離でプロットしたものである。理論値(点線)と良く一致しており、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、顕著に検出することが可能なことが示されている。また、ここでは、ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の差を観察し、標的DNAを検出しているが、ハイブリダイゼーションをリアルタイムで観察することによって、2本鎖形成途中の状態を観察することもできる。
【0052】
(実施例2)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を1.5×1011(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を50mMに調節し、浸漬時間を5分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が16√3=27.7nmになるように密度を1.5×1011(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0053】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0054】
図6Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(27.7nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)未満であっても、立体障害を起こしにくい。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。それに対し、ss48DNA5と標的DNAとで形成された2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であり、図6Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生し、標識6が基板7に近づくことができない。このときの基板7から2本鎖DNA(ds48DNA)の他端(標識6)までの平均的な距離は、図6Cに示すように、(L48+1/2L48)/2=(3/4)L48(=12nm)である。
【0055】
図6Dは、観察される蛍光強度を推定される基板からの距離でプロットしたものである。理論値(点線)と良く一致しており、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、顕著に検出することが可能なことが示されている。また、ここでは、ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の差を観察し、標的DNAを検出しているが、ハイブリダイゼーションをリアルタイムで観察することによって、2本鎖形成途中の状態も観察することもできる。
【0056】
(比較例1)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を9.4×1010(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を10mMに調節し、浸漬時間を15分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生しないよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が35nmになるように密度を9.4×1010(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0057】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0058】
図7Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有し、さらに、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(35nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)以上であるため、立体障害を起こさない。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。一方、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であるものの、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(35nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)以上であり、図7Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生しないため、このときの基板7からDNAの先端までの平均的な距離もss48DNA5と同じ8nmである。
結果として、図7Cのように、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、検出することはできなかった。
【0059】
(比較例2)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を7.2×1012(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を500mMに調節し、浸漬時間を30分間に調節することによって行った。1本鎖を基板に形成したときに、すでに十分な立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が4nmになるように密度を7.2×1012(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0060】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50 mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
図8Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するが、隣接したDNAとの距離が非常に短い場合は、立体障害を起こし、伸張した状態を維持し、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48(=16nm)に相当する。また、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(ds48DNA)8は、同様に、立体障害で立ち上がった状態となり、このときの基板から2本鎖DNA(ds48DNA)8の他端までの平均的な距離は、図8Bに示すようにss48DNA5と同じL48(=16nm)である。
結果として、図8Cのように、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、検出することはできなかった。
【0061】
