説明

樹脂チューブ

【課題】高い強度を備えつつ、暗所で明瞭に視認可能な発光性を備え、かつ、長期間使用されても発光性が劣化したり、発光部が摩耗したりする不都合を生じないチューブ・ホース類を提供する。
【解決手段】樹脂チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備え、該補強繊維のうち少なくとも1本以上を蓄光性補強繊維とする。内層チューブと外層チューブからなる積層樹脂チューブとする場合には、内層チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備え、該補強繊維のうち少なくとも1本以上を蓄光性補強繊維とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に流体を搬送する際に用いられる可撓性のチューブに関するものである。より詳細には、暗い環境で用いられた場合にも良好に視認され得るように、蓄光性を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
気体や液体を搬送するために、チューブ類(流体搬送に使用する場合、「ホース類」と呼ばれることが多いが、本明細書ではこれを含めて「チューブ類」という)が広く利用されているが、可撓性の長尺な部品であるため、歩行者が躓いたり、引っかかったりという危険な事態がしばしば発生している。例えば、多くの工場では設備類に圧空源や真空源、冷却水等の供給・循環用のホース類を多用するが、必ずしも十分に明るい環境が常に確保されるとは限らない。また、普段は明るく照明されている環境でも、夜間のパトロール時等には、非常に暗い状態になる場合があり、ホース類がしばしば危険の原因となっている。また、医療用途で入院患者等に使用される輸液チューブ類は、輸液バッグからチューブ類が吊り下げられる状態で使用されることが多く、夜間の巡回時に巡回者が引っ掛かってしまうような事故を招きかねない。
【0003】
このような危険を避けるため、従来より、蓄光性を付与したチューブ類が提案されてきている。
【0004】
例えば、特開2004−132443号公報には、ホースの表面に蓄光性の塗料を付着させた消防用ホースが開示されている。これは、屋内での消火活動を終えた消防士等が、ホースの蓄光性塗料の燐光を頼りに屋外へ脱出できるというものであるが、水濡れを含む環境で繰り返し使用すると蓄光性塗料が劣化したり、あるいは摩耗によって失われてしまったりする懸念がある。これは、一回限りの使用が想定される用途では問題になりにくいが、繰り返し使用されたり長期間に渡って使用されたりする用途では大きな問題になり得る。
【0005】
一方、特開2000−123601号には、チューブの内面に蓄光性塗料を付着させたチューブが開示されている。この例では、蓄光性塗料の摩耗の懸念は無いものの、チューブで搬送する流体の種類によっては蓄光性塗料が劣化する懸念があることは同様である。ほとんどの蓄光性塗料は水によって劣化することが知られているのであるから、高純度の油等の例外を除けば、実際上はほとんどの液体に対応できないことになってしまうのである。従って、この発明は、チューブによって外部の水分や摩擦から蓄光性塗料が保護される効果により、装飾等の目的に限って蓄光性を有するチューブ類を提供可能とするものであると考えられる。
【0006】
特開2003−126258号公報には、ホースを構成する樹脂全体に蓄光性塗料を含有させたホースや、ホースを構成する樹脂内に蓄光性塗料を含有する樹脂をライン状に埋め込んだ発明が開示されている。しかし、前者では蓄光性塗料を混入することによって樹脂の強度が低下しやすい。蓄光性塗料は、蓄光性物質の微粒子からなる顔料を展色材に分散したものであり、樹脂中に原料樹脂とは異なる微粒子を混入すると、強度の低下を招くことは避けがたいのである。あるいは、ホースで搬送する流体に蓄光性塗料が溶出するという問題も発生する。また、後者でも強度の問題は同様である他、ホースの一部に帯状に蓄光性塗料が埋め込まれることから、燐光も帯状領域でのみ得られることになるので、特に暗所で使用する際には細い帯状の発光領域のみをホースであると誤認してしまう危険がある。
【0007】
特開2000−029389号公報には、蓄光性の熱収縮チューブが開示されており、既存のチューブ等にかぶせて使用することが可能であるが、長尺チューブを得ることは困難であるし、前記の課題も解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−132443号公報
