説明

樹脂管材の管端矯正機

【課題】構造が簡単で現場への持ち運びが容易であり、人力によって手軽に管端の矯正ができる樹脂管材の管端矯正機を提供する。
【解決手段】ベースプレート12の上面に起立配置した一対の支柱13間の途中に溝形の受けロール14を取付け、前記支柱13の上端部に上下の起伏揺動が可能となるよう取付けた揺動アーム15の途中に溝形の押さえロール16を前記受けロール14と並列する水平状態の配置で取付け、前記支柱13の上端部に対する揺動アーム15の枢止点を、前記受けロール14の軸心を通る垂直線に対してベースプレート12の前側寄りに位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル状に巻いた樹脂管材の端部に付いている巻きくせを矯正する樹脂管材の管端矯正機に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、例えば、ガスや水道等の配管として用いられているポリエチレン等の樹脂管材1は、収納や運搬に便利なように、樹脂の可撓性を利用してコイル状に巻かれた荷姿になっており、この樹脂管材1は現場で荷姿を解き、長く伸ばした状態で布設することになる。ちなみに、呼び径50の樹脂管材1の出荷形態は、樹脂管材1の外径が60mm、一本の長さが40mとなっており、この樹脂管材1が巻内径1,300mm、巻外径が1,600mmのコイル状に巻かれている。
【0003】
上記樹脂管材1の布設時には、管端を互いに融着して接続する作業を行う必要があるが、コイル状に巻かれた荷姿の樹脂管材1は巻きくせが付いており、樹脂管材1を伸ばして現場で地中に布設する場合、途中の部分は巻きくせがあっても長く伸ばすことで布設面に沿い、巻きくせが作業にあまり影響しないが、管端においてはどうしても巻きくせの影響を受けて反り返り、管端を融着により接続する作業に支障をきたすことになる。
【0004】
従来、巻きくせの付いた樹脂管材1を伸ばす矯正装置としては、コイル状に巻かれた荷姿の樹脂管材1を回転支持ローラで回転可能に保持し、樹脂管材1の引き出した部分を送りローラと矯正ローラで挟んで樹脂管材1を湾曲方向と逆方向に曲げながら通過させることで巻きくせを矯正するような構造になっている(例えば、特許文献1と特許文献2参照)。
【0005】
また、別の矯正方法として、引き出した樹脂管材1を一対が一組となり、これを多数組み並べた矯正ロール間に通し、樹脂管材1が矯正ロール間を通過するときに熱を加え、巻きくせを矯正するようにしたものである(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−53992号公報
【特許文献2】特開平4−316828号公報
【特許文献3】特開平8−258140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の矯正装置や矯正方法は、樹脂管材1の全長をほぼ真っ直ぐに伸ばすことを目的としており、実際の現場で前記のような大掛かりとなる矯正装置や矯正方法は過剰な設備となるため、比較的小規模な管路布設の工事では採用に経済的な困難性が伴うと同時に、樹脂管材1の途中は伸ばせたとしても管端においては矯正効果が十分に得られず、現実的に管端の反りを矯正したいという目的を達成するのは困難であり、このため、現場において簡単な設備で管端の反りを矯正できる矯正具の提案がまたれているのが現状である。
【0008】
そこで、この発明の課題は、構造が簡単で現場への持ち運びが容易であり、人力によって手軽に管端の矯正ができる樹脂管材の管端矯正機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明は、ベースプレートの上面に起立配置した一対の支柱間の途中に溝形の受けロールを水平の状態で取付け、前記支柱の上端部に揺動アームを、前記支柱に対する枢止点を支点にしてベースプレートの前後方向に沿う起伏揺動可能となるよう取付け、前記揺動アームの途中で枢止点から離れた位置に溝形の押さえロールを前記受けロールと並列する水平状態の配置で取付け、前記支柱の上端部に対する揺動アームの枢止点を、前記受けロールの軸心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に位置させたものである。
【0010】
上記支柱に対する受けロールの取付け位置を、帯板状態で起立する支柱の幅方向中心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に位置させ、前記揺動アームに対する押さえロールの取付け位置を、揺動アームの長さ方向に沿って調整可能とした構造とすることができる。