以上の実施例1〜2、比較例1〜2より、基板7と2本鎖DNA8とのなす角が30°から60°の範囲に面密度を調整したものが好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0062】
1 1本鎖DNA(プローブssDNA)
2 標識(ラベル)
3 基板
4 2本鎖DNA
5 ss48DNA
6 標識(ラベル)
7 基板
8 2本鎖DNA(ds48DNA)
10 DNA
11 蛍光色素
12 導電性基板
15 1本鎖プローブDNA(ssDNA)
16 蛍光色素
17 基板
18 標的DNA
20 2本鎖(dsDNA)
30 基板
31 プローブ(ssDNA)
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的検出装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「ナノバイオ」乃至「バイオナノ」をキーワードとして、試験管、フラスコなどを用いた従来のバイオ実験を固体基板上で実施可能な、バイオチップ、バイオ検出デバイスの研究開発が精力的に行われている。標的分子として特定の核酸を評価乃至検出可能なチップは、DNAチップ(RNAチップ)と呼ばれ、遺伝子解析に広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、特定のタンパク質を検出可能なチップは、プロテインチップと呼ばれ、現在開発途上である。
【0003】
これらのDNAチップ、RNAチップなどを用いた遺伝子解析は、ライフサイエンス、食品、農業、創薬、医療など様々な分野に応用されている。DNAチップ(RNAチップ)の基本原理は、標的(検査対象)DNA(RNA)を蛍光色素等でラベル化(可視化)し、基板に固定された相補配列のDNA(RNA)との2本鎖形成(ハイブリダイゼーション)を通して、標的DNA(RNA)の有無、配列の同定を蛍光色素等のラベルから発光される光の信号により解析している。このような手法では、標的DNA(RNA)のラベル化は必須である。よって、標的DNA(RNA)を確実にラベル化する手法と、基板に固定された相補配列のDNA(RNA)と2本鎖を形成していないラベル化DNA(RNA)からの信号(非特異的吸着による信号)を低減して、SN比を改善する方法が必要である。このため、標的DNA(RNA)を含んだサンプルのラベル化工程と、非特異吸着したDNA(RNA)を除去する洗浄工程が別途必要となり、その工程に時間がかかり、また、十分な洗浄処理ができなかった場合に、SN比が低下するという問題がある。
【0004】
また、電荷を有する分子を基板に付着させるに際し、前記分子を含んだ溶液に電解質を共存させ、前記基板への分子付着密度をコントロールすること(例えば、特許文献2参照)が検討されており、さらに、導電性基材上に、分子による分子膜を形成し、導電性基材上に電位を印加し、該分子膜における分子の一部を前記導電性基材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調節することにより、基板上に形成された分子間の立体障害を小さくすること(例えば、特許文献3参照)が検討されているが、基板上に形成された分子間の立体障害を利用して、標的核酸の評価乃至検出を行うことは未だ検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/075735号パンフレット
【特許文献2】特許4230431号公報
【特許文献3】特開2007−202451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、標的核酸を高精度且つ短時間で検出可能な標的検出装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
開示の標的検出装置は、基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置された。
また、開示の標的検出装置の製造方法は、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させるプローブ配置工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
開示の標的検出装置によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、標的核酸を高精度且つ短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、標的検出装置を説明するための図である(その1)。
【図1B】図1Bは、標的検出装置を説明するための図である(その2)。
【図1C】図1Cは、標的検出装置を説明するための図である(その3)。
【図1D】図1Dは、標的検出装置を説明するための図である(その4)。
【図2A】図2Aは、6方最密(細密)充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その1)。
【図2B】図2Bは、6方最密充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その2)。
【図2C】図2Cは、6方最密充填で配置されたプローブの長さと、2本鎖が立体障害を発生する面密度との関係を説明するための図である(その3)。
【図3A】図3Aは、標的検出装置としてのDNAチップを示す図である(その1)。
【図3B】図3Bは、標的検出装置としてのDNAチップを示す図である(その2)。
【図3C】図3Cは、基板からの距離と蛍光強度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、1本鎖オリゴヌクレオチドの付着密度と電解質のイオン濃度の関係と電解質のイオン濃度の関係を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、実施例1を説明するための図である(その1)。
【図5B】図5Bは、実施例1を説明するための図である(その2)。
【図5C】図5Cは、実施例1を説明するための図である(その3)。
【図5D】図5Dは、実施例1を説明するための図である(その4)。
【図6A】図6Aは、実施例2を説明するための図である(その1)。
【図6B】図6Bは、実施例2を説明するための図である(その2)。
【図6C】図6Cは、実施例2を説明するための図である(その3)。
【図6D】図6Dは、実施例2説明するための図である(その4)。
【図7A】図7Aは、比較例1を説明するための図である(その1)。
【図7B】図7Bは、比較例1を説明するための図である(その2)。
【図7C】図7Cは、比較例1を説明するための図である(その3)。
【図8A】図8Aは、比較例2を説明するための図である(その1)。
【図8B】図8Bは、比較例2を説明するための図である(その2)。
【図8C】図8Cは、比較例2を説明するための図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(標的検出装置)
