説明

樹脂組成物、反射板及び発光装置

【課題】衝撃強度などの機械強度、及び可視光に対して優れた反射率を発現する反射板を得るうえで好適な樹脂組成物、この樹脂組成物を用いてなる反射板及び該反射板を用いてなる発光装置を提供する。
【解決手段】(A)液晶ポリエステル及び(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラーを含有してなる樹脂組成物。当該樹脂組成物はガラス繊維などの無機充填剤を含んでいてもよい。かかる樹脂組成物は、発光装置用として優れた反射板を得ることが可能であり、特に、波長460nmの光線に対する反射率が70.0%以上という優れた反射率の反射板を得ることができる。そして、該反射板を用いることにより、輝度に優れた発光装置の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射板を成形するうえで好適な樹脂組成物、該樹脂組成物を用いてなる反射板及び該反射板を供えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)発光装置などに使用されている反射板の多くには、その加工性の良さや軽量性が求められる点で、樹脂製のものが使用されている。このようなLED発光装置の製造においては、LED素子の実装工程、さらにはLEDモジュール組み立て時のハンダ付け工程や封止樹脂の硬化工程などで反射板は高温環境下に曝されることがある。そのため、反射板を構成する樹脂材料として、耐熱性と成形性の点で優位な液晶ポリエステルが広く検討されている。
【0003】
ところで、発光装置等に使用される反射板には、発光装置等の輝度を良好にするために、高い反射率が要求されている。このような反射板用の樹脂組成物としては、高反射率を付与できるような充填剤と、液晶ポリエステルとを含む樹脂組成物が提案されている。例えば、特開2007−320996号公報には、液晶ポリエステルに、酸化チタン及び青色着色料を配合してなる樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、酸化チタンを高反射率付与剤として配合している樹脂組成物では、得られる反射板の反射率を高くするために、当該高反射率付与剤の配合割合(高反射率付与剤の充填量)を高くする必要があった。しかしながら、高反射率付与剤の充填量を高くすると、得られる反射板の機械強度、特に衝撃強度は低下し易い傾向にあり、このような反射板では、発光装置の製造プロセスによっては当該反射板が破損する可能性があった。
そこで、本発明の目的は、衝撃強度などの機械強度を十分維持しつつ、可視光に対して優れた反射率を示す反射板を得るうえで好適な樹脂組成物、この樹脂組成物を用いてなる反射板及び該反射板を用いてなる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物、反射板、反射板の製造方法及び発光装置を提供する。
<1>以下の成分(A)及び(B)を含有してなり、前記成分(A)100質量部に対して、前記成分(B)が5〜110質量部である樹脂組成物;
(A)液晶ポリエステル
(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラー
<2>前記成分(B)が、酸化チタンをアルミナで表面処理してなる酸化チタンフィラーである、<1>又は<2>の樹脂組成物;
<3>前記成分(B)が、塩素法により製造された酸化チタンを含む酸化チタンフィラーである、<1>又は<2>の樹脂組成物;
<4>さらに、成分(B)以外の無機充填剤を含有する、<1>〜<3>のいずれかの樹脂組成物;
<6><1>〜<5>のいずれかの樹脂組成物を用いてなる反射板。
<7>JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる光線(波長460nm)に対する反射率が70%以上である、<6>の反射板;
<8>(i)以下の成分(A)及び(B):
(A)液晶ポリエステル
(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラー
を含有してなり、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が5〜110質量部である樹脂組成物を得、
(ii)得られた樹脂組成物を射出成形する、
反射板の製造方法;
<9><6>又は<7>の反射板と、
発光素子と、
を具備する発光装置;
<10>前記発光素子がLEDである、<9>の発光装置;
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物によれば、衝撃強度などの優れた機械強度を維持しつつ、可視光に対して高反射率を発現する反射板を得ることができる。
そして、当該反射板を用いれば、輝度などの特性に優れた発光装置を得ることができるため、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、以下の成分(A)及び(B):
(A)液晶ポリエステル
(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラー
を含有してなり、成分(A)100質量部に対して成分(B)が5〜110質量部であることを特徴とする。
