説明

樹脂およびゴム組成物ならびに該ゴム組成物を用いたタイヤ

【課題】タイヤ用ゴム組成物として用いた際に、低温域および高温域の双方において優れたグリップ性能を発揮する樹脂およびゴム組成物、ならびに該ゴム組成物を用いて得られる高性能なタイヤの提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるモノマー(I)と下記式(II)で表されるモノマー(II)とを共重合させて得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂およびゴム組成物ならびに該ゴム組成物を用いて得られるタイヤに関し、より詳しくは、タイヤ用ゴム組成物として用いた際に、低温域および高温域の双方において優れたグリップ性能を発揮する樹脂およびゴム組成物、ならびに該ゴム組成物を用いて得られる高性能なタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な空気入りタイヤは、種々の性能に優れることが望まれている。特にタイヤのグリップ性能は重要な性能の一つであり、ゴムの特性に大きく影響される。こうしたグリップ性能は、ドライグリップ、ウェットグリップなどにより評価され、従来より様々なグリップ性能を付与するタイヤ用ゴム組成物が開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ジエン系ゴムに、スチレンモノマーからなる重合体を含有させたゴム組成物が開示されており、優れたグリップ性能を有することが示されている。また、特にウェットグリップ性能の向上を実現し得るゴム組成物として、ジエン系ゴムに、スチレンまたはα−メチルスチレンなどをモノマー成分とする重合体を含有させたもの(特許文献2参照)、α−メチルスチレンや芳香族置換α−メチルスチレンなどをモノマー成分とする重合体を含有させたもの(特許文献3〜5参照)も開示されている。
【0004】
これらは、いずれもジエン系ゴムに配合する重合体として芳香族ビニル重合体を採用しており、この重合体を形成するモノマーとしての特性を種々の観点から規定することによって、グリップ性能のみならず、必要に応じて耐摩耗性、低燃費性(低転がり抵抗性)などを付与するタイヤ用ゴム組成物である。そして、特許文献3〜5には、芳香族ビニル重合体を形成するモノマーとして、α−メチルスチレンと、メチル基、エチル基、プロピル基などで核置換された芳香族置換α−メチルスチレンとのいずれを選択しても、同等の効果を奏するものであることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−112994号公報
【特許文献2】特開2007−302713号公報
【特許文献3】特開平11−49894号公報
【特許文献4】特開平10−195242号公報
【特許文献5】特開平10−195238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえばα−メチルスチレンモノマーを採用した場合、グリップ性能自体は向上するものの、ポリマーへの分散が悪化するおそれがあるため、必ずしも低温域での作動性は良好ではない。また、芳香族置換α−メチルスチレンを採用した場合、ポリマーへの分散が向上して低温域においては良好な作動性を示すものの、高温域でのグリップ性能に関しては改良の余地が残されている。
【0007】
このように、これらいずれのゴム組成物をタイヤに用いても、グリップ性能に関して、高温域で良好な場合には低温域では良好な効果を発揮しにくく、逆に低温域で良好であっても高温域では必ずしも良好ではなく、双方の温度域において良好なグリップ性能を充分に示すものではない。
【0008】
そこで、本発明は、タイヤ用ゴム組成物として用いた際、高温域および低温域の双方において、優れたグリップ性能を発揮し得る樹脂、およびこれをゴム成分に配合したゴム組成物、ならびにそれを用いたタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特定のモノマー2種を共重合させて得られる樹脂を開発し、これをゴム成分に配合したゴム組成物を採用することで、タイヤに用いた場合に温度域にかかわらず優れたグリップ性能を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の樹脂は、下記式(I)で表されるモノマー(I)と下記式(II)で表されるモノマー(II)とを共重合させて得られることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
式(I)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはハロゲン基を示す。式(II)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはハロゲン基を示す。
【0014】
また、本発明の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜15,000であることが好ましい。
本発明の前記モノマー(I)において、前記式(I)中のRはCH、CまたはC17であることが好ましく、また、前記RがCである場合、前記モノマー(II)において、前記式(II)中のRは、水素原子あるいはtertブチル基であることが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂において、前記式(I)で表されるモノマー(I)の割合(a質量%)と前記式(II)で表されるモノマー(II)の割合(b質量%)とは、下記式(III)〜(V)を満たすことが好ましい。
20≦a≦90 ・・・(III)
10≦b≦80 ・・・(IV)
a+b=100 ・・・(V)
【0016】
本発明の樹脂は、前記式(I)で表されるモノマー(I)と前記式(II)で表されるモノマー(II)とをフリーデルクラフツ型触媒の存在下で共重合して得ることが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物は、前記樹脂を配合して成ることを特徴とする。