本発明の標的検出装置は、基材と、プローブとを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0011】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、適宜目的に応じて選択することができるが、導電性基材が好ましく、その構造としては、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、全体が導電性材料で形成された構造であってもよいし、絶縁性基材上に導電性材料による電極層が設けられた構造などであってもよい。
【0012】
前記基材としては、その形状、大きさ、表面性状、数等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状、円状、楕円状などが挙げられる。前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記表面性状としては、例えば、光沢面、粗面などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記絶縁性基材の材質としては、例えば、石英ガラス、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、サファイヤ、等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性材料又は前記電極層の材質としては、導電性を有する限り、特に制限はなく、例えば、金属、合金、導電性樹脂、炭素化合物、などが挙げられる。前記金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、亜鉛、などが挙げられる。前記合金としては、例えば、前記金属として例示したものの2種以上の合金などが挙げられる。前記導電性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、などが挙げられる。前記炭素化合物としては、例えば、導電性カーボン、導電性ダイヤモンド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記電極層を前記絶縁性基材上に設ける場合、該電極層と該絶縁性基材との密着性を向上させる目的で、これらの間に密着層を設けてもよい。
前記密着層の材質、形状、構造、厚み、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記材質としては、例えば、クロム、チタンなどが挙げられ、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0014】
前記電極層としては、その表面に絶縁膜を被覆して該電極層の一部のみが露出するようにして、該電極層の大きさ、形状等を適宜所望の程度に調節してもよい。前記電極層の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
前記絶縁膜としては、その材質、形状、構造、厚み、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、アモルファスガラス、ノンドープ・ドープSiO2、SiNxなどの酸化物、窒化物、また、ポリイミドやフォトレジストのような高分子化合物が好適に挙げられる。前記フォトレジスト材料としては、例えば、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト、電子線レジストなどが挙げられる。
【0015】
なお、本発明においては、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に電位を印加するために、これらとは異なる対向電極、参照電極などを有するのが好ましい。これらの数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記対向電極は、前記導電性基材乃至前記電極(作用電極)と対向して配置され、これらに電位を印加するための電極である。前記参照電極は、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)との間の電位を調整するための電極である。前記参照電極を用いた電位の調整は、三電極法として知られている。
前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)が2以上設けられている場合、これらの前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に対し、異なるタイミングで任意に電位を印加乃至変化させることにより、異なるタイミングで各作用電極層に固定(結合)させた前記プローブを脱離させることができる。
【0016】
<プローブ>
前記プローブとしては、前記基材に一端が結合され、標識を一部に有し、標的核酸と共に2本鎖を形成可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記プローブは、通常、水溶液中で負に帯電している。
前記基材との結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電気的結合、化学結合、吸着などが挙げられる。
前記化学結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、硫黄原子(S)を含む結合、具体的には、チオール基(−S−H)、ジスルフィド基(−S−S−)などを含んだプローブと導電性基材との結合が挙げられる。該導電性基材と前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を含むプローブとの結合である場合には、後述するように、該導電性基材に一定の電位を印加すると、前記導電性基材と結合する硫黄原子(S)との結合が切断され、前記プローブのうちのいくつかが前記導電性基材から脱離する。その結果、いくつかの前記プローブの脱離によってプローブ密度が低減され、所望の程度に調整される。
【0017】
前記プローブの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、粒状、板状、これらの2以上の組合せ、など挙げられるが、これらの中でも、線状などが好ましい。
【0018】
前記プローブの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、プローブの一部に前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を有するポリヌクレオチドが好ましく、末端に前記チオール基(−S−H)又は前記ジスルフィド基(−S−S−)を有する、DNA、RNA、これらとタンパク質との複合体などが特に好ましい。なお、前記DNA及びRNAは、一本鎖である。
【0019】
前記プローブの大きさ乃至長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該プローブが前記ポリヌクレオチドである場合、少なくとも6塩基以上が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜150塩基が特に好ましい。
【0020】
