説明

樹脂封入型半導体装置

【課題】樹脂封入型半導体装置に、必要な電気絶縁性と熱伝導性とを確保しつつ、絶縁耐圧の低下を防ぎ、樹脂封入型半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】放熱台板14とモールド樹脂16との境界に生じる段差に対抗するための、高熱伝導樹脂シート18を補強手段(補強板40、強化繊維が混入された強化型の高熱伝導樹脂シート18)を備えることで、半導体素子12の通電時と非通電時に生じる温度変化によって、放熱台板14とモールド樹脂16との熱膨張量・熱収縮量に差が生じた場合であっても、高熱伝導樹脂シート18に生じる剪断応力の影響を抑えることができる。よって、高熱伝導樹脂シート18における、放熱台板14の輪郭に沿ったクラックの発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封入型半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の電気絶縁性を確保しつつ、放熱性を高めるために、半導体を放熱台板の固定した状態で、半導体素子と放熱台板とを樹脂により封止し、かつ、樹脂から電極リードを突出させた樹脂封入型半導体装置が、従来から用いられている。ところが、樹脂封入型半導体装置に用いられるモールド樹脂材料は、電気絶縁性と熱伝導性とを両立させることが困難であるといった問題がある。そこで、従来の樹脂封入型半導体装置は、モールド樹脂材料として電気絶縁性に優れた材料を用い、かつ、放熱台板の半導体との密着面とは反対側の面を樹脂から露出させ、さらに、前記放熱台板と前記樹脂との境界面を覆うようにして、高熱伝導樹脂シートで密閉する構造を採用することで、樹脂封入型半導体装置に、必要な電気絶縁性と熱伝導性とを確保している(例えば、特許文献1。)。
【0003】
図2には、従来の樹脂封入型半導体装置10の構造例を示している。この樹脂封入型半導体装置10は、半導体素子12と、半導体素子12に密着する放熱台板14とが、放熱台板14の半導体素子との密着面14aとは反対側の面14bを露出させた状態で、モールド樹脂16によって被覆されている。なお、図示の例では、放熱台板14の半導体素子との密着面14aとは反対側の面14b(以下、「露出面」という。)と、モールド樹脂16の一側面16aとは、常温下で同一平面となるように成形されている。さらに、放熱台板14の露出面14bが、高熱伝導樹脂シート18によって封止されることにより、放熱台板14とモールド樹脂16との境界部分における密閉性が確保されている。図中、符号20は半導体素子12を放熱台板14に密着させるためのはんだを示し、符号22は電極リードを示し、符号24は半導体素子12と電極リード22とを電気接続する金属ワイヤを示している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−118961公報(〔0017〕〜〔0020〕、〔図1〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の樹脂封入型半導体装置10は、図2に示すように、高熱伝導樹脂シート18に、放熱台板14の輪郭に沿ったクラックCが生じ、高熱伝導樹脂シート18の絶縁耐圧が低下するといった問題が指摘されている。この、クラックCの発生原因は、放熱台板14を構成するアルミ合金等の金属材料と、モールド樹脂16の樹脂材料との線膨張率の差から、樹脂封入型半導体装置10の通電時と非通電時に生じる温度変化を受けて、図3に示すように放熱台板14とモールド樹脂16との熱膨張量・熱収縮量に差が生じ、放熱台板14とモールド樹脂16との境界に段差Lが生じることに起因することが、発明者らによって確認されている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂封入型半導体装置に、必要な電気絶縁性と熱伝導性とを確保しつつ、絶縁耐圧の低下を防ぎ、樹脂封入型半導体装置の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明に係る樹脂封入型半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子に密着する放熱台板とが、該放熱台板の半導体素子との密着面とは反対側の面を露出させた状態で、モールド樹脂によって被覆され、かつ、前記放熱台板の露出面が、高熱伝導樹脂シートによって封止された樹脂封入型半導体装置であって、前記放熱台板の構成材料と前記モールド樹脂材料との線膨張率の差に起因して、前記放熱台板と前記モールド樹脂との境界に生じる段差に対抗するための、前記高熱伝導樹脂の補強手段を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、前記放熱台板と前記モールド樹脂との境界に生じる段差に対抗するための、前記高熱伝導樹脂シートの補強手段を備えることで、半導体素子の通電時と非通電時に生じる温度変化によって、放熱台板とモールド樹脂との熱膨張量・熱収縮量に差が生じた場合であっても、高熱伝導樹脂シートに対する剪断応力の影響を抑えることができる。よって、高熱伝導樹脂シートに放熱台板の輪郭に沿ったクラックが発生することを、防止することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記補強手段として、前記高熱伝導樹脂シートに積層される補強板を備えることとすれば、補強板が、放熱台板とモールド樹脂との熱膨張量・熱収縮量に差が生じた場合における高熱伝導樹脂シートの変形を防ぎ、上記作用を得ることができる。
