説明

樹脂封止方法および樹脂封止装置

【課題】基板に配置されている電子部品を樹脂によって封止するときに、樹脂の内部に気泡が残ることを抑制する樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】樹脂封止方法は、電子部品6が配置されている基板5に対して樹脂を供給することにより、電子部品6を封止する封止行程を含み、封止行程は、基板5の上方に通孔2を有する孔版1を配置する孔版配置行程を含む。孔版1の周りの絶対圧力を下げる減圧行程を含む。減圧行程の後に、基板5を孔版1を近づけることにより、通孔2の内部に電子部品6を配置する電子部品配置行程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止方法および樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に配置されている電子部品を樹脂により封止する方法としては、従来から孔版印刷が利用されている。この方法では、基板上の電子部品の位置に対応する通孔を有する孔版を用いる。この方法は、電子部品を通孔の内部に配置した状態で通孔に樹脂を供給することにより電子部品を樹脂封止する行程を含む。
【0003】
図26から図28に、従来の技術における樹脂封止方法の工程図を示す。図26から図28のそれぞれは概略断面図である。基板の表面に配置されている電子部品を樹脂封止する。
【0004】
図26は、従来の技術における樹脂封止方法の第1行程図である。電子部品6は、ワイヤ7を含む。孔版1の通孔2の内部に電子部品6を配置した状態で、通孔2に液状の樹脂を供給することにより、電子部品6を樹脂10で覆うことができる。この後に、矢印54に示すように、基板5を孔版1から引き離す。通孔2が小さかったり樹脂10の粘度が高い場合には、基板5上の電子部品6と孔版1の通孔2との間に糸引き部11が形成される。
【0005】
図27は、従来の技術における樹脂封止方法の第2行程図である。矢印54に示す向きに、基板5の移動をさらに継続すると糸引き部が切断される。電子部品6は樹脂10で封止される。孔版1の通孔2には、樹脂10の一部が残存する。通孔2の内部には、樹脂10が薄膜状に残存する。通孔2に残存する樹脂10の内部には気泡13が残存する場合がある。
【0006】
図28は、従来の技術における樹脂封止方法の第3行程図である。図28は、基板5を新たなものに交換して樹脂封止を行うときの工程図である。電子部品6が配置されている新たな基板5を矢印53に示す向きに上昇させる。通孔2の内部に電子部品6を配置する。通孔2に残存している樹脂10に電子部品5の一部が埋設される。次に、通孔2に樹脂を供給することにより、電子部品5を樹脂で封止することができる。これらの行程を繰り返すことにより、複数の基板の樹脂封止を連続で行うことができる。
【0007】
特開2005−19489号公報には、基板が配置されているテーブルを下降させて、樹脂封止された半導体電子部品を孔版から脱離する工程と、テーブルを再び上昇させて、新たな半導体電子部品を通孔内に収納する工程とを備え、テーブルを上昇させる工程は、半導体電子部品が通孔に接近するまでテーブルを上昇させた後に、テーブルの上昇速度を低下させる行程を含む半導体電子部品の樹脂封止方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−19489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図28を参照して、通孔2に残存している樹脂10に電子部品5が接触する時に、樹脂10の内部に気泡13が生じる場合があった。または、通孔2に配置する樹脂10に残存していた気泡13が電子部品6の周りに配置される場合があった。例えば、ワイヤ7の下側の領域において、樹脂10が十分に馴染まないまま樹脂10が充填される結果、気泡13が発現する場合があった。特に、樹脂10の粘度が高い場合や通孔2が小さい場合には、樹脂10が馴染みにくいために気泡13が発現しやすい傾向にあった。電子部品を覆う樹脂の内部に残存する気泡は、製品の信頼性低下の要因となっていた。
【0009】
本発明は、基板に配置されている電子部品を樹脂によって封止するときに、樹脂の内部に気泡が残ることを抑制する樹脂封止方法および樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂封止方法は、電子部品が配置されている基板に対して樹脂を供給することにより、電子部品を封止する封止行程を含み、封止行程は、基板の上方に通孔を有する孔版を配置する孔版配置行程を含む。孔版の周りの絶対圧力を下げる減圧行程を含む。減圧行程の後に、基板および孔版のうち少なくとも一方を互いに近づける向きに移動させることにより、通孔の内部に電子部品を配置する電子部品配置行程を含む。通孔の内部に液状の樹脂を供給する樹脂供給行程を含む。
