説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】本発明の目的は、フィラーの含有量が一定濃度以上に高くなる樹脂組成物を簡易かつ好適に製造する製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、フィラーの含有量が50質量%以上である樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練押出法により製造する製造方法に関し、該押出機の最も上流側に位置する第1供給部から第1熱可塑性樹脂を供給する第1ステップと、該押出機の上記第1供給部より下流側に位置する第2供給部からフィラーを供給する第2ステップと、該押出機の上記第2供給部より下流側に位置する第3供給部から第2熱可塑性樹脂を供給する第3ステップとを含み、上記第2ステップは、上記第1熱可塑性樹脂と上記フィラーとの合計量に対して該フィラーが65質量%以上となる配合割合となるように上記フィラーが供給されることを特徴とする樹脂組成物の製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物を押出機を用いて製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂とフィラーとを含んだ樹脂組成物が各種の押出機を用いて溶融混練押出法により製造されている。このような樹脂組成物において、含有されるフィラーの濃度が比較的低い場合、該フィラーは均一に樹脂組成物中に分散するためその製造工程において分散不良が問題となることは少ない。しかしながら、樹脂組成物に含まれるフィラー濃度が高くなると、その製造工程において該フィラーの分散不良が問題となることが多い。
【0003】
このようなフィラーの分散不良の問題を解決する試みとしては、各種の分散剤(分散改良剤)を添加する方法、押出機の構造を改良する方法、押出機へのフィラーの添加条件を改良する方法等、各種の方法が提案されている。しかし、上記分散剤を添加する方法は、樹脂組成物を構成する樹脂の種類やフィラーの種類に応じて分散剤の化学構造を選択したり新たな化学構造を合成する必要があり、汎用性に欠けるという問題があった。一方、押出機の構造を改良する方法に関しても、樹脂の種類やフィラーの種類に応じて逐一設計する必要性が高いばかりか、生産量や製造効率等のファクターを考慮する必要もあることからやはり汎用性に欠けるという問題があった。
【0004】
これに対して、押出機へのフィラーの添加方法を改良する方法は、上記のような問題が比較的少なく汎用性に富むことが期待できることから、分散性の簡易な改良方法として注目され多数の提案がなされている(たとえば特許文献1、2)。
【0005】
しかしながら、樹脂組成物中におけるフィラーの含有量が極めて高くなる場合においては、かかる方法により対応することは困難であると考えられていた。
【特許文献1】特開2003−326517号公報
【特許文献2】特開2005−255734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、フィラーの含有量が一定濃度以上に高くなる樹脂組成物を簡易かつ好適に製造することができる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1種以上の熱可塑性樹脂とフィラーとを含み、そのフィラーの含有量が50質量%以上である樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練押出法により製造する製造方法に関し、該押出機の最も上流側に位置する第1供給部から第1熱可塑性樹脂を供給する第1ステップと、該押出機の上記第1供給部より下流側に位置する第2供給部からフィラーを供給する第2ステップと、該押出機の上記第2供給部より下流側に位置する第3供給部から第2熱可塑性樹脂を供給する第3ステップとを含み、上記第2ステップは、上記第1熱可塑性樹脂と上記フィラーとの合計量に対して該フィラーが65質量%以上となる配合割合となるように上記フィラーが供給されることを特徴とする樹脂組成物の製造方法に係る。
【0008】
ここで、上記第1熱可塑性樹脂と上記第2熱可塑性樹脂とは、実質的に同じ熱可塑性樹脂とすることができるとともに、異なる熱可塑性樹脂であっても差し支えなく、熱可塑性樹脂が異なる場合は、上記第1熱可塑性樹脂の数平均分子量は、上記第2熱可塑性樹脂の数平均分子量より小さいことが好ましい。
【0009】
また、上記第1熱可塑性樹脂と上記第2熱可塑性樹脂とは、各々ポリエステル樹脂であることが好ましく、上記フィラーは、酸化チタンであることが好ましい。また、上記押出機は、二軸押出機であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記のような構成を採用したことにより、押出機を用いた簡易な方法により高濃度のフィラーを樹脂組成物中に均一に分散させることが可能な樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明は、1種以上の熱可塑性樹脂とフィラーとを含み、そのフィラーの含有量が50質量%以上である樹脂組成物を、たとえば図1に示したような押出機10を用いて溶融混練押出法により製造する製造方法に関し、該押出機10の最も上流側に位置する第1供給部11から第1熱可塑性樹脂を供給する第1ステップと、該押出機10の上記第1供給部11より下流側に位置する第2供給部12からフィラーを供給する第2ステップと、該押出機10の上記第2供給部12より下流側に位置する第3供給部13から第2熱可塑性樹脂を供給する第3ステップとを含み、上記第2ステップは、上記第1熱可塑性樹脂と上記フィラーとの合計量に対して上記フィラーが65質量%以上となる配合割合となるように上記フィラーが供給されることを特徴とする樹脂組成物の製造方法に係る。
