説明

樹脂発泡体の製造方法

【課題】ポリウレタン発泡体のような樹脂発泡体を製造する時の比重の調整を容易にし、製造した気泡の微細化をいっそう達成し得る製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂発泡体を製造するのに用いる攪拌装置1は、樹脂原料液を収容する容器2内に配設され回転軸3に沿う方向に流動を生じさせる攪拌翼4及び攪拌翼4の周りに近接して設けられた固定筒体5を備える。この攪拌装置1の攪拌翼4を、まず、樹脂原料液の回転軸3近傍の流動方向が液面から容器の底面になるように回転させ、樹脂原料液を発泡させた後、この攪拌翼4の回転の向きを切り替えて、樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が容器の底面から液面になるように攪拌翼を回転させ、樹脂原料液の気泡を微細化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂発泡体の製造方法に関し、より詳しくは気泡のセル構造を微細化することのできる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置において用いられる転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、ベルト駆動ローラ等の導電ローラは、回転軸の外周に、弾性を有する樹脂発泡体として例えばポリウレタン発泡体を形成した基本構造を備えている。
【0003】
このようなローラや、その他の用途に用いられるポリウレタン発泡体は、イソシアネート及びポリオールを主剤とする原料を攪拌して発泡させた後、所定の形状に成形硬化させて製造される。
【0004】
原料を発泡させる方法の一つに、原料を含む液を攪拌させる方法があり、その簡便な方法にはハンドミキサーを用いて発泡させるものがある。しかし、このようにハンドミキサーを用いた場合には、攪拌条件を作業者の攪拌作業ごとに完全同一にすることが難しいため、得られる発泡体の比重、粘土、セル径などの発泡体品質には、ばらつきが大きい。
【0005】
また、自動攪拌装置に関して、垂直方向の回転軸に取り付けられた回転羽を有する気泡形成成形装置を用いて、加圧雰囲気下で原料液中に所定流量で非反応性気体を注入しながらその液を攪拌・混合する方法がある(特許文献1)。また、垂直方向の回転軸に取り付けられた水平パドルの外周端部に縁板が立設されてなる攪拌翼を備える攪拌機を用いてポリウレタン原料を攪拌・混合する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−83766号公報
【特許文献2】特開2008−150409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置を用いた発泡方法は、原料液中に非反応性気体を注入し、雰囲気を加圧状態にするために設備が大きくなる。また、特許文献2に記載の装置を用いた発泡方法は、ばらつきの小さい発泡体が得られたとされているが、ウレタン発泡体の比重の調整や気泡の微細化に限界があった。
【0008】
上述した上記ローラ等の用途には、セル径の小さい、微発泡体であることが好ましく、よってウレタン発泡体の比重の調整や気泡の微細化の更なる向上が望まれる。
【0009】
そこで本発明の目的は、発泡体の比重の調整や気泡の微細化をいっそう達成し得る樹脂発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する、本発明の樹脂発泡体の製造方法は、樹脂原料液を、攪拌装置を用いて発泡させる樹脂発泡体の製造方法において、この攪拌装置は、樹脂原料液を収容する容器と、この容器内に収容される樹脂原料液中に先端部が浸漬されて垂直方向に延びる回転軸と、この回転軸の先端部近傍に取り付け固定され回転軸に沿う方向に流動を生じさせる攪拌翼と、この攪拌翼の周りに近接して設けられた固定筒体と、回転軸を正転及び逆転の切り替え可能に駆動する駆動装置とを備えるものであり、この攪拌装置の攪拌翼を、樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が液面から容器の底面になるように回転させ、樹脂原料液を発泡させた後、この攪拌翼の回転の向きを切り替えて、樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が容器の底面から液面になるように攪拌翼を回転させ、樹脂原料液の気泡を微細化することを特徴とする。
【0011】