【0011】
本発明の樹脂封止装置は、内部を真空状態にするための真空容器を備える。真空容器の内部の圧力を調整するための圧力調整手段を備える。真空容器の内部に配置され、電子部品が配置されている基板を載置するための載置台を備える。通孔を有する孔版を保持するための孔版保持手段を備える。載置台と孔版とを相対的に移動させるための移動手段を備える。通孔の内部に液状の樹脂を供給するための樹脂供給手段を備える。圧力調整手段と移動手段とを制御するための制御手段を備える。制御手段は、通孔の内部に電子部品を配置する前に真空容器の内部を自動的に排気する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板に配置されている電子部品を樹脂によって封止するときに、樹脂の内部に気泡が残ることを抑制する樹脂封止方法および樹脂封止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1から図25を参照して、実施の形態における樹脂封止方法および樹脂封止装置について説明する。図1から図24は、樹脂封止装置の概略断面図である。図25は、基板の概略平面図である。
【0014】
図1は、実施の形態における樹脂封止方法の第1工程図である。図1から図4は、樹脂封止装置の全体の概略断面図である。本実施の形態における樹脂封止装置は、基板5に配置されている電子部品6を樹脂封止するための装置である。本実施における電子部品6は、基板5の表面に配置されている。
【0015】
基板5に配置される電子部品6としては、例えば半導体電子部品を採用することができる。半導体電子部品としては、例えば、BGA(Ball Grid Array)部品、CSP(Chip Size Package)部品、LED(Light Emitting Diode)、IC(Integrated Circuit)またはPD(Photo Diode)などを用いることができる。また、電子部品の実装方法としては、WB(Wire Bonding)またはTAB(Tape Automated Bonding)などを採用することができる。
【0016】
本実施の形態における樹脂封止装置は、内部を真空状態にするための真空容器を備える。本実施の形態における真空容器は、上側容器21と下側容器22とを含む。上側容器21と下側容器22とは分離可能に形成されている。上側容器21と下側容器22とは、相対的に移動可能に形成されている。本実施の形態においては、下側容器22が水平方向および鉛直方向に移動可能に形成されている。
【0017】
本実施の形態における樹脂封止装置は、基板5を載置するための載置台としてのステージ24を含む。本実施の形態におけるステージ24は、被処理物としての基板5を固定できるように形成されている。ステージ24は、下側容器22の内部に配置されている。
【0018】
本実施の形態における樹脂封止装置は、ステージ24と孔版1とを相対的に移動させるための移動手段として、ステージ24の移動装置を備える。移動装置は、真空容器の内部でステージ24を鉛直方向に移動するように形成されている。移動手段としては、この形態に限られず、基板と孔版とを相対的に近づけたり離したりできるように形成されていれば構わない。
【0019】
本実施の形態における孔版1は、板状に形成されている。孔版1は、通孔2を有する。通孔2は、孔版1を貫通する穴である。通孔2は、平面視したときに基板5に配置されている電子部品6に対応する位置に形成されている。
【0020】
本実施の形態の形態における孔版1は、枠部材23を含む。枠部材23は、通孔2が形成されている板部の縁に沿って形成されている。本実施の形態における樹脂封止装置は、孔版1を保持するための孔版保持手段として、図示しない孔版保持装置を備える。本実施の形態における孔版保持装置は、枠部材23を保持するように形成されている。孔版保持装置は、空気圧にて駆動するように形成されている。孔版保持装置は、上側容器21に固定されている。孔版保持手段としては、この形態に限られず、孔版を保持することができるように形成されていれば構わない。
【0021】