【特許文献2】特開2000−123601号公報
【特許文献3】特開2003−126258号公報
【特許文献4】特開2000−029389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、以上説明したような課題を解決したチューブ類を提供することである。すなわち、高い強度を備えつつ、暗所で明瞭に視認可能な発光性を備え、かつ、長期間使用されても発光性が劣化したり、発光部が摩耗したりする不都合を生じないチューブ類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)以上で説明した課題を解決するため、本発明においては、
熱可塑性樹脂を主体とする樹脂チューブにおいて、
該樹脂チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備えており、
該補強繊維のうち少なくとも1本以上は蓄光性補強繊維である、
ことを特徴とする、樹脂チューブとしている。
【0011】
すでに、様々な樹脂チューブが製造されているが、特に、原料樹脂を熱可塑性樹脂として、押出成型によって製造された樹脂チューブは高品質で長尺のものが安価に得られるため、様々な用途で多用されている。もっとも、押出成形で製造される樹脂チューブは、通常、材料強度上の理由により、特に薄肉のものでは円周応力に対する強度が不足して耐圧が低いものに限られる難点がある。この問題を解決するため、引張強度に優れる補強繊維(補強糸ともいう)を螺旋状に巻きつけて円周応力に対する耐性を高めた繊維補強樹脂チューブが実用に供されており、薄肉で優れた柔軟性を維持しつつ、優れた耐圧を実現できるため、すでに多くの品種が市場に流通している。本願発明者等は、このような繊維補強樹脂チューブに着目し、補強繊維のうち、少なくとも一本の繊維を、蓄光性を有する塗料を含有させる等した蓄光性補強繊維とすることで、すでに説明した課題を相当程度解決可能とした。
【0012】
繊維補強樹脂チューブの備える補強繊維は、樹脂チューブに螺旋状に巻きつけられた状態であるので、蓄光性補強繊維を使用した場合、蓄光性を有する部分は樹脂チューブに沿って螺旋状に存在することになる。このため、暗所で観察した場合は、螺旋状の発光部を観察することになり、容易に樹脂チューブの全体像を認識することが可能であるという効果がある。この効果は、樹脂チューブの長手方向に沿って樹脂チューブ本体の一部に直線状に蓄光性樹脂を共押出成形した場合と対比すると明らかである。このようにすると、暗所で観察した場合、直線状の発光部のみが視認されるために樹脂チューブの直径等を含む全体像の把握が困難となり、歩行者が蹴躓くといった事故の原因となってしまう。
【0013】
また、通常は熱可塑性樹脂の押出成形で製造される樹脂チューブと比較して、補強繊維は遥かに高い引張強度を有するものを利用可能である。これは、樹脂チューブ本体は柔軟性を維持するためにあまり強靭な材料を使用できないという制約がある一方、補強繊維は細く曲がりやすい形態であるため、材料そのものに金属繊維を含む強靭なものを利用できるという事情から生じている。従って、補強繊維に蓄光性塗料を含有する物を利用するなどして、仮に多少の強度低下が発生したとしても、なお、必要十分な強度を維持できることが殆どであり、樹脂チューブ全体としての強度低下にはつながらない。
【0014】
また、繊維補強樹脂チューブには、複数の補強繊維が使用される場合が多い。例えば、樹脂チューブ本体に一方向に螺旋状に補強繊維を巻きつけるだけではなく、逆方向(螺旋の旋回の向きが逆になる方向)にも補強繊維を巻きつけて、より高性能の繊維補強樹脂チューブを得ることが行われるが、このように複数の補強繊維を使用する場合には、この一部が多少強度に劣る蓄光性補強繊維に置換されたとしても、樹脂チューブとしての強度低下は事実上無視できる。
【0015】