以下、これらの成分について好適な実施態様、これらの成分を含む本発明の樹脂組成物、樹脂組成物を用いてなる反射板、発光装置を順次説明する。
【0009】
<成分(A)>
成分(A)に用いる液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下の温度で光学的異方性を示す溶融体を形成し得るポリエステルである。
この液晶ポリエステルとしては例えば、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの組み合わせを重合して得られる液晶ポリエステル、
(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる液晶ポリエステル、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られる液晶ポリエステル、
(4)ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られる液晶ポリエステル、
などを具体的に挙げることができる。
なお、液晶ポリエステルの製造では、これらの原料モノマー(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオール)の代わりに、該原料モノマーのエステル形成性誘導体を使用することもできる。エステル形成性誘導体を用いれば、液晶ポリエステルの製造がより容易になるという利点がある。
【0010】
原料モノマーのエステル形成性誘導体としては、たとえば次のようなものである。
分子内にカルボキシル基を有する、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、当該カルボキシル基を、高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したもの、あるいは当該カルボキシル基がアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
一方、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、当該フェノール性水酸基が低級カルボン酸類とエステルを形成しているものなどを挙げることができる。
【0011】
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、上述の原料モノマー、すなわち、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールは、その芳香環に、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;又はフェニル基等のアリール基を置換基として有していてもよい。
【0012】
液晶ポリエステルを構成する構造単位としては、下記のものを例示することができる。
【0013】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:

これらの構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0014】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:

これらの構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0015】
芳香族ジオールに由来する構造単位:

これらの構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0016】
好適な液晶ポリエステルの構造単位の組み合わせを、上述の具体例で示した構造単位で示すと、以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)(以下、「(a)〜(h)」ということがある)が挙げられる。
(a):(A1)、(B1)及び(C1)からなる組み合わせ、又は、(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)からなる組み合わせ
(b):(A2)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ、又は(A2)、(B1)、(B3)及び(C2)からなる組み合わせ
(c):(A1)及び(A2)からなる組み合わせ。
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部又は全部を(A2)で置きかえたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部又は全部を(B3)で置きかえたもの
(f):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部又は全部を(C3)で置きかえたもの
(g):(b)の構造単位の組み合わせにおいて、(A2)の一部又は全部を(A1)で置きかえたもの
(h):(c)の構造単位の組み合わせに、(B1)と(C2)を加えたもの
【0017】
上述の(a)〜(h)のように、成分(A)に使用する液晶ポリエステルとしては、
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として(A1)及び/又は(A2)と、