【0012】
すなわち、本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記のように特に第2ステップを特徴とするものであり、一旦高濃度のフィラー分散物を調製した後、これを第3ステップで所望のフィラー濃度となるように熱可塑性樹脂で希釈することを更なる特徴とするものである。このように混合と希釈とを2つのステップに分けて行なうことにより、熱可塑性樹脂中にフィラーが均一に拡散された良分散性の樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
なお、本発明における溶融混練押出法とは、押出機を用いて樹脂等を溶融混練しながら上流から下流へと搬送し、最終的にその押出機から押し出す(取り出す)ことにより樹脂組成物を製造する方法(すなわち当該技術分野における通常の意味通りの方法)を意味するものである。
【0014】
<樹脂組成物>
本発明の製造方法により製造される樹脂組成物は、1種以上の熱可塑性樹脂とフィラーとを含むものである。このように熱可塑性樹脂とフィラーとを含む限り、これら以外の他の成分が含まれていても差し支えない。
【0015】
そして、本発明の樹脂組成物は、特にフィラーを高濃度で含有することを特徴としており、具体的にはそのフィラーの含有量が50質量%以上、より好ましくは55質量%以上含有されていることを特徴とする。本発明の製造方法により製造される樹脂組成物には、このように高濃度のフィラーが含まれているにもかかわらず、それが極めて均一性高く(すなわち良好な分散性をもって)樹脂組成物中に分散されるという特徴を有している。
【0016】
一方、上記フィラー濃度の上限は、特に限定されるものではないが、強度等の諸特性やコスト等を考慮すると、概ね75質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
なお、本発明の製造方法により製造される樹脂組成物は、ペレットとして直接用いることができるとともに、マスターバッチとして同種または異種の樹脂により希釈して用いることもできる。そして、直接用いる場合であっても、希釈して用いる場合であっても、いずれの場合においても、フィルム、シート、異型、紡糸等の各種成形法(たとえば押出成形、カレンダ成形、射出成形、ブロー成形等)に使用することができる。
【0018】
<熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂と第3ステップで供給される第2熱可塑性樹脂とを含むものである。ただし、後述のように第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは実質的に同じであっても良いし、異なっていても良い。本発明において、実質的に同じ(単に同じと記す場合を含む)とは測定誤差等の要因により僅少の差異を生じる場合でも社会通念的に同一とみなせるものは同一として解する意味である。
【0019】
このような熱可塑性樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂を特に限定することなく用いることができる。たとえば、ポリスチレン、ポリオレフィン(たとえばポリプロピレン、ポリエチレンなど)、AS樹脂、ABS樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂(たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アセチルセルロース、フッ素樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。数平均分子量やガラス転移温度等の諸物性も特に限定されない。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、これらの熱可塑性樹脂を1種以上(すなわち1種あるいは2種以上)混合して含むことができる。
【0021】
<フィラー>
本発明の樹脂組成物に含まれるフィラーは、樹脂組成物中において主成分となるものである。ここで、主成分とは、樹脂組成物中において含有量が50質量%以上となるものをいう。該フィラーは、通常単一の化合物で構成されるが、2種以上の化合物で構成することもできる。この場合、上記50質量%以上とは、樹脂組成物中におけるこれらの2種以上の化合物の合計含有量を示すものとする。
【0022】
本発明のフィラーは、上記のような含有量を有するものである限りその化学構造は特に限定されないが、好ましく粉状または粒子状の無機化合物を挙げることができる。そして、そのような無機化合物の中でも特にDBP吸油量(100g当り)が40ml以下、さらに好ましくは30ml以下のものが好ましい。このような特性を有するフィラーにおいて、本発明の第2ステップにおける分散性が特に良好なものとなる。
【0023】
このようなフィラーの特に好適な例として、たとえば酸化チタン、チタンエロー、弁柄、群青、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ゼオライト等を挙げることができ、中でも特に酸化チタンを採用することが好ましい。
【0024】
<押出機>
