説明

樹脂成形品および金型

【課題】ウェルドラインの視認性を抑えることができる樹脂成形品および金型を提供する。
【解決手段】例えば、自動車の内装であるコントロールパネルに配置されたダイヤルノブなどの外観を構成する樹脂成形品であって、樹脂と鱗片状光輝材とを有する材着樹脂材料を用いて射出成形され、取付時に外部から視認される意匠面2と、それ以外の非意匠面3とが設けられる樹脂成形品であって、非意匠面3における材着樹脂材料の流れの会合部6の少なくとも一部分には、凹部4が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品および金型、特に、光輝材が添加された材着樹脂材料(以下、「メタリック調材着樹脂材料」と表記する。)から形成された樹脂成形品、および、その樹脂成形品の形成に用いられる金型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装であるコントロールパネルに配置されたダイヤルノブなどの外観を構成する部品には、メタリック調の意匠が求められることがある。
【0003】
上述のダイヤルノブの原料としては、ABS樹脂やAES樹脂などの樹脂原料が用いられている場合が多い。このような樹脂成形品に対して、深みのあるメタリック調や、パール調などの均一で美しい外観を付与するためには、加飾の(装飾を加える)ために塗装が行われることが一般的であった。
【0004】
しかしながら、上述のように樹脂成形品に対して塗装を行う場合には、塗装を行うことによるコストの増加が問題となるとともに、塗料に含まれる有機溶剤が環境に負荷を与えるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、上述の樹脂原料などにアルミニウムの薄片(アルミフレーク)などを光輝材として添加したメタリック系の材着樹脂材料(メタリック調材着樹脂材料)を用いて樹脂成形品を形成する方法が行われている。このような材着樹脂材料を用いることで、塗装を行わなくても、樹脂成形品に対して、深みのあるメタリック調などの均一で美しい外観を付与することができるとされている。
【0006】
しかしながら、上述のように光輝材が添加された樹脂原料から形成された樹脂成形品においては、樹脂流れの会合部分に線状痕(以下、「ウェルドライン」と表記する。)が発生するという問題があった。
このウェルドラインでは、光輝材が樹脂の流れに沿って配向するため、他の部分と外観が異なり、樹脂成形品の外観を損ねる模様とされている。
【0007】
そこで、上述のウェルドラインの発生を予防する方法、あるいは、ウェルドラインが発生しても、樹脂成形品の外観上、目立たなくする種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
特許文献1には、樹脂成形品の表面に梨地やシボパターンを設けることにより、ウェルドラインを目立たなくする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3760615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の方法では、ある程度までウェルドラインを目立たなくすることはできるが、適用できる表面のシボ形状に制限があり、幾何学的パターンシボや、ドットシボや、革シボなどの全てのシボ形状に適用できるものではないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ウェルドラインの視認性を抑えることができる樹脂成形品および金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の樹脂成形品は、樹脂と鱗片状光輝材とを有する材着樹脂材料を用いて射出成形され、取付時に外部から視認される意匠面と、それ以外の非意匠面とが設けられる樹脂成形品であって、前記非意匠面における前記材着樹脂材料の流れの会合部の少なくとも一部分には、凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、会合部における凹部が形成された領域では、その他の領域を比較して、会合部に到着する直前における材着樹脂材料の流れが変化する。具体的には、材着樹脂材料の流れる流路断面積が異なるため、会合部に到着する直前における材着樹脂材料の流速が変化する。
【0014】
そのため、凹部が形成された領域では、その他の領域と比較して、材着樹脂材料の流れが合流する部分である会合部の形成位置が変化して、会合部の視認性を低くすることができる。具体的には、相対的に、視認性が高い直線状に延びる会合部の形成を抑制し、視認性が低いランダムに曲がった状態で延びる会合部を形成することができる。
【0015】
上記発明においては、前記凹部は、線状に形成される前記会合部に相当する位置に配置されていること、言い換えると、線状に延びる前記会合部を含むように配置されていることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、会合部の形成位置や形状は、凹部の位置に応じて変化する。そのため、凹部の配置位置を適宜選択することにより、視認性が低いランダムに曲がった状態で延びる会合部を形成することができる。
