説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】
本発明は、透明性、耐熱性および流動性に優れるポリ乳酸樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【解決手段】
(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂を重量比が90/10〜10/90で配合してなる樹脂組成物であって、(A)ポリ乳酸系樹脂が、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれ、かつ、重量平均分子量が10万以上、20万以下であり、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量5万〜45万かつシンジオタクチシチー45%以上、かつガラス転移温度が110℃以上のメタクリル系樹脂である樹脂組成物であって、樹脂組成物中におけるメタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比(シンジオタクチシチー/アイソタクチシチー)が、2.5〜8.5である樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものであり、詳しくは、透明性、耐熱性および流動性に優れるポリ乳酸系樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、地球環境保全の見地から、土中や水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目されており、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能な生分解性ポリマーとして、例えばポリヒドロキシブチレートやポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなる脂肪族ポリエステルおよびポリ乳酸樹脂などがよく知られている。これらの中でも、ポリ乳酸樹脂は、モノマーである乳酸を、とうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により安価に製造できるようになり、また、透明性を有し、融点もおよそ170℃と高く、溶融成形可能なバイオポリマーとして期待されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂はガラス転移温度が60℃付近にあり、この温度近傍での熱変形や剛性低下が大きいため、各種成形品として用いる場合には、通常の使用条件においても熱変形しやすく使用が困難になるという問題点があり、耐熱性に優れるポリ乳酸系材料が望まれていた。
【0004】
さらに、射出成形品とする場合には、射出成形工程での成形加工性の点で、流動性に優れることが重要であり、透明性、耐熱性および流動性のいずれにも優れるポリ乳酸系材料が望まれていた。
【0005】
特許文献1には、ポリ乳酸とアクリレートポリマーからなる樹脂組成物に関し、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られることが記載されているが、ポリ乳酸の透明性を維持することについては、一切開示はなく、実施例においても、耐熱性は向上するものの透明性および流動性については例示がなく、透明性、耐熱性および流動性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段について全く示唆されていない。
【0006】
特許文献2には、ポリ乳酸を含むα−ヒドロキシカルボン酸重合体とポリ(メタ)アクリレートからなる樹脂組成物に関し、加水分解性に優れる樹脂組成物が得られることが記載されており、特許文献3には、ポリ乳酸とアクリル系化合物からなる樹脂組成物に関し、成形加工性に優れる樹脂組成物が得られることが記載されているが、いずれも耐熱性および流動性については、一切開示はなく、透明性、耐熱性および流動性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段について全く示唆されていない。
【0007】
特許文献4には、ポリ乳酸系重合体とアクリル系重合体からなる樹脂組成物に関し、透明性および耐熱性のいずれにも優れる樹脂組成物が得られることが記載されており、特許文献5には、ポリ乳酸とポリ(メタ)アクリレートからなる樹脂組成物に関し、透明性および耐熱性のいずれにも優れる樹脂組成物からなる二軸延伸フィルムが得られることが記載されており、特許文献6には、ポリ乳酸とポリメチルメタクリレートからなる樹脂組成物に関し、透明性および耐熱性のいずれにも優れる樹脂組成物が得られることが記載されており、非特許文献1および2には、ポリ乳酸とポリメチルメタクリレートを混合することにより、ガラス転移温度が向上することが記載されているが、いずれも流動性については、一切開示はなく、また、いずれも耐熱性向上効果が不十分であり、さらなる改良が求められており、透明性、耐熱性および流動性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段について全く示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5300576号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開平8−59949号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開2002−155207号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2004−269720号公報(第1−2頁)
【特許文献5】国際公開特許第2004/87812号公報(第1−3頁)
【特許文献6】特開2005−171204号公報(第1−2頁)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Polymer Preprints Japan,42(3),1180(1993)
【非特許文献2】Polymer,39(26),6891(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、透明性、耐熱性および流動性に優れるポリ乳酸系樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物であって、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量5万〜45万かつシンジオタクチシチー40%以上のメタクリル系樹脂である樹脂組成物。
(2)(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物であって、(B)メタクリル系樹脂が下記条件の少なくとも一つを満たす2種以上のメタクリル系樹脂を含む樹脂組成物、
(a)ガラス転移温度の差が10℃以上
(b)シンジオタクチシチーの差が3%以上
