樹脂管用ワンタッチ継手
【課題】外周面の傷や異物の挟み込みに影響を受けることなく、部品点数の増加を抑えて簡単な内部構造にしつつパイプの挿入荷重を低減させて高いシール性によりパイプを接続でき、抜け出し阻止力を向上できる樹脂管用ワンタッチ継手を提供する。
【解決手段】筒状継手主体3の外周面3aにシール部材4を装着し、この継手主体3の外周囲に透視可能な外筒5を取付け、この外筒5の開口側に環状保持体6を取付け、外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に抜け止めリング7の環状部25を収納させて抜け止めリング7を装着すると共に、抜け止めリング7の内周側の爪部26とシール部材4とを対向配設した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【解決手段】筒状継手主体3の外周面3aにシール部材4を装着し、この継手主体3の外周囲に透視可能な外筒5を取付け、この外筒5の開口側に環状保持体6を取付け、外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に抜け止めリング7の環状部25を収納させて抜け止めリング7を装着すると共に、抜け止めリング7の内周側の爪部26とシール部材4とを対向配設した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅整備の給水や給湯用の配管に、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管をワンタッチで接続できる樹脂管用ワンタッチ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、住宅設備における給水・給湯用の配管は、上記のような樹脂管が主流であり、この樹脂管接合用の継手として、容易に且つ確実に接続できるワンタッチ式の継手が多く使用されている。
この種のワンタッチ継手では、通常、樹脂管とのシールは、Oリングやシールリングによって行なわれ、樹脂管の抜け出しの阻止は、ロックリングによって行なわれることが多い。樹脂管とのシール性能を高めるためにはOリング等のつぶし率を最適な状態に設定する必要があり、更に、樹脂管が変形しやすい材質であることから、一般的には、シール部位に樹脂管を押圧する部材を設け、この部材により樹脂管を押圧して変形を抑制することによりシール性を高めようとしている。
【0003】
このようなワンタッチ継手として、例えば、特許文献1の継手がある。同文献1は、パイプの外周をシールする、いわゆる外周シール構造の継手である。このような外周シール構造の継手では、Oリングがパイプの外周側に配設され、このパイプの内周側にインコアが装着されている。外周シール構造の継手は、Oリングによって樹脂管が内周側に押圧されたときに、インコアにより樹脂管の変形を抑えてシール性を確保しようとするものである。この継手では、2枚のロックリングがOリングと同じパイプの外周側に配設され、このロックリングによりパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【0004】
特許文献2においては、接合パイプの内外周をシールする、いわゆる内外周シール構造の継手が開示されている。このワンタッチ継手では、内周Oリング、外周Oリング、接合パイプを案内するためのガイドリングが配設されている。この樹脂管用ワンタッチ継手では、内周Oリングが主たるシール機能の役割を有し、外周シールリングが内周シールリングにより外周側に押される接合パイプを内周側に押さえつける役割を果たしている。このシール構造により、接合パイプが内外周のOリングによって挟まれるようにシールされ、高いシール性が発揮されるようになっている。接合パイプ挿入時には、ガイドリングによって挿入荷重が抑えられている。この継手においても、特許文献1と同様に2枚のロックリングがOリングと同じパイプの外周側に配設されてパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【0005】
一方、特許文献3の管継手は、パイプの内周をシールする、いわゆる内周シール構造の継手である。同文献3の管継手は、内周Oリングと締付環体とを有し、内周Oリングによってパイプをシールし、外周方向に押し広げられようとするパイプを締付環体により押さえ付ける構造になっている。この構造の理由として、一般的に、樹脂管の外周寸法は、JIS規格により安定した寸法になっているが、内周寸法は製作時にバラツキが生じているためであり、内周シール構造の管継手は、締付環体等の部材によりパイプを外周側から押さえ付けることにより、バラツキのある内周側を内周Oリングにシールさせるようになっている。同文献3の管継手においては、1枚の抜け止めリングが内周Oリングよりも入口側に設けられ、この抜け止めリングによりパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3165109号公報
【特許文献2】特開2007−198585号公報
【特許文献3】特許第3411546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した継手には以下のような問題があった。架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管は、特に柔らかい材質であり、これらを接続する継手は、コンクリートや土の床などの樹脂管外周が傷付きやすい環境で用いられることが多いが、特許文献1の外周シール構造の継手は、Oリングとパイプのシール部位との間に傷があったり異物が挟まれた状態にあるとシール性が低下して漏水が発生する可能性が極めて高くなる。このため、このような外周シール構造の継手を使用する際には、樹脂管外周表面の傷や異物の挟み込みを防ぐ必要がある。
【0008】
これに比較して、特許文献2の内外周シール構造の継手は、主に内周Oリングによってシールする構造であるため、パイプ外周の傷等を許容することは可能になっている。しかし、この継手は、外周シール構造の継手に比較して部品点数が多くなり構造も複雑になっていた。しかも、Oリングによって接合パイプを挟む構造であるため内外周Oリングを近接させることが必要になり、その結果、接合パイプの挿入時の荷重が大きくなっていた。同文献2では、この挿入荷重を低くするために、案内用のガイドリングを用いているが、この場合でも、外周シール構造の継手よりも挿入荷重を小さくすることは難しい。
【0009】
一方、特許文献3の内周シール構造の管継手は、シール性能を高めるために締付環体を設けているため、部品点数が多くなる。更に、同文献3における管継手は、締付環体を作動させるための拡径片も必要になり、この拡径片を動作させるための機構も複雑になっていた。
【0010】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、外周面の傷や異物の挟み込みに影響を受けることなく、部品点数の増加を抑えて簡単な内部構造にしつつ樹脂管の挿入荷重を低減させて高いシール性により樹脂管を接続でき、抜け出し阻止力を向上できる樹脂管用ワンタッチ継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状継手主体の外周面にシール部材を装着し、この継手主体の外周囲に透視可能な外筒を取付け、この外筒の開口側に環状保持体を取付け、外筒の開口端と環状保持体の内周面との間に抜け止めリングの環状部を収納させて抜け止めリングを装着すると共に、抜け止めリングの内周側の爪部とシール部材とを対向配設した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0012】
請求項2に係る発明は、抜け止めリングの爪部とシール部材との間に、樹脂管挿入時にシール部材を押さえつけながら挿入させるための環状ガイドを設けた樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0013】
請求項3に係る発明は、抜け止めリングの環状部を収納させる空間幅を当該環状部の肉厚幅より大きくした樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0014】
請求項4に係る発明は、シール部材であるOリングを装着する装着溝を継手主体の外周面に形成し、この装着溝の継手主体開口側に段差部を連設形成した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0015】