【0017】
上記発明においては、前記凹部は、線状に形成される前記会合部に相当する位置に配置されているとともに、前記凹部における前記会合部に対して交差する方向の寸法が、前記会合部に沿って変化することが望ましい。
【0018】
本発明によれば、凹部における会合部に対して交差する方向の寸法、つまり幅方向の寸法が、会合部が延びる方向に沿って変化するため、会合部の形成位置は幅方向の寸法に応じて変化する。そのため、直線状の会合部と比較して、視認性が低い曲線状の会合部を形成しやすい。
【0019】
上記発明においては、前記凹部は、前記会合部に沿って凹みの深さが変化することが望ましい。
つまり、ランダムな曲線状の会合部を形成する方法としては、上述のように幅方向の寸法を変化させる方法の他に、会合部に沿って凹部の深さを変化させる方法を用いることもできる。
さらに、これらの形状を組み合わせてもよい。言い換えると、凹部における幅方向の寸法および深さを変化させてもよい。
【0020】
本発明によれば、凹部における凹みの深さが、会合部が延びる方向に沿って変化するため、会合部の形成位置は凹みの深さに応じて変化する。そのため、直線状に延びる会合部と比較して、視認性が低いランダムに曲線状に延びる会合部を形成しやすい。
【0021】
上記発明においては、前記凹部は、線状に形成される前記会合部に対して非対称に形成されている、つまり、非対称な形状にて形成されていることが望ましい。
【0022】
本発明によれば、凹部の形状が会合部に対して非対称である場合、対称である場合と比較して、会合部の形成位置をランダムに変化させやすく、不規則な曲線形状となる。そのため、直線状に延びる会合部と比較して、その視認性を低くすることができる。
【0023】
本発明の金型は、樹脂と鱗片状光輝材とを有する材着樹脂材料が注入されることにより樹脂成形品を形成する金型であって、前記材着樹脂材料が注入される複数のゲートと、前記複数のゲートの間に形成され、上記本発明の凹部と対応する凸部と、が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、材着樹脂材料は、溶融された状態で、複数のゲートのそれぞれから樹脂形成品を形成する金型の内部の空洞部に注入され、注入されたゲートから遠ざかる方向に向かって流れる。各ゲートから注入された材着樹脂材料は、金型に凸部が形成されている領域で合流し会合部を形成するとともに、凹状の凹部を形成する。会合部における凸部が形成された領域では、その他の領域と比較して、会合部に到着する直前における材着樹脂材料の流れが変化する。
【0025】
そのため、金型に凸部が形成された領域では、その他の領域と比較して、材着樹脂材料の流れが合流する部分である会合部の形成位置が変化して、鱗片状光輝材の配向状態がランダムとなり、会合部の視認性を低くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂成形品および金型によれば、材着樹脂材料の流れの会合部の少なくとも一部分に凹部を形成することにより、ウェルドラインの視認性を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品の全体構成を説明する斜視図である。
【図2】図1の樹脂成形品の構成を説明する部分拡大図である。
【図3】図2の凹部の構成を説明する斜視図である。
【図4】図1の凹部の別の実施形態を説明する部分拡大図である。
【図5】図1の凹部のさらに別の実施形態を説明する部分拡大図である。
【図6】図1の凹部のさらに別の実施形態を説明する部分拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する部分拡大斜視図である。
【図8】図7の凹部の別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
【図9】図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
【図10】図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
【図11】図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する部分拡大斜視図である。
【図13】図12の凹部における形状を説明する縦断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する展開図である。
【図15】図14の凹部の別の実施例を説明する展開図である。
【図16】図14の凹部のさらに別の実施例を説明する展開図である。
【図17】図16の凹部の別の実施例を説明する展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品、および、当該樹脂成形品を形成する金型ついて図1から図6を参照して説明する。