(3)(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量5万〜45万かつシンジオタクチシチー40%以上であるメタクリル系樹脂である(2)に記載の樹脂組成物、
(4)(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、ガラス転移温度が110℃以上であるメタクリル系樹脂である(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(5)(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の重量比((A)ポリ乳酸系樹脂/(B)メタクリル系樹脂)が90/10〜10/90である(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(6)(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物であって、樹脂組成物中における(B)メタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比(シンジオタクチシチー/アイソタクチシチー)が、3.0〜8.0である樹脂組成物、および
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明性、耐熱性および流動性に優れるポリ乳酸系樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いられる(A)ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。
【0015】
本発明においては、耐熱性の点で、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸を用いることが好ましい。すなわち、(A)ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0016】
(A)ポリ乳酸系樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、耐熱性の点で、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、さらに好ましくは8万以上、特に好ましくは10万以上、最も好ましくは13万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、流動性の点で、好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、より好ましくは25万以下、さらに好ましくは20万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0017】
(A)ポリ乳酸系樹脂の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。ここでいう融点とは、示差走査型熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークのピークトップの温度である。
【0018】
(A)ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
【0019】
本発明において、(B)メタクリル系樹脂とは、メタクリル酸メチル成分単位を主成分、好ましくは70%以上含むものであればよく、他のビニル系単量体成分単位を好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下共重合した共重合体でもよい。その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。また、耐熱性、低吸湿性、表面硬度の点で、ラクトン環、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体が好ましい。さらに、環構造を主鎖に含有する共重合体を用いる場合には、環構造を含有しないメタクリル系樹脂を併用することがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量5万〜45万かつシンジオタクチシチーが40%以上のメタクリル系樹脂である。このような条件を満たすメタクリル系樹脂を用いることで、ポリ乳酸樹脂との分子間相互作用が増大し親和性が向上するため、透明性および耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、耐熱性および流動性の点で、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量7万〜20万であることが好ましく、9万〜15万がより好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0022】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、耐熱性の点で、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、シンジオタクチシチー45%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましく、流動性の点で、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。また、(B)メタクリル系樹脂のヘテロタクチシチーは、耐熱性の点で、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、流動性の点で、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、(B)メタクリル系樹脂のアイソタクチシチーは、耐熱性の点で、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、流動性の点で、5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定において、0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmに観察される直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表した値である。
【0023】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、耐熱性の点で、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、ガラス転移温度が80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、115℃以上が特に好ましく、120℃以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、流動性の点で、150℃以下が好ましい。ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121に記載されている方法に準じて測定した値であり、DSC測定により、20℃/分で昇温した時の中間点ガラス転移温度である。本発明においては、(B)メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度が110℃以上であるメタクリル系樹脂を少なくとも1種含むものであることが好ましい。