請求項5に係る発明は、段差部の縁をエッジ形状とした樹脂管用ワンタッチ継手である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、筒状継手主体に装着したシール部材と、外筒と環状保持体との間に装着した抜け止めリングとを有する内周シール構造のワンタッチ継手としているので、樹脂管外周面の傷や異物の挟み込みに影響を受けることなく、部品点数の増加を抑えて簡単な内部構造としつつ挿入荷重を低減しつつ高いシール性を発揮して樹脂管を接続できる。樹脂管の接続後には、これらの対向配置により、抜け止めリングの力が内周方向に作用して樹脂管に加わったときに、シール部材が弾発力により樹脂管を外周方向に押圧するため、この相互作用により樹脂管が内外周側からシール部材と抜け止めリングとにより押さえつけられて優れたシール性を発揮し、かつ、樹脂管の抜け出し阻止力を向上できる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、挿入ガイドによりシール部材を押さえつけながら樹脂管を挿入できるため、挿入荷重を低減させて樹脂管を容易に挿入することができる。このとき、環状ガイドによりシール部材への負荷も少なくなるため、シール部材が傷ついたり破断したりすることを防ぎ、高いシール性能を確保しながら樹脂管の接続状態を維持することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、樹脂管の挿入時においては、環状部が樹脂管とともに挿入方向に移動して樹脂管の挿入荷重を低減させることができる。樹脂管の接続後には、抜け止めリングの力が内周方向に作用し、シール部材が弾発力により樹脂管を外周方向に押圧するため優れたシール性能を発揮できると共に抜け出し阻止力を向上できる。流体圧の負荷等により、樹脂管の抜け出し方向に力が加わった場合には、抜け止めリングが空間幅を抜け出し方向に移動して爪部とシール部材とが対向状態まで戻るため、抜け止めリングからの力とシール部材の弾発力とが樹脂管を垂直方向から挟むように加わって、シール部材によるシール性能と、抜け止めリングによる樹脂管の抜け出し阻止力とが飛躍的に向上する。
【0019】
請求項4に係る発明によると、装着溝の継手主体開口側に段差部を設けていることにより、樹脂管に抜け出し方向の力が加わって抜け止めリングの爪部が起立する方向に変形しようとした場合に、抜け止めリングからの力により樹脂管が段差部の方向に逃げ込むように縮径変形し、抜け止めリングがこの樹脂管に深く食い込むことを回避して樹脂管の破断を防止できる。しかも、樹脂管がこの変形によりシール部材を押さえ付けることから、シール部材の弾発力がより増加してシール性能を向上できる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、段差部の縁をエッジ形状としているため、樹脂管が段差部に縮径変形したときに段差部の縁に圧接するエッジ効果が得られ、このエッジ効果により樹脂管の抜け出し阻止力を高め、確実に樹脂管の抜け出しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第1実施形態を示した半截断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】図2の状態から樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図4】図3の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図5】図4の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図6】樹脂管の接続後の状態を示した拡大断面図である。
【図7】接続後の樹脂管に水圧が加わった状態を示す拡大断面図である。
【図8】図7の樹脂管が変形した状態を示す断面図である。
【図9】樹脂管に過剰な引抜き力が加わった状態を示した断面図である。
【図10】図8の状態から樹脂管が変形した状態を示す断面図である。
【図11】樹脂管用ワンタッチ継手の比較例を示した断面図である。
【図12】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第2実施形態を示した一部拡大断面図である。
【図13】図12の状態から樹脂管を挿入した状態を示した一部拡大断面図である。
【図14】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第3実施形態を示した一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の実施形態を図面に基づいて説明する。図1においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第1実施形態を示しており、図2においては、図1の樹脂管用ワンタッチ継手のA部拡大断面図を示している。
【0023】
図1、2において、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手本体(以下、継手本体1という)は、例えば、給水・給湯用の樹脂管2を抜け止め状態に接続可能に設けられている。樹脂管2としては、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管があり、これ以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は、銅管等の金属管を接続することも可能になっている。
この継手本体1は、継手主体3、シール部材4、外筒5、環状保持体6、抜け止めリング7を有し、この継手本体1内には環状ガイド8が装着されている。
【0024】
継手主体3は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、通水用の流路口9を有している。この継手主体3の樹脂管2の接続側は、樹脂管2の内径に応じた適宜の外径に設けられている。
【0025】
継手主体3の外周面3aには装着溝11が形成され、この装着溝11に、例えば、EPDM等のゴム製のOリングからなるシール部材4が装着されている。継手本体1は、内周シール構造のワンタッチ継手であり、装着溝11は、継手主体3の樹脂管2が抜け出す側である開口側と、この開口側よりも樹脂管2の挿入側との2ヶ所に形成され、各装着溝11、11に対してそれぞれシール部材4、4が装着されている。継手主体3は、この2つのシール部材4、4により樹脂管2をシールするようになっている。開口側のシール部材4は、抜け止めリング7が収容されている部位に対向配置されている。挿入側のシール部材4は、外筒5の内周に対向配置されている。
【0026】
開口側の装着溝11には、この装着溝11の継手主体開口側に段差部12が連設形成され、この段差部12は、例えば、外周面3aから0.1〜0.3mm程度の段差によって形成され、この段差部12により、樹脂管2の縮径変形を許容することが可能になっている。
段差部12には縁13が形成され、この縁13はエッジ状に形成されている。
【0027】
継手主体3の外周囲には外筒5が取付け可能に設けられ、この外筒5の取付け位置には、凹凸状の係合部15が設けられている。また、内筒部10の装着溝11との他方側には雄ネジ部16が設けられ、この雄ネジ部16に図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続可能になっている。継手主体3は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などに設けられていてもよい。
【0028】
外筒5は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒5の外部から樹脂管2や環状ガイド8の状態を透視可能になっている。外筒5内周側の継手主体3への取り付け位置には、継手部2の係合部15とスナップ嵌合可能な係合部20が設けられ、また、この他端側の外周側には、凹凸状の係合段部21が設けられている。外筒5は、係合部15、20のスナップ嵌合により継手主体3に回転可能に一体化され、嵌合後には外筒5と継手主体3とが相互に回転可能な状態となり、かつ、これらの間に空間である挿入部22が形成され、この挿入部22に樹脂管2をガイドしつつ挿入することが可能になっている。図示しないが、外筒5の内周側の内径は、環状ガイド8の図示しない外径と略同じに設けられている。この外筒5の内周の環状ガイド8との当接側にはR面部位が形成され、このR面部位から開口側にはテーパ面部位が形成されている。
【0029】
環状保持体6は、引張り弾性率が外筒5よりも高いポリアセタールなどの樹脂により、キャップ状に形成されている。この環状保持体6の内周側には、外筒5の係合段部21にスナップ嵌合可能な係合段部23が形成されている。環状保持体6は、係合段部21、23のスナップ嵌合により外筒5の開口側に回転可能に取付けられ、取付け後には、環状保持体6と外筒5とが相互に回転可能な状態となる。環状保持体6の端部側には内周方向に突設する環状突部24が形成され、外筒5の装着後には、この環状突部24により抜け止めリング7の抜け出しが防止される。環状保持体6は、透明性を有しない材料により形成することができ、上記したキャップとして設ける以外にも、例えば、ブシュとして設けることも可能である。
【0030】
抜け止めリング7は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部25と、この環状部25の内径側の爪部26とを有している。爪部26は、環状部25から所定の傾斜角度で屈曲形成され、この爪部26により樹脂管2の挿入をスムーズにしつつ、爪部26が樹脂管2の表面に係止することで、この状態で引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力を発揮して速やかに樹脂管2を保持して抜け止めすることが可能になっている。図示しないが、爪部26の先端側の内径は、後述する環状ガイド8の段部32と略同一径に形成されている。