また、その際、前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対し、前記樹脂を1〜100質量部配合することが好ましい。
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂は、上記2種のモノマーを共重合させることによりゴム成分への分散を向上した樹脂である。そのため、これを配合した本発明のゴム組成物は、タイヤに用いた際、路面温度15〜20℃程度の低温域において従来のタイヤ以上の優れたグリップ性能を発揮する。また、本発明の樹脂は、α−メチルスチレンモノマーまたはその誘導体に由来する部分を有するため、路面温度40〜50℃程度の高温域においても優れたグリップ性能を示す。即ち、本発明により、温度変化に柔軟に対応した高性能タイヤを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明の樹脂は、下記式(I)で表されるモノマー(I)と下記式(II)で表されるモノマーとを共重合させて得られることを特徴としている。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
モノマー(I)は、上記式(I)で表される。式(I)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはF、Cl、Brなどのハロゲン基を示す。
【0023】
このようなRとしては、水素原子のほか、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、トリル基などの炭素数6〜8のアリール基、ビニル基、アリル基などの炭素数2〜8のアルケニル基などが挙げられ、鎖状であっても分岐状であってもよい。このようなモノマー(I)としては、具体的には、例えば、4−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−オクチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ビニルビフェニルが挙げられる。
【0024】
また、モノマー(II)は、上記式(II)で表される。式(II)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはF、Cl、Brなどのハロゲン基を示す。
【0025】
このようなRとしては、水素原子のほか、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、トリル基などの炭素数6〜8のアリール基、ビニル基、アリル基などの炭素数2〜8のアルケニル基などが挙げられ、鎖状であっても分岐状であってもよい。このようなモノマー(II)としては、具体的には、例えば、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンなどが挙げられる。これらは、一種単独で用いても、2種混合して用いてもよい。なかでも、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンが好ましい。
【0026】
上記モノマー(II)を上記モノマー(I)に共重合させることにより、タイヤ用ゴム組成物に配合した際に、低温域および高温域の双方において優れたグリップ性能を発揮する樹脂を提供することが可能である。
【0027】
即ち、前記モノマー(II)は、酸素原子を有しており樹脂同士で凝集しやすいため、これを配合したゴム組成物は、高温域で適度な硬度を保ちタイヤのグリップ性能を向上させることが知られていた。しかし、一方で、前記モノマー(II)のみでは、タイヤ用ゴム成分への分散が不十分であり、低温域での作動性を十分に確保できないことが問題であった。この課題に対し、本発明では、前記モノマー(II)を前記モノマー(I)に共重合させることにより、ゴム組成物への分散を向上した樹脂を提供することができた。これにより、温度域にかかわらず優れたグリップ性能を発揮するタイヤを提供することが可能である。
【0028】
また、本発明による樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜15,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜10,000の範囲である。前記樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることにより、あらゆる温度域におけるグリップ性能を向上させることが可能である。尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により得られたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0029】
本発明による樹脂は、前記式(I)中のRがCH、CまたはC17であることが好ましい。また、前記式(I)中のRをCとする場合、さらに、前記式(II)中のRを水素原子あるいはtertブチル基とすることがより好ましい。
【0030】
本発明の樹脂においては、前記式(I)で表されるモノマー(I)の割合(a質量%)と前記式(II)で表されるモノマー(II)の割合(b質量%)とが下記式(III)〜(V)を満たすことが好ましい。
20≦a≦90 ・・・(III)
10≦b≦80 ・・・(IV)
a+b=100 ・・・(V)
また、より好ましくは、前記モノマー(II)の割合(b質量%)は、20≦b≦50を満たす。
【0031】
前記モノマー(I)の割合(a質量%)と前記モノマー(II)の割合(b質量%)とを上記式の範囲内とすることにより、モノマー(I)によるゴム成分への分散改良の効果とモノマー(II)によるタイヤのグリップ性能向上の効果とを両立させることが可能である。即ち、タイヤ用ゴム組成物として用いた際に、各温度域において優れたグリップ性能を発揮することが可能である。
【0032】
本発明の樹脂は、前記式(I)で表されるモノマー(I)と前記式(II)で表されるモノマー(II)とをフリーデルクラフツ型触媒の存在下で共重合させて得ることが好ましい。上記触媒を用いることにより、モノマー(I)とモノマー(II)とのフリーデルクラフツ反応を有効に促進することができる。
