説明

樹脂組成物およびそれからなる光学部品

【課題】高温および高せん断下で加工してもガス発生や発塵が少なく、低着色および高耐熱性の環状オレフィン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂と、下記式(2)で表される基を2個以上有する化合物(B)とを含有する樹脂組成物;


(式(2)中、R14aおよびR14bは独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16は独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂と特定の酸化防止剤とからなる樹脂組成物に関する。
より詳しくは、過酷な加工条件においてもガス発生および発塵が少なく、また成型品が着色したり成型物中にゲルを生じたりせずに光学部品を成型し得る樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度および光線透過率が高く、屈折率の異方性が小さいため、従来の光学フィルムと比べて複屈折性が低いなどの特長を有しており、耐熱性、透明性および光学特性に優れた熱可塑性樹脂として注目されている。
【0003】
そこで上記の特長を利用して、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤および低誘電材料などの電子・光学材料ならびに光半導体封止などの封止材料の分野などにおいて環状オレフィン系樹脂を応用することが検討されている。
【0004】
一方で、近年の各種部材の軽量化、小型化および薄型化といった要求に応えるために、高温・高せん断下での加工が必要となってきている。しかしながら、環状オレフィン系樹脂はその優れた耐熱性のために、加工するには過酷な条件にすることが必要であり、酸化劣化を抑えるために酸化防止剤の添加が必須である。特許文献1および2には環状オレフィン系樹脂と各種酸化防止剤とを含有する樹脂組成物が開示されているが、用いられる酸化防止剤が射出成型や押出し成型の加工温度に耐えられず、1)分解・揮発して金型またはロールを汚染する、2)分解物が副反応を起こし微小なゲルを生成し、これが光学部品の欠陥となる、あるいは3)樹脂加工品が黄色に変色し外観を損ねるなどの問題があった。
【0005】
そのため、上記問題を解決し、高温で射出成型や押出し成型を行っても環状オレフィン系樹脂が本来有する高透明性、低着色および高耐熱性を損なわない樹脂組成物の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2977274号公報
【特許文献2】特開2002−179875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温・高せん断下で加工してもガス発生や発塵が少なく、環状オレフィン系樹脂が本来有する高透明性、低着色および高耐熱性を損なわない樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、環状オレフィン系樹脂に特定のヒンダードフェノール系化合物を含有させることにより、上記問題を解決する樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
〔1〕下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系樹脂(A)と、下記式(2)で表される基を1分子内に2個以上有するフェノール系化合物(B)とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0010】
【化1】

(式(1)中、aおよびbはそれぞれ独立に0または1を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。R4〜R13は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有する基で連結されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基;またはその他の極性基を表す。R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R10またはR11と、R12またはR13とは相互に結合して単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成してもよい。)
【0011】
【化2】

(式(2)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。)
【0012】
〔2〕前記フェノール系化合物(B)が下記要件(B−i)および(B−ii)を満たす〔1〕に記載の樹脂組成物。
(B−i):分子量が800以上
(B−ii):窒素下において300℃で1時間加熱したときの重量減少率が15%以下
【0013】
〔3〕前記フェノール系化合物(B)が、下記式(2−1)で表される化合物であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物。
【0014】
【化3】

(式(2−1)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。Yはn価の基であり、炭素原子数3〜12の鎖状炭化水素基または炭素原子数4〜8の環状炭化水素基を表し、nは1〜4の整数である。)
【0015】
〔4〕前記フェノール系化合物(B)が下記式(2−a)に示す化合物であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
【化4】

〔5〕前記環状オレフィン系樹脂(A)が開環(共)重合水添体(A−2)であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
〔6〕さらに下記要件(C−i)および(C−ii)を満たす含リン化合物(C)を含有し、該含リン化合物(C)が、環状オレフィン系樹脂(A)100重量部に対して0.005〜5重量部含まれることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
(C−i):単一化合物においてはその相対分子質量が400以上、多分散性混合物においてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が400以上、
(C−ii):窒素下において250℃で1時間加熱したときの重量減少率が50%以下
【0018】
〔7〕前記含リン化合物(C)が下記式(3)で表される構造を含むことを特徴とする〔6〕に記載の樹脂組成物。
【0019】
【化5】

(式(3)中、R17およびR18は、それぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表し、m+n=0〜3の整数を表す。)
【0020】
〔8〕前記含リン化合物(C)が下記式(3−a)〜(3−c)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする〔6〕または〔7〕に記載の樹脂組成物。
【0021】
【化6】