【0031】
環状部25は、軸Oの直交方向に対して約3〜5°程度の角度で樹脂管2の挿入方向に傾斜するように形成され、この角度は、例えば、約5°になっている。環状部25を傾斜させた場合、この環状部25と接触する部位との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が小さくなって抜け止めリング7全体が回転しやすくなる。これにより、抜け止めリング7は、接続後の樹脂管2と共回りするようになっている。
【0032】
抜け止めリング7は、その環状部25が前記した外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に収納されながら継手本体1内に1枚装着され、このとき、抜け止めリング7の爪部26とシール部材4とが対向配設された状態となる。この場合、開口端5aと内周面6aとにより、抜け止めリング7の環状部25を収納させる空間40が形成されており、図2において、この空間40の幅Bは、当該環状部25の肉厚幅Tよりも大きくなっている。
【0033】
この空間40を設けることにより抜け止めリング7が可動でき、この抜け止めリング7は、継手本体1に樹脂管2を挿入したときに、空間40の継手本体1の軸O方向において、樹脂管2にこの抜け止めリング7が接触する接触点Pと樹脂管2にシール部材4が接触するときの接触点Qとが重なる位置から、接触点Pが接触点Qよりも樹脂管2の挿入側となる位置まで可動する。
【0034】
環状ガイド8は、例えば、弾性を有する高密度ポリエチレン等の樹脂製からなっている。この挿入ガイド8は、抜け止めリング7とシール部材4との間に継手主体3に外嵌するように装着され、この挿入ガイド8により、樹脂管2挿入時にシール部材4を押さえつけながら挿入させ、樹脂管2をスムーズに挿入させることが可能になっている。環状ガイド8は、図2に示すように、内周当接面30、スリット31、段部32、傾斜面33、後端面34を有している。
【0035】
スリット31は、環状ガイド8の先端側と後端側とから軸方向に交互に複数形成され、このスリット31により、環状ガイド8は、軸O方向に変形可能になり、樹脂管2の端面形状に応じて変形しながら挿入をガイドすることが可能になっている。しかも、スリット31により、環状ガイド8は、仮に樹脂管2の端面が斜めに切断されている場合でも、この形状に追従して変形可能になっている。
【0036】
内周当接面30は、内周側のアール面36とこのアール面36に続くテーパ面37とを有している。環状ガイド8は、この内周当接面30によって挿入方向に拡径した形状を成しており、環状ガイド8を継手本体1に挿入したときにこの内周当接面30にシール部材4が当接するようになっている。段部32は、環状ガイド8の外周側に設けられ、抜け止めリング7の爪部26が仮着可能な形状を呈しており、テーパ面37は、この段部32から後端面34にかけて拡径するように環状ガイドの外周側に形成される。後端面34には樹脂管2の端面側が当接可能になっている。テーパ面37は、アール面36に連続して緩やかなアール面としてもよい。
【0037】
環状ガイド8を挿入部22から挿入して継手本体1に装着すると、この環状ガイド8は、スリット31によって拡縮変形が可能であるため、抜け止めリング7やシール部材4に負荷を与えることのない装着が可能となる。環状ガイド8の装着後には、段部32に抜け止めリング7の爪部26が係止するため、環状ガイド8は所定位置に仮固定される。この場合、爪部26が屈曲形成されているため、この爪部26が段部32に引っ掛かって環状ガイド8の脱落が防がれる。
【0038】
このとき、シール部材4に環状ガイド8が触れることになるが、図2に示すように、環状ガイド8の内周側に形成した内周当接面30がシール部材4に当接することにより、シール部材4に過度の負荷が加わることが防止される。このようにして、シール部材4が環状ガイド8の装着によって装着溝11の挿入側に押された状態で納まる。一方、抜け止めリング7は、シール部材4の弾発力により、環状保持体6の環状突部24の内側に押さえ付けられた状態で納まっている。
【0039】
次に、上述のように構成された継手本体1に樹脂管2を挿入して接続する場合を説明する。
図3においては、図2の継手本体1に対して樹脂管2を挿入した状態を示したものであり、樹脂管2の挿入を開始してから環状ガイド8が先端側のシール部材4を乗り越えたときの状態を示したものである。
【0040】
樹脂管2が挿入されたときには、この樹脂管2に押されるように環状ガイド8が移動し、外周側に形成された傾斜面33により抜け止めリング7を緩やかに乗り越えようとする。このため、樹脂管2挿入時におけるシール部材4への負荷を低減させることができ、しかも、内周当接面30によりシール部材4に過度の負荷が加わることを防いで徐々に挿入できるため、シール部材4が傷付いたり破断したりすることが防がれる。
【0041】
一方、空間40の幅Bを環状部25の肉厚幅Tよりも大きくしていることにより、抜け止めリング7が樹脂管2の挿入方向に空間40を移動し、環状部25が外筒5の端部側に当接し、続いて環状ガイド8が挿入されることで爪部26が傾斜面33に沿うように変形する。爪部26は、樹脂管2の挿入に伴って広がることにより、この爪部26の傾斜角度αが図3に示すように大きくなり、更に、傾斜面33と空間40とを設けていることによって抜け止めリング7が矢印に示すように回転して傾くためこの傾斜角度αは一層大きくなる。このため、樹脂管2挿入時の抵抗を減少でき、円滑な挿入が可能になる。
【0042】
続いて、環状ガイド8は、内周当接面30が接触しながらシール部材4を乗り越え、この乗り越え時には、シール部材4の弾発力によりこの環状ガイド8に外周方向の力が作用する。この力により、環状ガイド8は外周方向に変形しようとするが外周側の抜け止めリング7によりその変形が抑制される。図において、環状ガイド8の後端面34が段差部12よりも先端側まで挿入された場合には内筒部10から浮いた状態になるが、このとき環状ガイド8は、シール部材4と抜け止めリング7とにより挟まれて支えられているため、ぐらつくことがない。そのため、樹脂管2の挿入に支障をきたすことなく、シール部材4を押圧しながらスムーズに樹脂管2を挿入できる。
【0043】
このとき、抜け止めリング7と環状ガイド8との接触点Pよりも、シール部材4と環状ガイド8との接触点Qが軸O方向において挿入方向にずれた状態になっており、この接触点Pと接触点Qとのずれ量Wは、環状ガイド8が挿入されて爪部26の変形量が大きくなるにつれて大きくなる。
【0044】
図4においては、図3の状態から更に樹脂管2を挿入し、樹脂管2が先端側のシール部材4を乗り越えつつ、環状ガイド8が挿入側のシール部材4を乗り越えた状態を示している。このときには樹脂管2の挿入によって抜け止めリング7が更に大きく変形し、抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pが、シール部材4と樹脂管2との接触点Qよりも更にずれることでずれ量Wが大きくなる。ここで、軸O方向において、抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qとが重なった場合には、挿入荷重により爪部26に垂直方向に働く抗力Fが最大になり、一方、接触点Pと接触点Qとがずれた場合には、爪部26からの抗力F´は図に示すように抗力F´=F・cosθとなる。これにより、ずれ量Wが増加することにより、cosθ<1(0<θ<90°)の関係から抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qが軸Oの方向に重なる場合よりも挿入荷重を抑えることが可能になる。ここで、角度θは、抗力Fと抗力F´とが成す角度である。
【0045】
環状ガイド8が挿入側のシール部材4を乗り越える際には、開口側のシール部材4を乗り越える場合と同様に外周方向に変形しようとするが、このときには環状ガイド8の外周側が外筒5の内周側に当接するため、環状ガイド8の外周方向への変形が抑制される。この場合、外筒5の内径と環状ガイド8の外径とを略等しく設けることにより、環状ガイド8が樹脂管2をスムーズに案内する役割を果たすことが可能になる。
【0046】
図5においては、図4の状態から更に樹脂管2を挿入し、樹脂管2が二次側のシール部材4を乗り越えようとする状態を示している。この場合、抜け止めリング7が樹脂管2の外周面により略一定の変形状態に保たれているため、抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pと、シール部材4と樹脂管2との接触点Qとのずれ量Wが一定に維持され、挿入荷重の低減状態を維持しながら樹脂管2の挿入が可能となる。図の状態から環状ガイド8がに更に挿入され、環状ガイド8の挿入側のシール部材4への乗り越えが終わったときには、環状ガイド8が挿入部22内でフリーの状態となる。続けて樹脂管2を挿入すると、図6に示すように、樹脂管2の接続が完了した状態となる。樹脂管2の接合完了後には、ずれ量Wが確保された状態で抜け止めリング7とシール部材4とが所定位置に配置される。