本発明の樹脂発泡体の製造方法において、発泡前の樹脂原料液の体積に対する発泡後の樹脂原料液の体積の倍率が所定の倍率に達した時に攪拌翼の回転を止めることが好ましく、また、樹脂原料液を発泡させるときの攪拌翼の回転速度を5000〜15000rpmとし、樹脂原料液の泡を微細化するときの攪拌翼の回転速度を2000〜8000rpmとするが好ましい。更に、樹脂原料がイソシアネート成分とポリオール成分とを主成分とするものであり、樹脂発泡体がポリウレタン発泡体である場合に好適であり、本発明の樹脂発泡体の製造方法を用いて製造されたポリウレタン発泡体は、導電ローラの基体として用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂発泡体の製造方法によれば、正逆回転可能な所定の攪拌装置を用いて、初めに樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が液面から容器の底面になるように攪拌翼を回転させて(逆転運転)、樹脂原料液を発泡させ、次に、上記流動方向が容器の底面から液面になるように攪拌翼を回転させて(正転運転)、樹脂原料液の気泡を微細化することにより、発泡体の比重の調整を容易にすることができ、気泡の微細化をいっそう図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明で用いる攪拌装置の一例の模式図である。
【図2】図1の攪拌装置の容器近傍の模式図である。
【図3】導電性ローラの一例の模式的な断面図である。
【図4】実施例1の弾性層の表面を示す顕微鏡写真である。
【図5】比較例2の弾性層の表面を示す顕微鏡写真である。
【図6】比較例3の弾性層の表面を示す顕微鏡写真である。
【図7】実施例1の弾性層の断面を示す顕微鏡写真である。
【図8】比較例2の弾性層の断面を示す顕微鏡写真である。
【図9】比較例3の弾性層の断面を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂発泡体の製造方法の実施の形態について、図面を用いつつ具体的に説明する。
【0015】
図1に、樹脂原料液を発泡させて樹脂発泡体を製造するための攪拌装置の一例の模式図を示す。同図の攪拌装置1の容器2は、その内側に樹脂原料液、例えばウレタン発泡体を製造する場合にはイソシアネート成分とポリオール成分とを主成分とする原料を収容する。
【0016】
この容器2内の樹脂原料液を攪拌するための回転駆動力を伝達する回転軸3が垂直方向に延在し、その回転軸3の下方向の先端部、すなわち下端部を容器2内に位置させている。回転軸3の下端部近傍には、攪拌翼4が取り付け固定されている。回転軸3の回動によって攪拌翼4は、回転軸3近傍でこの回転軸3に沿う方向に樹脂原料液の流動を生じさせる。具体的には、回転軸3が正転方向の回転の場合には、樹脂原料液の流動方向が容器2の底面から液面に向かう方向になり、反対に回転軸3が逆転方向の回転の場合には、樹脂原料液の流動方向が液面から容器2の底面に向かう方向になる。
【0017】
攪拌翼4の周りには、円筒形状の固定筒体5が、攪拌翼4に近接して設けられている。図示した攪拌装置1の例では、固定筒体5は、この固定筒体5上方の梁6から当該固定筒体5に向けて延びる複数の支持棒7によって支持固定されている。この梁6は、攪拌装置1のベース8から立設された支柱9の上端近傍に取り付けられている。
【0018】
梁6には回転軸3の上端部と接続して当該回転軸3を正転方向及び逆転方向のいずれにも回転させることのできるモータ10が設けられている。
【0019】
本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、このような構成を具備する攪拌装置1を用いて、容器2に収容した樹脂原料液を攪拌する。このとき、まず攪拌装置1の攪拌翼4を、樹脂原料液の回転軸3近傍の流動方向が液面から容器2の底面になるように回転(逆転運転)させ、樹脂原料液を発泡させる。その後、この攪拌翼の回転の向きを切り替えて、樹脂原料液の回転軸3近傍の流動方向が容器2の底面から液面になるように攪拌翼4を回転(正転運転)させ、樹脂原料液の気泡を微細化する。
【0020】
上記方法による気泡の発泡及び微細化を詳述すると、まず固定筒体5の内側で攪拌翼4が回転軸3の逆転方向に回転する場合、すなわち、樹脂原料液の回転軸3近傍の流動方向が図中矢印Aで示すように容器4の液面から底面になる場合、図2(a)に容器2近傍の模式図を示すように、回転速度がおよそ5000〜15000rpmで攪拌翼4によって回転軸3の周りに渦を生じさせ樹脂原料液Lの液面から空気を巻き込んで気泡を発生させる。攪拌翼4の位置は、発泡開始時において容器1の底面及び樹脂原料液Lの液面からほぼ等距離にある位置とするのが好ましい。
【0021】
