説明

樹脂ペレット製造装置

【課題】帯電防止剤を添加した水がストランドの熱影響により蒸発することを抑え、簡単な処理設備によって帯電防止剤の濃度を安定させる。
【解決手段】押出し機10で成形されたストランド16の表面に帯電防止剤を付着させるとともに、最終的には該ストランドを切断してペレット化する樹脂ペレット製造装置であって、押出し機10から押出されて一方向へ送られるストランド16を冷却する冷却水槽20と、この冷却水槽から送り出されたストランドを受入れ、帯電防止剤が添加された水の中を通過させることによってストランドの表面に帯電防止剤を付着させる帯電防止用の処理設備(処理水槽30)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融樹脂を押出してストランドを成形し、このストランドを最終的にペレット化するための樹脂ペレット製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材の成形製品が静電気によって帯電すると、塵埃を吸着して製品の外観を損ね、あるいは塵埃が溜まった状態で別の製品に触れることで、その製品を汚したり機能を阻害したりする。この対策として帯電防止剤が用いられ、例えば特許文献1には帯電防止剤を配合したポリオレフィン樹脂生成物の技術が開示されている。
この技術による樹脂製品では、帯電防止剤が製品の表面に徐々に表出することで帯電防止効果が得られる。しかし、この技術では帯電防止剤が製品の表面に表出した状態、つまり製品になった状態でなければ帯電防止効果を期待できず、樹脂材をペレット化した直後等では充分な帯電防止効果を得ることができない。
【0003】
これに対して例えば特許文献2には、帯電防止剤として多く使用される界面活性剤が添加された冷却水に、押出し機から押出されたストランドを浸して水中を通過させ、ストランドを冷却固化させたてから切断する技術が開示されている。これにより、ストランドの表面に界面活性剤が付着し、このストランドを切断してペレット化した直後であっても帯電防止効果を得ることができる。したがって、ペレット化された樹脂材と他の樹脂材とを混合するようなときでも帯電せず、樹脂材の混ざり方が偏ることなく均一になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−065363号公報
【特許文献2】特開2005−225227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で開示された技術のように、ストランドの表面に界面活性剤(帯電防止剤)を付着させる場合、この帯電防止剤の付着量を所定の範囲内に収めるには、冷却水における帯電防止剤の濃度を安定した状態に保つ必要がある。しかし、押出し機から溶融樹脂を押出して成形された高温(200℃以上)のストランドが浸される冷却水は水分の蒸発が激しく、帯電防止剤の濃度を安定させることが難しい。
また、ストランドを冷却するための冷却水には、大きな熱容量を必要とすることから大量の水を用いることになる。そのような大量の水において帯電防止剤の濃度を安定させ、さらには濃度管理と同時に温度管理を行うには大がかりな設備が必要になる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、帯電防止剤を添加した水がストランドの熱影響により蒸発することを抑え、簡単な処理設備によって帯電防止剤の濃度を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
押出し機において溶融樹脂を押出すことで成形されたストランドの表面に帯電防止剤を付着させるとともに、最終的には該ストランドを切断してペレット化する樹脂ペレット製造装置であって、押出し機から押出され、かつ一方向へ連続して送られるストランドを冷却する冷却水槽と、この冷却水槽から送り出されたストランドを受入れ、帯電防止剤が添加された水の中を通過させることによってストランドの表面に帯電防止剤を付着させる帯電防止用の処理設備とを備えている。
【0008】
このように、ストランドを冷却水槽で冷却した後に、このストランドの表面に帯電防止剤を付着させることにより、帯電防止剤を添加した水がストランドの熱影響を受けて蒸発することが抑えられる。したがって、簡単な処理設備により帯電防止剤の濃度を安定した状態に管理することができる。その結果、ストランドの表面に対する帯電防止剤の付着量が常に所定の範囲内に保たれ、帯電防止剤の付着量の多寡による不具合、つまり帯電防止剤の付着量が少ないと帯電防止効果が得られず、逆に付着量が多すぎると粘着性が生じてペレットを扱いにくくなる、といったことが解消される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1における樹脂ペレット製造装置の概要を表した構成図。
【図2】実施の形態2における樹脂ペレット製造装置の概要を表した構成図。
【図3】実施の形態2における帯電防止用の処理設備を拡大して表した平面図。
【図4】実施の形態2における帯電防止用の処理設備を表した側断面図。
【図5】実施の形態2における帯電防止用の処理設備を表した正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
図1で示す樹脂ペレット製造装置の押出し機10は、その内部でスクリュー(図示省略)が回転駆動され、ホッパー12から供給された溶融樹脂がダイ14から連続して押出され、複数本のストランド16が成形される。ストランド16は、冷却水槽20の中に導かれ、ローラ24,26に案内されて冷却水22の中を通過し、その間で冷却固化が促進される。冷却水槽20の中から上方へ引き出されたストランド16は、上方のローラ28に案内されて再び下方へ転換され、帯電防止用の処理設備である処理水槽30の中に導き込まれる。