【0047】
続いて、樹脂管2の接続後に、継手本体1内に水圧が負荷された場合の動作を述べる。
図7において、継手本体1内に水圧が負荷されると、この水圧により、挿入側のシール部材4が樹脂管2にシールし、樹脂管2は、抜け出し方向に移動しようとする。この作用により、抜け止めリング7の爪部26が樹脂管2に食い込むと同時に、抜け止めリング7が環状保持体6の環状突部24側に空間40を移動する。抜け止めリング7が環状保持体6の内周面6aに当接すると、抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qとが軸Oと直交方向において略重なった状態まで戻ることになる。この場合、爪部26から垂直方向の力が働き、この力に対してシール部材4がその弾発力によって樹脂管2を外周方向に押圧する力が働いて、この2つの力の作用により樹脂管2をシール部材4に押し付けて、高いシール性能を発揮する。なお、図面上においては、シール部材4が変形する前の形状を示しているが、実際の接触点Qは、変形したシール部材4の頂点の近傍付近と樹脂管2との接触部分である。
【0048】
このとき、図8に示すように、抜け止めリング7から樹脂管2を内周方向に押圧する力が働くが、装着溝11の継手主体開口側に段差部12を設けていることにより、樹脂管2が抜け止めリング7によって押されて縮径変形し、段差部12に逃げ込んだ状態になる。縮径した樹脂管2は、段差部12の縁13に当接するが、この縁13はエッジ形状になっているため、樹脂管2がこの縁13に圧接する、いわゆる、エッジ効果が得られる。このエッジ効果により樹脂管2の抜け出しが確実に防止される。
【0049】
図9においては、樹脂管2に過剰な加圧や引抜き力が加わったときの状態を示している。同図に示すように、樹脂管2への引抜荷重が大きくなると、抜け止めリング7の爪部26が起立方向に変形するように動作する。この場合、樹脂管2は、爪部26に押されて段差部12に逃げ込むように変形する。縁13は、上記したエッジ形状であることから、変形した樹脂管2はこの縁13に引っ掛かった状態になる。このとき、段差部12が装着溝11に連設形成されていることから、変形した樹脂管2がシール部材4を内周側に押圧してこのシール部材4によるシール性が一層高まっている。
【0050】
図10においては、図9の状態から更に引抜荷重が大きくなり、樹脂管2の降伏点近くに達したときの状態を示している。このとき、爪部26は、更に起立して樹脂管2に深く食い込もうとするが、爪部26に押圧された樹脂管2は、段差部12に逃げ込むように変形しているため、抜け止めリング7の食い込み量を少なく抑えて樹脂管2の肉厚を所定量確保することができ、この樹脂管2の破断や抜け等を防止できる。
【0051】
図11においては、図9、図10との比較例を示したものであり、装着溝50に段差部を設けない場合のワンタッチ継手を示している。この場合、爪部26の押圧に対して樹脂管2が逃げ込む空間がないため、起立した爪部26が樹脂管2に深く食い込んで樹脂管2の肉厚が薄くなる可能性がある。この樹脂管2に引抜荷重がかかっているため、樹脂管2の肉厚が痩せて樹脂管2が破断したり抜けたりしやすくなる。
図9、図10の場合、図11のワンタッチ継手に比較して樹脂管2の破断等のおそれを大幅に減少でき、しかも、縁13によるエッジ効果と相まって樹脂管2の引抜き阻止力を一層高めることができる。
【0052】
本発明の樹脂管用ワンタッチ継手は、上述したように、継手主体3の外周面3aにシール部材4を装着し、継手主体3の外周囲に透視可能な外筒5を取付け、この外筒5の開口側に環状保持体6を取付け、外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に抜け止めリング7の環状部25を収納させて装着した内周シール構造のワンタッチ継手としているので、外周シール構造のワンタッチ継手のように樹脂管外周の傷や異物の挟み込みに影響を受けることがない。この場合、抜け止めリング7の内周側の爪部26とシール部材4とを対向配設しているので、挿入荷重を抑えつつ簡単に樹脂管2を挿入でき、接合後の樹脂管2を垂直方向から挟んで優れたシール性と抜け出し阻止力とを発揮できる。しかも、このようにシール部材4と抜け止めリング7とにより樹脂管2を接続できるため、部品点数を抑えて簡単な内部構造で継手本体1を設けることができる。
【0053】
図12、図13においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第2実施形態を示したものである。なお、この実施形態以降において、上述した実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。この実施形態では、前述した構成の継手本体1に環状ガイドを装着することなく、樹脂管2を直接挿入して接続するようにしたものである。
【0054】
図12において、樹脂管2を継手本体1に挿入すると、この樹脂管2が先端側のシール部材4に当接し、このシール部材4を挿入側に押しながら抜け止めリング7の爪部26に当接する。続いて、図13に示すように、抜け止めリング7に当接した樹脂管2がこの抜け止めリング7を押圧することにより、抜け止めリング7の爪部26が樹脂管2の外周に沿って変形する。このとき、樹脂管2が内周シールリング4を乗り越えて進み、この樹脂管2により変形した抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pと、シール部材4と樹脂管2との接触点Qとが、軸Oの方向においてずれた状態になり、抜け止めリング7とシール部材4との対向配置においてずれ量Wが確保される。
【0055】
この実施形態においても、樹脂管2の挿入時に抜け止めリング7が空間40を移動することによって樹脂管2の挿入荷重を低減できる。更に、流体圧等の負荷により引抜き方向の力がかかった場合にも抜け止めリング7が空間40を移動して優れたシール性と引抜き阻止力とを発揮できる。しかも、この実施形態においては、環状ガイドを用いていないことから部品点数を少なくでき、部品管理等も容易になる。
【0056】
図14においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第3実施形態を示したものである。この実施形態では、樹脂管の抜け出しを阻止する効果を更に増すため、継手主体41の段差部の縁を増やしたものである。図に示すように、継手主体41の段差部42は2つの段差43、44を有し、段差43は、例えば、略0.2mm程度の高低差により略クサビ形状に形成され、この段差43の樹脂管2挿入側に略0.2mm程度の高低差で段差44が形成されている。更に、段差44の樹脂管2挿入側には、R部45が形成されている。
【0057】
この構成により、段差部42には2箇所に縁46、47が形成され、このように形成することで樹脂管2の引っ掛かり部位が増やされ、1箇所の縁の場合に比較してその抜き出し阻止性を高めることができる。しかも、R部45を設けていることで、開口側の装着溝11にエッジ状部位を形成することを防いでシール部材4が傷付くことを防ぎ、段差43、44をともに略0.2mm程度の高低差としていることで、樹脂管2の逃げ部位を設けつつも、縁43、44のエッジ効果により樹脂管2の抜け出し阻止性を高めている。
このように、段差部42の形状が前記実施形態と異なる場合であっても、樹脂管2の逃げの動作は、上述の場合と同様である。また、抜け止めリング7が起立したときには、最終的に段差部42の最小径部分に変形した樹脂管2が逃げるようになっている。
【0058】
更に、図示しないが、これ以外にも、R部を省略して2箇所の縁を有する簡単な形状の段差部に設けたり、或は、2箇所の縁を有する段差部の挿入側の段差を軸方向に長く設けることもでき、挿入側の段差を軸方向に長く設けた場合には、第1実施形態の樹脂管用ワンタッチ継手の縁を増やした構成となり、抜け止めリング7は、前述の場合と同様の動作によって起立する。また、段差部の縁を3箇所以上に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 継手本体
2 樹脂管
3 継手主体
3a 外周面
4 シール部材
5 外筒
5a 開口端
6 環状保持体
6a 内周面
7 Oリング(抜け止めリング)
8 環状ガイド
11 装着溝
12 段差部
13 縁
25 環状部
26 爪部
40 空間
B 幅
T 肉厚幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅整備の給水や給湯用の配管に、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管をワンタッチで接続できる樹脂管用ワンタッチ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、住宅設備における給水・給湯用の配管は、上記のような樹脂管が主流であり、この樹脂管接合用の継手として、容易に且つ確実に接続できるワンタッチ式の継手が多く使用されている。
