説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】
生分解性ポリマーを含有し、成形性、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少なく、且つモールドデポジット性に極めて優れた樹脂組成物、およびそれからなる成形品の提供。
【解決手段】
ポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計が100重量部である樹脂組成物に対して、さらに水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を有するカルボン酸の金属塩であって、かつ、ギ酸と反応してカルボン酸を形成し、ギ酸と反応したカルボン酸が(i)縮重合および/または(ii)自己縮合して環化する性質を有するカルボン酸の金属塩(C)を0.01〜3重量部、ヒドラジド化合物(D)0.03〜0.08重量部を配合してなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマーを含有し、成形性、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少なく、且つモールドデポジット性に極めて優れた樹脂組成物、およびこの樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石資源の枯渇問題がクローズアップされ、特にプラスチック材料としては、植物資源由来の樹脂からなるバイオポリマーが注目されている。これらの中でも、ポリ乳酸樹脂はモノマーである乳酸が、トウモロコシやサツマイモ等の植物資源から微生物を利用した発酵法により安価に製造され、融点も約170℃と高く、溶融成形可能であることから、実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるには限界があった。例えば、ポリ乳酸樹脂を射出成形する場合には、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とすること、および成形時や熱処理時の変形が大きいことなどの実用的に大きな問題があった。また、ポリ乳酸樹脂は耐熱性や耐候性、特に長期耐熱性に課題があり、高温下で長時間使用すると、強度が大きく低下するといった問題があった。長期耐熱性や耐候性の改善を目的に、特許文献1には安定剤や耐候剤が検討されているが、その効果は不十分であった。
【0004】
これらの問題を解決するため、特許文献2ではポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂の混合物に、ホルムアルデヒド捕捉剤としてヒドラジド化合物、さらに酸化防止剤を配合することで、優れた成形性、機械特性、耐熱性等が得られることが開示されている。しかしながら、該手法では成形時および成形品からのホルムアルデヒド発生量はそれ程低減できておらず、また安定剤の配合量が適切でないため、射出成形すると金型表面に安定剤成分が付着し、モールドデポジット性が良くない。
【0005】
一方で、ポリアセタール樹脂は、バランスの取れた機械的性質、耐熱性、潤滑性、耐薬品性に優れることから、自動車部品、電気・電子機器部品、一般機能部品等に広く利用されているが、昨今は成形品からの揮発性有機化合物(VOC)の発生低減、より詳しくは、ホルムアルデヒドの重合体であるポリアセタール樹脂において熱分解や紫外線分解等により発生するホルムアルデヒドの抑制が求められている。特に、自動車内装部品や家庭電化製品用部品、または精密電気・電子機器用部品、事務所、オフィスビル、個人住宅、集合住宅の室内機能部品、および装飾用部品においては、その使用環境が日光により時には高温となる場合や紫外線が当たる場合があり、限られた容積の密閉された室内・機器内ではVOCの発生低減が求められている。
【0006】
これらの問題を解決するため、特許文献3にはポリアセタール樹脂に特定のカルボン酸金属塩、および熱安定剤としてメラミンや酸化防止剤を配合することで、成形時や加熱時のホルムアルデヒド発生量の低減や熱安定性が向上することが開示されている。しかしながら、該手法ではある程度ホルムアルデヒド発生量の低減は可能であるが、シックハウス症候群対策としてはまだ十分とは言えず、且つ植物資源由来のポリマーを使用していない。
【特許文献1】特開平6−184417号公報
【特許文献2】特開2003−321601号公報
【特許文献3】特開2005−330463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生分解性ポリマーを含有し、成形性、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少なく、且つモールドデポジット性に極めて優れた樹脂組成物、およびそれからなる成形品の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計が100重量部である樹脂組成物に対して、さらにカルボン酸の金属塩であって、且つ、ギ酸と反応してカルボン酸を形成し、そのカルボン酸が縮重合および/または自己縮合して環化する性質を有するカルボン酸の金属塩(C)を0.01〜3重量部、ヒドラジド化合物(D)0.01〜0.08重量部を配合することを特徴とするものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計が100重量部である樹脂組成物に対して、さらに水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を有するカルボン酸の金属塩であって、かつ、ギ酸と反応してカルボン酸を形成し、ギ酸と反応したカルボン酸が(i)縮重合および/または(ii)自己縮合して環化する性質を有するカルボン酸の金属塩(C)を0.01〜3重量部、ヒドラジド化合物(D)0.03〜0.08重量部を配合してなる樹脂組成物、
(2)ポリ乳酸樹脂(A)の配合量がポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して、10重量部以上99重量部以下であることを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物、
(3)前記(C)カルボン酸の金属塩が、下記一般式(I)で表されるカルボン酸の金属塩である(1)または(2)記載の樹脂組成物、
【0010】
【化1】

【0011】
(ただし、式中R1、R2は水素原子および炭素数10以下の有機基であり、同一であっても異なっていても良く、m、n、m+nはそれぞれ0から5までの整数であり、またXは水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる基を表す。)