前記プローブの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学合成法、発酵生産法などのいずれでもよく、また、該プローブは、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0021】
−標識−
前記標識としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光色素、酸化還元マーカーなどが好適に挙げられる。
なお、前記標識が蛍光色素である場合、蛍光強度により、標識と基材との距離を検出でき、前記標識が酸化還元マーカーである場合、酸化還元電流により、標識と基材との距離を検出できる。
【0022】
−−蛍光色素−−
前記蛍光色素は、基材と相互作用している間(例えば、該金属の近傍に位置している間)は、吸収可能な波長の光が照射されても発光せず、該金属と相互作用しなくなった時(例えば、該金属とは離接している時)には、吸収可能な波長の光が照射されるとその光エネルギーにより発光可能であるものが特に好適に使用可能である。前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、下記構造式1で表される化合物などが好適に挙げられる。
【0023】
【化1】
【0024】
−−酸化還元マーカー−−
前記酸化還元マーカーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式2で表される化合物、下記構造式3で表される化合物、などが挙げられる。
【化2】
【化3】
【0025】
−標的核酸−
前記標的核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドが挙げられ、ポリヌクレオチドの具体例としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子、病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子、などが挙げられる。
前記標的核酸の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、ループ状、立体構造状、などが挙げられるが、これらの中でも、線状が好ましい。
前記標的核酸の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3塩基〜2,000塩基が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜200塩基が特に好ましい。
前記長さが3塩基未満であると、2本鎖を形成する力が弱く、ハイブリダイゼーションが進まないことがあり、2,000塩基を超えると、標的核酸自身がハイブリダイゼーションを起こし、プローブとの2本鎖形成を阻害することがある。一方、特に好ましい範囲であると、2本鎖形成がスムーズに進む点で有利である。
前記標的核酸の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記プローブの全てが2本鎖を形成するのに十分な量であることが好ましい。
十分な量の標的核酸を得るために、該標的核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等で増幅させてもよい。
【0026】
−2本鎖−
前記2本鎖は、プローブと標的核酸が結合して二重螺旋を形成したものである。
前記プローブの塩基と、前記標的核酸の塩基とが一旦結合すると、該結合点から塩基同士の結合が基材側及び標識側に進むと考えられる。
前記2本鎖形成において、プローブの長さが、標的核酸の長さより長い場合、2本鎖は、二重螺旋構造と、標的核酸と二重螺旋を形成していないプローブ部分とを有する。一方、前記2本鎖形成において、標的核酸の長さが、プローブの長さより長い場合、2本鎖は、二重螺旋構造と、プローブと二重螺旋を形成していない標的核酸部分とを有する。
このように標的核酸とのハイブリダイゼーションにより生じた2本鎖の形状としては、特に制限はなく、標的核酸がプローブに比べて長い場合、プローブが標的核酸に比べて長い場合、標的核酸とプローブが同じ長さの場合などが挙げられるが、これらの中でも、標的核酸とプローブが同程度の長さが好ましい。
前記2本鎖形成部分の直径は、塩を適宜含んだ水溶液中では、2nmであることが広く知られている。
前記2本鎖の直径とは、二重螺旋を円柱とした場合の直径を示す。
前記2本鎖の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも6塩基以上が好ましく、6塩基〜1,000塩基がより好ましく、10塩基〜150塩基が特に好ましい。
前記長さが6塩基未満であると、2本鎖を形成する力が弱く、ハイブリダイゼーションが進まないことがあり、1,000塩基を超えると、標的核酸自身がハイブリダイゼーションを起こしプローブとの2本鎖形成を阻害することがある。一方、特に好ましい範囲であると、2本鎖形成がスムーズに進む点で有利である。
前記2本鎖の長さは、二重螺旋部分の長さである。
【0027】
<基材におけるプローブの配置>
前記基材におけるプローブの配置としては、前記標的核酸と共に2本鎖を形成可能であり、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。ただし、六方最密で基板上に配置される分子の理論上の上限は、7.6×10−10mol/cm2(4.6×1014molecules/cm2)であるため、配置されるプローブの面密度は、この面密度以下が好ましい(Journal of the American Chemical Society Vol.113,p.2805−2810,1991 Cindra A. Widrig, Carla A. Alves, Marc D. Porter参照)。
「前記標的核酸と共に2本鎖を形成可能である」ためには、複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、2本鎖の直径以上である必要がある。
また、「前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる」ためには、複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、前記一のプローブの長さと前記一のプローブに隣接する他のプローブの長さとの合計未満である必要がある。
【0028】
また、後述する図2Aで示すように、プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密で配置されたとしたとき、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置することが好ましい。
また、プローブの長さより短い任意の長さを半径とする円が六方最密で配置されたとしたとき、前記円の中心に、複数のプローブの基材に対する結合点が位置する場合、Xがプローブ(一本鎖)の平均長さを示すとすると、複数のプローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(1)を満たすと、前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる。