この種のワンタッチ継手では、通常、樹脂管とのシールは、Oリングやシールリングによって行なわれ、樹脂管の抜け出しの阻止は、ロックリングによって行なわれることが多い。樹脂管とのシール性能を高めるためにはOリング等のつぶし率を最適な状態に設定する必要があり、更に、樹脂管が変形しやすい材質であることから、一般的には、シール部位に樹脂管を押圧する部材を設け、この部材により樹脂管を押圧して変形を抑制することによりシール性を高めようとしている。
【0003】
このようなワンタッチ継手として、例えば、特許文献1の継手がある。同文献1は、パイプの外周をシールする、いわゆる外周シール構造の継手である。このような外周シール構造の継手では、Oリングがパイプの外周側に配設され、このパイプの内周側にインコアが装着されている。外周シール構造の継手は、Oリングによって樹脂管が内周側に押圧されたときに、インコアにより樹脂管の変形を抑えてシール性を確保しようとするものである。この継手では、2枚のロックリングがOリングと同じパイプの外周側に配設され、このロックリングによりパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【0004】
特許文献2においては、接合パイプの内外周をシールする、いわゆる内外周シール構造の継手が開示されている。このワンタッチ継手では、内周Oリング、外周Oリング、接合パイプを案内するためのガイドリングが配設されている。この樹脂管用ワンタッチ継手では、内周Oリングが主たるシール機能の役割を有し、外周シールリングが内周シールリングにより外周側に押される接合パイプを内周側に押さえつける役割を果たしている。このシール構造により、接合パイプが内外周のOリングによって挟まれるようにシールされ、高いシール性が発揮されるようになっている。接合パイプ挿入時には、ガイドリングによって挿入荷重が抑えられている。この継手においても、特許文献1と同様に2枚のロックリングがOリングと同じパイプの外周側に配設されてパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【0005】
一方、特許文献3の管継手は、パイプの内周をシールする、いわゆる内周シール構造の継手である。同文献3の管継手は、内周Oリングと締付環体とを有し、内周Oリングによってパイプをシールし、外周方向に押し広げられようとするパイプを締付環体により押さえ付ける構造になっている。この構造の理由として、一般的に、樹脂管の外周寸法は、JIS規格により安定した寸法になっているが、内周寸法は製作時にバラツキが生じているためであり、内周シール構造の管継手は、締付環体等の部材によりパイプを外周側から押さえ付けることにより、バラツキのある内周側を内周Oリングにシールさせるようになっている。同文献3の管継手においては、1枚の抜け止めリングが内周Oリングよりも入口側に設けられ、この抜け止めリングによりパイプの抜け出し阻止が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3165109号公報
【特許文献2】特開2007−198585号公報
【特許文献3】特許第3411546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した継手には以下のような問題があった。架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管は、特に柔らかい材質であり、これらを接続する継手は、コンクリートや土の床などの樹脂管外周が傷付きやすい環境で用いられることが多いが、特許文献1の外周シール構造の継手は、Oリングとパイプのシール部位との間に傷があったり異物が挟まれた状態にあるとシール性が低下して漏水が発生する可能性が極めて高くなる。このため、このような外周シール構造の継手を使用する際には、樹脂管外周表面の傷や異物の挟み込みを防ぐ必要がある。
【0008】
これに比較して、特許文献2の内外周シール構造の継手は、主に内周Oリングによってシールする構造であるため、パイプ外周の傷等を許容することは可能になっている。しかし、この継手は、外周シール構造の継手に比較して部品点数が多くなり構造も複雑になっていた。しかも、Oリングによって接合パイプを挟む構造であるため内外周Oリングを近接させることが必要になり、その結果、接合パイプの挿入時の荷重が大きくなっていた。同文献2では、この挿入荷重を低くするために、案内用のガイドリングを用いているが、この場合でも、外周シール構造の継手よりも挿入荷重を小さくすることは難しい。
【0009】
一方、特許文献3の内周シール構造の管継手は、シール性能を高めるために締付環体を設けているため、部品点数が多くなる。更に、同文献3における管継手は、締付環体を作動させるための拡径片も必要になり、この拡径片を動作させるための機構も複雑になっていた。
【0010】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、外周面の傷や異物の挟み込みに影響を受けることなく、部品点数の増加を抑えて簡単な内部構造にしつつ樹脂管の挿入荷重を低減させて高いシール性により樹脂管を接続でき、抜け出し阻止力を向上できる樹脂管用ワンタッチ継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状継手主体の外周面にシール部材を装着し、この継手主体の外周囲に透視可能な外筒を取付け、この外筒の開口側に環状保持体を取付け、外筒の開口端と環状保持体の内周面との間に抜け止めリングの環状部を収納させて抜け止めリングを装着すると共に、抜け止めリングの内周側の爪部とシール部材とを対向配設した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0012】
請求項2に係る発明は、抜け止めリングの爪部とシール部材との間に、樹脂管挿入時にシール部材を押さえつけながら挿入させるための環状ガイドを設けた樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0013】
請求項3に係る発明は、抜け止めリングの環状部を収納させる空間幅を当該環状部の肉厚幅より大きくした樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0014】
請求項4に係る発明は、シール部材であるOリングを装着する装着溝を継手主体の外周面に形成し、この装着溝の継手主体開口側に段差部を連設形成した樹脂管用ワンタッチ継手である。
【0015】
請求項5に係る発明は、段差部の縁をエッジ形状とした樹脂管用ワンタッチ継手である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、筒状継手主体に装着したシール部材と、外筒と環状保持体との間に装着した抜け止めリングとを有する内周シール構造のワンタッチ継手としているので、樹脂管外周面の傷や異物の挟み込みに影響を受けることなく、部品点数の増加を抑えて簡単な内部構造としつつ挿入荷重を低減しつつ高いシール性を発揮して樹脂管を接続できる。樹脂管の接続後には、これらの対向配置により、抜け止めリングの力が内周方向に作用して樹脂管に加わったときに、シール部材が弾発力により樹脂管を外周方向に押圧するため、この相互作用により樹脂管が内外周側からシール部材と抜け止めリングとにより押さえつけられて優れたシール性を発揮し、かつ、樹脂管の抜け出し阻止力を向上できる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、挿入ガイドによりシール部材を押さえつけながら樹脂管を挿入できるため、挿入荷重を低減させて樹脂管を容易に挿入することができる。このとき、環状ガイドによりシール部材への負荷も少なくなるため、シール部材が傷ついたり破断したりすることを防ぎ、高いシール性能を確保しながら樹脂管の接続状態を維持することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、樹脂管の挿入時においては、環状部が樹脂管とともに挿入方向に移動して樹脂管の挿入荷重を低減させることができる。樹脂管の接続後には、抜け止めリングの力が内周方向に作用し、シール部材が弾発力により樹脂管を外周方向に押圧するため優れたシール性能を発揮できると共に抜け出し阻止力を向上できる。流体圧の負荷等により、樹脂管の抜け出し方向に力が加わった場合には、抜け止めリングが空間幅を抜け出し方向に移動して爪部とシール部材とが対向状態まで戻るため、抜け止めリングからの力とシール部材の弾発力とが樹脂管を垂直方向から挟むように加わって、シール部材によるシール性能と、抜け止めリングによる樹脂管の抜け出し阻止力とが飛躍的に向上する。
【0019】
請求項4に係る発明によると、装着溝の継手主体開口側に段差部を設けていることにより、樹脂管に抜け出し方向の力が加わって抜け止めリングの爪部が起立する方向に変形しようとした場合に、抜け止めリングからの力により樹脂管が段差部の方向に逃げ込むように縮径変形し、抜け止めリングがこの樹脂管に深く食い込むことを回避して樹脂管の破断を防止できる。しかも、樹脂管がこの変形によりシール部材を押さえ付けることから、シール部材の弾発力がより増加してシール性能を向上できる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、段差部の縁をエッジ形状としているため、樹脂管が段差部に縮径変形したときに段差部の縁に圧接するエッジ効果が得られ、このエッジ効果により樹脂管の抜け出し阻止力を高め、確実に樹脂管の抜け出しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第1実施形態を示した半截断面図である。