(4)前記一般式(I)で表されるカルボン酸が、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アミノ酢酸、2−アミノ−プロピオン酸、3−アミノプロピオン酸、2−アミノ−酪酸、グルタミン酸、L−アラニンおよびβーアラニンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(3)に記載の樹脂組成物、
(5)さらに酸化防止剤(E)をポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して0.01〜3重量部配合してなる(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物、および
(6)(1)〜(5)のいずれか記載の樹脂組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、成形性、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少なく、且つモールドデポジット性に極めて優れた樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂(A)とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分としては、全単量体成分中通常30モル%以下の含有量とするのが好ましく、10モル%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂(A)を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂(A)の総乳酸成分の内、L体が70%以上含まれるかあるいはD体が70%以上含まれることが好ましく、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることがより好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが更に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることがとりわけ好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0015】
ポリ乳酸樹脂(A)の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0016】
ポリ乳酸樹脂(A)の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂(A)は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより、融点が160℃以上のポリ乳酸は、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることにより得ることができる。
【0017】
かかるポリ乳酸樹脂(A)の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0018】
本発明で使用するポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を有するホモポリマー、またはコポリマーであるが、本発明では主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有する、アセタールコポリマーを使用することが好ましい。
【0019】
代表的なアセタールコポリマーの製造方法の例としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソラン等の共重合成分を、シクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型撹拌機の中へ、トリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去することにより製造する方法等が挙げられる。
【0020】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTM D1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、温度190℃、測定荷重2,160gの条件下において測定したMFRが0.1〜100g/10分の範囲のものであることが好ましく、1.0〜50g/10分のものであることが特に好ましい。
【0021】
本発明のポリオキシメチンレン樹脂組成物に使用するカルボン酸の金属塩(C)としては、水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を有するカルボン酸の金属塩であって、かつ、ギ酸と反応してカルボン酸を形成し、ギ酸と反応したカルボン酸が(i)縮重合および/または(ii)自己縮合して環化する性質を有するカルボン酸の金属塩(C)を使用する。
【0022】
このようなカルボン酸の金属塩を、以下、単にカルボン酸の金属塩(C)と記すことがある。
【0023】
前記(C)カルボン酸の金属塩は、下記一般式(I)で表されるカルボン酸の金属塩であることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
(ただし、式中R1、R2は水素原子および炭素数10以下の有機基であり、同一であっても異なっていても良く、m、n、m+nはそれぞれ0から5までの整数であり、またXは水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる基を表す。)
ここで、Xは、水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基、アルコキシル基からなる群から選ばれた基であり、なかでも水酸基、アミノ基であることが好ましい。Xの具体例としては水酸基、ホルミル基、アミノ基、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられ、なかでも水酸基、アミノ基であることが好ましい。R1、R2は水素原子および炭素数10以下の有機基であり、これらは同一であっても異なっていてもよく、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられ、なかでも水素原子、メチル基、アミノ基、カルボキシル基であることが好ましい。また、m、nはそれぞれ0から5までの整数を表すが、0から2までの整数であることが好ましい。さらにm+nは0から5までの整数であり、0から4までの整数であることが好ましい。このようにX、R1、R2を選択すること、およびm、nを上記範囲の数とすることにより、カルボン酸が、縮重合したり、自己縮合して環化したりする性質を発揮しやすくなり好ましい。