〔9〕前記開環(共)重合水添体(A−2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が30,000〜200,000であることを特徴とする〔5〕に記載の樹脂組成物。
【0022】
〔10〕前記開環(共)重合水添体(A−2)のガラス転移温度(Tg)が100〜250℃であることを特徴とする〔5〕または〔9〕に記載の樹脂組成物。
〔11〕前記開環(共)重合水添体(A−2)の芳香環の不飽和結合を除く炭素−炭素二重結合部の水素添加率が90%以上であることを特徴とする〔5〕、〔9〕または〔10〕に記載の樹脂組成物。
【0023】
〔12〕〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の樹脂組成物からなる光学部品。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂に特定のフェノール系化合物を含有させることにより、高温や高せん断下で加工しても分解または揮発によるガス発生および発塵が少なく、環状オレフィン系樹脂が本来有している高透明性、耐熱性および低着色性を損なうこのない樹脂組成物が得られる。
【0025】
また上記フェノール系化合物に加え、特定の含リン化合物を併用すると、フェノール系化合物の含有量を低減しても色相改良効果が認められるため、要求される特性によって品質バランスをコントロールすることができる。
【0026】
したがって、本発明の樹脂組成物は光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤および低誘電材料などの電子・光学材料ならびに光半導体の封止材料などに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の樹脂組成物および該樹脂組成物からなる光学部品について説明する。
本発明の樹脂組成物は、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系樹脂(A)、下記式(2)で表される基を1分子内に2個以上有するフェノール系化合物(B)を含有することを特徴とする。
【0028】
【化7】

式(1)中、aおよびbはそれぞれ独立に0または1を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。R4〜R13は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有する基で連結されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基;またはその他の極性基を表す。R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R10またはR11と、R12またはR13とは相互に結合して単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成してもよい。
【0029】
【化8】

式(2)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。
【0030】
[環状オレフィン系樹脂(A)]
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂(A)は、下記式(1)で表される化合物から誘導される下記A−1〜A−6のいずれかの重合体のうち少なくとも1種である。
A−1;式(1)で表される化合物の開環(共)重合体
A−2;開環(共)重合体(A−1)を水素添加して得られる開環(共)重合水添体
A−3;開環(共)重合体(A−1)をフリーデルクラフト反応により環化した後、水素添加した開環(共)重合水添体
A−4;式(1)で表される化合物の付加(共)重合体
A−5;式(1)で表される化合物と、エチレンまたは一置換エチレンとの付加共重合体A−6;式(1)で表される化合物と、ビニル環状炭化水素および環式ジエンから選ばれる少なくとも1種の単量体との付加共重合体およびその付加共重合水添体
下記式(1)で表される化合物について説明する。
【0031】
【化9】

式(1)中、aおよびbはそれぞれ独立に0または1を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。R4〜R13は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有する基で連結されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基;またはその他の極性基を表す。このうち、R4〜R9は好ましくは水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子を表す。R4〜R9が上記の基であると、式(1)で表される化合物を収率良く製造することができる。R10〜R13はそのいずれかが水素原子であり、好ましくはR10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成するか、R10またはR11と、R12またはR13とは相互に結合して単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成する。R10〜R13が上記の構造であると、式(1)で表される化合物の製造が容易でそれから得られる環状オレフィン系樹脂(A)はガラス転移温度(Tg)が高く、かつ、機械的強度に優れる。
【0032】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基およびプロピル基などのアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基およびプロペニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0033】
上記炭素原子数1〜30の炭化水素基は直接環構造に結合してもよいし、連結基を介して環に結合していてもよい。連結基としては、例えば、炭素原子数1〜10の2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基);酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を有する基(例えば、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−O(CO)−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホン基(−SO2−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−、−CONH−)およびシロキサン結合(−OSi(R)−)(Rはメチル基およびエチル基などのアルキル基)などが挙げられ、これらを複数含む連結基であってもよい。
【0034】
その他の極性基とは、上記連結基を介して結合した炭化水素基以外の極性基のことであり、例えば、水酸基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、イミド基、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルホニル基およびカルボキシル基などが挙げられる。さらに具体的には、上記アルコキシ基としては、メトキシ基およびエトキシ基など;カルボニルオキシ基としては、アセトキシ基およびプロピオニルオキシ基などのアルキルカルボニルオキシ基、ならびにベンゾイルオキシ基などのアリールカルボニルオキシ基;アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基など;アリーロキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基およびビフェニリルオキシカルボニル基など;トリオルガノシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基およびトリエチルシロキシ基など;トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基およびトリエチルシリル基など;アミノ基としては、第一級アミノ基;アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0035】
上記式(1)で表される化合物において、aおよびbはそれぞれ独立に0または1であり、好ましくはa=b=0である。cおよびdはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、好ましくは0〜1の整数、より好ましくはc=0でかつd=0または1である。a〜dがこの範囲だと、式(1)で表される化合物を製造するための原料の入手性および経済性ならびに式(1)で表される化合物の生産性の面で好ましい。
【0036】
式(1)で表される化合物の具体例としては、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0037】
【化10】

トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、
【0038】
【化11】

トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカ−3,8−ジエン
【0039】
【化12】

トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
【0040】
【化13】

テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
【0041】
【化14】

ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
【0042】
【化15】

ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン
【0043】
【化16】

5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(4−フェニルフェノキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
【0044】
【化17】

ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン
【0045】
【化18】

ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンイコセン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−5―メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−シクロヘキセニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(1−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2−ナフチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(4−ビフェニル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリn−プロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリn−ブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン
【0046】
【化19】

および[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12,5][3]デセン]などが挙げられ、このうち特に好ましくはビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカ−3,8−ジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンおよび5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが挙げられる。
上記式(1)で表される化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0047】
(共重合性単量体)
上記(A−1)〜(A−6)を合成するのに用いられる共重合性単量体としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンなどの公知のシクロオレフィンが挙げられる。
【0048】
本発明において、上記環状オレフィン系樹脂は、公知の方法により得ることができ、例えば、特開平1−132626号公報、特開2006−77257号公報および特開2008−955号公報に記載の方法により得られるものを用いることができる。
【0049】
これらの環状オレフィン系樹脂(A−1)〜(A−6)のうち、好ましくは(A−2)〜(A−5)、特に好ましくは(A−2)である。開環(共)重合水添体(A−2)は、耐熱性、機械的強度、加工性、透明性および生産性などに優れるため好ましい。
【0050】
上記環状オレフィン系樹脂(A)の固有粘度[η]inhは好ましくは0.2〜5dL/g、より好ましくは0.3〜3dL/g、特に好ましくは0.3〜1.0dL/gである。
【0051】
上記環状オレフィン系樹脂(A)のテトラヒドロフランを溶媒とし、標準ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は好ましくは30,000〜200,000、より好ましくは32,000〜180,000、特に好ましくは35,000〜160,000の範囲であり、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは1.7〜3.7であり、特に好ましくは2.0〜3.5である。なお、環状オレフィン系樹脂(A)の好ましい態様である開環(共)重合水添体(A−2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は好ましくは30,000〜200,000、より好ましくは31,000〜150,000、特に好ましくは32,000〜120,000である。開環(共)重合水添体(A−2)の重量平均分子量(Mw)が上記の範囲にあると、加工性および強度が両立できるため好ましい。
【0052】
固有粘度[η]inh、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあるとき、環状オレフィン系樹脂(A)の耐熱性、耐水性、耐薬品性および機械的特性が良好である。
【0053】
上記環状オレフィン系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)としては、通常110〜350℃、好ましくは110〜250℃、より好ましくは110〜220℃、特に好ましくは110〜200℃である。Tgが110℃未満の場合、高温条件下での使用時に変形する場合がある。一方、Tgが350℃を超えると成形加工が困難になる場合がある。つまり、Tgが350℃を超えると、成形加工時の加熱温度を高くしなければならず、熱によって樹脂が劣化する可能性が高くなる場合がある。また、環状オレフィン系樹脂(A)の好ましい態様である開環(共)重合水添体(A−2)のガラス転移温度(Tg)は好ましくは100〜250℃、より好ましくは105〜220℃、特に好ましくは110〜210℃である。開環(共)重合水添体(A−2)のガラス転移温度(Tg)が上記の範囲にあると、溶融加工が容易で且つ実用的な耐熱性を有するため好ましい。
【0054】
上記環状オレフィン系樹脂(A)を水素添加する場合、芳香環の不飽和結合を除く炭素-炭素二重結合の水素添加率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。水素添加率が上記範囲にあるとき、耐熱性および着色性がより良好となる。なお、必要に応じて芳香環の不飽和結合も水素添加してもよい。
【0055】
上記環状オレフィン系樹脂(A)には、必要に応じて、例えば、特開平9−221577号公報および特開平10−287732号公報に記載の特定の炭化水素系樹脂、特定の公知の熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、および無機微粒子などを0〜60重量%の量で配合してもよい。
【0056】
[フェノール系化合物(B)]
本発明で用いられるフェノール系化合物(B)は、下記式(2)で表される基を1分子内に2個以上有することを特徴とする。
【0057】
【化20】

式(2)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基を表す。上記炭素原子数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基およびt−ブチル基などのアルキル基が挙げられる。このうち、R15としてはt−ブチル基が好ましく、R16としてはメチル基が好ましい。
【0058】
Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。上記炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基およびt−ブチレン基などのアルキレン基が挙げられ、好ましくはエチレン基が挙げられる。
【0059】
なお、フェノール性化合物(B)は脂肪族エステル構造を有さないのが望ましい。脂肪族エステル構造は熱安定性が不十分であるため、高温加工時に分解し、生じたアルコールやカルボン酸が樹脂組成物と反応することによって微小ゲルを生じる場合があるためである。なお、脂肪族エステル構造とは−CO−O−Rで表され、Rが直鎖または分岐のアルキル基であるものをいう。
【0060】
前記フェノール系化合物(B)は、下記式(2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0061】
【化21】