【図2】図1のA部拡大断面図である。
【図3】図2の状態から樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図4】図3の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図5】図4の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図6】樹脂管の接続後の状態を示した拡大断面図である。
【図7】接続後の樹脂管に水圧が加わった状態を示す拡大断面図である。
【図8】図7の樹脂管が変形した状態を示す断面図である。
【図9】樹脂管に過剰な引抜き力が加わった状態を示した断面図である。
【図10】図8の状態から樹脂管が変形した状態を示す断面図である。
【図11】樹脂管用ワンタッチ継手の比較例を示した断面図である。
【図12】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第2実施形態を示した一部拡大断面図である。
【図13】図12の状態から樹脂管を挿入した状態を示した一部拡大断面図である。
【図14】本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第3実施形態を示した一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の実施形態を図面に基づいて説明する。図1においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第1実施形態を示しており、図2においては、図1の樹脂管用ワンタッチ継手のA部拡大断面図を示している。
【0023】
図1、2において、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手本体(以下、継手本体1という)は、例えば、給水・給湯用の樹脂管2を抜け止め状態に接続可能に設けられている。樹脂管2としては、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管があり、これ以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は、銅管等の金属管を接続することも可能になっている。
この継手本体1は、継手主体3、シール部材4、外筒5、環状保持体6、抜け止めリング7を有し、この継手本体1内には環状ガイド8が装着されている。
【0024】
継手主体3は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、通水用の流路口9を有している。この継手主体3の樹脂管2の接続側は、樹脂管2の内径に応じた適宜の外径に設けられている。
【0025】
継手主体3の外周面3aには装着溝11が形成され、この装着溝11に、例えば、EPDM等のゴム製のOリングからなるシール部材4が装着されている。継手本体1は、内周シール構造のワンタッチ継手であり、装着溝11は、継手主体3の樹脂管2が抜け出す側である開口側と、この開口側よりも樹脂管2の挿入側との2ヶ所に形成され、各装着溝11、11に対してそれぞれシール部材4、4が装着されている。継手主体3は、この2つのシール部材4、4により樹脂管2をシールするようになっている。開口側のシール部材4は、抜け止めリング7が収容されている部位に対向配置されている。挿入側のシール部材4は、外筒5の内周に対向配置されている。
【0026】
開口側の装着溝11には、この装着溝11の継手主体開口側に段差部12が連設形成され、この段差部12は、例えば、外周面3aから0.1〜0.3mm程度の段差によって形成され、この段差部12により、樹脂管2の縮径変形を許容することが可能になっている。
段差部12には縁13が形成され、この縁13はエッジ状に形成されている。
【0027】
継手主体3の外周囲には外筒5が取付け可能に設けられ、この外筒5の取付け位置には、凹凸状の係合部15が設けられている。また、内筒部10の装着溝11との他方側には雄ネジ部16が設けられ、この雄ネジ部16に図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続可能になっている。継手主体3は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などに設けられていてもよい。
【0028】
外筒5は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒5の外部から樹脂管2や環状ガイド8の状態を透視可能になっている。外筒5内周側の継手主体3への取り付け位置には、継手部2の係合部15とスナップ嵌合可能な係合部20が設けられ、また、この他端側の外周側には、凹凸状の係合段部21が設けられている。外筒5は、係合部15、20のスナップ嵌合により継手主体3に回転可能に一体化され、嵌合後には外筒5と継手主体3とが相互に回転可能な状態となり、かつ、これらの間に空間である挿入部22が形成され、この挿入部22に樹脂管2をガイドしつつ挿入することが可能になっている。図示しないが、外筒5の内周側の内径は、環状ガイド8の図示しない外径と略同じに設けられている。この外筒5の内周の環状ガイド8との当接側にはR面部位が形成され、このR面部位から開口側にはテーパ面部位が形成されている。
【0029】
環状保持体6は、引張り弾性率が外筒5よりも高いポリアセタールなどの樹脂により、キャップ状に形成されている。この環状保持体6の内周側には、外筒5の係合段部21にスナップ嵌合可能な係合段部23が形成されている。環状保持体6は、係合段部21、23のスナップ嵌合により外筒5の開口側に回転可能に取付けられ、取付け後には、環状保持体6と外筒5とが相互に回転可能な状態となる。環状保持体6の端部側には内周方向に突設する環状突部24が形成され、外筒5の装着後には、この環状突部24により抜け止めリング7の抜け出しが防止される。環状保持体6は、透明性を有しない材料により形成することができ、上記したキャップとして設ける以外にも、例えば、ブシュとして設けることも可能である。
【0030】
抜け止めリング7は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部25と、この環状部25の内径側の爪部26とを有している。爪部26は、環状部25から所定の傾斜角度で屈曲形成され、この爪部26により樹脂管2の挿入をスムーズにしつつ、爪部26が樹脂管2の表面に係止することで、この状態で引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力を発揮して速やかに樹脂管2を保持して抜け止めすることが可能になっている。図示しないが、爪部26の先端側の内径は、後述する環状ガイド8の段部32と略同一径に形成されている。
【0031】
環状部25は、軸Oの直交方向に対して約3〜5°程度の角度で樹脂管2の挿入方向に傾斜するように形成され、この角度は、例えば、約5°になっている。環状部25を傾斜させた場合、この環状部25と接触する部位との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が小さくなって抜け止めリング7全体が回転しやすくなる。これにより、抜け止めリング7は、接続後の樹脂管2と共回りするようになっている。
【0032】
抜け止めリング7は、その環状部25が前記した外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に収納されながら継手本体1内に1枚装着され、このとき、抜け止めリング7の爪部26とシール部材4とが対向配設された状態となる。この場合、開口端5aと内周面6aとにより、抜け止めリング7の環状部25を収納させる空間40が形成されており、図2において、この空間40の幅Bは、当該環状部25の肉厚幅Tよりも大きくなっている。
【0033】
この空間40を設けることにより抜け止めリング7が可動でき、この抜け止めリング7は、継手本体1に樹脂管2を挿入したときに、空間40の継手本体1の軸O方向において、樹脂管2にこの抜け止めリング7が接触する接触点Pと樹脂管2にシール部材4が接触するときの接触点Qとが重なる位置から、接触点Pが接触点Qよりも樹脂管2の挿入側となる位置まで可動する。
【0034】
環状ガイド8は、例えば、弾性を有する高密度ポリエチレン等の樹脂製からなっている。この挿入ガイド8は、抜け止めリング7とシール部材4との間に継手主体3に外嵌するように装着され、この挿入ガイド8により、樹脂管2挿入時にシール部材4を押さえつけながら挿入させ、樹脂管2をスムーズに挿入させることが可能になっている。環状ガイド8は、図2に示すように、内周当接面30、スリット31、段部32、傾斜面33、後端面34を有している。
【0035】
