説明

樹脂組成物および絶縁電線

【課題】優れた難燃性や機械的強度を有するとともに、耐寒性に優れ、かつ、埋立、焼却などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない樹脂組成物とそれを用いた絶縁電線を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体および(c)エチレン系共重合体からなる群の少なくとも1種を含有する樹脂100質量部に対し、(d)ポリオキシアルキレン化合物および(イ)無水マレイン酸またはマレイン酸を必須単量体として含み、かつ重量平均分子量が500〜100,000である共重合体(d)0.001〜5質量部と(e)有機化クレー5〜50質量部を含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機クレーを含有する樹脂組成物とそれを用いた絶縁電線に関し、詳しくは優れた難燃性や機械的強度を有するとともに、耐寒性に優れ、かつ、埋立、焼却などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない樹脂組成物とそれを用いた絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、自動車等に使用される絶縁電線には、ポリ塩化ビニルコンパウンドや分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
【0003】
近年前述のハロゲン系の材料を含有する絶縁電線を適切な処理をせずに廃棄した場合、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出したり、また、燃焼の場合には、多量の腐食性ガスが発生するという問題が議論され始めている。
【0004】
このため、有害な重金属やハロゲン系ガスなどの発生がないノンハロゲン難燃材料の検討が行われている。
【0005】
例えば、ポリオレフィン系樹脂に膨潤性粘土鉱物(クレー)を配合したもの(例えば特許文献1参照)、また、難燃材として金属水和物をポリオキシアルキレン化合物と無水マレイン酸、マレイン酸またはその塩からなる共重合体にて処理したものを使用した絶縁電線(例えば特許文献2参照)などがある。
【0006】
近年、自動車用途の絶縁電線では、難燃性や機械的強度が求められるのに加え、外気に常に晒される状況下で使用されており、寒冷地での使用にも耐えうるような、高い耐寒性が求められるようになってきている。
しかし、特許文献1に記載の絶縁電線では、低温雰囲気中での耐衝撃性が低下し、耐寒性に問題があることが明らかとなった。また、特許文献2に記載の絶縁電線では、難燃性を満足させるために多量の金属水和物を添加しなければならず、機械的強度や耐寒性に劣ることが明らかとなった。
【特許文献1】特開平11−228748号公報
【特許文献2】特開2002−037937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記全ての問題を解決したものであり、有機化クレーをポリオキシアルキレン化合物と無水マレイン酸、マレイン酸またはその塩からなる共重合体にて処理したものを添加・混練することによって、高い機械的強度と難燃性を有し、さらに優れた耐寒性を備えた樹脂組成物および絶縁電線の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明においては
(1)(a)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体および(c)エチレン系共重合体からなる群の少なくとも1種を含有する樹脂100質量部に対し、(d)(ア)一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン化合物および(イ)無水マレイン酸またはマレイン酸を必須単量体として含み、かつ重量平均分子量が500〜100,000である共重合体
(I):R1-O(AO)n-R2
(但し、AOはオキシアルキレン基であり、R1はアルケニル基、R2はアルキル基、nはオキシアルキレンの平均付加モル数である。)0.001〜5質量部と
(e)有機化クレー2〜50質量部を含有することを特徴とする樹脂組成物、
(2)(a)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体および(c)エチレン系共重合体からなる群の少なくとも1種を含有する樹脂100質量部に対し、前記(e)有機化クレーを前記(d)共重合体にてあらかじめ表面処理を施した(f)表面処理有機化クレー2〜50質量部を添加してなることを特徴とする樹脂組成物、
(3)請求項1または請求項2記載の樹脂組成物で導体が被覆されていることを特徴とする絶縁電線、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、有機化クレーをポリオキシアルキレン化合物と無水マレイン酸、マレイン酸またはその塩からなる共重合体(d)によって表面処理することにより耐寒性、難燃性、機械的強度の優れた樹脂組成物である。
また、本発明の絶縁電線は、ポリオキシアルキレン化合物と無水マレイン酸、マレイン酸またはその塩からなる共重合体(d)によって表面処理した有機化クレーを有する樹脂組成物を被覆材として有することにより、高い難燃性と、機械的強度を有し、さらに優れた耐寒性を有する絶縁電線である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の各成分を詳細に説明する。
【0011】
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン(a)
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィンとは、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンやエチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のエチレン系共重合体などのポリオレフィンが、不飽和カルボン酸やその誘導体で変性された樹脂のことであり、変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などがある。ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。マレイン酸による変性量は通常0.1〜7質量%程度である。この不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリエチレン樹脂を加えることにより、得られる樹脂組成物の引張特性をさらに改善する効果がある。このポリエチレン樹脂を不飽和カルボン酸等で変性したものは、金属水和物による機械特性の低下を緩和する効果や電線の白化を防ぐ効果もある。また、酸変性されていることにより、クレーとの相溶性が格段に向上している。