本実施の形態における樹脂封止装置は、孔版1の通孔2の内部に樹脂10を供給するための樹脂供給手段として、スキージ31,32を備える。スキージ31,32の先端部の形状は、板状、J型または剣型などの任意の形状を採用することができるが、樹脂の粘性および樹脂の特性に合わせて、効率的に樹脂を供給できる形状であることが好ましい。スキージ31,32のそれぞれは、孔版1の主面に垂直な方向に移動可能に形成されている。また、スキージ31,32のそれぞれは、孔版1の主面に沿って移動可能に形成されている。
【0022】
本実施の形態における樹脂封止装置は、真空容器の内部の圧力を調整する圧力調整手段を備える。本実施の形態における圧力調整手段は、真空ポンプを備える。真空ポンプは、真空容器に接続されている。圧力調整手段は、真空容器の内部を復圧するための復圧弁を備える。復圧弁は、開放することにより真空容器を真空状態から復圧することができるように形成されている。
【0023】
本実施の形態における樹脂封止装置は、圧力調整手段と移動手段とを制御するための制御手段として、制御装置を備える。制御手段は、真空容器の内部の圧力を検知するための検出器を含む。制御装置は、検出器からの信号を検知して真空ポンプや復圧弁を制御するように形成されている。
【0024】
本実施の形態における制御装置は、通孔の内部に電子部品を配置する前(図4参照)に、真空容器の内部を自動的に排気するように形成されている。この構成により、封止樹脂の内部に気泡が残留することを効果的に抑制することができる。
【0025】
本実施の形態における樹脂封止方法について説明する。樹脂封止方法は、電子部品が配置されている基板に対して樹脂を供給することにより、電子部品を封止する封止行程を含む。
【0026】
図1を参照して、ステージ24の載置面に樹脂封止を行うべき基板5を配置する。真空容器は、上側容器21と下側容器22とが分離されている状態である。上側容器21の内部には、孔版1を配置する。孔版1の主面のうち通孔2が形成されている領域の外側の領域に樹脂を供給する。樹脂10は、液状である。樹脂10としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂またはウレタン樹脂などの各種封止用樹脂を使用することができる。
【0027】
図2は、実施の形態における樹脂封止方法の第2工程図である。図3は、実施の形態における樹脂封止方法の第3工程図である。図4は、実施の形態における樹脂封止方法の第4工程図である。
【0028】
基板5の上方に孔版1を配置する孔版配置行程を行う。図2を参照して、下側容器22を矢印51に示すように水平方向に移動する。下側容器22を上側容器21の真下に配置する。図3を参照して、矢印52に示すように、下側容器22を上側に移動する。図4を参照して、下側容器22を上側容器21に接触させる。真空容器の内部を密閉する。ステージ24は、それぞれの電子部品6が、対向する通孔2の真下に位置するように配置される。
【0029】
図5は、実施の形態における樹脂封止方法の第5工程図である。図5から図13は、樹脂封止装置の主要部の拡大概略断面図である。図5を参照して、本実施の形態においては、複数の基板5の電子部品6を樹脂封止する封止行程を連続的に行っている。このために、孔版1の通孔2の内部には、前の封止行程にて使用した樹脂10が残存している。通孔2の内部に残存する樹脂10は、薄膜状である。
【0030】
本実施の形態における電子部品6は、線状部材としてのワイヤ7を含む。本実施の形態におけるワイヤ7は、基板5の主面から立設するように形成されている。ワイヤ7は、電気的な導通を得るための導線である。
【0031】
スキージ31およびスキージ32のうち、スキージ31を矢印61に示すように下降させる。スキージ31は、樹脂10に接触する。
【0032】
図6は、実施の形態における樹脂封止方法の第6工程図である。次に、孔版1の周りの絶対圧力を下げる減圧行程を行う。孔版1および基板5が配置されている真空容器の内部を排気する。本実施の形態においては、制御装置が真空容器が密閉されたことを検知して、自動的に真空ポンプを駆動する。電子部品6は、樹脂10に非接触の状態である。減圧行程においては、真空度が高い圧力範囲まで真空引きを行う。
【0033】
電子部品6が樹脂10に接触する前に、孔版1の周りの空間を真空度の高い状態にすることにより、矢印62に示すように、樹脂10の内部に存在している気泡13を外部に放出することができる。通孔2の内部に残存する薄膜状の樹脂10に加えて、孔版1の主面に配置されている樹脂10の内部の気泡13を除去することができる。
【0034】
本実施の形態における樹脂封止方法においては、電子部品6と樹脂10とが離れた状態で真空引きを行うために絶対圧力を十分に小さくすることができ、樹脂10の内部の気泡13を十分に除去することができる。
【0035】