処理水槽30の中には、帯電防止剤である界面活性剤を添加した水32が入れられている。界面活性剤には、例えば非イオン性界面活性剤(ポリエキシエチレンソルビタンモノラウレート等)が使用される。
【0011】
処理水槽30の中に導かれたストランド16は、ローラ34に案内されて水32の中を通過することにより、表面に界面活性剤が付着する。この処理水槽30から上方へ引き出されたストランド16は、吸引機36を通過することによって表面の余分な水分が除去された後、造粒機40に送り込まれる。この造粒機40では、ストランド16が切断されてペレット化される。ペレット化された樹脂材は選別機42に送られ、ここで規定寸法の粒径のものだけが選ばれて貯留タンク44に送り込まれる。この貯留タンク44に貯められたペレット状の樹脂材は、搬送袋46に投入されて袋詰めされた後に搬出される。
ペレット化された樹脂材は帯電防止性を有することから、仮に他の樹脂材と混合する場合でも帯電せず、互いの樹脂材を均一に混合することができる。そして、帯電防止性を有する樹脂材で成形された製品は、静電気の帯電による塵埃等の吸着も防止される。
【0012】
帯電防止用の処理水槽30に対しては、冷却水槽20の冷却水22によって冷却された後のストランド16が送り込まれるので、処理水槽30においてはストランド16の熱影響が少なく、該処理水槽30の中に入っている水32の蒸発が抑えられる。したがって、水32に添加されている界面活性剤の濃度を安定させるための管理が容易となる。
また、処理水槽30はストランド16に対する帯電防止処理を主目的としていることから、大熱容量に対応するための冷却水槽20の冷却水22と比較して水32の量が少なくて済み、その温度管理も不要である。これらのことから、帯電防止用の処理設備を簡素化することが可能となる。
【0013】
処理水槽30の水32における界面活性剤の濃度を安定させることにより、ストランド16の表面に付着する界面活性剤の量が所定の範囲内に保たれる。なお、界面活性剤の濃度は、水32の100重量部に対して界面活性剤を1〜3重量部とするのが望ましい。この値よりも界面活性剤の濃度が低いと、ストランド16に対する帯電防止剤の付着量が足りず、適正な帯電防止効果が得られない。逆に界面活性剤の濃度が高過ぎると、ストランド16に対する帯電防止剤の付着量が多くなって粘着性が生じ、ストランド16をペレット化した後の扱いが煩雑になる。
【0014】
実施の形態2
図2で示す樹脂ペレット製造装置では、ストランド16に対する帯電防止用の処理設備として、界面活性剤が添加された水を循環供給する形式の供給機50が採用されている。この供給機50には、冷却水槽20の冷却水22を通過することで冷却された後のストランド16が導かれる。
図3〜図5で示すように、供給機50を構成するパイプ形状のケース52には、ストランド16を個別に案内する複数の通路54が設けられている。これらの通路54は、ケース52の壁を所定の間隔で溝状にカットした形状であり、それぞれケース52の内部に連通している。
【0015】
ケース52の内部には、図2で示すタンク56に貯められている界面活性剤入りの水がポンプ58によって強制的に供給されている。したがって、図4および図5で示すようにケース52の内部には界面活性剤入りの水59が常に充満し、かつ各通路54から溢れ出ている。この状態において各通路54を通るストランド16は、ケース52内に充満している界面活性剤入りの水59の中を通過することになり、供給機50を通過したストランド16の表面には界面活性剤が付着して帯電防止性を有することになる。
なお、各通路54から溢れ出た水59は図4および図5で示す受け皿55によって受けられ、図2で示すドレンパイプ60を通って再びタンク56に戻される。
【0016】
供給機50を通過した後のストランド16は、実施の形態1の場合と同様に図2で示す吸引機36に送られて表面の余分な水分が除去された後、造粒機40によってペレット化される。そして、ペレット化された樹脂材は、選別機42で選別された規定寸法の粒径のものだけが貯留タンク44に送られ、この貯留タンク44から搬送袋46に投入されて袋詰めされる。また、図2で示すように吸引機36で除去された界面活性剤入りの水もドレンパイプ62によってタンク56に戻される。
実施の形態2における供給機50は、実施の形態1の処理水槽30と比較してストランド16の表面に界面活性剤を付着させるための処理設備をコンパクトにできる。また、界面活性剤入りの水59を常に循環させていることから、この循環経路に濾過フィルタ等を設けることによって水59の清浄化も可能となる。
【符号の説明】
【0017】
10 押出し機
16 ストランド
20 冷却水槽
30 処理水槽(帯電防止用の処理設備)
50 供給機(帯電防止用の処理設備)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し機において溶融樹脂を押出すことで成形されたストランドの表面に帯電防止剤を付着させるとともに、最終的には該ストランドを切断してペレット化する樹脂ペレット製造装置であって、
押出し機から押出され、かつ一方向へ連続して送られるストランドを冷却する冷却水槽と、この冷却水槽から送り出されたストランドを受入れ、帯電防止剤が添加された水の中を通過させることによってストランドの表面に帯電防止剤を付着させる帯電防止用の処理設備とを備えた樹脂ペレット製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218716(P2011−218716A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92112(P2010−92112)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(309025638)小島産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】