【0024】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、流動性の点で、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、230℃の温度かつ37.2Nの荷重でのメルトフローレート(MFR)が、0.1〜40g/10分であることが好ましく、1〜30g/10分であることがより好ましく、2〜20g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分未満では、流動性が低下し、成形加工性に劣る傾向にあり、40g/10分を越えると耐熱性向上効果が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0025】
本発明において、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の配合比は、特に限定されるものではないが、耐熱性および流動性の点で、重量比((A)ポリ乳酸系樹脂/(B)メタクリル系樹脂)が99/1〜1/99であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましく、80/20〜20/80であることがさらに好ましく、70/30〜30/70であることが特に好ましく、59/41〜35/65であることが最も好ましい。
【0026】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、下記条件の少なくとも一つを満たす2種以上のメタクリル系樹脂を含むものであることが好ましく、いずれの条件も満たす2種以上のメタクリル系樹脂を含むものであることがより好ましい。
(a)ガラス転移温度の差が10℃以上
(b)シンジオタクチシチーの差が3%以上。
【0027】
このような条件を満たすメタクリル系樹脂を用いることで、ポリ乳酸系樹脂との分子間相互作用が増大し親和性が向上するため、耐熱性向上効果が大きくなり、透明性、耐熱性および流動性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
本発明において、耐熱性および流動性の点で、ガラス転移温度の差が15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度の差が10℃未満であると、耐熱性改良効果が不充分である。また、ガラス転移温度の差の上限は特に限定されないが、透明性の点で、60℃以下であることが好ましい。ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121に記載されている方法に準じて測定した値であり、DSC測定により、20℃/分で昇温した時の中間点ガラス転移温度である。
【0029】
また、本発明において、2種以上のメタクリル系樹脂を用いる場合には、ガラス転移温度領域、すなわち、比熱容量変化領域は、単独で用いる場合よりも広がる傾向にあり、好ましくはガラス転移温度±10℃、より好ましくはガラス転移温度±20℃、さらに好ましくはガラス転移温度±30℃、特に好ましくはガラス転移温度±40℃である。
【0030】
本発明において、耐熱性および流動性の点で、シンジオタクチシチーの差が5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。シンジオタクチシチーの差が3%未満であると、耐熱性改良効果が不充分である。また、シンジオタクチシチーの差の上限は特に限定されないが、透明性の点で、50%以下であることが好ましい。ここでいうシンジオタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定において、シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとしてそれぞれ観察される0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmの直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表すことにより算出できる値である。
【0031】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、2種以上のメタクリル系樹脂の組成は、特に限定されないが、耐熱性および流動性の点で、ガラス転移温度もしくはシンジオタクチシチーが最も高い値を示すメタクリル系樹脂をメタクリル系樹脂1とし、ガラス転移温度もしくはシンジオタクチシチーが最も低い値を示すメタクリル系樹脂をメタクリル系樹脂2として、メタクリル系樹脂1とメタクリル系樹脂2の重量比(メタクリル系樹脂1/メタクリル系樹脂2)が10/90〜90/10であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
【0032】
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。重合時の温度条件は特に限定されないが、メタクリル系樹脂の耐熱性の点で、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、―10℃以下が特に好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物においては、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などを添加することができる。中でも、機械特性、成形性、耐熱性および透明性などに優れた樹脂組成物が得られるという点で、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。離型剤の配合量は、(A)ポリ乳酸系樹脂と(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
【0034】