本実施形態では、本願発明の樹脂成形品を自動車内装のコントロールパネルに用いられる略円筒状に形成されたダイヤルノブに適用して説明する。本実施形態では、後述する材着樹脂材料を用いて形成された樹脂成形品であって、塗装を行わなくても、深みのあるメタリック調などの均一で美しい外観が付与される樹脂成形品に適用して説明する。
【0029】
なお、本願発明の樹脂成形品は、上述の略円筒状のダイヤルノブに適用されるだけでなく、その他の形状を有する部品に適用してもよく、特に限定するものではない。
【0030】
図1は、本実施形態に係る樹脂成形品の全体構成を説明する斜視図である。図2は、図1の樹脂成形品の構成を説明する部分拡大図である。
樹脂成形品1は、図1および図2に示すように、略円筒状に形成された部品であり、径方向外側の円筒面である意匠面2と、径方向内側の円筒面である非意匠面3とが設けられた部品である。
【0031】
ここで、意匠面2は、樹脂成形品1がコントロールパネルに取り付けられた際に、自動車の乗員から視認されうる面である。その一方で、非意匠面3は、それ以外の面であって、樹脂成形品1がコントロールパネルに取り付けられた際に、自動車の乗員から視認されない面である。
【0032】
さらに、樹脂成形品1は、樹脂と鱗片状光輝材とを主な材料とする材着樹脂材料であるメタリック調材着樹脂材料を用いて金型形成された部品である。
上述の樹脂としては、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、PC樹脂、または、PMMA樹脂、もしくは、これらの2種類以上の組み合わせであるアロイ材料などを挙げることができる。
【0033】
鱗片状光輝材としては、アルミニウムの薄片であるアルミフレークや、パール調に用いられるマイカフレークなどを挙げることができる。
上述のアルミフレークとしては、鱗片形状の長い方向の寸法が、2μmから100μmまでのものが望ましい。例えば、東洋アルミニウム社製のメタリックカラー用コンパウンド METAXを挙げることができる。これらは、樹脂材料に対して0.1重量部から3重量部の範囲で添加して用いられる。
【0034】
樹脂成形品1には、図1および図2に示すように、非意匠面3に凹部4が設けられている。凹部4は、複数のゲート5の間の領域、言い換えると、ウェルドライン(会合部)6が形成される領域に設けられている。
【0035】
ゲート5は、樹脂成形品1を形成するための溶融した材着樹脂材料が注入される位置である。
本実施形態では、3つのゲート5が非意匠面3に等間隔に形成されている場合に適用して説明する。なお、ゲート5の配置は、樹脂成形品1の形状などに応じて変更されるものであり、特に限定するものではない。
【0036】
ウェルドライン6は、2つ以上の材着樹脂材料の流れの先端部が会合した場所に発生する線状跡である。
本実施形態の場合、円筒状の樹脂成形品1における中心軸線に沿ってウェルドライン6が延びる例に適用して説明する。なお、ウェルドライン6の形状は、樹脂成形品1の形状や、ゲートの配置位置などに応じて変化するものであり、特に限定するものではない。
【0037】
図3は、図2の凹部の構成を説明する斜視図である。
凹部4は、図2および図3に示すように、非意匠面3に形成された凹みであり、略円筒状に形成された樹脂成形品1の肉厚に変化をもたらすものである。
【0038】
凹部4は、円筒状に形成された樹脂形成品1における一方の端部(図3の下方の端部)に向かって開口するように形成されている。
【0039】
その一方で、凹部4における他方の端部(図3の上方の端部)は、樹脂形成品1の周方向(図3の左右方向)に向かって、階段状に一方の端部から遠ざかる複数の区間に区分された側面から構成されている。言い換えると、円筒状に形成された樹脂成形品1の中心軸線に沿って、凹部4の幅が変化するように、つまり、開口から他方の端部に向かって、凹部4の幅が狭くなるように形成されている。
このようにすることで、凹部4の形状がウェルドライン6に対して非対称となる。
【0040】
さらに、凹部4における深さは、中心軸線に沿って(図2の紙面に対して垂直方向に沿って)略一定になるように形成されている。
このようにすることで、凹部4が設けられた領域における材着樹脂材料の流れが不規則になる。
【0041】
具体的には、図2に示すように、樹脂成形品1の厚さをT、凹部4の凹み深さをtとすると、
1/104T≦t≦2/3T
の関係式を満たす深さtに凹部4が形成されていることが好ましい。
【0042】
凹部4の凹み深さtが2/3Tよりも深くなると、樹脂成形品1の意匠面2に、凹部4による厚みの変化により、形成品の表面に変形が発生するおそれがある。さらに、極端に凹部の強度が低下し、割れ等の破損につながるおそれがある。
【0043】
その一方で、凹み深さが1/5Tよりも小さい場合には、樹脂の流れの変化が小さく、流れが不規則にならないため、直線状に延びるウェルドラインと比較して、ウェルドライン6における視認性がさほど(視認性に影響を与えるほど)変化しない。
【0044】
その一方で、凹部4は、ウェルドライン6が発生する位置を含むように配置されている。
【0045】