式(2−1)中、X、R14a、R14b、R15およびR16は上記式(2)と同義であり、Yはn価の基であり、炭素原子数3〜12の鎖状炭化水素基または炭素原子数4〜8の環状炭化水素基を表し、nは1〜4の整数である。
【0062】
前記炭素原子数3〜12の鎖状炭化水素基としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンなどが挙げられ、これらの基のn個の水素が式(2)で表される基で置換されている。また上記鎖状炭化水素基としては、式(2)で表される基以外にも置換基を有していてもよい。
【0063】
前記炭素原子数4〜8の環状炭化水素基としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンなどが挙げられ、これらの基のn個の水素が式(2)で表される基で置換されている。また上記鎖状炭化水素基としては、式(2)で表される基以外にも置換基を有していてもよい。
【0064】
上記フェノール系化合物(B)として具体的には、下記式(2−a)に示す1,1,3-トリス[2-メチル-4-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-5-t-ブチルフェニル]ブタンが挙げられる。
【0065】
【化22】

フェノール系化合物は通常、酸化防止剤として知られ、分子量に対してフェノール構造部分が少ないと、本来の目的である酸化防止効果、すなわち、ラジカル補足能力が小さくなることが知られている。
【0066】
本発明で用いられるフェノール系化合物(B)は、式(2)で表される基のようなフェノール構造部分を1分子内に2個以上有することに加えて、ヒンダード構造を有するため、酸化防止剤の副反応が抑制される。
上記フェノール系化合物(B)の要件(B−i)および(B−ii)を満たすことが好ましい。
【0067】
(B−i):分子量が800以上である。フェノール系化合物(B)は、単一化合物である場合のほか、いろいろな分子量をもつ化合物の混合物(以下「多分散性混合物」という。)である場合がある。単一化合物である場合においては、その相対分子質量が好ましくは800以上であり、より好ましくは800〜3000、特に好ましくは850〜2800、特に好ましくは900〜2500である。一方、多分散性混合物においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が好ましくは800以上、より好ましくは800〜4000、特に好ましくは850〜3500、特に好ましくは900〜3000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜3.0、好ましくは1.02〜2.7、より好ましくは1.03〜2.5である。フェノール系化合物(B)の分子量および分子量分布が上記の範囲にあると、樹脂組成物の加工時のフェノール系化合物(B)の揮発が十分に抑制され、かつ、樹脂成型品中でも酸化防止剤が十分な移行性を有するため長期に渡って酸化劣化が抑制される。本発明では、フェノール系化合物(B)として、単一化合物のみを用いてもよいし、多分散性混合物を用いてもよい。なお、相対分子質量とは炭素の質量を12とした際の分子の質量をいう。
【0068】
(B−ii):窒素下において300℃で1時間加熱したときの重量減少率が15%以下、より好ましくは13%以下、特に好ましくは10%以下である。重量減少率が上記の範囲にあると、熱分解物による金型汚染およびロール汚染を抑制することができる。なお、重量減少率の求め方を説明すると、TG/DTAを用いて試料を窒素雰囲気下で昇温速度40℃/minで室温から300±5℃まで昇温し、1時間ホールドした後、重量を測定する。初期重量および加熱後の重量から重量減少率(%)を求める。
【0069】
上記フェノール性化合物(B)の添加量は、環状オレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、通常0.01〜3重量部、好ましくは0.02〜2.5重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。フェノール性化合物(B)の添加量が上記範囲にあると、本発明の樹脂組成物の酸化劣化を十分に防止することができる。また、上記フェノール性化合物(B)は比較的揮発性が低いが、上記範囲を超えて添加すれば揮発成分の量が増加する傾向にある。また、酸化防止剤は高温下において樹脂の酸化を防止する一方で自身が劣化して着色する場合があり、樹脂の酸化を防止し得る必要量を超えた添加は悪影響を及ぼすことがある。このため、フェノール性化合物(B)の添加量は上記範囲にするのが望ましい。
【0070】
[含リン化合物(C)]
本発明の樹脂組成物は環状オレフィン系樹脂(A)およびフェノール性化合物(B)以外に含リン化合物(C)を含有してもよい。本発明で用いられる含リン化合物(C)は、それ自体の熱安定性はそれほど高くないが、樹脂組成物の色相および加工安定性を改良することができる。ここで、加工安定性とは、例えば、樹脂組成物を加工するときのゲル発生、発煙および発塵などを最低限に抑えることをいう。なお、含リン化合物は、上記含リン化合物(C)を含めて、通常、酸化防止剤として知られる。
含リン化合物(C)としては、下記(C−i)および(C−ii)を満たすものであれば特に構造は限定されない。
【0071】
(C−i):含リン化合物(C)の分子量は、単一化合物である場合においては、その相対分子質量が好ましくは400以上、より好ましくは400〜3000、さらに好ましくは500〜2700、特に好ましくは600〜2500である。多分散性混合物である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が好ましくは400以上、より好ましくは400〜5000、特に好ましくは450〜4500であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜3.0、好ましくは1.02〜2.5、より好ましくは1.03〜2.3である。本発明では、含リン化合物(C)として、単一化合物のみを用いてもよいし、多分散性混合物を用いてもよい。含リン化合物(C)の分子量および分子量分布が上記範囲にあると、樹脂組成物の色相を良好に保ち、ゲル発生を防止し、かつ、発煙および発塵を最低限に抑えることができる。
【0072】
(C−ii):含リン化合物(C)を窒素下において250℃で1時間加熱したときの重量減少率は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。なお、重量減少率の求め方を説明すると、TG/DTAを用いて試料を窒素雰囲気下、昇温速度40℃/minで室温から250±3℃まで昇温し、1時間ホールドした後、重量を測定する。初期重量および加熱後の重量から重量減少率を求める。
【0073】
上記含リン化合物は下記式(3)で表される構造を含むことが好ましい。
【0074】
【化23】