気泡が発生した状況を図2(b)に模式的に示す。気泡の発生により、樹脂原料液の体積が大きくなる。なお、発生した気泡は、気泡径の、ばらつきが大きいものである。発泡前の樹脂原料液の体積に対する発泡後の樹脂原料液の体積の倍率、すなわち体積倍率が所定の値、例えば2倍(発泡体の比重は0.5)になったときに攪拌翼4の回転を止める。この体積倍率の調整によって、製造する発泡体の比重を調整することができる。
【0022】
その後に固定筒体5の内側で攪拌翼4が回転軸3の正転方向に回転する場合、すなわち、樹脂原料液の回転軸3近傍の流動方向が図2(c)中の矢印Aに示すように容器4の底面から液面になる場合、回転速度がおよそ2000〜8000rpmで樹脂原料液L中の気泡に対して固定筒体5内の攪拌翼4でせん断力を作用させて、気泡を微細化する。
【0023】
このようにして本実施形態の樹脂発泡体の製造方法によれば、攪拌翼4の逆転運転によって発泡させた気泡を攪拌翼4の正転運転によって微細化できるので、気泡が微細で、かつ、気泡径のバラツキが小さい発泡体を製造することができる。
【0024】
本実施形態の方法に用いる攪拌装置1は、攪拌翼4及び固定筒体5が、上述のように逆転運転のときに空気を巻き込んで気泡を発生させ、正転運転のときに固定筒体5内の攪拌翼4でせん断力を作用させて、気泡を微細化することのできる形状を有している。固定筒体5は、側面にその厚さ方向に貫く孔を具備していてもよい。このような形状の攪拌翼4及び固定筒体を具備する攪拌装置としては、例えば、液体の分散機や乳化機、又はホモミキサーと呼ばれるものを適用することが可能である。もっとも、公知の分散機や乳化機、又はホモミキサーは、これまでの説明で述べた正転運転のみを実施する装置であり、気泡を発生させるために逆転運転をするものではなかった。ましてや本発明の方法のように、樹脂発泡体の製造のために逆転運転及び正転運転の組み合わせを適用した例はなかった。
【0025】
攪拌翼の回転の向きを逆転運転から正転運転に切り替える時は、樹脂原料液を発泡させた後、発泡前の樹脂原料液の体積に対する発泡後の樹脂原料液の体積の倍率が所定の倍率に達した時に攪拌翼の回転を止めることが好ましい。その理由は、目標の発泡倍率として所定の体積倍率まで発泡した時点で回転を止めることで、製造する発泡体で目標とする比重を任意に制御することができるからである。これにより、発泡体の比重の調整を容易に、かつ正確に行うことができる。
【0026】
逆転運転により樹脂原料液を発泡させるときの攪拌翼の回転速度は5000〜15000rpmとするのが好ましい。5000rpmに満たないと十分に発泡できず、そのため生産効率の点で好ましくない。また、15000rpmを超えると、塗料にかかるせん断エネルギーに起因する発熱が著しく、その熱で架橋反応ないしは造膜し易くなる点で好ましくない。より好ましい範囲は、8000〜10000rpmである。
【0027】
正転運転により、樹脂原料液の泡を微細化するときの攪拌翼の回転速度は2000〜8000rpmとするが好ましい。回転速度が高いほど、気泡を微細化することができ、2000rpmに満たないと、気泡を十分に微細化できず、均一な導電性が達成できない点で好ましくない。また、8000rpmを超えると、液流が激しくなり過ぎて、外気から空気を新たに巻き込み、比重の制御が困難になる点で好ましくない。より好ましい範囲は、4000〜6000rpmである。
【0028】
この正転運転時の攪拌翼の回転速度2000〜8000rpmは、特許文献2に記載の方法で実施された回転速度よりも高速であり、したがって、特許文献2の方法に比べて高速攪拌することができることから、セル径の更なる緻密化が可能になる。
【0029】
本発明の方法の適用は、樹脂原料がイソシアネート成分とポリオール成分とを主成とするものであって、製造される樹脂発泡体がポリウレタン発泡体である例を挙げることができるが、製造される樹脂発泡体はポリウレタン発泡体に限定されない。例えば、アクリル系その他の樹脂発泡体を製造することができる。
【0030】
本発明の方法により製造された樹脂発泡体は、例えばポリウレタン発泡体を基体とする導電性ローラの当該基体に適用される。図3に導電性ローラの一例の模式的な断面図を示す。図示した導電性ローラ11は、回転軸となるシャフト12と、このシャフト12の外周上に順次に形成された基体としての弾性層13と、この弾性層13上に形成された表層14とを備えるものである
【0031】
この導電性ローラ11の基体のポリウレタン発泡体に用いるポリウレタン樹脂としては、従来公知の材料を適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。また、導電性ローラ11に適用するときのポリウレタン発泡体の発泡倍率としては、特に制限されるものではないが、1.2〜50倍、特には1.5〜10倍程度が好ましく、フォーム密度は、0.1〜0.7g/cm程度が好ましい。