面密度>√3/(6X2) ・・・式(1)
【0029】
前記複数のプローブの基材に対する結合点の面密度のコントロールは、電解液中の塩濃度及び浸漬時間を調節する方法(例えば、特許文献2参照)や、ssDNAを導電性基板上に固定した後で、電気的に一部のssDNAを脱離させる方法(例えば、特許文献3参照)等を用いて行う。
【0030】
図1A〜Cは、標的検出装置を説明するための図であり、図1A〜Cでは、信号観測用に蛍光色素を用いたDNAチップが例示されている。
【0031】
図1Aに示すように、DNA10の先端にラベルした蛍光色素11は、導電性基板12に近づくと発光のエネルギーが導電性基板12に移動し(共鳴エネルギー移動)、発光が弱まったり、消光したりする現象が知られている。このことから、数百ナノメートルの距離のオーダーでは、発光強度は距離の3乗に比例することが、Rant, U., Arinaga, K., Fujita, S., Yokoyama, N., Abstreiter, G., Tornow, M., “Dynamic electrical switching of DNA layers on a metal surface”, 2004. Nano Lett. 4, 2441−2445.に報告されている。
【0032】
図1Aでは、蛍光強度によりDNA10の形態を検出する方法が模式的に表されている。DNA10が立ち上がった状態では、蛍光色素11と導電性基板12表面の距離が大きく、発光強度が高い。一方、DNA10が倒れたり、収縮した状態では、蛍光色素11と導電性基板12表面との距離が縮まり、発光が抑えられる。
【0033】
図1Bでは、比較的密に検出用の1本鎖プローブDNA(ssDNA)15を形成した状態を示す。1本鎖プローブDNA(ssDNA)15は、柔軟で、屈曲、収縮が可能なため、平均として、基板17上で収縮したような構造を取り、先端にラベルした蛍光色素16と基板17の表面との距離は小さい。このような状態では蛍光強度も小さい。
基板17上に、標的DNA18を含む水溶液を加えると、直ちにハイブリダイゼーションが始まり、最終的に、図1Cのような2本鎖(dsDNA)20を形成する。2本鎖(dsDNA)20は、このスケール(100ナノメートル程度)では、硬く、ロッド状の形状を取ることが知られているため、基板17上では、隣接する2本鎖(dsDNA)20による立体障害によって、大きく傾いたり、倒れこんだりすることができず、比較的立ち上がった状態を維持する。2本鎖(dsDNA)20と基板17上との固定点が、1本鎖プローブDNA(ssDNA)15の端部の1点のみであるため、根元(基板への固定点側)から倒れこむとも考えられるが、通常のDNAチップ等の測定温度である室温付近、あるいは2本鎖を形成する温度(4℃〜90℃)範囲では、熱エネルギーにより、2本鎖の先端(蛍光色素16)が図1Dにおける半球状領域A内を高速移動して、隣接する2本鎖(dsDNA)20による立体障害により、2本鎖の先端(蛍光色素16)の高さ位置がBより低くなることはない。このような状態では、蛍光色素16と基板17の表面との距離が大きく、蛍光強度も大きい。以上より、立体障害が発生するような面密度に調整した1本鎖プローブDNA(ssDNA)15を用いることにより、蛍光強度の変化を観察することによって、標的DNA18とのハイブリダイゼーションを検出するDNAチップを作製することができる。また、1本鎖プローブDNA(ssDNA)15のみをラベル化しているため、標的DNAは非標識(ノンラベル)で、検出可能である。これにより、ラベル化標的DNAの非特異吸着を防ぐための洗浄をなくすことができ、また、ラベル化標的DNAの非特異吸着によるSN比低減を防止することができる。
【0034】
本発明では、導電性基板に固定されている一端の反対側の他端を蛍光色素でラベル化したプローブDNA(ssDNA)(標的DNAの相補鎖DNA)を用い、2本鎖を形成する場合に立体障害が生ずる面密度(隣接するプローブDNA(ssDNA)の基板に対する結合点間の間隔が、2本鎖の直径以上であり、隣接するプローブDNA(ssDNA)の長さの合計未満に調整されたもの)で金属基板に固定する。標的DNAを含む溶液は、標的DNAがラベルフリーの状態で、基板上に注がれ、プローブDNA(ssDNA)と2本鎖を形成させる。なお、プローブDNA、標的DNAは、それぞれ、プローブRNA、標的RNAであってもよい。
【0035】
即ち、金属基板に固定されたプローブDNA(ssDNA)は、1本鎖で、構造に柔軟性があり(Tinland, B., Pluen, A., Sturm, J., Weill, G., “Persistence Length of Single−Stranded DNA”, 1997. Macromolecules 30, 5763−5765.参照)、立体障害が起きにくく、熱揺らぎにより、ある特定の平均的な構造を取っている。この状態で、プローブDNA(ssDNA)にラベルされた蛍光色素は、励起光によって蛍光を発するが、金属基板にも励起エネルギーの一部が移動するために、その蛍光強度はラベルと基板との距離に依存する。次に、標的DNAを挿入し、プローブDNA(ssDNA)とハイブリダイズし、2本鎖を形成させる。2本鎖DNAは、1本鎖DNAに比べ、硬く、棒のような構造を取ることが知られている(Marko, J.F., Siggia, E.D., “Stretching DNA”, 1995. Macromolecules 28, 8759−8770.参照)。よって、2本鎖DNAは、図1Dにおける半球状領域A内を高速移動して、隣接する2本鎖DNAによる立体障害を避けるために、立ち上がった構造を取る。その結果、2本鎖DNAの先端(他端)の蛍光色素と基板との距離はより広がり、ハイブリダイゼーション前より、蛍光強度は増大する。この蛍光強度の変化から、検査溶液中の標的DNAの有無、配列情報を得ることが可能となる。また、検査溶液中の標的DNAをラベル化する必要が無く、また、信号はハイブリダイゼーションに由来するもののみであることから、標的DNAの非特異吸着によるSN比の低下は、起こらない。
【0036】
以下に、本発明の動作原理について、図2A〜図2C、図3A〜図3Cを用いて、さらに詳細に説明する。
まず、導電性基板上に標的DNAと相補関係の1本鎖プローブDNA(ssDNA)を所定の密度で固定化する。1本鎖プローブDNA(ssDNA)の固定は、1本鎖プローブDNA(ssDNA)を含有する電解液中に導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度及び浸漬時間を調節する方法(例えば、特許文献2参照)や、ssDNAを導電性基板上に固定した後で、電気的に一部のssDNAを脱離させる方法(例えば、特許文献3参照)等を用いて行う。前記プローブは、水溶液中で負に帯電しているので、図2Aに示すように、プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置するものと考えられる。このため、基板30に固定するプローブ(ssDNA)31の長さXが決まれば(図2B)、2本鎖を形成したときに前記標識を前記基材から離間させる立体障害が発生する、プローブの基材に対する結合点の面密度を求めることができる(図2C)。図2Cの斜線部分の領域の面密度となるようにコントロールすれば、前記立体障害が発生する。