また、本発明で用いられる樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂など)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などの少なくとも1種以上をさらに配合することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)メタクリル系樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、透明性、耐熱性および流動性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物について、樹脂組成物中におけるメタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比(シンジオタクチシチー/アイソタクチシチー)が、2.5〜8.5であることが好ましい。さらに、耐熱性および流動性の点で、3.0〜8.0であることがより好ましく、3.0〜5.5であることがさらに好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。本発明においては、特にシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比が3.0未満または8.0超である場合には、耐熱性および流動性の改良効果が小さく、シンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比が3.0〜8.0であることにより、驚くべきことに、耐熱性および流動性の改良効果が著しく高くなることを見出したものであり、このようなシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比を達成できる樹脂組成物を得る方法として、重量平均分子量、立体規則性(シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチー)およびガラス転移温度などの本発明に記載の要件を満たすメタクリル系樹脂を用いること、好ましくはガラス転移温度の差およびシンジオタクシチシーの差が特定範囲にある2種以上のメタクリル系樹脂を用いることが重要であると考えられる。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定において、シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとしてそれぞれ観察される0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmの直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表すことにより算出できる値である。
【0037】
本発明の樹脂組成物について、耐熱性の点で、ガラス転移温度が、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、流動性の点で、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121に記載されている方法に準じてDSCにより測定した値であり、中間点ガラス転移温度もしくは補外転移終了温度のいずれでもよい。DSC測定においては、比熱容量の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形状によりガラス転移温度領域を検出できる。中間点ガラス転移温度とは、屈曲点以下および屈曲点以上のそれぞれのベースラインの接線を並行になるように引き、各ベースライン間の高さ、すなわち、比熱容量変化が半分となる位置に各ベースラインと並行になるように直線を引き、その直線と屈曲するDSC曲線の交点のことをいう。また、補外転移終了温度とは、屈曲点以上での温度のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点のことをいう。
【0038】
本発明の樹脂組成物としては、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、新聞など文字が印刷されている印刷物に成形品を重ねたときに、その文字を読みとることができる部分があることをいう。具体的には、厚み20μm以上、好ましくは1mmの成形品とした時のヘイズが30%以下であることが好ましく、透明性に優れるという点で、ヘイズが10%以下であることがより好ましく、ヘイズが5%以下であることがさらに好ましい。本発明において、ヘイズは、JIS K7105に準じて測定した値である。また、透明性については、JIS K6714に準じて測定される全光線透過率でも判定することが可能であり、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物について、メルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、耐熱性の点で、JIS K7210に準じて、190℃、21.2N荷重にて測定したMFRが、30g/10分以下であることが好ましく、20g/10分以下であることがより好ましく、15g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが30g/10分を越えると耐熱性が低下する傾向にある。また、流動性の点で、0.1g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、3g/10分以上であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分より小さいと流動性が低下し、射出成形時の加工性が低下する傾向にある。
【0040】
本発明の樹脂組成物について、表面硬度は特に限定されないが、JIS K-5600に準じて測定した鉛筆硬度が、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がHBより低いと、表面に傷がつきやすくなるため好ましくない。本発明の樹脂組成物を光記録媒体として使用する場合には、基板に加工した際に傷が付きにくく、読みとりエラーなどが発生しにくくなるという点で、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましく、また、落下などの衝撃に対して光記録媒体が破壊されにくくなるという点で、3H以下であることが好ましく、2H以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物について、飽和吸水率は特に限定されないが、ASTM D570に準じて測定した飽和吸水率が、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されない。飽和吸水率が0.4重量%を越えると吸湿による変形が発生しやすく、使用できなくなる可能性が大きくなるため好ましくない。
【0042】
本発明の樹脂組成物について、レターデーション(複屈折量)は特に限定されないが、市販のエリプソメーターを用い23℃、405nmのレーザー光を基板面に対して30℃の角度で照射して測定したレターデーションが50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。本発明の樹脂組成物を光記録媒体として使用する場合には、レターデーションが50nmを越えると読みとりエラーなどが発生しやすくなるため好ましくない。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、シートなどが挙げられる。本発明においては、耐熱性に優れるという点で、厚みが20μm以上の部分を有する成形品であることが好ましく、1mm以上の部分を有する成形品であることがより好ましい。さらに、耐熱性および耐衝撃性に優れるという点で、厚みが50mm以下の部分を有する成形品であることが好ましく、10mm以下の部分を有する成形品であることがより好ましく、5mm以下の部分を有する成形品であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、透明性に優れるという点で、成形品の厚みが20μm以上、好ましくは厚みが1mmで、ヘイズが30%以下である部分を有することが好ましく、ヘイズが10%以下である部分を有することがより好ましく、5%以下である部分を有することがさらに好ましい。本発明において、ヘイズは、JIS K7105に準じ、ヘイズメーターを用いて測定した値である。