さらに、蓄光性補強繊維は、強靭な繊維が樹脂チューブに巻きつくことで機械的に固着しているので、蓄光性塗料を樹脂チューブ表面に印刷等した場合のように、容易に剥離したりすることが無い。また、強靭な繊維は、印刷塗料と比較して摩擦に対しても格段に強く、摩耗してしまう危険も少なくなる。なお、補強繊維は、樹脂チューブ表面に巻きつけられるのであるが、補強繊維の浮きを防止したり、樹脂チューブの切断面から補強繊維がほどけてしまうことを防止するために、表面から樹脂コーティングすることを妨げない。ただし、樹脂コーティングは、蓄光性繊維の燐光を遮らない為、透明または有色透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る樹脂チューブは、製造に特殊な設備装置を必要としないことも大きな利点である。従来から使用されている繊維補強樹脂チューブの製造装置をそのまま利用して、蓄光性を備えた繊維補強樹脂チューブを製造することができる為、大きな設備投資が不要である。従って、新たな機能を備えた商品を安価に提供可能である。
【0017】
(2)本発明においては、
少なくとも内層チューブと外層チューブの2層からなる樹脂チューブにおいて、
該内層チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備えており、
該補強繊維のうち少なくとも1本以上は、蓄光性補強繊維である、
ことを特徴とする、樹脂チューブとすることが好ましい。
【0018】
樹脂チューブの中には、チューブ本体を複数の層で構成したものがあり、特色のあるものが実用に供せられている。例えば、内層チューブを薬品耐性の高い樹脂とし、外装チューブを円周応力に対する耐性の強い樹脂とすることで、薬品耐性が高く、かつ、高い圧力での使用を可能とする樹脂積層チューブが製造されている。このような樹脂積層チューブには、内層チューブに補強繊維を螺旋状に巻きつけて、さらに高い強度を実現したものもあり、強度のみならず、外形に補強繊維による凹凸が現れずに正円に近いことからシール性を確保しやすかったり、あるいは、激しい摩擦にさらされてチューブ外周が多少摩耗しても補強繊維が無傷である為に強度が維持されやすいといった特徴から、広く使用されている。
【0019】
このような繊維補強樹脂積層チューブにおいても、補強繊維のうち少なくとも一本を、蓄光性を有する塗料を含有させる等した蓄光性補強繊維とすることで、すでに説明した効果を得ることができる。ただし、外装チューブが蓄光性補強繊維の燐光を遮蔽してしまうと、燐光の意味が失われる為、外装チューブは、透明または有色透明もしくは半透明である樹脂材料を使用することが好ましい。
【0020】
また、この構成においては、蓄光性補強繊維が内層チューブと外層チューブに囲まれて密閉されるので、蓄光性塗料が水分や空気に触れることが無い。これにより、長期間の使用においても蓄光性塗料の性能低下が起こり難く、暗所で良好に視認可能な蓄光性樹脂積層チューブになるという利点がある。
【0021】
加えて、発光性を有する蓄光性補強繊維が外層チューブに囲まれているので、チューブが激しい摩擦にさらされて摩耗したとしても、外層チューブ層が失われない限り、蓄光性を喪失することが無い。外層チューブが失われる程のチューブの損傷は、すでにチューブの機能上、重篤な不都合を生じると考えられるものであるから、事実上、チューブの使用期間に渡って蓄光性を維持することができる。
【0022】
(3)本発明においては、
前記蓄光性補強繊維は、化学繊維を主体とした基本体に蓄光性顔料による着色処理を施したものである、
ことを特徴とする、(1)または(2)に記載の樹脂チューブとすることが好ましい。
【0023】
本発明に適用する蓄光性補強繊維には、繊維原料そのものに蓄光性を有する物質が含有させているものを利用することも可能である。しかし、繊維としての強度が低くなる場合が少なくない他、原料材料に混錬可能な蓄光性顔料のバリエーションの制約がある。例えば、蓄光性顔料をガラスに閉じ込めることで安定性を高めたものが提供されているが、粒子径が比較的大きく、繊維材料への混練は容易ではない。
【0024】
そこで、本発明においてより好ましくは、化学繊維を主体とした基本体に蓄光性顔料による着色処理を施したものを、蓄光性補強繊維とすると良い。このようにすると、通常使用する補強繊維の強度をそのままに、蓄光性を付与した蓄光性補強繊維とすることができ、また、蓄光性顔料の選択肢も豊富であるので、蓄光性繊維補強チューブを自由度高く設計することができる。
【0025】
例えば、細い素繊維をより合わせて糸としたものの場合は、蓄光性顔料を分散した展色材を塗布することで素繊維間に顔料が侵入し、これが保持されるので、これを蓄光性補強繊維として使用することができる。とくに、積層樹脂チューブの内層チューブの外周に沿って蓄光性補強繊維を巻きつけ、さらに外層チューブを設ける構成であれば、蓄光性補強繊維における顔料の保持が弱くとも、チューブが完成してしまった後は顔料の脱落が発生する懸念も無い。