【0033】
このような触媒としては、例えば、塩化アルミニウム錯体、臭化アルミニウム錯体、ジクロルモノエチルアルミニウム錯体、四塩化チタン錯体、四塩化スズ錯体、三フッ化ホウ素錯体等が挙げられる。なかでも、より具体的には、ボロントリフロライドフェノール錯体が好適である。
【0034】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に対して、上記した本発明による樹脂を配合したことを特徴とする。上述の通り、本発明による樹脂を配合したゴム組成物は、タイヤとして用いる場合、路面温度が15〜20℃程度の低温域および路面温度が40〜50℃程度の高温域の双方において、優れたグリップ性能を発揮する。
【0035】
ここで、本発明のゴム組成物において、前記ゴム成分100質量部に対する前記樹脂の配合量は、1〜100質量部であることが好ましい。即ち、前記配合量を1質量部以上とすることにより、ゴム組成物のグリップ性能の向上効果を得ることができ、一方、前記配合量を100質量部以下とすることにより、該樹脂のゴム成分中での分散の状態を良好にすることができ、低温でのグリップ性能を効果的に向上させることが可能である。
【0036】
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分は、ゴム弾性を示すものであれば特に限定されず、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどのほか、少なくとも一種のジエン系ポリマーからなるものが好ましいゴム成分として挙げられる。このようなジエン系ポリマーとしては、たとえば、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ポリマーなどをそれぞれ単独で、または組み合わせて用いたものが挙げられる。
【0037】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分および上記樹脂のほか、必要に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の成分を配合してもよい。このような他の成分としては、たとえば、カーボンブラック、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、およびステアリン酸などの、ゴム業界で通常使用される配合剤が挙げられる。これら他の成分は、上市のものを好適に用いることができる。尚、本発明のゴム組成物は、上記各成分を通常の方法により、たとえばロール、インターナルミキサー、バンバリーミキサーなどを用いて混錬し、必要に応じて加硫することにより得ることができる。
【0038】
本発明のゴム組成物の用途は、特に限定されるものではないが、タイヤのトレッド、特にサーキット走行などに使用する高速競技車用タイヤのトレッドに用いることが好ましい。尚、本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いること以外は、公知の部材を使用して製造することができる。また、本発明のタイヤは、ソリッドタイヤでも空気入りタイヤでもよく、該空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。尚、本発明のゴム組成物を用いてタイヤを製造する場合、タイヤ成形機などを用いて通常の方法により製造することができる。
【0039】
本発明のタイヤは、上記した本発明によるゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のタイヤの構成としては、たとえば、該タイヤが、1対のビード部、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルトおよびトレッドを有してなるタイヤであることが挙げられる。本発明のタイヤは、ラジアル構造を有していてもよいし、バイアス構造を有していてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。尚、各測定条件ならびに各評価項目および評価基準は以下の方法に従って行った。
【0041】
≪数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定≫
樹脂のMnおよびMwの測定は、GPCにより下記測定条件に従って測定した。
液体:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min
カラム:shodex KF−6+shodex KF−803+shodex KF−802
温度:40℃
サンプル注入量:50μL
尚、shodex KF−6、shodex KF−803およびshodex KF−802は商品名であり、分子量の校正には標準ポリスチレンを用いた。
【0042】
≪ドライスキッド性≫
スタンレイロンドンタイプのポータブルスキッドテスターにて、乾燥路面を加硫ゴム試験片で擦った際の抵抗値を測定し、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、ドライスキッド性が良好であることを示す。
【0043】
≪タイヤグリップ性能≫
得られたゴム組成物をトレッドとして用いたタイヤサイズ:215/45R17のタイヤを作製し、乗用車の4輪にこれらのタイヤを装着してドライアスファルト路面のテストコースを走行し、グリップ性能についてテストドライバーが下記評価基準(7段階)に従って評価した。尚、路面温度が15〜20℃で測定した結果を低温グリップ性能とし、路面温度が40〜50℃で測定した結果を高温グリップ性能とした。
7:非常に良い、6:良い、5:やや良い、4:普通、3:やや悪い、2:悪い、1:非常に悪い、−:未評価
【0044】
[樹脂A]
樹脂A(α−メチルスチレン単独重合体)として、上市のもの(FTR0100、三井化学(株)製)を用いた。
【0045】
[樹脂B]
樹脂B(α−メチルスチレン単独重合体)として、上市のもの(FTR0140、三井化学(株)製)を用いた。