【0011】
ここで、上記ベースプレートは、矩形状の金属板を用いて形成され、一対の支柱は途中から上部が幅方向の一方に屈曲する帯板を用いて形成され、上部の屈曲部がベースプレートの前方に向く配置で、ベースプレートの上面における両側の位置に所定間隔で対向起立するように固定され、この両支柱間で屈曲部分より少し上の位置に支持軸が架設され、前記支持軸に溝形の受けロールが回転可能に取付けられている。
【0012】
また、揺動アームは、平行する長い二枚の帯板の先端をハンドル軸で結合したコ字形となり、両帯板の後端を上記両側支柱の上端に枢軸で取付け、両帯板の途中に溝形となる押さえロールの支持軸をボルトで取付けるための取付け孔が長さ方向に沿って複数設けられ、取付け孔を選ぶことによって押さえロールの取付け位置を変更できるようになっている。
【0013】
上記揺動アームを起こした状態で、受けロールと押さえロールの間に、揺動アームの支柱への枢止側から樹脂管材の管端を挿入し、樹脂管材を受けロールで支持して巻きくせによる反りが上向きとなるようにした状態で、揺動アームをベースプレートの後方側に押し下げると、押さえロールが樹脂管材の受けロールで支持された位置よりも管端側を反りと反対側に押し下げることで、樹脂管材の受けロールと押さえロール間を真っ直ぐに伸ばすことになる。
【0014】
このような押さえロールによる樹脂管材の反りと反対側への押し下げ位置を管端側に向けて複数回繰り返すことにより、樹脂管材の管端に生じていた反りを矯正することができ、融着による樹脂管材の管端接続が支障なく行える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、ベースプレートの上面に起立する支柱間に溝形の受けロールを取付け、前記支柱の上端部に枢止した揺動アームに溝形の押さえロールを取付け、受けロールで受けられた樹脂管材を押さえロールで反りと反対側へ押し下げるようにしたので、全体の構造が簡単で現場への持ち運びも容易となり、樹脂管材の管端に生じていた反りを人力で簡単に矯正することができるので、布設現場における樹脂管材の管端接続作業が容易に行える。
【0016】
また、支柱の上端部に対する揺動アームの枢止点を、前記受けロールの軸心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に変位させたので、揺動アームの先端側を押し下げて樹脂管材を押さえロールで押し下げたときの揺動アームの支点が、受けロールによる樹脂管材の支持点よりも管端と反対側に位置することになり、これにより、押し下げ時の反力でベースプレートが揺動アームの押し下げ側に位置する後部の縁を支点にして前方が跳ね上がるのを有効に防ぐことができ、揺動アームの押し下げ力を樹脂管材に有効に作用させることで樹脂管材の管端矯正が確実に行えることになる。
【0017】
更に、支柱に対する受けロールの取付け位置を、帯板状態で起立する支柱の幅方向中心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に変位させれば、ベースプレートへの支柱固定位置に対して受けロールの樹脂管材の支持点がベースプレートの前方に変位することになり、上記ベースプレートの後縁を支点とした前方の跳ね上がり発生の防止効果が更に向上する。
【0018】
また、揺動アームに対する押さえロールの取付け位置を、揺動アームの長さ方向に沿って調整可能とすれば、矯正時における樹脂管材の受け位置と押し下げ位置を、管端に生じている反りの条件に合わせることができると共に、直径の異なる樹脂管材の管端矯正も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る管端矯正機の斜視図
【図2】この発明に係る管端矯正機の正面図
【図3】この発明に係る管端矯正機の平面図
【図4】この発明に係る管端矯正機の側面図
【図5】(a)はこの発明に係る管端矯正機を用いて樹脂管材の管端を矯正する直前の状態を示す正面図、(b)は同じく樹脂管材の管端を矯正した状態を示す正面図
【図6】樹脂管材のコイル状に巻かれた出荷時の荷姿を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0021】