【0012】
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体(b)
不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とした少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体又はこれを水素添加して得られるもの、あるいはこれらの混合物であり、例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物共重合体、あるいはこれらの水素添加されたもの等を挙げることができる。上記(水添)ブロック共重合体(以下、(水添)ブロック共重合体とは、ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体を意味する)は、ビニル芳香族化合物を好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%含む。ビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックAは好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、または50質量%より多い、好ましくは70質量%以上のビニル芳香族化合物と(水素添加された)共役ジエン化合物(以下、(水素添加された)共役ジエン化合物とは、共役ジエン化合物及び/又は水素添加された共役ジエン化合物を意味する)との共重合体ブロックである。(水素添加された)共役ジエン化合物を構成成分の主体とする重合体ブロックBは好ましくは、(水素添加された)共役ジエン化合物のみから成るか、または50質量%より多い、好ましくは70質量%以上の(水素添加された)共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。これらのビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックA、(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBのそれぞれにおいて、分子鎖中のビニル芳香族化合物または(水素添加された)共役ジエン化合物由来の繰り返し単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合わせでなっていてもよい。ビニル芳香族化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックAあるいは(水素添加された)共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0013】
(水添)ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合わせが好ましい。共役ジエン化合物をその構成成分の主体とする重合体ブロックBにおけるミクロ構造は任意に選ぶことができる。例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が20〜50%、特に25〜45%であるものが好ましく、ブタジエンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。ポリイソプレンブロックにおいては、該イソプレン化合物の70〜100質量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ、該イソプレン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
【0014】
上記構造を有する本発明に用いる(水添)ブロック共重合体の重量平均分子量は好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは10,000〜550,000、さらに好ましくは100,000〜550,000、特に好ましくは100,000〜400,000の範囲である。分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは2以下である。(水添)ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0015】
これらの(水添)ブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。また、例えば、上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEPS(水素化SIS)等を挙げることができる。本発明において、特に好ましい(水添)ブロック共重合体は、スチレンをその構成成分の主体とする重合体ブロックAと、イソプレンをその構成成分の主体としかつイソプレンの70〜100質量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつ、該イソプレンに基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたところの重合体ブロックBとからなる重量平均分子量が50,000〜550,000の水添ブロック共重合体である。さらに好ましくは、イソプレンの90〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有する上記水添ブロック共重合体である。スチレンブロック共重合体を加えることにより、得られる樹脂組成物の電気特性や引張特性などをさらに改善することができる。
【0016】
エチレン系共重合体(c)
本発明に用いることのできるエチレン系共重合体として具体的には例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタクリレート共重合体(EMA)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。難燃性および機械特性向上の点からは、本発明で用いるエチレン系重合体として好ましいものはエチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0017】
本発明における樹脂は、前記(a)成分、(b)成分および(c)成分からなる群の少なくとも一種を含有する樹脂である。(a)成分、(b)成分および(c)成分は単独で使用しても、併用してもよい。また、発明の目的を損なわない範囲でポリエチレンやポリプロピレンなどの他の樹脂を含有してもよい。
【0018】
(ア)一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン化合物および(イ)無水マレイン酸またはマレイン酸を必須単量体として含み、かつ重量平均分子量が500〜100,000である共重合体(d)