式(3)中、R17およびR18は、それぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表し、m+n=0〜3の整数、あるいはmは2または3、nは0または1を表す。
【0075】
炭化水素基としてはアルキル基およびアリール基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基およびt−ブチル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基の水素原子は他の置換基で置換されていてもよく、特にヒンダードフェノール基で置換されていると着色を十分に抑制することができるため好ましい。アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基およびナフチル基などが挙げられる。また、これらのアリール基の水素原子は他の置換基で置換されていてもよく、例えば、下記式(4)で表される化合物のようにビフェニレン基を介して上記式(3)と対象構造を形成してもよい。このような構造はリン系酸化防止剤の効果を維持しながらも分子量増大による自身の揮発性低減が可能なため好ましい。
【0076】
【化24】

芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基およびアントラセニル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。これらの芳香族基の水素原子は他の置換基で置換されていてもよく、特にt−ブチル基などの嵩高い基で置換されていると、耐加水分解性および耐熱性が向上するため好ましい。また、上記芳香族基はR18と直接または置換基を介して結合してもよい。
【0077】
上記含リン化合物(C)として具体例には、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする混合物(例えばクラリアントジャパン(株)製;ホスタノックスP-EPQ)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル-5-メチル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする混合物(例えば大崎工業(株)製;GSY-P101)、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトおよびビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらのうち、特に好ましくは低揮発性および低着色性の点で、式(3−a)に示すトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、式(3−b)に示す6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンおよび式(3−c)に示すテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル-5-メチル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイトが挙げられる。
【0078】
これらの含リン化合物(C)は1種単独でも、2種以上組み合わせて用いることもできる。2種以上組み合わせて用いる場合、特に式(3−a)、(3−b)または(3−c)に示す化合物を主成分として用いるのが好ましい。
【0079】
【化25】

含リン化合物(C)の添加量は、環状オレフィン系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.005〜5重量部、より好ましくは0.007〜4重量部、特に好ましくは0.01〜3重量部である。含リン化合物(C)の添加量が上記の範囲にあると、樹脂組成物の色相を良好に保ち、ゲル生成を防止し、かつ、発煙および発塵を最低限に抑制することができる。
【0080】
なお、含リン化合物(C)を併用すると、上記フェノール系化合物(B)の含有量を低減しても色相改良効果が認められるため、要求される特性によって品質バランスをコントロールすることができる。
【0081】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)、フェノール系化合物(B)および必要に応じて含リン化合物(C)を溶融混練して製造することができる。
【0082】
上記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、加工性向上剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、染料、顔料、蛍光増白剤、有機充填材、無機充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材および抗菌剤などの公知の添加剤ならびに熱可塑性エラストマーなどの樹脂を添加することができる。
また、溶融混練には、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサーまたはサンドミルなどの混練および分散機などの混練装置が用いられる。
【0083】
[光学部品]
本発明の樹脂組成物は、高透明性、低着色性および高耐熱性を有するので、光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤および低誘電材料などの電子・光学材料ならびに光半導体の封止材料などに好適である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた分析方法を以下に示す。
【0085】
<分析方法>
(1)GPC:ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置(東ソー(株)製HLC-8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL-H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶離液;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度;0.7〜0.8wt%、サンプル注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;RI(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、Mnは標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
(2)NMR:超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定し、共重合組成比および水素添加率を求めた。
(3)対数粘度:ウッベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃で測定した。
(4)ガラス転移温度(Tg):示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、商品名:DSC6220)を用いて、日本工業規格K7121に従って補外ガラス転移温度を求めた。
(5)走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製JSM6360LA型を用いた。
【0086】
[合成例1]
単量体として下記式(1−a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン100g、分子量調節剤として1−へキセン7.2g、およびトルエン200gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0087】
これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/L)0.21mLおよびメタノール変性六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.025mol/L)0.86mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環重合体を得た。
【0088】
得られた開環重合体溶液に水素添加触媒であるクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuHCl(CO)[P(C6533)を0.04g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし160〜165℃で3時間反応させた。
【0089】
反応終了後、得られた反応混合物を多量のメタノール中に沈殿させることにより水素添加体を得た。この水素添加体を1Aという。
得られた水素添加体(1A)の収量は90g(収率90%)、ガラス転移温度(Tg)は163℃、重量平均分子量(Mw)は6.7×104、分子量分布(Mw/Mn)は5.0、対数粘度は0.45dL/g、水素添加率は99.0%以上であった。
【0090】
【化26】