なお、プローブの長さXを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置すると仮定すると(図2A参照)、プローブの基材に対する結合点の面密度が下記式(2)を満たす。前記プローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(2)の面密度より大きくなると(プローブの長さより短い任意の長さを半径rとする円Aが六方最密(ヘキサゴナル)で配置され、前記各円Aの中心Cに、各プローブの基材に対する結合点が位置する)と、2本鎖を形成したときに立体障害が発生する。
面密度=1/(2X・2√3X/2)=√3/(6X2) ・・・式(2)
【0037】
図3Aに示すように、ssDNA1の他端(基板3に固定されている一端の反対側)には、蛍光色素等の標識(ラベル)2を付与し、ssDNA1の平均的な状態を可視化できるようにする。ssDNA1は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のssDNAと該一のssDNAに隣接した他のssDNAとの距離が、一のssDNAの長さと該一のssDNAに隣接した他のssDNAの長さの合計未満であっても、立体障害を起こしにくく、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な標識(他端)の位置はssDNA1の長さの半分であるDsに相当する。それに対し、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(dsDNA)4は、比較的硬い棒状の形態であると考えられるため、図3Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(dsDNA)4との間で立体障害が発生し、標識2(他端)が基板3に近づくことができない。このときの基板3から標識2(他端)までの平均的な距離は、2本鎖DNA(dsDNA)4の長さよりも短いDwである。
図3Cは、蛍光色素(標識2)のエネルギーの基板3への共鳴エネルギー移動を考慮して、蛍光強度と基板3からの距離の関係をプロットしたものである。図3Cより明らかなように、標的DNAと2本鎖を形成する前のssDNA1の標識2(他端)部分と基板3との距離は平均としてDs、2本鎖を形成した後のdsDNA4の標識2(他端)と基板3との距離の平均はDwであることから、蛍光強度を観察することによって、標的DNAの検出を距離Dsでの蛍光強度FIsと距離Dwでの蛍光強度FIwの差として、観察することが可能である。また、蛍光強度は距離の3乗に比例することから、検出はノンリニアで、感度が高いものといえる。
【0038】
(標的検出装置の製造方法)
本発明の標的検出装置の製造方法は、プローブ配置工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
【0039】
<プローブ配置工程>
前記プローブ配置工程は、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させる工程である。
【0040】
前記立体障害を生じる数は、例えば、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生じる面密度と、プローブを配置する領域の面積との積により算出することができる。
【0041】
前記プローブには、カウンターカチオンが配位したことが好ましい。
前記プローブに、カウンターカチオンが配位することにより、前記プローブにおけるアニオンがカウンターカチオンによって中和して、プローブ間の静電反発を抑制する。従って、カウンターカチオンの濃度を変えて、プローブ間の静電反発力を制御することで、プローブの密度をコントロールすることができる。
【0042】
前記カウンターカチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Na+、K+などが挙げられる。
【0043】
例えば、NaClを用い、NaClのイオン濃度(塩濃度)を変化させて、負電荷を有するオリゴヌクレオチドのスクリーニング効果を制御した。オリゴヌクレオチドの構造は既知であるが、水溶液中の実効サイズは不明なため、塩濃度3mM,500mM,1,000mMの条件で、あらかじめ、一本鎖オリゴヌクレオチドのチオール基を金電極と反応させ、金電極表面に付着したオリゴヌクレオチドの付着密度を測定した。
【0044】
図4は、1本鎖オリゴヌクレオチドの付着密度と電解質のイオン濃度の関係を示すグラフである。図4の○印は実験で求めた24残基1本鎖DNAの付着密度である。
【0045】
次に、所望の付着密度として、3×1012molecules/cm2にコントロールされた電極表面をこの計算曲線から得る場合には、一旦求められたこの計算曲線から、塩濃度を50mMに制御すればよいことが分かる。図4中●印は塩濃度を50mMに制御してオリゴヌクレオチドを付着させた実験値である。計算から容易に所望の付着密度の塩濃度の条件を得ることができる。
【0046】
また、■印は、同様のチオール基を持つ12残基1本鎖オリゴヌクレオチドを用いた場合の付着実験結果である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0048】
(実施例1)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を4.5×1011(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を50mMに調節し、浸漬時間を15分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が16nmになるように密度を4.5×1011(molecules/cm2)に調整した。なお、図2Cより、密度を1.1×1011(molecules/cm2)超に調整すれば立体障害が発生することが分かる。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0049】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0050】
図5Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(16nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)未満であっても、立体障害を起こしにくい。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。それに対し、ss48DNA5と標的DNAとで形成された2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であり、図5Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生し、標識6が基板7に近づくことができない。このときの基板7から2本鎖DNA(ds48DNA)8の他端(標識6)までの平均的な距離は、図5Cに示すように、(L48+√3/2L48)/2=(2+√3)L48/4(=15nm)である。