【0026】
前記一般式(I)で表されるカルボン酸として、好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂環族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。その中でも、特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。
【0027】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、具体的には、モノヒドロキシモノカルボン酸、モノヒドロキシジカルボン酸、モノヒドロキシトリカルボン酸、ジヒドロキシモノカルボン酸、ジヒドロキシジカルボン酸、ジヒドロキシトリカルボン酸、トリヒドロキシモノカルボン酸、トリヒドロキシジカルボン酸、トリヒドロキシトリカルボン酸等が、好ましく挙げられる。具体的な化合物を以下に例示する。
【0028】
モノヒドロキシモノカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシ−n−酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ−n−吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸、α−ヒドロキシ−n−カプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、2−エチル−2−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルヘキサン酸、2−ヒドロキシ−2,4−ジメチルペンタン酸、ヒドロアクリル酸、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシ−n−吉草酸、β−ヒドロキシイソ吉草酸、α−エチルヒドロアクリル酸、α−ヒドロキシアクリル酸、ビニルグリコール酸、プロペニルグリコール酸が挙げられる。
【0029】
モノヒドロキシジカルボン酸としては、ヒドロキシマロン酸、イソリンゴ酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジカルボン酸、1−ヒドロキシブタン−1,1−ジカルボン酸、1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1,1−ジカルボン酸、2−ヒドロキシエタン−1,1−ジカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−メチルプロパン−1,1−ジカルボン酸、1−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,1−ジカルボン酸、リンゴ酸、α−メチルリンゴ酸、α−ヒドロキシ−α’−メチルコハク酸、α−ヒドロキシ−α’,α’−ジメチルコハク酸、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルコハク酸、α−ヒドロキシ−α’−エチルコハク酸、α−ヒドロキシ−α’−メチル−α−エチルコハク酸、トリメチルリンゴ酸、α−ヒドロキシグルタル酸、β−ヒドロキシグルタル酸、β−ヒドロキシ−β−メチルグルタル酸、β−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタル酸、α−ヒドロキシスベリン酸、α−ヒドロキシセバシン酸が挙げられる。
【0030】
モノヒドロキシトリカルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸が挙げられる。
【0031】
ジヒドロキシモノカルボン酸としては、グリセリン酸、2,3−ジヒドロキシブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸、3,4−ジヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−(1’−メチルエチル)ブタン酸が挙げられる。
【0032】
ジヒドロキシジカルボン酸としては、酒石酸、メチル酒石酸、ジメチル酒石酸、α,β−ジヒドロキシグルタル酸、α,γ−ジヒドロキシグルタル酸、α,γ−ジヒドロキシ−β−メチルグルタル酸、α,γ−ジヒドロキシ−β−エチル−β−メチルグルタル酸、α,γ−ジヒドロキシ−α,γ−ジメチルグルタル酸、α,δ−ジヒドロキシアジピン酸、β,γ−ジヒドロキシアジピン酸、2,5−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−2−メチルヘキサン二酸、ジヒドロキシフマル酸、ジヒドロキシマレイン酸が挙げられる。
【0033】
ジヒドロキシトリカルボン酸としては、1,2−ジヒドロキシエタン−1,2,2−トリカルボン酸、1,2−ジヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、1,3−ジヒドロキシプロパン−1,1,3−トリカルボン酸が挙げられる。
【0034】
トリヒドロキシモノカルボン酸としては、トリヒドロキシ酪酸、トリヒドロキシイソ酪酸、3,4,5−トリヒドロキシヘキサン酸が挙げられる。また、トリヒドロキシジカルボン酸としては、トリヒドロキシグルタル酸が挙げられる。
【0035】
前記一般式(I)で表されるカルボン酸は、特に好ましくはグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸であり、中でもリンゴ酸、クエン酸、酒石酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を用いることもできる。
【0036】
また、前記一般式(I)で表されるカルボン酸は、アミノ基を有するカルボン酸であることも好ましく、その中でもアミノ酢酸、2−アミノ−プロピオン酸、3−アミノプロピオン酸または2−アミノ−酪酸、グルタミン酸、L−アラニン、βーアラニンが好ましい。
【0037】
