説明

樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルム

【課題】引裂き強度が強く、生分解性が良好であり、成形性及び表面特性が良好である樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂(A)20〜94.9質量%と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)5〜60質量%と、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)0.1〜40質量%とを含有する樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなる成形品及びフィルムに関する。詳細には、特定の相溶化剤を含む樹脂組成物及び、該樹脂組成物からなる農業用フィルム、ゴミ袋、コンポスト袋、レジ袋、ショッピングバッグ、食品包装材料、食料品容器などの用途に使用可能な成形品及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種食品、薬品、雑貨等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等の幅広い用途において、紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等が用いられてきた。この中でも特に、プラスチックフィルムは、強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。
【0003】
該プラスチックフィルムを構成するプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、これらプラスチックフィルムは石油由来の原料から生産されるため、化石資源の枯渇問題や、焼却時に発生する二酸化炭素による地球温暖化の問題を有している。また、殆どのプラスチックは、環境中での耐久性があるため、廃棄した場合にその形状が保たれ、環境汚染や、埋立地の不足等の廃棄物問題が深刻となっている。
【0004】
近年、上記問題を解決することを目的として、植物由来の原料や植物から製造される樹脂、生分解性樹脂が使用されるようになってきている。植物由来の樹脂原料についての研究は数多くなされており、植物由来樹脂原料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートといった脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0005】
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンテレフタレートサクシネートといった脂肪族ポリエステル又は芳香脂肪族ポリエステルが挙げられる。しかしながら、これら脂肪族ポリエステルや芳香族脂肪族ポリエステルは、フィルムの引裂き強度などの機械物性が不十分であった(特許文献1)。
【0006】
これらの問題を解決する手法として、特許文献2では、脂肪族ポリエステル樹脂と芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂とを混合することにより物性を制御する試みが行われているものの、機械物性の改善は未だ不十分であった。そのため、成形性や表面特性を維持しつつも機械物性が一層改善された生分解性樹脂が望まれている。
【特許文献1】特開平8−239461号公報
【特許文献2】特開2005−015606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、引裂き強度が強く、生分解性が良好であり、成形性及び表面特性が良好である樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に関して検討を行った結果、特定の相溶化剤(C)を含有させた樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物全体に対する各成分の質量割合が、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)20〜94.9%、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)5〜60%、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)0.1〜40%であることを特徴とする樹脂組成物を提供して前記課題を解決するものである。
【0010】
この態様において、相溶化剤(C)は、ブロック共重合体及び/又はグラフト共重合体であることが好ましく、また、相溶化剤(C)は、エステル基及び/又は酸無水物基を有するものであることも好ましい。
【0011】
また、この態様において、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主原料とするものであり、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」、及び、「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物」を、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する原料全体に対し、0.0001〜1モル%共重合させた樹脂であることも好ましい。
【0012】
また、この態様において、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネートであることも好ましい。
【0013】
本発明の第二の態様は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)とを含有する樹脂組成物成形品の製造方法であって、樹脂組成物成形品を成形する工程の前に、相溶化剤(C)と、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを樹脂組成物成形品を成形する温度より高い温度で溶融混練する工程を有することを特徴とする樹脂組成物成形品の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
【0014】
本発明の第三の態様は、第一の態様(前記好ましい態様も含む。)の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とする樹脂組成物成形品を提供して前記課題を解決するものである。
【0015】
本発明の第四の態様は、第一の態様(前記好ましい態様も含む。)の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とするフィルムを提供して前記課題を解決するものである。
【0016】
なお、第三及び第四の態様において、「樹脂組成物を主成分として含む」とは、樹脂組成物の含有量が、成形品又はフィルムの総質量の少なくとも50質量%以上であることをいう。
【0017】
本発明によれば、特に引張り強度や引裂き強度に優れた、成形性の良好な樹脂組成物を得ることができる。このため、該樹脂組成物から得られる成形体、特にフィルムは、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等に広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、少なくとも脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、相溶化剤(C)とを含有してなるものである。以下、各成分及び樹脂組成物の製造方法等について詳細に説明する。
【0019】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂とは、脂肪族オキシカルボン酸や、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との混合物等の脂肪族単量体を主原料とし、分子中に芳香族環を実質的に有さないポリエステル系樹脂をいう。ここで、「主原料」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、脂肪族単量体成分の割合が95モル%以上、好ましくは97モル%以上、より好ましくは99モル%以上であることをいう。
【0020】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料となる脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0021】
本発明に用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを主原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)が特に好ましい。該脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を具体的に示すと、例えば、下記式(1)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオ−ル単位と、下記式(2)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位とからなるものである。
【0022】
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
【0023】
なお、上記式(1)、式(2)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基」の「及び」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂の1分子中に2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
【0024】
式(1)のジオール単位を与える脂肪族ジオール成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジオール成分が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール成分が特に好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。脂肪族ジオール成分は2種類以上用いることもできる。
【0025】