本発明においては(ア)一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン化合物および(イ)無水マレイン酸またはマレイン酸を必須単量体として含み、かつ重量平均分子量が500〜100,000である共重合体(以下、アリルエーテルコポリマーともいう)を有機化クレーの表面処理剤として使用する。
(I):R1-O(AO)n-R2
(但し、AOはオキシアルキレン基であり、R1はアルケニル基、R2はアルキル基、nはオキシアルキレンの平均付加モル数である。)
【0019】
一般式(I)で示される必須単量体のポリオキシアルキレン化合物においてR1で示されるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2,3−ジメチル−1−プロペニル基、3−メチル−1−ブテニル基などがあり、好ましくはアリル基およびメタリル基である。
【0020】
AOで示されるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などがあげられ、好ましくは、オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基、2,3−オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基であり、さらに好ましくは1,2−オキシブチレン基である。
2種類以上のオキシアルキレン基はランダム状付加あるいはブロック状付加のどちらでもよい。
【0021】
また、オキシアルキレンの平均付加モル数nは、1〜100が好ましく、nが100を超えると化合物の粘度が高くなり取り扱いが困難となる。
R2は炭化水素基で、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オレイル基、オクチルドデシル基、ドコシル基、デシルテトラデシル基、ベンジル基、クレジル基、プチルフェニル基、ジブチルフェニル基などがあるが、好ましくはヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オレイル基、オクチルドデシル基、ドコシル基、デシルテトラデシル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、ジオクチルフェニル基、ジノニルフェニル基であり、これらは1種類もしくは2種類以上含んでもよい。
【0022】
共重合体のもう一つの必須単量体(イ)は、無水マレイン酸またはマレイン酸であり、好ましくは無水マレイン酸である。
共重合体における必須単量体(ア)と(イ)の組成比は、モル比で(ア):(イ)=3:7〜7:3であり、好ましくは4:6〜6:4である。
【0023】
必須単量体(ア)および(イ)の他に共重合可能な単量体を共重合させることも可能であり、共重合可能な単量体としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イソブチレンなどのαオレフィン類、アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類などがあげられるが、スチレンなどの水溶性が極めて低いものが好ましい。
【0024】
また、共重合体(d)の分子量は、質量平均分子量で500から100000であり、好ましくは2000〜80000であり、さらに好ましくは5000〜50000である。
本発明における共重合体(d)としては、マリアリム(商品名、日本油脂(株)製)などがある。
【0025】
本発明における共重合体(d)の配合量は樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部である。配合量が少なすぎると、実質的に共重合体(d)を使用した効果がなくなり、多すぎても、表面処理による物性の向上が得られない場合がある。
【0026】
有機化クレー(e)
本発明の有機化クレーは、有機オニウムイオンを層間に導入したクレーであり、有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなどがあげられ、中でも、アンモニウムイオンが好ましい。
【0027】
アンモニウムイオンとしては、ジアルキル(牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)ジメチルベンジルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)メチルベンジルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルアルキル(硬化牛脂)メチルアンモニウムイオン、アルキル(硬化牛脂)ジメチルベンジルアンモニウムイオン、ジアルキル(硬化牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアルキル(硬化牛脂)ジメチルアンモニウムイオン、ジアルキル(硬化牛脂)メチルアンモニウムイオン、アルキル(牛脂)ジヒドロキシエチルメチルアンモニウムイオンなどがあげられる。
【0028】
クレーとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系クレー、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカなどがあげられ、中でも、スメクタイト系クレーのモンモリロナイトを主成分とするものが好ましい。
また、本発明の有機化クレーは単独でも2種以上の併用でも良い。
【0029】
本発明の有機化クレーとしては、エスベン(商品名、ホージュン(株)製)、Nanomer(商品名、NANOCOR社製)、Cloisite(商品名、SOUTHERN CLAY社製)などが挙げられる。
本発明において、有機化クレーの添加量は、樹脂100質量部に対して2〜50質量部であり、好ましくは5〜20質量部である。配合量が少なすぎると難燃性が得られにくく、多すぎると耐寒性や引張強度や伸びが低下する。
【0030】
本発明においては、有機化クレー(e)を共重合体(d)で表面処理を行う。表面処理の方法としては、例えば、有機化クレーの懸濁液に表面処理剤を添加して混合した後、濃縮乾燥する方法、粉体状態の有機化クレーに表面処理剤を添加して混合、分散させる方法などがあげられる。また、各種材料と同時に有機化クレー(e)および共重合体(d)を混練装置に供給し、混練装置内で混練と同時に表面処理を行わせても良い。
あらかじめ有機化クレー(e)を共重合体(d)であらかじめ表面処理した表面処理有機化クレーを樹脂と混合する方法は、有機化クレーをより均一に表面処理することができるため、好ましい。
有機化クレー(e)を共重合体(d)で表面処理を行うことにより、高い機械的強度と難燃性を有すると同時に、優れた耐寒性を有する樹脂組成物とすることが可能となる。