【0032】
弾性層13には導電剤を添加することができ、これにより、導電性を付与し、または調整して、所定の抵抗値とすることができる。かかる導電剤としては、特に限定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等のハロゲン化ベンジル塩等の第四級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤などの帯電防止剤、NaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、NaCl等のLi、Na、K等の周期律表第1族の金属塩、あるいはNHの塩などの電解質、また、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら導電剤の配合量は、組成物の種類に応じて適宜選定され、通常、弾性層13の体積抵抗率が10〜10Ω・cm、好ましくは10〜10Ω・cmとなるように調整される。
【0033】
また、この弾性層13には、上記導電剤の他にも、必要に応じて、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、硬化剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、成膜助剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。このうち湿潤剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を好適に使用することができる。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリ(ジアルキルシロキサン)のアルキル基の一部をポリオキシアルキレン基を持つ置換基に置き換えた構造を有する。弾性層13に湿潤剤を含有させることで、湿潤剤本来の効果であるレベリング効果が得られることに加え、発泡セルの粗大化を抑制して気泡径の微細化を図ることができ、また、自由発泡させた際の塗料の発泡比重をより精密に制御することが可能となる。かかる湿潤剤の配合量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し、0.1〜2質量部とすることが好ましい。湿潤剤の配合量が多すぎると、塗料のゲル化が生じやすくなり、一方、湿潤剤の配合量が少なすぎると、所期の効果を十分に得られないおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0034】
導電剤や上記の添加剤を適量配合した樹脂原料液は、この配合後であって本発明に従う発泡前に、羽で所定時間(例えば30分間)攪拌して液を均一化することが好ましい。これにより、弾性層の抵抗ムラを緩和することができる。
【0035】
弾性層13の厚みとしては、1.0〜5.0mmであることが好ましく、1.0〜3.0mmであることがより好ましい。弾性層13の厚みをかかる範囲とすることで、スパーク放電を防止することができる。
【0036】
弾性層13は、本発明の方法に従い攪拌装置で発泡させた後の樹脂材料を、例えばディッピング塗布により、シャフト12の外周上に上記厚みで形成することができる。このディッピング塗布によって弾性層13を形成することで、弾性層13を簡単な製造工程により、低コストで形成することができる。
【0037】
弾性層13上に形成される表層14は、導電性ローラ11に所望の表面粗さや導電性、硬度などを得るために、弾性層13上に一層または複数層の塗膜で形成したものである。本発明の導電性ローラは、弾性層13として適用するポリウレタン発泡体が微細化されているので、弾性層13表面のポア径が小さい。そのため、弾性層13上に表層14を塗工形成する際に、ポア内に表層用塗料が浸み込むことを抑制することができ、よって最終的に得られる導電性ローラ表面に凹凸を生ずることを有利に抑制することができる。
【0038】
導電性ローラ11に用いるシャフト12としては、金属製またはプラスチック製の、中空円筒体または中実円柱体を使用することができるが、好ましくは、金属製の中空円筒体または中実円柱体であり、より好ましくは、金属製の中空円筒体である。これにより、コスト性を向上することができる。
【実施例】
【0039】
表1に示す配合になる材料を計量して容器内に投入し、羽を用いて30分攪拌した。その後、種々の攪拌装置を用いて発泡させた。
【0040】
【表1】

【0041】