式(2)のジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸成分が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸成分が特に好ましい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸又はアジピン酸が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分も2種類以上用いることができる。
【0026】
また、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)にも、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料として上述したものが挙げられる。脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主原料とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)に含有させる好ましい脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を構成する単量体成分全体を基準(100モル%)として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0027】
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)は、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」、「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」のうちの、少なくとも1種を共重合させたものであると、得られる脂肪族ポリエステル系樹脂の溶融粘度を高めることができるため好ましい。
【0028】
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。また、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0029】
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられる。また、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0030】
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には、リンゴ酸等が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0031】
このような3官能以上の化合物の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体全体を基準(100モル%)として、下限は通常0.0001モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限は通常1モル%以下、好ましくは0.5モル%以下である。
【0032】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)としては、ポリブチレンサクシネート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0033】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができる。中でも、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
【0034】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。重合触媒は、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート錯体等の有機基を含む化合物、さらには前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物又はゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒が重合時に溶融又は溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、触媒は、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物であること好ましい。
【0036】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
【0037】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであり、常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限は通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
【0038】
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.001×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0039】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器として、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した撹拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
【0040】
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル系樹脂(A’)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入してもよい。
【0041】
本発明の樹脂組成物に用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定した場合、通常0.1g/10分以上であり、好ましくは、0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、最も好ましくは、2.0g/10分以上である。またMFRの上限は、通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。
【0042】
本発明の樹脂組成物における、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100%)として、質量割合で、通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であり、含有量の上限は、94.9%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量が多すぎると、引張り伸び等の機械物性が低下し、各種包装材料として使用するためには好ましくない。一方、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量が少なすぎると成形性が悪くなったり、生分解速度が遅くなったりして好ましくない。
【0043】
<芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とする芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含む。この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。
【0044】
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0045】
式(3)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0046】
式(4)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、コハク酸又はアジピン酸が好ましい。
【0047】
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸も挙げられる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分及び芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。また、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)にも、その性質を損なわない範囲で脂肪族オキシカルボン酸単位が少量含有されていてもよい。芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)としては、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネート系樹脂であることが好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、通常1.0g/10分以上、好ましくは2.0g/10分以上であり、最も好ましくは3.0g/10分以上、上限が通常6.0g/10分以下、好ましくは5.0g/10分以下、さらに好ましくは4.0g/10分以下である。MFRが1.0g/10分より小さいと成形時の流動性が悪く好ましくない。またMFRが6.0g/10分より大きいとフィルムや成形品の機械物性が低下する。
【0050】
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100%)として質量割合で、通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、上限は、60%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%である。芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量が多すぎると、フィルムのコシが不足し、各種包装材料として使用するためにはフィルムの厚さを厚くする必要があり好ましくない。また生分解性が必要な用途には生分解速度が低下して好ましくない。一方、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量が少なすぎると、引張り伸び率、引裂き強度などが不足して好ましくない。