本発明で用いる押出機10は、たとえば図1に示したように第1供給部11、第2供給部12、および第3供給部13を有する限り、その構造は特に限定されず従来公知のものをいずれも採用することができる。このような第1供給部11、第2供給部12、および第3供給部13は、通常シリンダー14(バレルとも呼ばれる円筒または筐体)に形成される。なお、このシリンダー14にはスクリュー15が含まれ、このスクリュー15により樹脂組成物は上流側から下流側に混練されながら送られる(流される)。そして、この樹脂組成物はこの押出機の下流側から取り出される。
【0025】
また、このスクリュー15(図1ではその詳細を省略している)が1本のものを単軸押出機と呼び、複数本のものを多軸押出機(たとえば二軸押出機、三軸押出機等)と呼ぶが、本発明の押出機には単軸押出機と多軸押出機との両者が含まれる。特に、製造効率の観点から、本発明では二軸押出機を用いることが好ましい。
【0026】
また、そのスクリュー15の形状も特に限定されず、2条、3条等各種の形状を採用することができる。なお、このようなスクリュー15には、搬送部、混合部、混練部等と呼ばれる各種の部位が長さ方向に形成されることが一般的であり、これにより樹脂組成物の流速、滞留状態、混練度合い等を調節することができる。
【0027】
また、上記シリンダー14には、ベントと呼ばれるガス排出部(図1には図示していない)を複数形成することができ、これにより樹脂組成物の混練途中に発生したガスを押出機外に排出することができる。
【0028】
なお、本発明で用いられる押出機は、熱可塑性樹脂を溶融するための加熱装置を備えている。
【0029】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、上記の熱可塑性樹脂とフィラー以外に他の成分を含んでいても差し支えない。たとえばこのような他の成分としては、樹脂物性(加工性、柔軟性、弾性、脆性、取り扱い性等)、樹脂性能(着色性、安定性、耐久性、難燃性、保温性等)および加工性(離型性、混練り性等)等を改質させる目的で用いられるものであり、溶融樹脂への添加時に熱分解を起こさないものであれば特に限定されずいかなるものも含むことができる。具体的には、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃化剤、抗菌剤、帯電防止剤、銅害防止剤、金属不活性化剤、粘着付与剤、滑剤、スリップ剤、内部離型剤、防曇剤、付香剤、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、防かび剤、充填剤、補強剤、安定剤、保温剤、発泡剤、防震剤、耐衝撃性向上剤、表面処理剤、分散剤、架橋剤等を挙げることができるが、これらのみに限られるものではない。なお、上記フィラーもこれらの作用を示し得るものであるため、これらの他の成分と上記フィラーとの間で明確な区別をする必要はない。
【0030】
<第1ステップ>
本発明の第1ステップは、上記押出機の最も上流側に位置する第1供給部から第1熱可塑性樹脂を供給するステップである。なお、この第1熱可塑性樹脂は、単独の熱可塑性樹脂であっても良いし、複数の熱可塑性樹脂であっても良い。
【0031】
そして、この第1ステップで供給された第1熱可塑性樹脂は、押出機のシリンダー内で加熱溶融され、次の第2ステップ(第2供給部が形成されている下流方向)へと送られる。このため、第1供給部と第2供給部との間隔は、第1熱可塑性樹脂が加熱溶融するのに必要な距離を設けることが好ましい。
【0032】
<第2ステップ>
本発明の第2ステップは、上記押出機の上記第1供給部より下流側に位置する第2供給部から上記フィラーを供給するステップである。そして、この第2ステップは、上記第1熱可塑性樹脂(すなわち上記第1ステップで第1供給部から供給される熱可塑性樹脂)と上記フィラーとの合計量に対して該フィラーが65質量%以上となる配合割合となるように上記フィラーが供給されることを特徴としている。上記配合割合は、より好ましくは70質量%以上である。なお、上記配合割合の上限は特に限定されることはないが、85質量%以下とすることが好ましい。85質量%を超えると逆に分散状態が悪化する場合があるからである。
【0033】
なお、上記において上記第1熱可塑性樹脂と上記フィラーとの合計量とは、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂の全量と第2ステップで供給されるフィラーの全量とを合計した数量である。また、上記における配合割合とは、この合計量に占める第2ステップで供給される上記フィラー全量の比率であり、最終的に製造される樹脂組成物のフィラー濃度とは異なる。
【0034】
ここで、この第2ステップにおいて供給されたフィラーは、上記のようにして既に溶融状態で上流から送られてくる第1熱可塑性樹脂に混合され、かつ混練されることにより第1熱可塑性樹脂中に分散され、次の第3ステップ(第3供給部が形成されている下流方向)へと送られる。このため、第2供給部と後述の第3供給部との間隔は、フィラーが第1熱可塑性樹脂中に十分に分散するのに必要な距離を設けることが好ましい。
【0035】
<第3ステップ>
本発明の第3ステップは、上記押出機の上記第2供給部より下流側に位置する第3供給部から第2熱可塑性樹脂を供給するステップである。なお、この第2熱可塑性樹脂は、単独の熱可塑性樹脂であっても良いし、複数の熱可塑性樹脂であっても良い。
【0036】
そして、この第3ステップにおいて供給された第2熱可塑性樹脂は、上記のようにして既に溶融混練状態で上流から送られてくる第1熱可塑性樹脂とフィラーとの混合物に対して混合され、かつ溶融混練される。このように溶融混練された混合物は、本発明の樹脂組成物となり、引き続き押出機のさらに下流側へと送られることにより、その最下流側から押出機外へと取り出される。
【0037】