芳香族ジオールに由来する構造単位として、(B1)、(B2)及び(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を有するものが特に好ましい。
【0018】
成分(A)に用いられる液晶ポリエステルは、その流動開始温度が270〜400℃であることが好ましく、300〜380℃であることがより好ましい。流動開始温度が270℃未満の液晶ポリエステルを成分(A)として用いた樹脂組成物である場合、得られる反射板は、LEDを発光素子とする発光装置に用いるとき、LEDモジュール組立工程などの高温環境下において、変形が生じたり、ブリスター(膨れ異常)を生じたり、する傾向にある。一方、流動開始温度が400℃を超える液晶ポリエステルを成分(A)として用いた樹脂組成物の場合には、該樹脂組成物の成形における成形温度を高くする必要がある。そのため、反射板を製造することが比較的困難になり易い。また、このような樹脂組成物を用いて、400℃を超える成形温度で反射板を成形しようとすると、液晶ポリエステルが酸化チタンの影響を受けて熱劣化し易くなり、ひどい場合には反射板が変色して反射率が低下してしまうという不都合が生じるおそれがある。
なお、ここでいう流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメーターを用い、9.8MPaの荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が4800Pa・secを示す温度を意味するものであり、該流動開始温度は当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0019】
成分(A)に用いる液晶ポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を採用することができるが、特開2004−256673号公報で本出願人により開示された、YI値32以下の液晶ポリエステルを製造できる方法が好ましい。
具体的に、この公報で開示した好適な液晶ポリエステルの製造方法に関し、一例を挙げて説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸の原料モノマー混合物に、窒素雰囲気下、130〜180℃で脂肪酸無水物を反応させ、これら原料モノマーのうち、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物によりアシル化して、アシル化物(芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジオールアシル化物)を得る。その後、さらに昇温して、反応副生物などを反応系外に留去しながら、アシル化物のアシル基と、芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基と、がエステル交換を生じるようにして、これらを重縮合させ液晶ポリエステルを製造する。
前記原料モノマー混合物中にある各々の原料モノマーにおいて、フェノール性水酸基とカルボキシル基との当量比は、0.9〜1.1であることが好ましい。
【0020】
芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の合計に対する脂肪酸無水物の使用量は、0.95〜1.2倍当量が好ましく、1.00〜1.15倍当量がより好ましい。
脂肪酸無水物の使用量が少ないと、液晶ポリエステルの着色を抑制できる傾向にあるが、脂肪酸無水物の使用量が少なすぎると、重縮合時に未反応の芳香族ジオール又は芳香族ジカルボン酸が昇華し易くなって、分縮器あるいは還流冷却器が閉塞する場合がある。一方、脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなり、反射板の反射率を悪化させるおそれがある。
【0021】
脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2−エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されるものでない。これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく使用され、無水酢酸がより好ましく使用される。
【0022】
エステル交換(重縮合)反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら反応させることがより好ましい
そして、エステル交換(重縮合)反応をより円滑にするために、反応副生物を系外へと留去させる。
【0023】
前記特開2004−256673号公報で開示した前記製造方法においては、エステル交換(重縮合)反応は、液晶ポリエステルの製造をより円滑にする点と、得られる液晶ポリエステルの着色を十分抑制する点とから、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下に行うことが好ましい。その理由は、該含窒素複素環状有機塩基化合物が、液晶ポリエステルの製造をより円滑にし、得られる液晶ポリエステルの着色を十分抑制するためである。