【0046】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。
【0047】
具体的には、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
【0048】
特に、本発明の樹脂組成物は、CD、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、レーザーディスク(登録商標)、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板として有用である。
【0049】
本発明において、光記録媒体の基板の製造方法は特に限定されることなく公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形法、押出成形法、射出プレス成形法等が挙げられ、良好な特性を有する製品を安定して大量に製造できる点で、射出成形法が好ましい。また、基板の上に形成される反射層、記録層、接着層、誘電体層、保護層などの種々の層は、公知の方法を用いて形成させることができる。なお、接着層に用いる接着剤としては、耐熱性の点で、ポリイミド系などの高耐熱性の接着剤を用いることが好ましい。また、基板上に形成させる層の種類や積層数などを変えることにより、再生専用型、追記型、書き換え型などをそれぞれ製造することができる。
【0050】
本発明において、光記録媒体の強度とは、光記録媒体の破壊強度、すなわち、割れにくさのことをいう。本発明においては、光記録媒体の一端を万力などで固定した状態で、他端を手で持ち折り曲げたときの割れるまでの角度で判定することができ、15度以上であれば割れにくいといえる。好ましくは20度以上、より好ましくは30度以上であれば強度がさらに向上したといえる。
【0051】
本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を80℃以上、好ましくは100℃以上で熱処理した後、粉砕し、好ましくは粉末状とした後、アセトンもしくはテトラヒドロフランなどの溶媒を用いて、(B)メタクリル系樹脂を単離し、その後、クロロホルムなどの溶媒を用いて、残留物から(A)ポリ乳酸系樹脂を単離することができる。単離した樹脂は、それぞれ単独で用いることができ、さらにそれぞれを配合して得られる樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物と同じように使用でき、成形品とすることも可能である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。ここで、実施例中の配合比は重量部を示す。また、使用した原料および表中の符号を以下に示す。
【0053】
(A)ポリ乳酸系樹脂
(A−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、重量平均分子量12万)
(A−2)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、重量平均分子量15万)
(A−3)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、重量平均分子量21万)
【0054】
(B)メタクリル系樹脂
(B−1)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックスLG21” 重量平均分子量8万、ガラス転移温度105℃、シンジオタクチシチー41%、MFR21g/10分(230℃、37.2N))
(B−2)メタクリル樹脂(クラレ製“パラペット”HR−L、重量平均分子量9万、ガラス転移温度117℃、シンジオタクチシチー56%、MFR2g/10分(230℃、37.2N))
(B−3)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックス”LG35、重量平均分子量10万、ガラス転移温度90℃、シンジオタクチシチー39%、MFR35g/10分(230℃、37.2N))
【0055】
また、本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
【0056】
(1)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準PMMA換算の重量平均分子量の値である。溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、流速0.5mL/minとし、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入して測定した。
【0057】
(2)シンジオタクチシチーおよびアイソタクチシチー
1H−NMR測定により測定した値である。1H−NMR測定は、日本電子製JNM−AL400を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、試料濃度20mg/mLとして測定した。シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとしてそれぞれ観察される0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmの直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表した値をそれぞれシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとした。
【0058】
(3)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121に準じて、示差走査型熱量計(セイコー電子製RDC220)により測定した。測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分である。
【0059】
(4)透明性
日本電色工業製ヘイズメーターNDH−300Aを用いて、JIS−K7105に準じ、5cm×5cm×1mmの板状成形品のヘイズを測定した。
【0060】
(5)流動性(MFR)
樹脂組成物の流動性について、JIS K7210に準じて、190℃、21.2N荷重において測定した。
【0061】
(6)引張強度
ASTM法D638に準じて、ASTM1号ダンベル成形品を用いて、引張試験を行った。
【0062】
(7)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準じて、5cm×5cm×1mmの板状成形品の鉛筆硬度を測定した。
【0063】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