具体的には、凹部4における周方向(図2の略左右方向)の幅をW、凹部4における周方向に複数に区分された各区間の長さをwi(i=1,2,・・・,n(nは自然数))とすると、
0.5mm≦wi≦10mm
を満たすように、凹部4の複数の区間が構成されていることが好ましい。
【0046】
なお、各区間の長さwiは全て同一であってもよいし、全てが同一である必要はなく、複数の区間の間で長さwiを変化させていてもよく特に限定するものではない。
【0047】
さらに、図3に示すように、凹部4の全体の中心軸線方向(図3の上下方向)の長さをH、凹部4の複数の区間のそれぞれにおける中心軸線方向の長さ、つまり、凹部4の各区間における下端から上端までの長さをhi(i=1,2,・・・,n(nは自然数))とすると、
1.0mm≦hi≦10mm
の関係式を満たすように凹部4の複数の区間が構成されていることが好ましい。
【0048】
例えば、区間の長さhiが10mmよりも大きい場合には、その区間におけるウェルドラインの視認性がさほど変化しないため、十分な効果を得ることができない。言い換えると、凹部4を設けていない場合と比較して、ウェルドラインの視認性の変化が小さく、視認性を抑えるという効果を十分に得ることができない。
【0049】
ここで、凹部4の形成位置はウェルドライン6が形成される位置であり、ウェルドライン6の形成位置は、ウェルドライン6の形状と同様に、樹脂成形品1の形状や、ゲートの配置位置などに応じて変化するものである。
【0050】
そこで、ウェルドライン6の発生位置はCAE(Computer Aided Engineering)を用いて事前に予測することにより、本実施形態の樹脂成形品1におけるウェルドライン6の視認性を抑えるという効果を十分に得ることができる。例えば、株式会社プラメディアの樹脂流動解析ソフトであるPLANETSを用いてウェルドライン6の発生位置の予測を行う方法を挙げることができる。
【0051】
上記の構成によれば、ウェルドライン6における凹部4が形成された領域では、その他の領域と比較して、ウェルドライン6に到着する直前における材着樹脂材料の流れが変化する。具体的には、材着樹脂材料の流れる流路断面積が異なるため、ウェルドライン6に到着する直前における材着樹脂材料の流速が変化する。
【0052】
そのため、凹部4が形成された領域では、その他の領域と比較して、材着樹脂材料の流れが合流する部分であるウェルドライン6の形成位置が変化して、鱗片状光輝材の配向状態がランダムとなるため、ウェルドライン6の視認性を低くすることができる。具体的には、視認性が高い直線状に延びるウェルドライン6の形成を抑制し、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低いランダムに曲がった状態で延びるウェルドライン6を形成することができる。
【0053】
凹部4の形状がウェルドライン6に対して非対称であるため、その形状が対称である場合と比較して、ウェルドライン6の形成位置をランダムに変化させやすく、不規則な曲線形状となる。そのため、直線状に延びる会合部と比較して、ウェルドライン6の視認性を低くすることができる。
【0054】
図4は、図1の凹部の別の実施形態を説明する部分拡大図である。図5および図6は、図1の凹部のさらに別の実施形態を説明する部分拡大図である。
なお、上述の実施形態のように、凹部4は、図4に示すように、複数に区分された各区間において異なる深さti(i=1,2,・・・,n(nは自然数))を有する形状であってもよいし、図5に示すように、材着樹脂材料の流れの変化、特に急激な変化を抑制するために、凹部4の底面と側面との接続部を曲面、例えばR形状に形成してもよいし、図6に示すように、凹部4の側面を、底面から開口に向かって広がる傾斜面として形成してもよく、特に限定するものではない。
【0055】
このように、凹部4の幅方向(ウェルドライン6に対して交差する方向)の寸法を、ウェルドライン6が延びる方向に沿って変化させることにより、ウェルドライン6の形成位置は幅方向の寸法に応じて変化する。そのため、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低い曲線状に延びるウェルドライン6が形成しやすくなる。
【0056】
さらに、凹部4における凹みの深さを、凹部4の幅方向に沿って変化させることにより、ウェルドライン6の形成位置は凹部4の凹みの深さに応じて変化する。そのため、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低い曲線状に延びるウェルドライン6が形成しやすくなる。
【0057】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図7から図11を参照して説明する。
本実施形態の樹脂成形品の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、凹部の形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図7から図11を用いて凹部の形状のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する部分拡大斜視図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