この複素環状有機塩基化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ジピリジリル化合物、フェナントロリン化合物、ジアザフェナントレン化合物などを挙げることができる。これらの中でも、アシル化反応やエステル交換反応の反応性がより良好になることから、イミダゾール化合物が好ましく使用され、入手が容易であることから、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールがより好ましく使用される。なお、この含窒素複素環状有機塩基化合物は、前記アシル化物を製造する過程で反応系に共存させていてもよく、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸を混合する段階で、含窒素複素環状有機塩基化合物を合わせて混合してもよい。また、アシル化反応とエステル交換反応との間に、含窒素複素環状有機塩基化合物を仕込む形式でもよい。
【0024】
また、エステル交換(重縮合)反応をより促進して重縮合速度を増加させる目的で、本発明の目的を損なわない範囲であれば、前記複素環状有機塩基化合物以外の触媒を用いてもよい。ただし、金属塩などを触媒として使用する場合には、当該金属塩が液晶ポリエステルに不純物として残存することになり、この不純物が、反射板のような電子部品には悪影響を及ぼすことがある。この点からも、前記複素環状有機塩基化合物を用いることは、成分(A)に用いる液晶ポリエステルを製造するうえで、特に好適な実施態様である。
【0025】
液晶ポリエステルの重合度をより向上させる方法としては、
エステル交換(重縮合)反応の反応容器内を減圧するといった方法(減圧重合)や、
エステル交換(重縮合)反応後の反応生成物を冷却固化した後、これを粉末状に粉砕し、得られた粉末状の反応生成物を、250〜350℃、2〜20時間といった条件で固相重合する方法
などが挙げられる。このような方法で液晶ポリエステルの重合度を上げることにより、好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを製造することがより容易になる。設備が簡便である点では、固相重合を用いることが好ましい。
なお、前記のアシル化反応及びエステル交換反応を組み合わせた重縮合や、その後の固相重合は、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。
【0026】
かくして製造された液晶ポリエステルは、前記特開2004−256673号公報で示したように、YI値が32以下の液晶ポリエステルであり、成分(A)として特に好ましいものである。なお、YI値とは、液晶ポリエステルからなる試験片を得、この試験片を、色差計を用いて測定することにより得られる値をいう。YI値は、物体の黄色度を表わす指標で、ASTM D1925に定義される値であり、具体的には下記式で求めることができる。
YI=[100(1.28X−1.06Z)/Y]
(ここで、X値、Y値、Z値は、それぞれXYZ表色系における光源色の三刺激値である。)
【0027】
前記複素環状有機塩基化合物を用いた製造方法で得られるYI値が32以下となるような液晶ポリエステルは、成分(A)に用いるうえで特に好ましいものであるが、複数種の液晶ポリエステルを混合することでYI値32以下の液晶ポリエステル混合物を得ることもできる。この場合も複数種の液晶ポリエステルを混合したもの(液晶ポリエステル混合物)のYI値を、上述した方法により求めれば、成分(A)として好適な液晶ポリエステル混合物を選択することができる。
【0028】
<成分(B)>
本発明に用いる成分(B)酸化チタンフィラーとは、酸化チタンを含むフィラーである。この酸化チタンフィラーは、その体積平均粒径が0.27〜0.40μmの範囲であり、本発明の目的を著しく損なわない範囲であれば、企図せず含有されているような不純物の存在を排除するものではない。酸化チタンフィラーの体積平均粒径が0.27μmを下回ると、可視光に対する反射率、特に比較的短波長の光線(波長:0.44μm〜0.48μm程度、以下、「青色光」ということがある。)に対する反射率が低下する傾向にある。これまで青色光の反射率に優れる反射板を得るためには、比較的微粒の(体積平均粒径が小さい)酸化チタンが使用されていた。これは、光の半波長となるような体積平均粒径の微粒子が、反射板の色調を改善すると考えられていたためである(清野学著、「酸化チタン − 物性と応用技術」97項、162項、技術堂出版株式会社、1991年6月25日第一版発行)。そうすると、青色光を効率的に反射させるためには、体積平均粒径が0.21〜0.25μmの微粒子(酸化チタン)を使用することとなる。
このような技術常識に反し、本発明者等は驚くべきことに、従来考えられていた酸化チタンフィラーよりも、体積平均粒径が大きなものを用いた反射板が、青色光に対して高度の反射率が発現することを見出した。ただし、酸化チタンフィラーの体積平均粒径が0.40μmを越えると、やはり得られる反射板の反射率は低下する傾向にある。なお、後述する塩素法における酸化チタンの製造方法は、ルチル型の結晶形を有する酸化チタンが得られる点で好ましい製造方法であるが、ときに得られる酸化チタンの体積平均粒径が小さくなることもあるため、成分(B)に使用する酸化チタンを塩素法で得る場合には、本発明に適した体積平均粒径が0.27〜0.4μmの範囲の酸化チタンを得られるように適宜コントロールするのが好ましい。