スリット31は、環状ガイド8の先端側と後端側とから軸方向に交互に複数形成され、このスリット31により、環状ガイド8は、軸O方向に変形可能になり、樹脂管2の端面形状に応じて変形しながら挿入をガイドすることが可能になっている。しかも、スリット31により、環状ガイド8は、仮に樹脂管2の端面が斜めに切断されている場合でも、この形状に追従して変形可能になっている。
【0036】
内周当接面30は、内周側のアール面36とこのアール面36に続くテーパ面37とを有している。環状ガイド8は、この内周当接面30によって挿入方向に拡径した形状を成しており、環状ガイド8を継手本体1に挿入したときにこの内周当接面30にシール部材4が当接するようになっている。段部32は、環状ガイド8の外周側に設けられ、抜け止めリング7の爪部26が仮着可能な形状を呈しており、テーパ面37は、この段部32から後端面34にかけて拡径するように環状ガイドの外周側に形成される。後端面34には樹脂管2の端面側が当接可能になっている。テーパ面37は、アール面36に連続して緩やかなアール面としてもよい。
【0037】
環状ガイド8を挿入部22から挿入して継手本体1に装着すると、この環状ガイド8は、スリット31によって拡縮変形が可能であるため、抜け止めリング7やシール部材4に負荷を与えることのない装着が可能となる。環状ガイド8の装着後には、段部32に抜け止めリング7の爪部26が係止するため、環状ガイド8は所定位置に仮固定される。この場合、爪部26が屈曲形成されているため、この爪部26が段部32に引っ掛かって環状ガイド8の脱落が防がれる。
【0038】
このとき、シール部材4に環状ガイド8が触れることになるが、図2に示すように、環状ガイド8の内周側に形成した内周当接面30がシール部材4に当接することにより、シール部材4に過度の負荷が加わることが防止される。このようにして、シール部材4が環状ガイド8の装着によって装着溝11の挿入側に押された状態で納まる。一方、抜け止めリング7は、シール部材4の弾発力により、環状保持体6の環状突部24の内側に押さえ付けられた状態で納まっている。
【0039】
次に、上述のように構成された継手本体1に樹脂管2を挿入して接続する場合を説明する。
図3においては、図2の継手本体1に対して樹脂管2を挿入した状態を示したものであり、樹脂管2の挿入を開始してから環状ガイド8が先端側のシール部材4を乗り越えたときの状態を示したものである。
【0040】
樹脂管2が挿入されたときには、この樹脂管2に押されるように環状ガイド8が移動し、外周側に形成された傾斜面33により抜け止めリング7を緩やかに乗り越えようとする。このため、樹脂管2挿入時におけるシール部材4への負荷を低減させることができ、しかも、内周当接面30によりシール部材4に過度の負荷が加わることを防いで徐々に挿入できるため、シール部材4が傷付いたり破断したりすることが防がれる。
【0041】
一方、空間40の幅Bを環状部25の肉厚幅Tよりも大きくしていることにより、抜け止めリング7が樹脂管2の挿入方向に空間40を移動し、環状部25が外筒5の端部側に当接し、続いて環状ガイド8が挿入されることで爪部26が傾斜面33に沿うように変形する。爪部26は、樹脂管2の挿入に伴って広がることにより、この爪部26の傾斜角度αが図3に示すように大きくなり、更に、傾斜面33と空間40とを設けていることによって抜け止めリング7が矢印に示すように回転して傾くためこの傾斜角度αは一層大きくなる。このため、樹脂管2挿入時の抵抗を減少でき、円滑な挿入が可能になる。
【0042】
続いて、環状ガイド8は、内周当接面30が接触しながらシール部材4を乗り越え、この乗り越え時には、シール部材4の弾発力によりこの環状ガイド8に外周方向の力が作用する。この力により、環状ガイド8は外周方向に変形しようとするが外周側の抜け止めリング7によりその変形が抑制される。図において、環状ガイド8の後端面34が段差部12よりも先端側まで挿入された場合には内筒部10から浮いた状態になるが、このとき環状ガイド8は、シール部材4と抜け止めリング7とにより挟まれて支えられているため、ぐらつくことがない。そのため、樹脂管2の挿入に支障をきたすことなく、シール部材4を押圧しながらスムーズに樹脂管2を挿入できる。
【0043】
このとき、抜け止めリング7と環状ガイド8との接触点Pよりも、シール部材4と環状ガイド8との接触点Qが軸O方向において挿入方向にずれた状態になっており、この接触点Pと接触点Qとのずれ量Wは、環状ガイド8が挿入されて爪部26の変形量が大きくなるにつれて大きくなる。
【0044】
図4においては、図3の状態から更に樹脂管2を挿入し、樹脂管2が先端側のシール部材4を乗り越えつつ、環状ガイド8が挿入側のシール部材4を乗り越えた状態を示している。このときには樹脂管2の挿入によって抜け止めリング7が更に大きく変形し、抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pが、シール部材4と樹脂管2との接触点Qよりも更にずれることでずれ量Wが大きくなる。ここで、軸O方向において、抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qとが重なった場合には、挿入荷重により爪部26に垂直方向に働く抗力Fが最大になり、一方、接触点Pと接触点Qとがずれた場合には、爪部26からの抗力F´は図に示すように抗力F´=F・cosθとなる。これにより、ずれ量Wが増加することにより、cosθ<1(0<θ<90°)の関係から抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qが軸Oの方向に重なる場合よりも挿入荷重を抑えることが可能になる。ここで、角度θは、抗力Fと抗力F´とが成す角度である。
【0045】
環状ガイド8が挿入側のシール部材4を乗り越える際には、開口側のシール部材4を乗り越える場合と同様に外周方向に変形しようとするが、このときには環状ガイド8の外周側が外筒5の内周側に当接するため、環状ガイド8の外周方向への変形が抑制される。この場合、外筒5の内径と環状ガイド8の外径とを略等しく設けることにより、環状ガイド8が樹脂管2をスムーズに案内する役割を果たすことが可能になる。
【0046】
図5においては、図4の状態から更に樹脂管2を挿入し、樹脂管2が二次側のシール部材4を乗り越えようとする状態を示している。この場合、抜け止めリング7が樹脂管2の外周面により略一定の変形状態に保たれているため、抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pと、シール部材4と樹脂管2との接触点Qとのずれ量Wが一定に維持され、挿入荷重の低減状態を維持しながら樹脂管2の挿入が可能となる。図の状態から環状ガイド8がに更に挿入され、環状ガイド8の挿入側のシール部材4への乗り越えが終わったときには、環状ガイド8が挿入部22内でフリーの状態となる。続けて樹脂管2を挿入すると、図6に示すように、樹脂管2の接続が完了した状態となる。樹脂管2の接合完了後には、ずれ量Wが確保された状態で抜け止めリング7とシール部材4とが所定位置に配置される。
【0047】
続いて、樹脂管2の接続後に、継手本体1内に水圧が負荷された場合の動作を述べる。
図7において、継手本体1内に水圧が負荷されると、この水圧により、挿入側のシール部材4が樹脂管2にシールし、樹脂管2は、抜け出し方向に移動しようとする。この作用により、抜け止めリング7の爪部26が樹脂管2に食い込むと同時に、抜け止めリング7が環状保持体6の環状突部24側に空間40を移動する。抜け止めリング7が環状保持体6の内周面6aに当接すると、抜け止めリング7の接触点Pとシール部材4の接触点Qとが軸Oと直交方向において略重なった状態まで戻ることになる。この場合、爪部26から垂直方向の力が働き、この力に対してシール部材4がその弾発力によって樹脂管2を外周方向に押圧する力が働いて、この2つの力の作用により樹脂管2をシール部材4に押し付けて、高いシール性能を発揮する。なお、図面上においては、シール部材4が変形する前の形状を示しているが、実際の接触点Qは、変形したシール部材4の頂点の近傍付近と樹脂管2との接触部分である。
【0048】
このとき、図8に示すように、抜け止めリング7から樹脂管2を内周方向に押圧する力が働くが、装着溝11の継手主体開口側に段差部12を設けていることにより、樹脂管2が抜け止めリング7によって押されて縮径変形し、段差部12に逃げ込んだ状態になる。縮径した樹脂管2は、段差部12の縁13に当接するが、この縁13はエッジ形状になっているため、樹脂管2がこの縁13に圧接する、いわゆる、エッジ効果が得られる。このエッジ効果により樹脂管2の抜け出しが確実に防止される。
【0049】
図9においては、樹脂管2に過剰な加圧や引抜き力が加わったときの状態を示している。同図に示すように、樹脂管2への引抜荷重が大きくなると、抜け止めリング7の爪部26が起立方向に変形するように動作する。この場合、樹脂管2は、爪部26に押されて段差部12に逃げ込むように変形する。縁13は、上記したエッジ形状であることから、変形した樹脂管2はこの縁13に引っ掛かった状態になる。このとき、段差部12が装着溝11に連設形成されていることから、変形した樹脂管2がシール部材4を内周側に押圧してこのシール部材4によるシール性が一層高まっている。
【0050】