【0051】
<相溶化剤(C)>
本発明の樹脂組成物には、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)が添加される。相溶化剤とは、非相溶性の異種樹脂を混合する際に、相溶性を改良する添加剤である。本発明に用いられる相溶化剤(C)としては、極性基及び/又は芳香族基を有し、二成分以上の非相溶の樹脂を相溶化を促進する機能を有するか、分散状態を改良する機能を有するものであれば特に制限されない。
【0052】
相溶化剤(C)としては、具体的には、熱可塑性を有するブロック共重合体やグラフト共重合体、ランダム共重合体、ホモポリマーが挙げられるが、ブロック共重合体及びグラフト共重合体が好ましい。ポリマーの基本骨格としてはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンゴム、ポリアミド、EPDM、PPE、アクリロニトリルスチレンゴム、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー、SEBS、SBS、SIS、ポリシロキサンなどが挙げられ、これらのブロック、グラフト、ランダム共重合体、マルチブロック共重合体、及びこれら基本骨格に極性基又は芳香族基で変性した重合体が好ましい。
【0053】
極性基の具体例としては、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基などが挙げられる。この中でも好ましくは、エステル基、エポキシ基、酸無水物基が挙げられ、特に好ましくはエステル基、無水マレイン酸基である。芳香族基の例としては、フェニル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、ナフチル基、カルゾール基及びこれらのアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホン酸による置換体が挙げられるが、好ましくは、フェニル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基であり、さらに好ましくは1,4−フェニレン基及びフェニル基である。
【0054】
これらの極性基、芳香族基を有する相溶化剤の具体例としては、SEBS、無水マレイン酸変性SEBS、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、EPDM−スチレン・アクリロニトリルグラフト共重合体及びその無水マレイン酸変性物、ポリオレフィン系エラストマー−ポリスチレングラフト共重合体、ポリオレフィン系エラストマー−ポリスチレンアクリロニトリルグラフト共重合体、酢酸ビニル−スチレン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、酢酸ビニル−EPDM−ポリオレフィン共重合体、ポリエチレン−ポリメタクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン−ポリエーテル共重合体、ポリエーテルポリエーテルアミドブロック共重合体、グリシジル基含有コポリエステル、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステル二元ブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステル三元ブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルマルチブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルグラフト共重合体が挙げられる。その中でも好ましくはSEBS、無水マレイン酸変性SEBS、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエチレン−ポリメタクリル酸エステル共重合体、グリシジル基含有コポリエステル、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステル二元ブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステル三元ブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルマルチブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルグラフト共重合体が挙げられ、さらに好ましい具体例としてSEBS、無水マレイン酸変性SEBS、グリシジル基含有コポリエステル、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステル二元ブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルマルチブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルグラフト共重合体が挙げられる。最も好ましい相溶化剤は、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルブロック共重合体、脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルグラフト共重合体である。
【0055】
脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルグラフト共重合体の合成方法は、特に限定されないが、例えば脂肪族ポリエステルと芳香族脂肪族ポリエステルを有機過酸化物と共に溶融混練する方法が挙げられる。脂肪族ポリエステル−芳香族脂肪族ポリエステルブロック共重合体の合成方法としては、脂肪族ポリエステルと芳香族脂肪族ポリエステルの末端同士をジイソシアネート、多官能カルボジイミドなどで結合させる方法あるいはエステル交換反応により適度にエステル交換を行うことによるマルチブロック共重合体を製造する方法などが挙げられる。反応は溶液反応、溶融反応、混練時に反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物における、相溶化剤(C)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100%)として、質量割合で、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上であり、含有量の上限は、40%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。相溶化剤(C)の含有量が多すぎると、機械物性が低下するため好ましくない。一方、相溶化剤(C)の含有量が少なすぎると、相溶化改良効果が十分でなくなり好ましくない。
【0057】
<有機添加剤>
本発明の樹脂組成物には必要に応じて有機添加剤を樹脂組成物全体に対して40%以下の質量割合で添加してもよい。有機添加剤の具体例としては、カルボジイミド化合物、ジイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物、澱粉、変性澱粉、α化澱粉、米粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木粉、竹粉末、樹皮粉末、天然繊維、ケナフや藁等の粉末等などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
有機添加剤の好ましい例としては、カルボジイミド化合物、ジイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物が挙げられ、さらに好ましくはカルボジイミド化合物、ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0059】
有機添加剤の添加量は、樹脂組成物全体に対し質量割合で通常0.001%以上であり、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。添加量の上限は通常40%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。添加量が0.001%より少ないと期待する効果が得られない。また添加量が40%を超えると、樹脂組成物の成形性が悪くなり、また樹脂組成物成形品の機械物性、耐熱性も低下するため好ましくない。
【0060】
<その他添加剤>
本発明の樹脂組成物には、さらに、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、スリップ剤、加水分解防止剤、鮮度保持剤、抗菌剤、無機充填剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤を配合することが好ましい。
【0061】
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼオライト、タルク等が挙げられる。
【0062】
スリップ剤としては炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられるが、最も好ましくはエルカ酸アマイドが挙げられる。
【0063】
酸化防止剤としては、BHT、2,2'−メチレンビス(4-メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン-2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物などが例示できる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0064】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
【0065】
耐光剤としては具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネートが挙げられる。
【0066】
防曇剤としては具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。防曇剤は予め樹脂に練りこんでもよいし、成形後、成形品表面に塗布してもよい。
【0067】
これらの添加剤の添加量は、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、通常0.001質量%以上10質量%以下である。添加量の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。添加量の上限は、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0068】