樹脂成形品101の非意匠面3には、図7に示すように、凹部104が形成されている。
凹部104は、円筒状に形成された樹脂成形品101における一方の端部(図7の下方の端部)に向かって開口するように形成されており、樹脂成形品101の中心軸線からみて略三角状に形成されている。
【0059】
言い換えると、円筒状に形成された樹脂成形品101の中心軸線に沿って、凹部104の幅が変化するように、つまり、他方の端部(図7の上方の端部)に向かって、凹部104の幅が狭くなるように形成されている。
さらに、凹部104における深さは、中心軸線に沿って(図7の上下方向に沿って)略一定になるように形成されている。
【0060】
図8は、図7の凹部の別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
なお、上述の実施形態のように、略三角状に形成された凹部104における斜辺に相当する部分104Aが、略直線状に形成された斜面であってもよいし、図8に示すように、部分104Bが、凹部104側に突出して湾曲する斜面としてもよく、特に限定するものではない。
【0061】
図9は、図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
さらに、図9に示すように、略三角状に形成された凹部104における斜辺に相当する部分104Cを湾曲して凹む斜面としてもよく、特に限定するものではない。
【0062】
上記の構成によれば、凹部104の幅方向(ウェルドライン6に対して交差する方向)の寸法が、ウェルドライン6が延びる方向に沿って変化するため、ウェルドライン6の形成位置は幅方向の寸法に応じて変化する。そのため、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低い曲線状に延びるウェルドライン6が形成しやすくなる。
【0063】
図10は、図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
なお、上述の実施形態のように、凹部104における深さは、中心軸線に沿って(図10の上下方向に沿って)略一定になるように形成されていてもよいし、図10に示すように、他方の端部(図10の上方の端部)に向かって、凹部104の深さが滑らかに浅くなるように形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0064】
図11は、図7の凹部のさらに別の実施例を説明する部分拡大斜視図である。
さらに、図11に示すように、他方の端部(図11の上方の端部)に向かって、凹部104の深さが階段状に浅くなるように形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0065】
ウェルドライン6の形成位置は凹みの深さに応じて変化するため、凹部104における凹みの深さをウェルドライン6が延びる方向に沿って変化させることで、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低い曲線状に延びるウェルドライン6を形成することができる。
【0066】
なお、上述のように、凹部104における斜辺に相当する部分104A,104B,104Cに係る実施例と、凹部104の深さの変化に係る実施例とを、それぞれ独立したものとしてもよいし、両者を適宜組み合わせた実施例であってもよく、特に限定するものではない。
【0067】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図12および図13を参照して説明する。
本実施形態の樹脂成形品の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、凹部の形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図12および図13を用いて凹部の形状のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図12は、本実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する部分拡大斜視図である。図13は、図12の凹部における形状を説明する縦断面図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
樹脂成形品201の非意匠面3には、図12および図13に示すように、凹部204が形成されている。
凹部204は、円筒状に形成された樹脂成形品201における一方の端部(図12の下方の端部)に向かって開口するように形成されており、樹脂成形品201の中心軸線からみて、図12の下方が広い略台形状に形成されている。
【0069】
さらに、凹部204における中心軸線に沿って延びる一対の側壁面207は、径方向外側に向かって互いに近づく傾斜とされている。