減圧行程においては、十分な効果を得るために絶対圧力が所定値以下であることが好ましい。しかしながら、絶対圧力が低くなりすぎると樹脂10の一部の成分が揮発して、樹脂10全体の粘性が上昇してしまうために、生産性の低下を招いてしまう。減圧行程においては、絶対圧力が0.065kPa以上20kPa以下の範囲内まで排気を行うことが好ましい。さらには、この範囲のうち、絶対圧力が0.1kPa以上5kPa以下の範囲内まで排気を行うことがより好ましい。
【0036】
本実施の形態においては、スキージ31を樹脂10に接触させた後に、真空容器の内部を排気しているが、この形態に限られず、真空容器の排気を行った後にスキージ31を樹脂10に接触させても構わない。
【0037】
図7は、実施の形態における樹脂封止方法の第7工程図である。次に、基板5および孔版1のうち少なくとも一方を互いに近づける向きに移動させることにより、通孔2の内部に電子部品6を配置する電子部品配置行程を行う。本実施の形態においては、制御装置が真空容器の内部の真空度を検知して、移動装置を駆動することにより行っている。本実施の形態においては、減圧行程にて到達した絶対圧力を維持しながら電子部品配置行程を行っている。
【0038】
絶対圧力が十分に小さな状態を維持しながら、矢印53に示すようにステージ24を上側に移動する。電子部品6は、孔版1の通孔2の内部に配置される。電子部品6は、通孔2に残存している樹脂10に接触する。
【0039】
減圧行程にて到達した絶対圧力を維持しながら電子部品配置行程を行うことにより、樹脂の内部に気泡が生じたとしても、気泡の内部の絶対圧力を低くすることができる。この結果、後の絶対圧力を上昇する行程において、この気泡を小さくしたり、消滅させたりすることができる。
【0040】
電子部品6が通孔2に残存する樹脂10に接触するときに、ステージ24の移動速度が速いと、樹脂の内部に気泡が生じ易くなる。このためにステージ24の移動速度は小さいことが好ましい。しかしながら、ステージ24の移動速度が小さすぎると、生産効率の低下を招くおそれがある。電子部品6が樹脂10に接触するときのステージ24の移動速度(上昇速度)は、0.01mm/sec以上1.0mm/sec以下であることが好ましい。さらには、この範囲のうち0.01mm/sec以上0.2mm/sec以下であることがより好ましい。
【0041】
図8は、実施の形態における樹脂封止方法の第8工程図である。次に、孔版1の周りの圧力を上昇させる第1復圧行程を行う。本実施の形態においては、制御装置がステージ24の位置を検知して、復圧弁を開放することにより行う。
【0042】
孔版1の主面に配置されている樹脂10の内部には、気泡13が残存している場合がある。または、前工程において電子部品6が樹脂10に接触するときに、ワイヤ7の下側の領域等に気泡13が生じる場合がある。しかしながら、第1復圧行程を行なうことにより、樹脂10の内部に存在する気泡10の体積を小さくすることができる。この気泡10が小さな状態で、通孔2の内部に樹脂10を充填することができる。
【0043】
第1復圧行程においては、絶対圧力が5kPa以上60kPa以下の範囲内まで圧力を上昇することが好ましい。さらには、この範囲のうち、絶対圧力が10kPa以上40kPa以下の範囲内まで圧力を上昇することが好ましい。
【0044】
図9は、実施の形態における樹脂封止方法の第9工程図である。次に、孔版の通孔の内部に液状の樹脂を供給する樹脂供給行程を行う。本実施の形態においては、制御装置がスキージ31,32を制御することにより行う。樹脂供給行程においては、はじめに、スキージ31を矢印63に示すように、孔版1の主面に沿って移動する第1スキージ移動行程を行う。本実施の形態においては、スキージ31を水平方向に移動させる。スキージ31を基板5の一方の端部から他方の端部まで移動させる。スキージ31が移動することにより、樹脂10が搬送されるとともに、通孔2の内部に樹脂10を配置することができる。基板5の表面に配置されている電子部品6は、樹脂10で埋設される。
【0045】
図10は、実施の形態における樹脂封止方法の第10工程図である。スキージ31の移動が終了したら、孔版1の周りの絶対圧力を上昇する第2復圧行程を行う。本実施の形態においては、制御装置がスキージ31,32の位置を検知して、復圧弁を開放することにより行う。第2復圧行程を行うことにより、樹脂10の内部に存在していた気泡13は、加圧される。樹脂10の内部に存在していた気泡13をほぼ消滅させることができる。
【0046】
第2復圧行程においては、第1復圧行程後の絶対圧力に対応させて、絶対圧力を上昇させることが好ましい。例えば、第1復圧行程後の圧力が20kPaであれば、絶対圧力を40kPaまで上昇させることが好ましい。第2復圧行程においては、たとえば、絶対圧力が20kPa以上90kPaの範囲内まで絶対圧力を上昇することが好ましい。