図1乃至図4のように、この発明に係る樹脂管材の管端矯正機11は、矩形状の金属板を用いたベースプレート12と、このベースプレート12の上面で両側の位置に所定の間隔で対向するよう立設した一対の支柱13と、前記支柱13間の途中に取付けた溝形の受けロール14と、前記支柱13の上端部に両側の後端部を枢止し、ベースプレート12の前後方向に沿って揺動可能となる揺動アーム15と、この揺動アーム15の途中に取付けた溝形の押さえロール16とで形成されている。
【0022】
上記支柱13は、下端から途中までが垂直部13aとなり、途中から上部が板幅方向の一方に向けて屈曲する屈曲部13bとなる帯板を用いて形成され、上半部の屈曲方向がベースプレート12の前方に向く配置で、ベースプレート12の上面両側の位置に固定したブラケット17に、取付けボルト18と回り止めボルト19で下端が取外し可能に固定され、ベースプレート12の上面で両側の位置に、所定間隔で対向するよう起立配置されている。
【0023】
上記受けロール14は、両支柱13間でこの支柱13の途中にある屈曲部分より少し上の位置に架設した支持軸20に水平状態で回転可能に取付けられている。
【0024】
このように、受けロール14を支柱13の屈曲部分より少し上の位置に枢止することにより、起立する支柱13の下半分における垂直部13aの板幅に対して受けロール14の軸心を、上記揺動アーム15の支柱13に対する枢止点側に接近した位置、即ち、ベースプレート12の前方寄りの位置に変位させることになる。
【0025】
上記揺動アーム15は、平行する長い二枚の帯板21の先端をハンドル軸22で結合したコ字形に形成され、両帯板21の後端を各支柱13の上端に枢軸23で取付け、この枢軸23を支点にして、プレート12の前後方向に沿って上下に揺動可能となっている。
【0026】
この揺動アーム15における両帯板21の途中に溝形となる押さえロール16が、支持軸24とボルトで、上記受けロール14と平行する水平状態になるよう回転可能に取付けられている。
【0027】
揺動アーム15における両帯板21の途中に、押さえロール16の支持軸24をボルトで着脱可能に取付けるための取付け孔25が、この帯板21の長さ方向に沿って複数設けられ、取付け孔25を選ぶことによって押さえロール16の取付け位置を帯板21の長さ方向に沿って変更でき、これにより、受けロール14と押さえロール16の配置間隔を変更できるようになっている。
【0028】
上記のように、支柱13の上半分をベースプレート12の前方に向けて屈曲させ、この支柱13の上端部に揺動アーム15の後端を枢止すると、支柱13の上端部に対する揺動アーム15の枢止点が、前記受けロール14の軸心を通る垂直線に対して、ベースプレート12の前方側に位置させた配置となる。
【0029】
ここで、各部の寸法は特に限定されないが、例えば、呼び径50の樹脂管材1を矯正する場合、受けロール14と押さえロール16は、軸方向の長さが80mm前後、両端が直径85mm前後、中央が直径55mm前後の大きさに形成され、受けロール14の軸心と支柱13への揺動アーム15の枢止点の距離が70mm前後、支柱13への揺動アーム15の枢止点と一番近い位置に取付けた押さえロール16の軸心の距離が180mm前後に設定され、揺動アーム15に設けた取付け孔25は20mmの間隔になっている。
【0030】
この発明の管端矯正機11は上記のような構成であり、コイル状に巻いた樹脂管材1をガス管や水道管として布設する場合に、引き伸ばした樹脂管材1の管端1aを接続するに際して、巻きくせにより管端1a側についている反りを現場で矯正するために使用する。
【0031】
引き伸ばした樹脂管材1の管端1a側を真っ直ぐに矯正するには、揺動アーム15に対する押さえロール16の取付け位置を、矯正せんとする樹脂管材1の直径や樹脂管材1に生じている反りの状態に合わせて設定し、図5(a)に示すように、管端矯正機11をベースプレート12で地面に設置し、揺動アーム15を上方に起こした状態で、受けロール14と押さえロール16の間に、揺動アーム15の支柱13への枢止側、即ち、ベースプレート12の前側から樹脂管材1の管端1aを挿入するよう、管端矯正機11と樹脂管材1を相対的に移動させる。
【0032】
受けロール14と押さえロール16の間に挿入された樹脂管材1を、受けロール14で支持して巻きくせによる反りが上向きとなるようにした状態で、揺動アーム15をベースプレート12の後方側(図5(a)における右側)に向けて倒し、この揺動アーム15のハンドル軸22を手で押すか足で踏むことで押し下げる。
【0033】