【0026】
また、保持力の強い、すなわち、接着剤としての性質の強い展色材を使用して、補強性繊維の外周をコーティングすることも可能である。この場合は、蓄光性顔料が蓄光性補強繊維に安定して保持されるので、蓄光性補強繊維をリール等に巻き取って保存したりしても安定であるという利点がある。
【0027】
(4)本発明においては、
前記樹脂チューブ外面が、マット加工されている、
ことを特徴とする、(1)乃至(3)に記載の樹脂チューブとすることが好ましい。
【0028】
すでに説明した通り、本発明に係る樹脂チューブにおいては、蓄光性補強繊維が樹脂チューブに沿って螺旋状に設けられて発光する為、暗所においても樹脂チューブの全体の形状がほぼ把握可能であるという特徴を有するが、燐光はあくまでも螺旋状である為に、樹脂チューブ全体が発光する場合と比較すると不便を感じる状況が想定されることは事実である。例えば、樹脂チューブ全体が発光する場合には、樹脂チューブ表面に文字を記入または印刷した場合に、暗所であってもこれを読み取ることが可能であるが、螺旋状の発光ではこれは困難である。
【0029】
そこで、樹脂チューブの外面に細かい凹凸を付けるマット加工(または梨地仕上)を施すと、これによって蓄光性補強繊維の発する光が乱反射して、樹脂チューブの外面全体が発光しているのと同様の状態とすることができる。マット加工自体は、サンドブラストをはじめとする常法によれば良い。
【0030】
(5)本発明においては、
前記外層チューブが、半透明である、
ことを特徴とする、(2)に記載の樹脂チューブとすることが好ましい。
【0031】
外層チューブを半透明な材料とすると、蓄光性補強繊維の発する光が外層チューブ内で散乱するため、樹脂チューブ全体が発光しているのと同様の状態とすることができる。この場合には、マット加工(梨地仕上)と異なり、チューブ外面が滑らかななままであるので、チューブの外周でシール性を確保しやすい利点がある。反面、チューブの内部を搬送される流体の視認性が低下するため、外部からチューブの内部を目視にて確認することが必要な場合には適さない。
【0032】
(6)本発明においては、
前記補強繊維を少なくとも2本以上備えており、
前記蓄光性補強繊維を少なくとも2本以上備えており、
該蓄光性補強繊維は少なくとも2種類が用いられている、
ことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂チューブとすることが好ましい。
【0033】
蓄光性補強繊維は、蓄光性顔料を含有させることで、蓄光性を付与した補強繊維であるので、その発する燐光の色や強度、励起時間や持続時間は、蓄光性顔料の種類によって決まることは当然である。そこで、特色ある蓄光性顔料を用いた蓄光性補強繊維を組み合わせて、より好ましい蓄光性ある樹脂チューブとすることができる。例えば、励起時間が長いが発光強度が高い顔料を用いた蓄光性補強繊維と、励起時間が短いが発光強度が低い顔料を用いた蓄光性補強繊維の2種類を使用すると、長時間照明されたのちに消灯された際に強い発光が得られる一方、短時間のみ照明された際にも最低限の発光を確保できるといった特色のある樹脂チューブが得られる。
【発明の効果】
【0034】
(1)樹脂チューブ外面に沿って設けられる補強繊維のうち、少なくとも1本以上は蓄光性補強繊維としたので、暗所においても、螺旋状に旋回する蓄光性補強繊維の燐光が視認され、チューブの全体像を容易に把握することができるという効果が得られる。これにより、暗所で歩行者等が躓いたりする危険を低減することができる。また、樹脂チューブの搬送できる流体の種類に制約が生じず、強度の低下も発生しない。
【0035】
(2)内層チューブ外面に沿って設けられる補強繊維のうち、少なくとも1本以上は蓄光性補強繊維とし、さらに外層チューブを設けたので、蓄光性補強繊維が水分や空気に直接触れることが無くなり、長期間にわたって蓄光性が劣化しない。また、摩擦にさらされても、蓄光性補強繊維が損傷することが無く、安定した発光が得られるという効果が得られる。
【0036】
(3)蓄光性補強繊維を、補強繊維に蓄光性顔料による着色処理を施したものとしたので、繊維としての強度を維持しつつ、様々な蓄光性顔料が使用可能となり、バリエーションの制約のない多彩な樹脂チューブを設計することができる。