【0047】
図11は、実施の形態における樹脂封止方法の第11工程図である。スキージ31を上昇させる。スキージ32を下降させて、スキージ32を樹脂10に接触させる。次に、第2スキージを孔版1の表面に沿って移動させる第2スキージ移動行程を行う。本実施の形態においては、矢印64に示すように、スキージ32を水平方向に移動させる。スキージ32を孔版1の他方の端部から一方の端部まで移動させる。このように、樹脂10に接触させるスキージを変更して、返し側のスキージの移動を行う。スキージ32を移動させることにより、樹脂10の余剰部分を除去する。
【0048】
図12は、実施の形態における樹脂封止方法の第12工程図である。スキージ32の移動が終了したら、矢印54に示すように、ステージ24を下降させる。ステージ24を下降する場合に、樹脂10に糸引き部11が生じる。
【0049】
図13は、実施の形態における樹脂封止方法の第13工程図である。さらに、ステージ24を下降することにより糸引き部が切断される。それぞれの電子部品6は、樹脂10で覆われている。このように、それぞれの電子部品6を個別に樹脂封止することができる。孔版1の通孔2には、樹脂10が残存する。
【0050】
図14は、実施の形態における樹脂封止方法の第14工程図である。図14および図15は、樹脂封止装置全体の概略断面図である。ステージ24の下降が終了したら、真空容器の大気開放を行う。真空容器の大気開放を行うことにより、樹脂に残存していた気泡は、より確実に消滅する。
【0051】
図15は、実施の形態における樹脂封止方法の第15工程図である。下側容器22の下降を行った後に、下側容器22を水平方向に移動する。下側容器22を最初の位置に戻す。この状態で、樹脂封止された基板5を下側容器22から取り出す。本実施の形態においては、この後に電子部品6を覆っている樹脂10を硬化する。次に、樹脂封止をすべき新たな基板5を下側容器22に配置して、上述の行程を繰り返す。
【0052】
本実施の形態においては、複数の基板5の電子部品6を樹脂封止する封止行程を連続的に行っているために、孔版1の通孔2の内部に樹脂10が残存しているが、封止を行った樹脂10の内部に気泡が残存することを効果的に抑制することができる。
【0053】
図7を参照して、本実施の形態における樹脂封止方法では、基板5の表面から立設するように配置されているワイヤ7を含む電子部品6を用いている。電子部品6を樹脂10に接触させる電子部品配置行程において、ワイヤ7の下側には気泡が混入しやすいために、本発明の効果が顕著になる。
【0054】
本実施の形態における樹脂の粘度については、特に制限はないが、樹脂に気泡が混入する問題は、粘度の高い樹脂を用いた場合に顕著である。本実施の形態における樹脂封止方法は、常温(20℃)における粘度が0.5Pa・s以上100Pa・s以下の樹脂を使用する場合に効果的である。さらには、この範囲のうち、樹脂の粘度が5Pa・s以上30Pa・s以下の場合が効果的である。
【0055】
また、孔版の通孔が小さくなると、通孔の内部に薄膜状の樹脂が残存し易くなり、樹脂に気泡が混入する可能性が高くなる。このため、孔版の通孔の開口面積が小さい程、本発明の効果が顕著になる。効果が顕著になる具体的な通孔の大きさは、孔版の厚みによって相違する。例えば、孔版の厚みが0.2mm以上10mm以下(特に0.5mm以上5mm以下)の場合に、通孔の開口面積が0.1mm以上350mm以下であれば効果的であり、この範囲のうち0.5mm以上200mm以下であればより効果的である。
【0056】
また、本実施形態においては、ステージの下降速度について特に限定していないが、下降速度が速すぎると、孔版と電子部品との間で生じる糸引き量が多くなる。このため、電子部品を通孔から離隔して糸切れが生じるまでは遅い速度で下降させ、その後にテーブルの下降速度を増加させることが好ましい。この方法により、通孔内の残留樹脂の増加や、糸切れ時に生じる封止樹脂への気泡の巻き込みなどの、糸引き量の増加に伴う弊害を抑制することができる。例えば、電子部品が通孔から離れるときの下降速度を、0.05mm/sec以上2.0mm/sec以下に設定することが好ましい。
【0057】
次に、図16から図24を参照して、比較例としての樹脂封止方法について説明する。比較例においては、基板に配置されている電子部品を孔版の通孔に配置して、電子部品を樹脂と接触させた後に真空引きを行っている。
【0058】