揺動アーム15を押し下げると、押さえロール16が樹脂管材1の受けロール14で支持された位置よりも管端1a側寄りの位置を反りと反対側に押し下げることになり、樹脂管材1に生じていた反りは、受けロール14による樹脂管材支持点を基点として押さえロール16による樹脂管材押し下げ点が下がることで伸ばされ、図5(b)のように、可撓性のある樹脂管材1は、受けロール14と押さえロール16間が真っ直ぐに伸びることになる。
【0034】
上記押さえロール16により樹脂管材1を押し下げる樹脂管材1の矯正時において、支柱13の上端部に対する揺動アーム15の枢止点を、受けロール14の軸心を通る垂直線に対してベースプレート12の前方側に変位させてあるので、揺動アーム15の先端側を押し下げて樹脂管材1を押さえロール16で押し下げたときの揺動アーム15の支点が、受けロール14による樹脂管材1の支持点よりも管端1aと反対側に位置し、これにより、押し下げ時の反力でベースプレート12が揺動アーム15の押し下げ側に位置する後部の縁を支点にして前方が跳ね上がるのを有効に防ぐことができ、揺動アーム15の押し下げ力を樹脂管材1に対して有効に作用させることで樹脂管材1の管端矯正が確実に行えることになる。
【0035】
また、支柱13に対する受けロール14の取付け位置を、帯板状態で起立する支柱13の幅方向中心を通る垂直線に対してベースプレート12の前方側に変位させてあるので、ベースプレート12への支柱13の固定位置に対して受けロール14の樹脂管材1の支持点がベースプレート12の前方側に位置することになり、上記ベースプレート12の後部の縁を支点とした前方の跳ね上がり発生の防止効果が更に向上する。
【0036】
樹脂管材1の管端1aに生じていた反りが長い場合、上記のように矯正作業を行った後、揺動アーム15を起こして押さえロール16での押し下げを解いた状態で、樹脂管材1と管端矯正機11を、受けロール14が管端1aの側に位置するよう相対的に移動させ、上記と同様に揺動アーム15を押し下げて樹脂管材1の矯正を行い、このようにして管端1aの側に向けて上記のような矯正作業を複数回繰り返すようにすればよい。
【0037】
上記のようにして管端1aの反りが矯正された樹脂管材1は、真っ直ぐに伸びた状態が融着に要する時間内に元の反りがあった状態に戻ることはないので、管端1aの融着による樹脂管材1の接続が支障なく行えることになる。
【符号の説明】
【0038】
1 樹脂管材
1a 管端
11 管端矯正機
12 ベースプレート
13 支柱
14 受けロール
15 揺動アーム
16 押さえロール
17 ブラケット
18 取付けボルト
19 回り止めボルト
20 支持軸
21 帯板
22 ハンドル軸
23 枢軸
24 支持軸
25 取付け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートの上面に起立配置した一対の支柱間の途中に溝形の受けロールを水平の状態で取付け、前記支柱の上端部に揺動アームを、前記支柱に対する枢止点を支点にしてベースプレートの前後方向に沿う起伏揺動可能となるよう取付け、前記揺動アームの途中で枢止点から離れた位置に溝形の押さえロールを前記受けロールと並列する水平状態の配置で取付け、前記支柱の上端部に対する揺動アームの枢止点を、前記受けロールの軸心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に位置させた樹脂管材の管端矯正機。
【請求項2】
上記支柱に対する受けロールの取付け位置を、起立する支柱の板幅方向中心を通る垂直線に対してベースプレートの前方に位置させ、前記揺動アームに対する押さえロールの取付け位置を、揺動アームの長さ方向に沿って調整可能とした請求項1に記載の樹脂管材の管端矯正機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81696(P2012−81696A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231501(P2010−231501)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000238636)武陽ガス株式会社 (10)
【出願人】(501190697)九州ガス株式会社 (1)
【出願人】(594113838)日本海ガス株式会社 (3)
【出願人】(598135795)秦野瓦斯株式会社 (5)
【出願人】(597167634)習志野市 (13)
【出願人】(000142078)株式会社協成 (21)
【Fターム(参考)】