また本発明の樹脂組成物においてカルボン酸の金属塩(C)を構成する金属としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、マンガン、鉄、銀であることが好ましく、アルカリ金属としては、リチウム、ルビジウム、セシウム、カリウム、ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、その中でもカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムがより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物に使用するカルボン酸の金属塩(C)は、好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸の金属塩、脂環族ヒドロキシカルボン酸の金属塩、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩、およびアミノ基を有するカルボン酸の金属塩等が挙げられる。その中でも、特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸の金属塩が好ましい。具体的には、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、および酒石酸カリウムナトリウムを好適な例として挙げることができる。より好ましくは、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、および酒石酸水素カリウムであり、特に乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸ナトリウムを使用すると、機械的物性の低下がなく、色調および熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物において、カルボン酸の金属塩(C)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.01〜2重量部、特に好ましくは0.03〜1重量部である。0.001重量部未満では熱安定性の改善が不十分であり、3重量部を超えると樹脂組成物の分解、発泡を引き起こし、安定性を損ねるため好ましくない。
【0040】
さらに、本発明では、ホルムアルデヒド捕捉剤として、ヒドラジド化合物(D)を使用する。ヒドラジド化合物の種類としては、モノカルボン酸ヒドラジド、ジカルボン酸モノヒドラジド、ジカルボン酸ジヒドラジド、およびポリカルボン酸ポリヒドラジド等のヒドラジド化合物が挙げられ、中でもモノカルボン酸ジヒドラジド、およびジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0041】
モノカルボン酸ジヒドラジドとしては、カルボニルジヒドラジドが具体例として挙げられる。また、ジカルボン酸ジヒドラジドとしては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジド等が具体例として挙げられる。
【0042】
上記の中でも特にセバシン酸ジヒドラジドが好ましい。これらの化合物は1種、または2種以上を混合して用いることも可能である。
【0043】
本発明において、ヒドラジド化合物(D)の配合量が重要であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して0.03〜0.08重量部、好ましくは0.05〜0.08重量部である。ヒドラジド化合物(D)の配合量が上記の範囲未満では加熱により発生したホルムアルデヒドの捕捉作用が不十分であり、上記の範囲を超えると成形時にモールドデポジットとして金型に付着するため好ましくない。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、さらに酸化防止剤(E)を添加しても良い。本発明で使用する酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト化合物、チオエーテル化合物、ビタミン系化合物などを挙げることができる。
【0045】
ヒンダードフェノール化合物の例としては、n‐オクタデシル‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、n‐オクタデシル‐3‐(3’‐メチル‐5’‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、n‐テトラデシル‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、1,6‐ヘキサンジオール‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、1,4‐ブタンジオール‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9‐ビス[2‐{3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ}‐1,1‐ジメチルエチル]2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’‐ビス‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’‐テトラメチレン‐ビス‐3‐(3’‐メチル‐5’‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N‐サリチロイル‐N’‐サリチリデンヒドラジン、3‐(N‐サリチロイル)アミノ‐1,2,4‐トリアゾール、N,N’‐ビス[2‐{3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’‐ヘキサメチレンビス‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド等をあげることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6‐ヘキサンジオール‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’‐ヘキサメチレンビス‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドである。ヒンダードフェノール系化合物の具体的な商品名としては、旭電化工業社の“アデカスタブ”AO−20,AO−30,AO−40,AO−50,AO−60,AO−70,AO−80,AO−330、チバスペシャリティケミカル社製“イルガノックス”245,259,565,1010,1035,1076,1098,1222,1330,1425,1520,3114,5057、住友化学社の“スミライザー”BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS、サイアナミド社の“サイアノックス”CY−1790などが挙げられる。