図16は、比較例としての樹脂封止方法の第1工程図である。下側容器に配置されているステージ24に基板5を配置して真空容器を密閉する。通孔2には、別の基板の樹脂封止を行ったときの樹脂10が残存している。矢印61に示すようにスキージ31を移動して、樹脂10にスキージ31を接触させる。
【0059】
図17は、比較例としての樹脂封止方法の第2工程図である。次に、大気圧の状態で、矢印53に示すように、ステージ24を上昇させる。基板5に配置されている電子部品6は、通孔2の内部に配置される。電子部品6は、樹脂10に接触して一部が埋設される。このときに、樹脂10の内部に気泡13が生じる場合がある。特に、ワイヤ7の下側の領域に気泡13が混入する場合がある。この時に生じる気泡13の内部の圧力は大気圧に等しい。
【0060】
図18は、比較例としての樹脂封止方法の第3工程図である。電子部品6が通孔2の内部に配置されている状態で真空ポンプを駆動することにより、孔版1の周りを真空の雰囲気にする。このときに、気泡13の内部の圧力が大気圧であるために、気圧差により気泡13の体積は大きくなる。すなわち、大きな気泡13が形成される。
【0061】
このときに、気泡13が樹脂10の表面に到達して、樹脂10の表面に複数の凹部が形成される場合があった。排気を行うときの絶対圧力を小さくする程、気泡13が大きくなって大きな凹部が形成される。このように、絶対圧力を小さくするほど、樹脂10の表面の凹凸が大きくなる。後の行程で樹脂10をスキージ31で供給する際に、凹部に樹脂10が乗っかる状態となり、このときに新たな気泡が混入する可能性が高くなっていた。このために、十分な排気を行うことができなかった。すなわち、樹脂の表面に凹凸が形成されてしまうために、絶対圧力を十分に低くすることができなかった。
【0062】
比較例においては、例えば、絶対圧力が5kPa以上60kPa以下になるように排気を行う。より好ましくは、この範囲のうち絶対圧力が10kPa以上40kPa以下になるように行う。
【0063】
図19は、比較例としての樹脂封止方法の第4工程図である。次に、矢印63に示すように、孔版1の主面に沿った方向にスキージ31を移動する。矢印66に示すように、通孔2の内部に樹脂10を充填する。このときに、孔版1の主面に配置されていた樹脂10の内部の気泡13が通孔2に充填される。このため、通孔2の内部の樹脂10に存在する気泡13が、さらに多くなっていた。
【0064】
図20は、比較例としての樹脂封止方法の第5工程図である。スキージ31を孔版1の一方の端部から他方の端部まで移動する。次に、孔版1の周りの絶対圧力を上昇する復圧行程を行う。この復圧行程においては、復圧行程前の圧力に依存して、絶対圧力を上昇する。例えば、復圧行程前の絶対圧力が10kPaであれば、絶対圧力が20kPaになるまで圧力を上昇する。絶対圧力を上昇することにより、気泡13の体積は小さくなる。しかしながら、体積を十分に小さくすることができずに、樹脂10の内部には気泡13が残存する。
【0065】
図21は、比較例としての樹脂封止方法の第6工程図である。スキージ32を孔版1の他方の端部から一方の端部まで移動することにより、余剰の樹脂10を除去する。
【0066】
図22は、比較例としての樹脂封止方法の第7工程図である。スキージ32の移動が終了したら、矢印54に示すように、ステージ24を下降する。基板5が孔版1から引き離される。このときに、糸引き部11が生じる。
【0067】
図23は、比較例としての樹脂封止方法の第8工程図である。矢印54に示すように、さらにステージ24を移動することにより糸引き部11を切断する。
【0068】
図24は、比較例としての樹脂封止方法の第9工程図である。ステージ24の下降が終了したら真空容器の大気開放を行う。大気開放を行うことにより、電子部品6を封止している樹脂10の内部に存在する気泡13の体積は小さくなる。しかしながら、この行程においても、気泡13を十分に小さくすることができずに、樹脂10に残存している。
【0069】
このように、比較例においては、孔版の通孔に電子部品を配置するときに、常圧の状態で行っているために、孔版の周りの絶対圧力を小さくしたときに、気泡の体積が大きくなってしまっていた。これに対して、上記の本実施の形態における樹脂封止方法においては、絶対圧力の低い状態で通孔に電子部品を配置する(電子部品が樹脂と接触する)ために、このときに生じる気泡の内部の絶対圧力を十分に小さくすることができる。この結果、電子部品が樹脂と接触するときに生じる気泡は、後の絶対圧力を大きくする行程で、体積を小さくすることができる。または、後の絶対圧力を大きくする行程で気泡を消滅させることができる。
【0070】