なお、上記のように第1熱可塑性樹脂とフィラーとの混合物に対して第2熱可塑性樹脂を添加し希釈混合することにより、熱可塑性樹脂中にフィラーが均一に拡散された良分散性の樹脂組成物が得られる。
【0038】
<第1熱可塑性樹脂および第2熱可塑性樹脂>
本発明において上記第1熱可塑性樹脂と上記第2熱可塑性樹脂とは、実質的に同じ熱可塑性樹脂とすることができるとともに、異なる熱可塑性樹脂であっても差し支えない。上記のように第1熱可塑性樹脂および/または第2熱可塑性樹脂が複数の熱可塑性樹脂を含む場合は、個々の熱可塑性樹脂の異同によりその異同を判断するものとする。
【0039】
なお、本発明において熱可塑性樹脂の異同の判断は、数平均分子量等の物性と化学構造との両者により判断するものとする。たとえば、化学構造が異なる熱可塑性樹脂は当然異なる熱可塑性樹脂として判断するが、仮に化学構造的に同種の熱可塑性樹脂であっても数平均分子量が異なる場合には異なる熱可塑性樹脂として判断するものとする。
【0040】
そして、上記第1熱可塑性樹脂と上記第2熱可塑性樹脂とが異なる熱可塑性樹脂である場合、上記第1熱可塑性樹脂の数平均分子量は、上記第2熱可塑性樹脂の数平均分子量より小さいことが好ましい。これは、数平均分子量が小さい熱可塑性樹脂は、比較的低い溶融温度または軟化温度を有するため、第1熱可塑性樹脂として数平均分子量の比較的小さい熱可塑性樹脂を採用することにより、上記第1ステップにおいて供給された熱可塑性樹脂を加熱溶融する際の温度を低く設定することができるためである。これにより、その熱可塑性樹脂が過度の加熱により熱分解されることを有効に防止することができる。この点、第1熱可塑性樹脂の数平均分子量は、10000以上20000以下の範囲とすることが特に好ましい。因みに、第2熱可塑性樹脂の数平均分子量は、25000以上45000以下とすることが好ましい。
【0041】
なお、本発明において数平均分子量は、GPC−IR(ゲル浸透クロマトグラフ−赤外)分析により測定することができる。
【0042】
ここで、上記第1熱可塑性樹脂と上記第2熱可塑性樹脂とは、各々ポリエステル樹脂である(実質的に同じポリエステル樹脂であっても良いし、異なるポリエステル樹脂であっても良い)ことが好ましく、特に、第1熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂の数平均分子量を、第2熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂の数平均分子量よりも小さくすることが好適である。これは、上記と同じ理由による。この点、第1熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂の数平均分子量は、10000以上20000以下の範囲とすることが特に好ましい。因みに、第2熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂の数平均分子量は、25000以上45000以下とすることが好ましい。
【0043】
なお、本発明で用いるポリエステル樹脂は、従来公知のポリエステル樹脂をいずれも採用することができる。たとえば、このようなポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とグリコール成分とが縮合したエステル単位、あるいはジカルボン酸成分やグリコール成分とヒドロキシカルボン酸成分とが縮合したエステル単位等を、エステル単位として含むポリマー(すなわちエステル結合を有するポリマー)を挙げることができる。
【0044】
上記ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができる。上記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。また、上記ヒドロキシカルボン酸の例としてp−ヒドロキシ安息香酸等を挙げることができる。なお、上記のようなポリエステル樹脂は、結晶性であっても良いし非晶性であっても良い。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
押出機として2条二軸押出機(外径φ47mm、L/D(長さ/外径)=52.5)を用い溶融混練押出法により、2種の熱可塑性樹脂と1種のフィラーとを含み、そのフィラーの含有量が60質量%である樹脂組成物を以下のようにして製造した。
【0047】
まず、第1ステップとして上記押出機の最も上流側に位置する第1供給部から第1熱可塑性樹脂としてペレット状のポリエステル樹脂(テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸成分とし、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとをジグリコール成分とする飽和共重合ポリエステル樹脂:数平均分子量17000、ガラス転移温度67℃)25.7質量部を供給した。上記押出機内の温度(第1供給部から以下の第3供給部の直前まで)を100〜150℃に設定することにより、この第1熱可塑性樹脂を加熱溶融し、次の第2ステップ(第2供給部が形成されている下流方向)へと連続的に送り出した。
【0048】
続いて、第2ステップとして同押出機の上記第1供給部より下流側に位置する第2供給部からフィラーとして酸化チタン60質量部を供給した。すなわち、第1熱可塑性樹脂とフィラーとの合計量に対してフィラーが70質量%となる配合割合でこのフィラーを添加した。このようにして供給されたフィラーは、上記のようにして既に溶融状態で上流から送られてきた第1熱可塑性樹脂に混合され、かつ混練されることにより第1熱可塑性樹脂中に均一に分散され、次の第3ステップ(第3供給部が形成されている下流方向)へと連続的に送り出した。なお、同押出機のスクリューの形状により、この第1熱可塑性樹脂とフィラーとの混合物を第3ステップに到達する前の部分で一旦滞留状態としつつ混練することによりフィラーの分散性を向上させた。