【0031】
本発明の樹脂組成物には、一般的に使用されている各種の樹脂やゴム、さらに、添加剤(難燃剤、酸化防止剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、架橋助剤、架橋剤、顔料など)を本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ適宜配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練装置で溶融混練することにより製造することができる。混練装置については、特に限定はしないが、有機化クレーの分散性が向上することから、二軸押出機の使用が好ましい。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物は必要に応じて架橋してもよい。架橋を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。電子線架橋法の場合は、本発明の樹脂組成物を成形した後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、成形した後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
【0033】
本発明の樹脂製品としては、その形状は制限されるものではなく、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、等を挙げることができる。また、電線やケーブル、光ファイバ等の被覆材としても好適に用いることが出来る。
特に自動車用途の絶縁電線の被覆材として使用した場合には、高い機械的強度と難燃性を有し、さらに優れた耐寒性を備えた電線を得ることができ、特に好ましい。
【0034】
本発明の樹脂製品は、通常の押出成形や射出成形等の成形方法により本発明の樹脂組成物から成形することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜4、比較例1〜5
表1〜3に各実施例および比較例の樹脂組成物の配合と物性を示す。
表1〜3に示す各成分として、以下のものを使用した。
(01)エチレン・酢酸ビニル共重合体
エバフレックスV527−4(三井デュポンポリケミカル)
(02)有機化クレー
エスベンN400(ホージュン)
(03)水酸化マグネシウム
#600(神島化学)
(04)シランカップリング剤
TSL8311(東芝シリコーン)
(05)アリルエーテルコポリマー
AKM0531(日本油脂)
(06)アリルエーテルコポリマー
AFB1528(日本油脂)
(07)アリルエーテルコポリマー
ARS0851(日本油脂)
【0037】
各実施例と比較例の樹脂組成物の混練方法を以下に示す。
まず、有機化クレー(02)、水酸化マグネシウム(03)の表面処理をおこなった。
有機化クレーを撹拌しながら、シランカップリング剤(04)、アリルエーテルコポリマー(05)〜(07)の溶媒液を添加し攪拌した。
次に、二軸押出機を用いて、エチレン・酢酸ビニル共重合体(01)と有機化クレー、水酸化マグネシウムを溶融混練した。
【0038】
得られた樹脂組成物のプレスシートについて、以下の評価をおこなった。
○難燃性(酸素指数)
厚さ3mmのプレスシートを作製し、JIS K7201の酸素指数試験装置を使用して、一定の酸素雰囲気中(酸素指数21.1)での燃焼状態と50mm燃焼するのに要した時間を調査した。
○耐寒性(低温雰囲気での耐衝撃性)
厚さ2mmのプレスシートを作製し、JIS K7216に則り、破壊個数/試験個数が0/5となる最低温度を10℃間隔で調査した。
○機械特性(引張強度、伸び)
厚さ1mmのプレスシートを作製し、JIS K7113 2号ダンベルで打ち抜いた試料について、引張強度(MPa)、伸び(%)を、標線25mm、引張速度200mm/minで測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表2、3に示すように、本発明の実施例1〜4に示される樹脂組成物は、いずれも優れた難燃性・耐寒性・引張強度を有することがわかる。
対して、比較例1の樹脂組成物は有機化クレーを含まないため、難燃性に劣る結果となる。比較例2、5の樹脂組成物は有機化クレーの表面が処理されていないため耐寒性、引張強度が低下している。
比較例3は有機化クレーの表面処理剤としてシランカップリング剤を使用しているため、アリルエーテルコポリマーで表面処理された実施例1〜3に比べて耐寒性、引張強度が劣っている。比較例4はクレーの代わりに水酸化マグネシウムを使用しているが、燃焼時に樹脂が溶解してしまい、難燃性に問題がある結果となっている。
【0043】
以上より、本発明の樹脂組成物は、有機化クレーをアリルエーテルコポリマーによって表面処理することにより耐寒性、難燃性、機械的強度の優れた樹脂組成物である。
また、本発明の絶縁電線は、アリルエーテルコポリマーによって表面処理した有機化クレーを有する樹脂組成物を被覆材として有することにより、高い難燃性と、機械的強度を有し、さらに優れた耐寒性を有する絶縁電線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体および(c)エチレン系共重合体からなる群の少なくとも1種を含有する樹脂100質量部に対し、(d)(ア)一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン化合物および(イ)無水マレイン酸またはマレイン酸を必須単量体として含み、かつ重量平均分子量が500〜100,000である共重合体
(I):R1-O(AO)n-R2
(但し、AOはオキシアルキレン基であり、R1はアルケニル基、R2はアルキル基、nはオキシアルキレンの平均付加モル数である。)0.001〜5質量部と
(e)有機化クレー2〜50質量部を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(a)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたスチレンブロック共重合体および(c)エチレン系共重合体からなる群の少なくとも1種を含有する樹脂100質量部に対し、前記(e)有機化クレーを前記(d)共重合体にてあらかじめ表面処理を施した(f)表面処理有機化クレー2〜50質量部を添加してなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の樹脂組成物で導体が被覆されていることを特徴とする絶縁電線。

【公開番号】特開2006−274064(P2006−274064A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95806(P2005−95806)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】