【0037】
(4)樹脂チューブ表面をマット加工したことにより、蓄光性補強繊維の燐光が散乱して、樹脂チューブ全体から発光しているような視覚上の効果が得られる。これにより、暗所で樹脂チューブの全体形状をより視認しやすくすることができる他、樹脂チューブ表面に記入した文字等が暗所でも容易に読み取れるようになるという効果が得られる。
【0038】
(5)外層チューブを半透明としたことで、蓄光性補強繊維の燐光が散乱して、樹脂チューブ全体から発光しているような視覚上の効果が得られ、これにより、(4)と同様の効果が得られる。
【0039】
(6)異なる蓄光性顔料を含有するなどした2種類以上の蓄光性補強繊維を使用したので、単独の蓄光性補強繊維では実現の困難な、十分な励起時間が得られた場合には強い発光強度を得つつ、短時間の励起時間しか得られない場合にも最低限の発光を確保する、というような効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施例の断面を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施例を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
図1は本発明に係る樹脂チューブを側面から観察した状態を示す説明図である。また、図2は、断面を観察した状態を示す説明図である。なお、樹脂チューブは通常、極めて長尺のものを製造するが、図にはこの一部のみを表示していることは言うまでもないことである。
【0043】
本実施例では、樹脂チューブ(1)は、透明樹脂製の内層チューブ(2)と外層チューブ(3)の二層を有する樹脂積層チューブである。そして、内層チューブ(2)の外面に沿って、数本の補強繊維(4)及び1本の蓄光性補強繊維(5)が巻きつけられている。
【0044】
内層チューブ(2)は、薬品耐性の高い樹脂で構成しており、溶剤を含む様々な種類の流体を搬送可能なチューブを実現している。また、外層チューブ(3)は、耐摩耗性の高い樹脂で構成しており、樹脂チューブ(1)が摩擦にさらされても摩耗が少なく、長寿命を実現できるようにしている。
【0045】
補強繊維(4)は、化学繊維を主体とした糸であり、内層チューブ(2)や外層チューブ(3)を構成する樹脂と比較して、はるかに高い引張応力に耐えることができる。これを、内層チューブ(2)の外周に沿って螺旋状に巻きつけることで、搬送する流体の圧力が高い場合に樹脂チューブに発生する円周応力を支え、樹脂チューブ(1)の破裂を防止する。これによって、樹脂チューブ(1)の耐圧が非常に高くなっている。
【0046】
本実施例では、蓄光性補強繊維(5)は、補強繊維(4)を蓄光性顔料によって着色することによって得た。従って、蓄光性補強繊維(5)の強度は、補強繊維(4)と同じであり、蓄光性を付与したことによる強度低下等の不具合は無い。
【0047】
なお、本実施例では、内層チューブ(2)は熱可塑性樹脂の押出成形によって形成し、これに補強繊維(4)と蓄光性補強繊維(5)を巻きつけて、さらに、その周囲に熱可塑性樹脂を押出して外層チューブ(3)を形成している。このため、補強繊維(4)と蓄光性補強繊維(5)は内層チューブ(2)と外層チューブ(3)の樹脂に埋設されることとなり、蓄光性補強繊維(5)が搬送流体や、外部の水分や空気と直接触れることが無い。この為、蓄光性が長期間にわたって安定に保たれる。
【0048】
本実施例に係る樹脂チューブの効果について、斜視状態を示す説明図である図3及び図4を用いてさらに説明する。図3は、本実施例に係る樹脂チューブの通常の状態、すなわち、明るい環境で通常観察される外観を説明している。樹脂チューブ(1)自体は、図では点線で表示しているが、これは内層チューブ・外層チューブを含めてほぼ透明樹脂で構成しているため、明瞭には視認されないことを表現したものである。しかし、補強繊維(4)や蓄光性補強繊維(5)は不透明であるので、透明の樹脂チューブ(1)内にあっても明瞭に視認され、図3のような状態となる。
【0049】
図4は、同じ樹脂チューブを暗所で観察した際の外観を説明している。この場合は、補強繊維はほとんど視認されないが、蓄光性補強繊維(5)は燐光を発するために明瞭に視認される。蓄光性補強繊維(5)自体は糸状の細いものであるので、燐光自体も樹脂チューブ(1)の全体に対してはごくわずかの領域で発しているに過ぎないが、発光領域が螺旋形状であるため、容易に樹脂チューブ(1)全体の形状を認識することが可能であり、誤認識に基づく危険の発生が回避される。