【0051】
図5Dは、観察される蛍光強度を推定される基板からの距離でプロットしたものである。理論値(点線)と良く一致しており、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、顕著に検出することが可能なことが示されている。また、ここでは、ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の差を観察し、標的DNAを検出しているが、ハイブリダイゼーションをリアルタイムで観察することによって、2本鎖形成途中の状態を観察することもできる。
【0052】
(実施例2)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を1.5×1011(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を50mMに調節し、浸漬時間を5分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が16√3=27.7nmになるように密度を1.5×1011(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0053】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0054】
図6Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するため、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(27.7nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)未満であっても、立体障害を起こしにくい。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。それに対し、ss48DNA5と標的DNAとで形成された2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であり、図6Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生し、標識6が基板7に近づくことができない。このときの基板7から2本鎖DNA(ds48DNA)の他端(標識6)までの平均的な距離は、図6Cに示すように、(L48+1/2L48)/2=(3/4)L48(=12nm)である。
【0055】
図6Dは、観察される蛍光強度を推定される基板からの距離でプロットしたものである。理論値(点線)と良く一致しており、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、顕著に検出することが可能なことが示されている。また、ここでは、ハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の差を観察し、標的DNAを検出しているが、ハイブリダイゼーションをリアルタイムで観察することによって、2本鎖形成途中の状態も観察することもできる。
【0056】
(比較例1)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を9.4×1010(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を10mMに調節し、浸漬時間を15分間に調節することによって行った。2本鎖を形成したときに立体障害が発生しないよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が35nmになるように密度を9.4×1010(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0057】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
【0058】
図7Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有し、さらに、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(35nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)以上であるため、立体障害を起こさない。また、ss48DNA5は、溶液中では熱運動によって、伸張したり収縮したりする運動を繰り返しており、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48の16nmの半分である8nmに相当する。一方、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(ds48DNA)8は、比較的硬い棒状であるものの、一のss48DNAの基板7に対する結合点と該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの基板7に対する結合点との距離(35nm)が、一のss48DNAの長さと該一のss48DNAに隣接した他のss48DNAの長さの合計長さ(32nm)以上であり、図7Bに示すように、隣接する2本鎖DNA(ds48DNA)8との間で立体障害が発生しないため、このときの基板7からDNAの先端までの平均的な距離もss48DNA5と同じ8nmである。
結果として、図7Cのように、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、検出することはできなかった。
【0059】
(比較例2)
<標的検出装置の作製>
厚み100nmのAu薄膜が形成された絶縁性ガラス基板(信越シリコン製)上に、標的DNAと相補関係の48塩基長の1本鎖プローブDNA(ss48DNA、長さL48:16nm)(つくばオリゴサービス製)の一端を7.2×1012(molecules/cm2)の密度で固定化した。
なお、ss48DNAの固定は、ss48DNAを含有する電解液中(pH7.4に調整された、NaCl(塩)を含有する10mMのトリスバッファー)に前記導電性基板を浸漬することによって行い、密度のコントロールは、電解液中の塩濃度を500mMに調節し、浸漬時間を30分間に調節することによって行った。1本鎖を基板に形成したときに、すでに十分な立体障害が発生するよう、ss48DNAの導電性基板に対する結合点の間隔が4nmになるように密度を7.2×1012(molecules/cm2)に調整した。
また、ss48DNAの他端(導電性基板に固定されている一端の反対側)には、565nmに発光波長を持つシアニン蛍光色素(商品名:Cy3(商標))の標識(ラベル)を付与し、ss48DNAの平均的な状態を可視化できるようにした。
【0060】
<標的検出>