[合成例2]
式(1−a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン144g、式(1−b)に示す2−ノルボルネン6g、分子量調節剤として1−へキセン14.4gおよびトルエン225gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0091】
これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/L)0.34mLおよびメタノール変性六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.025mol/L)1.37mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0092】
得られた開環共重合体溶液に水素添加触媒であるクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuHCl(CO)[P(C6533)を0.06g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし160〜165℃で3時間反応させた。
【0093】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中に沈殿させることにより水素添加物を得た。この水素添加体を2Aという。
得られた水素添加体(2A)の収量は90g(収率90%)、ガラス転移温度(Tg)は154℃、重量平均分子量(Mw)は7.4×104、分子量分布(Mw/Mn)は4.2、対数粘度は0.55dL/g、水素添加率は99.0%以上、共重合組成比[(1−a)由来の構造]/[(1−b)由来の構造]は95.8/4.2(重量比)であった。
【0094】
【化27】

[合成例3]
式(1−a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン113.2g、式(1−b)に示す2−ノルボルネン1.5g、下記式(1−c)に示すジシクロペンタジエン35.3g、分子量調節剤として1−へキセン20.5gおよびトルエン225gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0095】
これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/L)0.34mLおよびメタノール変性六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.025mol/L)1.39mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0096】
得られた開環共重合体溶液に水素添加触媒である(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuH(OCO-Ar-CH2CH2CH2CH2CH3)(CO)[P(C6532)(Arはパラフェニレン基を表す)を0.06g添加し、90℃に昇温した後、水素ガス圧を9〜10MPaとし、さらに160〜165℃まで昇温して3時間反応させた。この水素添加体を3Aという。
【0097】
得られた水素添加体(3A)の収量は90g(収率90%)、ガラス転移温度(Tg)は141℃、重量平均分子量(Mw)は4.4×104、分子量分布(Mw/Mn)は5.1、対数粘度は0.41dL/g、水素添加率は99.0%以上、共重合組成比[(1−a)由来の構造]/[(1−b)由来の構造]/[(1−c)由来の構造]は75.3/1.1/23.6(重量比)であった。
【0098】
【化28】

[合成例4]
前記式(1−a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン133.5g、前記式(1−b)に示す2−ノルボルネン16.5g、分子量調節剤として1−へキセン15.4g、およびトルエン225gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0099】
これにトリエチルアルミニウム(0.6mol/L)のトルエン溶液0.34mL、およびメタノール変性WCl6トルエン溶液(0.025モル/L)1.37mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0100】
次いで、得られた開環共重合体溶液に水素添加触媒であるクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuHCl(CO)[P(C6533)を0.06g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。
【0101】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=126℃、重量平均分子量(Mw)=5.0×104、分子量分布(Mw/Mn)=4.2、対数粘度0.43dL/g、収量90g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であり、共重合組成比は[(1−a)由来の構造]/[(1−b)由来の構造]=89/11(重量比)であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂4Aとする。
【0102】
[合成例5]
式(1−a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン42.0g、下記式(1−d)に示す1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノフルオレン28.0g、分子量調節剤として1−へキセン11.2gおよびトルエン105gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。
【0103】
これにトリエチルアルミニウム(0.2mol/L)のトルエン溶液1.15mLおよびメタノール変性六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.050mol/L)0.67mLを加え、80℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0104】
得られた開環共重合体溶液にトルエン251g加えて希釈し、水素添加触媒である(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuH(OCO-Ar-CH2CH2CH2CH2CH3)(CO)[P(C6532)(Arはパラフェニレン基を表す)を0.02g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、さらに160〜165℃まで昇温して3時間反応させた。この水素添加体を5Aという。
【0105】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=161℃、重量平均分子量(Mw)=8.3×104、分子量分布(Mw/Mn)=3.8、対数粘度0.51dL/g、収量63g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であり、共重合組成比は[(1−a)由来の構造]/[(1−d)由来の構造]=59/41(重量比)であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂5Aとする。
【0106】
【化29】