表1に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度200℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。
【0064】
得た樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で射出成形を行い、3mm厚のノッチ付き成形品、12.7mm×127mm×3mmの成形品、3mm厚のASTM1号ダンベル成形品および5cm×5cm×1mmの板状成形品を得た。
【0065】
得た成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1の結果より以下のことが明らかである。
【0068】
実施例1〜4,比較例1と比較例2〜4との比較から、ポリ乳酸樹脂および重量平均分子量が5万〜45万かつシンジオタクチシチーが40%以上のメタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物は、耐熱性、透明性、流動性、強度、鉛筆硬度に優れていることがわかる。
【0069】
[実施例5〜8、比較例5〜7]
表2に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度200℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。
【0070】
得た樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で射出成形を行い、3mm厚のノッチ付き成形品、12.7mm×127mm×3mmの成形品、3mm厚のASTM1号ダンベル成形品および5cm×5cm×1mmの板状成形品を得た。
【0071】
得た成形品を用いて、各種評価を行った結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2の結果より以下のことが明らかである。
【0074】
実施例5〜8、比較例5と比較例6〜7との比較から、ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度の差が10℃以上、もしくはシンジオタクチシチーの差が3%以上の少なくとも一つを満たす2種以上のメタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物は、耐熱性、透明性、流動性、強度、鉛筆硬度に優れることがわかる。
【0075】
[実施例9〜10]
実施例9〜10については、表3に示すようにポリ乳酸系樹脂およびメタクリル系樹脂を配合する以外は、全て実施例1と同様にして樹脂組成物および成形品を作成し、ガラス転移温度、ヘイズ、MFRを求めた。
【0076】
続いて、得られた樹脂組成物を用いて射出成形により、凹凸のピットが形成されたディスク基板を作成した。得たディスク基板にアルミニウムの反射膜をスパッタ蒸着させた後、その上に紫外線硬化型樹脂(大日本インキ工業社製SD-1700)をスピンコートし、保護層を形成させ、再生専用型の光記録媒体であるコンパクトディスクを作成した。
【0077】
作成した光記録媒体の強度について、半円部を万力で固定した後、もう一方の半円部の頂点を手で持ち折り曲げたときの割れるまでの角度を測定し、下記基準により判定した。
◎:30度以上
○:20〜30度
△:15〜20度
×:15度以下。
【0078】
作成した光記録媒体の再生特性について、熱風乾燥機を用いて70℃、200時間処理した後、もしくは、恒温恒湿槽を用いて温度50℃、相対湿度95%(95%RH)の条件で200時間処理した後、プレーヤーで音声を再生できるかどうか、下記基準により判断した。また、未処理品についても同様に再生特性を確認した。
◎:問題なく再生することができる。
○:やや変形しているものの、再生することができる。
△:読みとりエラーが一部あり、再生が不充分である。
×:全く再生できない。
【0079】
結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
表3の結果より以下のことが明らかである。
【0082】
実施例9〜10から、ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度の差が10℃以上、もしくはシンジオタクチシチーの差が3%以上の少なくとも一つを満たす2種以上のメタクリル系樹脂を配合してなる樹脂組成物は、耐熱性、透明性および流動性に優れており、それを基板に用いた光記録媒体は、問題なく使用できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂を重量比((A)ポリ乳酸系樹脂/(B)メタクリル系樹脂)が90/10〜10/90で配合してなる樹脂組成物であって、(A)ポリ乳酸系樹脂が、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれ、(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、重量平均分子量5万〜45万かつシンジオタクチシチー45%以上、かつガラス転移温度が110℃以上のメタクリル系樹脂である樹脂組成物であって、樹脂組成物中におけるメタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比(シンジオタクチシチー/アイソタクチシチー)が、2.5〜8.5である樹脂組成物
【請求項2】
(B)メタクリル系樹脂が下記条件の少なくとも一つを満たす2種以上のメタクリル系樹脂を含む請求項1記載の樹脂組成物。
(a)ガラス転移温度の差が10℃以上
(b)シンジオタクチシチーの差が3%以上
【請求項3】
(A)ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が、1万以上、50万以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)メタクリル系樹脂の少なくとも1種が、230℃の温度かつ37.2Nの荷重でのメルトフローレートが、1〜30g/10分のメタクリル系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物の、190℃、21.2N荷重にて測定したメルトフローレートが、30g/10分以下、0.1g/10分以上である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形品。
【請求項7】
成形品が、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルムのいずれかである請求項6記載の成形品。

【公開番号】特開2012−140633(P2012−140633A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−59607(P2012−59607)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2006−38080(P2006−38080)の分割
【原出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】