また、前記補強手段として、前記高熱伝導樹脂シートに、強化繊維が混入された高熱伝導樹脂シートが用いられることとすれば、高熱伝導樹脂シート自体の高い剛性によって、上記作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明はこのように構成したので、樹脂封入型半導体装置に、必要な電気絶縁性と熱伝導性とを確保しつつ、絶縁耐圧の低下を防ぎ、樹脂封入型半導体装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0012】
図1には、本発明の実施の形態に係る樹脂封入型半導体装置38を示している。樹脂封入型半導体装置38は、放熱台板14とモールド樹脂16との境界に生じる段差に対抗するための、高熱伝導樹脂シート18の補強手段として、高熱伝導樹脂シート18に積層される補強板40を備えるものである。この補強板40は、放熱性の良好な金属板等が適しており、高熱伝導樹脂シート18と補強板40とは、互いに接着、溶着等によって固定されている。なお、放熱台板14とモールド樹脂16との境界に生じる段差に、高熱伝導樹脂シート18を対抗させるための補強手段の別例として、高熱伝導樹脂シートに、ガラス繊維等の強化繊維が混入された強化型の高熱伝導樹脂シートを用いることとしてもよい。また、補強板40と強化型の高熱伝導樹脂シートとを併用することも可能である。
【0013】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。本発明の実施の形態によれば、放熱台板14とモールド樹脂16との境界に生じる段差に対抗するための、高熱伝導樹脂シート18を補強手段(補強板40、強化繊維が混入された強化型の高熱伝導樹脂シート18)を備えることで、半導体素子12の通電時と非通電時に生じる温度変化によって、放熱台板14とモールド樹脂16との熱膨張量・熱収縮量に差が生じた場合であっても、段差Lに起因して高熱伝導樹脂シート18に生じる剪断応力の影響を抑えることができる。よって、高熱伝導樹脂シートに放熱台板の輪郭に沿ったクラックCが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂封入型半導体装置を概略的に示した断面図である。
【図2】従来の樹脂封入型半導体装置を概略的に示した断面図である。
【図3】図2に示す樹脂封入型半導体装置の、放熱台板とモールド樹脂との境界に生じる段差を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0015】
12:半導体素子、14:放熱台板、14a:半導体素子が密着した面、14b:露出面、16:モールド樹脂、18:高熱伝導樹脂シート、 38:樹脂封入型半導体装置、40:補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、該半導体素子に密着する放熱台板とが、該放熱台板の半導体素子との密着面とは反対側の面を露出させた状態で、モールド樹脂によって被覆され、かつ、前記放熱台板の露出面が、高熱伝導樹脂シートによって封止された樹脂封入型半導体装置であって、
前記放熱台板の構成材料と前記モールド樹脂材料との線膨張率の差に起因して、前記放熱台板と前記モールド樹脂との境界に生じる段差に対抗するための、前記高熱伝導樹脂シートの補強手段を備えることを特徴とする樹脂封入型半導体装置。
【請求項2】
前記補強手段として、前記高熱伝導樹脂シートに積層される補強板を備えることを特徴とする請求項1記載の樹脂封入型半導体装置。
【請求項3】
前記補強手段として、前記高熱伝導樹脂シートに、強化繊維が混入された高熱伝導樹脂シートが用いられることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂封入型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−65221(P2009−65221A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327580(P2008−327580)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2004−269710(P2004−269710)の分割
【原出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】