酸化チタンフィラーの体積平均粒径は、0.27〜0.37μmの範囲が好ましく、0.27〜0.32μmの範囲がより好ましく、0.27〜0.30μmの範囲が一層好ましい。また、酸化チタンフィラーとしては、後述するような表面処理が施された酸化チタンも使用可能である。
なお、ここでいう体積平均粒径は、酸化チタンフィラーの外観を走査形電子顕微鏡(SEM)で測定して求められるものである。具体的には、SEM測定により得られたSEM写真を画像解析装置(例えば株式会社ニレコ社製「ルーゼックスIIIU」)を用いて、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求め、その累積分布曲線より、累積度50%の粒径を体積平均粒径として求めることができる。
【0029】
さらに、本発明者等は、体積平均粒径0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラーを用いることにより、液晶ポリエステル自身の優れた機械強度が十分維持され、衝撃強度に優れた反射板が得られることを見出した。体積平均粒径が0.27μmを下回る酸化チタンフィラーを用いる場合、高反射率の反射板が得られるように、酸化チタンフィラーの充填量を高くすると、反射板の機械強度、特に衝撃強度が著しく低下する傾向がある。かかる効果が発現する原因は必ずしも明らかではないが、本発明者等は次のように推定している。すなわち、従来使用されていた酸化チタンフィラーよりも、本発明では、体積平均粒径が比較的大きい酸化チタンフィラーを使用している。このような酸化チタンフィラーは、成形体中で良好に分散され、酸化チタンフィラー同士の凝集が生じ難いために、反射板の衝撃強度が良好になると推定される。すなわち、反射板中で酸化チタンフィラーが凝集した部分があると、その部分が脆弱部となる。そして、反射板に衝撃が加わると、その脆弱部が基点となって割れなどが生じ易くなり、結果として反射板が破損され易くなると推定される。
【0030】
酸化チタンフィラーに含有される酸化チタン自身の結晶形は特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、または両者を混合した酸化チタンであってもよい。ただし、高反射率に加え、耐候性の良好な反射板を求めるのならば、ルチル型の酸化チタンを含有する酸化チタンフィラーが好ましい。
【0031】
本発明では、成分(B)として体積平均粒径が比較的大きい酸化チタンフィラーを用いているため、成形体中での酸化チタンフィラーの分散性に優れると推定される。その結果、成分(B)の配合割合を比較的多くしても、衝撃強度に優れた反射板が得られる。したがって、所望の反射率により、成分(B)の配合割合を調整することができる。また、該酸化チタンフィラーの体積平均粒径が比較的大きいと、その表面積が小さくなることから、酸化チタンの触媒作用による液晶ポリエステル劣化も抑制することが可能となる。本発明の樹脂組成物における成分(B)の配合割合は、成分(A)100質量部に対して、5〜110質量部であり、5〜80質量部が好ましく、10〜75質量部がより好ましい。この成分(B)の配合割合が5質量部未満では、実用的な反射率の反射板が得られなくなり、110質量部を超える場合は、反射板の製造が困難になる傾向にある。また、成分(B)が110質量部を超える場合、液晶ポリエステルの機械特性などの特性が十分維持できないことがある。この液晶ポリエステルの特性を悪化させる原因は必ずしも明らかでないが、本発明者等は、酸化チタンフィラーに含まれる酸化チタン又は酸化チタンの表面処理剤が触媒のように作用して、液晶ポリエステルのエステル結合を切断し、液晶ポリエステルの低分子量化を引き起こすことが一つの要因と推定している。成分(A)に対する成分(B)の配合割合が前記の範囲であれば、液晶ポリエステルの機械強度を十分維持しながら、高反射率を示す反射板を製造することができる。
なお、成分(B)として複数種の酸化チタンフィラーを用いる場合は、その合計量の配合割合が成分(A)に対して、前記の範囲であればよい。
【0032】
成分(B)に用いる酸化チタンフィラーは、成形体中での分散性をより向上させるなどの目的で表面処理を施してもよい。この表面処理に用いる表面処理剤は、分散性をより向上させる点では、無機金属酸化物が好ましい。該無機金属酸化物を酸化チタンの表面に付着させるといった表面処理を施した酸化チタンフィラーが好ましい。無機金属酸化物としては、より分散性に優れる点でアルミナが特に好ましい。なお、このような表面処理が施されてなる酸化チタンフィラーは、表面処理後の体積平均粒径が0.27〜0.40μmの範囲、好ましくは0.27〜0.37μmの範囲、より好ましくは0.27〜0.32μmの範囲、一層好ましくは.27〜0.30μmの範囲であればよい。
このように本発明で用いられる酸化チタンフィラーは、分散性が高いものが好ましい。必ずしも表面処理されている酸化チタンフィラーを用いる必要はないが、表面処理されている酸化チタンフィラーは凝集が少なく取扱いが容易であることが多く、好ましい場合が多い。酸化チタンフィラーの分散性を高める方法としては、上記の表面処理が挙げられるが、それに限定されることはなく、他の手法で分散性を高めることもできる。