[合成例6]
上記式(1−c)に示すジシクロペンタジエン45.0g、分子量調節剤として1−へキセン0.3gおよびシクロヘキサン103gを窒素置換した反応容器に仕込み、70℃に加熱した。
【0107】
これにトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/L)0.51mL、2−ブタノールのシクロヘキサン溶液(1.0mol/L)0.51mL、アセトンのトルエン溶液(0.1mol/L)1.70mlおよび六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.025mol/L)6.81mLを加え、70℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0108】
得られた開環共重合体溶液にシクロヘキサン456.4g加えて希釈し、水素添加触媒である(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuH(OCO-Ar-CH2CH2CH2CH2CH3)(CO)[P(C6532)(Arはパラフェニレン基を表す)を0.05g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、さらに160〜165℃まで昇温して3時間反応させた。この水素添加体を6Aという。
【0109】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物
を得た。得られた水素添加体(6A)の収量は40g(収率89%)、ガラス転移温度(Tg)は100℃であった。o−ジクロロベンゼンを用いてGPCを測定することで分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は6.8×104、分子量分布(Mw/Mn)は1.8、水素添加率は99.0%以上であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂6Aとする。
【0110】
[合成例7]
上記式(1−c)に示すジシクロペンタジエン31.5g、下記式(1−e)に示すテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン38.5g、分子量調節剤として1−へキセン0.4gおよびシクロヘキサン165gを窒素置換した反応容器に仕込み、70℃に加熱した。
【0111】
これにトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/L)0.96mL、2−ブタノールのシクロヘキサン溶液(1.0mol/L)0.72mL、アセトンのトルエン溶液(0.1mol/L)2.39mlおよび六塩化タングステン(WCl6)のトルエン溶液(0.025mol/L)9.57mLを加え、70℃で1時間反応させることにより開環共重合体を得た。
【0112】
得られた開環共重合体溶液にシクロヘキサン633g加えて希釈し、水素添加触媒である(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuH(OCO-Ar-CH2CH2CH2CH2CH3)(CO)[P(C6532)(Arはパラフェニレン基を表す)を0.04g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、さらに160〜165℃まで昇温して3時間反応させた。この水素添加体を7Aという。
【0113】
反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物
を得た。得られた水素添加体(7A)の収量は65g(収率93%)、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。o−ジクロロベンゼンを用いてGPCを測定することで分子量を測定した。重量平均分子量(Mw)は4.5×104、分子量分布(Mw/Mn)は2.7、水素添加率は99.0%以上であった。共重合組成比は[(1−c)由来の構造]/[(1−d e)由来の構造]=46/54(重量比)であった。以後、得られた開環共重合水添体を環状オレフィン系樹脂7Aとする。
【0114】
【化30】

[実施例1]
合成例1で得られた水素添加体(1A)100gに対して、フェノール系化合物(B)として式(2−a)に示す1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-t-ブチルフェニル]ブタンを0.3g添加してラボプラストミルにて空気下、280℃で30分間混練し、樹脂組成物を得た。
【0115】
なお、使用したフェノール系化合物(B)の性状を表1に示し、樹脂組成物の調製条件を表2に示す。
【0116】
【化31】

[実施例2]
実施例1において、水素添加体(1A)の代わりに、合成例2で得られた水素添加体(2A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0117】
[実施例3]
実施例1において、水素添加体(1A)の代わりに、合成例3で得られた水素添加体(3A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0118】
[実施例4]
実施例3において、式(2−a)に示す化合物の量を0.3gから1.0gに変更したこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0119】
[実施例5]
実施例3において、水素添加体(3A)および式(2−a)に示す化合物に加えて、さらに含リン化合物(C)として下記式(3−a)に示すトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを0.3g添加したこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
なお、使用した含リン化合物(C)の性状を表1に示す。
【0120】
【化32】

[実施例6]
実施例5において、式(3−a)に示す化合物の代わりに、下記式(3−b)に示す6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンを用いたこと以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を得た。
【0121】
なお、使用した含リン化合物(C)の性状を表1に示す。
【0122】
【化33】

[実施例7]
実施例5において、式(3−a)に示す化合物の代わりに、下記式(3−c)に示すテトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイトを主成分とするリン系酸化防止剤(商品名;大崎工業(株)製GSY−P101)を用いたこと以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を得た。
【0123】
なお、使用した含リン化合物(C)の性状を表1に示す。
【0124】
【化34】

[実施例8]
合成例4で得られた水素添加体(4A)100gに対して、フェノール系化合物(B)として前記式(2−a)に示す1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-t-ブチルフェニル]ブタンを3g添加してラボプラストミルにて空気下、260℃で30分間混練し、樹脂組成物を得た。
【0125】
[実施例9]
実施例1において、水素添加体(1A)の代わりに、合成例5で得られた水素添加体(5A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
なお、樹脂組成物の調製について表3に示す。
【0126】
[実施例10]
実施例1において、水素添加体(1A)の代わりに、合成例6で得られた水素添加体(6A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
なお、樹脂組成物の調製について表3に示す。
【0127】
[実施例11]
実施例1において、水素添加体(1A)の代わりに、合成例7で得られた水素添加体(7A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
なお、樹脂組成物の調製について表3に示す。
【0128】
[比較例1]
実施例3において、式(2−a)に示す化合物の代わりに、下記式(2'−a)に示す化合物を用いたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0129】
なお、式(2'−a)に示す化合物の性状を表1に示し、樹脂組成物の調製について表2に示す。
【0130】
【化35】

[比較例2]
実施例4において、式(2−a)に示す化合物1.0gの代わりに、式(2'−a)に示す化合物1.5gを用いたこと以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0131】
[比較例3]
実施例3において、式(2−a)に示す化合物の代わりに、下記式(2'−b)に示す化合物を用いたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0132】
なお、式(2'−b)に示す化合物の性状を表1に示す。
【0133】
【化36】