【0046】
[樹脂C]
500mLの四つ口フラスコに、撹拌装置、温度計、還流冷却管を取り付け、ここに4−tert−ブチルスチレン35.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレン65.0gとメチルシクロヘキサン300mLを反応混合液として仕込み、良く撹拌した。
その後、均一に分散させた反応混合液を11〜12℃に保ち、一方、滴下ロートに、触媒として三フッ化ほう素フェノール錯体1.0gとトルエン2.0gとを入れ、該滴下ロートを上記四つ口フラスコに取り付けた。
次いで、11〜12℃に保持しながら、ここに上記触媒を15分かけて滴下し、重合反応を開始させた。触媒の滴下終了後、11〜12℃に保持したまま、さらに30分間撹拌した。
重合反応終了後、この反応液をあらかじめ用意したエタノール800g中に30分かけて滴下して粉末の析出物を得た。
この粉末をろ過し、さらにエタノール200gで洗浄した後、減圧乾燥して白色の樹脂Cを得た。
【0047】
[樹脂D]
4−tert−ブチルスチレンを10.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを90.0g仕込み、重合温度を5〜7℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0048】
[樹脂E]
4−tert−ブチルスチレンを90.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを10.0g仕込み、重合温度を7〜9℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0049】
[樹脂F]
4−tert−ブチルスチレンを15.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを85.0g仕込み、触媒として四塩化すずを1.0g用い、重合温度を−10〜−8℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0050】
[樹脂G]
4−tert−ブチルスチレンを15.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを85.0g仕込み、重合温度を15〜16℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0051】
[樹脂H]
4−tert−ブチルスチレンを15.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを85.0g仕込み、重合温度を13〜14℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0052】
[樹脂I]
4−tert−ブチルスチレンを70.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを30.0g仕込み、重合温度を21〜23℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0053】
[樹脂J]
4−tert−ブチルスチレンを79.0g、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを21.0g仕込み、重合温度を18〜21℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製し4−tert−ブチルスチレン/4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン共重合体樹脂を得た。
次いで、得られた共重合体樹脂にテトラヒドロキシフラン450mLを仕込んで、ポリマーを溶解させる。
その後、37%塩酸を50.0mL仕込んで加熱を行い、60℃の温度条件下で240分間撹拌を行った。加熱を停止した後、水中に上記ポリマー溶液を注ぎ込み、重合体を析出させた。さらに、THFに再び溶解させ、水中で再沈を行った。この粉末をろ過し、さらにエタノール100gで洗浄した後、減圧乾燥して樹脂Jを得た。
【0054】
[樹脂K]
4−tert−ブチルスチレンを7.0g、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを93.0g仕込み、重合温度を13〜14℃で行った以外は、樹脂Jと同様にして調製した。
【0055】
[樹脂L]
4−tert−ブチルスチレンを7.0g、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを93.0g仕込み、重合温度を15〜16℃で行った以外は、樹脂Jと同様にして調製した。
【0056】
[樹脂M]
4−メチルスチレンを70.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを30.0g仕込み、重合温度を10〜12℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0057】
[樹脂N]
4−メチルスチレンを86.0g、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを14.0g仕込み、重合温度を20〜22℃で行った以外は、樹脂Jと同様にして調製した。
【0058】
[樹脂O]
4−オクチルスチレンを10.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを90.0g仕込み、重合温度を4〜6℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0059】
[樹脂P]
4−オクチルスチレンを70.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを30.0g仕込み、重合温度を18〜20℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0060】