【0049】
次いで、第3ステップとして同押出機の上記第2供給部より下流側に位置する第3供給部から第2熱可塑性樹脂としてパウダー状のポリエステル樹脂(Eastar(商標)PETG コポリエステル6763(イーストマン ケミカル カンパニー製):数平均分子量26000、ガラス転移温度81℃)14.3質量部を供給した。ここで、同押出機内の温度をこの第3供給部から最下流側に位置する取出部まで200〜230℃に設定することにより、この第2熱可塑性樹脂は、上記のようにして既に溶融混練状態で上流から送られてくる第1熱可塑性樹脂とフィラーとの混合物に対して混合され、かつ混練されることにより加熱溶融される。このように溶融混練された混合物は、本発明の樹脂組成物となり、引き続き押出機のさらに下流側へと連続的に送られることにより、その最下流側の取出部から押出機外へと取り出される。
【0050】
このようにして、2種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは異なったポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量が60質量%である本発明の樹脂組成物を得た。
【0051】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために以下の条件の分散性試験を実施したところ、ろ過圧は70kPaであり、フィラーの分散性が良好であることが確認できた。なお、このろ過圧は、低い数値を示す程分散性が良好であることを示す。
【0052】
<分散性試験>
ギヤポンプ付き単軸押出機(外径φ25mm、L/D(長さ/外径)=10)の先端にろ過面積が1cm2に絞られた40μmメッシュのステンレス焼結フィルターを装着し、吐出温度を280℃に設定し、吐出速度10g/分で樹脂組成物中のフィラー1kg相当量を通過させた時の上記フィルターに掛かる圧力上昇値ΔP(kPa)を測定し、これをろ過圧とした。
【0053】
このろ過圧が300kPa未満の場合、厚み80μmでTダイを用いて樹脂組成物をフィルム化するとフィラー凝集物を目視で確認することが難しく、フィルム光沢も良好でありフィラーの分散性が極めて良好であることを示す。また、ろ過圧が300kPa以上1000kPa未満の場合、上記と同様にしてTダイにより樹脂組成物をフィルム化するとフィラー凝集物は僅かに目視観察されるがフィルム光沢は良好でありフィラーの分散性が良好であることを示す。一方、ろ過圧が1000kPa以上の場合、上記と同様にしてTダイにより樹脂組成物をフィルム化するとフィラー凝集物によりフィルム光沢が低下し、フィラーの分散性が不良であることを示す。
【0054】
<実施例2>
実施例1において、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂としてペレット状のポリエステル樹脂(Eastar(商標)PETG コポリエステル6763(イーストマン ケミカル カンパニー製):数平均分子量26000、ガラス転移温度81℃)25.7質量部を用いること、および押出機内の温度を全て200〜230℃に設定することを除き、他は全て実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0055】
このようにして得られた樹脂組成物は、1種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは同じポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量は60質量%であった。
【0056】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために実施例1と同じ分散性試験を実施したところ、ろ過圧は170kPaであり、フィラーの分散性が良好であることが確認できた。
【0057】
<実施例3>
実施例1において、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂の供給量を30質量部とすることにより第2ステップにおけるフィラーの配合割合を66.7質量%に調整すること、および第3ステップで供給される第2熱可塑性樹脂の供給量を10質量部とすることを除き、他は全て実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0058】
このようにして得られた樹脂組成物は、2種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは異なったポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量は60質量%であった。
【0059】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために実施例1と同じ分散性試験を実施したところ、ろ過圧は430kPaであり、フィラーの分散性が良好であることが確認できた。
【0060】
<実施例4>
実施例1において、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂の供給量を20質量部とし、第2供給部で供給されるフィラーの供給量を50質量部とすることにより第2ステップにおけるフィラーの配合割合を71.4質量%に調整すること、および第3ステップで供給される第2熱可塑性樹脂の供給量を30質量部とすることを除き、他は全て実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0061】