ss48DNAと標的DNAが2本鎖を形成するように、作製した標的検出装置に、濃度100pMの標的DNA(つくばオリゴサービス製、長さ16nm)を含有するバッファー溶液(pH7.4、NaCl=50 mM、トリスバッファー=10mM)を加えた。なお、前記2本鎖の直径は、2nmと見積もれる。
2本鎖を形成したのち、蛍光検出装置(商品名:Typhoon)を用いて、蛍光強度を測定した。
図8Aに示すように、ss48DNA5は、柔軟な(屈曲、収縮が可能な)性質を有するが、隣接したDNAとの距離が非常に短い場合は、立体障害を起こし、伸張した状態を維持し、平均的な他端(標識6)の位置(基板7との距離)は、ss48DNA5の長さL48(=16nm)に相当する。また、標的DNAと2本鎖を形成した2本鎖DNA(ds48DNA)8は、同様に、立体障害で立ち上がった状態となり、このときの基板から2本鎖DNA(ds48DNA)8の他端までの平均的な距離は、図8Bに示すようにss48DNA5と同じL48(=16nm)である。
結果として、図8Cのように、1本鎖、2本鎖の違いを蛍光強度の差で、検出することはできなかった。
【0061】
以上の実施例1〜2、比較例1〜2より、基板7と2本鎖DNA8とのなす角が30°から60°の範囲に面密度を調整したものが好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0062】
1 1本鎖DNA(プローブssDNA)
2 標識(ラベル)
3 基板
4 2本鎖DNA
5 ss48DNA
6 標識(ラベル)
7 基板
8 2本鎖DNA(ds48DNA)
10 DNA
11 蛍光色素
12 導電性基板
15 1本鎖プローブDNA(ssDNA)
16 蛍光色素
17 基板
18 標的DNA
20 2本鎖(dsDNA)
30 基板
31 プローブ(ssDNA)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、
前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置されたことを特徴とする標的検出装置。
【請求項2】
複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、2本鎖の直径以上であって、前記一のプローブの長さと前記一のプローブに隣接する他のプローブの長さとの合計未満である請求項1に記載の標的検出装置。
【請求項3】
プローブの長さより短い任意の長さを半径とする円が六方最密で基材上に配置されたとしたとき、前記各円の中心に、各プローブの前記基材に対する結合点が位置する請求項1から2のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項4】
複数のプローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(1)を満たす請求項1から3のいずれかに記載の標的検出装置。
面密度>√3/(6X2) ・・・式(1)
但し、前記式(1)中、Xは、プローブの平均長さを示す。
【請求項5】
標識が蛍光色素であり、基材が導電性基板である請求項1から4のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項6】
標識が酸化還元マーカーであり、基材が導電性基板である請求項1から4のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項7】
プローブが、硫黄原子を分子の一部に有してなり、該硫黄原子を介して基材に結合可能である請求項1から6のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の標的検出装置の製造方法であって、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させるプローブ配置工程を含むことを特徴とする標的検出装置の製造方法。
【請求項9】
プローブにカウンターカチオンが配位した請求項8に記載の標的検出装置の製造方法。
【請求項10】
カウンターカチオンがNa+及びK+の少なくともいずれかである請求項9に記載の標的検出装置の製造方法。
【請求項1】
基材と、該基材上に一端が結合され、前記基材から離間したときに標識として機能する標識を一部に有し、かつ、標的核酸と共に2本鎖を形成可能な複数のプローブとを有してなり、
前記プローブが前記標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で前記標識を前記基材から離間させる立体障害が生ずる位置に、前記複数のプローブが配置されたことを特徴とする標的検出装置。
【請求項2】
複数のプローブのうちの、一のプローブの基材に対する結合点と、該一のプローブに隣接する他のプローブの基材に対する結合点との間隔が、2本鎖の直径以上であって、前記一のプローブの長さと前記一のプローブに隣接する他のプローブの長さとの合計未満である請求項1に記載の標的検出装置。
【請求項3】
プローブの長さより短い任意の長さを半径とする円が六方最密で基材上に配置されたとしたとき、前記各円の中心に、各プローブの前記基材に対する結合点が位置する請求項1から2のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項4】
複数のプローブの基材に対する結合点の面密度が、下記式(1)を満たす請求項1から3のいずれかに記載の標的検出装置。
面密度>√3/(6X2) ・・・式(1)
但し、前記式(1)中、Xは、プローブの平均長さを示す。
【請求項5】
標識が蛍光色素であり、基材が導電性基板である請求項1から4のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項6】
標識が酸化還元マーカーであり、基材が導電性基板である請求項1から4のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項7】
プローブが、硫黄原子を分子の一部に有してなり、該硫黄原子を介して基材に結合可能である請求項1から6のいずれかに記載の標的検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の標的検出装置の製造方法であって、プローブが標的核酸と共に2本鎖を形成したときに、一の2本鎖と該一の2本鎖に隣接する他の2本鎖との間で標識を基材から離間させる立体障害が生ずる数のプローブを基板上に配置させるプローブ配置工程を含むことを特徴とする標的検出装置の製造方法。
【請求項9】
プローブにカウンターカチオンが配位した請求項8に記載の標的検出装置の製造方法。
【請求項10】
カウンターカチオンがNa+及びK+の少なくともいずれかである請求項9に記載の標的検出装置の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2011−67174(P2011−67174A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222878(P2009−222878)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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