[比較例4]
実施例3において、式(2−a)に示す化合物の代わりに、下記式(2'−c)に示す化合物を用いたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物を得た。
【0134】
なお、式(2'−c)に示す化合物の性状を表1に示す。
【0135】
【化37】

<評価方法>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表2および3に示す。
(1)発煙性評価:プラストミル混練時の発煙性を下記の基準で目視観察した。
○ 発煙しなかった
△ ほとんど発煙しなかった
× 発煙した
【0136】
(2)色相評価:樹脂組成物をトルエンに溶解し濃度10重量%の溶液とした後、黄色度(YI)を測定して評価した。測定はスガ試験機(株)製SMカラーコンピューターSM−7−CHを用い、C光2゜視野透過測定を3回行いその平均値を求めた(測定試料:サンプル溶液20g使用、測定用セル:内径60mm、高さ30mmの円筒型ガラスセル)。
【0137】
(3)ゲル評価:樹脂組成物をトルエンに溶解し濃度10重量%の溶液とした後、1.0μm孔径のPTFE製フィルターでろ過した。ろ過後にフィルターを空気下、260℃で30分間焼成することでフィルター上に残留していたトルエン不溶成分(ゲル)を酸化発色(茶変)させ、実体顕微鏡にてその数を数えてろ過面積とろ過量から樹脂組成物1g中のゲル数を計算し、100個/g未満を○、500個/g以上を×とした。なお、ゲルとはフィルター上に平面的に存在し、かつ、焼成により茶変した有機物をいい、繊維形状のもの、および立体的な形状のものは環境由来の異物としてゲル数として数えなかった。
【0138】
(4)透明性評価:プラストミル混練で得られた樹脂組成物の透明性を下記の基準で目視観察した。
○ 透明であった
△ 僅かに白濁した
× 白濁した
表2の結果から、環状オレフィン系樹脂(A)に特定のフェノール系化合物(B)を添加した樹脂組成物は、従来から問題とされてきた加工時の着色、ゲル生成および発煙といった問題をすべて改善できることがわかる。さらに、例えば、実施例4および7の比較結果から、含リン化合物(C)を併用すると、フェノール系化合物(B)の添加量を低減しても色相改良効果が認められるため、要求される特性によって品質バランスをコントロールすることができる。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有する環状オレフィン系樹脂(A)と、下記式(2)で表される基を1分子内に2個以上有するフェノール系化合物(B)とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、aおよびbはそれぞれ独立に0または1を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。R4〜R13は、それぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を有する基で連結されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基;またはその他の極性基を表す。R10とR11、またはR12とR13とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R10またはR11と、R12またはR13とは相互に結合して単環もしくは多環の炭素環または複素環を形成してもよい。)
【化2】

(式(2)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記フェノール系化合物(B)が下記要件(B−i)および(B−ii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
(B−i):分子量が800以上
(B−ii):窒素下において300℃で1時間加熱したときの重量減少率が15%以下
【請求項3】
前記フェノール系化合物(B)が、下記式(2−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化3】

(式(2−1)中、R14aおよびR14bはそれぞれ独立に水素原子または直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜10の炭化水素基、R15およびR16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基または炭素原子数2〜10のアルキレン基を表す。Yはn価の基であり、炭素原子数3〜12の鎖状炭化水素基または炭素原子数4〜8の環状炭化水素基を表し、nは1〜4の整数である。)
【請求項4】
前記フェノール系化合物(B)が下記式(2−a)に示す化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化4】

【請求項5】
前記環状オレフィン系樹脂(A)が開環(共)重合水添体(A−2)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに下記要件(C−i)および(C−ii)を満たす含リン化合物(C)を含有し、該含リン化合物(C)が、環状オレフィン系樹脂(A)100重量部に対して0.005〜5重量部含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
(C−i):単一化合物においてはその相対分子質量が400以上、多分散性混合物においてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が400以上、
(C−ii):窒素下において250℃で1時間加熱したときの重量減少率が50%以下
【請求項7】
前記含リン化合物(C)が下記式(3)で表される構造を含むことを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
【化5】

(式(3)中、R17およびR18は、それぞれ独立に炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Arは芳香族基を表し、m+n=0〜3の整数を表す。)
【請求項8】
前記含リン化合物(C)が下記式(3−a)〜(3−c)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項6または7に記載の樹脂組成物。
【化6】

【請求項9】
前記開環(共)重合水添体(A−2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が30,000〜200,000であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記開環(共)重合水添体(A−2)のガラス転移温度(Tg)が100〜250℃であることを特徴とする請求項5または9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記開環(共)重合水添体(A−2)の芳香環の不飽和結合を除く炭素−炭素二重結合の水素添加率が90%以上であることを特徴とする請求項5、9または10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物からなる光学部品。

【公開番号】特開2012−17359(P2012−17359A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153878(P2010−153878)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】