また、本実施の形態における樹脂封止方法においては、孔版の通孔の内部に電子部品を配置する前に絶対圧力を低い状態にする。このために、絶対圧力が十分に小さな状態にすることができて、樹脂の内部に存在する気泡を十分に除去することができる。
【0071】
次に、本実施の形態における樹脂封止方法を用いて効果確認試験を行った結果について説明する。効果確認試験においては、本実施の形態の樹脂封止方法を使用して樹脂封止を行った基板と、比較例の樹脂封止方法を使用して樹脂封止を行った基板とをそれぞれ製造した。
【0072】
図25に、効果確認試験で用いた基板の概略平面図を示す。基板5の主面には、電子部品6としてLEDが形成されている。電子部品6は、マトリクス状に16列×16行で配置されている。効果確認試験においては、これらの電子部品6のうち、領域71に示す一の方向における両側の端部の1列の電子部品6と、中央の2列の電子部品6とを抜粋した。すなわち、1枚の基板5に対して、64個の電子部品6について樹脂の内部の気泡の状態を検査した。樹脂封止を行ったそれぞれの電子部品6について、樹脂の内部の気泡の状態を検査した。
【0073】
試験には、液状の樹脂として、サンユレック株式会社製の「VS9301」(シリコーン樹脂、粘度:40Pa・s、チクソ性:3.5)を使用した。また、孔版としては、厚みが1mmで、通孔の開口面積が6.15mm(直径2.8mmの円)のものを使用した。
【0074】
本実施の形態の樹脂封止方法を用いた実施例では、減圧行程において、真空容器の内部の絶対圧力が1kPaになるまで排気を行っている。次に、この真空度を維持しながら、電子部品を孔版の通孔の内部に配置して、電子部品と通孔の樹脂とを接触させている。
【0075】
実施例の第1復圧行程においては、真空容器の内部の絶対圧力が20kPaになるまで絶対圧力を上昇している。この後に、第1スキージを移動することにより通孔の内部に樹脂を充填している。実施例の第2復圧行程においては、真空容器の内部の絶対圧力が60kPaになるまで圧力を上昇している。この後に、第2スキージにより樹脂の余剰部分を除去して大気開放を行っている。
【0076】
比較例においては、孔版の通孔の内部に電子部品を配置した後に、絶対圧力が10kPaになるまで真空引きを行なっている。この後に、第1スキージにて通孔に樹脂を充填している。次に、圧力を20kPaまで上昇している。この後に、第2スキージにより樹脂の余剰部分を除去して大気開放を行っている。
【0077】
効果確認試験の結果を表1および表2に示す。表1は、それぞれの基板についての樹脂封止の結果であり、表2は、表1の試験結果の総数を示している。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

効果確認試験においては、10枚の基板に対して樹脂封止を連続して行った。試験においては、孔版を変更せずに単一の孔版を用いて行った。
【0080】
表1および表2から、実施例の樹脂封止方法は、比較例の樹脂封止方法よりも樹脂中に残存する気泡の数が少ないことが分かる。また、実施例の樹脂封止方法は、比較例の樹脂封止方法よりも樹脂中に存在する気泡の直径が小さいことが分かる。例えば、表2において、直径が0.05mm〜0.10mmの気泡に着目したときに、比較例の気泡の数が48個であるのに対して、実施例の気泡の数が1個であり、実施例の樹脂封止方法が優れていることが分かる。
【0081】
また、表1から、比較例の樹脂封止方法は、樹脂封止の回数が多くなるにつれて気泡が増加する割合が大きくなっているが、実施例の樹脂封止方法は、樹脂封止の回数が多くなっても気泡が増加する割合が小さいことが分かる。例えば、9回目と10回目のテストに関して、直径が0.05mm〜0.10mmの気泡に着目したときに、比較例の気泡の増加数が3個であるのに対して、実施例の気泡の増加数が1個であり、実施例の樹脂封止方法が優れていることが分かる。
【0082】
このように、実施例の樹脂封止方法は、比較例の樹脂封止方法に比べて、樹脂中に残存する気泡の数を少なくしたり気泡を小さくしたりすることができて、優れていることが分かる。
【0083】
上記に記載の実施の形態は例示であり、これらの実施の形態によって請求する範囲が限定されるものではない。また、それぞれの図において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態における樹脂封止方法の第1工程図である。
【図2】実施の形態における樹脂封止方法の第2工程図である。
【図3】実施の形態における樹脂封止方法の第3工程図である。
【図4】実施の形態における樹脂封止方法の第4工程図である。