【0033】
成分(B)酸化チタンフィラーに含有される酸化チタンの製造方法としては塩素法が好ましい。ここでいう塩素法による酸化チタン製造を簡単に説明すると、まず、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル等)を、塩素と1000℃付近で反応させて粗四塩化チタンとし、この粗四塩化チタンを精留で精製した後、得られた四塩化チタンを酸素で酸化して酸化チタンを得るという方法である。このような塩素法によれば、好適な結晶形であるルチル型の酸化チタンが得られる。そして、酸素で酸化する工程(酸化工程)での条件を調整することにより、比較的白色度に優れた酸化チタンが得られ易い。したがって、塩素法により得られる酸化チタンを含む酸化チタンフィラーは本発明の成分(B)として特に好適である。また、酸化工程での条件を調整することにより、粗大粒子の生成を抑制し、本発明の成分(B)に適用し得る体積平均粒径の酸化チタンフィラーを得ることが容易になるという利点もある。また、このようにして塩素法で製造された酸化チタンを、公知の分級操作を行うことで、本発明の成分(B)として好適な体積平均粒径の酸化チタン(酸化チタンフィラー)を選別することもできる。
【0034】
成分(B)として使用可能な酸化チタンフィラーの市販品としては、例えば、石原産業(株)の「TIPAQUE CR−58」、テイカ(株)の「TITANIX JR−301、WP0042」などを挙げることができる。なお、この「TIPAQUE CR−58」は、塩素法で製造された酸化チタンからなるものであり、「TITANIX JR−301、WP0042」は、硫酸法と呼ばれる製造方法で製造された酸化チタンからなるものである。
【0035】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、成分(A)及び(B)を含むものであり、該樹脂組成物における、成分(A)及び(B)の配合割合は上述のとおりである。以下、この樹脂組成物について説明する。
該樹脂組成物には、必要に応じて、成分(B)以外の充填剤(以下、「他の充填剤」という。)が添加されていてもよい。
この場合、他の充填剤の添加量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、5〜100質量部であると好ましく、5〜90質量部であると、より好ましい。他の充填剤の添加量が100質量部を超えると、反射板の色調の低下や、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり造粒性が悪化し易く、小型の反射板を成形する場合には、成形加工性が低下する傾向がある。なお、他の充填剤を用いる場合には、無機充填剤が好適である。
【0036】
該無機充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白などの酸化チタン以外の白色顔料;ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸塩繊維、ウォラストナイト、アスベストなどの無機繊維;二酸化けい素、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、ドロマイト、各種金属粉末、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、焼石膏などの粉末;炭化けい素、アルミナ、ボロンナイトライト、ホウ酸アルミニウムや窒化けい素などの粉粒状、板状、ウィスカー状の無機化合物が挙げられる。
これらの中でも、反射板の反射率を著しく低下させることなく、反射板のウエルド強度を高めるためには、ガラス繊維、チタン酸塩繊維、ウォラストナイトなどの無機繊維;二酸化ケイ素、ホウ酸アルミニウムや窒化けい素等の粉粒状、板状、ウィスカー状の無機化合物;タルクが好ましい。また、このような好適な無機充填剤は、液晶ポリエステル特有の分子鎖配向性に由来する成形収縮率や機械物性の異方性を低減することも可能であるので、反射板の製造には有利である。
なお、このような無機充填剤には、集束剤が使用される場合もあるが、色調の低下を抑制する点から、使用される集束剤の量は少ないほうが好ましい。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、フッ素樹脂、高級脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;蛍光増白剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を少なくとも1種添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などの外部滑剤効果を有するものを添加してもよい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び必要に応じて使用される無機充填剤を混合することで得られ、その製造方法は特に限定されるものではない。例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、押出機を用いて溶融混練するといった方法が挙げられ、かかる溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化してもよい。このようにペレット化して得られた樹脂組成物は、成形における取扱性が良好になり、目的とする部品の形状によって好適な成形方法の選択幅を広げることができる。