図10においては、図9の状態から更に引抜荷重が大きくなり、樹脂管2の降伏点近くに達したときの状態を示している。このとき、爪部26は、更に起立して樹脂管2に深く食い込もうとするが、爪部26に押圧された樹脂管2は、段差部12に逃げ込むように変形しているため、抜け止めリング7の食い込み量を少なく抑えて樹脂管2の肉厚を所定量確保することができ、この樹脂管2の破断や抜け等を防止できる。
【0051】
図11においては、図9、図10との比較例を示したものであり、装着溝50に段差部を設けない場合のワンタッチ継手を示している。この場合、爪部26の押圧に対して樹脂管2が逃げ込む空間がないため、起立した爪部26が樹脂管2に深く食い込んで樹脂管2の肉厚が薄くなる可能性がある。この樹脂管2に引抜荷重がかかっているため、樹脂管2の肉厚が痩せて樹脂管2が破断したり抜けたりしやすくなる。
図9、図10の場合、図11のワンタッチ継手に比較して樹脂管2の破断等のおそれを大幅に減少でき、しかも、縁13によるエッジ効果と相まって樹脂管2の引抜き阻止力を一層高めることができる。
【0052】
本発明の樹脂管用ワンタッチ継手は、上述したように、継手主体3の外周面3aにシール部材4を装着し、継手主体3の外周囲に透視可能な外筒5を取付け、この外筒5の開口側に環状保持体6を取付け、外筒5の開口端5aと環状保持体6の内周面6aとの間に抜け止めリング7の環状部25を収納させて装着した内周シール構造のワンタッチ継手としているので、外周シール構造のワンタッチ継手のように樹脂管外周の傷や異物の挟み込みに影響を受けることがない。この場合、抜け止めリング7の内周側の爪部26とシール部材4とを対向配設しているので、挿入荷重を抑えつつ簡単に樹脂管2を挿入でき、接合後の樹脂管2を垂直方向から挟んで優れたシール性と抜け出し阻止力とを発揮できる。しかも、このようにシール部材4と抜け止めリング7とにより樹脂管2を接続できるため、部品点数を抑えて簡単な内部構造で継手本体1を設けることができる。
【0053】
図12、図13においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第2実施形態を示したものである。なお、この実施形態以降において、上述した実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。この実施形態では、前述した構成の継手本体1に環状ガイドを装着することなく、樹脂管2を直接挿入して接続するようにしたものである。
【0054】
図12において、樹脂管2を継手本体1に挿入すると、この樹脂管2が先端側のシール部材4に当接し、このシール部材4を挿入側に押しながら抜け止めリング7の爪部26に当接する。続いて、図13に示すように、抜け止めリング7に当接した樹脂管2がこの抜け止めリング7を押圧することにより、抜け止めリング7の爪部26が樹脂管2の外周に沿って変形する。このとき、樹脂管2が内周シールリング4を乗り越えて進み、この樹脂管2により変形した抜け止めリング7と樹脂管2との接触点Pと、シール部材4と樹脂管2との接触点Qとが、軸Oの方向においてずれた状態になり、抜け止めリング7とシール部材4との対向配置においてずれ量Wが確保される。
【0055】
この実施形態においても、樹脂管2の挿入時に抜け止めリング7が空間40を移動することによって樹脂管2の挿入荷重を低減できる。更に、流体圧等の負荷により引抜き方向の力がかかった場合にも抜け止めリング7が空間40を移動して優れたシール性と引抜き阻止力とを発揮できる。しかも、この実施形態においては、環状ガイドを用いていないことから部品点数を少なくでき、部品管理等も容易になる。
【0056】
図14においては、本発明における樹脂管用ワンタッチ継手の第3実施形態を示したものである。この実施形態では、樹脂管の抜け出しを阻止する効果を更に増すため、継手主体41の段差部の縁を増やしたものである。図に示すように、継手主体41の段差部42は2つの段差43、44を有し、段差43は、例えば、略0.2mm程度の高低差により略クサビ形状に形成され、この段差43の樹脂管2挿入側に略0.2mm程度の高低差で段差44が形成されている。更に、段差44の樹脂管2挿入側には、R部45が形成されている。
【0057】
この構成により、段差部42には2箇所に縁46、47が形成され、このように形成することで樹脂管2の引っ掛かり部位が増やされ、1箇所の縁の場合に比較してその抜き出し阻止性を高めることができる。しかも、R部45を設けていることで、開口側の装着溝11にエッジ状部位を形成することを防いでシール部材4が傷付くことを防ぎ、段差43、44をともに略0.2mm程度の高低差としていることで、樹脂管2の逃げ部位を設けつつも、縁43、44のエッジ効果により樹脂管2の抜け出し阻止性を高めている。
このように、段差部42の形状が前記実施形態と異なる場合であっても、樹脂管2の逃げの動作は、上述の場合と同様である。また、抜け止めリング7が起立したときには、最終的に段差部42の最小径部分に変形した樹脂管2が逃げるようになっている。
【0058】
更に、図示しないが、これ以外にも、R部を省略して2箇所の縁を有する簡単な形状の段差部に設けたり、或は、2箇所の縁を有する段差部の挿入側の段差を軸方向に長く設けることもでき、挿入側の段差を軸方向に長く設けた場合には、第1実施形態の樹脂管用ワンタッチ継手の縁を増やした構成となり、抜け止めリング7は、前述の場合と同様の動作によって起立する。また、段差部の縁を3箇所以上に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 継手本体
2 樹脂管
3 継手主体
3a 外周面
4 シール部材
5 外筒
5a 開口端
6 環状保持体
6a 内周面
7 Oリング(抜け止めリング)
8 環状ガイド
11 装着溝
12 段差部
13 縁
25 環状部
26 爪部
40 空間
B 幅
T 肉厚幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状継手主体の外周面にシール部材を装着し、この継手主体の外周囲に透視可能な外筒を取付け、この外筒の開口側に環状保持体を取付け、前記外筒の開口端と前記環状保持体の内周面との間に抜け止めリングの環状部を収納させて抜け止めリングを装着すると共に、前記抜け止めリングの内周側の爪部と前記シール部材とを対向配設したことを特徴とする樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項2】
前記抜け止めリングの爪部と前記シール部材との間に、樹脂管挿入時に前記シール部材を押さえつけながら挿入させるための環状ガイドを設けた請求項1に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項3】
前記抜け止めリングの環状部を収納させる空間幅を当該環状部の肉厚幅より大きくした請求項1又は2に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項4】
前記シール部材であるOリングを装着する装着溝を前記継手主体の外周面に形成し、この装着溝の継手主体開口側に段差部を連設形成した請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項5】
前記段差部の縁をエッジ形状とした請求項4に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項1】
筒状継手主体の外周面にシール部材を装着し、この継手主体の外周囲に透視可能な外筒を取付け、この外筒の開口側に環状保持体を取付け、前記外筒の開口端と前記環状保持体の内周面との間に抜け止めリングの環状部を収納させて抜け止めリングを装着すると共に、前記抜け止めリングの内周側の爪部と前記シール部材とを対向配設したことを特徴とする樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項2】
前記抜け止めリングの爪部と前記シール部材との間に、樹脂管挿入時に前記シール部材を押さえつけながら挿入させるための環状ガイドを設けた請求項1に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項3】
前記抜け止めリングの環状部を収納させる空間幅を当該環状部の肉厚幅より大きくした請求項1又は2に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項4】
前記シール部材であるOリングを装着する装着溝を前記継手主体の外周面に形成し、この装着溝の継手主体開口側に段差部を連設形成した請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【請求項5】
前記段差部の縁をエッジ形状とした請求項4に記載の樹脂管用ワンタッチ継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−132981(P2011−132981A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290739(P2009−290739)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]