<樹脂組成物の製造方法>
上述した樹脂組成物の原料である脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、相溶化剤(C)等は、溶融混合されることで樹脂組成物とされる。
【0069】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、ブレンドした原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して樹脂組成物を調整すると同時に、その成形体を得ることも可能である。上述した各種添加剤、有機充填剤等は、任意の段階で添加することができる。この際、各種添加剤等を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。
【0070】
本発明においては、相溶化剤(C)は、樹脂組成物の成形前に、予め脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と溶融混練されていることが好ましい。相溶化剤(C)は、成形前であれば、樹脂組成物の調製時に添加してもよいし、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のうちの1種類又は2種類のポリエステルに練り混み、樹脂組成物の調製時に他の成分とドライブレンドすることによって樹脂組成物の全成分と混合して成形してもよい。あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)で高濃度の相溶化剤(C)のマスターバッチを調整し、樹脂組成物調製時に相溶化剤(C)が所定濃度となるように、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)をドライブレンドして希釈してもよい。
【0071】
相溶化剤(C)と脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを溶融混練する際の温度は、使用する樹脂の温度にもよるが、少なくとも樹脂組成物成形品を成形する際の温度より高いことが好ましい。
【0072】
樹脂の混合及び混練に際しては、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また、混練機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機等を使用できる。
【0073】
<樹脂組成物及び樹脂組成物成形体>
本発明の樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形に供することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、押出成形、射出成形、発泡成形、中空成形が好適に適用される。樹脂組成物成形体の具体的な形状としては、フィルム、容器及び繊維への適用が好ましい。
【0074】
また、樹脂組成物成形体に、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、適宜二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
【0075】
本発明の樹脂組成物は成形性に優れ、該樹脂組成物により形成した成形体は表面特性及び力学特性が優れたものである。このため、本発明の樹脂組成物を主成分とする樹脂組成物成形体は、各種食品、薬品、雑貨等の液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。その具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレイ、ファーストフードの容器、野外レジャー製品等)、押出成形品(フィルム、例えば、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。さらに、その他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙等の他、手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等の医療用材料としても好適に用いられる。
【0076】
さらに、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料等の自動車部品等に使用できる。また、包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレイ、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等にも好適に使用できる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法、及び樹脂の種類は次の通りである。
【0078】
<引裂き強度の測定方法>
JIS K7128に準拠してエレメンドルフ引裂き強度を測定した。
【0079】
<降伏強度、破断強度、引張り破断伸びの測定方法>
JIS K6781に準拠した引張り試験により測定した。
【0080】
<メルトフローレートの測定方法>
MFR(g/10分):JIS K7210に準拠して、190℃、2.16Kg荷重で測定した。
【0081】
<使用樹脂>
脂肪族ポリエステル系樹脂(A):三菱化学社製GSPla(グレード名:AZ91TN)(PBS(ポリブチレンサクシネート)系樹脂;MFR=4.5)
脂肪族ポリエステル系樹脂(A):三菱化学社製GSPla(グレード名:AD92WN)(PBSA系樹脂;MFR=4.7)
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B):BASF社製エコフレックス(PBAT(ポリブチレンテレフタレートアジペート)系樹脂;MFR=3.3)
【0082】
(樹脂組成物の製造)
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、相溶化剤(C)を、表1に示す種類及び割合で使用し、30mmΦ二軸押出機により、190℃で混練して実施例1〜5及び比較例1〜3のペレットを作成した。
【0083】
(インフレフィルム成形)
得られた樹脂組成物ペレットを、窒素流通下、70℃で10時間乾燥後、インフレ成形機(エンプラ産業株式会社製形式E30SP)を用いて、ブロー比2.5、折り径300mm、成形温度160℃で表1に示す厚さのフィルム(実施例1〜5および比較例1〜3)を成形した。物性測定結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
本発明の樹脂組成物(実施例1〜実施例5)は、全ての機械物性の評価結果が良好であった。また、実施例1〜実施例5では、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの表面も全て平滑であった。一方、本発明に規定する相溶化剤(C)が含まれていない比較例1〜比較例3では、同じ厚さのフィルムと比較して、特に引裂き強度の点で劣っていた。
【0086】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物全体に対する各成分の質量割合が、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)20〜94.9%、前記芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)5〜60%、前記極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)0.1〜40%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤(C)がブロック共重合体及び/又はグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記相溶化剤(C)がエステル基及び/又は酸無水物基を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主原料とするものであり、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」、及び、「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」から選ばれる少なくとも1種の化合物を、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する原料全体に対し、0.0001〜1モル%共重合させた樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族脂肪族ポリエステル樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレートアジペート及び/又はポリブチレンテレフタレートサクシネートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、極性基及び/又は芳香族基を有する相溶化剤(C)とを含有する樹脂組成物成形品の製造方法であって、前記樹脂組成物成形品を成形する工程の前に、前記相溶化剤(C)と、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は前記芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とを前記樹脂組成物成形品を成形する温度より高い温度で溶融混練する工程を有することを特徴とする樹脂組成物成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とする樹脂組成物成形品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を主成分として含むことを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2009−221338(P2009−221338A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66656(P2008−66656)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】