【0046】
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。ホスファイト系化合物の具体的な商品名としては、旭電化工業社の“アデカスタブ”PEP−4C,PEP−8,PEP−11C,PEP−24G,PEP−36、HP−10、2112、260、522A、329A、1178、1500、C、135A、3010、TPP、チバスペシャリティケミカル社の“イルガフォス”168、住友化学社の“スミライザー”P−16、クラリアント社の“サンドスタブ” P−EPQ、GE社の“ウエストン”618、619G、624などが挙げられる。
【0047】
チオエーテル系化合物の具体的な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネー)などが挙げられる。チオエーテル系化合物の具体的な商品名としては、旭電化工業社の“アデカスタブ”A0−23、AO−412S、AO−503A、チバスペシャリティケミカル社の“イルガノックス”PS802、住友化学社の“スミライザー”TPL−R、TPM、TPS、TP−D、吉富社のDSTP、DLTP、DLTOIB、DMTP、シプロ化成社の“シーノックス”412S、サイアミド社の“サイアノックス”1212などが挙げられる。
【0048】
ビタミン系化合物の具体例としては、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコフェトリエノール、d−γ−トコフェトリエノール、d−δ−トコフェトリエノールなどの天然品、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、ニコチン酸dl−α−トコフェロールなどの合成品を挙げることができる。ビタミン系酸化防止剤の具体的な商品名としては、エイザイ社の“トコフェロール”、チバスペシャリティケミカル社の“イルガノックス”E201などが挙げられる。
【0049】
本発明において、酸化防止剤(E)の配合量としては、ポリ乳酸樹脂(A)とポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.3重量部である。0.01重量部未満では熱安定性の改善が不十分であるため、成形時にホルムアルデヒドが発生しやすく、3重量部を超えると成形品表面にブリードアウトして外観を損ねたり、モールドデポジット性が低下したりするため好ましくない。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、無機充填剤、有機補強剤、核剤、可塑剤、離型剤、光安定剤、粘着剤、金属石鹸のような滑剤、耐加水分解改良剤、接着助剤などの添加剤を任意に配合することができる。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド等)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体等の軟質ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等)等の少なくとも1種以上をさらに配合することができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物においては、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計量を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂の配合量が10〜99重量部であることが好ましく、30〜99重量部であることがより好ましく、50〜99重量部であることが一層好ましい。このような範囲のものとすることによって、成形性、機械特性に一層優れた効果を発現させることができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸樹脂(A)、ポリアセタール樹脂(B)、カルボン酸の金属塩(C)、ヒドラジド化合物(D)および必要に応じて酸化防止剤(E)、その他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が好ましく用いられる。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、生分解性ポリマーを含有し、成形性、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少なく、且つモールドデポジット性に極めて優れた特性を持つ組成物であり、射出成形や押出成形、ブロー成形等の方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がより一層好ましく、一方成形品の変形抑止の観点から、120℃以下が好ましく、110℃以下がさらに好ましく、100℃以下がより一層好ましい。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品等が挙げられる。また、これらの成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、および日用品等各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0055】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0056】
なお、樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
(1)試験片作成
型締圧力が80トンである射出成形機(株式会社小松製作所製FKS−80HG)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、成形サイクル60秒の成形条件にてASTM1号ダンベルおよび1/8インチ厚のアイゾッド衝撃試験片を作成した。
(2)モールドデポジット性
型締圧力が80トンである射出成形機(株式会社小松製作所製FKS−80HG)を用いて、シリンダー温度240℃、金型温度30℃、成形サイクル10秒にて1mm厚の角板をモールドデポジットが付着するまで連続成形した。100ショット毎に成形機を停機させ、金型キャビティ内を目視観察し、モールドデポジットの付着が確認されたショット数をモールドデポジット性とした。
(3)ホルムアルデヒド発生量