[樹脂Q]
4−オクチルスチレンを90.0g、4−tert−ブトキシ−α−メチルスチレンを10.0g仕込み、重合温度を30〜31℃で行った以外は、樹脂Cと同様にして調製した。
【0061】
[樹脂R]
4−オクチルスチレンを7.0g、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンを93.0g仕込み、重合温度を3〜5℃で行った以外は、樹脂Jと同様にして調製した。
これら樹脂A〜Rの物性を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
[比較例1〜5、および実施例1〜20]
上記樹脂A〜Rを用い、下記表2および3に示す配合量(単位:質量部)に従って、それぞれスチレン・ブタジエン共重合体ゴム、カーボンブラックなどとともにバンバリーミキサーを用いて混練り混合し、各ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を145℃で45分間加硫した後、上述した測定および評価を行った。結果を表2および3に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
※1:JSR(株)製、#1500
※2:SAF(N2SA(窒素吸着比表面積):150m2/g)
※3:N−1,3−ジメチル−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
※4:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド
※5:テトラキス−2−エチルヘキシルチウラムジスルフィド
【0067】
表2および3に示されるように、モノマー(I)およびモノマー(II)を共重合させてなる樹脂C〜Rを含む実施例1〜20は、上記モノマーよりなる樹脂を一切含まない比較例1並びに上記モノマーのうち1種類のみからなる樹脂AおよびBを含む比較例2〜5に比べ、各性能について優れる傾向にあることがわかる。
【0068】
また、実施例1〜5は、樹脂Cをゴム成分に対して配合したゴム組成物について、前記ゴム成分100質量部に対する該樹脂の配合量をそれぞれ変化させたものである。実施例1〜5間を比較すると、前記ゴム成分100質量部に対する前記樹脂の配合率が、1〜100質量部である実施例1、3および4は、前記配合率が上記範囲外にある実施例2および5に比べ、各性能について優れる傾向にあることがわかる。これは、前記ゴム成分に対して樹脂を適切な量で配合したことにより、ゴム成分中での樹脂の分散の状態を良好に保ちながら、タイヤのグリップ性能を向上させたためである。従って、本発明では、前記樹脂は、前記ゴム成分100質量部に対し、1〜100質量部配合することが好ましい。
【0069】
表1中の樹脂のうち、樹脂C〜E、H〜KならびにM〜Rは、重量平均分子量(Mw)が1,000〜15,000の範囲内にあるのに対し、樹脂F、GおよびLは、重量平均分子量が上記範囲外にある樹脂である。
【0070】
表2および3に示す結果から、重量平均分子量(Mw)が上記範囲外である樹脂F、GおよびLを配合した実施例8、9および14は、他の実施例に対し、各性能についてやや劣ることがわかる。従って、本発明による樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜15,000の範囲であることが好ましいと言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるモノマー(I)と下記式(II)で表されるモノマー(II)とを共重合させて得られることを特徴とする樹脂。
【化1】

【化2】

(式(I)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはハロゲン基を示す。式(II)中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜8のアルケニル基、またはハロゲン基を示す。)
【請求項2】
重量平均分子量(Mw)が、1,000〜15,000である請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記式(I)中のRがCH、CまたはC17である請求項1または2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記式(I)中のRがCで、前記式(II)中のRが水素原子あるいはtertブチル基である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記式(I)で表されるモノマー(I)の割合(a質量%)と前記式(II)で表されるモノマー(II)の割合(b質量%)とが下記式(III)〜(V)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂。
20≦a≦90 ・・・(III)
10≦b≦80 ・・・(IV)
a+b=100 ・・・(V)
【請求項6】
前記式(I)で表されるモノマー(I)と前記式(II)で表されるモノマー(II)とをフリーデルクラフツ型触媒の存在下で共重合して得られる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂。
【請求項7】
ゴム成分に対し、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂を配合したゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量部に対し、前記樹脂を1〜100質量部配合した請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。

【公開番号】特開2011−140603(P2011−140603A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3304(P2010−3304)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】