【図5】実施の形態における樹脂封止方法の第5工程図である。
【図6】実施の形態における樹脂封止方法の第6工程図である。
【図7】実施の形態における樹脂封止方法の第7工程図である。
【図8】実施の形態における樹脂封止方法の第8工程図である。
【図9】実施の形態における樹脂封止方法の第9工程図である。
【図10】実施の形態における樹脂封止方法の第10工程図である。
【図11】実施の形態における樹脂封止方法の第11工程図である。
【図12】実施の形態における樹脂封止方法の第12工程図である。
【図13】実施の形態における樹脂封止方法の第13工程図である。
【図14】実施の形態における樹脂封止方法の第14工程図である。
【図15】実施の形態における樹脂封止方法の第15工程図である。
【図16】比較例としての樹脂封止方法の第1工程図である。
【図17】比較例としての樹脂封止方法の第2工程図である。
【図18】比較例としての樹脂封止方法の第3工程図である。
【図19】比較例としての樹脂封止方法の第4工程図である。
【図20】比較例としての樹脂封止方法の第5工程図である。
【図21】比較例としての樹脂封止方法の第6工程図である。
【図22】比較例としての樹脂封止方法の第7工程図である。
【図23】比較例としての樹脂封止方法の第8工程図である。
【図24】比較例としての樹脂封止方法の第9工程図である。
【図25】効果確認試験に用いた基板の概略平面図である。
【図26】従来の技術における樹脂封止方法の第1工程図である。
【図27】従来の技術における樹脂封止方法の第2工程図である。
【図28】従来の技術における樹脂封止方法の第3工程図である。
【符号の説明】
【0085】
1 孔版
2 通孔
5 基板
6 電子部品
7 ワイヤ
10 樹脂
11 糸引き部
13 気泡
21 上側容器
22 下側容器
23 枠部材
24 ステージ
31,32 スキージ
51〜55 矢印
61〜65 矢印
71 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が配置されている基板に対して樹脂を供給することにより、前記電子部品を封止する封止行程を含み、
前記封止行程は、前記基板の上方に、通孔を有する孔版を配置する孔版配置行程と、
前記孔版の周りの絶対圧力を下げる減圧行程と、
前記減圧行程の後に、前記基板および前記孔版のうち少なくとも一方を互いに近づける向きに移動させることにより、前記通孔の内部に前記電子部品を配置する電子部品配置行程と、
前記通孔の内部に液状の樹脂を供給する樹脂供給行程と
を含む、樹脂封止方法。
【請求項2】
前記減圧行程は、前記孔版の周りの絶対圧力が0.065kPa以上20kPa以下の範囲内になるまで排気する行程を含む、請求項1に記載の樹脂封止方法。
【請求項3】
前記電子部品配置行程の後に、前記孔版の周りの絶対圧力を上昇する第1復圧行程を含み、
前記樹脂供給行程は、前記第1復圧行程の後に行う、請求項1または2に記載の樹脂封止方法。
【請求項4】
前記第1復圧行程は、前記孔版の周りの絶対圧力が5kPa以上60kPa以下の範囲内になるまで絶対圧力を上昇する行程を含む、請求項3に記載の樹脂封止方法。
【請求項5】
前記樹脂供給行程は、第1スキージを前記孔版の表面に沿って移動させることにより、前記樹脂を前記通孔の内部に配置する第1スキージ移動行程と、
前記第1スキージ移動行程の後に、前記孔版の周りの絶対圧力を上昇する第2復圧行程と、
前記第2復圧行程の後に、第2スキージを前記孔版の表面に沿って移動させることにより、前記樹脂の余剰部分を除去する第2スキージ移動行程と
を含む、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂封止方法。
【請求項6】
内部を真空状態にするための真空容器と、
前記真空容器の内部の圧力を調整するための圧力調整手段と、
前記真空容器の内部に配置され、電子部品が配置されている基板を載置するための載置台と、
通孔を有する孔版を保持するための孔版保持手段と、
前記載置台と前記孔版とを相対的に移動させるための移動手段と、
前記通孔の内部に液状の樹脂を供給するための樹脂供給手段と、
前記圧力調整手段と前記移動手段とを制御するための制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記通孔の内部に前記電子部品を配置する前に前記真空容器の内部を自動的に排気する、樹脂封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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