耐熱性に優れた容器内に上記射出成形で得られたアイゾッド衝撃試験片を入れ窒素置換して密栓し、65℃の熱風オーブン中で2時間加熱処理したときのホルムアルデヒド発生量を、北川式ガス検知管(光明理化学工業株式会社製)にて測定した。
(4)引張強さ
上記射出成形で得られた試験片を23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、ASTM D638に準じて引張試験を実施した。
【0057】
実施例および比較例で用いたポリ乳酸樹脂(A)、ポリアセタール樹脂(B)、カルボン酸の金属塩(C)、ホルムアルデヒド捕捉剤(D)、酸化防止剤(E)の内容を下記に示す。
【0058】
・ポリ乳酸樹脂(A)
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂を使用した。
【0059】
・ポリアセタール樹脂(B)
ポリアセタールコポリマーである東レ株式会社製アミラスS761を使用した。
【0060】
・カルボン酸の金属塩(C)
乳酸ナトリウム(C−1)、クエン酸カルシウム(C−2)、クエン酸三カリウム(C−3):何れも関東化学株式会社製のものを使用した。
【0061】
・飽和脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩
12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C−4):大日化学製ダイワックスOHCを使用した。
【0062】
・金属の水酸化物
水酸化カルシウム(C−5):関東化学株式会社製のものを使用した。
【0063】
・ホルムアルデヒド捕捉剤(D)
セバシン酸ジヒドラジド(D−1)、イソフタル酸ジヒドラジド(D−2)、アジピン酸ジヒドラジド(D−3)、メラミン(D−4):何れも日本ヒドラジン工業株式会社製のものを使用した。
【0064】
・酸化防止剤(E)
トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}:チバスペシャリティ・ケミカルズ株式会社製イルガノックス245を使用した。
【0065】
[実施例1〜7]
表1に示す実施例1〜7に示すように、ポリ乳酸樹脂(A)80重量部とポリアセタール樹脂(B)20重量部である樹脂組成物に対して、特定のカルボン酸の金属塩(C−1〜C−3)およびヒドラジド化合物(D−1〜D−3)を適量配合することで、機械特性を損なうことなく、モールドデポジット性が良好で且つホルムアルデヒド発生量を極めて低く抑制できていることが分かる。
【0066】
【表1】

【0067】
[比較例1〜6]
表2に示す比較例において、カルボン酸の金属塩以外のもの(C−4、C−5)およびヒドラジド化合物以外のもの(D−4)では、ホルムアルデヒド発生抑制効果が不十分であり、且つモールドデポジット性も低いレベルである。
【0068】
また、カルボン酸の金属塩が多すぎると樹脂が分解を起こし、結果としてホルムアルデヒド発生量が多く、モールドデポジット性、機械特性が低下している。一方、ヒドラジド化合物の配合量が少なすぎるとホルムアルデヒド発生抑制効果が低下し、多すぎるとホルムアルデヒド発生量は抑制されるが、モールドデポジット性が極端に低下している。
【0069】
【表2】

【0070】
[実施例8〜12]
表3に示す実施例8〜12において、実施例1〜7とは逆に、ポリ乳酸樹脂(A)20重量部とポリアセタール樹脂(B)80重量部としても、特定のカルボン酸の金属塩(C−2、C−3)およびヒドラジド化合物(D−1、D−3)を適量配合することで、機械特性を損なうことなく、モールドデポジット性が良好で且つホルムアルデヒド発生量を極めて低く抑制できていることが分かる。
【0071】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の樹脂組成物は、成形時のモールドデポジット性に極めて優れているため、生産効率が良く、且つ植物資源由来の生分解性ポリマーを含有するため、石油枯渇までの年月を延ばすことができる。さらに、機械特性に優れ、成形時や成形品からのホルムアルデヒド発生量が少ないことから、電気・電子機器部品、一般機能部品等の用途に極めて実用的かつ有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計が100重量部である樹脂組成物に対して、さらに水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を有するカルボン酸の金属塩であって、かつ、ギ酸と反応してカルボン酸を形成し、ギ酸と反応したカルボン酸が(i)縮重合および/または(ii)自己縮合して環化する性質を有するカルボン酸の金属塩(C)を0.01〜3重量部、ヒドラジド化合物(D)0.03〜0.08重量部を配合してなる樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂(A)の配合量がポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して、10重量部以上99重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)カルボン酸の金属塩が、下記一般式(I)で表されるカルボン酸の金属塩である請求項1または2記載の樹脂組成物。
【化1】

(ただし、式中R1、R2は水素原子および炭素数10以下の有機基であり、同一であっても異なっていても良く、m、n、m+nはそれぞれ0から5までの整数であり、またXは水酸基、ホルミル基、アミノ基、エステル基およびアルコキシル基からなる群から選ばれる基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(I)で表されるカルボン酸が、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アミノ酢酸、2−アミノ−プロピオン酸、3−アミノプロピオン酸、2−アミノ−酪酸、グルタミン酸、L−アラニンおよびβーアラニンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに酸化防止剤(E)をポリ乳酸樹脂(A)およびポリアセタール樹脂(B)の合計100重量部に対して0.01〜3重量部配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2007−254587(P2007−254587A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80541(P2006−80541)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】