このようにすることで、凹部204の金型からの離型時における型抜きを行いやすくすることができる。
【0070】
凹部204には、凹みの深さが変化する段差部208が形成されている。段差部208は、樹脂成形品201における周方向(図12の左右方向)に向かって、樹脂成形品201の一方または他方の端部に近づく傾斜を有している。さらに、段差部208は、図13に示すように、突出した部分が曲率半径を有するように形成されている。
【0071】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図14から図17を参照して説明する。
本実施形態の樹脂成形品の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、凹部の形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図14から図17を用いて凹部の形状のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図14は、本実施形態に係る樹脂成形品の凹部の形状を説明する展開図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
樹脂成形品301の非意匠面3には、図14に示すように、凹部304が形成されている。
凹部304は、円筒状に形成された樹脂成形品301における一方の端部(図14の下側の端部)に向かって開口するように形成されており、樹脂成形品301の中心軸線からみて、図14の下側が広い略三角状に形成されている。
【0073】
図15は、図14の凹部の別の実施例を説明する展開図である。
なお、上述の実施形態のように、凹部304を略三角状に形成してもよいし、図15に示すように、樹脂成形品301の中心軸線からみて、図14の左側が広い略台形状に形成された凹部304Aとしてもよく、特に限定するものではない。
【0074】
図16は、図14の凹部のさらに別の実施例を説明する展開図である。図17は、図16の凹部の別の実施例を説明する展開図である。
さらに、凹部304Bを構成しる一方の側壁面の一部に斜面305を形成してもよく、特に限定するものではない。あるいは、凹部304Cを構成する一方の側壁面の一部に斜面305を形成し、さらに、他方の側壁面に段差部306を形成してもよく、特に限定するものではない。
【0075】
このように、凹部304Bや凹部304Cの形状を、ウェルドライン6に対して非対称とすることにより、形状が対称である場合と比較して、ウェルドライン6の形成位置を変化させやすく、直線状に延びるウェルドラインと比較して、視認性が低い曲線状に延びるウェルドライン6を形成しやすくできる。
【符号の説明】
【0076】
1,101,201,301 樹脂成形品
2 意匠面
3 非意匠面
4,104,204,304,304A,304B,304C 凹部
6 ウェルドライン(会合部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と鱗片状光輝材とを有する材着樹脂材料を用いて射出成形され、取付時に外部から視認される意匠面と、それ以外の非意匠面とが設けられる樹脂成形品であって、
前記非意匠面における前記材着樹脂材料の流れの会合部の少なくとも一部分には、凹部が形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記凹部は、線状に形成される前記会合部に相当する位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記凹部は、線状に形成される前記会合部に相当する位置に配置されているとともに、前記凹部における前記会合部に対して交差する方向の寸法が、前記会合部に沿って変化することを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記凹部は、前記会合部に沿って凹みの深さが変化することを特徴とする請求項3記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記凹部は、線状に形成される前記会合部に対して非対称に形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
樹脂と鱗片状光輝材とを有する材着樹脂材料が注入されることにより樹脂成形品を形成する金型であって、
前記材着樹脂材料が注入される複数のゲートと、
前記複数のゲートの間に形成され、請求項1から請求項5のいずれかに記載の凹部と対応する凸部と、
が設けられていることを特徴とする金型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−173179(P2010−173179A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18501(P2009−18501)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】