【0050】
なお、本実施例においては、樹脂チューブ(1)が内層チューブ(2)・外層チューブ(3)とも透明樹脂で構成されるとしたが、すでに述べたとおり、外層チューブ(3)の外面をマット加工したり、あるいは、半透明の樹脂で構成することも可能であり、このような変更は、樹脂チューブの用途に応じて選択すればよい。また、製造方法も上記説明の方法に限られず、様々なものを採用可能である。
【0051】
ところで、本実施例においては、補強繊維(4)のうち、1本のみを発光性補強繊維(5)とした。これは、高価な発光性補強繊維の使用量を最小限にしつつ、必要十分な樹脂ホースの視認性を確保しようとしたものであるが、すべての補強繊維(4)を発光性補強繊維としても良い。この場合は、螺旋状ではなく、網目状の燐光が得られるので、樹脂チューブの暗所での視認性は非常に高くなる。
【0052】
また、複数の蓄光性補強繊維を使用する場合には、異なる蓄光性顔料を含有等する複数の種類の蓄光性補強繊維を使用することも可能であることは、すでに説明したとおりである。この場合は、例えば、励起時間が長いが強い発光強度を得られる蓄光性補強繊維と、励起時間が短いが発光強度が弱い蓄光性補強繊維を組み合わせるとよい。これにより、通常は十分な時間照明されている工場の消灯後に強い発光強度を確保するが、例外的に短時間しか照明されなかった場合にも、消灯後の最低限の発光強度を確保するというように、非常時を含めた安全を確保することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は高い強度を備えつつ、暗所で明瞭に視認可能な発光性を備え、かつ、長期間使用されても発光性が劣化したり、発光部が摩耗したりする不都合を生じないチューブ類を提供するものであり、産業上の価値は極めて高いものである。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂チューブ
2 内層チューブ
3 外層チューブ
4 補強繊維
5 蓄光性補強繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主体とする樹脂チューブにおいて、
該樹脂チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備えており、
該補強繊維のうち少なくとも1本以上は蓄光性補強繊維である、
ことを特徴とする、樹脂チューブ。
【請求項2】
少なくとも内層チューブと外層チューブの2層からなる樹脂チューブにおいて、
該内層チューブの外面に沿って螺旋状に少なくとも1本以上の補強繊維を備えており、
該補強繊維のうち少なくとも1本以上は、蓄光性補強繊維である、
ことを特徴とする、樹脂チューブ。
【請求項3】
前記蓄光性補強繊維は、化学繊維を主体とした基本体に蓄光性顔料による着色処理を施したものである、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の樹脂チューブ。
【請求項4】
前記樹脂チューブ外面が、マット加工されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の樹脂チューブ。
【請求項5】
前記外層チューブが、半透明である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂チューブ。
【請求項6】
前記補強繊維を少なくとも2本以上備えており、
前記蓄光性補強繊維を少なくとも2本以上備えており、
該蓄光性補強繊維は少なくとも2種類が用いられている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の樹脂チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2512(P2013−2512A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132737(P2011−132737)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(591248038)十川産業株式会社 (2)
【出願人】(390014395)株式会社三協リール (1)
【Fターム(参考)】