用いた材料のウレタン樹脂はアデカボンタイターHUX−950(株)ADEKA製)であり、発泡剤はノプコDC−100−A(サンノプコ(株)製)であり、湿潤剤はSNウェット980(サンノプコ(株)製)であり、導電剤はBSYD14971(御国色素(株)製)であり、整泡剤はネオゲンS−20D(第一工業製薬(株)製)であり、硬化剤はアデカボンタイターHUX−SW((株)ADEKA製)であり、耐水化剤はAZコート5800MT(サンノプコ(株)製)であった。
【0042】
攪拌装置は、実施例1のホモミキサーとしてプライミクス株式会社のTKロボミクスを用い、このTKロボミクスにホモミキサーヘッドを取り付けて攪拌して発泡させた。また、比較例1として、同じTKロボミクスを用いたが、樹脂原料液の攪拌途中で攪拌翼の回転方向を切り替えることはせず、正転運転のみを行ったところ、発泡しなかった。更に、比較例2及び比較例3として、それぞれ市販のハンドミキサー(イズミ製ハンドミキサーHM−400)及びフォームミキサー(ケシミックス製卓上ミキサーKM−800)を用いて攪拌して発泡させた。
【0043】
各発泡体液をシャフト上にディッピング塗布形成したのち、熱風オーブンで乾燥・硬化させることにより、厚み0.8mmのそれぞれポリウレタン発泡体からなる、導電性ローラ用の弾性層を形成した。得られた弾性層の表面ポア径、弾性層の断面セル径を表1に併記した。また、実施例1、比較例2及び比較例3の弾性層表面写真をそれぞれ図4〜6に示し、また、実施例1、比較例2及び比較例3の弾性層断面写真をそれぞれ図7〜9に示した。
【0044】
表1から明らかなように、ホモミキサーを用いて逆転運転及び正転運転を行った実施例1は、ハンドミキサーを用いた比較例2及びフォームミキサーを用いた比較例3に比べて、弾性層表面におけるポア径及び弾性層断面におけるセル径がいずれも微細化されていた。このことは、図4と図5及び図6との対比、また、図7と図8及び図9と対比によっても確かめられた。
【符号の説明】
【0045】
1 攪拌装置
2 容器
3 回転軸
4 攪拌翼
5 固定筒体
6 梁
7 支持棒
8 ベース
9 支柱
10 モータ
11 導電性ローラ
12 シャフト
13 弾性層
14 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂原料液を、攪拌装置を用いて発泡させる樹脂発泡体の製造方法において、
この攪拌装置は、樹脂原料液を収容する容器と、この容器内に収容される樹脂原料液中に先端部が浸漬されて垂直方向に延びる回転軸と、この回転軸の先端部近傍に取り付け固定され回転軸に沿う方向に流動を生じさせる攪拌翼と、この攪拌翼の周りに近接して設けられた固定筒体と、回転軸を正転及び逆転の切り替え可能に駆動する駆動装置とを備えるものであり、
この攪拌装置の攪拌翼を、樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が液面から容器の底面になるように回転させ、樹脂原料液を発泡させた後、
この攪拌翼の回転の向きを切り替えて、樹脂原料液の回転軸近傍の流動方向が容器の底面から液面になるように攪拌翼を回転させ、樹脂原料液の気泡を微細化する
ことを特徴とする樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
樹脂原料液を発泡させた後、発泡前の樹脂原料液の体積に対する発泡後の樹脂原料液の体積の倍率が所定の倍率に達した時に攪拌翼の回転を止めることを特徴とする請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
樹脂原料液を発泡させるときの攪拌翼の回転速度を5000〜15000rpmとし、樹脂原料液の泡を微細化するときの攪拌翼の回転速度を2000〜8000rpmとすることを特徴とする請求項1又は2項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂原料がイソシアネート成分とポリオール成分とを主成分とするものであり、前記樹脂発泡体がポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂発泡体の製造方法を用いて製造されたポリウレタン発泡体を基体とする導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−178136(P2011−178136A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47191(P2010−47191)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】