【0039】
<反射板>
本発明の反射板は、本発明の樹脂組成物から種々慣用の成形方法により溶融成形することで得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出し成形法などが挙げられる。とりわけ射出成形が好適であり、射出成形して得られる反射板は、薄肉部を有するような形状であったり、複雑な形状であったり、したとしても、容易に成形することが可能である。特に、本発明の樹脂組成物は、0.01mm〜3.0mmの薄肉部、好ましくは0.02〜2.0mmの薄肉部、より好ましくは0.05〜1.0mmの薄肉部を有するような小型の反射板の製造用に適している。
【0040】
射出成形などの溶融成形に係る成形温度は、溶融成形に使用する樹脂組成物の流動開始温度より10〜60℃高い温度であることが好ましい。成形温度が前記の温度範囲より低いと流動性が低下し易く、成形性の悪化や反射板の強度の低下を招くおそれがある。また、成形温度が前記の温度範囲を越えると、液晶ポリエステルの劣化が著しくなり、反射板の反射率の低下を生じる傾向にある。なお、樹脂組成物の流動開始温度は、液晶ポリエステルの流動温度の測定方法として説明した方法と同様にして、毛細管型レオメーターを用いて求めることができる。
【0041】
本発明の反射板は、可視光領域の光線に対する反射率、特に青色光に対する反射率が極めて良好である。具体的にいうと、波長460nmの光線に対する反射率が70.0%以上の反射率を有する反射板を製造することが可能となる。より高反射率の反射板を求めるならば、反射率75.0%以上の反射板を得ることも可能であり、反射率80.0%以上の反射板を得ることも可能である。なお、ここでいう反射率とは、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められるものである。
【0042】
本発明の反射板は、電気、電子、自動車、機械などの分野で光反射、特に可視光反射にかかわる部材に好適に使用することができる。例えば、ハロゲンランプ、HIDなどの光源装置のランプリフレクターや、LEDや有機ELなどの発光素子を用いた発光装置、表示装置の高強度な反射板として好適に使用することができる。特に、LEDを用いた発光装置に用いる反射板として好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の物性測定は以下に示す方法で行った。
【0044】
(1)反射率
64mm×64mm×1mmの反射板試験片の表面に対して、自記分光光度計(U−3500:(株)日立製作所製)を用いて波長光(測定波長:460nm)に対する拡散反射率の測定を行った。なお、反射率は硫酸バリウムの標準白板の拡散反射率を100%とした時の相対値である。
【0045】
(2)アイゾット衝撃度
樹脂組成物から、射出成形機を用いて長さ64mm、幅12.7mm、厚み6.4mmの試験片を成形し、ASTM D256に準拠して測定した。
【0046】
なお、実施例、比較例で反射板の試験片を得るために使用した充填剤は以下のとおりである。

酸化チタンフィラー :TIPAQUE CR−60(石原産業(株)製)
塩素法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.21μm
(以下、「CR−60」と略称する。)
TIPAQUE CR−50(石原産業(株)製)
塩素法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.25μm
(以下、「CR−50」と略称する。)
SR−1(堺化学(株)製)
硫酸法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.26μm
(以下、「SR−1」と略称する。)
TIPAQUE CR−58(石原産業(株)製)
塩素法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.28μm
(以下、「CR−58」と略称する。)
TITANIX JR−301(テイカ(株)製)
硫酸法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.30μm
(以下、「JR−301」と略称する。)
TITANIX WP0042(テイカ(株)製)
硫酸法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径0.34μm
(以下、「WP0042」と略称する。)
TITANIX JR−1000(テイカ(株)製)
硫酸法で製造された酸化チタンを含有
アルミナ表面処理品,平均粒径1.0μm
(以下、「JR−1000」と略称する。)

ガラス繊維 :EFH75−01(セントラルガラス(株)製)
(以下、「EFH75」と略称する。)
EFDE50−01(セントラルガラス(株)製)
(以下、「EFDE50」と略称する。)
CS03JAPX−1(旭ファイバーグラス(株)製)
(以下、「CS03」と略称する。)
【0047】