このようにして得られた樹脂組成物は、2種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは異なったポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量は50質量%であった。
【0062】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために実施例1と同じ分散性試験を実施したところ、ろ過圧は90kPaであり、フィラーの分散性が良好であることが確認できた。
【0063】
<比較例1>
実施例1において、第1ステップで供給される第1熱可塑性樹脂の供給量を35質量部とすることにより第2ステップにおけるフィラーの配合割合を63.2質量%に調整すること、および第3ステップで供給される第2熱可塑性樹脂の供給量を5質量部とすることを除き、他は全て実施例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
【0064】
このようにして得られた樹脂組成物は、2種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは異なったポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量は60質量%であった。
【0065】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために実施例1と同じ分散性試験を実施したところ、ろ過圧は1210kPaであり、フィラーの分散性が劣ることが確認できた。
【0066】
<比較例2>
実施例1において、第1ステップで実施例1と同じ第1熱可塑性樹脂25.7質量部および第2熱可塑性樹脂14.3質量部を供給すること、第2ステップでフィラーである酸化チタンを60質量部供給すること(すなわちフィラーの配合割合を60質量%とすること)、第3ステップを行わないこと、および押出機内の温度を全て200〜230℃に設定することを除き、他は全て実施例1と同様にして比較用の樹脂組成物を得た。
【0067】
このようにして得られた樹脂組成物は、2種の熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とは異なったポリエステル樹脂を使用)と1種のフィラー(酸化チタン)とを含み、そのフィラーの含有量は60質量%であった。
【0068】
この樹脂組成物中のフィラーの分散性を確認するために実施例1と同じ分散性試験を実施したところ、ろ過圧は1750kPaであり、フィラーの分散性が劣ることが確認できた。
【0069】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0070】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明で用いる押出機の概念図である。
【符号の説明】
【0072】
10 押出機、11 第1供給部、12 第2供給部、13 第3供給部、14 シリンダー、15 スクリュー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の熱可塑性樹脂とフィラーとを含み、そのフィラーの含有量が50質量%以上である樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練押出法により製造する製造方法であって、
前記押出機の最も上流側に位置する第1供給部から第1熱可塑性樹脂を供給する第1ステップと、
前記押出機の前記第1供給部より下流側に位置する第2供給部からフィラーを供給する第2ステップと、
前記押出機の前記第2供給部より下流側に位置する第3供給部から第2熱可塑性樹脂を供給する第3ステップとを含み、
前記第2ステップは、前記第1熱可塑性樹脂と前記フィラーとの合計量に対して前記フィラーが65質量%以上となる配合割合となるように前記フィラーが供給されることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1熱可塑性樹脂と前記第2熱可塑性樹脂とは、実質的に同じ熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第1熱可塑性樹脂と前記第2熱可塑性樹脂とは、異なる熱可塑性樹脂であって、
前記第1熱可塑性樹脂の数平均分子量は、前記第2熱可塑性樹脂の数平均分子量より小さいことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第1熱可塑性樹脂と前記第2熱可塑性樹脂とは、各々ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フィラーは、酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記押出機は、二軸押出機であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−255278(P2008−255278A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100861(P2007−100861)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】