実施例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加し反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
その後、1−メチルイミダゾール0.9gを添加し、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
【0048】
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することで、固相重合を行った。得られた液晶ポリエステルの流動開始温度は327℃であった。このようにして得られた液晶ポリエステル1とする。
得られた液晶ポリエステル1に対して、酸化チタンフィラー及びガラス繊維を表1に示す配合割合で配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)製 PCM−30)を用いて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE型)で340℃にて成形し、寸法64mm×64mm×1mmの反射板試験片及びアイゾット強度測定用試験片を得た。この試験片を測定に用いた。結果を表1に示す。なお、反射板試験片の成形には鏡面加工した金型を使用した。
【0049】
実施例2〜5、比較例1〜4
実施例1で用いた液晶ポリエステル1に対し、酸化チタンフィラー及びガラス繊維を表1又は表2に示す配合割合で配合した後、実施例1と同様にして試験片を得て、各種測定を行った。結果を表1又は表2に示す。
【0050】
実施例6
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸358.8g(2.16モル)、イソフタル酸39.9g(0.24モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、さらに1−メチルイミダゾール0.2gを添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
その後、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
【0051】
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から305℃まで5時間かけて昇温し、305℃で3時間保持することで、固相重合を行った。得られた液晶ポリエステルの流動開始温度は357℃であった。このようにして得られた液晶ポリエステル2とする。
得られた液晶ポリエステル2に対して、酸化チタンフィラー及びガラス繊維を表1に示す配分で配合した後、実施例1と同様にして反射板試験片及びアイゾット強度測定用試験片を得て、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例7〜9、比較例5〜7
実施例2で用いた液晶ポリエステル2に対し、酸化チタンフィラー及びガラス繊維を表1又は表2に示す配合割合で配合した後、実施例2と同様にして試験片を得て、各種測定を行った。結果を表1又は表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含有してなり、成分(A)100質量部に対して成分(B)が5〜110質量部である樹脂組成物。
(A)液晶ポリエステル
(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラー
【請求項2】
前記成分(B)が、酸化チタンをアルミナで表面処理してなる酸化チタンフィラーである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(B)が、塩素法により製造された酸化チタンを含む酸化チタンフィラーである請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、成分(B)以外の無機充填剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる反射板。
【請求項6】
JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる、波長460nmの光線に対する反射率が70%以上である請求項5に記載の反射板。
【請求項7】
(i)以下の成分(A)及び(B):
(A)液晶ポリエステル
(B)体積平均粒径が0.27〜0.40μmの酸化チタンフィラー
を含有してなり、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が5〜110質量部である樹脂組成物を得、
(ii)得られた樹脂組成物を射出成形する、
反射板の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の反射板と、
発光素子と、
を備えた発光装置。
【請求項9】
前記発光素子がLEDである請求項8に記載の発光装置。

【公開番号】特開2009−256627(P2009−256627A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62524(P2009−62524)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】